(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】紙製容器およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
B65D 3/02 20060101AFI20221107BHJP
B65D 3/20 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
B65D3/02 B
B65D3/20 A
(21)【出願番号】P 2021503481
(86)(22)【出願日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2020004641
(87)【国際公開番号】W WO2020179350
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2019041047
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【氏名又は名称】畠山 順一
(72)【発明者】
【氏名】光石 拓己
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】意匠登録第1559097(JP,S)
【文献】米国特許出願公開第2012/0286027(US,A1)
【文献】実公平02-031370(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/02
B65D 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と、
前記底部から立設される胴部と、
前記胴部上部から罫線に沿って内側に折り込まれて形成される右フラップおよび左フラップと、
前記左右のフラップの一端側にて、前記胴部上部から罫線に沿って外側に折り込まれて形成される襟部と、
前記左右のフラップの他端側にて、前記胴部上部から罫線に沿って内側に折り込まれて形成される差込フラップと、
を備え、
前記右フラップと左フラップとが重なって、前記胴部が形成する開口を覆い、
前記右フラップおよび左フラップとは差込フラップ側にスリットを有し、
前記差込フラップは前記スリットに差し込まれ、前記左右のフラップの重なり状態を維持し、
前記胴部と前記左右のフラップとの間には、
前記左右のフラップ側の第1円弧状罫線と、
前記胴部側の第2円弧状罫線と、
が併設されて、
前記襟部には、
前記第1円弧状罫線に対応する罫線と、
前記第2円弧状罫線に対応する罫線と、
が設けられている
ことを特徴とする紙製容器。
【請求項2】
前記第2円弧状罫線は、前記差込フラップの罫線の端部近傍に設けられる仮想回転中心に対し、前記第1円弧状罫線を3~7度回転させる位置にある
ことを特徴とする請求項1記載の紙製容器。
【請求項3】
ブランク状態にて、前記左右のフラップ、襟部、差込フラップの外縁が、円弧上に形成されている
ことを特徴とする
請求項1または2記載の紙製容器。
【請求項4】
前記スリットは、前記差込フラップの厚み以上の幅を有する
ことを特徴とする
請求項1~3いずれか記載の紙製容器。
【請求項5】
前記差込フラップと前記左右のフラップとの間には、切り欠けが設けられている
ことを特徴とする
請求項1~4いずれか記載の紙製容器。
【請求項6】
前記胴部は、前記差込フラップ側に接合部を有する
ことを特徴とする
請求項1~5いずれか記載の紙製容器。
【請求項7】
前記第1円弧状罫線にて折り込み、広い飲み口を形成するか
または
前記第2円弧状罫線にて折り込み、狭い飲み口を形成するか
を選択する
ことを特徴とする請求項1記載の紙製容器の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋機能のある紙製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品の一部は適切に処理しきれずに、海洋汚染の遠因となっている。近年、環境問題に配慮し、大手飲食店を中心に、プラスチック製ストローを廃止する動きが広がっている。
【0003】
飲料用容器には、紙製容器とプラスチック製容器がある。上記配慮により、紙製容器を用いることも多い。しかしながら、紙製容器(本体)を用いても容器の蓋はプラスチック製であることが多い。
【0004】
そこで、各容器メーカーは、蓋機能のある紙製容器を提案している(例えば特許文献1~3)。これらの容器は、胴部上辺に複数のフラップを連設し、フラップ同士を重ねて、胴部上部の開口を覆い、簡易な蓋としている。全て紙製であるため、廃棄が容易である。しかしながら、フラップに係る構成が些か複雑であり、その結果、組み立ても容易でない。
【0005】
ところで、飲料用容器の中間製品は工場で製造するものの、飲料を入れた後、飲食店の店員が蓋をするため、組み立て容易であることが好ましい。
【0006】
上記紙製容器に対し、本願出願人は、蓋機能があり、組み立て容易な紙製容器を試作している(特許文献4)(比較例)。なお、特許文献4は意匠出願公報であり、物品の外観に係る説明はあるものの、技術的内容は殆んど開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4853603号公報
【文献】特許第5282942号公報
【文献】特許第6151772号公報
【文献】意匠登録第1559097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図9は、比較例に係る紙製容器100の概略構成を示す図である。
【0009】
紙製容器100は、底部1と、底部1から立設される胴部2と、胴部2上辺に連設される右フラップ111、左フラップ112、襟部113、差込フラップ114とを備える。
【0010】
右フラップ111および左フラップ112は、胴部2との境界である円弧状罫線130沿って内側に折り込まれて形成される。左右のフラップ111,112は差込フラップ側にスリット126を有する。
【0011】
襟部113は、左右のフラップ111,112の一端側にて、胴部2上部から罫線に沿って外側に折り込まれて形成される。
【0012】
差込フラップ114は、左右のフラップ111,112の他端側にて、胴部2上部から罫線に沿って内側に折り込まれて形成される。
【0013】
まず、襟部113を外側に折り、右フラップ111と左フラップ112とを重ね、胴部2が形成する開口3を覆う。
【0014】
さらに、スリット126に差込フラップ114を差し込む。これにより、左右のフラップ111,112のフラップの重なり状態が維持される。
【0015】
一方、襟部113において飲み口116が形成される。このとき、消費者の唇に当たる箇所では、鋭利な紙端面が露出しない。そのため、消費者は不快な思いをすることがない。
【0016】
このように、比較例に係る紙製容器100は、蓋機能を有し、構成が簡単であり、組み立てが容易である。
【0017】
本発明は、比較例の特徴を維持しつつ、比較例に改良を加えることにより、利便性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するために、本発明の紙製容器は、底部と、前記底部から立設される胴部と、前記胴部上部から罫線に沿って内側に折り込まれて形成される右フラップおよび左フラップと、前記左右のフラップの一端側にて、前記胴部上部から罫線に沿って外側に折り込まれて形成される襟部と、前記左右のフラップの他端側にて、前記胴部上部から罫線に沿って内側に折り込まれて形成される差込フラップと、を備える。前記右フラップと左フラップとが重なって、前記胴部が形成する開口を覆う。前記右フラップおよび左フラップとは差込フラップ側にスリットを有する。前記差込フラップは前記スリットに差し込まれ、前記左右のフラップの重なり状態を維持する。前記胴部と前記左右のフラップとの間には、前記左右のフラップ側の第1円弧状罫線と、前記胴部側の第2円弧状罫線と、が併設されている。
【0019】
左右のフラップを第1円弧状罫線にて折り込むことにより、広い飲み口が形成される。左右のフラップを第2円弧状罫線にて折り込むことにより、狭い飲み口が形成される。飲み口の幅を適宜選択することにより、利便性が向上する。
【0020】
さらに好ましくは、前記第2円弧状罫線は、前記差込フラップの罫線の端部近傍に設けられる仮想回転中心に対し、前記第1円弧状罫線を3~7度回転させる位置にある。
【0021】
これにより、飲み口の幅を調整する際の、差込フラップ側への影響を軽減できる。つまり、形状を多少変形しても、全体への影響は軽微である。
【0022】
さらに好ましくは、前記襟部には、前記第1円弧状罫線に対応する罫線と、前記第2円弧状罫線に対応する罫線と、が設けられている。
【0023】
これにより、襟部に飲み口が形成される。飲み口の幅を選択できる。
【0024】
さらに好ましくは、ブランク状態にて、前記左右のフラップ、襟部、差込フラップの外縁が、円弧上に形成されている。
【0025】
すなわち、ブランク概形は扇状であり、一般的な胴部ブランクと実質的に同じである。既存の装置や既存の製法を転用できる。
【0026】
さらに好ましくは、前記スリットは、前記差込フラップの厚み以上の幅を有する。
【0027】
これにより、差し込みやすく、抜けにくい差込構造とすることができる。
【0028】
さらに好ましくは、前記差込フラップと前記左右のフラップとの間には、切り欠けが設けられている。
【0029】
これにより、差し込みやすく、抜けにくい差込構造とすることができる。
【0030】
さらに好ましくは、前記胴部は、前記差込フラップ側に接合部を有する。
【0031】
これにより、容器把持に伴う容器変形を抑制する。
【0032】
上記の目的を達成するために、本発明の紙製容器の使用方法では、前記第1円弧状罫線にて折り込み、広い飲み口を形成するか、または、前記第2円弧状罫線にて折り込み、狭い飲み口を形成するかを選択する。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、蓋機能があり、構成が簡単であり、組み立てが容易である。
【0034】
本発明によれば、広い飲み口か狭い飲み口かを選択できる。狭い飲み口を選択すれば、熱い飲料等を少しずつ飲むことができる。また、蓋機能(閉塞性)も向上する。広い飲み口を選択すれば、冷たい飲み物等を一気に飲むことができる。当該選択は、店員または消費者により容易になされる。これにより利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【発明を実施するための形態】
【0036】
~基本形状~
本実施形態の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る紙製容器10の概略構成図である。
図1Aは、斜め後ろ側からみた斜視図であり、
図1Bは、斜め前側からみた斜視図である。
【0037】
紙製容器10は、底部1と、底部1から逆錐台状に立設される胴部2と、胴部2上辺に連設される右フラップ11、左フラップ12、襟部13、差込フラップ14とを備える。
【0038】
図示の例では底部1は円形であるが、角を面取した四角形でも良い。また、多角形でも良い。
【0039】
右フラップ11と左フラップ12とが重なって胴部2が形成する開口3を覆い、蓋として機能する。
【0040】
左右のフラップ11,12は差込フラップ側にスリット26を有する。差込フラップ14はスリット26に差し込まれ、左右のフラップ11,12の重なり状態を維持する。
【0041】
一方、襟部13において飲み口16が形成されている。
【0042】
~組み立て~
図2は胴部等のブランク展開図である。
図3は、フラップ折込動作(折込方向)を説明する図である。
【0043】
胴部2およびフラップ11~14は、一枚の扇状ブランクに形成されている。フラップ11~14は、胴部2の扇状上辺から延設されている。図示の例では、ブランク状にて、右から、差込フラップ14の半分、左フラップ12、襟部13、右フラップ11、差込フラップ14の半分の順に配置されている。フラップ11~14の外縁は、扇状の外周と一致し、同一の円弧上に形成される。
【0044】
フラット形状を丸めて、端部同士を重ねて接合し、逆錐台状とし、胴部2を形成する。底部1は別途形成され、胴部2形成後、胴部下部に接合される。襟部13は左右のフラップ11,12の一端側に形成され、差込フラップ14は左右のフラップ11,12の他端側に形成される。
【0045】
まず、襟部13を胴部2上部から罫線21に沿って外側に折り込む。ついで、右フラップ11および左フラップ12を、円弧状罫線30に沿って内側に折り込む(詳細後述)。これにより、右フラップ11と左フラップ12とが重なり、胴部2が形成する開口3を覆う。その際、左右のフラップ11,12の差込フラップ側にはスリット26が形成される。
【0046】
さらに、差込フラップ14を胴部2上部から罫線22に沿って内側に折り込み、スリット26に差込フラップ14を差し込む。これにより、左右のフラップ11,12の重なり状態が維持される。
【0047】
一方、左右のフラップ11,12の折込に伴い、襟部13もコの字状に折り込まれ、飲み口16が形成される。このとき、消費者の唇に当たる箇所は罫線21であり、鋭利な紙端面が露出しない。そのため、消費者は不快な思いをすることがない。
【0048】
このように、本実施形態に係る紙製容器10は構成が簡単であり、組み立てが容易である。
【0049】
~特徴的構成1~
図4は、円弧状罫線30の詳細構成図である。
【0050】
円弧状罫線30は、左右のフラップ側(図示上側)の第1円弧状罫線31と、胴部側(図示下側)の第2円弧状罫線32と、が併設されて、形成される。
【0051】
差込フラップ14の罫線22の端部近傍、具体的には、差込フラップ14の罫線22の延長線と、第1円弧状罫線31の延長線との交わる箇所に仮想回転中心点35を設ける。
【0052】
第2円弧状罫線32は、仮想回転中心35に対し、第1円弧状罫線を3~7度(例えば5度)回転させた位置にある。すなわち、第1円弧状罫線31と第2円弧状罫線32との差込フラップ側の起点は共通である。
【0053】
襟部13には、第1円弧状罫線31に対応する罫線36と、第2円弧状罫線32に対応する罫線37とが、ブランク状態にて放射状に形成されている。なお、襟部13が折り返されると、第1円弧状罫線31と罫線36とは一致し、第2円弧状罫線32と罫線37とは一致する。
【0054】
~使用方法~
図5は、使用時の基本動作を説明する図である。上記特徴的構成により、飲み口16の幅を選択できる。
【0055】
第1円弧状罫線31および対応する罫線36にて折り込むことにより、広い飲み口が形成される。
【0056】
第2円弧状罫線32および罫対応する線37にて折り込むことにより、狭い飲み口が形成される。さらに、左右のフラップ11,12の重なりラップ幅が増え、蓋機能(閉塞性)も向上する。
【0057】
このとき、第1円弧状罫線31と第2円弧状罫線32との差込フラップ側の起点は共通であるため、差込フラップ14側への影響は少ない(詳細後述)。
【0058】
本実施形態に係る紙製容器10は構成が簡単であり、当該選択は店員または消費者により容易になされる。
【0059】
例えば、飲食店店員が消費者に飲料の入った紙製容器を渡す時には、狭い飲み口を選択する。これにより、蓋機能が向上する。消費者は、飲料の入った紙製容器を店外に持ち出すこともできる。
【0060】
消費者は、好みに応じて、飲み口16の幅を選択できる。例えば、狭い飲み口を選択すれば、熱い飲料等を少しずつ飲むことができる。また、子供や老人のように少しずつ飲む方が好ましい場合もある。広い飲み口を選択すれば、冷たい飲み物等を一気に飲むことができる。また、若者や運動直後など一気に飲む方が好ましい場合もある。
【0061】
図6は、使用方法の変形例である。
図5では、最も広い飲み口の例と最も狭い飲み口の例を示した。本実施形態はこれに限定されず、任意の幅に調整可能である。
【0062】
第1円弧状罫線31、罫線36および第2円弧状罫線32、罫線37の両方を折ることにより、第1円弧状罫線31と第2円弧状罫線32との間に連結面17が形成される。罫線の折り具合、結果的には、連結面17の傾斜により、飲み口16の幅を調整できる。
【0063】
連結面17が鉛直に近づけば、最も広い飲み口の例に近くなる。連結面17が水平に近づけば、最も狭い飲み口の例に近くなる。
【0064】
~円弧状罫線変形例~
図7は円弧状罫線の変形例である。上記実施形態では、第1円弧状罫線31と第2円弧状罫線32との2本の円弧状罫線が併設されている。これに限定されず、3本の円弧状罫線が併設されていてもよい。
【0065】
変形例において、第3円弧状罫線33は、仮想回転中心35に対し、第1円弧状罫線を例えば10度回転させた位置にある。襟部13には、第3円弧状罫線33に対応する罫線38が、放射状に形成されている。
【0066】
第3円弧状罫線33および対応する罫線38にて折り込むことにより、閉じた飲み口が形成される。これにより、蓋機能がさらに向上する。
【0067】
図8は円弧状罫線の別の変形例である。第2円弧状罫線32および対応する罫線37に代えて、第3円弧状罫線33および対応する罫線38を設ける。連結面17の傾斜により、飲み口16の幅を調整する。
【0068】
~特徴的構成1まとめ~
図9は、比較例に係る紙製容器100の概略構成である(詳細前述)。
図9Aは、斜め後ろ側からみた斜視図であり、
図9Bは、斜め前側からみた斜視図である。
【0069】
本願実施形態は、紙の柔軟性に着目し、比較例の紙製容器100に特徴的構成1(円弧状罫線31,32併設)を付加するものである。その結果、比較例と比較して、飲み口幅調整や蓋機能向上などの効果が得られる。状況に応じて容易に選択、調整でき、利便性が向上する。
【0070】
また、本願実施形態は、比較例と同様に、構成が簡単であり、組み立てが容易である。
【0071】
~特徴的構成2~
本願実施形態において、さらに比較例に付加する特徴的構成2と、その効果について、比較例と対比しながら説明する。
【0072】
図10上段は、ブランク要部の対比(A:比較例,B:本実施形態)である。
図10下段は、差込構造の対比である。
【0073】
まず、スリット幅の有無について説明する。
【0074】
比較例では、左右のフラップ111,112に形成されたスリット126は幅を有さない。すなわち、線状に切断されているのみである。
【0075】
これに対し、本実施形態では、左右のフラップ11,12に形成されたスリット26は差込フラップ14の厚み以上の幅(たとえば1~3mm)を有する。
【0076】
比較例では、紙の柔軟性を利用してスリット126周辺を変形させて隙間を形成し、差込フラップ114を差し込む。この差込構造であれば、線状スリットでも問題ない。
【0077】
ところで、本実施形態では、第2円弧状罫線32および罫対応する線37にて折り込むことにより、左右のフラップ11,12の重なりラップ幅が増える。このとき、第1円弧状罫線31と第2円弧状罫線32との差込フラップ側の起点は共通であるため、差込フラップ14側への影響は少ない。ただし、左右のフラップ11,12が微小回転するに伴い、直線状のスリット26がややL字状に変形する。
【0078】
このとき、スリット26に幅がないと差込フラップ14を差し込みにくくなる。本実施形態では、スリット26に幅を持たせることにより、遊びをつくり、スリット26がL字状に変形しても差込フラップ14を差込みやすくしている。
【0079】
次いで、切り欠けの有無について説明する。
【0080】
比較例では、左右のフラップ111,112と差込フラップ114が連結部127を介して連結している。連結部127は、左右のフラップ111,112の端辺、差込フラップ114の端辺、ブランク外縁により、三角形状を形成する。
【0081】
これに対し、本実施形態では、左右のフラップ11、12と差込フラップ14との間には、切り欠け27が設けられている。
【0082】
比較例では、紙の弾性を利用して、連結部127がバネとして機能する。線状スリット126に差込フラップ114が差し込まれると、バネによる押圧により、差込フラップ114が確実に左右のフラップ111、112に係合する。
【0083】
これに対し、本実施形態では、スリット26は幅(遊び)を有する。そのため、連結部によるバネが強すぎると、差込フラップ14が抜けやすくなる。本実施形態では、切り欠け27を設けることにより、バネの力を抑制している。また、線状スリット126に比べてスリット26位置を差込フラップ側に配置して、差込フラップ14の差込長(たとえば、差込フラップ14長さの1/4)を十分に確保している。これにより、バネの力に頼らずとも、抜けにくくなる。
【0084】
比較例では、バネの力が強すぎ、差込フラップ114を線状スリット126に差し込むのに、力を要した。これに対し、本実施形態では、バネの力が抑制されており、差込フラップ14をスリット26に容易に差し込むことができる。
【0085】
以上のように、比較例に比べ、差し込みやすく、抜けにくい差込構造になっている。なお、飲み口幅を調整しても、当該効果は変わらない。
【0086】
~特徴的構成3~
本実施形態では、差込フラップ側に胴部2の接合部28を有する。
図11は、胴部接合部28の効果を説明する図である。
【0087】
図示奥側に飲み口16が形成されている。消費者が飲料を飲むため、紙製容器10を把持するとき、親指は襟部13近傍に位置する。襟部13は折返しにより形成されており、他の部分に比べて高剛性である。
【0088】
一方、親指以外の四指は胴部接合部28に沿って位置する。胴部接合部28も他の部分に比べて高剛性である。
【0089】
ところで、容器の剛性が乏しい場合、容易把持の際、容器が大きく変形し、中味の飲料が飛び出るおそれもある。
【0090】
本実施形態では、上記高剛性箇所により、把持による容器変形を抑制できる。
【0091】
なお、容器剛性が充分な場合は、上記限定は不要である。
図12は、変形例に係る胴部等のブランク展開図である。変形例では、右フラップ側に胴部2の接合部28を有する。
【0092】
~特徴的構成4~
図2に戻り、ブランクについて説明する。本実施形態では、胴部2およびフラップ11~14は、一枚の扇状ブランクより形成されている。すなわち、一般的な胴部ブランクと実質的に同様である。したがって、既存の装置や既存の製法を転用できる。
【0093】
図13は、扇状ブランクの配置例である。一枚の原紙に無駄なく多くの扇状ブランクを配置できる。
【0094】
このように、本願実施形態は、容易にかつ安価に実現できる。
【符号の説明】
【0095】
1 底部
2 胴部
3 開口
10 紙製容器
11 右フラップ
12 左フラップ
13 襟部
14 差込フラップ
16 飲み口
17 連結面
21 罫線
22 罫線
26 スリット
27 切り欠け
28 胴部接合部
30 円弧状罫線
31 第1円弧状罫線(広口対応)
32 第2円弧状罫線(狭口対応)
32 第3円弧状罫線(閉塞対応)
35 仮想回転中心
36 罫線
37 罫線
38 罫線
100 紙製容器(比較例)
111 右フラップ
112 左フラップ
113 襟部
114 差込フラップ
116 飲み口
117 連結面
121 罫線
122 罫線
126 スリット
127 切り欠け
128 胴部接合部
130 円弧状罫線