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特許7170811置換N-アセチル-L-システイン誘導体及び関連化合物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】置換N-アセチル-L-システイン誘導体及び関連化合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/265 20060101AFI20221107BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221107BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20221107BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221107BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221107BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20221107BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
A61K31/265 ZMD
A61P25/00
A61P9/10
A61P25/14
A61K9/48
A61K9/20
A61K9/28
A61K9/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021156357
(22)【出願日】2021-09-27
(62)【分割の表示】P 2020069560の分割
【原出願日】2014-11-07
(65)【公開番号】P2022003063
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】61/902,669
(32)【優先日】2013-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/902,052
(32)【優先日】2013-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512233260
【氏名又は名称】プロメンテイス・フアーマシユーテイカルズ・インコーポレイテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ニアリー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ニーマン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・タニス
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ロートン
(72)【発明者】
【氏名】ギャリー・スミス
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6559756(JP,B2)
【文献】米国特許第03431186(US,A)
【文献】特表2002-519341(JP,A)
【文献】国際公開第2012/065102(WO,A1)
【文献】特開平10-130225(JP,A)
【文献】国際公開第2013/016727(WO,A1)
【文献】特表2011-514324(JP,A)
【文献】国際公開第2001/007400(WO,A1)
【文献】特表2010-505844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の下記式Iで表される化合物を含む、トリコチロマニアを治療するための医薬組成物であって、治療有効量の下記式Iで表される化合物が、1日に1回、投与される、医薬組成物
【化1】
【請求項2】
経口投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
直腸内、非経口的、槽内、膣内、経皮、経粘膜、舌下、肺内、腹腔内、局所または口腔投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
固体形態で投与される、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
カプセルで投与される、請求項1、2及び4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
軟質ゼラチンカプセルで投与される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
硬質ゼラチンカプセルで投与される、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
錠剤として投与される、請求項1、2及び4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
腸溶コーティングされた固体形態で投与される、請求項1、2、4及び8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
式Iの化合物を遅延的に放出する、請求項1-9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
腸管において、式Iの化合物を放出する、請求項1-10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
液体形態で投与される、請求項1-3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
1日に、約0.0001から約2000mg/kgの式Iの化合物が対象に投与される、請求項1-12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
1日に、約0.001から約15mg/kgの式Iの化合物が対象に投与される、請求項1-12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
医薬的に許容される担体を含む、請求項1-14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
式Iの化合物が、下記式
【化2】
で表わされる化合物である、請求項1-15のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な置換N-アセチル-L-システイン(“NAC”)誘導体及び関連化合物、及びこれらの化合物の疾患及び/または状態を治療するための使用方法に関し、前記疾患には統合失調症、副腎白質ジストロフィー、ミトコンドリア病(例えば、リー症候群、アルパース病及びMELAS)、ハンチントン病、トリコチロマニア、HIV関連神経認知障害、低酸素性虚血性脳症、薬物渇望及び薬物中毒を含めた中枢神経系(CNS)の疾患及び/または状態、または中枢神経系(CNS)を冒す疾患及び/または状態が含まれるが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
統合失調症は世界人口の1%を悩ます衰弱性障害である。統合失調症を治療するための有効な薬物療法の開発は原因の病態の特徴づけの進歩に頼っている。クロルプロマジン及び他のフェノチアジンは統合失調症の治療において有用な第一世代抗精神病薬(「定型抗精神病薬」と称される)と見なされている。
【0003】
副腎白質ジストロフィーまたはX連鎖性副腎白質ジストロフィーは遺伝性の生命を危うくする代謝性希少疾患である。この疾患は主に神経系、副腎皮質、及び極長鎖脂肪酸が蓄積する睾丸中のライディッヒ細胞の全体にわたるミエリン形成に影響を及ぼす。副腎白質ジストロフィー患者集団は小児で植物状態をもたらす進行性神経変性低下(小児大脳型X連鎖性副腎白質ジストロフィー)を含む臨床像のある異種である。副腎白質ジストロフィーに対する治療は、高い生存率(5年生存率 92%;Petersら,“Cerebral X-linked adrenoleukodystrophy:the international hematopoietic cell transplantation experience from 1982 to 1999”,Blood,2004;104:881-888)を生ずる造血幹細胞の移植を含む。しかしながら、この治療は小さな副腎白質ジストロフィー部分母集団に限定されており、この集団でしか有効でなく、典型的には治療を疾患の早期段階で実施したとき成功している。
【0004】
副腎白質ジストロフィー患者はペルオキシソームATP結合カセットトランスポーターをコードするABCD1遺伝子に1つ以上の変異を有している。その後、極長鎖脂肪酸が冒されている細胞中に蓄積して、ヒト患者及び動物モデルに共通の特徴である酸化ストレス、最終的には代謝不全をもたらし、それにより細胞死が生ずる(Fourcade,Sら,“Early oxidative damage in neurodegeneration Underlying X-adrenoleukodystrophy”,Human Molecular Genetics,2008;17:1762-1773;Lopez-Erauskin,Jら,“Antioxidants halt axonal degeneration in a mouse model of X-adrenoleukodystrophy”,Annals of Neurology,2011;70:84-92)。
【0005】
抗酸化剤治療は副腎白質ジストロフィー及び酸化ストレスを伴う他の疾患を治療するための有望な治療である。細胞レベルで、抗酸化剤は酸化ストレスのバイオマーカーを正常化すると立証されている。N-アセチルシステイン(“NAC”)は身体の主要抗酸化剤であるグルタチオンの合成において限定試薬として働くシステインのプロドラッグである。進行期の小児大脳型X連鎖性副腎白質ジストロフィー患者に造血幹細胞移植に対するアジュバント療法として投与すると、患者の生存転帰はNAC治療で大きく改善する(Miller,Wら,“Outcomes after allogeneic hematopoietic cell transplantation for childhood cerebral adrenoleukodystrophy:the largest single-institution cohort report”,2011;118:1971-1978;Tolar,Jら,“N-acetyl-L-cysteine improves outcome of advanced cerebral adrenoleukodystrophy”,Bone Marrow Transplant,2007;39:211-215)。しかしながら、脳浸透性は低く、長期間リスク及びベネフィットは未知のままである。
【0006】
CNSを冒す遺伝性ミトコンドリア病(例えば、リー症候群、アルパース病及びMELAS)は非常に変化しやすく、しばしばニューロンまたは神経膠細胞の段階的消失または機能不全が生ずる。多くの場合、病因はミトコンドリアまたは核DNAの変異によるミトコンドリア呼吸鎖プロセスの破壊の結果であり、その後活性酸素種(ROS)の生成が増加する恐れがある。抗酸化剤治療、特にN-アセチルシステインはROSを減らすように作用し、グルタチオンレベルを上昇させ、付随して細胞生存及び機能を向上させる。
【0007】
広範囲の他の疾患は、特にグルタメート-シスチンアンチポーターであるシステムx-での異常なグルタメートシグナリング及び増大した酸化ストレスレベルを含む共通の病態を有している。従って、2つの異なる代謝経路の交差点にある単一標的、例えばシステムx-に関与することにより、NAC、NAC誘導体及び関連分子はこれらの広範囲にわたる一見関連のない疾患及び障害を効果的に治療し得る。このことは、トリコチロマニアのNAC治療の臨床研究で部分的に立証されている(Grant,JEら,“N-Acetylcysteine,a Glutamate Modulator,in the Treatment of Trichotilloania”,Arch Gen Psychiatry,2009;66:756-763)。システムx-、NAC、及びグルタメートシグナリング及び酸化ストレスにおける障害は他の疾患にもリンクしており、これらの疾患にはハンチントン病(Frederick、NMら,“Dysregulation of system xc(-) expression induced by mutant huntingtin in a striatal neuronal cell line and in R6/2 mice”,Neurochem Int.,2014;76:59-69)、低酸素性虚血性脳症(Wang,Xら,“N-acetylcysteine reduces lipopolysaccharide-sensitized hypoxic-ischemic brain injury”,Ann Neurol,2007;61:263-271)、HIV関連神経認知障害(Vazquez-Santiago FJら,“Glutamate metabolism and HIV-associated neurocognitive disorders”,J.Neurovirol,2014;20:315-331)が含まれるが、これらに限定されない。
【0008】
統合失調症は異常なグルタメートシグナリング及び低いグルタチオンレベルを伴うことがある。損なわれたシスチン-グルタメートアンチポーター活性により、高い酸化ストレス及び枯渇したグルタチオンがもたらされ得、いずれも統合失調症で見られる異常なグルタメート神経伝達、シナプス結合及び遺伝子発現がもたらされ得る。加えて、損なわれたシスチン-グルタメートアンチポーター活性及び不完全なグルタメート神経伝達は薬物の無制限使用、すなわち薬物中毒の問題に関係している。
【0009】
NACのようなシステインプロドラッグは、細胞外シスチンレベルを明らかに上昇させることによりシスチン-グルタメート交換を行い、これによりシスチン濃度の急勾配が生ずる。
【0010】
しかしながら、NACに対する代替が必要である。NACは、薬物の有用性を制限し、潜在的に代謝された副産物の蓄積のために副作用の機会が増える高用量の使用を必要する広範な初回通過代謝を受ける。本発明の化合物は初回通過代謝の問題を実質的に避け、従ってNACや他の従来のシステインプロドラッグと比較して高い効果を発揮するように設計されている。加えて、NACは血液脳関門を横断できないために低いCNS移行を示す。
【0011】
従って、NACに関連する問題の頻度の低い新規化合物が要望されている。本発明の化合物は、初回通過代謝及び低いCNSバイオアベイラビリティーの問題を実質的に避け、これによりNAC及び他の従来システインプロドラッグと比較して高い効果を示すように設計されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【文献】Blood,2004;104:881-888
【文献】Human Molecular Genetics,2008;17:1762-1773
【文献】Annals of Neurology,2011;70:84-92
【文献】2011;118:1971-1978
【文献】Bone Marrow Transplant,2007;39:211-215
【文献】Arch Gen Psychiatry,2009;66:756-763
【文献】Neurochem Int.,2014;76:59-69
【文献】Ann Neurol,2007;61:263-271
【文献】J.Neurovirol,2014;20:315-331
【発明の概要】
【0013】
1つの態様において、本発明は、式I:
【0014】
【化1】
(式中、RはNH、(C1-8アルキル)O-及びOHからなる群から選択される)
の化合物に関する。
【0015】
1つの実施形態では、アルキル鎖中のC~Cの1つは窒素または酸素で置換され得る。
【0016】
好ましい実施形態では、Rはt-ブチル-O-または(CH)(CH)O-であり;
【0017】
【化2】
からなる群から選択され;及び
はH及び
【0018】
【化3】
からなる群から選択される。
【0019】
特に、本発明は、次の化合物:
【0020】
【化4】
を提供する。
【0021】
別の態様において、本発明は、式II:
【0022】
【化5】
の化合物に関する。
【0023】
本発明は、上記化合物の医薬的に許容され得る塩、エステルまたはプロドラッグをも包含する。
【0024】
別の態様において、本発明は、被験者に対して治療有効量の式I~IIの化合物、或いはその医薬的に許容され得る塩、エステルまたはプロドラッグを投与することを含む前記被験者における疾患または状態の治療方法に関する。被験者に対する好ましい投与ルートは経口デリバリーによる。好ましくは、本発明の化合物で治療され得る疾患または状態はCNSに関連する。
【0025】
好ましい実施形態では、疾患は統合失調症である。
【0026】
別の態様において、本発明は、被験者に対して治療有効量の式I~IIの化合物、或いはその医薬的に許容され得る塩、エステルまたはプロドラッグを投与することを含む前記被験者における薬物渇望の治療方法を提供する。被験者に対する好ましい投与ルートは経口デリバリーによる。
【0027】
本発明は、更に、式I~IIの化合物、或いはその医薬的に許容され得る塩、エステルまたはプロドラッグを医薬的に許容され得る担体と一緒に含む医薬組成物を包含する。
【0028】
被験者における疾患または状態の治療用医薬組成物(或いは、「医薬品」と呼ぶ)の製剤化/製造方法も本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1-1】対照のパーセンテージとしてのPro-2022による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図1-2】対照のパーセンテージとしてのPro-2022による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図2-1】対照のパーセンテージとしてのPro-2023による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図2-2】対照のパーセンテージとしてのPro-2023による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図3】対照のパーセンテージとしてのPro-2024による14C-シスチン摂取のグラフ表示である。
図4】対照のパーセンテージとしてのPro-3010による14C-シスチン摂取のグラフ表示である。
図5-1】対照のパーセンテージとしてのPro-4006による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図5-2】対照のパーセンテージとしてのPro-4006による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図6-1】対照のパーセンテージとしてのPro-4011による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図6-2】対照のパーセンテージとしてのPro-4011による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図7-1】対照のパーセンテージとしてのPro-4047による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図7-2】対照のパーセンテージとしてのPro-4047による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図8-1】対照のパーセンテージとしてのPro-4051による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図8-2】対照のパーセンテージとしてのPro-4051による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図9-1】対照のパーセンテージとしてのPro-4051aによる14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図9-2】対照のパーセンテージとしてのPro-4051aによる14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出のグラフ表示である。
図10】Pro-2023についての細胞内システインの量のグラフ表示である。
図11】Pro-4006についての細胞内システインの量のグラフ表示である。
図12】Pro-4011についての細胞内システインの量のグラフ表示である。
図13】Pro-4047についての細胞内システインの量のグラフ表示である。
図14】Pro-4051についての細胞内システインの量グラフ表示である。
図15】Pro-4051aについての細胞内システインの量のグラフ表示である。
図16】Pro-2023についてのプレパルス抑制のグラフ表示である。
図17】Pro-4047についてのプレパルス抑制のグラフ表示である。
図18】Pro-4051についてのプレパルス抑制のグラフ表示である。
図19】Pro-2023処置ラットが高架式十字迷路のオープンアーム上に滞在した合計時間のグラフ表示である。
図20】Pro-4047処置ラットが高架式十字迷路のオープンアーム上に滞在した合計時間のグラフ表示である。
図21】Pro-4051処置ラットが高架式十字迷路のオープンアーム上に滞在した合計時間のグラフ表示である。
図22】Pro-4051a処置ラットが高架式十字迷路のオープンアーム上に滞在した合計時間のグラフ表示である。
図23】Pro-2023の経口投与後に脳中に存在しているNACのレベルのグラフ表示である。
図24】Pro-2024の経口投与後に脳中に存在しているNACのレベルのグラフ表示である。
図25】Pro-4051の経口投与後に脳中に存在しているNACのレベルのグラフ表示である。
図26】Pro-2023の経口投与後に脳中に存在しているグルタチオンのレベルグラフ表示である。
図27】Pro-2024の経口投与後に脳中に存在しているグルタチオンのレベルのグラフ表示である。
図28】Pro-3010の経口投与後に脳中に存在しているグルタチオンのレベルのグラフ表示である。
図29】Pro-4051の経口投与後に脳中に存在しているグルタチオンのレベルのグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
別段の記載がない限り、以下の定義が使用されている。
【0031】
用語「プロドラッグ」は、開裂可能な基を有し、生理学的条件下でインビボで医薬的に活性な化合物になる本発明の化合物のモノマー及びダイマーを含めた化合物を指す。
【0032】
用語「エステル」は、RCOR’(ここで、R及びR’はそれぞれカルボン酸及びアルコールの有機部分である)の一般的構造を有している化合物を指す。
【0033】
用語「被験者」には哺乳動物が含まれる。哺乳動物にはヒトが含まれるが、これに限定されない。用語「患者」及び「被験者」は区別しないで使用されている。
【0034】
用語「治療有効量」は、疾患または障害を治療するために被験者に対して投与する場合該疾患または障害を治療するのに十分である化合物の量を意味する。「治療有効量」は化合物、疾患または障害及びその重症度、並びに治療対象の被験者の年齢、体重等に応じて異なり得る。
【0035】
用語疾患または障害の「治療する」または「治療」は、1つの実施形態では疾患または障害を回復させる(すなわち、疾患またはその臨床症状の少なくとも1つの発症を阻止または抑制する)ことを指す。別の実施形態では、「治療する」または「治療」は、被験者により認識されないことがある少なくとも1つの物理的パラメーターを改善することを指す。さらに別の実施形態では、「治療する」または「治療」は、疾患または障害を肉体的(例えば、認められる症状の安定化)、生理的に(例えば、物理的パラメーターの安定化)、またはその両方でモジュレートすることを指す。さらに別の実施形態では、「治療する」または「治療」は、疾患または障害の発症を遅らす、またはさらには予防することを指す。
【0036】
用語「アルキル」は、1~12個の炭素原子、1~8個の炭素原子、または1~6個の炭素原子を有している直鎖または分岐状脂肪族基を意味すると意図される。幾つかの実施形態では、アルキル基は2~12個の炭素原子、2~8個の炭素原子、または2~6個の炭素原子を有している。アルキル基の例には、非限定的にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等が含まれる。
【0037】
一般的に、別段の指示がない限り、明細書中で言及されている化学基は場合により置換され得る。
【0038】
別の態様において、本発明は、式I:
【0039】
【化6】
(式中、RはNH、(C1-8アルキル)O-及びOHからなる群から選択される)
の化合物に関する。
【0040】
1つの実施形態では、アルキル鎖中のC~Cの1つは窒素または酸素のいずれかで置換され得る。
【0041】
好ましい実施形態では、Rはt-ブチル-O-または(CH)(CH)O-であり;
【0042】
【化7】
からなる群から選択され;
はH及び
【0043】
【化8】
からなる群から選択される。
【0044】
特に、本発明は次の化合物を提供する。
【0045】
【化9】
別の態様では、本発明は、式II:
【0046】
【化10】
の化合物に関する。
【0047】
本発明は、記載されている化合物の医薬的に許容され得る塩、エステルまたはプロドラッグをも包含する。
【0048】
本発明の特定の化合物は異なる異性体(例えば、エナンチオマー及びジアステレオマー)形態で存在し得る。本発明は、純粋な形態、及びラセミ混合物を含めた混合物のすべての異性体を意図している。エノール形態も含まれる。
【0049】
本発明の化合物は、非溶媒和形態、及び半水和物のような水和物形態を含めた溶媒和形態で存在し得る。通常、医薬的に許容され得る溶媒、例えば水、エタノール等との溶媒和形態は本発明の目的で非溶媒和形態と均等である。
【0050】
本発明の特定の化合物は医薬的に許容され得る塩、例えば酸付加塩をも形成する。「医薬的に許容され得る塩」という語句は、しっかりした医学的判断の範囲内で過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を呈することなくヒト及び下等動物の組織と接触させて使用するのに適しており、合理的なベネフィット/リスク比で釣り合う塩を意味する。医薬的に許容され得る塩は当業界で公知である。例えば、S.M.BergeらはJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66:1以降に医薬的に許容され得る塩を詳細に記載している。例えば、酸付加塩の場合窒素原子が酸と塩を形成し得る。塩形成のための適当な酸の例は塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、サリチル酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、及び当業者に公知の他の無機カルボン酸である。塩は、遊離塩基形態を慣用方法で塩を製造するのに十分な量の所望酸と接触させることにより製造される。遊離塩基形態は、塩を適当な希釈水性塩基溶液、例えば希釈水性水酸化物、炭酸カリウム、アンモニア及び炭酸水素ナトリウムで処理することにより再生され得る。遊離塩基形態は、それぞれの塩形態と特定の物性、例えば極性溶媒中の溶解度の点で多少異なるが、酸塩は本発明の目的でそれぞれの遊離塩基形態と均等である。(例えば、参照により本明細書に組み入れるS.M.Bergeら,“Pharmaceutical Salts”,J.Pharm.Sci.,66:1-19(1977)を参照されたい)。
【0051】
本明細書中で使用されている用語「組成物」は、特定量の特性成分を含む製品、及び特定量の特性成分の組合せから直接または間接的に生ずる製品を包含すると意図される。
【0052】
本発明の化合物は無機または有機酸から誘導される医薬的に許容され得る塩の形態で使用され得る。これらの塩は、本発明の化合物の最終単離及び精製中にその場で、または別に遊離塩基官能基を適当な有機酸と反応させることにより製造され得る。代表的な酸付加塩には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硫酸水素塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、半硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イソチオネート)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、炭酸水素酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びウンデカン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。また、塩基性窒素含有基は低級アルキルハライド、例えばメチル、エチル、プロピル及びブチルクロリド、ブロミド及びヨージド;ジアルキルスルフェート、例えばジメチル、ジエチル、ジブチル及びジアミルスルフェート;長鎖ハライド、例えばデシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルクロリド、ブロミド及びヨージド;アリールアルキルハライド、例えばベンジル及びフェネチルブロミド等のような物質を用いて4級化され得る。これにより、水または油溶性、或いは水または油分散性製品が得られる。医薬的に許容され得る酸付加塩を形成するために使用され得る酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸のような無機酸、及びシュウ酸、マレイン酸、コハク酸及びクエン酸のような有機酸が含まれる。
【0053】
塩基性付加塩は、カルボン酸含有部分を適当な塩基、例えば医薬的に許容され得る金属カチオンの水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩、またはアンモニア、または有機第1級、第2級または第3級アミンと反応させることにより本発明の化合物の最終単離及び精製中にその場で製造され得る。医薬的に許容され得る塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウム塩等のようなアルキリ金属またはアルカリ土類金属をベースとするカチオン、並びに特にアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアミンアンモニウム、ジエチルアンモニウム及びエチルアンモニウムを含めた第4級アンモニア及びアミンカチオンが含まれるが、これらに限定されない。塩基性付加塩を形成するために有用な他の代表的な有機アミンには、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン等が含まれる。
【0054】
本発明の化合物の局所投与用投与形態には、散剤、スプレー剤、軟膏剤及び吸入剤が含まれる。活性化合物は滅菌条件下で医薬的に許容され得る担体、及び必要とされ得る保存剤、緩衝剤または噴射剤と混合される。眼科用製剤、眼科軟膏剤、散剤及び溶液剤も本発明の範囲内と考えられる。
【0055】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者、組成物及び投与モードに対して所望の治療応答を達成するために有効な活性化合物の量が得られるように変更され得る。選択した用量レベルは特定化合物、投与ルート、治療対象の状態の重症度、及び治療対象の患者の状態及び以前の病歴に依存する。しかしながら、化合物の投与を所望の治療効果を達成するために必要な用量よりも少ないレベルで開始し、所望の治療効果を達成するまで用量を漸増することは当業者の範囲内である。
【0056】
上記したまたは他の治療に使用する場合、治療有効量の1つの本発明の化合物が純粋な形態で、またはそのような形態が存在する場合には医薬的に許容され得る塩、エステルまたはプロドラッグの形態で使用され得る。或いは、化合物は当該化合物を1つ以上の医薬的に許容され得る賦形剤と一緒に含有する医薬組成物として投与され得る。
【0057】
本発明の化合物の「治療有効量」という語句は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスク比で障害を治療するために十分な量の化合物を意味する。しかしながら、本発明の化合物及び組成物の全1日用量はしっかりした医学的判断の範囲内で担当医により決定されると理解される。特定患者に対する具体的な治療有効用量レベルは、治療対象の障害及びその障害の重症度;使用する具体的化合物の活性;使用する具体的組成物;患者の年齢、体重、全身健康状態、性別及び食事;使用する具体的化合物の投与時期、投与ルート及び排泄率;治療期間;使用する具体的化合物と組み合わせてまたは一緒に使用される薬物;及び医学界で公知の類似の要因;を含めた各種要因に依存する。例えば、化合物の投与を所望の治療効果を達成するために必要な用量よりも少ないレベルで開始し、所望の治療効果を達成するまで用量を漸増することは当業者の範囲内である。
【0058】
ヒトまたは下等動物に投与される本発明の化合物の全1日用量は約0.0001~約2000mg/kg/日の範囲であり得る。経口投与の目的の場合、より好ましい用量は約0.001~約15mg/kg/日の範囲であり得、最も好ましい用量は約0.001~約5mg/kg/日の範囲であり得る。所望ならば、有効な1日用量は投与の目的のために複数回用量に分割され得る。その結果、1回投与組成物は、前記量、または1日用量を構成するその約数を含有し得る。
【0059】
本発明は、1つ以上の医薬的に許容され得る担体と一緒に製剤化される本発明の化合物を含む医薬組成物をも提供する。医薬組成物は、具体的には固体または液体形態で経口投与するために、非経口投与のために、または直腸投与のために製剤化され得る。
【0060】
本発明の医薬組成物は、ヒト及び他の哺乳動物に対して経口的、直腸内、非経口的、槽内、膣内、皮下(例えば、パッチを用いて)、経粘膜、舌下、肺内、腹腔内、局所(例えば、散剤、軟膏剤またはドロップ剤により)、口腔内、または口腔もしくは点鼻スプレーとして投与され得る。本明細書中で使用されている用語「非経口」または「非経口的」は、静脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下及び関節内注射及び注入を含む投与モードを指す。
【0061】
別の態様において、本発明は本発明の成分及び生理学的に寛容され得る希釈剤を含む医薬組成物を提供する。本発明は、特に非経口注射、鼻内デリバリー、固体または液体形態での経口投与、直腸内または局所投与のために、本明細書中でまとめて希釈剤と称される1つ以上の生理学的に寛容または許容され得る希釈剤、担体、アジュバントまたはビヒクルと一緒に組成物に処方される上記した1つ以上の化合物を含む。
【0062】
非経口注射用組成物には、生理学的に許容され得る滅菌水性または非水性溶液剤、分散液剤、懸濁液剤またはエマルジョン剤、及び滅菌注射用溶液または分散液を再構成するための滅菌粉末が含まれ得る。適当な水性及び非水性担体、希釈剤、溶媒またはビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、植物油(例えば、オリーブ油)、注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)、及びその適当な混合物が含まれる。
【0063】
これらの組成物はアジュバント、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤をも含有し得る。微生物の作用は各種抗細菌剤及び抗細菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等により防止され得る。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム等を配合することも望ましいことがある。注射用薬剤の長期間吸収は吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを使用することによりもたらされ得る。
【0064】
懸濁液剤は、活性化合物に加えて懸濁化剤、例えばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天及びトラガカント、またはこれらの物質の混合物等を含有し得る。
【0065】
注射用デポ剤は、生分解性ポリマー、例えばポリラクチド-ポリグリコリド中で薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより作成され得る。薬物対ポリマーの比及び使用する特定生分解性ポリマーの種類に応じて、薬物放出速度がコントロールされ得る。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が含まれる。注射用デポ剤は、薬物を身体組織と適合性であるリポソームまたはミクロエマルジョン中に捕捉させることによっても作成される。
【0066】
注射用製剤は、例えば細菌保持フィルターを介して濾過することにより、または使用直前に滅菌水または他の滅菌注射用媒体中に溶解または分散され得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を配合することにより滅菌され得る。
【0067】
経口投与用固体投与形態には、カプセル剤、錠剤、ピル剤、散剤及び顆粒剤が含まれる。このような固体投与形態では、活性化合物は少なくとも1つの不活性で医薬的に許容され得る賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸ジカルシウム、及び/またはa)充填剤または増量剤、例えば澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニル及びケイ酸;b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアカシア;c)保湿剤、例えばグリセロール;d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、またはアルギン酸、特定のシリケート及び炭酸ナトリウム;e)溶解遅延剤、例えばパラフィン;f)吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物;g)湿潤剤、例えばセチルアルコール、グリセロールモノステアレート、及びPEGカプリル酸/カプリン酸グリセリド;h)吸着剤、例えばカオリン及びベントナイトクレー;及びi)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びその混合物と混合され得る。カプセル剤、錠剤及びピル剤の場合、投与形態は緩衝剤をも含み得る。
【0068】
類似のタイプの固体組成物は賦形剤、例えばラクトースまたは乳糖、及び高分子量ポリエチレングリコール等を用いて軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル中にフィラーとしても使用され得る。
【0069】
錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、ピル剤及び顆粒剤の固体投与形態は、コーティング及びシェル、例えば腸溶コーティング及び製薬業界で公知の他のコーティングを用いて製造され得る。これらは場合により乳白剤を含有し得、活性成分を単独でまたは優先的に、消化管の特定部分に、場合により遅延的に放出するように組成物の一部でもあり得る。使用され得る包埋組成物の例には、高分子物質及びワックスが含まれる。
【0070】
また、活性化合物は、適切な場合には1つ以上の上記した賦形剤と一緒にマイクロカプセル化され得る。
【0071】
経口投与用液体投与形態には、医薬的に許容され得るエマルジョン剤、溶液剤、懸濁液剤、シロップ剤及びエリキシル剤が含まれる。液体投与形態は、活性化合物に加えて当業界で慣用されている不活性希釈剤、例えば水または他の溶媒;可溶化剤及び乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにその混合物を含有し得る。
【0072】
経口組成物は、不活性希釈剤の他にアジュバント、例えば湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、着香料及び芳香料をも含み得る。
【0073】
直腸または膣内投与用組成物は、好ましくは本発明の化合物を室温では固体であるが、体温では液体であり、従って直腸または膣腔中で溶融し、活性化合物を放出する適当な非刺激性賦形剤または担体、例えばカカオ脂、ポリエチレングリコール、または座剤用ワックスと混合することにより製造され得る座剤である。
【0074】
本発明の化合物はリポソームの形態でも投与され得る。当業界で公知のように、リポソームは通常リン脂質または他の脂質物質から誘導される。リポソームは水性媒体中で分散される単ラメラまたは多重ラメラ水和液晶により形成される。リポソームを形成し得る生理学的に許容され得る代謝性脂質が使用され得る。リポソーム形態の本発明の組成物は、本発明の化合物に加えて安定剤、保存剤、賦形剤等を含有し得る。好ましい脂質は、別々にまたは一緒に使用される天然及び合成リン脂質、及びホスファチジルコリン(レシチン)である。
【0075】
リポソームの形成方法は当業界で公知である。例えば、Prescott編,Methods in Cell Biology,Volume XIV,Academic Press,New York,N.Y.(1976),p.33以降を参照されたい。
【0076】
別の態様において、本発明は、被験者に対して治療有効量の式I~IIの化合物、或いはその医薬的に許容され得る塩、エステルまたはプロドラッグを投与することを含む前記被験者における疾患または状態の治療方法に関する。被験者に対する好ましい投与ルートは経口デリバリーによる。
【0077】
好ましくは、本発明の化合物で治療可能な疾患または状態はCNSに関係する。好ましい実施形態では、疾患は統合失調症である。
【0078】
しかしながら、本発明の化合物が低下したグルタチオンレベル及び/またはグルタメートシグナリング及び/または酸化ストレス、及び/または損なわれたシスチングルタメートアンチポーター活性、グルタメート神経伝達、シナプス結合及び遺伝子発現に関連する他の疾患または状態を治療するために使用され得ることは当業者の範囲内である。
【0079】
一般的に、本発明は具体的疾患または状態の治療に限定されないが、そのメカニズムが本発明の化合物により影響され得る疾患または状態の治療を包含する。
【0080】
別の態様において、本発明は、被験者に対して治療有効量の式I~IIの化合物、或いはその医薬的に許容され得る塩、エステルまたはプロドラッグを投与することを含む前記被験者における薬物渇望の治療方法を提供する。被験者に対する好ましい投与ルートは経口デリバリーによる。
【0081】
本発明は、更に、式I~IIの化合物、或いはその医薬的に許容され得る塩、エステルまたはプロドラッグを医薬的に許容され得る担体と一緒に含有する医薬組成物を包含する。
【0082】
被験者の疾患または状態を治療するための上記医薬組成物(或いは、「薬剤」と称する)の製剤化/製造方法も本発明の範囲内である。
【0083】
本発明を明確に理解するために、実施例を以下に提示する。これらの実施例は単なる例示であって、本発明の範囲を決して限定すると理解すべきでない。実際、本明細書中に示され、記載されているものに加えて本発明の各種修飾は以下の実施例及び先の記載から当業者には自明になるであろう。前記修飾は添付した特許請求の範囲に入ることも意図される。
【実施例
【0084】
実施例1.合成戦略
一般的方法
使用した溶媒はすべて市販されており、更に精製することなく使用した。典型的には、反応物を窒素の不活性雰囲気下で無水溶媒を用いて流した。化合物はケムドロー7、リアクシス、または市販されているならばカタログ名で指定した。
【0085】
H及び13C NMRスペクトルは、バリアン400 ATB PFGプローブを備えたオックスフォードAS400分光計を有するバリアン300マーキュリープラスステーションでプロトンに対して400MHzで、炭素13に対して100MHzで記録した。すべての重水素化溶媒は典型的には参照シグナル(H及び13Cに対してδ 0.00に設定)として使用した0.03%~0.05%v/v テトラメチルシランを含有していた。13Cの場合、シフトはδδ 39.50のDMSO-d6帰属と比べた。
【0086】
質量スペクトルは、120℃でアライアンス2795(LC)及びウォーターズ・マイクロマスZQ検出器から構成されているウォーターズMSに記録した。質量分析計はポジティブまたはネガティブモードで操作するエレクトロスプレーイオン源(ES)を備えていた。質量分析計は0.3sの走査時間で100~1000m/zの範囲で走査した。
【0087】
C、H及びN組成の元素分析は、100mL/分のヘリウム流(14psi)、20mL/分の酸素(10psi)、空気25psi及び50mL/分(N42)のパージでコステック計器元素燃焼システムECS4010を用いて、またはアルバータ大学の分析機器ラボラトリー(N39)で実施した。
【0088】
高速液体クロマトグラフィー(UPLC)分析は、ウォーターズ717プラス・オートサンプラー及びウォーターズ2996フォトダイオードアレイ検出器を備えたウォーター600コントローラーシステムを用いて実施した。使用したカラムはアトランティスT3 d18 4.6×150mm 3μmであり、100% A(A:水中に0.1% HPO)から始め、10分間かけて30%(B:MeCN)で終わる勾配を適用し、その後95% Bに増加させ、2分間維持した。次いで、カラムを20分間の残りの間100% Aに再平衡化した。カラム温度は周囲温度で、流速は0.9~1.2mL/分であった。ダイオードアレイ検出器は200~400nmでスキャンした。
【0089】
薄層クロマトグラフィー(“TLC”)は、アルグラム(R)(シリカゲル60 F254;アルグラムはMacherey,Nagel & Co.の登録商標である)を用いて実施し、典型的にはスポットを可視化するために紫外光(“UV”)を使用した。幾つかの場合には追加の可視化方法も使用した。例えば、化合物を可視化するためにTLCプレートをヨウ素(約1gのIを10gのシリカゲルに添加し、十分に混合することにより生成)、バニリン(約1gのバニリンを100mLの10% HSO中に溶解することにより生成)、ニンヒドリン(Aldrichから市販されている)、またはマジックステイン(25gの(NHMo24・4HO、5g(NHCe(IV)(NOを450mLの水及び50mLの濃HSO中に十分に混合することにより生成)を用いて展開し得る。中圧クロマトグラフィーはSNAP(TM)シリカゲルカートリッジまたはテレダイン・イスコカートリッジを用いてバイオタージSP4(R)(バイオタージはBiotage ABの登録商標である)で実施した。フラッシュクロマトグラフィーはStillら(Still,W.C.;Kahn,M.;and Mitra,M.,Journal of Organic Chemistry,1978,43,2923-2925)に開示されているものに類似の技術に従ってシリサイクルの典型的には40~63μm(230~400メッシュ)シリカゲルを用いて実施した。バイオタージ(R)、フラッシュクロマトグラフィー、または薄層クロマトグラフィーのために使用される典型的な溶媒はクロロホルム/メタノール、ジクロロメタン/メタノール、酢酸エチル/メタノール及びヘキサン/酢酸エチルの混合物であった。
【0090】
旋光度はエドモントンのアルバータ大学のアルバータ分析機器ラボにて10.002cmの光路長を有するパーキンエルマー241旋光計を用いて実施した。
【0091】
融点はエレクトロサーマル社デジタル式融点測定装置(S.No.2345,カタログ番号IA8101)を用いて測定し、補正しなかった。
【0092】
以下の略号が使用されている:
aq. 水性;
DMSO ジメチルスルホキシド;
EtOAc 酢酸エチル;
HOAc 酢酸;
MeOH メタノール;
NMM 4-メチルモルホリン;
ON 一晩;
r.t. 室温;
TFA トリフルオロ酢酸;及び
THF テトラヒドロフラン。
【0093】
使用した出発物質は商業ソースから入手し、受領したままの状態で使用した。
【0094】
N42:(2R)-2-アセチルアミノ-3-[(4R)-2-オキソ-チアゾリジン-4-カルボニルスルファニル]-プロピオン酸の合成
【0095】
【化11】
【0096】
次の手順をKatritzky,A.R.;Tala,S.R.;Abo-Dya,N.E.;Ibrahim,T.S.;El-Feky,S.A.;Gyanda,K.;Pandya,K.M.,J.Org.Chem.,2011,76,85-96に報告されているチオエステル形成条件に基づいて実施した。
【0097】
(2R)-2-アセチルアミノ-3-[(4R)-2-オキソ-チアゾリジン-4-カルボニルスルファニル]-プロピオン酸(N42,Ref.10-015-161)
1H-ベンゾトリアゾール(19.4g,163mmol)をTHF(180mL)中に含む溶液にチオニルクロリド(2.96mL,40.8mmol)を添加した。溶液を氷浴で冷却し、0.5時間後(4R)-2-オキソ-チアゾリジン-4-カルボン酸(OTZ、6.00g,40.8mmol)を添加した。溶液を1時間かけて周囲温度までゆっくり加温した。室温で1.25時間後、生じた固体を真空濾過により除去した。固体及びフラスコを洗浄するためにTHF(60mL)を用いて、濾液を(2R)-2-アセチルアミノ-3-メルカプト-プロピオン酸(NAC,6.00g,36.7mmol)及びNMM(4.04mL,36.7mmol)をTHF(30mL)中に含む氷冷溶液に移した。氷浴を外した。30分後、反応はHNMRにより完了したと見られた。混合物にTFAを添加し、生じた溶液を2つに分け、酢酸エチルで予め洗浄した2つの330gのシリカゲルイスコカラムに適用した。2つのカラムのバイオタージクロマトグラフィー(EtOAc-20% メタノール(0.5% AcOH))により、EtOAcと摩砕し、真空中で乾燥した後、2.36g(HPLC純度:97.35%)の標記化合物が生じた。速く流れるUV活性画分を濃縮し、EtOAcと摩砕することにより更に化合物を得た。次いで、固体を水中に溶解し、濾過し、凍結乾燥させると、標記化合物が白色凍結乾燥物として生じた。この物質をEtOAc母液からのバッチと合わせ、~1:1 EtOAc-MeOHを用いて25gのシリカゲルに吸着させた。バイオタージ精製(330gのイスコ,EtOAc-20% メタノール(0.5% AcOH)、カラムをEtOAcで予め湿らす)すると、水中に溶解し、濾過し、凍結乾燥させた後、0.84g(淡黄色凍結乾燥物,HPLC純度:94.70%)及び3.74g(白色凍結乾燥物,HPLC純度:96.88%)が生じた。収量:6.94g(65%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ 13.01(br.s,1H),8.95(d,J=2.0Hz,1H),8.33(d,J=8.2Hz,1H),4.61-4.57(m,1H),4.39-4.33(m,1H),3.81(dd,J=11.7,9.0Hz,1H),3.43(dd,J=11.7,2.3Hz,1H),3.39(dd,J=13.3,4.7Hz,1H),3.08(dd,J=13.7,8.6Hz,1H),1.84(s,3H);13C NMR(100.6MHz,DMSO-d) 200.9,173.5,171.6,169.4,61.7,51.2,32.7,30.0,22.3ppm;MS(ES) m/z:293(M+H);HPLC:96.88%(マックスプロット220~400nm);元素分析(C12):計算値:C,36.98%;H,4.14%;N,9.58% 実測値:C,36.80%;H,4.24%;N,9.63%;[α] 25 -71.58(c 1.0,水)。
【0098】
N50:(2R)-2-アセチルアミノ-3-(2-メトキシ-ベンゾイルスルファニル)-プロピオン酸の合成
【0099】
【化12】
【0100】
次の手順をKatritzky,A.R.;Tala,S.R.;Abo-Dya,N.E.;Ibrahim,T.S.;El-Feky,S.A.;Gyanda,K.;Pandya,K.M.,J.Org.Chem.,2011,76,85-96に報告されているチオエステル形成条件に基づいて実施した。
【0101】
(2R)-2-アセチルアミノ-3-(2-メトキシ-ベンゾイルスルファニル)-プロピオン酸N50,Ref.10-015-179-7)
1H-ベンゾトリアゾール(7.68g,64.4mmol)をTHF(60mL)中に含む溶液に2-メトキシ-ベンゾイルクロリド(4.36mL,29.3mmol)を添加した。15分後、生じた溶液は曇り、混合物を1.75時間以上撹拌した。生じた固体を真空濾過により除去し、15mLのTHFで洗浄した。15mLのTHFを含む生じた濾液を(2R)-2-アセチルアミノ-3-メルカプト-プロピオン酸(NAC、3.83g,23.4mmol)及びNMM(2.57mL,23.4mmol)をTHF(30mL)中に含む予冷溶液に添加した。氷浴を外した。一晩室温に置いたが、反応はH NMRにより完了していなかった。さらにNMM(2.57mL,23.4mmol)を添加し、混合物を55℃に一晩加熱した。混合物にTFA(4mL)を添加し、溶液を真空中で濃縮した。残渣をMeOH及びEtOAc中に溶解し、~80gのシリカゲルに吸着させた。バイオタージシリカゲルクロマトグラフィー(330gのイスコカラム,120mLの1:2 EtOAc-ヘキサン、次いで120mLの1:1 EtOAc-20% MeOH(1% AcOH)勾配)にかけて精製した後、温MeCN/水 1:1混合物(100mL)中に溶解し,真空中でMeCNを除去し、周囲温度で一晩放置した後、沈殿を吸引濾過し、水で洗浄することにより精製した。標記化合物を白色固体として単離した。収量:2.29g(33%)。Mp 179~181℃;H NMR(399.7MHz,DMSO-d) δ 12.89(br.s,1H),8.31(d,J=8.2Hz,1H),7.65(dd,J=7.8,1.6Hz,1H),7.59-7.54(m,1H),7.18(d,J=8.6Hz,1H),7.06-7.02(m,1H),4.42-4.36(m,1H),3.85(s,3H),3.47(dd,J=13.7,5.1Hz,1H),3.11(dd,J=13.7,9.0Hz,1H),1.82(s,3H);13C NMR(100.5MHz,DMSO-d) 189.4,171.8,169.3,157.4,134.3,129.0,125.9,120.4,113.8,55.9,51.4,30.3,22.3ppm;MS(ES) m/z:298(M+H);HPLC:97.72%(マックスプロット220~400nm);元素分析(C1315NOS):計算値:C,52.51%;H,5.09%;N,4.71%;S,10.78% 実測値:C,52.58%;H,5.07%;N,4.82%;S,10.55%;[α] 25 -21.49(c 1.014,DMSO)。
【0102】
N51:(2R)-2-アセチルアミノ-3-(4-メチル-ベンゾイルスルファニル)-プロピオン酸(Pro-2023)の合成
【0103】
【化13】
【0104】
次の手順をKatritzky,A.R.;Tala,S.R.;Abo-Dya,N.E.;Ibrahim,T.S.;El-Feky,S.A.;Gyanda,K.;Pandya,K.M.,J.Org.Chem.,2011,76,85-96に報告されているチオエステル形成条件に基づいて実施した。
【0105】
(2R)-2-アセチルアミノ-3-(4-メチル-ベンゾイルスルファニル)-プロピオン酸N51,Ref.10-015-177-7)
1H-ベンゾトリアゾール(9.91g,83.2mmol)をTHF(80mL)中に含む溶液に4-メチル-ベンゾイルクロリド(5.00mL,37.8mmol)を添加した。2時間後、生じた固体を真空濾過により除去し、25mLのTHFで洗浄した。25mLのTHF洗浄液を含む生じた濾液を(2R)-2-アセチルアミノ-3-メルカプト-プロピオン酸(NAC,5.55g,34.0mmol)及びNMM(3.74mL,34.0mmol)をTHF(50mL)中に含む予冷溶液に添加した。氷浴を外した。一晩室温に置いたが、反応はH NMRにより完了していなかった。混合物を55℃に1時間加熱した。混合物にTFA(3.6mL)及び水(100mL)を添加した。溶液を真空中で濃縮して、THFの殆どを除去した。さらに水(80mL)及びジクロロメタン(180mL)を添加し、層を分離した。水性層をジクロロメタンで抽出した。有機層を合わせ、NaSOで乾燥し、酢酸エチル(100mL)を添加し、真空中で濃縮してジクロロメタンを除去した。結晶化を開始するために残存する酢酸エチル溶液を冷凍庫中に短時間置いた後、周囲温度で一晩放置した。得られた固体を真空濾過により集め、乾燥後3.28gが生じた。添加した若干のメタノールを含む濾液を85gのシリカゲルに吸着させた。バイオタージカラムクロマトグラフィー(330gのイスコ,ヘキサン-酢酸エチル 1:1(0.5CV)、次いでEtOAc-20% MeOH(1%AcOH)勾配)にかけると、2.62gの物質が生じた。EtOAc沈殿由来の固体及びカラムからの物質を合わせ、温MeCN/水 1:1混合物中に溶解した。MeCNを真空中で除去し、周囲温度で一晩放置した後に形成された沈殿を吸引濾過により集めた。標記化合物を白色固体として単離した。収量:4.81g(50%)。Mp 182~184℃;H NMR(399.7MHz,DMSO-d) 12.98(br.s,1H),8.38(d,J=7.8Hz,1H),7.82(d,J=8.0Hz,2H),7.37(d,J=8.0Hz,2H),4.47-4.42(m,1H),3.55(dd,J=13.7,5.1Hz,1H),3.23(dd,J=13.7,8.6Hz,1H),2.89(s,3H),1.84(s,3H);13C NMR(100.5MHz,DMSO-d) 189.9,171.7,169.3,144.6,133.6,129.6,127.0,51.4,29.9,22.3,21.2ppm;MS(ES) m/z:282(M+H);HPLC:94.77%(マックスプロット220~400nm);元素分析(C1315NOS):計算値:C,55.50%;H,5.37%;N,4.98%;S,11.40% 実測値:C,55.46%;H,5.33%;N,5.08%;S,11.66%;[α] 25 -23.74(c 1.0,DMSO)。
【0106】
N53:(2R)-2-アセチルアミノ-3-ベンジルオキシカルボニルスルファニル-プロピオン酸の合成
【0107】
【化14】
【0108】
次の手順をCrankshaw,D.L.;Berkely,L.I.;Cohen,J.F.;Shirota,F.N.;Nagasawa,H.T.,Journal of Biochemical and Molecular Toxicology,2002,16,235-244に報告されているチオカーボネート形成条件に基づいて実施した。
【0109】
(2R)-2-アセチルアミノ-3-ベンジルオキシカルボニルスルファニル-プロピオン酸N53,Ref.10-015-183-7)
(2R)-2-アセチルアミノ-3-メルカプト-プロピオン酸(NAC、4.02g,24.6mmol)を水(30mL)中に含む溶液に炭酸ナトリウム(2.64g,24.9mmol)、次いでTHF(30mL)を添加した。次いで、クロロギ酸ベンジル(7.73mL,54.1mmol)を添加した。1時間後、pHを~8に調節するためにさらに炭酸ナトリウムを添加した。更に0.5時間後、真空中で部分的に濃縮した。水性層をEtOAc(3×)で抽出した後、水性層を2N HClを用いてpH~3に酸性化した。エーテルを添加し、層を分離した。水性層をEtOAc(2×)で抽出し、有機層を合わせ、NaSOで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。バイオタージカラムクロマトグラフィー(330gのイスコ,1:1 hex/EtOAc(120mL)、次いでEtOAc-20% MeOH(1% AcOH)勾配,サンプルを若干のヘキサンを含むEtOAc中に充填)により精製して、標記化合物を白色固体として得た。収量:2.18g(30%)。Mp 146~148℃;H NMR(399.7MHz,DMSO-d) δ 12.98(br.s,1H),8.33(d,J=8.2Hz,1H),7.40-7.32(m,5H),5.27-5.20(m,2H),4.44-4.38(m,1H),3.35-3.30(dd,HOにより部分的に隠れている,1H),3.05(dd,J=14.0,8.6Hz,1H),1.81(s,3H);13C NMR(100.5MHz,DMSO-d) 171.6,169.6,169.4,135.2,128.5,128.4,128.3,68.9,51.5,32.1,22.3ppm;MS(ES) m/z:298(M+H);HPLC:98.22%(マックスプロット220~400nm);元素分析(C1315NOS):計算値:C,52.51%;H,5.09%;N,4.71%;S,10.78% 実測値:C,ペンディング%;H,ペンディング%;N,ペンディング%;S,ペンディング%;[α] 25 ペンディング(c,)。
【0110】
具体的方法
H-NMRスペクトルはバリアン・マーキュリー300MHz NMRで獲得した。純度(%)は210~400nmの2996ダイオードアレイ検出器を備えているウォーターズ・アライアンス2695 HPLC(ウォーターズ・シンメトリーC18,4.6×75mm,3.5μm)を用いて測定した。
【0111】
エチル(2R)-2-アセトアミド-3-(4-メチルベンゾイルスルファニル)プロパノエート(Pro-4051)の合成
【0112】
【化15】
2-アセチルアミノ-3-(4-メチル-ベンゾイルスルファニル)-プロピオン酸
【0113】
ベンゾトリアゾール(9.91g,83.2mmol)をテトラヒドロフラン(80mL)中に含む溶液に4-メチルベンゾイルクロリド(5.0mL,37.8mmol)(5g,95%)を添加した。2時間後、生じたスラリーを濾過し、固体をテトラヒドロフラン(25mL)で濯いだ。濾液を合わせ、0℃でN-アセチル-L-システイン(5.55g,34.0mmol)及びN-メチルモルホリン(3.74mL,34.0mmol)をテトラヒドロフラン(50mL)中に含む溶液に添加した。生じた混合物を16時間かけて周囲温度に加温した。混合物に水性塩酸(1M,100mL)を添加し、生じた混合物を減圧下で約125mLの容量に濃縮した。追加の水性塩酸(80mL)を添加し、混合物をジクロロメタン(180mL、次いで80mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を合わせ、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。酢酸エチル(100mL)を添加し、生じたスラリーを2時間撹拌した。生じたスラリーを濾過し、乾燥させて、白色固体(5.7g,60%)を得た。 H NMR(300MHz,DMSO) δ=12.94(s,1H),8.34(d,J=7.9Hz,1H),7.86-7.74(m,2H),7.35(d,J=8.5Hz,2H),4.43(dt,J=5.0,8.4Hz,1H),3.53(dd,J=5.0,13.8Hz,1H),3.21(dd,J=8.5,13.8Hz,1H),2.37(s,3H),1.83(s,3H);MS(ESI) m/z 282(M+1)
【0114】
【化16】
エチル(2R)-2-アセトアミド-3-(4-メチルベンゾイルスルファニル)プロパノエート
【0115】
2-アセチルアミノ-3-(4-メチル-ベンゾイルスルファニル)-プロピオン酸(1.1g,3.91mmol)及びトリエチルアミン(0.68mL,4.89mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中に含む溶液にヨードエタン(0.39mL,4.89mmol)を添加し、生じた溶液を周囲温度で18時間撹拌した。反応混合物を急速に撹拌しながら水(50mL)にゆっくり添加した。2時間撹拌した後、生じたスラリーを濾過し、固体を水で濯ぎ、真空下で乾燥して、生成物を白色固体(780mg,60%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO) δ=8.47(d,J=7.9Hz,1H),7.81(s,1H),7.80-7.78(m,1H),7.35(d,J=7.6Hz,2H),4.46(dt,J=5.3,8.1Hz,1H),4.09(q,J=6.8Hz,2H),3.50(dd,J=5.4,13.6Hz,1H),3.24(dd,J=8.2,13.8Hz,1H),2.37(s,3H),1.83(s,3H),1.16(t,J=7.0Hz,3H);MS(ESI) m/z 310(M+1)
【0116】
(2R)-2-アセトアミド-3-(4-メチルベンゾイルスルファニル)プロパンアミド(Pro-4051A)の合成
【0117】
【化17】
【0118】
2-アセチルアミノ-3-(4-メチル-ベンゾイルスルファニル)-プロピオン酸(500mg,1.78mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(686mg,3.58mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(483mg,3.58mmol)及びトリエチルアミン(0.50mL,3.58mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中に含む溶液に塩化アンモニウム(191mg,3.58mmol)を添加し、生じたスラリーを周囲温度で18時間撹拌し、その後溶液が形成された。混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、塩酸(0.1M,50mL)、飽和水性炭酸水素ナトリウム(50mL)で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮すると、油状物が生じた。この粗な生成物をヘキサン中50~100% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(12g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮して、生成物を白色固体(55mg,11%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO) δ=8.16(d,J=8.5Hz,1H),7.79(d,J=8.2Hz,2H),7.47(br.s.,1H),7.35(d,J=8.2Hz,2H),7.19(br.s.,1H),4.43(dt,J=5.4,8.3Hz,1H),3.42(dd,J=5.4,13.3Hz,1H),3.16(dd,J=8.4,13.3Hz,1H),2.32(s,3H),1.85(s,3H);MS(ESI) m/z 281(M+1)
【0119】
(2R)-2-アセトアミド-3-[(2-フェニルプロパン-2-イル)スルファニル]プロパンアミド(Pro-4006)の合成
【0120】
【化18】
(2R)-2-アミノ-3-(1-メチル-1-フェニル-エチルスルファニル)-プロピオン酸塩酸塩
【0121】
L-システイン塩酸塩(2g,12.7mmol)を水性塩酸(2M,30mL)中に含む溶液に2-フェニル-プロパン-2-オール(1.78mL,12.7mmol)を添加し、生じた混合物を油浴において65~75℃に18時間加熱した。反応混合物を冷却し、濾過し、水性塩酸(1M,10mL)で濯いで、白色固体(2.2g,63%)を得た。H NMR(300MHz,DMSO) δ=8.62(br.s,3H),7.55-7.43(m,2H),7.37-7.19(m,3H),7.23-7.17(m,1H),3.80(m,1H),2.70-2.64(m,2H),1.64(s,6H)。
【0122】
【化19】
(2R)-2-アセチルアミノ-3-(1-メチル-1-フェニル-エチルスルファニル)-プロピオン酸
【0123】
(2R)-2-アミノ-3-(1-メチル-1-フェニル-エチルスルファニル)-プロピオン酸塩酸塩(1.0g,3.63mmol)を水(5mL)及び1,4-ジオキサン(5mL)中に含む混合物に0℃でpH10まで水性水酸化ナトリウム(2M)を添加し、次いで無水酢酸(0.34mL,3.63mmol)を一滴ずつ添加した。反応混合物を16時間かけて周囲温度まで加温した。反応混合物を水性塩酸(1M)を用いてpH2に酸性化し、酢酸エチル(60mL×2)で抽出した。合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、粗な生成物を得た。これを更に精製することなく次ステップで使用した。
【0124】
【化20】
(2R)-2-アセトアミド-3-[(2-フェニルプロパン-2-イル)スルファニル]プロパンアミド
【0125】
(2R)-2-アセチルアミノ-3-(1-メチル-1-フェニル-エチルスルファニル)-プロピオン酸(400mg,1.42mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(545mg,2.84mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(384mg,2.84mmol)及びトリエチルアミン(0.40mL,2.84mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(2mL)中に含む溶液に塩化アンモニウム(152mg,2.84mmol)を添加し、生じたスラリーを周囲温度で18時間撹拌し、その後溶液が形成された。混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、塩酸(0.1M,50mL)、飽和水性炭酸水素ナトリウム(50mL)で順次洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮すると、油状物が生じた。この粗な生成物をヘキサン中50~100% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(12g)クロマトグラフィーにより精製した。精製した画分を合わせ、減圧下で濃縮して、生成物を白色固体(145mg,36%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO) δ=7.92(d,J=8.2Hz,1H),7.52-7.46(m,2H),7.37-7.28(m,3H),7.23-7.17(m,1H),7.04(s,1H),4.21(dt,J=6.0,8.1Hz,1H),2.47-2.32(m,2H),1.79(s,3H),1.62(d,J=4.1Hz,6H);MS(ESI) m/z 281(M+1)
【0126】
エチル(2R)-2-アセトアミド-3-(2-オキソ-1,3-チアゾリジン-4-カルボニルスルファニル)プロパノエート(Pro-4047)の合成
【0127】
【化21】
【0128】
L-2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸(6.0g,40.8mmol)、N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド塩酸塩(9.03g,47.1mmol)及びヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(6.4g,47.1mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(30mL)中に含む溶液に2-アセチルアミノ-3-メルカプト-プロピオン酸エチルエステル(6.0g,31.4mmol)を添加し、生じたスラリーを周囲温度で72時間撹拌した。この間に溶液が形成された。混合物を水性塩酸(0.2M,300mL)で希釈し、酢酸エチル(4×200mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和水性炭酸水素ナトリウム(150mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。この粗な生成物をヘキサン中30~100% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(120g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮した。生じた固体を酢酸エチル/ヘキサン(1:1,100mL)と摩砕し、濾過し、乾燥させて、生成物を白色固体(3.1g,31%)として得た。H NMR(300MHz,CDCl) δ=6.33-6.20(m,2H),4.87(ddd,J=4.7,5.9,7.5Hz,1H),4.43(ddd,J=1.8,3.5,8.5Hz,1H),4.22(dq,J=2.3,7.1Hz,2H),3.79(dd,J=8.5,11.4Hz,1H),3.62-3.51(m,2H),3.40-3.31(m,1H),2.05-2.02(m,3H),1.60(s,2H),1.31(t,J=7.2Hz,3H);MS(ESI) m/z 321(M+1)
【0129】
(6R)-1-ベンジル-6-(スルファニルメチル)ピペラジン-2,5-ジオンの合成
【0130】
【化22】
(2R)-2-ベンジルアミノ-3-トリチルスルファニル-プロピオン酸メチルエステル
【0131】
(2R)-2-アミノ-3-トリチルスルファニル-プロピオン酸メチルエステル(41g,109mmol)をメタノール(570mL)中に含む溶液にベンズアルデヒド(13.3mL,131mmol)を添加した。1.5時間後、反応混合物を氷浴を用いて冷却し、ホウ水素化ナトリウム(8.25g,218mmol)を20分間かけて少しずつ添加した。添加が完了したら、氷浴を外し、反応物を1時間かけて周囲温度まで加温した。次いで、生じた混合物を減圧下で濃縮した。生じた油状物を水(300mL)及び酢酸エチル(500mL)で希釈し、層を分離した。有機層を再び水(200mL)で洗浄し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗な生成物をヘキサン中0~20% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(330g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮して、生成物を無色油状物(30.5g,60%)として得た。H NMR(300MHz,CDCl) δ=7.44-7.37(m,6H),7.31-7.17(m,14H),3.69-3.62(m,4H),3.60-3.51(m,1H),3.14-3.07(m,1H),2.50(d,J=6.4Hz,2H)。
【0132】
【化23】
(6R)-1-ベンジル-6-{[(トリフェニルメチル)スルファニル]メチル}ピペラジン-2,5-ジオン
【0133】
(2R)-2-ベンジルアミノ-3-トリチルスルファニル-プロピオン酸メチルエステル(30.2g,64.6mmol)及びジイソプロピルエチルイミン(12.4mL,71mmol)をジクロロメタン(400mL)中に含む溶液に0℃でジクロロメタン(30mL)中のブロモアセチルブロミド(6.2mL,71mmol)を滴下漏斗を介して1滴ずつ添加した。反応混合物を2時間かけて周囲温度まで加温した。反応物をジクロロメタン(300mL)で希釈し、水性塩酸(0.5N,400mL)で抽出した。水性層をジクロロメタン(100mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。この粗な生成物にアンモニアをメタノール中に含む溶液(7M,200mL)を添加し、生じた溶液を周囲温度で64時間撹拌した。反応混合物を減圧下で濃縮した。生じた混合物を水性塩酸(200mL)と3時間激しく摩砕し、濾過した。固体をジクロロメタン中に溶解し、ヘキサン中0~70% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(330g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮して、生成物を白色固体(2ステップで14.1g,44%)として得た。H NMR(300MHz,CDCl) δ=7.42-7.37(m,6H),7.33-7.21(m,12H),7.02(dd,J=2.8,6.6Hz,2H),6.64(d,J=2.6Hz,1H),5.26(d,J=15.0Hz,1H),4.27(d,J=17.3Hz,1H),3.98-3.83(m,2H),3.20(d,J=15.0Hz,1H),2.94(dd,J=3.7,12.5Hz,1H),2.55(dd,J=5.0,12.6Hz,1H);MS(ESI) m/z 493(M+1)
【0134】
【化24】
(6R)-1-ベンジル-6-(スルファニルメチル)ピペラジン-2,5-ジオン
【0135】
(6R)-1-ベンジル-6-{[(トリフェニルメチル)スルファニル]メチル}ピペラジン-2,5-ジオン(13g,26.4mmol)をトリフルオロ酢酸(100mL)及びジクロロメタン(200mL)中に含む溶液に0℃でトリイソプロピルシラン(21.6mL,106mmol)を一滴ずつ添加した。添加が完了したら、反応混合物を2時間かけて周囲温度まで加温した。ヘプタン(100mL)を添加し、混合物を減圧下で濃縮した。粗な生成物をヘキサン中0~100% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(120g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮した。固体を酢酸エチル(50mL)と摩砕して、生成物をオフホワイト色固体(6.0g,90%)として得た。H NMR(300MHz,CDCl) δ=7.38-7.26(m,5H),6.63(br.s.,1H),5.20(d,J=15.0Hz,1H),4.43(d,J=17.3Hz,1H),4.16-4.05(m,3H),4.01(d,J=2.9Hz,1H),3.12(ddd,J=2.3,10.2,14.7Hz,1H),2.96(ddd,J=4.1,8.4,14.8Hz,1H),1.65(s,1H),1.41(dd,J=8.4,10.1Hz,1H);MS(ESI) m/z 251(M+1)
【0136】
【化25】
(6R)-6-[(ベンゾイルスルファニル)メチル]-1-ベンジルピペラジン-2,5-ジオン(Pro-4011)の合成
【0137】
(6R)-1-ベンジル-6-(スルファニルメチル)ピペラジン-2,5-ジオン(200mg,0.79mmol)をピリジン(3mL)中に含む撹拌溶液に0℃でベンゾイルクロリド(0.23mL,1.98mmol)を1滴ずつ添加し、添加が完了したら反応混合物を周囲温度まで加温し、24時間撹拌した。反応物を減圧下で濃縮し、ジクロロメタン(100mL)で希釈し、飽和水性炭酸水素ナトリウム(30mL)、次いで水性塩酸(0.1N,40mL)で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。粗な生成物をヘキサン中20~100% 酢酸エチルで溶離させるシリカゲル(20g)クロマトグラフィーにより精製した。精製画分を合わせ、減圧下で濃縮した。固体を酢酸エチル/ヘキサン(1:1,10mL)と摩砕して、生成物を白色固体(77mg,27%)として得た。H NMR(300MHz,DMSO) δ=8.37(d,J=3.5Hz,1H),7.92(d,J=7.8Hz,2H),7.74-7.67(m,1H),7.60-7.53(m,2H),7.37-7.24(m,5H),5.06(d,J=15.0Hz,1H),4.21-4.10(m,2H),4.04(dd,J=4.0,5.7Hz,1H),3.81-3.71(m,2H),3.55(dd,J=3.8,14.1Hz,1H),3.40-3.34(m,1H),3.32-3.25(m,1H);MS(ESI) m/z 355(M+1)
【0138】
実施例2.インビトロ研究
本発明の化合物による 14 C摂取
これらの実験の目的は、14C-シスチン摂取を調べることであった。
【0139】
実験は次のように実施した。
【0140】
化合物のスクリーニングは脳星状膠細胞腫由来のヒトグリア細胞(1321N1)のインビトロ細胞系を用いて実施した。細胞をポリ-D-リシン及びラミニンを被覆した24ウェルプレートで平板培養し、5% 熱不活化ウマ血清、5% ウシ胎児血清、2mM グルタミン及びグルコース(合計21mM)を補充した平衡塩溶液において増殖させた。実験を実施する前3~4日間培養物を加湿5% COインキュベーター中に37℃で維持した。この時点で培養物は単一コンフルエント層を形成した。実験のために、培養物をNaフリーHEPES及びHCO 緩衝平衡塩溶液に3回洗浄した。1時間後、試験化合物を添加した。3時間インキュベートした後、14C-シスチン(0.025mCi/mL)を20分間添加した。14C-シスチンに曝した後、培養物を氷冷HEPES緩衝生理食塩溶液を用いて3回洗浄し、250μlのナトリウムドデシルスルフェート(0.1%)中に溶解した。アリコート(200μl)を取り出し、カウンティング用シンチレーション流体に添加した。値を同一実験プレートの未処理対照における14C-シスチン摂取に対して正規化した。
【0141】
本発明の化合物による H-グルタメート放出
本アッセイも上記した脳星状膠細胞腫由来のヒトグリア細胞(1321N1)の細胞培養系を用いる。初めに、細胞をHBBSSで洗浄し、H-グルタメートを添加する(パーキンエルマー:1mCi/mLストック溶液を希釈し(30μL+500μL HBBSS)、各ウェルに10μLの希釈した放射標識を添加する)。細胞に標識したグルタメートを充填するために1時間インキュベートした後、細胞を再びHBBSSで洗浄し、薬物を添加する。30、90及び180分目に、各ウェルから50μLの細胞外培地をサンプリングし、ベックマンLS 6500シンチレーションカウンターを用いて測定する。
【0142】
異なる濃度のPro-2022、Pro-2023、Pro-4006、Pro-4011、Pro-4047、Pro-4051及びPro-4051aで処理した星状膠細胞による14C-シスチン摂取及びH-グルタメート放出の結果をそれぞれ図1、2及び5~9に未処理対照のパーセンテージとして表す。Pro-2024及びPro-3010については14C-シスチン摂取データのみ得た。放射標識したシスチン摂取に関するPro-2022の最も有効な濃度は、驚くことに未処理対照に比して約50%の増加を示している300μMであった。このデータから、思いもよらず標的(システムxc-)との相互作用が示唆される。グルタメート放出に関するPro-2022の最も有効な濃度は、約60%の増加を生じた100μMで3時間のインキュベーションであった。放射標識したシスチン摂取に関するPro-2023の最も有効な濃度は、14C-シスチン摂取において約45%の減少を生じた1000μMであり、代替基質、シスチン-グルタメートアンチポーター阻害剤及び有効なプロドラッグに限定されないプロセスによる14C-シスチン摂取の抑制を立証している。グルタメート放出に関するPro-2023の最も有効な濃度は、3時間目に約135%の増加を生じた300μMであり、14C-シスチン摂取がPro-2023からの直接競合により抑制される証拠である。放射標識したシスチン摂取に関するPro-2024の最も有効な濃度は、驚くことに増加を示した100μMであった。300及び1000μMの濃度では、放射標識したシスチン摂取のそれぞれ約30%及び35%の抑制を生じた。Pro-3010の最も有効な濃度は、放射標識したシスチン摂取において約75%の減少を生じた1000μMであった。Pro-4006の最も有効な濃度は、14C-シスチン摂取において約45%の減少を生じた30μMであり、対応して30分目でのH-グルタメート放出が35%増加した。関連するアナログを用いる以前の溶解性研究に基づいて、1000μM用量は多分溶解していないと推論される。にもかかわらず、我々は本データ組においてこの高濃度のPro-4006を含めた。Pro-4011の最も有効な濃度は、14C-シスチン摂取において約75%の増加を生じた100μMであり、対応して驚くことに3時間目のH-グルタメート放出は75%増加した。300及び1000μMデータポイントはアッセイ媒体中に沈殿が現れたために異常であり得、化合物は溶解していなかったと示唆される。Pro-4047は14C-シスチン摂取において約20~60%の減少を生じ、用量依存性の減少を示している。グルタメート放出に関するPro 4047の最も有効な濃度は、3時間目に約40%の増加を生じた100μMであった。Pro-4051の最も有効な濃度は、14C-シスチン摂取において約28%の減少を生じた100μMであった。このグラフは3回の実験ランの平均を表す。Pro-4051は溶解性データに従って316μM以上で溶解していない。H-グルタメート放出に関するPro-4051の最も有効な濃度は、3時間目に約100%の上昇を生じた300μMであった。Pro-4051aは14C-シスチン摂取の実質的抑制を生じなかった。これは、多分3時間インキュベーションはこの化合物の有効性の範囲内に入らないようである。H-グルタメート放出に関するPro-4051aの最も有効な濃度は、30分目に約180%の上昇を生じた1000μMであった。
【0143】
インビトロチオール実験
どのようなプロセスで14C-シスチン摂取の抑制が生ずるかを更に解明するために、細胞内システインレベルを測定する。
【0144】
実験は次のように実施した。
【0145】
グリア細胞及びニューロン細胞を含有している混合皮質細胞培養物を既に記載されているように胎児(妊娠15~16日目)マウスから作成した(Lobner D,Comparison of the LDH and MTT assays for quantifying cell death:validity for neuronal apoptosis?J.Neurosci Methods,2000,Mar.15,96(2),147-152)。解離させた皮質細胞をポリ-D-リシン及びラミニンを被覆した24ウェルプレートにおいて5% 熱不活化ウマ血清、5% ウシ胎児血清、2mM グルタミン及びグルコース(合計21mM)を補充したイーグル最小必須培地(MEM,アール塩、供給したグルタミンフリー)中で平板培養した。培養物を加湿5% COインキュベーターにおいて37℃で維持した。マウスを我々の動物管理委員会が認可したプロトコルに従って、実験動物の人道的管理と使用に関する公衆衛生サービスポリシーに従って取り扱った。
【0146】
インビトロで14日間の混合皮質細胞培養物(これにより、星状膠細胞のコンフルエント層が形成され、ニューロンは軸索と樹状突起の複雑なネットワークを生ずる)を重炭酸塩緩衝塩溶液で洗浄した。1時間後、3、10、30、100μMのPro-4047またはPro-4051を添加し、細胞を30または90分間インキュベートし、その後細胞を十分に洗浄し、250μLの水性移動相(50mM クエン酸,10mM オクタンスルホン酸,pH2.8)を添加し、37℃で10分後細胞をプレートからこすり取り、分析用1.5mLチューブに移した。
【0147】
次いで、サンプルをフィッシャー・サイエンティフィック60音波切断装置を用いて音波処理した。このホモジネートの1つの画分をピアースBCA(ビシンコニン酸)方法を用いて分析して、タンパク質濃度を測定した。他の画分を3K分子量カットオフ,ポリエーテルスルホン遠心タンパク質フィルターを用いて濾過し、チオール含量をHPLC(ALF-115カラム,150×1.0mm,3μM C18[Pro-2023分析はフェノメネクス・キネテクス2.6μM,C18,100A,150×2.1mmを使用し、Pro-4047分析はフェノメネクス・キネテクスX-B,C18,100A,2.6μM,150×4.4mmを使用した];移動相:50mM クエン酸,10mM オクタンスルホン酸,2% アセトニトリル,pH2.8,流速50μL/分[Pro-2023分析は流速100μL/分を使用し、Pro-4047分析は1% アセトニトリル及び流速0.4mL/分を使用した]、電気化学検出(デカードII,Au作用電極,フレックスセルHyREF,0.55V,オランダ国のAntec Leyden[Pro-4047分析はマジックダイアモンド作用電極及び1.8Vを使用した])を用いて分析した。
【0148】
細胞内チオールアッセイを開始した場合、データはすべてタンパク質濃度に正規化した。しかしながら、タンパク質方法は対照サンプルにおいて一致した結果を生じなかったので、この正規化方法をあきらめた。本明細書中に提示したデータは集めたサンプルの生システイン濃度を表す。結果は、Pro-2023を100μMで投与すると30分目に細胞内システイン濃度が0.16μM(対照の約1.6倍;図10)に上昇することを立証している。10μMのPro-4006は30分目に細胞内システイン濃度を0.07μM(対照の約3.5倍;図11)に上昇させる。10μMのPro-4011は30分目に細胞内システイン濃度を0.138μM(対照の約1.16倍;図12)に上昇させる。300μMのPro-4047は90分目に細胞内システイン濃度を0.74μM(対照の約4.9倍;図13)に上昇させる。図14は、100μMでPro-4051を投与すると90分目に細胞内システイン濃度0.36μM(対照の約4倍)に上昇させることを立証している。最後に、図15は、100μMでPro-4051aを投与すると30分目に細胞内システイン濃度を0.21μM(対照の約3倍)に上昇させることを立証している。これらの結果は、Pro-2023、Pro-4006、Pro-4011、Pro-4047、Pro-4051及びPro-4051aが効果的に開裂して、細胞内システインを上昇させることを立証している。よって、3つのインビトロ実験に基づいて、Pro-2023、Pro-4006、Pro-4011、Pro-4047、Pro-4051及びPro-4051aは有効なシステインプロドラッグとして働いているようである。
【0149】
実施例4.インビボ研究
プレパルス抑制実験
本実験の目的は、統合失調症の予測動物モデルにおいて試験化合物の有効性を立証することであった。
【0150】
実験は次のように実施した。
【0151】
動作検知プレート上に載せた消音チャンバ(10.875”×14”×19.5”;カリフォルニア州のハミルトン・キンダー)内のプラットフォームにラットを置いた。すべてのセッション中、バックグラウンドノイズは60dBに一定に保った。マッチングセッションは各ラットの平均驚愕応答の大きさを測定するために実施した。このセッションは、5分間の馴化期間、次いで1回の聴覚刺激(パルス刺激;バックグラウンドノイズより50dB上)を提示する17回のトライアル;及びパルス聴覚刺激前にプレパルス刺激(バックグラウンドノイズより12db上)を100ms提示する3回のトライアル;の20回のトライアルから構成されていた。次いで、驚愕応答の大きさがすべての群にわたって均等であるようにラットを各種処置群に割り当てた。2日後、感覚運動ゲーティングを評価するために試験セッションを実施した。試験の1時間前にラットにプロドラッグ(0~100mg/kg,P.O.)、55分後に急性MK-801マレエート(0.1mg/kg,SC)を与えた。試験セッションは5分間の馴化期間から構成され、その後ラットにパルス刺激(バックグラウンドより50db上)のみを提示する26回のトライアル;それぞれプレパルス刺激(バックグラウンドより5,10または15db上)がパルス刺激に先行する8回のトライアル;及びパルスなしの8回のバックグラウンドトライアル(刺激なし;バックグラウンドノイズのみ);の58回の別々のトライアルを与えた。最初の6回のパルス単独トライアルは、それぞれ驚愕反応性の比較的安定なレベルを達成するための平均驚愕刺激に含めなかった。すべての驚愕応答はビヒクル対照に正規化し、プレパルス抑制のパーセントを100-(平均プレパルス驚愕応答/平均驚愕刺激のみ)*100として調べた。
【0152】
図16はPro-2023についての平均プレパルス抑制を示す。棒グラフが示すように、10mg/kg濃度でのプレパルス抑制%は、MK-801及びビヒクルの両方を受けた対照群の場合の約16%と対照的に、約30%であった。このアッセイ(クロザピンを含む)における類似の用量-応答曲線と一致して、化合物は高用量で逆U字型用量応答を生じた。臨床的に使用されている神経遮断薬の効果と一致するこれらのデータから、統合失調症の齧歯類モデルにおいて抗精神病薬様活性が示唆される。
【0153】
図17はPro-4047についての平均プレパルス抑制を示す。棒グラフが示すように、3mg/kg濃度でのプレパルス抑制%は、MK-801及びビヒクルの両方を受けた対照群の約16%と対照的に、約23%であった。初代細胞をベースとするアッセイにおける活性にもかかわらず、このモデルにおける有効性の一般的低下は、多分治療ウィンドウが試験した1つの時点を外したような薬物動態パラメーターに起因している。加えて、これは高用量(例えば、30または60mg/kg)が効果を生じ得る試験した用量範囲のためであり得る。
【0154】
図18はPro-4051についての実験の結果を示す。棒グラフが示すように、10mg/kg濃度でのプレパルス抑制%は、MK-801及びビヒクルの両方を受けた対照群の約16%と比較して、約46%であった。
【0155】
これらの結果は、この化合物がプレパルス抑制において統合失調症様MK-801誘発性欠乏を大きく改善することを意味している。
【0156】
高架式十字迷路
本実験の目的は、試験化合物がCNSに浸透する能力を立証することであった。
【0157】
実験は次のように実施した。
【0158】
ラットを標準の高架式十字迷路で試験した。試験は迷路上に載せた2つのライトのみを使用して薄暗い照明の部屋において行った。動物は処置前少なくとも1時間部屋に慣らした。試験前1時間、ラットに本発明の化合物(0~30mg/kg,P.O.)を与えた。試験のために、ラットをオープンアームに面する出発位置とクローズドアームに面する出発位置を交互にして高架式十字迷路に5分間置いた。セッションを記録し、処置が伏せられているオブザーバーが探索回数、進入及びオープンアーム中の滞在時間を記録した。探索はラットがオープンアームに完全に進入することなく該アームに2つの足を置くことと規定される。進入はラットがオープンアームに4つすべての足を置くことと規定される。オープンアーム中の滞在時間はラットの足の2つがオープンスクエアに戻るまでラットが4つの足をオープンアームに置いた時間から記録した。
【0159】
本発明の化合物を投与した後、ラットは迷路のオープンアーム上に滞在した時間が増え、少ない不安及び統合失調症に関連する症状の効果的緩和が立証された。具体的には、図19に示すように、10または30mg/kg,PO(経口)のPro-2023で処置したラットはオープンアーム上に27秒くらい滞在した。これは、オープンアーム上に滞在した時間の約100%の延長に相当する。図20に示すように、10mg/kg,PO(経口)のPro-4047で処置したラットはオープンアーム上に22秒くらい滞在し、これは対照と比較して有意な延長ではない。これは、治療ウィンドウが試験した1つの時点を外したような薬物動態のためであり得る。加えて、これは試験した用量範囲が閾値下用量であり得、サンプルサイズが統計上有意を達成するには小さすぎているためであり得る。図21に示すように、10mg/kg,PO(経口)のPro-4051で処置したラットはオープンアーム上に48秒くらい滞在し、すなわち対照に比して約150%の延長であった。図22に示すように、10mg/kg,PO(経口)のPro-4051aで処置したラットはオープンアーム上に22秒くらい滞在し、これは対照に比して有意な延長ではない。よって、Pro-2023及びPro-4051はインビボで統合失調症に関連する症状を緩和する能力を立証している。
【0160】
経口投与後のNAC及びグルタチオンの脳レベル
本実験の目的は、C57BL/6マウスの脳における試験化合物の薬物動態特性を立証することであった。
【0161】
実験は次のように実施した。
【0162】
本発明の化合物を10または100mg/kgでC57BL/6マウスに経口投与した。経口投与から0.25、0.50、1、2及び4時間後に脳サンプルを集めた。脳サンプル中のNAC及びグルタチオンのレベルを液体クロマトグラフィー-質量分光法(LC-MS/MS)を用いて定量した。
【0163】
図23はPro-2023を経口投与後の脳中に存在しているNACのレベルを示す。100mg/kgのPro-2023を経口投与すると、0.5時間目に約2,000pmol/gの脳組織、またはビヒクル(約1,600pmol/g)の約1.25倍のNACが脳中に存在していた。驚くことに、1時間目、NACは脳中に約1,900pmol/gで残存しているのに対して、対照は約1,400pmol/gに戻った。この結果はNACと対照間の1.35倍の差に相当する。
【0164】
図24はPro-2024の経口投与後の脳中に存在しているNACのレベルを示す。100mg/kgのPro-2024を経口投与すると、1.0時間目に約1,800pmol/gの脳組織、またはビヒクル(約1,400pmol/g)の約1.29倍のNACが脳中に存在していた。
【0165】
図25はPro-4051を経口投与後の脳中に存在しているNACのレベルを示す。Pro-4051を経口投与すると、0.25時間目に約4,500pmol/gの脳組織、またはビヒクル(約750pmol/g)の約6倍のNACが存在していた。驚くことに、同じ時点で、Pro-4051を経口投与すると、NACはNACそれ自体(約1,500pmol/g)の経口投与よりも約3倍以上で脳中に存在していた。
【0166】
図26はPro-2023を経口投与後の脳中に存在しているグルタチオンのレベルを示す。NACがグルタチオンの細胞内レベルを上昇させることは知られている。100mg/kgのPro-2023を経口投与すると、4時間目に約200nmol/gの脳組織、またはビヒクル(約95nmol/g)の約2倍のグルタチオンが脳中に存在していた。
【0167】
図27はPro-2024を経口投与後の脳中に存在しているグルタチオンのレベルを示す。10mg/kgのPro-2024を経口投与すると、4.0時間目に約190nmol/gの脳組織、またはビヒクル(約95nmol/g)の約2倍のグルタチオンが脳中に存在していた。
【0168】
図28はPro-3010を経口投与後の脳中に存在しているグルタチオンのレベルを示す。100mg/kgのPro-3010を経口投与すると、4.0時間目に約195nmol/gの脳組織、またはビヒクルの約2倍(約95nmol/g)のグルタチオンが脳中に存在していた。
【0169】
図29は、Pro-4051を経口投与後の脳中に存在しているグルタチオンのレベルを示す。100mg/kgのPro-4051を経口投与すると、4.0時間目に約1960nmol/gの脳組織、またはビヒクル(約1870nmol/g)の約1.05倍のグルタチオンが脳中に存在していた。
【0170】
これらの結果は、Pro-2023またはPro-4051、多分Pro-2024の経口投与はNACそれ自体の経口投与よりも脳中のNACレベルをより効果的に上昇させることができ、よって現在高用量のNACに応答しているCNS疾患、例えば統合失調症の治療のためにNACよりもより有効であり得ることを立証している。加えて、Pro-3010と共にこれらの化合物は脳中のグルタチオンを上昇させ得ることを示した。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6-1】
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図7-1】
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図8-1】
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図9-1】
図9-2】
図10
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