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特許7170882ガスリーク検出システムおよびガスリーク検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】ガスリーク検出システムおよびガスリーク検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02B 13/065 20060101AFI20221107BHJP
   H01H 33/56 20060101ALI20221107BHJP
   G01M 3/26 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
H02B13/065 F
H01H33/56 F
G01M3/26 M
G01M3/26 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021534851
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2019028444
(87)【国際公開番号】W WO2021014490
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
(72)【発明者】
【氏名】鷲山 亨
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-077385(JP,A)
【文献】特開2016-057135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 13/065
H01H 33/56
G01M 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電用の機器が固定され、絶縁ガスが封入された容器と、
大地に対し平行に分割された前記容器の内部の複数の分割空間と、
複数の前記分割空間に位置する前記絶縁ガスの温度を検出する複数の温度センサと、
前記容器の内部の圧力を検出する圧力センサと、
を有する電気機器部と、
複数の前記温度センサにより検出された前記絶縁ガスの温度、および前記圧力センサにより検出された圧力に基づき、前記容器に残留している前記絶縁ガスの残留ガス量を算出する監視部と、を有し、
前記監視部は、複数の前記温度センサにより検出された前記絶縁ガスの温度、および前記圧力センサにより検出された圧力に基づき、前記分割空間ごとの前記絶縁ガスの残留ガス量を算出し、算出された前記分割空間ごとの前記絶縁ガスの前記残留ガス量を加算することにより、前記容器に残留している前記絶縁ガスの残留ガス量を算出する
スリーク検出システム。
【請求項2】
配電用の機器が固定され、絶縁ガスが封入された容器と、
大地に対し平行に分割された前記容器の内部の複数の分割空間と、
複数の前記分割空間に位置する前記絶縁ガスの温度を検出する複数の温度センサと、
前記容器の内部の圧力を検出する圧力センサと、
を有する電気機器部と、
複数の前記温度センサにより検出された前記絶縁ガスの温度、および前記圧力センサにより検出された圧力に基づき、前記容器に残留している前記絶縁ガスの残留ガス量を算出する監視部と、を有し、
前記監視部は、前記圧力センサにより検出された圧力と、複数の前記温度センサにより検出された前記絶縁ガスの温度とを用いて算出した前記容器の内部の複数の分割空間ごとのモル体積のそれぞれに、予め設定された重み付け係数を乗算して算出した平均モル体積に基づき、前記容器に残留している前記絶縁ガスの残留ガス量を算出する
スリーク検出システム。
【請求項3】
複数の前記分割空間は、前記容器の内部に大地に対し平行に設けられた仕切板により分割され形成された、
請求項1又は2に記載のガスリーク検出システム。
【請求項4】
前記容器は、前記絶縁ガスを循環する循環部に接続される、
請求項1乃至のいずれか1項に記載のガスリーク検出システム。
【請求項5】
前記循環部は、冷却部を有し、
前記監視部は、前記容器に残留している前記絶縁ガスの残留ガス量と、前記冷却部に残留している前記絶縁ガスの残留ガス量とを加算して総残留ガス量を算出する、
請求項に記載のガスリーク検出システム。
【請求項6】
前記冷却部に残留している前記絶縁ガスの残留ガス量は、前記冷却部の分割された空間ごとに算出された温度および絶縁ガスの単位量当たりの体積に基づいて算出される、
請求項に記載のガスリーク検出システム。
【請求項7】
監視部は、算出した、前記容器に残留している前記絶縁ガスの残留ガス量に基づき前記絶縁ガスのガスリーク量を算出し、前記ガスリーク量が予め設定された基準値以上となった場合に、警報を出力する出力部を有する、
請求項1乃至のいずれか1項に記載のガスリーク検出システム。
【請求項8】
外気温を検出する気温センサを有し、
監視部は、気温センサにより検出された外気温の単位時間の変動が、予め定められた基準値を超えた場合、前記絶縁ガスのガスリーク量の算出を中止する、
請求項に記載のガスリーク検出システム。
【請求項9】
電気機器本体が固定され、絶縁ガスが封入された容器と、
大地に対し平行に分割された前記容器の内部の複数の分割空間と、
複数の前記分割空間に位置する前記絶縁ガスの温度を検出する複数の温度センサと、
前記容器の内部の圧力を検出する圧力センサと、
を有する電気機器部において、
複数の前記温度センサにより検出された前記絶縁ガスの温度、および前記圧力センサにより検出された圧力に基づき、前記分割空間ごとの前記絶縁ガスの残留ガス量を算出し、算出された前記分割空間ごとの前記絶縁ガスの前記残留ガス量を加算することにより、前記容器に残留している前記絶縁ガスの残留ガス量を算出する、
ガスリーク検出方法。
【請求項10】
電気機器本体が固定され、絶縁ガスが封入された容器と、
大地に対し平行に分割された前記容器の内部の複数の分割空間と、
複数の前記分割空間に位置する前記絶縁ガスの温度を検出する複数の温度センサと、
前記容器の内部の圧力を検出する圧力センサと、
を有する電気機器部において、
前記圧力センサにより検出された圧力と、複数の前記温度センサにより検出された前記絶縁ガスの温度とを用いて算出した前記容器の内部の複数の分割空間ごとのモル体積のそれぞれに、予め設定された重み付け係数を乗算して算出した平均モル体積に基づき、前記容器に残留している前記絶縁ガスの残留ガス量を算出する、
ガスリーク検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電気機器の容器に封入された絶縁ガスのガスリーク量を検出するガスリーク検出システムおよびガスリーク検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器やリアクトルなどの静止誘導電器は、SF6ガス等の絶縁ガスが封入された容器中に固定され電気機器を形成することがある。このような機器は、「ガス絶縁静止誘導電器」と呼ばれる。容器に封入されたSF6ガス等の絶縁ガスは、静止誘導電器の絶縁を確保するとともに、静止誘導電器の冷却に用いられる。絶縁ガスがリークし、絶縁ガスの圧力が低下した場合、電気機器の絶縁性能および冷却能力が低下し、絶縁破壊事故や過熱による内部部品の劣化を招く可能性があり好ましくない。
【0003】
また、絶縁ガスは、高い温暖化係数を有するSF6等の温室効果ガスにより構成される場合が多く、大気中に放出されることは望ましくない。したがって、SF6等の絶縁ガスのリーク量を把握することは、非常に重要である。絶縁ガスのリーク量を把握するガスリーク検出システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-139009号公報
【文献】特開2016-057135号公報
【文献】特開2017-026559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のとおり、電気機器の容器に封入されたSF6ガス等の絶縁ガスのリーク量を把握することは、非常に重要である。例えばガス絶縁静止誘導電器等の電気機器は、内部に巻線等により構成された熱量の大きな発熱体を有する。また、これらの電気機器は、絶縁ガスを循環させるガスブロアを有し、電気機器を構成する容器内を絶縁ガスが強制的に循環させられる場合もある。
【0006】
このため、電気機器を構成する容器内の絶縁ガスの温度分布は一定にならない。その結果、絶縁ガスの分子の密度は、電気機器を構成する容器内において一定とならない。従来のガスリーク検出システムは、電気機器を構成する容器内において絶縁ガスの分子の密度が一定にならないことに起因し、リーク量の検出精度が低いとの問題点があった。
【0007】
本実施形態は、電気機器を構成する容器内の絶縁ガスのリーク量の検出精度が高いガスリーク検出システムおよびガスリーク検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態のガスリーク検出システムは次のような構成を有することを特徴とする。
(1)以下を有する電気機器部。
(1-1)送配電用の機器が固定され、絶縁ガスが封入された容器。
(1-2)大地に対し平行に分割された前記容器の内部の複数の分割空間。
(1-3)複数の前記分割空間に位置する前記絶縁ガスの温度を検出する複数の温度センサ。
(1-4)前記容器の内部の圧力を検出する圧力センサ。
(2)以下の特徴を有する監視部。
(2-1)複数の前記温度センサにより検出された前記絶縁ガスの温度、および前記圧力センサにより検出された圧力に基づき、前記容器に残留している前記絶縁ガスの残留ガス量を算出する。
また、上記特徴を有するガスリーク検出方法も本実施形態の一態様である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態にかかるガスリーク検出システムの構成を示す図
図2】第1実施形態にかかるガスリーク検出システムの監視部の構成を示す図
図3】第1実施形態にかかるガスリーク検出システムの容器の絶縁ガスの残留量の算出を説明する図
図4】第1実施形態にかかるガスリーク検出システムの冷却部の絶縁ガスの残留量の算出を説明する図
図5】第1実施形態にかかるガスリーク検出システムの検出される温度を説明する図
図6】第1実施形態にかかるガスリーク検出システムの容器内の絶縁ガスの物理量の算出を行うプログラムのフローを示す図
図7】第1実施形態にかかるガスリーク検出システムの冷却部内の絶縁ガスの物理量の算出を行うプログラムのフローを示す図
図8】第1実施形態にかかるガスリーク検出システムのリークした絶縁ガスの物理量の算出を行うプログラムのフローを示す図
図9】第2実施形態にかかるガスリーク検出システムの容器内の絶縁ガスの物理量の算出を行うプログラムのフローを示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態において、同一構成の装置、部分、信号が複数ある場合にはそれらについて同一の記号を付して説明を行い、また、同一構成の個々の装置、部分、信号についてそれぞれを説明する場合に、共通する記号にアルファベットの添え字を付けることで区別する。
【0011】
ガスリーク検出システム1において、以下の信号、データ、情報が、入力、出力、記憶される。1molに相当する絶縁ガス28の体積をモル体積[l/mol]と呼ぶ。また、絶縁ガス28のmol数を物理量[mol]と呼ぶ。
Ta[K]:分割空間21a内の絶縁ガス28の温度
Tb[K]:分割空間21b内の絶縁ガス28の温度
Tc[K]:冷却部42内の絶縁ガス28の温度
Tg[K]:容器27内の絶縁ガス28の平均温度
Tu[K]:外気温
Pg[Pa]:容器27の絶縁ガス28の圧力
Va[l/mol]:分割空間21a内の絶縁ガス28のモル体積
Vb[l/mol]:分割空間21b内の絶縁ガス28のモル体積
Vg[l/mol]:容器27内の絶縁ガス28のモル体積
Vc[l/mol]:冷却部42内の絶縁ガス28のモル体積
Ma[mol]:分割空間21a内の絶縁ガス28の物理量(残留ガス量)
Mb[mol]:分割空間21b内の絶縁ガス28の物理量(残留ガス量)
Mg[mol]:容器27内の絶縁ガス28の物理量(残留ガス量)
Mc[mol]:冷却部42内の絶縁ガス28の物理量(残留ガス量)
Mt[mol]:容器27内、冷却部42内の絶縁ガス28の総物理量(総残留ガス量)
Ml[mol]:リークした絶縁ガス28の物理量(ガスリーク量)
Mo[mol]:リークがない場合の絶縁ガス28の物理量
Ua[l]:分割空間21aの容積
Ub[l]:分割空間21bの容積
Ug[l]:容器27の容積
Uc[l]:冷却部42の容積
Ms[mol]:絶縁ガス28のリーク量の上限となる基準値
Ts[K]:単位時間における外気温の変動の限度値
A、B:絶縁ガス28の残留ガス量の算出に使用されるモル体積V[l/mol]の関数
C、D:重み付け係数
【0012】
物理量Ma[mol]、物理量Mb[mol]が請求項における「分割空間ごとの絶縁ガス28の残留ガス量」に、物理量Mg[mol]が請求項における「容器27に残留している絶縁ガス28の残留ガス量」に、物理量Mc[mol]が請求項における「冷却部42に残留している前記絶縁ガス28の残留ガス量」に、総物理量Mt[mol]が請求項における「総残留ガス量」に、物理量Ml[mol]が請求項における「ガスリーク量」に相当する。
【0013】
以下では、各部分の位置関係及び方向を説明するにあたり、ガスリーク検出システム1における電気機器部2が配置された大地方向を大地側と、その反対側を天空側と呼ぶ。
【0014】
[第1実施形態]
[1-1.構成]
(ガスリーク検出システム1の全体構成)
以下では、図1図2を参照しつつ、本実施形態のガスリーク検出システム1の構成を説明する。ガスリーク検出システム1は、変電所等に設置される。
【0015】
本実施形態におけるガスリーク検出システム1は、一例として電気機器部2が変圧器29により構成された場合について説明する。変圧器29が、請求項における配電用の機器に相当する。ガスリーク検出システム1は、電気機器部2、監視部3、循環部4、配管5、気温センサ6を有する。
【0016】
(電気機器部2)
電気機器部2は、分割空間21(21a、21b)、温度センサ22(22a、22b)圧力センサ23、仕切板24、容器27、変圧器29を有する。容器27の内部は、絶縁ガス28が充填され封入される。電気機器部2は、屋内外の変電所等に設置される。
【0017】
変圧器29は、鉄心部291および巻線部292を有する電圧変換装置により構成される。鉄心部291が容器27に固定されることにより、変圧器29は容器27に固定される。変圧器29は、容器27に充填された絶縁ガス28中に配置される。変圧器29は、電力供給線(図中不示)に接続され、供給される電力の電圧を変圧する。
【0018】
容器27は、電力供給線等との接続部を持つ円筒状の金属性密閉容器であり、内部に絶縁ガス28が充填される。絶縁ガス28には、SF6ガス等の絶縁性を持つガスが用いられる。容器27の内部に、変圧器29が配置される。
【0019】
容器27は、内部に仕切板24を有する。仕切板24は、変圧器29に取り付けられた状態で容器27内に挿入され、絶縁ボルト等で容器27に固定され、容器27の持つ空間のうち、変圧器29以外の占める部分を上下2つに分割することで、絶縁ガス28を鉄心部291および巻線部292の内部に循環させ冷却を行う。
【0020】
仕切板24は、容器27の内部に大地に対し平行に分割された二つの分割空間21a、と分割空間21bとを形成する。分割空間21aは、容器27の内部の天空側に設けられた、半円筒状の空間である。分割空間21bは、容器27の内部の大地側に設けられた、半円筒状の空間である。分割空間21aおよび分割空間21bは、鉄心部291および巻線部292の内部にあけられた冷却用ガス流路を通じて通気性を有する。
【0021】
分割空間21aおよび分割空間21bにそれぞれ温度センサ22a、22bが設けられる。温度センサ22a、22bは測温抵抗体のような温度測定用のセンサである。温度センサ22aは、分割空間21aを形成する容器27の内壁に配置される。温度センサ22aは、仕切板24よりも天空側に配置される。温度センサ22aは、変圧器29の巻線部292より天空側であり鉄心部291、巻線部292、および容器27内の構造部品に接触しない、極力大地と離間する箇所に設けられることが望ましい。
【0022】
温度センサ22bは、分割空間21bを形成する容器27の内壁に配置される。温度センサ22bは、仕切板24よりも大地側に配置される。温度センサ22bは、変圧器29の巻線部292より大地側であり鉄心部291、巻線部292、および容器27内の構造部品に接触しない、極力大地と近接する箇所に設けられることが望ましい。
【0023】
温度センサ22aは、分割空間21a内上部の絶縁ガス28の温度Ta[K]を検出し、監視部3に出力する。温度センサ22bは、分割空間21b内の絶縁ガス28の温度Tb[K]を検出し、監視部3に出力する。
【0024】
容器27の内部に、圧力センサ23が設けられる。圧力センサ23はピエゾ素子のような半導体素子により構成された圧力測定用のセンサである。圧力センサ23は、分割空間21aと分割空間21bの接合部分付近の容器27の内壁に配置される。圧力センサ23は、容器27の絶縁ガス28の圧力Pg[Pa]を検出し、監視部3に出力する。圧力センサ23は、容器27の任意の箇所に配置されていてもよい。
【0025】
(循環部4)
循環部4は、容器27内の絶縁ガス28を循環冷却させる装置である。循環部4は、ガスブロア41、冷却部42を有する。ガスブロア41と冷却部42は、配管43を介し接続される。循環部4のガスブロア41は、配管5bを介し容器27の分割空間21bに接続される。循環部4の冷却部42は、配管5aを介し容器27の分割空間21aに接続される。
【0026】
ガスブロア41は、容器27内の絶縁ガス28を吸引する吸引装置により構成される。ガスブロア41は、容器27内の分割空間21aの絶縁ガス28を吸引し冷却部42へ送る。冷却部42は、放熱器等により構成される。冷却部42は、ガスブロア41により吸引された絶縁ガス28を冷却し容器27内の分割空間21bに送る。容器27内の仕切板24は、容器27の持つ空間のうち、変圧器29以外の占める部分を上下2つに分割することで、絶縁ガス28を鉄心部291および巻線部292の内部に循環させ冷却を行う。絶縁ガス28は、分割空間21a、冷却部42、ガスブロア41、分割空間21bの順に循環させられる。
【0027】
(気温センサ6)
気温センサ6は、測温抵抗体のような温度測定用のセンサである。気温センサ6は、電気機器部2近傍に設置され、循環部4が屋外に設置される場合、日よけ61により直射日光が遮断される箇所に配置される。気温センサ6は、外気温Tu[K]を検出し、監視部3に出力する。
【0028】
(監視部3)
監視部3は、パーソナルコンピュータ等により構成される。監視部3は、容器27の近傍に設置された制御盤内、または変電所等における電力の監視制御を行う制御室等に配置される。監視部3は、電気機器部2の温度センサ22aから分割空間21a内の絶縁ガス28の温度Ta[K]を、温度センサ22bから分割空間21b内の絶縁ガス28の温度Tb[K]を受信する。監視部3は、電気機器部2の圧力センサ23から容器27の絶縁ガス28の圧力Pg[Pa]を受信する。監視部3は、気温センサ6から外気温Tu[K]を受信する。監視部3は、変圧器29、電力供給線等に設置された、図示されていないCT等のセンサから、変圧器29の通電電流値を受信する。
【0029】
監視部3は、容器27内の絶縁ガス28の物理量Mgを算出する。監視部3は、算出した、容器27に残留している絶縁ガス28の物理量Mg[mol]に基づき、リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]を算出し、物理量Ml[mol]が予め設定された絶縁ガス28のリーク量の上限となる基準値Ms[mol]以上となった場合に、警報を出力する。監視部3は、気温センサ6により検出された外気温Tu[K]の変動が、予め定められた単位時間における外気温の変動の限度値Ts[K]以上となった場合、または変圧器29の通電電流の変動が予め定められた単位時間における電流の変動の限度値以上となった場合、容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出を停止する。
【0030】
監視部3は、入力部31、操作部32、記憶部33、出力部34、演算部35を有する。
【0031】
入力部31は、アナログ-デジタル変換回路により構成される。入力部31は、入力側が電気機器部2および気温センサ6に、出力側が演算部35に接続される。入力部31に、以下の情報が入力される。
Ta[K]:分割空間21a内の絶縁ガス28の温度
Tb[K]:分割空間21b内の絶縁ガス28の温度
Tu[K]:外気温
Pg[Pa]:容器27の絶縁ガス28の圧力
温度Ta[K]は、温度センサ22aから、温度Tb[K]は温度センサ22bから、圧力Pg[Pa]は圧力センサ23から送信される。外気温Tu[K]は気温センサ6から送信される。
【0032】
入力部31は、分割空間21a内の絶縁ガス28の温度Ta[K]、分割空間21b内の絶縁ガス28の温度Tb[K]、容器27の絶縁ガス28の圧力Pg[Pa]、外気温Tu[K]をアナログ-デジタル変換し、演算部35に出力する。
【0033】
操作部32は、キーボード等の入力装置により構成される。操作部32は、演算部35に接続される。操作部32から以下の情報が入力される。
Ms[mol]:絶縁ガス28のリーク量の上限となる基準値
Ts[K]:単位時間における外気温の変動の限度値
C、D:重み付け係数
【0034】
記憶部33は、半導体メモリやハードディスクのような記憶媒体にて構成される。記憶部33は、演算部35によりデータ読出しが制御される。記憶部33は、以下の情報を記憶する。
Ms[mol]:絶縁ガス28のリーク量の上限となる基準値
Ts[K]:単位時間における外気温の変動の限度値
C、D:重み付け係数
Ua[l]:分割空間21aの容積
Ub[l]:分割空間21bの容積
Ug[l]:容器27の容積
Uc[l]:冷却部42の容積
Mo[mol]:リークがない場合の絶縁ガス28の物理量
【0035】
出力部34は、表示装置、プリンタ、通信インタフェース等により構成される。出力部34は、リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]が予め設定された絶縁ガス28のリーク量の上限となる基準値以上となった場合に、表示、プリント、通信電文により警報を出力する。出力部34は、容器27に残留している容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]を表示、プリント、通信電文により出力する。
【0036】
演算部35は、マイクロコンピュータにより構成される。演算部35は、後述するコンピュータプログラムを内蔵する。演算部35は、入力部31、操作部32、記憶部33、出力部34に接続される。演算部35は、以下の演算および制御を行う。
【0037】
(A)入力部31に対する制御
演算部35は、入力部31を制御し以下のデータを逐次受信する。
Ta[K]:分割空間21a内の絶縁ガス28の温度
Tb[K]:分割空間21b内の絶縁ガス28の温度
Tu[K]:外気温
Pg[Pa]:容器27の絶縁ガス28の圧力
【0038】
(B)操作部32に対する制御
演算部35は、操作部32から入力された以下のデータを逐次受信する。
Ms[mol]:絶縁ガス28のリーク量の上限となる基準値
Ts[K]:単位時間における外気温の変動の限度値
C、D:重み付け係数
【0039】
(C)記憶部33に対する制御
演算部35は、以下のデータを記憶部33に記憶させ、記憶部33から読み出す。
Ms[mol]:絶縁ガス28のリーク量の上限となる基準値
Ts[K]:単位時間における外気温の変動の限度値
C、D:重み付け係数
演算部35は、予め設定された以下のデータを記憶部33から読み出す。
Ua[l]:分割空間21aの容積
Ub[l]:分割空間21bの容積
Ug[l]:容器27の容積
Uc[l]:冷却部42の容積
Mo[mol]:リークがない場合の絶縁ガス28の物理量
【0040】
(D)出力部34に対する制御
演算部35は、リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]が予め設定された絶縁ガス28のリーク量の上限となる基準値以上となった場合に、表示、プリント、通信電文により警報を出力するように出力部34を制御する。演算部35は、容器27に残留している容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]およびリークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]を表示、プリント、通信電文により出力するように出力部34を制御する。
【0041】
(E)算出演算
演算部35は、演算により以下の算出を行う。
Va[l/mol]:分割空間21a内の絶縁ガス28のモル体積
Vb[l/mol]:分割空間21b内の絶縁ガス28のモル体積
Vg[l/mol]:容器27内の絶縁ガス28のモル体積
Vc[l/mol]:冷却部42内の絶縁ガス28のモル体積
Ma[mol]:分割空間21a内の絶縁ガス28の物理量
Mb[mol]:分割空間21b内の絶縁ガス28の物理量
Mg[mol]:容器27内の絶縁ガス28の物理量
Mc[mol]:冷却部42内の絶縁ガス28の物理量
Ml[mol]:リークした絶縁ガス28の物理量
【0042】
以上が、ガスリーク検出システム1の構成である。
【0043】
[1-2.作用]
次に、本実施形態のガスリーク検出システム1の作用を、図1~6に基づき説明する。
【0044】
ガスリーク検出システム1の監視部3は、容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]を算出する。また、監視部3は、冷却部42内の絶縁ガス28の物理量Mc[mol]を算出する。監視部3は、算出した容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]、冷却部42内の絶縁ガス28の物理量Mc[mol]に基づき、リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]を算出する。物理量Mlが予め設定された絶縁ガス28のリーク量の上限となる基準値Ms[mol]以上となった場合に、警報を出力する。Mg、Mc、およびMlは、監視者が分かりやすいよう、適宜単位を[mol]から[kg]に変換する場合がある。
【0045】
図3に示すように温度センサ22aにより分割空間21a内の絶縁ガス28の温度Ta[K]が、温度センサ22bにより分割空間21b内の絶縁ガス28の温度Tb[K]が、圧力センサ23により容器27の絶縁ガス28の圧力Pg[Pa]がそれぞれ検出される。また、気温センサ6により外気温Tu[K]が検出される。監視部3の入力部31には、温度Ta[K]、温度Tb[K]、圧力Pg[Pa]、外気温Tu[K]が入力され、アナログ-デジタル変換され演算部35に送信される。
【0046】
[容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出]
最初に容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出手順について説明する。算出された容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]は、容器27内に残留している絶縁ガス28の残留ガス量である。演算部35は、図6に示すプログラムフローに基づき物理量Mg[mol]の算出を行う。図6に示すプログラムは一定間隔で周期的に実行される。
【0047】
(ステップS01:分割空間21a内の絶縁ガス28のモル体積Va[l/mol]を算出する)
演算部35は、分割空間21a内の絶縁ガス28のモル体積Va[l/mol]の算出を(式1)により行う。
Pg=[R・Ta(Va+B)-A]/Va ・・・(式1)
AおよびBは、容器27に封入された絶縁ガス28の種類によってきまる係数であり、絶縁ガス28のモル体積Va[l/mol]の一次関数となる。一例として、AおよびBは、SF6ガスの場合、次式により表される。
A=15.78(1-0.1062Va) ・・・(式1A)
B=0.366(1-0.1236Va) ・・・(式1B)
【0048】
(ステップS02:分割空間21b内の絶縁ガス28のモル体積Vb[l/mol]を算出する)
演算部35は、分割空間21b内の絶縁ガス28のモル体積Vb[l/mol]の算出を(式2)により行う。
Pg=[R・Tb(Va+B)-A]/Vb ・・・(式2)
AおよびBは、容器27に封入された絶縁ガス28の種類によってきまる係数であり、絶縁ガス28のモル体積Vb[l/mol]の一次関数である。AおよびBは、それぞれ(式1A)(式1B)と同様の式にて表される。
【0049】
(ステップS03:分割空間21a内の絶縁ガス28の物理量Ma[mol]、分割空間21b内の絶縁ガス28の物理量Mb[mol]を算出する)
次に演算部35は、分割空間21a内の絶縁ガス28の物理量Ma[mol]、分割空間21b内の絶縁ガス28の物理量Mb[mol]の算出を(式3)により行う。
Ma=Ua/Va Mb=Ub/Vb ・・・(式3)
Uaは分割空間21aの容積[l]、Ubは分割空間21bの容積[l]であり、予め記憶部33に設定記憶されている。
【0050】
(ステップS04:容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]を算出する)
次に演算部35は、容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出を(式4)により行う。
Mg=Ma+Mb ・・・(式4)
上記の手順により、容器27に残留している絶縁ガス28の残留ガス量である容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]が算出される。
【0051】
[冷却部42内の絶縁ガス28の物理量Mc[mol]の算出]
次に冷却部42内の絶縁ガス28の物理量Mc[mol]の算出手順について説明する。算出された冷却部42内の絶縁ガス28の物理量Mc[mol]は、冷却部42内に残留している絶縁ガス28の残留ガス量である。演算部35は、図7に示すプログラムフローに基づき物理量Mc[mol]の算出を行う。図7に示すプログラムは一定間隔で周期的に実行される。
【0052】
(ステップS11:冷却部42のi番目の空間の絶縁ガスの温度Tci[K]を算出する)
図4に示すように、冷却部42の内部の温度分布は、ほぼ線形である。演算部35は、冷却部42内部の空間を大地に対し平行にn等分に分割し、i=1~nとなるi番目の冷却部42内部の空間の絶縁ガス28の温度Tci[K]を(式5)により順次算出する。温度Tc[K]は、Tc1~Tcn[K]のn個につき算出される。
Tci=[Tb+i・(Ta-Tb)Mb]/n ・・・(式5)
Ta[K]は温度センサ22aにより検出された分割空間21a内の絶縁ガス28の温度、Tb[K]は温度センサ22bにより検出された分割空間21b内の絶縁ガス28の温度である。
【0053】
(ステップS12:冷却部42のi番目の空間の絶縁ガスのモル体積Vci[l/mol]を算出する)
演算部35は、n等分に分割された冷却部42内部のi=1~nとなるi番目の空間の絶縁ガス28のモル体積Vci[l/mol]を(式6)により順次算出する。モル体積Vc[l/mol]は、Vc1~Vcn[l/mol]のn個につき算出される。
Pg=[R・Tc(Vc+B)-A]/Vc ・・・(式6)
AおよびBは、容器27に封入された絶縁ガス28の種類によってきまる係数であり、絶縁ガス28のモル体積Vc[l/mol]の一次関数である。AおよびBは、それぞれ(式1A)(式1B)と同様の式にて表される。モル体積Vc[l/mol]が請求項における「単位量当たりの体積」に相当する。
【0054】
(ステップS13:冷却部42内の絶縁ガスの物理量Mc[mol]を算出する)
次に演算部35は、冷却部42内の絶縁ガス28の物理量Mc[mol]の算出を(式7)により行う。
Mc=[Uc/(n・Vc1)]+[Uc/(n・Vc2)]
・・・+[Uc/(n・Vcn)] ・・・(式7)
Ucは冷却部42の容積[l]であり、予め記憶部33に設定記憶されている。
上記の手順により、冷却部42に残留している絶縁ガス28の残留ガス量である冷却部42内の絶縁ガス28の物理量Mc[mol]が算出される。
【0055】
上記では、演算部35により、n等分に分割された冷却部42内部のi=1~nとなるi番目の絶縁ガス28の温度Tci[K]およびモル体積Vci[l/mol]が順次算出され、冷却部42内の絶縁ガス28の物理量Mc[mol]が算出されるものとした。しかしながら、冷却部42の内部の温度分布は、ほぼ線形である。n等分に分割された冷却部42内部の、予め定められたi番目の絶縁ガス28の温度Tciおよびモル体積Vci[l/mol]のみを算出し、冷却部42内の絶縁ガス28の物理量Mc[mol]が算出されるようにしてもよい。
【0056】
[リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]の算出]
次にリークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]の算出手順について説明する。監視部3は、物理量Mlが予め設定された絶縁ガス28のリーク量の上限となる基準値Ms[mol]以上となった場合に、警報を出力する。演算部35は、図8に示すプログラムフローに基づき物理量Ml[mol]の算出および警報の出力を行う。図8に示すプログラムは一定間隔で周期的に実行される。
【0057】
(ステップS21:容器27内、冷却部42内の絶縁ガス28の総物理量Mt[mol]を算出する)
演算部35は、容器27内と冷却部42内の絶縁ガス28の総和である総物理量Mt[mol]を(式8)により算出する。
Mt=Mg+Mc ・・・(式8)
Mgは、容器27内の絶縁ガス28の物理量[mol]、Mcは、冷却部42内の絶縁ガス28の物理量[mol]である。
【0058】
(ステップS22:リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]を算出する)
次に演算部35は、リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]を(式9)により算出する。
Ml=Mo-Mt ・・・(式9)
Moは、リークがない場合の容器27と冷却部42内の絶縁ガス28の物理量[mol]であり、予め記憶部33に設定記憶されている。算出されたリークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]は、逐次記憶部33に記憶され、表示、プリント、通信電文により出力部34から出力される。
【0059】
(ステップS23:リークした絶縁ガスの物理量Ml[mol]は基準値Ms[mol]以上であるかの判断)
次に演算部35は、リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]が絶縁ガス28のリーク量の上限となる基準値Ms[mol]以上であるかの判断を行う。基準値Ms[mol]は記憶部33に記憶されており、演算部35により読み出される。
【0060】
演算部35によりリークした絶縁ガスの物理量Mlは基準値Ms以上であると判断された場合(S23の「YES」)は、ステップS24に移行する。一方、リークした絶縁ガスの物理量Ml[mol]は基準値Ms[mol]以上であると判断されない場合(S23の「NO」)、一連のプログラムを終了する。
【0061】
(ステップS24:警報を出力する)
演算部35は、ステップS23にて、リークした絶縁ガスの物理量Ml[mol]は基準値Ms[mol]以上であると判断された場合、演算部35は、リークした絶縁ガスの物理量Ml[mol]は基準値Ms[mol]以上であることを示す警報を出力するように出力部34を制御する。警報は、表示、プリント、通信電文により出力部34から出力される。
【0062】
[リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]の算出の中止]
次にリークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]の算出が中止される手順について説明する。監視部3は、気温センサ6により検出された外気温の単位時間の変動が、予め定められた基準値を超えた場合、絶縁ガス28のガスリーク量の算出を中止する。
【0063】
図5に、容器27内の絶縁ガス28の平均温度Tg[K]と気温センサ6により測定された外気温Tu[K]の一例を示す。電気機器部2の変圧器29の負荷率が大きく変動した場合や、降雨があった場合など、容器27内の絶縁ガス28の平均温度Tg[K]と外気温Tu[K]の上昇または下降度合いに差分が発生する。
【0064】
このような温度の上昇または下降度合いの差分は、容器27内の絶縁ガス28の平均温度Tg[K]または外気温Tu[K]が大きく変動した場合、および発熱条件又は放熱条件が大きく変化し、発熱量と放熱量のバランスが崩れた場合に、発生する。容器27内の絶縁ガス28の平均温度Tg[K]は、緩やかに過渡的に変化する。
【0065】
容器27内の絶縁ガス28の平均温度Tg[K]が、急激かつ過渡的に変化している時に、容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出を行うと、算出精度が大きく低下する。これに伴いリークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]の算出精度も大きく低下する。この算出精度の低下を避けるため、気温センサ6により検出された外気温Tu[K]、温度センサ22aにより検出された分割空間21a内の絶縁ガス28の温度Ta[K]、温度センサ22bにより検出された分割空間21b内の絶縁ガス28の温度Tb[K]、および電流監視用CT(図中不指示)の測定値のいずれかが大きく変化した場合、変化前後の一定時間、容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出、リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]の算出を中止する。
【0066】
例えば、予め定められた時間内に外気温Tu[K]が、単位時間における外気温の変動の限度値Ts[K]を超える場合、演算部35は、容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出、リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]の算出を中止する判断を行う。一定時間が経過し発熱量と放熱量のバランスが平衡に達し、容器27内の絶縁ガス28の温度分布が再び定常状態に戻った後、演算部35は、容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出、リークした絶縁ガス28の物理量Ml[mol]の算出を再開する。演算部35は、例えば、予め定められた時間内に外気温Tu[K]が、単位時間における外気温の変動の限度値Ts[K]を超ない場合、物理量Mgの算出、物理量Ml[mol]の算出を再開する。
【0067】
以上が、ガスリーク検出システム1の作用である。
【0068】
[1-3.効果]
(1)本実施形態によれば、ガスリーク検出システム1は、送配電用の機器29が固定され、絶縁ガス28が封入された容器27と、大地に対し平行に分割された容器27の内部の複数の分割空間21と、複数の分割空間21に位置する絶縁ガス28の温度を検出する複数の温度センサ22と、容器27の内部の圧力を検出する圧力センサ23と、を有する電気機器部2と、複数の温度センサ22により検出された絶縁ガス28の温度Ta[K]、Tb[K]、および圧力センサ23により検出された圧力Pg[Pa]に基づき、容器27に残留している絶縁ガス28の残留ガス量Mg[mol]を算出する監視部3とを有するので、電気機器を構成する容器27内の絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量を検出する精度が高いガスリーク検出システム1を提供することができる。
【0069】
また、電気機器部2に、少数の温度センサ22と圧力センサ23が取付けられ、温度センサ22と圧力センサ23が取付けられた電気機器部2の取付け孔から、絶縁ガス28が不要に漏出することを軽減することができる。
【0070】
(2)本実施形態によれば、監視部3は、複数の温度センサ22により検出された絶縁ガス28の温度Ta[K]、Tb[K]、および圧力センサ23により検出された圧力Pg[Pa]に基づき、分割空間21ごとの絶縁ガス28の残留ガス量Ma[mol]、Mb[mol]を算出し、算出された分割空間21ごとの絶縁ガス28の残留ガス量Ma[mol]、Mb[mol]を加算することにより、容器27に残留している絶縁ガス28の残留ガス量Mg[mol]を算出するので、電気機器を構成する容器27内の絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量を検出する精度がより高いガスリーク検出システム1を提供することができる。
【0071】
従来技術として、温度補正により算出された絶縁ガスの圧力の経時変化に基づきガスリーク量の検出を行うガスリーク検出システム、測定された電流値に基づきガスリーク量の補正を行いガスリーク量の検出精度を向上させたガスリーク検出システム、通電電流と絶縁ガスの温度と本体内のガス温度分布の相関関係をあらかじめ学習させ、通電電流と機器表面温度から内部のガス温度分布を求め温度補正を行い、ガスリーク量の検出精度を向上させたガスリーク検出システム等が知られている。
【0072】
しかしながら、電気機器部2が内部に巻線をはじめとする熱量の大きな発熱体を持つ静止誘導電器等により構成され、かつ絶縁ガス28を冷却部42のような冷却装置で、放熱による自然循環、またはガスブロア41のような循環装置を用いて強制的に循環させることで冷却する場合、上記のような従来技術によるガスリーク検出システムでは、容器27内部に複雑な温度分布が生じ、かつその温度分布は常時変化するため、ガスリーク量の検出精度の低下は免れない。
【0073】
容器27内部の温度分布の変化による影響を軽減させることを目的として、温度センサや圧力センサまたは密度センサを多数、容器27内に設けることも考えられる。しかしながら、多数のセンサを容器27内に設けることは、ガスリーク検出システム1の高コスト化を招くこととなり、望ましくない。地球温暖化対策、および予期せぬ機器停止に対する予防の観点から、ガスリーク検出システム1は、0.5%/年程度のガスリーク量の検出精度を有することが望ましい。
【0074】
本実施形態によれば、少数の温度センサ22、および圧力センサ23を容器27内に設けることで容器27内の絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量を検出する精度が高いガスリーク検出システム1を提供することができる。
【0075】
本実施形態によれば、容器27の内部の複数の分割空間21とごとの温度、および圧力に基づき、複数の分割空間21ごとの残留ガス量が算出され、算出された残留ガス量に基づきガスリーク量が算出されるので、ガスリーク検出システム1により、高精度で絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量が検出される。
【0076】
(3)本実施形態によれば、複数の分割空間21は、容器27の内部に大地に対し平行に設けられた仕切板24により分割され形成されているので、仕切板24により分割されていない場合に比べ、複数の分割空間21ごとの内部温度は、より均一になる。複数の分割空間21ごとに残留ガス量が算出され、算出された残留ガス量に基づきガスリーク量が算出されるので、ガスリーク検出システム1により、高精度で絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量が検出される。
【0077】
(4)本実施形態によれば、容器27は、絶縁ガス28を循環させる循環部4に接続されている。循環部4にガスブロア42を有し、循環部4に絶縁ガス28を強制的に循環する場合、複数の分割空間21ごとの内部温度は、より均一になる。複数の分割空間21ごとに残留ガス量が算出され、算出された残留ガス量に基づきガスリーク量が算出されるので、ガスリーク検出システム1により、高精度で絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量が検出される。
【0078】
(5)本実施形態によれば、循環部4は、冷却部42を有し、監視部3は、容器27に残留している絶縁ガス28の残留ガス量と、冷却部42に残留している絶縁ガス28の残留ガス量とを加算して総残留ガス量を算出するので、より高精度で絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量を検出することができる。冷却部42に残留している絶縁ガス28の残留ガス量を加算して総残留ガス量を算出することにより、冷却部42の残留ガス量または冷却部42からリークしたガスリーク量を含め、残留ガス量またはガスリーク量が算出されるので、ガスリーク検出システム1により、高精度で絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量が検出される。
【0079】
(6)本実施形態によれば、冷却部42に残留している絶縁ガス28の残留ガス量Mc[mol]は、冷却部42の分割された空間ごとに算出された温度Tc[K]および絶縁ガス28の単位量当たりの体積であるモル体積Vc[l/mol]に基づいて算出されるのでより精度よく、絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量が検出される。
【0080】
(7)本実施形態によれば、監視部3は、算出した、容器27に残留している絶縁ガス28の残留ガス量に基づき絶縁ガス28のガスリーク量を算出し、ガスリーク量が予め設定された基準値以上となった場合に、警報を出力する出力部34を有するので、作業者は、電気機器部2の絶縁ガス28のガスリーク量が予め設定された基準値以上となったことを、電気機器部2が故障に至る前に知ることができる。
【0081】
仮に、ガスリーク量が予め設定された基準値以上となった場合に、警報を出力する出力部34を有しない場合、突発的に電気機器部2との故障を報知する警報が発せられ、電気機器部2の運転を直ちに停止し点検修理を行うことが必要とされる。電気機器部2の予期せぬ停止は、望ましくない。
【0082】
本実施形態によれば、ガスリーク量が予め設定された基準値以上となった場合に、警報を出力する出力部34を有するので、容器27のシール材の劣化などによる微少なガスリークが事前に作業者に報知され、作業者は部品の予防交換を行うことができ、電気機器部2の予期せぬ停止を防止することができる。
【0083】
(7)本実施形態によれば、ガスリーク検出システム1は、外気温を検出する気温センサ6を有し、監視部3は、気温センサ6により検出された外気温の単位時間の変動が、予め定められた基準値を超えた場合、絶縁ガス28のガスリーク量の算出を中止するので、高精度で絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量を検出することができない時に、残留ガス量またはガスリーク量の算出を中止することができる。これによりガスリーク検出システム1により、高精度で絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量が検出される。
【0084】
電気機器部2を構成する静止誘導電器等の負荷が大きく変動した場合や、降雨などで外気温Tuが大きく変動した場合など、発熱条件又は放熱条件が大きく変化し、発熱量と放熱量のバランスが崩れ、容器27内のガス温度分布は過渡的に変化する。このとき、絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量の検出精度は大きく低下する。
【0085】
本実施形態によれば、気温センサ6により検出された外気温の単位時間の変動が、予め定められた基準値を超えた場合、絶縁ガス28のガスリーク量の算出を中止するので、電気機器部2の負荷や外気温Tuの急激な変化による、絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量の検出精度が低下することを防止することができる。
【0086】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成および作用]
第1実施形態のガスリーク検出システム1は、図6に示すプログラムフローに基づき容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出が行われることを特徴とする。本実施形態のガスリーク検出システム1は、図9に示すプログラムフローに基づき容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出が行われることを特徴とする。その他の構成は第1実施形態と同じである。本実施形態のガスリーク検出システム1における容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出手順を、図9に示すプログラムフローに基づき説明する。容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出は、以下の手順にて行われる。
【0087】
[容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出]
(ステップS31:容器27内の絶縁ガス28の仕切板24により2つに分割された領域におけるモル体積Va[l/mol]およびVb[l/mol]を算出する)
演算部35は、(式10)および(式11)を用いて、分割空間21aのモル体積Va[l/mol]、および分割空間21bのモル体積Vb[l/mol]を算出する。
Pg=[R・Ta(Va+B)-A]/Va ・・・(式10)
Pg=[R・Tb(Va+B)-A]/Vb ・・・(式11)
Ta[K]は温度センサ22aにより検出された分割空間21a内の絶縁ガス28の温度、Tb[K]は温度センサ22bにより検出された分割空間21b内の絶縁ガス28の温度である。AおよびBは、(式1)におけるAおよびBと容器27に封入された絶縁ガス28の種類によってきまる係数であり、絶縁ガス28のモル体積Vg[l/mol]の一次関数となり、それぞれ(式1)におけるAおよびBと同一である。
【0088】
(ステップS32:容器27内の絶縁ガス28のモル体積Vg[l/mol]を算出する)
演算部35は、(式12)を用いて、容器27内の絶縁ガス28のモル体積Vg[l/mol]を算出する。
Vg=(C・Va+D・Vb)/2 ・・・(式12)
CおよびDは、電気機器部2を構成する機器固有の定数である。CおよびDは、体積に関する重み付け係数であり、無名数である。CおよびDは、「1」を中心値とし、「1」を超える数値である場合、平均温度への寄与率が高く、「1」未満の数値である場合、平均温度への寄与率が低い。CおよびDは、C+D=2となる数値である。例えば、CおよびDは、C=1.1、D=0.9となる数値である。
【0089】
CおよびDは、電気機器部2の個体ごとに固有の数値が設定される。CおよびDは、例えば電気機器部2の納入前に実施される温度上昇試験のような、理論上絶縁ガス28のリークがない環境において測定された温度および圧力の実測値と、それにより算出されたモル体積の値に基づき決定される。CおよびDは、操作部32から作業者により入力され、記憶部33に設定記憶される。上記において、CおよびDは、「1」を中心値とした数値であるものとしたが、CおよびDは、任意の数値を中心値とするものとし、(式12)は、任意の中心値を有するCおよびDに対応するものとしてもよい。
【0090】
(ステップS33:容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]を算出する)
次に演算部35は、容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg[mol]の算出を(式13)により行う。
Mg=Ug/Vg ・・・(式13)
Ugは容器27の容積[l]であり、予め記憶部33に設定記憶されている。
【0091】
以上が、本実施形態にかかるガスリーク検出システム1の作用である。
【0092】
[2-2.効果]
(1)本実施形態によれば、ガスリーク検出システム1は、配電用の機器29が固定され、絶縁ガス28が封入された容器27と、大地に対し平行に分割された容器27の内部の複数の分割空間21と、複数の分割空間21に位置する絶縁ガス28の温度を検出する複数の温度センサ22と、容器27の内部の圧力を検出する圧力センサ23と、を有する電気機器部2と、複数の温度センサ22により検出された絶縁ガス28の温度Ta[K]、Tb[K]、および圧力センサ23により検出された圧力Pg[Pa]に基づき、容器27に残留している絶縁ガス28の残留ガス量Mg[mol]を算出する監視部3と、を有するので、電気機器を構成する容器27内の絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量を検出する精度が高いガスリーク検出システム1を提供することができる。
【0093】
また、電気機器部2に、少数の温度センサ22と圧力センサ23が取付けられ、温度センサ22と圧力センサ23が取付けられた電気機器部2の取付け孔から、絶縁ガス28が不要に漏出することを軽減することができる。
【0094】
(2)本実施形態によれば、監視部3は、複数の温度センサ22により検出された絶縁ガス28の温度Ta[K]、Tb[K]のそれぞれに、予め設定された重み付け係数C、Dを乗算して算出した平均温度Tg[K]、および圧力センサ23により検出された圧力Pg[Pa]に基づき、容器27に残留している前記絶縁ガス28の残留ガス量Mg[mol]を算出するので、より精度よく電気機器を構成する容器27内の絶縁ガスの残留ガス量またはガスリーク量を検出することができる。
【0095】
[3.他の実施形態]
変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0096】
上記実施形態では電気機器部2は変圧器29により構成されるものとしたが、電気機器部2は変圧器29により構成されるものに限られない。電気機器部2は、例えばリアクトル、開閉器等の他の電気機器により構成されるものであってもよい。
【0097】
上記実施形態では電気機器部2は仕切板24を有するものとしたが、電気機器部2は仕切板24を有していなくてもよい。また、上記実施形態では電気機器部2は一つの仕切板24を有し、仕切板24により二つの分割空間21a、21bが形成されるものとしたが、電気機器部2は複数の仕切板24を有していてもよい。複数の仕切板24により、電気機器部2に三つ以上の分割空間21が形成されるようにしてもよい。三つ以上の分割空間21にそれぞれ温度センサ22が配置され、分割空間21ごとの絶縁ガス28の物理量が算出され、容器27内の絶縁ガス28の物理量Mg、リークした絶縁ガス28の物理量Mlが算出されるようにしてもよい。
【0098】
上記実施形態では、温度センサ22aは、分割空間21aを形成する容器27の内壁に、温度センサ22bは、分割空間21bを形成する容器27の内壁に配置されるものとしたが、温度センサ22aは、配管5aに、温度センサ22bは、配管5bに配置されるようにしてもよい。
【0099】
上記実施形態では循環部4は、ガスブロア41を有するものとしたが、循環部4は、ガスブロア41を有さず、容器27内の絶縁ガス28を変圧器29の発熱により自然循環させるものであってもよい。また、上記実施形態では電気機器部2は、循環部4を有するものとしたが、電気機器部2は循環部4を有していなくてもよい。
【0100】
ガスリーク検出システム1は、上記実施形態に加え、電気機器部2の通電電流を検出するCT等のセンサを備えていてもよい。CT等のセンサにより検出された電気機器部2の通電電流は、監視部3または電力管理用のコンピュータ(図中不示)に送信される。
【符号の説明】
【0101】
1・・・ガスリーク検出システム
2・・・電気機器部
3・・・監視部
4・・・循環部
5,5a,5b・・・配管
6・・・気温センサ
21,21a,21b・・・分割空間
22,22a,22b・・・温度センサ
23・・・圧力センサ
24・・・仕切板
27・・・容器
28・・・絶縁ガス
29・・・変圧器
31・・・入力部
32・・・操作部
33・・・記憶部
34・・・出力部
35・・・演算部
41・・・ガスブロア
42・・・冷却部
43・・・配管
61・・・日よけ
291・・・鉄心部
292・・・巻線部

図1
図2
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図9