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特許7170863アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にする方法
<図1>
  • 特許-アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にする方法 図1
  • 特許-アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にする方法 図2A
  • 特許-アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にする方法 図2B
  • 特許-アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にする方法 図3
  • 特許-アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にする方法 図4
  • 特許-アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にする方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にする方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0452 20170101AFI20221107BHJP
   H04B 7/0456 20170101ALI20221107BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20221107BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20221107BHJP
   H04J 1/00 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
H04B7/0452 110
H04B7/0456 100
H04B7/06 956
H04L27/26 100
H04J1/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021523085
(86)(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 JP2020002198
(87)【国際公開番号】W WO2020149422
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】19305056.4
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】リ、キャンルイ
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0338873(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0170442(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0188751(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0230095(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03297236(EP,A1)
【文献】特開2013-214900(JP,A)
【文献】特開2013-201472(JP,A)
【文献】Tadilo Endeshaw Bogale et al.,On the Number of RF Chains and Phase Shifters, and Scheduling Design With Hybrid Analog-Digital Beamforming,IEEE Transactions on Wireless Communications,2016年01月20日,VOL.15, NO.5,pp.3311-3326
【文献】Qianrui Li et al.,Hybrid sum rate maximization beamforming for multi-user massive MIMO millimeter wave system,2017 IEEE 28th Annual International Symposium on Personal, Indoor, and Mobile Radio Communications (PIMRC),2018年02月15日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/0452
H04B 7/0456
H04B 7/06
H04L 27/26
H04J 1/00
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のL個の副搬送波を介して複数の受信機にサービス提供することができる送信機を備えるミリ波通信システムにおいてアナログ及びデジタルプリコーディングを可能にするコンピューターによって実施されるハイブリッドアナログ/デジタルビームフォーミング方法であって、該方法は、
アナログプリコーディング行列 RF 及び複数のマルチユーザーグループ
【数1】
同時決定することであって、各マルチユーザーグループ
【数2】
は、前記複数の副搬送波の中のそれぞれの副搬送波lに関連付けられ、各マルチユーザーグループ
【数3】
は、前記それぞれの副搬送波l上でのデータ送信に同時にサービス提供を受ける前記複数の受信機の中の複数の受信機を含むことと、
前記複数の副搬送波の中の各副搬送波lについて、
デジタルベースバンドプリコーダーFBB[l]によりN(l)個のデータストリームI1,...,IN(l)を処理することと、
送信RFチェーンを使用して前記デジタルベースバンドプリコーダーFBB[l]の出力を処理することと、
前記複数の副搬送波の中の或る副搬送波上で前記複数の受信機の中の少なくとも1つの受信機に送信する少なくとも1つの信号を得るために前記アナログプリコーディング行列 RF を使用する前記送信RFチェーンの出力を処理することと、
を含み、
前記アナログプリコーディング行列FRF及び前記複数のマルチユーザーグループ
【数4】
の前記同時決定は、
/a/前記アナログプリコーディング行列FRF及び前記マルチユーザーグループ
【数5】
のビームフォーミング関数
【数6】
を前記アナログプリコーディング行列FRFに関して最適化することであって、前記マルチユーザーグループ
【数7】
が確定されることと、
/b/前記アナログプリコーディング行列FRF及び前記マルチユーザーグループ
【数8】
のスケジューリング関数
【数9】
を前記マルチユーザーグループ
【数10】
に関して最適化することであって、前記アナログプリコーディング行列 RF の値が確定されることと、
を含み、
/a/及び/b/は、停止基準が満たされるまで反復的に繰り返される、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
/b/は/a/の後に実行され、/a/において、前記マルチユーザーグループ
【数11】
は、前記同時決定の以前の反復において取得され、/b/において、前記アナログプリコーディング行列FRFの前記値は、/a/の現在の反復において取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
/b/は/a/の前に実行され、/a/において、前記マルチユーザーグループ
【数12】
は、/b/の現在の反復において取得され、/b/において、前記アナログプリコーディング行列 RF の前記値は、前記同時決定の以前の反復において取得され、反復は、処理/b/及び処理/a/の両方の実行を含み、前記以前の反復及び前記現在の反復は、2つの連続する反復であり、前記以前の反復は、前記現在の反復の直前の反復を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アナログプリコーディングは、アナログプリコーディングコードワードの集合
【数13】
を使用することによって実行され、
/a/は、
第1の行列 RF の列が前記アナログプリコーディングコードワードの集合
【数14】
に属することを仮定せずに前記ビームフォーミング関数
【数15】
を最適化する前記第1の行列 RF を決定することと、
少なくとも1つのアナログプリコーディングコードワードを決定することであって、決定された各アナログプリコーディングコードワードは、前記第1の行列 RF の列までの距離を最小にするものであることと、
列が前記決定された少なくとも1つのアナログプリコーディングコードワードに等しい前記アナログプリコーディング行列FRFを決定することと、
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのアナログ結合行列WRF,π(l,k)を決定することを更に含み、
前記ビームフォーミング関数及び前記スケジューリング関数は、更に前記少なくとも1つのアナログ結合行列WRF,π(l,k)の関数であり、
/a/における前記最適化は、前記アナログプリコーディング行列FRF及び前記少なくとも1つのアナログ結合行列WRF,π(l,k)に関する前記ビームフォーミング関数の同時最適化であり、
/b/における前記最適化は、前記少なくとも1つのアナログ結合行列WRF,π(l,k)の中の或るアナログ結合行列の値が確定されることによって行われ、
少なくとも1つの決定されたアナログ結合行列WRF,π(l,k)は、前記複数の副搬送波の中の或る副搬送波上で前記複数の受信機の中の少なくとも1つの受信機に送信する少なくとも1つの信号の処理に更に使用され、前記π(l,k)はインデックスとして機能するものであり、前記π(l,k)におけるlは前記副搬送波lを示し、前記π(l,k)におけるkは前記複数の受信機の中の第kの受信機を示す、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アナログ結合は、アナログ結合コードワードの集合
【数16】
を使用することによって実行され、
/a/は、
第2の行列 RF,π(l,k) の列が前記アナログ結合コードワードの集合
【数17】
に属することを仮定せずに前記ビームフォーミング関数を最適化する前記第2の行列 RF,π(l,k) を決定することと、
少なくとも1つのアナログ結合コードワードを決定することであって、決定された各アナログ結合コードワードは、前記第2の行列 RF,π(l,k) の列までの距離を最小にするものであることと、
列が前記決定された少なくとも1つのアナログ結合コードワードに等しいアナログ結合行列WRF,π(l,k)を決定することと、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
複数の送信行列
【数18】
を受信することであって、前記複数の送信行列の中の各送信行列は、前記複数の受信機の中の或る受信機π(l,k)と、前記複数の副搬送波の中の或る副搬送波lとに関連付けられ、前記複数の送信行列の中の各送信行列の列は、前記アナログプリコーディングコードワードの集合
【数19】
に属することと、
前記複数の送信行列
【数20】
に基づいて、複数の受信機集合
【数21】
を決定することであって、各受信機集合
【数22】
は、前記複数の受信機の中の1つ以上の受信機を含み、前記1つ以上の受信機の中の各受信機は、前記複数の副搬送波の中の或る副搬送波に関連付けられることと、
を更に含み、
/a/は、
複数のアナログプリコーディング部分行列FRF,kを決定することであって、各アナログプリコーディング部分行列FRF,kは、それぞれの受信機集合
【数23】
の受信機に関連付けられた前記アナログプリコーディング行列FRFの一部分に対応すること、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の送信行列の中の各送信行列は、アナログプリコーディングコードワードであり、前記複数の副搬送波の中のそれぞれの副搬送波と、前記複数の受信機の中のそれぞれの受信機とに関連付けられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各送信行列は、前記送信機と前記それぞれの副搬送波上の前記それぞれの受信機との間のそれぞれの重要な通信パスに対応する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の受信機集合
【数24】
は、前記複数の送信行列
【数25】
の中の少なくとも2つの送信行列の間の類似性尺度に基づいて決定される、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にするミリ波通信システムの送信機であって、該送信機は、複数のL個の副搬送波を介して複数の受信機にサービス提供することができ、該送信機は、
アナログプリコーディング行列FRF及び複数のマルチユーザーグループ
【数26】
同時決定する回路であって、各マルチユーザーグループ
【数27】
は、前記複数の副搬送波の中のそれぞれの副搬送波lに関連付けられ、各マルチユーザーグループ
【数28】
は、前記それぞれの副搬送波l上でのデータ送信に同時にサービス提供を受ける前記複数の受信機の中の複数の受信機を含む、回路と、
少なくとも、前記複数の副搬送波の中の各副搬送波について、デジタルベースバンドプリコーダーFBB[l]によりNs(l)個のデータストリームI1,...,INs(l)を処理する回路と、
少なくとも、前記デジタルベースバンドプリコーダーFBB[l]の出力を処理するための送信RFチェーンを表す回路と、
前記送信RFチェーンの出力を処理することと、
前記アナログプリコーディング行列FRFを使用することによって、前記複数の副搬送波の中の或る副搬送波上で前記複数の受信機の中の少なくとも1つの受信機に送信する少なくとも1つの信号を得るために、前記送信RFチェーンの出力を処理する回路と、
を備え、
前記アナログプリコーディング行列FRF及び前記複数のマルチユーザーグループ
【数29】
の前記同時決定は、
/a/前記アナログプリコーディング行列FRF及び前記マルチユーザーグループ
【数30】
のビームフォーミング関数
【数31】
を前記アナログプリコーディング行列FRFに関して最適化することであって、前記マルチユーザーグループ
【数32】
が確定されることと、
/b/前記アナログプリコーディング行列 RF 及び前記マルチユーザーグループ
【数33】
のスケジューリング関数
【数34】
を前記マルチユーザーグループ
【数35】
に関して最適化することであって、前記アナログプリコーディング行列FRFの値が確定されることと、
を含み、
/a/及び/b/は、停止基準が満たされるまで反復的に繰り返される、
ことを特徴とする、送信機。
【請求項12】
アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にするミリ波通信システムであって、複数の副搬送波を介して複数の受信機にサービス提供することができる請求項11に記載の送信機を備える、システム。
【請求項13】
プログラム命令を含むコンピュータープログラムが記憶される非一時的コンピューター可読記憶媒体であって、前記コンピュータープログラムは、データ処理ユニット内にロード可能であり、前記コンピュータープログラムが前記データ処理ユニットによって実行されると、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を前記データ処理ユニットに実行させるように構成される、非一時的コンピューター可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス通信に関し、より具体的には、マルチユーザー(MU:multi-user)広帯域ミリ波(mmWave:millimeter wave:ミリメートル波)システム、例えば、広帯域MUmmWaveマッシブ多入力/多出力(MIMO:Multiple-Input/Multiple-Output)システムにおける無線リソース管理の技法に関する。
【背景技術】
【0002】
30ギガヘルツ(GHz)から300GHzに及ぶ搬送波周波数を利用するミリ波(mmWave)ワイヤレス通信は、例えば、今後の5Gセルラーシステムにとってキーフィーチャになると予想される。そのような高周波数を用いることの主な利点は、より高いデータレートに対してはるかに多くのスペクトルが利用可能であるということである。
【0003】
ミリ波伝播は、特に、自由空間における高いパス損失、建築材料を通した高い侵入損失、弱い回折、及び遮断に対する脆弱性によって特徴付けられる。したがって、伝播減損を補償するとともに数百メートルの距離にわたってセルラーカバレッジを可能にするために、送信側及び受信側の双方において高い指向性の適応アンテナアレイを用いなければならない。
【0004】
指向性アレイは、通例、非常に多くのアンテナ素子、例えば、数十個から数百個のアンテナ素子を用いて構築される。高い指向性利得に加えて、大規模なアンテナアレイの使用によって、より狭いビームを実現することができるので、空間多重化が高められる。
【0005】
広帯域mmWaveシステムにおける無線リソース管理は、実際には、6GHz未満の従来のシステムにおける無線リソース管理よりもはるかに複雑である。大規模なアンテナアレイを備えるシステムの場合、広帯域幅の混合信号構成要素は費用がかかり、大量の電力を消費するので、送受信機の無線周波数(RF)チェーンの数はアンテナの数よりも少なくする必要がある。RFチェーンの数を削減するために、ハイブリッドアナログ/デジタルビームフォーミングアーキテクチャが一般に使用される。
【0006】
ハイブリッドアーキテクチャの利点のうちの1つは、付加的なデジタル処理を用いて、アナログ処理の精度不足(例えば、限られた位相分解能でのみ機能する移相器に起因する)を補償できることである。しかしながら、広帯域mmWaveシステムの場合に、広帯域システムのアナログRF(又は単に「RF」)ビームフォーミングは全ての副搬送波間で共有される一方、デジタルベースバンド(又は単に「ベースバンド」)ビームフォーミングは、副搬送波間で異なる可能性があるので、無線リソース管理のビームフォーミング設計(すなわち、アナログビームフォーマー及びデジタルビームフォーマーの設計)は、6GHz未満で動作する狭帯域mmWaveシステム又は従来のLTEシステムにおけるビームフォーミング設計よりもはるかに複雑である。
【0007】
加えて、マルチユーザー(MU)システムでは、複数のユーザー機器(UE:User Equipment、以下、「ユーザー」又は「受信機」とも言う)をデータ送信用の同じ一組のリソースブロック(RB:Resource Block)に割り当てることができる。したがって、無線リソース管理は、
-MUスケジューリング用にUEをグループ化するユーザーグループ化、及び
-時間リソース及び周波数リソースをUEのグループに割り当てるリソース配分、
の双方の問題を考慮しなければならない。
【0008】
UEのグループへのユーザースケジューリング、リソース配分及びユーザーグループ化の原理は、図1に表されている。
【0009】
図1は、複数のアクティブUE102a、102b、102c、102dを含む基地局(BS:Base Station)103(以下、「送信機」とも言う)によってサービス提供を受けるセル101を表している。最初に、アクティブUE102a、102b、102c、102dの中から複数のアクティブUE104を送信のために選択することができる。選択されたUE(スケジューリングされたUEとも呼ばれる)は、図1において円で囲まれている。広帯域システムの場合に、各スケジューリングされたUEは、その後、リソース配分手順の間に、送信用の或る特定の周波数帯域に割り当てることができる。マルチユーザー送信方式の場合には、複数のユーザーに同じ時間周波数リソース(すなわち、一組のリソースブロック(RB))において同時にサービス提供することができる。そのために、ユーザーグループ化が実行され、MUグループのUEが同じ時間周波数リソース106a、106bを占有するようなUEのマルチユーザーグループ105a、105bが形成される。例えば、L個の副搬送波を有する広帯域システムでは、各副搬送波l=1...Lについて、K人のユーザー(K≧1は整数)が第lの副搬送波上で同時にサービス提供を受けるものと仮定することができる。その場合に、各MUグループ
【数1】
(l=1...L)は、第lの副搬送波上で同時にサービス提供を受けるK人のユーザーを含むことができる。
【0010】
図2a及び図2bは、ハイブリッド広帯域ワイヤレスシステムにおける送信機及び受信機の例をそれぞれ表している。
【0011】
図2aによれば、送信機200は、N個の送信アンテナ及びL個の送信RFチェーンを備える。この送信機は、L個の副搬送波を有する広帯域システム上で動作し、各副搬送波l(l=1,...,L)上には、K人のユーザーが送信機200によって同時にスケジューリング及びサービス提供を受けるものと仮定される。以下では、所与の副搬送波l上のスケジューリングされたユーザーのインデックスが、π(l,k)(l=1,...,L及びk=1,...,K)で示される。換言すれば、ユーザーπ(l,k)は、第lの副搬送波上の第kのユーザーである。
【0012】
送信機200において、副搬送波l(l=1,...,L)ごとに、N(l)個のデータストリーム
【数2】
が、ベースバンドプリコーダー201、202(又は「ベースバンドプリコーディング行列」)FBB[l]によって処理され、これに続いて、RFプリコーダー203(又は「RFプリコーディング行列」)FRFによって処理される。デジタルベースバンドプリコーダー201、202は、異なる副搬送波間で異なる場合がある一方、アナログRFプリコーダー203は全ての副搬送波について同じであることに留意しなければならない。
【0013】
図2bに表す実施形態によれば、第π(l,k)の受信機210 π(l,k)(1≦k≦K及び1≦l≦L)は、
【数3】
個の受信アンテナ及び
【数4】
個の受信RFチェーンを備えることができる。第π(l,k)の受信機210は、送信機から
【数5】
個のデータストリームを受信することができる。受信されたデータストリームは、RFコンバイナー211
【数6】
及びそれに続くベースバンドコンバイナー212
【数7】
によって処理することができる。RFコンバイナー及びベースバンドコンバイナーによる処理後、第π(l,k)の受信機210は、
【数8】
個のデータストリーム
【数9】
を出力することができる。図2bに表すように、第π(l,k)の受信機に2つ以上のベースバンドコンバイナーが存在することができる。実際は、第lの副搬送波上のスケジューリングされたユーザーπ(l,k)は、他の副搬送波l,...,l上でもスケジューリングすることができる。
【0014】
もちろん、図2a及び図2bに表すアーキテクチャは、本方法を実行することができるハイブリッド広帯域ワイヤレスシステムの一例にすぎない。他のシステムを考慮することもできる。例えば、受信機には、アナログコンバイナー及びデジタルコンバイナーの双方ではなく、アナログコンバイナーしか存在しない場合がある。
【0015】
そのようなハイブリッド広帯域ワイヤレスシステムの全体性能は、「性能指数」と呼ばれる値によって定量化することができ、性能指数は、MUグループ
【数10】
と、RFビームフォーミング行列、すなわち、RFプリコーディング行列FRF及びRF結合行列WRF,π(l,k)との関数であることが分かる。
【0016】
一例として、無線リソース管理の性能指数が、可能な実施形態によるダウンリンク(DL:downlink)送信の平均広帯域総和レートである場合が以下で提供される。
【0017】
この実施形態では、K個の受信機が各副搬送波上でマルチユーザー送信のために同時にサービス提供を受けると仮定される。他の実施形態では、同時にサービス提供を受ける受信機の数が、2つの別個の副搬送波について異なることができる。K個の受信機(K≧2)が各副搬送波l(l=1,...,L)上で同時にサービス提供を受ける場合に、副搬送波l上で送信機によって送信されるストリームの総数は、
【数11】
に等しい。その場合に、
【数12】
及び
【数13】
である。
【0018】
さらに、以下の制約を仮定することができる。
【数14】
及び
【数15】
及び
【数16】
【0019】
受信機π(l,k)、すなわち、第lの副搬送波(1≦l≦L)上での第kの受信機(kは1≦k≦Kの整数である)において受信された信号
【数17】
は、以下のように記述することができる。
【数18】
ここで、Mは、行列Mの共役転置行列を表し、
【数19】
は、第lの副搬送波上の第kの受信機のユーザーチャネル行列であり、
【数20】
は、第lの副搬送波上でスケジューリングされるK個の全ての受信機のデータシンボル
【数21】
の連結であり、nπ(l,k)[l]は、第π(l,k)の受信機の雑音ベクトルである。
【0020】
ユーザーチャネル行列(又は「チャネル状態情報」、CSI:channel state information)Hπ(l,k)(l)が受信機において完全に知られているわけではない場合に、受信機におけるCSI(CSIR:CSI at the Receiver)を推定するために、チャネル推定を実行することができる。CSIRを推定する現時点における最新技術水準の任意の方法を実行することができる。本開示では、Hπ(l,k)(l)は、これが知られている場合には完全なCSIRを表すこともできるし、或いは、専用の方法によって得られるCSIRの推定値を表すこともできる。
【0021】
データシンボルベクトルの電力は
【数22】
を満たし、nπ(l,k)[l]はガウスベクトルであると仮定することができる。ここで、
【数23】
は統計的期待値を表し、Iszはサイズszの単位行列を表す。例えば、
【数24】
である。ここで、σ>0である。RFプリコーダー及びベースバンドプリコーダーは、次の電力制約、すなわち、
【数25】
を受けるものと仮定することもできる。Ptot[l]は、第lの副搬送波上の総送信電力であり、
【数26】
は、行列Mのノルム、例えば、フロベニウスノルムである。
【0022】
ハイブリッドアーキテクチャのRFプリコーダー/コンバイナーは、位相シフターによって実施することができ、各送受信機は、位相シフターのネットワークを通じて各アンテナに接続される。この場合に、行列FRF及びWRF,π(l,k)の要素は、以下の式を満たすことができる。
【数27】
全てのk=1,...,K及びl=1,...,Lについて、
【数28】
全てのk=1,...,Kについて、
【数29】
ここで、Φprecは、送信機における位相シフターの量子化位相の離散集合であり、
【数30】
は、受信機π(l,k)における位相シフターの量子化位相の離散集合である。
【0023】
1つの実施形態では、最小平均二乗誤差(MMSE:minimum mean square error)ベースバンドデジタルビームフォーミングを受信機π(l,k)において使用することができる。ベースバンドプリコーダーFBB[l]は、k=1,...,KであるK個の部分行列FBB,π(l,k)[l]の連結として記述することができる。
【数31】
ここで、FBB,π(l,k)[l]は、受信機π(l,k)に送信されるプリコーディング信号に使用される行列FBB[l]の部分である。デジタルベースバンドコンバイナーは、したがって、以下のように記述することができる。
【数32】
ここで、
【数33】
は、受信機π(l,k)の等価チャネルである。
【0024】
ダウンリンク(DL)送信の平均広帯域総和レートは以下である。
【数34】
ここで、Rπ(l,k)は、スケジューリングされた受信機π(l,k)の実効雑音共分散行列であり、以下の式によって与えられる。
【数35】
ここで、
【数36】
は、第lの副搬送波上で同時にサービス提供を受けるK人のユーザーを含むMUグループである。
【0025】
システムの全体性能を最大にするために、
【数37】
、FRF及びWRF,π(l,k)の関数を同時に最適化すること(正:optimizing)は、パラメーターが連続領域において最適化されるものもある一方、離散コードブック空間において最適化されるものもある幾つかのパラメーターの同時最適化であるという意味で、難解な非凸ハイブリッド最適化問題である。その理由から、閉形式の解を合理的な時間内に見つけることは困難であり、或いは、準最適な数値解であっても合理的な時間内に見つけることは困難である。加えて、そのような問題を解くには、全ての副搬送波上の全てのユーザーのチャネル状態情報(CSI)を送信機において収集することが必要とされ、現実のシステム設計にとって容認できない膨大なシグナリングオーバーヘッドがもたらされる。
【0026】
従来技術のアルゴリズムでは、ユーザースケジューリング、すなわち、MUグループ
【数38】
の決定と、RFビームフォーミング設計、すなわち、RFビームフォーミング行列FRF,RF,π(l,k)の決定とは、互いに独立して逐次処理される。より具体的には、これらのアルゴリズムは、最初に、既定のスケジューリング基準に基づいてユーザーグループ
【数39】
を決定し、次に、既定のRFビームフォーミング基準に基づいてRFビームフォーミング行列FRF,RF,π(l,k)を決定する。しかしながら、ユーザースケジューリング問題及びRFビームフォーミング問題の双方のそのような逐次処理は、性能劣化をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、良好な性能を有するとともに、高い計算複雑度及び膨大なシグナリングオーバーヘッドを回避する、広帯域マルチユーザーマッシブMIMOシステムにおけるユーザースケジューリング及びRFビームフォーミング設計の方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、複数の副搬送波を介して複数の受信機にサービス提供することができる送信機を備えるミリ波通信システムにおいてアナログプリコーディングを可能にするコンピューターによって実施されるビームフォーミング方法であって、本方法は、
-アナログプリコーディング行列FRF及び複数のマルチユーザーグループ
【数40】
を同時に決定することであって、各マルチユーザーグループ
【数41】
は、複数の副搬送波の中のそれぞれの副搬送波lに関連付けられ、各マルチユーザーグループ
【数42】
は、それぞれの副搬送波l上でのデータ送信に同時にサービス提供を受ける複数の受信機の中の複数の受信機を含むことと、
-複数の副搬送波の中の或る副搬送波上で複数の受信機の中の少なくとも1つの受信機に送信する少なくとも1つの信号の処理にアナログプリコーディング行列FRFを使用することと、
を含み、
アナログプリコーディング行列FRF及び複数のマルチユーザーグループ
【数43】
の同時決定は、
/a/アナログプリコーディング行列FRF及びマルチユーザーグループ
【数44】
のビームフォーミング関数
【数45】
をアナログプリコーディング行列FRFに関して最適化することであって、マルチユーザーグループ
【数46】
が確定されることと、
/b/アナログプリコーディング行列FRF及びマルチユーザーグループ
【数47】
のスケジューリング関数
【数48】
をマルチユーザーグループ
【数49】
に関して最適化することであって、アナログプリコーディング行列FRFの値が確定されることと、
を含み、
/a/及び/b/は、停止基準が満たされるまで反復的に繰り返される、
ことを特徴とする、方法に関する。
【0029】
上述したように、ミリ波システムは、従来の通信システムと比較して追加の制約(RFプリコーディングコードブック及びRF結合コードブック、RFプリコーダー及びRFコンバイナーの非周波数選択性特性等)を受ける。したがって、これらのmmWaveシステムについて、プリコーダー及びスケジューリングの設計は、これらの特定の制約を考慮しなければならず、この設計は、従来のサブ6GHzシステムと非常に異なる。本発明は、スケジューリング問題(本方法のステップb/)及びRFビームフォーミング(本方法のステップa/)の同時交互最適化に基づく多段式方法を用いて、これらの特定の制約下でビームフォーミング設計の問題を解くことを提案する。
【0030】
一実施の形態において、/b/は/a/の後に実行することができる。/a/において、マルチユーザーグループ
【数50】
は、同時決定の以前の反復において取得することができ、/b/において、アナログプリコーディング行列FRFの値は、/a/の現在の反復において取得することができる。
【0031】
「以前の」反復及び「現在の」反復は、本方法の2つの連続する反復を意味し、「以前の」反復は、「現在の」反復の直前の反復を示す。
【0032】
代替の実施の形態において、/b/は/a/の前に実行することができる。/a/において、マルチユーザーグループ
【数51】
は、/b/の現在の反復において取得することができ、/b/において、アナログプリコーディング行列FRFの値は、同時決定の以前の反復において取得することができる。
【0033】
1つ又は幾つかの実施の形態において、アナログプリコーディングは、アナログプリコーディングコードワードの集合
【数52】
を使用することによって実行することができ、
/a/は、
-第1の行列FRF の列がアナログプリコーディングコードワードの集合
【数53】
に属することを仮定せずにビームフォーミング関数
【数54】
を最適化する第1の行列FRF を決定することと、
-少なくとも1つのアナログプリコーディングコードワードを決定することであって、決定された各アナログプリコーディングコードワードは、第1の行列FRF の列までの距離を最小にするものであることと、
-列が決定された少なくとも1つのアナログプリコーディングコードワードに等しいアナログプリコーディング行列FRFを決定することと、
を含むことができる。
【0034】
加えて、本方法は、少なくとも1つのアナログ結合行列WRF,π(l,k)を決定することを更に含むことができ、
ビームフォーミング関数及びスケジューリング関数は、更に少なくとも1つのアナログ結合行列WRF,π(l,k)の関数とすることができ、
/a/における最適化は、アナログプリコーディング行列FRF及び少なくとも1つのアナログ結合行列WRF,π(l,k)に関するビームフォーミング関数の同時最適化とすることができ、
/b/における最適化は、少なくとも1つのアナログ結合行列WRF,π(l,k)の中の或るアナログ結合行列の値が確定されることによって行うことができ、
少なくとも1つの決定されたアナログ結合行列WRF,π(l,k)は、複数の副搬送波の中の或る副搬送波上で複数の受信機の中の少なくとも1つの受信機に送信する少なくとも1つの信号の処理に更に使用することができる。
【0035】
さらに、アナログ結合は、アナログ結合コードワードの集合
【数55】
を使用することによって実行することができ、
/a/は、
-第2の行列WRF,π(l,k) の列がアナログ結合コードワードの集合
【数56】
に属することを仮定せずにビームフォーミング関数を最適化する第2の行列WRF,π(l,k) を決定することと、
-少なくとも1つのアナログ結合コードワードを決定することであって、決定された各アナログ結合コードワードは、第2の行列WRF,π(l,k) の列までの距離を最小にするものであることと、
-列が決定された少なくとも1つのアナログ結合コードワードに等しいアナログ結合行列WRF,π(l,k)を決定することと、
を含む。
【0036】
1つ又は幾つかの実施の形態において、本方法は、
-複数の送信行列
【数57】
を受信することであって、複数の受信行列の中の各送信行列は、複数の受信機の中の或る受信機π(l,k)と、複数の副搬送波の中の或る副搬送波lとに関連付けられ、複数の受信行列の中の各受信行列の列は、アナログプリコーディングコードワードの集合
【数58】
に属することと、
-複数の送信行列
【数59】
に基づいて、複数の受信機集合
【数60】
を決定することであって、各受信機集合
【数61】
は、複数の受信機の中の1つ以上の受信機を含み、1つ以上の受信機の中の各受信機は、複数の副搬送波の中の或る副搬送波に関連付けられることと、
を更に含むことができ、
/a/は、
-複数のアナログプリコーディング部分行列FRF,kを決定することであって、各アナログプリコーディング部分行列FRF,kは、それぞれの受信機集合
【数62】
の受信機に関連付けられたアナログプリコーディング行列FRFの一部分に対応すること、
を更に含むことができる。
【0037】
受信機集合の決定(「クラスタリング手順」とも呼ばれる)は、複雑度と性能とのより良好な妥協を提供する。このクラスタリング手順を用いると、FRF及びWRF,π(l,k)の最適化を解くことは、FRF,k及びWRF,π(l,k)のK個の並列化可能な最適化を解くことに変換され、各問題は、より小さな問題次元及び削減された探索空間を有する一方、クラスタリングに起因した総和レート性能劣化は無視することができる。
【0038】
このクラスタリング手順は最適であることを理解しなければならない。一方、そのようなクラスタリングが行われない場合には、BSにおける集中型設計の(スケジューリング設計用の)探索空間はより大きくなり、(RFプリコーダー/コンバイナー最適化の)複雑度は、問題次元に起因して増加する。
【0039】
一実施の形態において、複数の送信行列の中の各送信行列は、アナログプリコーディングコードワードとすることができ、複数の副搬送波の中のそれぞれの副搬送波と、複数の受信機の中のそれぞれの受信機とに関連付けることができる。
【0040】
さらに、各送信行列は、送信機とそれぞれの副搬送波上のそれぞれの受信機との間のそれぞれの重要な通信パスに対応することができる。
【0041】
mmWave通信システムでは、大きな利得を有するパスの数は、チャネル行列のサイズを比較して非常に小さい。重要なパスのみを使用することは、チャネルスパース性を有利に利用し、したがって、BSとUEとの間で交換される情報の量が制限される。
【0042】
さらに、複数の受信機集合
【数63】
は、複数の送信行列
【数64】
の中の少なくとも2つの送信行列の間の類似性尺度に基づいて決定することができる。
【0043】
本発明の別の態様は、アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にするミリ波通信システムの送信機であって、この送信機は、複数の副搬送波を介して複数の受信機にサービス提供することができる、送信機に関する。この送信機は、
-アナログプリコーディング行列FRF及び複数のマルチユーザーグループ
【数65】
を同時に決定する回路であって、各マルチユーザーグループ
【数66】
は、複数の副搬送波の中のそれぞれの副搬送波lに関連付けられ、各マルチユーザーグループ
【数67】
は、それぞれの副搬送波l上でのデータ送信に同時にサービス提供を受ける複数の受信機の中の複数の受信機を含む、回路と、
-アナログプリコーディング行列FRFを使用することによって、複数の副搬送波の中の或る副搬送波上で複数の受信機の中の少なくとも1つの受信機に送信する少なくとも1つの信号を処理する回路と、
を備えることができ、
アナログプリコーディング行列FRF及び複数のマルチユーザーグループ
【数68】
の同時決定は、
/a/アナログプリコーディング行列FRF及びマルチユーザーグループ
【数69】
のビームフォーミング関数
【数70】
をアナログプリコーディング行列FRFに関して最適化することであって、マルチユーザーグループ
【数71】
が確定されることと、
/b/アナログプリコーディング行列FRF及びマルチユーザーグループ
【数72】
のスケジューリング関数
【数73】
をマルチユーザーグループ
【数74】
に関して最適化することであって、アナログプリコーディング行列FRFの値が確定されることと、
を含み、
/a/及び/b/は、停止基準が満たされるまで反復的に繰り返される、
ことを特徴とする。
【0044】
本発明の更に別の態様は、アナログプリコーディング及びアナログ結合を可能にするミリ波通信システムであって、複数の副搬送波を介して複数の受信機にサービス提供することができる上記で規定された送信機を備える、システムに関する。
【0045】
本発明の更に別の態様は、プログラム命令を含むコンピュータープログラムが記憶される非一時的コンピューター可読記憶媒体であって、コンピュータープログラムは、データ処理ユニット内にロード可能であり、コンピュータープログラムがデータ処理デバイスによって実行されると、上記方法をデータ処理ユニットに実行させるように構成される、非一時的コンピューター可読記憶媒体に関する。
【0046】
本明細書に開示される方法及び装置の他の特徴及び利点は、添付図面に関する非限定的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【0047】
本発明は、添付図面の図に、限定としてではなく例として示される。添付図面において、同様の参照符号は同様の要素を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】広帯域マルチユーザーシステムにおけるユーザースケジューリング、リソース配分及びユーザーグループ化を表す図である。
図2A】ハイブリッド広帯域ワイヤレスシステムにおける送信機の一例を表す図である。
図2B】ハイブリッド広帯域ワイヤレスシステムにおける受信機の一例を表す図である。
図3】本発明の可能な実施形態におけるMUグループ、RFプリコーダーFRF及びRFコンバイナーWRF,π(l,k)の送信機における同時決定を説明するフローチャートである。
図4】本発明の可能な実施形態における決定されたユーザー集合
【数75】
に基づくMUグループ、RFプリコーダーFRF及びRFコンバイナーWRF,π(l,k)の同時決定を説明するフローチャートである。
図5】本発明を可能にするデバイスの可能な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
「備える」、「含む」、「組み込む」、「収容する」、「である」、及び「有する」のような表現は、説明及び関連する特許請求の範囲を解釈する際に非排他的に解釈されるべきであり、すなわち、同様に存在していると明示的には規定されない他の項目又は構成要素を考慮に入れるように解釈されるべきである。単数形への参照は複数形への参照であるとも解釈されるべきであり、その逆も同様である。
【0050】
以下では、アナログプリコーディング行列FRFが、有限サイズRFプリコーディングコードブック
【数76】
から選択され、アナログ結合行列WRF,π(l,k)が、有限サイズRF結合コードブック
【数77】
から選択されると仮定する。RF結合コードブックは、全ての受信機について同じものとすることもできるし、異なる受信機については異なるものとすることもできる。任意のタイプのコードブック、例えば、グラスマニアンコードブック又はビームステアリングコードブックを
【数78】
及び
【数79】
に選ぶことができる。コードブックの要素はコードワードと呼ばれる。
【数80】
のコードワードは「RFプリコーディングコードワード」と呼ばれ、
【数81】
のコードワードは「RF結合コードワード」と呼ばれる。
【0051】
1つの実施形態では、プリコーディングコードブック
【数82】
は、オーバーサンプリングされた離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)行列、すなわち、DFT行列から選択された部分行列を再正規化することによって構築される行列に基づいている。そのような行列は、以下のようにアルゴリズム的に取得することができる。
【数83】
ここで、Nosはオーバーサンプリング比であり、FFT(X)はXの離散フーリエ変換を返し、eye(sz)は、主対角線上に1を有し、それ以外は0を有するサイズsz×szのアレイを返し、sqrt(x)は、数xの平方根を返し、norm(A)は、Aから得られる正規化された行列を返す(すなわち、Aの各列について、その列の全ての係数はその列のノルムによって除算される;したがって、得られた行列の各列は1に等しいノルムを有する)。最終行列Wは、Wの最初の1~Nの行及び最初の1~Nos*Nの列のみを選択することによって得られるWの部分行列である。その結果得られる行列Wの各列は、プリコーディングコードブックのコードワードに対応する。このコードブックプリコーディングは、それぞれがサイズN×1のNos*N個のコードワードを有する。
【0052】
本発明において使用することができるプリコーディングコードブック
【数84】
の別の例を以下に示す。
【数85】
ここで、コードワードベクトルcの第tの成分(t=1,...,N)は、
【数86】
に等しい。
【0053】
第i(i=1,...,Nos*N)のコードワードのビーム方向は、
【数87】
であり、ここで、λは波長であり、dはアンテナ間隔である。
【0054】
双方の場合において、コードブック内の各コードワードは、長さNのベクトルであり、オーバーサンプリングレートは、Nos>1であり、
【数88】
は、各列がプリコーディングコードワードとしての機能を果たすN×(Nos*N)行列である。
【0055】
もちろん、他のプリコーディングコードブックも使用することができる。
【0056】
本発明は、ユーザーMUグループ化(すなわち、異なる副搬送波l=1...L上で同時にサービス提供を受けるK個のUEのMUグループ
【数89】
を決定すること)と、RFビームフォーミング設計(すなわち、RFプリコーダーFRF及び最終的にはコンバイナーWRF,π(l,k)を決定すること)とを同時に実行することを提案する。ベースバンドビームフォーミング設計(すなわち、デジタルプリコーディング行列及び結合行列の決定)は、ここでは検討されない。ユーザーグループ及びRFビームフォーミング行列が決定されると、ベースバンドビームフォーミング行列を決定するのに任意の方法を使用することができる。より具体的には、本発明は、ユーザースケジューリングとRFビームフォーミング設計との間の交互の最適化によって、
【数90】
、WRF,π(l,k)及びFRFの同時決定を提案する。
【0057】
図3は、本発明の可能な実施形態におけるMUグループ
【数91】
、RFプリコーダーFRF及びRFコンバイナーWRF,π(l,k)の送信機における同時決定を説明するフローチャートである。この実施形態によれば、この決定は、各反復が以下の2つのステップを含む反復的手順を使用することによって行うことができる。
1/RFプリコーダーFRF及びRF結合行列WRF,π(l,k)が、既定のRFビームフォーミング設計基準
【数92】
を最適化することによって決定される第1のステップ302。MUグループ
【数93】
は、以前の反復に従って確定される。
そのような最適化は、以下の最大化又は最小化とすることができる。
【数94】
又は
【数95】
2/MUグループ
【数96】
が既定のスケジューリング設計基準g(π(l,k)、FRF,RF,π(l,k))を最適化することによって決定される第2のステップ303。RFビームフォーミング行列WRF,π(l,k)及びFRFは、第1のステップにおいて決定された値に確定される。
そのような最適化は、以下の最大化又は最小化とすることができる。
【数97】
又は
【数98】
【0058】
上記手順の最初の反復の前に、例えば、ユーザー集合
【数99】
の中からの無作為抽出によってMUグループ
【数100】
を初期化することができる(301)。別の可能なストラテジーは、UEバッファー(アップリンク送信の場合)に最も大量のパケットを有するユーザーを選ぶこと又はBSバッファー(ダウンリンク送信の場合)に最も大量の専用パケットを有するユーザーを選ぶことにあるとすることができる。
【0059】
ステップ1/及び2/は、既定の収束基準304が満たされるまで交互に繰り返すことができる。この収束基準304は、例えば、現在の反復における行列と直前の反復における対応する行列との間の数学的距離に基づくことができる。距離が既定の閾値よりも(正:than)小さい場合には、収束基準が満たされ、
【数101】
、FRF,RF,π(l,k)が出力される(305)。
【0060】
例えば、ステップ1/の最適化問題は、最初に、コードブック制約なしで解くことができる。すなわち、FRF 及びWRF,π(l,k) がRFプリコーディングコードブック
【数102】
及びRF結合コードブック
【数103】
に属することを仮定せずに、
【数104】
を最適化するFRF 及びWRF,π(l,k) を選ぶことによって解くことができる。この問題は、その場合に、例えば、半正定値緩和及びランダム化手順によって解くことができる二次制約付き(電力制約に起因する)二次計画法である。その場合に、FRF(又はWRF,π(l,k))は、FRF (又はWRF,π(l,k) )の各列に数学的距離に従って最も近いRFプリコーディングコードブック
【数105】
(又はRF結合コードブック
【数106】
)のコードワードに等しいと定義することができる。
【0061】
もちろん、ステップ1/及び2/は、異なる順序で実行することができる。幾つかの実施形態では、2/を1/の前に実行することができる。
【0062】
RFコンバイナーWRF,π(l,k)を決定し、選択されたビーム対において送信機に報告することができることに留意しなければならない。実際には、これは、性能劣化をもたらす場合があるが、そのケースは、3GPP NR Rel.15仕様とより整合したものである。その場合に、RFコンバイナーWRF,π(l,k)は、
【数107】
とFRFとの間でのみ行われる上記同時最適化中に決定されない。したがって、WRF,π(l,k)の決定は、幾つかの実施形態では除外することができる。
【0063】
RF,kが送信機側における同時最適化手順中に決定される場合には、送信機は、各スケジューリングされたUEkに、このUEに割り当てられた副搬送波(複数の場合もある)と、RF結合コードブックにおけるWRF,kの各列ベクトルのインデックスとを通知することができる。各スケジューリングされたUEkは、これらのインデックスを受信すると、それに応じてRFコンバイナーを実施することができる。送信機はRFプリコーダーFRFを実施する。送信機及び受信機におけるRFビームフォーミング行列が選ばれると、送信機は、受信機側において各スケジューリングされたユーザーkの等価チャネル
【数108】
を推定するために、RSを送信することができる。ここで、
【数109】
である。
【0064】
各スケジューリングされたUEkは、その後、等価チャネル
【数110】
をフィードバックすることができる。送信機は、したがって、各副搬送波lのベースバンドプリコーダーFBB[l]を計算することができる。受信機側では、受信機(UE)は、ベースバンド受信フィルターWBB,k[l]を実施することができる。或いは、ベースバンド受信フィルターWBB,k[l]は、送信機によって計算することができ、ダウンリンクシグナリングを使用することによって受信機に送信することができる。
【0065】
次に、上記同時決定手順の幾つかの実施形態を提供する。これらの実施形態は、mmWaveシステムにおける通信チャネルのスパース性を利用する。実際は、大きなアンテナアレイを有するmmWaveシステムの場合に、多くのパスが大きく減衰され、大きな利得を有するパスの数Nsparsは、チャネル行列Hπ(l,k)[l]のサイズ
【数111】
と比較して小さいことが予想される。「大きな利得」とは、パスの利得が既定の閾値よりも大きいことを意味する。利得がこの閾値よりも低い場合には、この利得は0に設定される。その結果、アンテナアレイの高い指向性に起因して、BSとUEとの間の角領域におけるチャネル行列は、「スパース」である、すなわち、そのサイズと比較して少数の非ゼロのエントリーしか有しないと予想される。
【0066】
第lの副搬送波上のBSとUEπ(l,k)との間の通信リンクのチャネル行列Hπ(l,k)[l]は、したがって、以下の式のように、非常に少ない数のパラメーターを用いて記述することができる。
【数112】
ここで、Nsparsは、重要なパスの数に対応し、
【数113】
(又は
【数114】
)は、対応する重要なパスiの発射角(AoD:angle of departure)(又は到来角(AoA:angle of arrival))情報を含む方向ベクトルであり、db,π(l,k),i[l]は、対応する重要なパスiの強度を示す複素係数である。
【0067】
1つの実施形態では、AoD方向ベクトル
【数115】
は、プリコーディングコードブック
【数116】
のコードワードによって近似することができ、AoA方向ベクトル
【数117】
は、結合コードブック
【数118】
のコードワードによって近似することができる。
【0068】
sparsは、チャネルスパース性、チャネル推定精度及びフィードバック能力に従って決定又は構成することができる変数であることに留意しなければならない。
【0069】
チャネル行列Hπ(l,k)[l]は、以下のように記述することもできる。
【数119】
ここで、
【数120】
は、i=1,...,Nsparsについて、列が
【数121】
に等しい行列であり、
【数122】
は、i=1,...,Nsparsについて、列が
【数123】
に等しい行列であり、
【数124】
は、i=1,...,Nsparsについて、対角係数がdb,π(l,k),i[l]に等しい対角行列である。
【0070】
チャネル行列の上記スパース表現を決定し、例えば、パラメーターの集合
【数125】
すなわち、
【数126】
を出力する従来技術の幾つかのアルゴリズムが開発されている。これらのアルゴリズムは、ここでは詳述しないが、それらのいずれも、本発明に関して使用することができる(例えば、欧州特許出願第16306171.6号;A. Alkhateeb他著「Channel estimation and hybrid precoding for millimeter wave cellular systems」(IEEE Journal of Selected Topics in Signal Processing, vol.8, no.5, pp.831-846, Oct. 2014);又はZ. Marzi他著「Compressive channel estimation and tracking for large arrays in mm wave picocells」(IEEE Journal of Selected Topics in Signal Processing, vol. 10, no. 3, pp. 514-527, April 2016)を参照)。
【0071】
5G NR仕様によれば、ビーム管理手順は以下の動作を含む。
-ビーム掃引:空間エリアが、事前に指定された間隔及び方向に従って送信及び受信される一組のビームを用いてカバーされる;
-ビーム測定:全ての可能なBS/UEビーム対(すなわち、プリコーディング行列
【数127】
及び結合行列
【数128】
の全ての可能な対)の基準信号(RS:Reference Signal)が、BSからUEに送信される。ビーム対のそれぞれの品質インジケーターがUEにおいて計算される(例えば、品質インジケーターは、基準信号受信電力(RSRP:Reference Signal Received Power)又は基準信号受信品質(RSRQ:Reference Signal Received Quality)に等しいものとすることもできるし、それらから導出することもできる);
-ビーム決定:少なくとも1つのビーム対が、UEにおいてその性能メトリックに基づいて選択される。例えば、性能メトリックを最大にするビーム対(複数の場合もある)、又はP個のより高い性能メトリックを有するP個のビーム対(Pは既定の整数)を選択することができる;
-ビーム報告:UEは、選択されたビーム対(複数の場合もある)のインデックス(複数の場合もある)と、関連付けられた品質インジケーター(複数の場合もある)とをBSに報告することができる。
【0072】
その後、BSにおいて、選択されたビーム対(複数の場合もある)のインデックス(複数の場合もある)及び関連付けられた品質インジケーター(複数の場合もある)に基づいて、RFビームフォーミング行列FRF,k及びWRF,π(l,k)を選ぶことができる。
【0073】
本発明の1つの実施形態では、上述したビーム報告動作中に、UEは、ビーム決定動作中に選択されたビーム対(複数の場合もある)
【数129】
の対応するコードブック
【数130】
におけるインデックス(複数の場合もある)を、関連付けられた品質インジケーター(複数の場合もある)とともにフィードバックすることができる。品質インジケーターは、例えば、
【数131】
を使用するRFプリコーダーが送信機において実施され、
【数132】
を使用するRFコンバイナーが受信機において実施されるときの基準信号受信電力に対応することができる。
【数133】
【0074】
送信機は、したがって、全てのアクティブUE
【数134】

【数135】
はセルのアクティブUEの集合である)及び全ての副搬送波l=1,...,Lの選択されたビーム対(複数の場合もある)の全てのインデックス、すなわち、全ての行列(以下、「部分空間」とも呼ばれる)
【数136】
を収集することができる。送信機は、次に、LJ個の全ての部分空間
【数137】
に基づいて、アクティブUE
【数138】
の、K個の独立した集合
【数139】
へのクラスタリングを行うことができる。そのようなクラスタリングによって、同じ副搬送波上でスケジューリングされるUEの異なる集合からの無作為選択の場合におけるユーザー間の干渉を制限することが可能になる。この無作為選択は、MUグループの初期化中に行うことができる。例えば、MUグループの初期化が無作為抽出に基づいている場合に、異なる独立した集合内でK人のユーザーのそれぞれを抽出することによって、全てのアクティブユーザーの集合
【数140】
からのK人のユーザーの完全な無作為選択と比較して干渉はより低くなる。
【0075】
LJ個の受信部分空間
【数141】
に基づいてクラスタリングを行うことは、限られたフィードバック情報(すなわち、選択されたビーム対(複数の場合もある))しか使用しないので、mmWaveシステムにおける通信チャネルのスパース性を有利に利用する。
【0076】
1つの実施形態では、セル及び全ての副搬送波の全てのアクティブUEの、K個の独立した集合へのクラスタリングは、(全ての
【数142】
及びl=1,...,Lの)部分空間
【数143】
の間の類似性(又は「親和性」)尺度に基づいている。基本的に、この原理は、高い類似性尺度に関連した2つの部分空間は同じクラスターに属し、低い類似性尺度に関連した2つの部分空間は異なるクラスターに属するということである。例えば、そのようなクラスタリングは、以下のステップを含むことができる。
-第(i,j)要素(iは行インデックスであり、jは列インデックスである)が、i≠jの場合には
【数144】
に等しく、i=jの場合には0に等しい、次元LJ×LJ(Jは
【数145】
の濃度である)の類似性行列Mを計算する;
-第(i,i)要素がMの第i行の要素の総和に等しい対角行列をDとする;行列Z=D-1/2-1/2を構築する;
-ZのK個の最も大きな固有値を見つけ(繰り返される固有値の場合には、対応する固有ベクトルは互いに直交するように選ばれる)、これらの固有ベクトルを列に積み重ねることによって行列
【数146】
を形成する;
-Mの行のそれぞれを単位長に正規化することによってMから行列Mを形成する;
-Mの各行を
【数147】
内の点とみなし、歪の最小化を試みるクラスタリングアルゴリズム(例えば、K平均アルゴリズム)を介して、これらの行をK個のクラスターにクラスタリングする;及び
-行列Mの行iがクラスターjに割り当てられるときかつそのときに限って、元の部分空間
【数148】
をクラスターjに割り当てる。
【0077】
上記において、
【数149】
(i=1,...,LJ)は、π(l,k)=iであるような部分空間
【数150】
に対応する。lは、受信機π(l,k)=iに関連付けられた副搬送波である。
【0078】
上記手順は、K個の集合
【数151】
を出力する。
【数152】
である場合に、これは、副搬送波lについて、UE π(l,k)が集合
【数153】
内にあることを意味する。
【0079】
任意の数学的類似性尺度を使用することができる。2つの部分空間S及びSの間の類似性尺度の2つの例sim及びsimを以下に示す。
【数154】
ここで、d及びdは、それぞれ部分空間S及びSの次元である。
【数155】
ここで、θは、部分空間S及びSの第mの正準角である。
【0080】
もちろん、本発明は、上記に提示した部類のアルゴリズムに限定されるものではない。他のアルゴリズムも使用することができる。例えば、集合は、部分空間の集合
【数156】
の中からの無作為抽出によって形成することができる。
【0081】
1つ又は幾つかの実施形態では、MUグループ
【数157】
、RFプリコーディング行列FRF及び最終的にはRF結合行列WRF,π(l,k)の同時決定は、決定されたユーザー集合
【数158】
に基づいて行うことができる。図4は、本発明の可能な実施形態における決定されたユーザー集合
【数159】
に基づくMUグループ、RFプリコーダーFRF及びRFコンバイナーWRF,π(l,k)の同時決定を説明するフローチャートである。
【0082】
以下では、RFプリコーダーFRFは、K個のRFプリコーディング部分行列FRF,k(k=1,...,K)の連結、すなわち、FRF=[FRF,1...FRF,K]とみなされる。ここで、FRF,kは、クラスタリング集合
【数160】
のユーザーに対応するRFプリコーダーの部分である。
【0083】
上記で詳述したように、送信機は、セルの全てのアクティブユーザー
【数161】
の行列
【数162】

【数163】
及びD[l]をUEから受信することができる(401)。送信機は、次に、部分空間
【数164】
の、K個のユーザー集合
【数165】
へのクラスタリング402を実行することができる。同時決定手順は、その後、例えば、全てのK個のユーザー集合
【数166】
の中からの無作為抽出によってMUグループ
【数167】
を初期化する(403)ことによって開始することができる。次に、最適化手順の第1のステップ404(すなわち、図3のステップ302)は、既定のRFビームフォーミング設計基準
【数168】
を最適化し、MUグループ
【数169】
が確定されることによって、全てのRFプリコーディング部分行列FRF,k(k=1,...,K)(及び、最終的には、k=1,...,K及びl=1,...,LについてのRF結合行列WRF,π(l,k))の決定を含むことができる。ステップ405は、上記に提示した最適化手順の第2のステップ(すなわち、図3のステップ303)に対応し、このステップの間に、MUグループ
【数170】
は、既定のスケジューリング設計基準g(π(l,k),FRF,k,WRF,π(l,k))を最適化し、RFビームフォーミング行列WRF,π(l,k)及びFRF,kが確定されることによって決定される。ステップ404及び405は、既定の収束基準406が満たされるまで、交互に繰り返すことができる。収束基準406が満たされると、
【数171】
、FRF,k及びWRF,π(l,k)を出力することができる(407)。
【0084】
システムの平均広帯域総和レートの最大化の場合におけるそのような同時決定手順の第1の例を以下に提示する。ユーザー集合
【数172】
と、セルの全てのアクティブユーザー
【数173】
及び全ての副搬送波l=1,...,Lの行列
【数174】

【数175】
及びD[l]とは、送信機において知られていると仮定される。
【0085】
情報理論のブロードキャストチャネルとその双対の多重アクセスチャネルとの間の情報理論の双対性に起因して、全ての副搬送波にわたるダウンリンク送信の総和レートは、等しい電力配分を有する全ての副搬送波上でのそのデュアルアップリンク送信によって下限を定めることができる。したがって、全ての副搬送波にわたるダウンリンク送信の容量は、以下の式によって下限を定めることができる。
【数176】
ここで、ρは電力スケーリング定数である。
【0086】
クラスタリングが、異なるクラスター集合の間のマルチユーザー干渉を低減すると仮定すると、
【数177】
と記述することができる。
【0087】
したがって、上記不等式の右辺は、以下の式によって近似することができる。
【数178】
【0088】
チャネル行列のスパース表現によれば、Hπ(l,k)[l]は、上記式において
【数179】
に置き換えることができる。
【数180】
【0089】
RFビームフォーミング設計基準は、したがって、以下のように記述することができる。
【数181】
【0090】
手順のステップ1/に従ったRFプリコーダー及びRFコンバイナーの決定は、したがって、以下のように行うことができる。
【0091】
全ての繰り返し要素が除去された集合
【数182】

【数183】
(1)及び
及び
【数184】
とする。
【数185】
は、
【数186】
の濃度を表す。マッピング関数を以下のように定義する。
【数187】
この関数は、全ての
【数188】
の受信機
【数189】
が副搬送波l上の第
【数190】
のユーザーであることを示す。
【0092】
全てのスケジューリングされたユーザーのRFコンバイナー
【数191】
を初期化する。
全てのl=1,...,L及びk=1,...,Kについて、
【数192】
とする。
t=0に初期化する。
【0093】
収束基準が満たされていない間、以下を実行する。
-k=1,...,Kについて、以下の式を計算する。
【数193】
ここで、det(M)は、行列Mの行列式である。

【数194】
について、以下の式を計算する。
【数195】
【0094】
ランク制約が満たされている場合には、上記最大化問題において得られた
【数196】
及び
【数197】
を用いて、
【数198】
及び
【数199】
とし、k=1,...,Kについて、以下の式を計算する。
【数200】
及び
【数201】
【0095】
ランク制約が満たされていない場合には、k=1,...,Kについて、以下のランダム化手順を実行する。
-ランダムガウス行列V及びVを生成する。V及びVの各成分は、分布
【数202】
に従った独立同一分布(i.i.d.:independent and identically distributed)である。

【数203】
及び
【数204】
とする。
【数205】
及び
【数206】
は、上記最大化問題において得られたものである。
【数207】
及び
【数208】
の特異値分解(SVD:singular-value decomposition)を実行する。
【数209】
-以下の定義を行う。
【数210】
-FRF,k及びWRF,π(l,k)の各列を、それらの列が単位ベクトルとなるように正規化する。
-ランダム化手順の上記ステップをNrand回繰り返し(Nrandは既定の整数である)、考慮されているRFビームフォーミング設計基準の最大の値を与えるものを選ぶ。
【0096】
それぞれのコードブック
【数211】
及び
【数212】
において、FRF,k及びWRF,π(l,k)の列との距離を最小にするコードワードを見つける。
【0097】
全てのスケジューリングされたユーザーのRFコンバイナー
【数213】
の初期化は、例えば、RF結合コードブック
【数214】
における
【数215】
の各列の無作為選択によって行うことができる。
【0098】
上記手順では、行列FRF,k及びWRF,π(l,k)のランクが
【数216】
に等しい場合には、ランク制約が満たされていると考えられる。実際は、その場合に、最適解
【数217】
及び
【数218】
のランクも
【数219】
に等しい。行列FRF,k及びWRF,π(l,k)のうちの少なくとも一方が、
【数220】
に等しくないランクを有する場合には、ランク制約が満たされていないと考えられる。
【0099】
randが大きいほど、ランダム化手順はより正確になることに留意しなければならない。
【0100】
システムの平均広帯域総和レートの最大化の場合には常に、最大にするためのスケジューリング設計基準は、以下のものとすることができる。
【数221】
【0101】
RFプリコーダー及びRFコンバイナーがMUグループ設計中に確定されることが分かるので、上記最適化は、単純な総当り全探索、又は遺伝的アルゴリズム等の高度な方法によって解くことができる離散最適化である。
【0102】
次に、最小受信等価チャネル利得の最大化の場合における最適化手順の第2の例を提供する。その場合には、RFビームフォーミング設計基準は、以下のように記述することができる。
【数222】
【0103】
上記手順のステップ1/に従ったRFプリコーダー及びRFコンバイナーの決定は、したがって、以下のように行うことができる。
【0104】
【数223】

【数224】
及び
【数225】
を上記と同様に定義する。
【0105】
全てのスケジューリングされたユーザーのRFコンバイナー
【数226】
を初期化する。
全てのl=1,...,L及びk=1,...,Kについて、
【数227】
とする。
t=0に初期化する。
【0106】
収束基準が満たされていない間、以下を実行する。
-k=1,...,Kについて、以下の式を計算する。
【数228】
ここで、tr(M)は、行列Mの跡である。

【数229】
について、以下の式を計算する。
【数230】
【0107】
ランク制約が満たされている場合には、上記最大化問題において得られた
【数231】
及び
【数232】
を用いて、
【数233】
及び
【数234】
とし、k=1,...,Kについて、以下の式を計算する。
【数235】
及び
【数236】
【0108】
ランク制約が満たされていない場合には、第1の例のランダム化手順を実行する。
【0109】
それぞれのコードブック
【数237】
及び
【数238】
において、FRF,k及びWRF,π(l,k)の列との距離を最小にするコードワードを見つける。
【0110】
全てのスケジューリングされたユーザーのRFコンバイナー
【数239】
の初期化は、以前の例と同様に行うことができる。上記手順のランク制約は、以前の例のランク制約と同様である。
【0111】
最小受信等価チャネル利得の最大化の場合には常に、最大にするためのスケジューリング設計基準は、以下のものとすることができる。
【数240】
【0112】
他の多くのRFビームフォーミング/スケジューリング設計基準を使用することができる。
【0113】
例えば、広帯域ユーザースケジューリング(すなわち、スケジューリングされた各ユーザーが全ての副搬送波を占有し、異なる副搬送波上に異なるユーザーを配分する周波数多重化が可能でない)に関して、最大にするためのスケジューリング設計基準の一例は、以下のものである。
【数241】
【0114】
スケジューリングの公平性問題に関して、最大にするためのスケジューリング設計基準の一例は以下のものである。
【数242】
ここで、απ(l,k)は、受信機π(l,k)に関連付けられた重みスカラーである。
【0115】
「スケジューリングの公平性問題に関して」とは、次のことを意味する。スケジューリング基準を最適化することによって、潜在的により高いレートを有するUEほど、スケジューリングされる可能性が高くなる。これは、システム動作の観点から「公平」ではない。なぜならば、幾つかの潜在的に低いレートのUEは、送信の機会を決して得られない場合があるからである。この問題を克服するために、多くの技法を適用することができる。上記設計基準は、上記のように、幾つかの正の重み付け係数απ(l,k)を導入してユーザーの瞬時レートを調整することにその本質があるそのような技法の一例である。例えば、1つのUEが長時間の間スケジューリングされていなかった場合には、その重み付け係数を増加させることができる。この場合には、ユーザーがより低いレートを有する場合であっても、或る時間の後に、スケジューリングされる可能性がより高くなる。
【0116】
RFプリコーダー及びRFコンバイナーがMUグループ化設計中に確定されることが分かるので、上記最適化は、単純な総当り全探索、又は遺伝的アルゴリズム等の高度な方法によって解くことができる離散最適化である。
【0117】
図5は、本発明を可能にするデバイスの可能な実施形態である。
【0118】
この実施形態では、デバイス500は、コンピューターを備え、このコンピューターは、プログラム命令を記憶するメモリ505を備える。これらのプログラム命令は、回路内にロード可能であり、これらのプログラム命令が回路504によって実行されると、本発明のステップを回路504に実行させるように適合されている。
【0119】
メモリ505は、上述したような本発明のステップを実行するためのデータ及び有用な情報も記憶することができる。
【0120】
回路504は、例えば、以下のものとすることができる。
-コンピューター言語による命令を解釈するように適合されたプロセッサ若しくは処理ユニットとすることができる。このプロセッサ若しくは処理ユニットは、命令を含むメモリを備えることもできるし、このようなメモリに関連付けることもできるし、このようなメモリに取り付けることもできる。
-或いは、プロセッサ/処理ユニットとメモリとを関連付けたものとすることができる。このプロセッサ若しくは処理ユニットは、コンピューター言語による命令を解釈するように適合され、メモリは上記命令を含む。
-或いは、本発明のステップがシリコン内に記載された電子カードとすることができる。
-或いは、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイを意味する)チップ等のプログラマブル電子チップとすることができる。
【0121】
例えば、デバイスは、送信機に含めることができ、コンピューターは、本発明の1つの実施形態によるチャネル情報、例えば、セルの全てのアクティブユーザー
【数243】
及び全ての副搬送波l=1,...,Lのチャネルのスパース表現に関連した行列
【数244】

【数245】
及びD[l]を受信する入力インターフェース503と、MUグループ並びにRFプリコーディング行列及びRF結合行列を提供する出力インターフェース506とを備えることができる。
【0122】
コンピューターとのインタラクションを容易にするために、画面601及びキーボード602を提供して、コンピューター回路604に接続することができる。
【0123】
さらに、図3に表されるフローチャートは、送信機内に位置するプロセッサによって実行することができるプログラムのステップの全て又は一部を表すことができる。その場合に、図3は、本発明の意義の範囲内にあるコンピュータープログラムの全般的なアルゴリズムのフローチャートに対応することができる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5