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特許7170854ダウンリンク送信リソースを割り当て、障害物検出強化データを送信するように構成された方法及びサーバ、コンピュータプログラム製品、並びに記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ダウンリンク送信リソースを割り当て、障害物検出強化データを送信するように構成された方法及びサーバ、コンピュータプログラム製品、並びに記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20221107BHJP
   B61L 3/12 20060101ALI20221107BHJP
   B61L 27/10 20220101ALI20221107BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20221107BHJP
   H04W 72/08 20090101ALI20221107BHJP
【FI】
B61L23/00 A
B61L3/12 Z
B61L27/10
H04W4/40
H04W72/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021517708
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 JP2019043177
(87)【国際公開番号】W WO2020110613
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】18208375.8
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】グレッセ、ニコラ
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-506050(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0117073(US,A1)
【文献】特表2017-529732(JP,A)
【文献】特開2015-139080(JP,A)
【文献】国際公開第1998/051110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 23/00
B61L 27/00
B61L 3/12
H04W 4/40
H04W 72/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物検出強化データを、少なくとも1つの予め定められた経路上を走行するそれぞれの少なくとも1つの移動輸送機関の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに送信するためのダウンリンク送信リソースを割り当てる方法であって、各移動輸送機関は、障害物検出システムと、ワイヤレスリンクを介してサーバと通信する車載ワイヤレスユニットとを組み込み、時間は、送信サイクルCにおいて分割され、nは、シーケンス番号を表し、前記方法は、前記サーバによって実行され、移動輸送機関ごとに、
1つの前記予め定められた経路上の前記移動輸送機関の実際の速度及び位置に関する情報、並びに、前記サーバと前記車載ワイヤレスユニットとの間の前記ワイヤレスリンクの実際の品質Qに関する情報を取得することと、
各送信サイクルC中に、ダウンリンク送信リソースを前記少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに割り当てることと、
を含み、
前記方法は、移動輸送機関ごとに、
前記移動輸送機関の実際の速度において、1送信サイクル中に前記移動輸送機関が走行する距離dを計算することと、
前記移動輸送機関の実際の速度及び位置から、前記障害物検出システムが送信サイクルCにおいて送信されるべき前記障害物検出強化データを必要となり始める前記予め定められた経路上の位置を推定することと、
定された前記位置からメートル毎の障害物検出強化データの量を表すデータ量対距離比情報 、前記障害物検出強化データを記憶するデータベースに要求することと、
前記距離dと、送信サイクル の開始時に前記障害物検出強化データによってカバーされる距離Dとの差分を最適化することによって、送信サイクルC中に前記移動輸送機関の前記車載ワイヤレスユニットに割り当てられるべきダウンリンク送信リソースを決定することであって、送信サイクルC中に送信されると予想される障害物検出強化データの量は、前記データ量対距離比情報bから、及び、前記ワイヤレスリンクの実際の品質Qから決定されることと、
を更に含み、
前記距離d と前記距離D との差分は、ギャップD -d 、または比率D /d で表され、前記差分を最適化することは、全ての前記移動輸送機関について前記ギャップを同じとする制約の下で前記比率を最適化することである、または、全ての前記移動輸送機関について前記比率を同じとする制約の下で前記ギャップを最適化することである方法。
【請求項2】
前記障害物検出システムが送信サイクルCにおいて送信されるべき前記障害物検出強化データを必要となり始める前記予め定められた経路上の前記推定された位置は、推定制動距離を考慮に入れる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数Nの移動輸送機関が検討対象とされ、全ての前記移動輸送機関について、同じ比率D/dが達成されるという制約の下で、前記距離dと前記距離Dとの前記ギャップの最適化が実行され、以下を決定することを含み、
【数1】
式中、Rは、ダウンリンク送信リソースの総量Rtotに対する、kで識別される前記移動輸送機関に割り当てられたダウンリンク送信リソースの比率を表し、
=R.K及びK=Rtot.f(SNR)/bであり、
f(SNR)は、前記ワイヤレスリンクの信号対雑音比SNRに応じて、kで識別される前記移動輸送機関の前記車載ワイヤレスユニットと前記サーバとの間の前記ワイヤレスリンクの品質Qを表す、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
複数Nの移動輸送機関が検討対象とされ、全ての前記移動輸送機関について、同じ比率D/dが達成されるという制約の下で、前記距離dと前記距離Dとの前記ギャップの最適化が実行され、以下を決定することを含み、
【数2】
式中、Rは、ダウンリンク送信リソースの総量Rtotに対する、kで識別される前記移動輸送機関に割り当てられたダウンリンク送信リソースの比率を表し、
=DL+R.K及びK=Rtot.f(SNR)/bであり、
DLは、kで識別される前記移動輸送機関に関する、前記送信サイクルCn-1が終了するまでに、kで識別される前記移動輸送機関の前記車載ワイヤレスユニットに送信される前記障害物検出強化データによってカバーされる、前記推定された位置の前方の距離を表し、
f(SNR)は、前記ワイヤレスリンクの信号対雑音比SNRに応じて、kで識別される前記移動輸送機関の前記車載ワイヤレスユニットと前記サーバとの間の前記ワイヤレスリンクの品質Qを表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
複数Nの移動輸送機関が検討対象とされ、全ての前記移動輸送機関について、同じギャップD-dが達成されるという制約の下で、前記距離dと前記距離Dとの前記比率の最適化が実行され、以下を決定することを含み、
【数3】
式中、Rは、ダウンリンク送信リソースの総量Rtotに対する、kで識別される前記移動輸送機関に割り当てられたダウンリンク送信リソースの比率を表し、
=R.K及びK=Rtot.f(SNR)/bであり、
f(SNR)は、前記ワイヤレスリンクの信号対雑音比SNRに応じて、kで識別される前記移動輸送機関の前記車載ワイヤレスユニットと前記サーバとの間の前記ワイヤレスリンクの品質Qを表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数Nの移動輸送機関が検討対象とされ、全ての前記移動輸送機関について、同じギャップD-dが達成されるという制約の下で、前記距離dと前記距離Dとの前記比率の最適化が実行され、以下を決定することを含み、
【数4】
式中、Rは、ダウンリンク送信リソースの総量Rtotに対する、kで識別される前記移動輸送機関に割り当てられたダウンリンク送信リソースの比率を表し、
=DL+R.K及びK=Rtot.f(SNR)/bであり、
DLは、kで識別される前記移動輸送機関に関する、送信サイクルCn-1が終了するまでに、kで識別される前記移動輸送機関の前記車載ワイヤレスユニットに送信される前記障害物検出強化データによってカバーされる、前記推定された位置の前方の距離を表し、
f(SNR)は、前記ワイヤレスリンクの信号対雑音比SNRに応じて、kで識別される前記移動輸送機関の前記車載ワイヤレスユニットと前記サーバとの間の前記ワイヤレスリンクの品質Qを表す、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記障害物検出強化データは、前記少なくとも1つの予め定められた経路の周囲の環境の3Dシーンのサンプルを記述する3Dシーン記述子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
障害物検出強化データを、少なくとも1つの予め定められた経路上を走行するそれぞれの少なくとも1つの移動輸送機関の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに送信する方法であって、前記方法は、前記サーバによって実行され、ダウンリンク送信リソースを割り当てることを含み、さらに、
送信サイクルC中に送信されるべき前記障害物検出強化データを前記データベースから索出することと、
送信サイクルCの開始に達すると、索出された障害物検出強化データを、それぞれ割り当てられたダウンリンク送信リソースにおいて前記少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに送信することと、
を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
プログラムコード命令がプログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実施する前記プログラマブルデバイスにロードすることができる前記プログラムコード命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項10】
プログラムコード命令がプログラマブルデバイスによって実行されると、請求項8に記載の方法を実施する前記プログラマブルデバイスにロードすることができる前記プログラムコード命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項11】
コンピュータプログラムを記憶する非一時的情報記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムは、プログラムコード命令を含み、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記非一時的情報記憶媒体から読み取られ、プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実施する前記プログラマブルデバイスにロードすることができる、非一時的情報記憶媒体。
【請求項12】
コンピュータプログラムを記憶する非一時的情報記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムは、プログラムコード命令を含み、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記非一時的情報記憶媒体から読み取られ、プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項8に記載の方法を実施する前記プログラマブルデバイスにロードすることができる、非一時的情報記憶媒体。
【請求項13】
障害物検出強化データを、少なくとも1つの予め定められた経路上を走行するそれぞれの少なくとも1つの移動輸送機関の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに送信するためのダウンリンク送信リソースを割り当てるよう構成されたサーバであって、各移動輸送機関は、障害物検出システムと、ワイヤレスリンクを介して前記サーバと通信する車載ワイヤレスユニットとを組み込み、時間は、送信サイクルCにおいて分割され、nは、シーケンス番号を表し、前記サーバは、電子回路部を含み、前記電子回路部は、移動輸送機関ごとに、
1つの前記予め定められた経路上の前記移動輸送機関の実際の速度及び位置に関する情報、並びに、前記サーバと前記車載ワイヤレスユニットとの間の前記ワイヤレスリンクの実際の品質Qに関する情報を取得することと、
各送信サイクルC中に、ダウンリンク送信リソースを前記少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに割り当てることと、
を実行するよう構成され、
前記電子回路部は、移動輸送機関ごとに、
前記移動輸送機関の実際の速度において、1送信サイクル中に前記移動輸送機関が走行する距離dを計算することと、
前記移動輸送機関の実際の速度及び位置から、前記障害物検出システムが送信サイクルC中に送信されるべき前記障害物検出強化データを必要となり始める前記予め定められた経路上の位置を推定することと、
推定された前記位置からメートル毎の障害物検出強化データの量を表すデータ量対距離比情報 、前記障害物検出強化データを記憶するデータベースに要求することと、
前記距離dと、送信サイクル の開始時に前記障害物検出強化データによってカバーされる距離Dとの差分を最適化することによって、送信サイクルC中に前記移動輸送機関の前記車載ワイヤレスユニットに割り当てられるべきダウンリンク送信リソースを決定することであって、送信サイクルC中に送信されると予想される障害物検出強化データの量は、前記データ量対距離比情報bから、及び、前記ワイヤレスリンクの実際の品質Qから決定されることと、
を実行するように更に構成され、
前記距離d と前記距離D との差分は、ギャップD -d 、または比率D /d で表され、前記差分を最適化することは、全ての前記移動輸送機関について前記ギャップを同じとする制約の下で前記比率を最適化することである、または、全ての前記移動輸送機関について前記比率を同じとする制約の下で前記ギャップを最適化することであるサーバ。
【請求項14】
障害物検出強化データを、少なくとも1つの予め定められた経路上を走行するそれぞれの少なくとも1つの移動輸送機関の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに送信するよう構成されたサーバであって、前記サーバは、ダウンリンク送信リソースを割り当てるために、請求項13に従って構成され、前記サーバの前記電子回路部は、
送信サイクルC中に送信されるべき前記障害物検出強化データを前記データベースから索出することと、
送信サイクルCの開始に達すると、索出された障害物検出強化データを、それぞれ割り当てられたダウンリンク送信リソースにおいて前記少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに送信することと、
を実行するように更に構成される、サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、障害物検出強化データをサーバから移動輸送機関の車載コントローラに送信するためのダウンリンク送信リソースの割り当てを適合させること、および、これに応じて、サーバから車載コントローラに障害物検出強化データを送信することに関する。
【背景技術】
【0002】
列車等の移動輸送機関は、人間の運転者が運転しなくとも、線路等の予め定められた経路を走行することができる。このような移動輸送機関は、障害物検出システムを用いることで自動制御を行うことができる。障害物検出システムには、パッシブ(可視光及び/又は赤外線カムコーダ)と、アクティブセンサ(レーダ、レーザスキャナ、ソナー)とがある。したがって、障害物検出システムは、移動輸送機関の前方の環境に関する情報を取得して潜在的な障害物の存在を検出し、障害物が存在すれば、適切な対策を講じる(移動輸送機関の速度を下げる、移動輸送機関を停止させる、警笛を鳴動させる、など)ことができる。同様に、このような障害物検出システムを利用して、移動輸送機関を運転する人間の運転者を支援することもできる。
【0003】
予め定められた経路(線路等)を移動するこのような移動輸送機関の障害物検出を強化するために、リモートサーバを移動輸送機関の車載制御ユニットへとワイヤレス接続することができる。したがって、このようなリモートサーバは、このリモートサーバに接続されたデータベースに予め記憶された障害物検出強化データを供給することができる。障害物検出強化データは、予め定められた経路上の検討対象である移動輸送機関の位置に依存し、予め定められた経路周辺の物体の記述子、予め定められた経路に沿った使用中の作業ゾーンの記述子、又は障害物検出システムが障害物検出の判定を改善できる可能性のある他のデータであってよい。このような障害物検出強化データは、3Dマップ情報に基づくことができる。これにより、こうしたデータベースには、移動輸送機関が走行しうる予め定められた経路、及びこれに関連する障害物検出強化データを記憶されている。
【0004】
ワイヤレス通信では、効果的な伝搬条件(干渉の存在など)を考慮して、ダウンリンク送信リソースの割り当てを最適化することが多い。しかしながら、このようなダウンリンク送信リソースは、リモートサーバからのこのような障害物検出支援を適切にサポートするように最適化されていない可能性がある。さらに、このようなダウンリンク送信リソース割り当ての最適化は、タイムリーに効率的な方法で実行されることが望ましい。
【0005】
障害物検出はスタンドアロンモードで動作することができるが、障害物検出を改善する(例えば、誤報を減らす)ために、ダウンリンク送信リソース割り当てが最適化される解決策を提供することが、より望ましい。特に、簡素で費用対効果の高い解決策を提供することがより望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本発明は、障害物検出強化データを送信するためのダウンリンク送信リソースを、少なくとも1つの予め定められた経路上を走行するそれぞれの少なくとも1つの移動輸送機関の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに割り当てる方法に関する。各移動輸送機関は、障害物検出システムと、ワイヤレスリンクを介してサーバと通信する車載ワイヤレスユニットとを組み込み、時間は、送信サイクルCにおいて分割され、nは、シーケンス番号を表す。この方法は、サーバによって実行され、移動輸送機関ごとに、1つの予め定められた経路上の移動輸送機関の実際の速度及び位置に関する情報、並びに、サーバと車載ワイヤレスユニットとの間のワイヤレスリンクの実際の品質Qに関する情報を取得することと、各送信サイクルC中に、ダウンリンク送信リソースを少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに割り当てることとを含む。加えて、この方法は、移動輸送機関ごとに、移動輸送機関の実際の速度において、1送信サイクル中に移動輸送機関が走行する距離dを計算することと、移動輸送機関の実際の速度及び位置から、障害物検出システムが送信サイクルC中に送信されるべき障害物検出強化データを必要となり始める予め定められた経路上の位置を推定することと、推定された位置から、メートル毎の障害物検出強化データの量を表すデータ量対距離比(volume-to-distance ratio)情報b又は同等の情報を、障害物検出強化データを記憶するデータベースに要求することと、距離dと、送信サイクルCn+1の開始時に移動輸送機関の障害物検出システムによって利用可能になる障害物検出強化データによってカバーされる距離Dとの差分を最適化することによって、送信サイクルC中に移動輸送機関の車載ワイヤレスユニットに割り当てられるべきダウンリンク送信リソースを決定することであって、送信サイクルC中に送信されると予想される障害物検出強化データの量は、データ量対距離比情報bから、及び、ワイヤレスリンクの実際の品質Qから決定されることとを更に含む。
【0007】
したがって、ダウンリンク送信リソース割り当ては、リモートサーバからの障害物検出支援を適切にサポートするよう最適化されている。また、このようなダウンリンク送信リソース割り当ての最適化は、データベースによって提供されるデータ量対距離比情報に依存することによって、タイムリーに効率的になされる。
【0008】
特定の実施形態によれば、障害物検出システムが送信サイクルCにおいて送信される障害物検出強化データを必要となり始める予め定められた経路上の推定位置は、推定制動距離を考慮に入れる。
【0009】
したがって、障害物検出強化データは、障害物検出システムによって十分前もって取得され、障害物検出時に移動輸送機関を確実に停止させることができる。
【0010】
特定の実施形態によれば、複数Nの移動輸送機関が検討対象とされ、全ての移動輸送機関について、同じ比率D/dが達成されるという制約の下で、距離dと距離Dとの差分の最適化が実行され、以下を決定することを含む。
【数1】
式中、Rは、ダウンリンク送信リソースの総量Rtotに対する、kで識別される移動輸送機関に割り当てられたダウンリンク送信リソースの比率を表し、
=R.K及びK=Rtot.f(SNR)/bである。
f(SNR)は、ワイヤレスリンクの信号対雑音比SNRに応じて、kで識別される移動輸送機関の車載ワイヤレスユニットとサーバとの間のワイヤレスリンクの品質Qを表す。
【0011】
したがって、連続した送信サイクル間で、障害物検出強化データの重なりが保証され、全ての移動輸送機関について、同じ割合の距離Dが走行距離dに関する障害物検出強化データによってカバーされる。
【0012】
特定の実施形態によれば、複数Nの移動輸送機関が検討対象とされ、全ての移動輸送機関について、同じ比率D/dが達成されるという制約の下で、距離dと距離Dとの差分の最適化が実行され、以下を決定することを含む。
【数2】
式中、Rは、ダウンリンク送信リソースの総量Rtotに対する、kで識別される移動輸送機関に割り当てられたダウンリンク送信リソースの比率を表し、
=DL+R.K及びK=Rtot.f(SNR)/bである。
DLは、kで識別される移動輸送機関に関し、送信サイクルCn-1が終了するまでに、kで識別される移動輸送機関の車載ワイヤレスユニットに送信される障害物検出強化データによってカバーされる、推定位置から前方の距離を表す。
f(SNR)は、ワイヤレスリンクの信号対雑音比SNRに応じて、kで識別される移動輸送機関の車載ワイヤレスユニットとサーバとの間のワイヤレスリンクの品質Qを表す。
【0013】
したがって、障害物検出強化データが増分で送信され、同じ割合の距離Dが走行距離dに関する障害物検出強化データによってカバーされる。
【0014】
特定の実施形態によれば、複数Nの移動輸送機関が検討対象とされ、全ての移動輸送機関について、同じギャップD-dが達成されるという制約の下で、距離dと距離Dとの差分の最適化が実行され、以下を決定することを含む。
【数3】
式中、Rは、ダウンリンク送信リソースの総量Rtotに対する、kで識別される移動輸送機関に割り当てられたダウンリンク送信リソースの比率を表し、
=R.K及びK=Rtot.f(SNR)/bである。
f(SNR)は、ワイヤレスリンクの信号対雑音比SNRに応じて、kで識別される移動輸送機関の車載ワイヤレスユニットとサーバとの間のワイヤレスリンクの品質Qを表す。
【0015】
したがって、連続した送信サイクル間で、障害物検出強化データの重なりが保証され、移動輸送機関全てについて、同じ重なりが全ての移動輸送機関に適用される。
【0016】
特定の実施形態によれば、複数Nの移動輸送機関が検討対象とされ、全ての移動輸送機関について、同じギャップD-dが達成されるという制約の下で、距離dと距離Dとの差分の最適化が実行され、以下を決定することを含む。
【数4】
式中、Rは、ダウンリンク送信リソースの総量Rtotに対する、kで識別される移動輸送機関に割り当てられたダウンリンク送信リソースの比率を表し、
=DL+R.K及びK=Rtot.f(SNR)/bである。
DLは、kで識別される移動輸送機関に関する、送信サイクルCn-1が終了するまでに、kで識別される移動輸送機関の車載ワイヤレスユニットに送信される障害物検出強化データによってカバーされる、推定位置から前方の距離を表す。
f(SNR)は、ワイヤレスリンクの信号対雑音比SNRに応じて、kで識別される移動輸送機関の車載ワイヤレスユニットとサーバとの間のワイヤレスリンクの品質Qを表す。
【0017】
したがって、障害物検出強化データが増分で送信され、同じ量の追加障害物検出強化データが、全ての移動輸送機関に適用される。
【0018】
特定の実施形態によれば、障害物検出強化データは、少なくとも1つの予め定められた経路周辺の環境の3Dシーンのサンプルを記述する3Dシーン記述子である。したがって、障害物検出強化データは、効率的な方法で障害物検出を大幅に改善させる。
【0019】
本発明はまた、障害物検出強化データを、少なくとも1つの予め定められた経路上を走行するそれぞれの少なくとも1つの移動輸送機関の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに送信する方法に関する。この方法は、サーバによって実行され、上記のようにダウンリンク送信リソースを割り当てることを含み、さらに、送信サイクルCにおいて送信されるべき障害物検出強化データをデータベースから索出することと、送信サイクルCの開始に達すると、索出された障害物検出強化データを、それぞれ割り当てられたダウンリンク送信リソースにおいて少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに送信することとを含む。
【0020】
本発明はまた、本発明の実施形態のいずれか1つとして上述した方法を実施させるために、通信ネットワークからダウンロードし、及び/又は、マイクロプロセッサ等の処理デバイスによって読み取り及び実行することができるコード命令を含む非一時的情報記憶媒体に記憶することができるコンピュータプログラムに関する。本発明はまた、このようなコンピュータプログラムを記憶する非一時的情報記憶媒体に関する。
【0021】
本発明はまた、障害物検出強化データを、少なくとも1つの予め定められた経路上を走行するそれぞれの少なくとも1つの移動輸送機関の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに送信するためのダウンリンク送信リソースを割り当てるよう構成されたサーバに関する。各移動輸送機関は、障害物検出システムと、ワイヤレスリンクを介してサーバと通信する車載ワイヤレスユニットとを組み込み、時間は、送信サイクルCにおいて分割され、nは、シーケンス番号を表す。このサーバは、電子回路部を含み、電子回路部は、移動輸送機関ごとに、1つの予め定められた経路上の移動輸送機関の実際の速度及び位置に関する情報、並びに、サーバと車載ワイヤレスユニットとの間のワイヤレスリンクの実際の品質Qに関する情報を取得することと、各送信サイクルC中に、ダウンリンク送信リソースを少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに割り当てることとを実行するよう構成される。加えて、電子回路部は、移動輸送機関ごとに、移動輸送機関の実際の速度において、1送信サイクル中に移動輸送機関が走行する距離dを計算することと、移動輸送機関の実際の速度及び位置から、障害物検出システムが送信サイクルC中に送信されるべき障害物検出強化データを必要となり始める予め定められた経路上の位置を推定することと、推定された位置から、メートル毎の障害物検出強化データの量を表すデータ量対距離比情報b又は同等の情報を、障害物検出強化データを記憶するデータベースに要求することと、距離dと、送信サイクルCn+1の開始時に移動輸送機関の障害物検出システムによって利用可能になる障害物検出強化データによってカバーされる距離Dとの差分を最適化することによって、送信サイクルC中に移動輸送機関の車載ワイヤレスユニットに割り当てられるべきダウンリンク送信リソースを決定することであって、送信サイクルC中に送信されると予想される障害物検出強化データの量は、データ量対距離比情報bから、及び、ワイヤレスリンクの実際の品質Qから決定されることとを実行するように更に構成される。
【0022】
本発明はまた、障害物検出強化データを、少なくとも1つの予め定められた経路上を走行するそれぞれの少なくとも1つの移動輸送機関の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに送信するよう構成されたサーバに関する。このサーバは、ダウンリンク送信リソースを割り当てるために、上記のように構成され、サーバの電子回路部は、送信サイクルCにおいて送信されるべき障害物検出強化データをデータベースから索出することと、送信サイクルCの開始に達すると、索出された障害物検出強化データを、それぞれ割り当てられたダウンリンク送信リソースにおいて少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットに送信することとを実行するように更に構成される。
【0023】
本発明の特徴は、実施形態の少なくとも1つの例の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明を実施することができる障害物検出強化システムを概略的に示す図である。
図2】障害物検出強化システムの処理デバイスのハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す図である。
図3】ダウンリンク送信リソースを割り当て、これに応じて、障害物検出強化データを送信するアルゴリズムを概略的に示す図である。
図4】障害物検出強化データを取得し、処理するアルゴリズムを概略的に示す図である。
図5A】第1の障害物検出強化シナリオを概略的に示す図である。
図5B】第2の障害物検出強化シナリオを概略的に示す図である。
図5C】第3の障害物検出強化シナリオを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、少なくとも1つの予め定められた経路130、131に沿った少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141の行程中の障害物検出を改善させる支援を提供するように意図された障害物検出強化システム100を概略的に示す。好ましい実施形態では、上記の各移動輸送機関MC140、141は列車であり、上記の予め定められた各経路130、131は線路である。
【0026】
障害物検出強化システム100は、サーバSERV120と、各移動輸送機関MC140、141に配置された車載ワイヤレスユニットOWRU160、161とを備える。サーバSERV120及び各車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、予め定められた各経路130、131に沿って配置された沿道ワイヤレスユニットWWRU、WWRU110等のワイヤレスユニットを介して、互いにワイヤレス通信する。予め定められた各経路130、131上の移動輸送機関MC140、141の有効位置がどこであっても、サーバSERV120と各車載ワイヤレスユニットOWRU160、161との間のワイヤレス通信の持続性を可能な限り確保できるように、沿道ワイヤレスユニットWWRU、WWRU110等のワイヤレスユニットが地理的に設置されている。
【0027】
例えば、沿道ワイヤレスユニットWWRU、WWRU110等のワイヤレスユニットは、電気通信システム、例えば、LTE(「ロングタームエボリューション」)電気通信システム等のアクセスポイントである。例えば、サーバSERV120は、銅線又は光リンクを使用して、沿道ワイヤレスユニットWWRU、WWRU110等のワイヤレスユニットに接続されている。
【0028】
サーバSERV120は、各移動輸送機関MC140、141が、予め定められた各経路130、131のうちどの経路を現在走行しているのかを、例えば、構成によって把握している。
【0029】
各移動輸送機関MC140、141は、障害物検出システムODS170、171をそれぞれ組み込んでいる。障害物検出システムODS170、171は、パッシブ(可視光及び/又は赤外線カムコーダ)、及び場合によっては、アクティブセンサ(レーダ、レーザスキャナ、ソナー)を含むことができる。かくして、障害物検出システムODS170、171は、障害物の存在を検出し、障害物があれば、適切な対策を講じることができるよう、移動輸送機関の前方の環境に関する情報を取り込む。移動輸送機関MC140、141が自動運転されているとき、障害物検出システムODS170、171は、潜在的な衝突を回避するために緊急停止させるよう、移動輸送機関MC140、141に指示することができる。人間の運転者が移動輸送機関MC140、141を運転しているとき、障害物検出システムODS170、171は、潜在的な衝突を回避するために緊急手順を起動させなければならないことを人間の運転者に伝える緊急警告信号を発することができる。
【0030】
障害物検出性能を高めるために、障害物検出システムODS170、171は、それぞれの車載ワイヤレスユニットOWRU160、161を介してサーバSERV120と通信する。したがって、サーバSERV120は、障害物検出処理を高速化するため、及び/又は、誤報の発生率を低減するために、障害物検出強化データを障害物検出システムODS170、171に供給する。障害物検出システムODS170、171が、対応する移動輸送機関の前方の衝突リスクを誤って検出すると、誤報が発生する。
【0031】
例えば、障害物検出強化データは、対象の移動輸送機関MC140、141の有効位置の前方にあり、対応する予め定められた経路130、131の近くに存在することが分かっている物理的な物体(建物、樹木、作業エリア、など)の記述子である。特定の実施形態において、障害物検出強化データは、対応する予め定められた経路130、131の周囲環境の3Dシーンのサンプルを記述する3Dシーン記述子である。このような3Dシーンは、例えば、対応する予め定められた経路130、131での訓練行程中に、移動輸送機関MCの前面に設置されたカメラによって撮影されたビデオ画像の3Dモデリングから得られる。したがって、対象のサンプルは、3Dモデリングから抽出された多面体である可能性がある。
【0032】
このような障害物検出強化データにより、障害物検出システムODS170、171は、対象の移動輸送機関MC140、141の前方の障害物検出システムODS170、171によって検出された物体の潜在的な障害物特性に関する判定を改善することができる。
【0033】
このような障害物検出強化データを記憶するために、支援システム100は、予め定められた経路130、131、及びこれに関連する障害物検出強化データを記憶するために使用されるデータベースDB150を更に含む。データベースDB150は、予め定められた経路130、131の区間ごとに障害物検出強化データを索出するために、サーバSERV120によって使用される。予め定められた経路130、131の或る区間が示す障害物検出強化データは、他の区間におけるデータよりも多い場合も、少ない場合もある。実際、例えば、予め定められた経路130、131の或る区間については、他の区間よりも、周囲の環境を記述するのがより複雑となる場合がある。
【0034】
障害物検出システムODS170、171は、障害物検出強化データを必要としなくても、障害物検出を実行できるべきではあるが、データベースDB150において利用可能な限り多くの障害物検出強化データを車載ワイヤレスユニットOWRU160、161に送信できるようにすることが関心事である。それゆえ、データベースDB150において効果的に利用可能な障害物検出強化データを考慮して可能な限り多くの障害物検出強化データをサーバSERV120から車載ワイヤレスユニットOWRU160、161へとワイヤレス送信できるよう、ダウンリンク送信リソースは、サーバSERV120によって割り当てられなければならない。
【0035】
これを実行するために、データベースDB150は、データ量対距離比情報bを提供する。この情報は、予め定められた経路130、131に沿った、メートル毎の障害物検出強化データの量、又は同等の情報を表している。ここで、kは、検討対象の移動輸送機関MC140、141を識別する。データ量対距離比情報bは、予め定められた経路130、131のどの部分に対象の移動輸送機関MC140、141が位置しているかに依存する。データ量対距離比情報bは、適用前提条件であり、データベースDB150によって、予め定められた経路130、131上の移動輸送機関MC140、141の実際の位置に関する情報から、好ましくは、移動輸送機関MC140、141の実際の速度に関する情報から、サーバSERV120へと供給される。サーバSERV120は、このようなデータ量対距離比情報bを考慮に入れて、ダウンリンク送信リソース割り当てを行う。これについては、図3を参照して、以下で詳述する。
【0036】
以下で詳述するように、ダウンリンク送信リソース割り当ては、対象の移動輸送機関MC140、141の実際の速度に更に依存する。従来の方式では、ダウンリンク送信リソース割り当ては、対象の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161とサーバSERV120との間のワイヤレスリンクの品質(例えば、信号対雑音比SNR)、つまり、このワイヤレスリンクを介したワイヤレス信号の伝搬条件に更に依存する。
【0037】
以下で詳述するように、ダウンリンク送信リソースが、他のそれぞれの移動輸送機関MCの他の車載ワイヤレスユニットOWRUと共有することを考慮に入れて、ダウンリンク送信リソース割り当てを行うこともできる。
【0038】
ダウンリンク送信リソース割り当ては、サーバSERV120によりサイクルごとに実行される。したがって、時間は、等しい持続時間Tの送信サイクルに分割され、1フレームが、各送信サイクルにおいてサーバSERV120から対象の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161に送信される。このとき、ダウンリンク送信リソースは、上記送信サイクル内の時間及び周波数リソースであり、送信サイクルごとのダウンリンク送信リソースの総量は、本明細書ではRtotとして表記する。各ダウンリンク送信リソースは、時間及び周波数帯域の連続したスライスを考慮に入れている。送信の信号対雑音比がSNRと示される場合、Rtotのうちの単一ダウンリンク送信リソースにわたる送信スループットは、ビット/秒単位での関数f(SNR)により得られる。Rtot間のリソースの比率Rに対する送信スループットは、ビット/秒単位でのRtot.R.f(SNR)により得られる。例えば、関数f()は、シャノン容量式f(SNR)=BW.T/T.log(1+SNR)として選択することができる。式中、BWは、ヘルツ単位での各ダウンリンク送信リソースの周波数帯域幅であり、Tは、秒単位での各ダウンリンク送信リソースの継続時間である。別の例では、ワイヤレス物理レイヤ送信システムの参照テーブルを事前に取得して、期待される性能に最も近い値をf(SNR)の式におけるlog(1+SNR)の代わりに用いることができる。
【0039】
送信サイクルC中(nは送信サイクルシーケンス番号)、対象の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、検討対象の移動輸送機関MC140、141が走行し、この検討対象の移動輸送機関MC140、141の前方の特定距離にある予め定められた経路130、131の一部における障害物検出強化データを受信する。これは、図5A図5B及び図5Cにおいて3つの異なるシナリオで例示的に示されている。
【0040】
図5Aにおいて、送信サイクルCを開始するとき、検討対象の移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、送信サイクルC中に移動輸送機関MC140、141が走行する距離Dについて、障害物検出システムODS170、171によって使用されるべき障害物検出強化データを送信サイクルCn-1において受信している。次に、送信サイクルCn+1を開始するとき、検討対象の移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、送信サイクルCn+1中に移動輸送機関MC140、141が走行する距離Dについて、障害物検出システムODS170、171によって使用されるべき障害物検出強化データを送信サイクルCにおいて受信している。送信サイクルC中に移動輸送機関MC140、141が走行する部分について、データベースDB150で利用可能な障害物強化データを全て送信するのに十分なダウンリンク送信リソースが送信サイクルCn-1において割り当てられていなかった場合、ブラインドゾーンBZが、予め定められた経路130、131に存在する。したがって、このようなブラインドゾーンBZは、ダウンリンク送信リソース不足によって、障害物強化データを車載ワイヤレスユニットOWRU160、161に送信できなかった予め定められた経路130、131の部分である。かくして、このようなブラインドゾーンBZを回避することが関心事である。備考ではあるが、以下の2文により、このようなブラインドゾーンBZを回避又は少なくとも削減できる。
(1)移動輸送機関MC140、141が低速で走行すると、送信サイクル毎の移動距離は短くなり、このことは、固定距離にわたる障害物強化データのデータ量のためには有益である。
(2)ダウンリンク送信データレートが増加すると、予め定められた経路130、131の固定距離について、送信サイクルごとの障害物強化データのデータ量は、増加する。
それゆえ、ダウンリンク送信リソース割り当てを適切に実行することにより、連続する送信サイクル中に送信される障害物検出強化データ間に重なりOを作ることもできる。このような重なりによって、或る送信サイクルから次の送信サイクルへの移動輸送機関MC140、141の速度の変動を容易に補償することができる。さらに、送信サイクルC中に移動輸送機関MC140、141が走行する距離Dは、障害物検出を実行することができる移動輸送機関MC140、141の前方の距離よりも短くなることがある。また、データベース内の障害物検出強化データに動的データが含まれている場合は特に、データベースから最新の障害物検出強化データを取得することも、障害物検出において有益である。この場合、重なりOは有益となる。
【0041】
このシナリオは、図5Bで例示的に示されている。このようなシナリオでは、送信サイクルCn-1において検討対象の移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161が受信した障害物検出強化データは、距離Dよりも長くカバーする。送信サイクルCn-1中に受信された追加の障害物検出強化データは、送信サイクルCn+1中に障害物検出システムODS170、171によって使用される。送信サイクルCにおいて検討対象の移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161が受信した障害物検出強化データは、送信サイクルCn-1において検討対象の移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161が受信する障害物検出強化データと重なる。したがって、送信サイクルCn-1中に受信された上記追加の障害物検出強化データは、送信サイクルC中に受信された障害物検出強化データにも存在する。定義上、このような重なりOが存在することを確保すると、ブラインドゾーンBZが存在しないことが確保される。本明細書では、このアプローチを「重なりモード」と称する。
【0042】
別のアプローチは、重なりを禁止することである。サーバSERV120は、検討対象の移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161へと既に送信された障害物検出強化データを再送信しない。重なりモードでは、或る送信サイクルから次の送信サイクルへの移動輸送機関MC140、141の速度の変動を容易に補償することができるが、ただし、少し複雑となり、冗長性はない。このシナリオは、図5Cで例示的に示されている。ブラインドゾーンBZを回避するために、送信サイクルCn-1の終了までに検討対象の移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161が受信した障害物検出強化データは、対応する障害物検出システムODS170、171が送信サイクルCの終了までに処理しなくてはならない全ての障害物検出強化データを含む必要がある。本明細書では、このアプローチを「増分モード」と称する。
【0043】
ダウンリンク送信リソース割り当ての最適化は、「重なりモード」又は「増分モード」のいずれが使用されているのかによって、異なる方法で実行することができ、これについては、図3を参照して、以下で詳述する。
【0044】
図2は、障害物検出強化システム100の処理デバイス200のハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す。車載ワイヤレスユニットOWRU160、161及び/又は障害物検出システムODS170、171及び/又はサーバSERV120は、このようなハードウェアアーキテクチャの例に基づいて構築することができる。
【0045】
ハードウェアアーキテクチャの示される例によれば、処理デバイス200は、通信バス210によって相互接続された少なくとも以下の構成要素、すなわち、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はCPU(中央処理デバイス)201と、RAM(ランダムアクセスメモリ)202と、ROM(読み取り専用メモリ)203と、HDD(ハードディスクドライブ)、若しくはSD(セキュアデジタル)カードリーダー204、又は非一時的情報記憶媒体上に記憶された情報を読み取るように構成される任意の他のデバイスと、少なくとも1つの通信インターフェースCOM205とを含む。
【0046】
ハードウェアアーキテクチャがサーバSERV120に関連する場合、少なくとも1つの通信インターフェースCOM205は、サーバSERV120が、沿道ワイヤレスユニットWWRU、WWRU110と通信できるようにする。一変形形態では、少なくとも1つの通信インターフェースCOM205は、サーバSERV120が、車載ワイヤレスユニットOWRU160、161と直接ワイヤレス通信できるようにする。
【0047】
ハードウェアアーキテクチャが車載ワイヤレスユニットOWRU160、161に関連する場合、少なくとも1つの通信インターフェースCOM205により、車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、沿道ワイヤレスユニットWWRU、WWRU110とワイヤレス通信できるとともに、同じ移動輸送機関MC140、141の障害物検出システム170、171と通信できる。一変形形態では、少なくとも1つの通信インターフェースCOM205により、車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、沿道ワイヤレスユニットWWRU、WWRU110ではなく、サーバSERV120と直接ワイヤレス通信できる。
【0048】
ハードウェアアーキテクチャが障害物検出システムODS170、171に関連する場合、通信インターフェースCOM205により、障害物検出システムODS170、171は、同じ移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161と通信できる。
【0049】
CPU201は、ROM203から、又はSDカードリーダー204を介してSDカード等の外部メモリから、RAM202にロードされた命令を実行することができる。処理デバイス200の電源がオンになった後に、CPU201は、RAM202から命令を読み取って、これらの命令を実行することができる。それらの命令は、対象の処理デバイス200について本明細書記載のアルゴリズムのステップの一部又は全てをCPU201に実行させる1つのコンピュータプログラムを構成する。
【0050】
結果として、本明細書で説明されるアルゴリズムの任意のステップ及び全てのステップは、PC(パーソナルコンピュータ)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)若しくはマイクロコントローラ等のプログラマブルコンピューティングマシンにより一組の命令若しくはプログラムを実行することによってソフトウェア形式において実施するか、又はそうでなければ、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)等の機械若しくは専用チップ若しくはチップセットによってハードウェア形式において実施することができることは理解されたい。一般に、サーバSERV120、車載ワイヤレスユニットOWRU160、161、及び障害物検出システムODS170、171は、対象の処理デバイスに関して本明細書において説明されるような関連ステップを実施するように適合及び構成される処理電子回路部を備える。
【0051】
図3は、ダウンリンク送信リソースを割り当て、これに応じて、障害物検出強化データを送信するアルゴリズムを概略的に示す。図3のアルゴリズムは、サーバSERV120によって実施され、送信サイクルC用のダウンリンク送信リソースを割り当てることを目的とする。
【0052】
ステップS301において、サーバSERV120は、少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141の実際の速度に関する情報を取得する。少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141の実際の速度に関する情報は、該当する移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161によって提供される。
【0053】
サーバSERV120は、上記移動輸送機関MC140、141が走行している予め定められた経路130、131上の該当する移動輸送機関MC140、141の実際の位置に関する情報を更に取得する。少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141の実際の位置に関する情報は、該当する移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161によって提供することができる。一変形形態では、少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141の実際の位置に関する情報は、沿道の輸送機関(例えば、列車)検出システムによってサーバSERV120に提供することができる。
【0054】
サーバSERV120は、サーバSERV120と、該当する移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161との間のワイヤレスリンクの実際の品質Qに関する情報を更に取得する。このワイヤレスリンクの実際の品質Qに関するこのような情報は、サーバSERV120が、上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161と直接ワイヤレス通信する際、この車載ワイヤレスユニットOWRU160、161から受信されたワイヤレス信号の信号対雑音比SNRを測定することにより、サーバSERV120によって取得することができる。一変形形態では、上記ワイヤレスリンクの実際の品質Qに関するこのような情報は、沿道ワイヤレスユニットWWRU、WWRU110が、サーバSERV120と上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161との間の中継器として機能する場合、この車載ワイヤレスユニットOWRU160、161から受信されたワイヤレス信号の実測信号対雑音比SNRを有する沿道ワイヤレスユニットWWRU、WWRU110から、サーバSERV120によって取得することができる。別の変形形態では、上記ワイヤレスリンクの実際の品質Qに関するこのような情報は、サーバSERV120が、上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161と直接ワイヤレス通信する際、サーバSERV120から受信されたワイヤレス信号の実測信号対雑音比SNRを有する上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161から、サーバSERV120によって取得することができる。別の変形形態では、上記ワイヤレスリンクの実際の品質Qに関するこのような情報は、対象のワイヤレスリンクの双方向で伝搬条件が類似していることを踏まえて、上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161から、サーバSERV120によって取得することができる。
【0055】
ステップS302において、サーバSERV120は、少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141の実際の速度に応じて、持続時間Tの1送信サイクル中に少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141が走行する距離dを決定する。
【0056】
ステップS303において、少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141の実際の速度及び位置から、サーバSERV120は、障害物検出システムODS170、171が送信サイクルC中に送信されると予測される障害物検出強化データを必要となり始める(将来の)位置が、予め定められた経路130、131上のどこであるかを推定する。この位置の推定では、推定制動距離BDを考慮に入れることができる。推定制動距離BDは、移動輸送機関MC140、141の実際の速度に依存し、移動輸送機関MC140、141の実際の速度に応じて、制動モデルから取得できる。
【0057】
ステップS304において、サーバSERV120は、送信サイクルCに適用されるデータ量対距離比情報bを取得する。サーバSERV120は、このデータ量対距離比情報bをデータベースDB150に要求する。これを実行するために、サーバSERV120は、予め定められた経路130、131上の上述した推定位置、及び好ましくは、移動輸送機関MC140、141の実際の速度を提供する。
【0058】
データベースDB150は、クラスタごとに、データ量対距離比情報bを記憶できる。予め定められた各経路130、131は、連続クラスタ、つまり経路区間へと分割される。クラスタごとに、データ量対距離比情報bは、このクラスタにわたる、1メートル毎の障害物検出強化データの平均比又は同等の情報として定義される。一変形形態では、データ量対距離比情報bは、上記クラスタにわたる、1メートル毎の障害物検出強化データの最大比又は同等の情報として定義することができる。一変形形態では、データ量対距離比情報bは、上記平均比と上記最大比との間の中間値として定義することができる。サーバSERV120が、予め定められた経路130、131上の位置に関する情報のみを提供する場合、データベースDB150は、上記位置が属するクラスタについて定義されたデータ量対距離比情報bを戻す。サーバSERV120が、予め定められた経路130、131上の位置に関する情報、及び速度情報を提供する場合、データベースDB150は、上記速度情報に応じて、送信サイクルの持続時間Tの間に走行する理論距離値Dを決定し、上記位置から上記理論距離Dにわたるクラスタごとに記憶されたデータ量対距離比情報bを索出し、そして、上記理論距離Dにわたるデータ量対距離比情報bの平均値を戻す。
【0059】
ステップS305において、サーバSERV120は、距離dと、送信サイクルCn+1の開始時に少なくとも1つの障害物検出システムODS170、171によって利用可能になる障害物検出強化データによってカバーされる距離Dとの差分を最適化することによって、少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットOWRU160、161に割り当てられるべきダウンリンク送信リソースを決定し、送信サイクルC中にサーバSERV120によってそれぞれの少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットOWRU160、161に送信されると予想される障害物検出強化データのデータ量を、少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141のデータ量対距離比情報bから、及び、サーバSERV120と、それぞれの少なくとも1つの移動輸送機関MC140、141の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットOWRU160、161との間のワイヤレスリンクの実際の品質Qから決定する。実際には、対象のワイヤレスリンクの実際の品質Qにより、割り当てられたダウンリンク送信リソース内に残されている有効ペイロードを送信するための余地が定まる。割り当てられるべきダウンリンク送信リソースを決定するために、データ量対距離比情報bを使用すると、ダウンリンク送信リソース割り当てプロセスを高速化できる。さらに、距離dと距離Dとの差分を最適化することにより、ブラインドゾーンBZが回避される。ダウンリンク送信リソースの総量Rtotが障害物検出強化データを送信するのに不十分な場合、ブラインドゾーンBZを回避できないことは明らかであり、この場合、このようなブラインドゾーンBZのサイズを制限するのに可能な限り多くの障害物検出強化データを提供するために、ダウンリンク送信リソースが利用できる限り割り当てられる。
【0060】
特定の実施形態において、このようなブラインドゾーンBZが発生したことをサーバSERV120が検出すると、サーバSERV120は、1つの車載ワイヤレスユニットOWRU160、161を介して、データベースDB150に記憶されている障害物検出強化データの恩恵を十分に受けるには、上記移動輸送機関MC140、141の速度を下げるべきであることを、それぞれの移動輸送機関MC140、141のコントローラに通知する。
【0061】
以下の特定の実施形態において詳述されるように、距離dと距離Dとの差分は、比率D/d、又はギャップD-dとして表すことができることに留意されたい。
【0062】
1つの移動輸送機関MC140、141が検討対象とされ、さらに、重なりモードが使用される特定の実施形態では、ダウンリンク送信リソース割り当てにより、連続する送信サイクル間にもたらされる重なりOが最小となることが確保される。したがって、このような最小重なりOが実現される制約の下で(ダウンリンク送信リソースの総量Rtotがそれを可能にするのに十分である限り)、距離dと距離Dとの差分の最適化が実行される。同じ原理を重なりOがない場合にも適用できる。それゆえ、この制約を満たす最小のダウンリンク送信リソースを割り当てることが好ましく、これにより、残ったダウンリンク送信リソースを、他の目的のために、例えば、ベストエフォートトラフィックのために使用できる。
【0063】
1つの移動輸送機関MC140、141が検討対象とされ、さらに、増分モードが使用される特定の実施形態では、ダウンリンク送信リソース割り当てにより、連続する送信サイクルCn+1間にブラインドゾーンBZが出現しないことが確保される。したがって、送信サイクルCn+1の開始時に少なくとも1つの障害物検出システムODS170、171によって利用可能になる障害物検出強化データが、送信サイクルCn+1中に上記移動輸送機関MC140、141が走行する距離をカバーするという制約の下で、距離dと距離Dとの差分の最適化が実行される。それゆえ、この制約を満たす最小のダウンリンク送信リソースを割り当てることが好ましく、これにより、残ったダウンリンク送信リソースを、他の目的のために、例えば、ベストエフォートトラフィックのために使用できる。
【0064】
複数の移動輸送機関MC140、141が検討対象とされ、さらに、重なりモードが使用される特定の実施形態では、全ての移動輸送機関MC140、141について、同じ比率D/dが達成されるという制約の下で、距離dと距離Dとの差分の最適化が実行される。この制約は、全ての移動輸送機関MC140、141について、同じ割合の距離Dが走行距離dに関する障害物検出強化データによってカバーされることを意味する。これを以下の最適化問題として表記できる。
【数5】
式中、Nは移動輸送機関MC140、141の数量を表し、Rは、ダウンリンク送信リソースの総量Rtotに対する、kで識別される移動輸送機関MC140、141に割り当てられたダウンリンク送信リソースDRの比率を表す。D=R.Kについて検討する。式中、K=Rtot.f(SNR)/bは、ダウンリンク送信リソースの全てのRtotが、上記検討対象の移動輸送機関MC140、141(kで識別される)の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161に割り当てられた場合、検討対象の移動輸送機関MC140、141(kで識別される)について、送信サイクルC中に送信された障害物検出強化データによってカバーされる距離を表し、f(SNR)は、上記検討対象の移動輸送機関MC140、141(kで識別される)の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161とサーバSERV120との間のワイヤレスリンクの品質Qを表し、この最適化問題を解くと、以下が導き出される。
【数6】
【0065】
複数の移動輸送機関MC140、141が検討対象とされ、さらに、増分モードが使用される特定の実施形態では、同様に、全ての移動輸送機関MC140、141について、同じ比率D/dが達成されるという制約の下で、距離dと距離Dとの差分の最適化が実行され、これにより、やはり、以下の最適化問題が導き出される。
【数7】
【0066】
しかし、この場合、D=DL+R.Kであり、式中、DLは、検討対象の移動輸送機関MC140、141(kで識別される)に関する、送信サイクルCn-1が終了するまでに、検討対象の移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161に送信される障害物検出強化データによってカバーされる、推定位置前方の距離(ステップS303を参照)を表す。そして、この最適化問題と解くと、以下が導き出される。
【数8】
【0067】
複数の移動輸送機関MC140、141が検討対象とされ、さらに、重なりモードが使用される特定の実施形態では、全ての移動輸送機関MC140、141について、同じギャップD-dが達成されるという制約の下で、距離dと距離Dとの差分の最適化が実行される。この制約は、同じ重なりOが全ての移動輸送機関MC140、141に適用されることを意味する。これを以下の最適化問題として表記できる。
【数9】
【0068】
=R.Kについて検討し、この最適化問題と解くと、以下が導き出される。
【数10】
【0069】
複数の移動輸送機関MC140、141が検討対象とされ、さらに、増分モードが使用される特定の実施形態では、同様に、全ての移動輸送機関MC140、141について、同じギャップD-dが達成されるという制約の下で、距離dと距離Dとの差分の最適化が実行される。この制約は、同量の追加障害物検出データが全ての移動輸送機関MC140、141に適用されることを意味する。この場合も、これを以下の最適化問題として表記できる。
【数11】
【0070】
=DL+R.Kについて検討し、この最適化問題と解くと、以下が導き出される。
【数12】
【0071】
ステップS306において、サーバSERV120は、ステップS305で実行された最適化に従って、移動輸送機関MC140、141ごとに、ダウンリンク送信リソースの割り当てDR=R.Rtotを実行する。
【0072】
ステップS307において、サーバSERV120は、データベースDB150から、送信サイクルCにおいて送信されるべき障害物検出強化データを索出する。送信サイクルCの開始に達すると、サーバSERV120は、索出された障害物検出強化データを少なくとも1つのそれぞれの移動輸送機関MC140、141の少なくとも1つの車載ワイヤレスユニットOWRU160、161に送信する。それぞれの移動輸送機関MC140、141の障害物検出システムODS170、171を対象とする障害物検出強化データの量を、上記移動輸送機関MC140、141のダウンリンク送信リソースDRに合わせて制限する。次に、図4に関して以下で詳述するように、障害物検出強化データを処理する。
【0073】
図4は、障害物検出強化データを取得し、処理するアルゴリズムを概略的に示す。図4のアルゴリズムは、それぞれの移動輸送機関MC140、141の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161によって実施される。
【0074】
ステップS401において、上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、対象の移動輸送機関MC140、141の実際の速度に関する情報を取得し、サーバSERV120に送信する。対象の車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、例えば、該当する移動輸送機関MC140、141に備えられたGPS(全地球測位システム)装置又は速度計から、このような情報を取得する。
【0075】
上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、上記移動輸送機関MC140、141が走行している予め定められた経路130、131上の該当する移動輸送機関MC140、141の実際の位置に関する情報を更に取得し、サーバSERV120に送信できる。上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、例えば、該当する移動輸送機関MC140、141に備えられたGPS(全地球測位システム)装置から、又は車内信号から、このような情報を取得できる。
【0076】
上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、サーバSERV120とこの車載ワイヤレスユニットOWRU160、161との間のワイヤレスリンクの実際の品質Qに関する情報を更に取得し、サーバSERV120に送信できる。サーバSERV120が上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161と直接ワイヤレス通信する際、この車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、サーバSERV120から受信されたワイヤレス信号の実測信号対雑音比SNRを有することができる。沿道ワイヤレスユニットWWRU、WWRU110が、サーバSERV120と上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161との間の中継器として機能する場合、この車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、沿道ワイヤレスユニットWWRU、WWRU110から受信されたワイヤレス信号の実測信号対雑音比SNRを有することができる。
【0077】
ステップS402において、ステップS401が送信サイクルCn-1中に実行されることを考慮して、上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、送信サイクルCにおいて、サーバSERV120から障害物検出強化データを受信する。上記で詳述したように、障害物検出強化データは、送信サイクルC用にサーバSERV120によって上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161に割り当てられたダウンリンクDR=R.Rtot送信リソースにおいて送信される。
【0078】
ステップS403において、上記車載ワイヤレスユニットOWRU160、161は、ステップS402で受信した障害物検出強化データを対象の移動輸送機関MC140、141の障害物検出システムODS170、171へと転送する。したがって、障害物検出システムODS170、171は、この障害物検出強化データを用いて、少なくとも送信サイクルCn+1からの障害物検出を強化することができる。これに応じて、障害物検出システムODS170、171は、この障害物検出強化データを用いて、少なくとも送信サイクルCn+1からの障害物検出の強化を開始することができる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C