(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】管体を含む偏荷重体の移送装置及び移送取付方法
(51)【国際特許分類】
F16L 3/00 20060101AFI20221107BHJP
B66D 3/16 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
F16L3/00 D
B66D3/16 A
(21)【出願番号】P 2021153926
(22)【出願日】2021-09-22
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390014568
【氏名又は名称】東芝プラントシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛騨 隆道
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩平
(72)【発明者】
【氏名】牧戸 俊也
(72)【発明者】
【氏名】川竹 裕顯
(72)【発明者】
【氏名】五月女 友哉
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/152290(WO,A1)
【文献】特開2001-171975(JP,A)
【文献】特開2010-207950(JP,A)
【文献】特開2016-88729(JP,A)
【文献】特開2001-129688(JP,A)
【文献】特開2015-68433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 3/00
B66D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のレールを支持する下部架台と、
前記レール及びこのレールに係合して移動可能なスライダを備えた上部架台と、
前記下部架台内の床面に仮置きされた管体を含む偏荷重体の前記管体のフランジを係止可能とし、且つ長さが変更可能に設けられた懸架ビームと、を有し、
前記懸架ビームは、長さが短い状態で前記偏荷重体の前記フランジを係止し、前記偏荷重体が所定高さまで吊り上げられた段階で長い状態として前記上部架台に固定され、この上部架台により前記偏荷重体を移送可能に懸架するよう構成されたことを特徴とする管体を含む偏荷重体の移送装置。
【請求項2】
前記懸架ビームは、ビーム本体の端部に延長ビームが折り畳み可能に軸支されることで、長さが変更可能に構成されたことを特徴とする請求項1に記載の管体を含む偏荷重体の移送装置。
【請求項3】
前記懸架ビームのビーム本体は、偏荷重体の管体のフランジを係止する部分が、前記フランジの径方向に屈曲して形成されたことを特徴とする請求項2に記載の管体を含む偏荷重体の移送装置。
【請求項4】
レールを支持する下部架台を組み立てる工程と、
前記レール及びこのレールに係合して移動可能なスライダを備える上部架台を組み立てる工程と、
前記下部架台内の床面に仮置きされた管体を含む偏荷重体の前記管体のフランジに、長さが変更可能な懸架ビームを短い状態で係止する工程と、
懸架ビームが短い状態のまま、前記偏荷重体を所定高さまで吊り上げて懸吊する工程と、
前記懸架ビームを長い状態として前記上部架台に固定し、前記懸架ビームを介して前記偏荷重体を前記上部架台に懸架する工程と、
前記上部架台を前記レールに沿って移動させて、前記偏荷重体を対象物の直前位置まで移送する工程と、
前記偏荷重体を懸吊した後に前記懸架ビームを取り外し、前記上部架台を解体して、前記偏荷重体を懸吊状態で前記対象物に取り付ける工程と、を順次実施することを特徴とする管体を含む偏荷重体の移送取付方法。
【請求項5】
前記懸架ビームは、ビーム本体の端部に延長ビームが折り畳み可能に軸支されることで、長さが変更可能に構成されたことを特徴とする請求項4に記載の管体を含む偏荷重体の移送取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、重心位置が管体の中心軸上にない偏荷重体を移送する管体を含む偏荷重体の移送装置、及びこの管体を含む偏荷重体の移送装置を用いた管体を含む偏荷重体の移送取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、管体を含む物体を支持または移送させる際は、屋外では重機等を用いて、屋内では、天井面のフックに取り付けられたチェーンブロック等を用いて実施される。例えば地下変電所に、変電機器としてのガス絶縁開閉装置を設置する場合、この装置を構成する複数のユニットは個別に現地に搬入される。現地では、天井面に設けられたフックにチェーンブロックを取り付け、スリングベルト等を用いて各ユニットをチェーンブロックに玉掛けし、このチェーンブロックの操作により各ユニットを吊り上げ状態で水平方向に移送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-68433号公報
【文献】特開平6-147365号公報
【文献】特開2001-129688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のガス絶縁開閉装置を構成するユニットには、重心位置が管体の中心軸上にない管体を含む偏荷重体である場合がある。特許文献1、2及び3に記載の管体支持装置は、重心位置が中心軸上にある管体を対象としているため、上述のような管体を含む偏荷重体である上記ユニットに対しては適用が困難である。
【0005】
また、天井面が低い地下変電所内で、チェーンブロック等を用いて上記ユニットを吊り上げて水平方向に移送する場合、チェーンブロックでの移送が厳しい角度での横引き操作の繰り返しになる。このため、天井面のフックやチェーンブロックに過大な負荷が作用して、フックやチェーンブロックに損傷が生ずる恐れがある。特に、ガス絶縁開閉装置の改良により空調ダクト等が追加された場合には、この空調ダクト等がチェーンブロックによる移送時の障害になってユニットの吊り代が不十分になり、ユニットの移送作業に支障をきたす恐れがある。
【0006】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、天井面が低く狭隘な場所であっても、管体を含む偏荷重体を安全且つ確実に移送して対象物に取り付けることができる管体を含む偏荷重体の移送装置、及び管体を含む偏荷重体の移送取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態における管体を含む偏荷重体の移送装置は、複数本のレールを支持する下部架台と、前記レール及びこのレールに係合して移動可能なスライダを備えた上部架台と、前記下部架台内の床面に仮置きされた管体を含む偏荷重体の前記管体のフランジを係止可能とし、且つ長さが変更可能に設けられた懸架ビームと、を有し、前記懸架ビームは、長さが短い状態で前記偏荷重体の前記フランジを係止し、前記偏荷重体が所定高さまで吊り上げられた段階で長い状態として前記上部架台に固定され、この上部架台により前記偏荷重体を移送可能に懸架するよう構成されたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の実施形態における管体を含む偏荷重体の移送取付方法は、レールを支持する下部架台を組み立てる工程と、前記レール及びこのレールに係合して移動可能なスライダを備える上部架台を組み立てる工程と、前記下部架台内の床面に仮置きされた管体を含む偏荷重体の前記管体のフランジに、長さが変更可能な懸架ビームを短い状態で係止する工程と、懸架ビームが短い状態のまま、前記偏荷重体を所定高さまで吊り上げて懸吊する工程と、前記懸架ビームを長い状態として前記上部架台に固定し、前記懸架ビームを介して前記偏荷重体を前記上部架台に懸架する工程と、前記上部架台を前記レールに沿って移動させて、前記偏荷重体を対象物の直前位置まで移送する工程と、前記偏荷重体を懸吊した後に前記懸架ビームを取り外し、前記上部架台を解体して、前記偏荷重体を懸吊状態で前記対象物に取り付ける工程と、を順次実施することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、天井面が低く狭隘な場所であっても、管体を含む偏荷重体を安全且つ確実に移送して対象物に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る管体を含む偏荷重体の移送装置を示す正面図。
【
図2】
図1の管体を含む偏荷重体の移送装置を示す平面図。
【
図3】
図1の管体を含む偏荷重体の移送装置を示す右側面図。
【
図6】(A)が
図1のレール受けジャッキを、(B)が
図1のレール付きジャッキをそれぞれ示す正面図。
【
図8】
図1及び
図3の第1懸架ビームの折り畳み状態を、吊り上げ途中の断路器ユニットと共に示す右側面図。
【
図9】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順1を示し、(A)が正面図、(B)が平面図。
【
図10】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順2を示し、(A)が正面図、(B)が平面図、(C)が右側面図。
【
図11】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順3を示し、(A)が正面図、(B)が平面図、(C)が右側面図。
【
図12】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順4を示し、(A)が正面図、(B)が平面図、(C)が右側面図。
【
図13】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順5を示し、(A)が正面図、(B)が平面図、(C)が右側面図。
【
図14】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順6を示し、(A)が正面図、(B)が平面図、(C)が右側面図。
【
図15】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順7を示し、(A)が正面図、(B)が平面図、(C)が右側面図、(D)が
図15(A)のXV矢視図。
【
図16】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順8を示し、(A)が正面図、(B)が平面図、(C)が右側面図、(D)が
図16(A)のXVI矢視図。
【
図17】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順9を示し、(A)が正面図、(B)が平面図、(C)が右側面図、(D)が
図17(A)のXVII矢視図。
【
図18】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順10を示し、(A)が正面図、(B)が平面図、(C)が右側面図、(D)が
図18(A)のXVIII矢視図。
【
図19】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順11を示し、(A)が正面図、(B)が平面図、(C)が右側面図、(D)が
図19(A)のXIX矢視図。
【
図20】管体を含む偏荷重体の移送取付方法の手順12を示し、(A)が正面図、(B)が平面図、(C)が右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
図1は、一実施形態に係る管体を含む偏荷重体の移送装置を示す正面図である。この
図1に示す管体を含む偏荷重体の移送装置10は、地下変電所のように床面1に対して、天井面2が低い狭隘な場所(空間)に、例えば変電機器としてのガス絶縁開閉装置(Gas Insulation Switch;GIS)の構成ユニットを移送するものである。ここで、ガス絶縁開閉装置は、遮断機、断路器、主母線及びケーブルヘッド等のユニットが組み合わされて構成され、各ユニットは、現地である地下変電所に個別に搬入されて設置される。
【0012】
本実施形態の管体を含む偏荷重体の移送装置10は、地下変電所に既に設置された対象物としてのケーブルヘッド3に、管体4を含む断路器ユニット5を移送する場合を例示する。この管体4を含む断路器ユニット5は、重心位置が管体4の中心軸上にない偏荷重体である。管体を含む偏荷重体の移送装置10により移送された断路器ユニット5は、後述の如くチェーンブロック51及びスリングベルト52により懸吊されて(
図19参照)、ケーブルヘッド3に接続され取り付けられる。
【0013】
上述の管体を含む偏荷重体の移送装置10は、
図1~
図3に示すように、複数本(例えば2本)の走行レール14を支持する下部架台11と、走行レール14及びこの走行レール14に係合して移動可能なスライダ15の備えた上部架台12と、下部架台11内の床面1に仮置きされた断路器ユニット5の管体4のフランジ6に突設されたボルト7を係止可能で、且つ長さが変更可能に設けられた第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bと、を有して構成される。
【0014】
下部架台11は、床面1における平面視矩形位置に柱16及び17が設置され、これらの柱16及び17間に長さの異なる梁18、19及び20が掛け渡されて構成され、梁20の外方へ延長する部分に足場用の踏板21が掛け渡され、更に、柱16にレール受けジャッキ22が、柱17にレール付きジャッキ23がそれぞれ挿入されて構成され、更に補強用の斜めブレース24及び25並びに水平ブレース26を有する。
【0015】
柱16及び17は、
図5に示すジャッキベース27にガタツキ防止用のキャップ28を介して柱材29が差し込まれて構成される。また、柱16の柱材29の上部に
図6(A)に示すレール受けジャッキ22が、柱17の柱材29の上部に
図6(B)に示すレール付きジャッキ23が、それぞれガタツキ防止用のキャップ28及びねじカラー30を介して挿入される。ジャッキベース27、レール受けジャッキ22及びレール付きジャッキ23の調整により、レール受けジャッキ22及びレール付きジャッキ23に支持される走行レール14の高さが調整される。
【0016】
斜めブレース24は、
図1に示すように、上下に配置された梁19間に掛け渡される。また、斜めブレース25は、
図3に示すように、上下に配置された梁20間に掛け渡される。更に、水平ブレース26は、
図2に示すように、対向して位置づけられた梁18と梁19間に掛け渡される。この水平ブレース26は、ピグティルピン31により長さが調整されて固定される。なお、踏板21は、
図3に示すように、伸縮サイドブラケット32を用いて柱16及び17に支持される。
【0017】
上部架台12は、
図1~
図3に示すように、下部架台11のレール受けジャッキ22及びレール付きジャッキ23に支持されて互いに平行に配置された複数本(例えば2本)の走行レール14と、各走行レール14に係合すると共に互い所定距離を隔てて配置された複数個(例えば4個)のスライダ15と、各スライダ15に立設された第1支柱33A、第2支柱33B、第3支柱33C及び第4支柱33Dと、を有して構成され、更に梁34及び補強ブレース35を有する。
【0018】
走行レール14は、第1レールエレメント14A及び第2レールエレメント14Bが、レール付きジャッキ23の第3レールエレメント14Cを用いて連結されて構成され、これらの連結が接続金具36及びボルト・ナット37によりなされる。第1レールエレメント14A、第2レールエレメント14B及び第3レールエレメント14Cは、例えばH型鋼材にて構成される。また、走行レール14の高さ調整は、前述の如く、下部架台11のジャッキベース27、レール受けジャッキ22及びレール付きジャッキ23によりなされる。
【0019】
スライダ15は、
図7に示すように、例えばH型鋼材製の走行レール14の上板部Mを上下から挟むように設置された少なくとも2個(本実施形態では8個)の縦車輪38と、走行レール14の中央板部Nを左右から挟む少なくとも2個(本実施形態では4個)の横車輪39とを備える。スライダ15は、これらの縦車輪38及び横車輪39により走行レール14に係合されると共に、これらの縦車輪38及び横車輪39の転動により走行レール14に沿って移動可能に構成される。更に、スライダ15は、上面中央位置に結合バー40が突設されている。
【0020】
第1支柱33A、第2支柱33B、第3支柱33C、第4支柱33Dのそれぞれは、
図1~
図3及び
図8に示すように、スライダ15の結合バー40に差し込まれ、図示しないボルト・ナットにより固定されて、スライダ15に立設される。このうちの第1支柱33Aと第3支柱33Cに梁34が掛け渡され、同様に、第2支柱33Bと第4支柱33Dに梁34が掛け渡される。補強ブレース35は、第1支柱33Aと第3支柱33C間に筋交いとして、同様に、第2支柱33Bと第4支柱33Dに筋交いとしてのそれぞれ配置されて、上部架台12の強度が確保される。これらの梁34、補強ブレース35のそれぞれと第1支柱33A、第2支柱33B、第3支柱33C、第4支柱33Dとの結合は、固定ピン41(
図1)によってなされる。
【0021】
第1懸架ビーム13Aと第2懸架ビーム13Bとは、
図3及び
図4に示すように面対称の形状である。これらの第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bは、ビーム本体43の一端に延長ビーム44が、他端に延長ビーム45がそれぞれ軸支ピン42を用いて回転自在に軸支されて、
図8に示すように折り畳み可能に設けられる。これにより、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bは、ビーム本体43に対して延長ビーム44及び45が折り畳まれることで長さが短い状態(
図8)に設定され、ビーム本体43に対して延長ビーム44及び45が延ばされることで長さが長い状態(
図3、
図4)に設定されて、長さが変更可能に構成される。
【0022】
なお、この第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bは、延長ビーム44及び45がビーム本体43に対してテレスコピック状に伸縮可能に設けられて、長さが変更可能に構成されてもよい。
【0023】
また、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bのビーム本体43には、断路器ユニット5における管体4のフランジ6のボルト7を係止するための係止穴46が形成されている。更に、ビーム本体43は、この係止穴46が形成された部分が、管体4のフランジ6の径方向に屈曲して構成されて、フランジ6の他のボルト7とビーム本体43との干渉が防止される。更に、ビーム本体43には補強ブレース47が、延長ビーム45には補強ブレース48がそれぞれ回転自在に軸支されている。
【0024】
上述の第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bは、
図8に示すように、長さが短い状態でビーム本体43の係止穴46に、仮置きされた断路器ユニット5の管体4におけるフランジ6のボルト7を係止させる。この断路器ユニット5のフランジ6のボルト7に、長さが短い第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bが係止された状態で、断路器ユニット5は、チェーンブロック51等により吊り上げられ、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bのビーム本体43が上部架台12の第1支柱33A~第4支柱33Dの上端を超えた直後の所定高さで、吊り上げが停止される。
【0025】
この段階で、
図3及び
図4に示すように、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bは、延長ビーム44及び45が延びて長い状態に設定される。そして、
図3に示すように、第1懸架ビーム13Aの延長ビーム44、45の端部が上部架台12の第2支柱33B及び第1支柱33Aの上端にそれぞれ固定され、第1懸架ビーム13Aの補強ブレース47が第2支柱33Bに、補強ブレース48が第1支柱33Aにそれぞれ固定ピン49により固定される。更に、
図4に示すように、第2懸架ビーム13Bの延長ビーム44、45の端部が上部架台12の第4支柱33D、第3支柱33Cの上端にそれぞれ固定され、第2懸架ビーム13Bの補強ブレース47が第4支柱33Dに、補強ブレース48が第3支柱33Cにそれぞれ固定ピン49により固定される。
【0026】
上述のように第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bが上部架台12の第1支柱33A~第4支柱33Dに固定された状態で、断路器ユニット5の懸吊状態が解除され、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bは断路器ユニット5を上部架台12により懸架し、この上部架台12の走行レール14及びスライダ15により断路器ユニット5が移送可能に設けられる。
【0027】
次に、上述のように構成された管体を含む偏荷重体の移送装置10を用いて断路器ユニット5を移送し、この断路器ユニット5を既設の対象物であるケーブルヘッド3に接続し取り付ける方法(管体を含む偏荷重体の移送取付方法)について、主に
図9~
図20に基づき説明する。
【0028】
この管体4を含む断路器ユニット5(管体を含む偏荷重体)の移送取付方法は、第1工程(手順1~手順4)、第2工程(手順5及び6)、第3工程(手順7)、第4工程(手順8)、第5工程(手順9)、第6工程(手順10)、第7工程(手順11及び12)を順次実施するものである。第1工程(
図9~
図12の手順1~手順4)は、走行レール14を支持する下部架台11を組み立てる工程である。また、第2工程(
図13及び
図14の手順5及び6)は、走行レール14及びスライダ15を備える上部架台12を組み立てる工程である。
【0029】
第3工程(
図15の手順7)は、下部架台11内の床面1に仮置きされた断路器ユニット5の管体4におけるフランジ6のボルト7に、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bのビーム本体43を、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bが短い状態で係止すると共に、上記断路器ユニット5をチェーンブロック51及びスリングベルト52により玉掛けする工程である。また、第4工程(
図16の手順8)は、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bが短い状態のまま、断路器ユニット5を所定高さまで吊り上げて懸吊する工程である。更に、第5工程(
図17の手順9)は、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bを長い状態として上部架台12に固定し、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bを介して断路器ユニット5を上部架台12に懸架する工程である。
【0030】
第6工程(
図18の手順10)は、上部架台12をスライダ15により走行レール14に沿って移動させて、断路器ユニット5をケーブルヘッド3の直前位置まで移送する工程である。また、第7工程(
図19及び
図20の手順11及び12)は、断路器ユニット5を再度懸吊した後に第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bを取り外し、上部架台12を解体して、断路器ユニット5を懸吊状態でケーブルヘッド3に接続し取り付ける工程である。
【0031】
上述の第1工程の手順1では、
図9に示すように、地下変電所の床面1において、既設のケーブルヘッド3及び主母線8等が存在する領域、並びに断路器ユニット5が仮置きされた通路の領域の周囲に、複数のジャッキベース27を設置する。第1工程の手順2では、
図10に示すように、手順1で設置されたジャッキベース27に柱材29を差し込んで柱16及び17を組み立て、これらの柱16、17間に梁18及び20を掛け渡して、ケーブルヘッド3及び主母線8が存在する領域側で下部架台11を組み立てる。
【0032】
第1工程の手順3では、
図11に示すように、手順2と同様にして柱16及び17を組み立て、これらの柱16、17間に梁19及び20を掛け渡して、断路器ユニット5が仮置きされた通路側の領域で下部架台11を組み立てる。第1工程の手順4では、
図12に示すように、手順2及び3で設置された柱16の柱材29にレール受けジャッキ22を挿入し、柱17の柱材29にレール付きジャッキ23を挿入して、下部架台11の組み立てを完了する。
【0033】
第2工程の手順5では、
図13に示すように、ケーブルヘッド3及び主母線8側のレール受けジャッキ22に第1レールエレメント14Aを載置して取り付け、この第1レールエレメント14Aの端部を、レール付きジャッキ23の第3レールエレメント14Cに接続金具36等を用いて固定する。そして、この第3レールエレメント14Cから第1レールエレメント14A及び第3レールエレメント14Cにスライダ15を導入する。次に、断路器ユニット5が仮置きされた通路側のレール受けジャッキ22に第2レールエレメント14Bを載置して取り付け、この第2レールエレメント14Bの端部を、レール付きジャッキ23の第3レールエレメント14Cに接続金具36等を用いて固定する。
【0034】
第2工程の手順6では、
図14に示すように、走行レール14に係合されたスライダ15のそれぞれの結合バー40に第1支柱33A、第2支柱33B、第3支柱33C、第4支柱33Dを差し込んで固定し立設する。また、この手順6では、下部架台11の上下の梁19間に斜めブレース24を、上下の梁20間に斜めブレース25を掛け渡して、下部架台11を補強する。更に、この手順6では、梁20の外側への延長部分に足場用の踏板21を設置し、伸縮サイドブラケット32にて踏板21を柱16及び17に支持させる。
【0035】
第3工程の手順7では、
図15に示すように、床面1に仮置きされた断路器ユニット5の管体4におけるフランジ6のボルト7に、延長ビーム44及び45が折り畳まれて短い状態にある第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bのビーム本体43を係止させる。更に、この手順7では、地下変電所の天井面2に設けられたフック50にチェーンブロック51を取り付け、床面1に仮置きされた断路器ユニット5にスリングベルト52を巻き付け、このスリングベルト52をチェーンブロック51の下端に係止させて、断路器ユニット5を玉掛けする。
【0036】
第4工程の手順8では、
図16に示すように、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bを長さが短い状態のままで、チェーンブロック51の操作により断路器ユニット5を下部架台11及び上部架台12内で吊り上げる。この断路器ユニット5は、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bのビーム本体43が上部架台12の第1支柱33A~第4支柱33Dの略上端位置になるまで吊り上げられる。更に、この手順8では、下部架台11の上部に対向して設置された梁18と梁19間に、水平ブレース26を掛け渡して下部架台11を補強する。
【0037】
第5工程の手順9では、
図17に示すように、断路器ユニット5のチェーンブロック51及びスリングベルト52により懸吊した状態で、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bの延長ビーム44及び45を延ばして、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bを直線状の長い状態とする。次に、これらの第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bの延長ビーム44及び45の端部を上部架台12の第1支柱33A、第2支柱33B、第3支柱33C、第4支柱33Dの上端に固定する。と同時に、第1懸架ビーム13Aの補強ブレース47を第2支柱33Bに、補強ブレース48を第1支柱33Aにそれぞれ固定し、また、第2懸架ビーム13Bの補強ブレース47を第4支柱33Dに、補強ブレース48を第3支柱33Cにそれぞれ固定する。
【0038】
更に、この手順9では、第1支柱33A及び第3支柱33C間と、第2支柱33B及び第4支柱33D間に、それぞれ梁34及び補強ブレース35を掛け渡して、上部架台12を補強する。
【0039】
第6工程の手順10では、
図18に示すように、まず、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bを介して上部架台12に懸架された断路器ユニット5から、チェーンブロック51及びスリングベルト52による玉掛けを外す。次に、上部架台12のスライダ15を走行レール14に沿って移動させることで、上部架台12に懸架された断路器ユニット5を既設のケーブルヘッド3の直前位置まで移送する。
【0040】
第7工程の手順11では、
図19に示すように、まず、上部架台12に第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bを用いて懸架された状態の断路器ユニット5に、チェーンブロック51及びスリングベルト52を用いて玉掛けを行って、断路器ユニット5を懸吊する。次に、上部架台12を断路器ユニット5から引き離し、この上部架台12から第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bを取り外す。その後、上部架台12を解体する。
【0041】
第7工程の手順12では、
図20に示すように、懸吊された断路器ユニット5の管体4を既設のケーブルヘッド3に対し、チェーンブロック51の操作により芯出しを行った後に、この断路器ユニット5の管体4をケーブルヘッド3に接続して取り付ける。
【0042】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果を奏する。
第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bは、
図3、
図4及び
図8に示すように、延長ビーム44及び45の折り畳みにより長さが変更可能に構成されている。これらの第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bは、長さが短い状態で、下部架台11内の床面1に仮置きされた断路器ユニット5の管体4のフランジ6を係止する。更に、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bは、長さが短い状態で、チェーンブロック51及びスリングベルト52(
図17)により断路器ユニット5が所定高さまで吊り上げられた後に、延長ビーム44及び45が延ばされて長い状態とされ、上部架台12の第1支柱33A~第4支柱33Dに固定されて、断路器ユニット5を上部架台12に懸架する。
【0043】
図1及び
図2に示すように、断路器ユニット5が第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bを介して上部架台12に懸架された状態で、上部架台12をスライダ15及び走行レール14の作用で下部架台11に対し移動させることで、断路器ユニット5をケーブルヘッド3の直前位置まで移送する。その後、
図19及び
図20に示すように、断路器ユニット5をチェーンブロック51及びスリングベルト52により再度懸吊し、第1懸架ビーム13A及び第2懸架ビーム13Bを取り外し、上部架台12を解体して、断路器ユニット5の管体4をケーブルヘッド3に芯出しした状態で接続し取り付ける。
【0044】
従って、従来のように、管体4を含む断路器ユニット5を吊り上げて懸吊した状態で、上部架台に予め固定された懸架ビームに、断路器ユニット5の管体4のフランジ6を係止する不安定な高所作業が不要になる。また、地下変電所の天井面2が低い場合であっても、下部架台11のジャッキベース27、レール受けジャッキ22及びレール付きジャッキ23による走行レール14の高さ調整によって対応でき、上部架台12により断路器ユニット5を安定してケーブルヘッド3の直前位置まで移送することができる。これらの結果、天井面2が低く狭隘な場所であっても、管体4を含む断路器ユニット5を安全且つ確実に移送してケーブルヘッド3に接続し取り付けることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…床面、2…天井面、3…ケーブルヘッド(対象物)、4…管体、5…断路器ユニット(偏荷重体)、6…フランジ、7…ボルト、10…管体を含む偏荷重体の移送装置、11…下部架台、12…上部架台、13A…第1懸架ビーム、13B…第2懸架ビーム、14…走行レール、15…スライダ、43…ビーム本体、44.45…延長ビーム、46…係止穴、51…チェーンブロック、52…スリングベルト
【要約】
【課題】天井面が低く狭隘な場所であっても、管体を含む偏荷重体を安全且つ確実に移送して対象物に取り付けることができること。
【解決手段】複数本の走行レール14を支持する下部架台11と、走行レール及びこの走行レールに係合して移動可能なスライダ15を備えた上部架台12と、下部架台内の床面1に仮置きされた管体4を含む断路器ユニット5の管体4のフランジ6を係止可能にし、且つ長さが変更可能に設けられた第1懸架ビーム13A、第2懸架ビームと、を有し、これらの第1及び第2懸架ビームは、長さが短い状態で断路器ユニットのフランジを係止し、断路器ユニットが所定高さまで吊り上げられた段階で長い状態として上部架台に固定され、この上部架台により断路器ユニットを移送可能に懸架するよう構成されたものである。
【選択図】
図3