(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】電子装置、方法、プログラム、および通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/27 20150101AFI20221107BHJP
G01S 5/02 20100101ALI20221107BHJP
【FI】
H04B17/27
G01S5/02 Z
(21)【出願番号】P 2021549636
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011766
(87)【国際公開番号】W WO2021186566
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】米澤 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】坂本 岳文
(72)【発明者】
【氏名】戸張 智博
(72)【発明者】
【氏名】幸田 貴則
【審査官】佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-038112(JP,A)
【文献】特開2008-178006(JP,A)
【文献】特開2010-190629(JP,A)
【文献】特開2014-016291(JP,A)
【文献】国際公開第2012/104983(WO,A1)
【文献】米澤 祐紀 et al.,無線照明制御システム設置時の確認作業時間を短縮する配置推定技術,東芝レビュー,VOL. 74, NO. 3,日本,Internet <URL:http://www.toshiba.co.jp/tech/review,2019年05月23日,pp. 44-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 17/27
G01S 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の位置候補から、無線機の位置を推定する推定装置であって、
前記複数の位置候補を示す第1情報に基づいて、前記複数の位置候補間の距離に関する情報を生成し、
前記複数の位置候補間の距離に関する情報に基づいて、前記複数の位置候補のうち、設置されている無線機の識別情報を取得する第1位置候補を決定する処理部と、
を備える、
推定装置。
【請求項2】
前記第1位置候補を示す情報を出力する出力部と、
前記第1位置候補に設置されている無線機の識別情報を取得する取得部と、
をさらに備え、
前記処理部は、前記第1情報、前記第1位置候補における無線機の識別情報、および、前記複数の位置候補のいずれかに設置されている複数の無線機間の通信に関する第2情報に基づいて、前記複数の無線機のうち、少なくとも1台の第1無線機が設置されている位置を前記複数の位置候補から推定する、
請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記第1無線機が設置されている位置を示す情報を出力し、
前記取得部は、前記第1無線機が設置されている位置を示す情報に対する第1応答を取得し、
前記処理部は、前記第1応答に応じて、前記第1無線機が設置されている位置を修正する、
請求項2に記載の推定装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記第1無線機が設置されている位置を示す情報を出力し、
前記取得部は、前記第1無線機が設置されている位置を示す情報に対する第1応答を取得し、
前記処理部は、前記第1応答にさらに基づいて、前記第1無線機が設置されている位置を再度推定する、
請求項2または3のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項5】
無線機が設置される複数の位置候補を示す第1情報、複数の無線機間の通信に関する第2情報、第1評価指標に基づいて、前記複数の無線機のうち、少なくとも1台の第1無線機が設置されている位置を前記複数の位置候補から推定し、
前記第1情報、前記第2情報、および前記第1評価指標とは異なる第2評価指標に基づいて、前記第1無線機が設置されている位置を前記複数の位置候補から推定し、
前記第1評価指標に基づいて推定された前記第1無線機が設置されている位置と、前記第2評価指標に基づいて推定された前記第1無線機が設置されている位置とが異なる第1位置を決定する処理部と、
を備える、
推定装置。
【請求項6】
前記第1位置を示す情報を出力する出力部と、
前記第1位置に設置されている無線機の識別情報に関する第3情報を取得する取得部と、
をさらに備え、
前記処理部は、前記第3情報に基づいて、前記第1位置が設置されている位置の情報を修正する、
請求項5に記載の推定装置。
【請求項7】
前記第1位置を示す情報を出力する出力部と、
前記第1位置に設置されている無線機の識別情報に関する第3情報を取得する取得部と、
をさらに備え、
前記処理部は、前記第3情報にさらに基づいて、前記第1無線機が設置されている位置を前記複数の位置候補から再度推定する、
請求項5に記載の推定装置。
【請求項8】
前記第2情報は、RSSI、PER、電波の伝搬時間のうち少なくとも一つを含む、
請求項2乃至7のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項9】
前記第2情報は電波の伝搬時間を含み、前記無線機間の通信方法はUWBである、
請求項2乃至8のいずれか一項に記載の推定装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の推定装置と、
前記無線機と、
を備える、
通信システム。
【請求項11】
複数の位置候補から、無線機の位置を推定する方法であって、
前記複数の位置候補を示す第1情報に基づいて、前記複数の位置候補間の距離に関する情報を生成し、
前記複数の位置候補間の距離に関する情報に基づいて、前記複数の位置候補のうち、設置されている無線機の識別情報を取得する第1位置候補を決定する、
方法。
【請求項12】
無線機が設置される複数の位置候補を示す第1情報、複数の無線機間の通信に関する第2情報、第1評価指標に基づいて、前記複数の無線機のうち、少なくとも1台の第1無線機が設置されている位置を前記複数の位置候補から推定し、
前記第1情報、前記第2情報、および前記第1評価指標とは異なる第2評価指標に基づいて、前記第1無線機が設置されている位置を前記複数の位置候補から推定し、
前記第1評価指標に基づいて推定された前記第1無線機が設置されている位置と、前記第2評価指標に基づいて推定された前記第1無線機が設置されている位置とが異なる第1位置を決定する、
方法。
【請求項13】
複数の位置候補から、無線機の位置を推定させるプログラムであって、
前記複数の位置候補を示す第1情報に基づいて、前記複数の位置候補間の距離に関する情報を生成させ、
前記複数の位置候補間の距離に関する情報に基づいて、前記複数の位置候補のうち、設置されている無線機の識別情報を取得する第1位置候補を決定させる、
プログラム。
【請求項14】
無線機が設置される複数の位置候補を示す第1情報、複数の無線機間の通信に関する第2情報、第1評価指標に基づいて、前記複数の無線機のうち、少なくとも1台の第1無線機が設置されている位置を前記複数の位置候補から推定させ、
前記第1情報、前記第2情報、および前記第1評価指標とは異なる第2評価指標に基づいて、前記第1無線機が設置されている位置を前記複数の位置候補から推定させ、
前記第1評価指標に基づいて推定された前記第1無線機が設置されている位置と、前記第2評価指標に基づいて推定された前記第1無線機が設置されている位置とが異なる第1位置を決定させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子装置、方法、プログラム、および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線機間の伝搬特性(例えば、RSSI等)を測定し、無線機が設置されている位置を推定する方法が知られている。この方法について、無線機が設置されている位置を推定する精度を向上させることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、無線機が設置されている位置を推定する精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る電子装置は、複数の位置候補から、無線機の位置を推定する推定装置であって、この複数の位置候補を示す第1情報に基づいて、この複数の位置候補間の距離に関する情報を生成し、この複数の位置候補間の距離に関する情報に基づいて、この複数の位置候補のうち、設置されている無線機の識別情報を取得する第1位置候補を決定する処理部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、通信システム300を説明する図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における推定装置100の動作のフローチャートである。
【
図5】
図5は、通信システム300の位置候補P1~P15の位置(座標)を説明する図である。
【
図6】
図6は、位置候補ごとにおける他の位置候補までの距離を表した図である。
【
図7】
図7は、RSSIと距離との関係を表す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態における位置候補Aおよび無線機200Aの識別情報を入力する指示を視覚的に表す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態における無線機200Aの識別情報を取得した後における通信システム300を説明する図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態において推定された無線機200のそれぞれの位置を説明する図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態の変形例において、無線機200の一部が交換された場合の通信システム300を説明する図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態の変形例において推定された無線機200のそれぞれの位置を説明する図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態における推定装置100の動作のフローチャートである。
【
図14】
図14は、第2の実施形態において評価指標ごとに推定された無線機200のそれぞれの位置を説明する図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態における評価指標を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明を実施するための実施形態について図面を参照して説明する。開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照番号を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0008】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る通信システム300を表している。通信システム300は、推定装置100および複数の無線機200を含む。推定装置100は、無線機200が設置される複数の位置の候補(以降、位置候補とも称する)を表す情報および無線機200間の通信に関する情報(以降、通信情報とも称する)を取得し、無線機200のそれぞれがどの位置候補に設置されているかを推定する装置である。応用例として、無線機200は機器、例えば照明器具、空調機器、太陽電池モジュールなどに設けられている場合、推定装置100は、無線機200の位置を推定することで、無線機200が設けられている機器の位置を推定することができる。推定装置100および無線機200は、推定装置100と無線機200の間で通信し、複数の無線機200間でも通信を行うことができる。通信は、通信に必要とされるやり取り、信号の送信および受信の少なくとも1つを含む。
図1では、これらの通信が無線により行われる場合が表されているが、これらの通信は少なくとも一部有線で行われてもよい。無線通信規格はWifi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、UWB(Ultra Wide Band)など任意の規格が適用可能である。
【0009】
推定装置100は、まず設置されている無線機200の識別情報を取得する位置候補Aを決定する。位置候補Aは、設置されている無線機200の推定に誤りが生じる可能性が他の位置候補と比較して高い位置候補である。推定装置100は、次に位置候補Aに設置されている無線機200Aの識別情報に基づいて、無線機200A以外の無線機200が設置されている位置を、位置候補のうちから推定する。これにより、無線機200の位置の推定精度を向上させることができる。
【0010】
図2は、推定装置100の構成図である。推定装置100の構成を、
図2を用いて説明する。推定装置100は、取得部110、処理部120、記憶部130、および出力部140を備える。取得部110は通信部111および入力部112を有し、処理部120は制御部121、決定部122、および推定部123を有する。
【0011】
通信部111はアンテナを含み、通信により無線信号を送信および受信する。例えば無線機200や、データベース等と通信することができる。通信部111は、無線機200から通信情報を受信して取得する。通信情報は例えば、複数の無線機200間の通信におけるRSSI(Received Signal Strength Indicator)、PER(Packet Error Rate)などの伝搬情報と、複数の無線機200間の通信における無線機200の識別情報、信号の受信時刻や通信に使用したチャネル番号などを表す情報を含む。識別情報は、それぞれの無線機200を特定する情報であり、推定装置100は識別情報により通信システム300に含まれるそれぞれの無線機200を個別に特定することができる。識別情報としては例えば、機器ID、MACアドレスやIPアドレスであるが、無線機200のそれぞれを個別に特定できれば任意の情報が適用可能である。通信部111は、データベース等の通信を通じて、通信情報を取得してもよい。通信情報は、無線機200が設置されている位置の推定に使われる。
【0012】
入力部112は、位置候補を表す情報および位置候補Aに設置されている無線機200Aの識別情報を取得する。例えば、入力部112はユーザからの入力によって位置候補を表す情報を取得してもよいし、無線機200が設置される位置が記載された図面を入力またはスキャン等し、画像処理等によって位置候補を表す情報を取得してもよいし、無線機200の設置状況を表す画像を撮影または入力し、画像処理等によって位置候補を表す情報を取得してもよい。また、入力部112が取得する無線機200Aの識別情報は、無線機200の位置の推定において、既知情報となる。無線機200Aの識別情報は、ユーザによって入力されてもよいし、信号によって送信され、通信部111によって取得されてもよい。
【0013】
また、入力部112には、推定装置100が無線機200の位置を推定して出力した後、無線機200の位置に対する応答を取得する。応答とは例えば推定した無線機200の位置が正しいことを表したり、推定した無線機200の位置のうち、少なくとも一部が修正された位置などを表す。応答はユーザによって入力されてもよいし、信号によって送信されてもよい。この応答により、推定装置100は無線機200の位置を確定することができる。
【0014】
制御部121は、取得部110から送られた位置候補を表す情報、通信情報、無線機200Aの識別情報を記憶部130に保持させたり、記憶部130に保持されている情報の少なくとも1つの情報を決定部122および推定部123に送る。また、制御部121は、推定した無線機200の位置および応答に基づいて、無線機200の位置を確定する(以降、無線機200がどの位置候補に設置されているかを示す情報を確定情報とも称する)。制御部121は、確定情報を記憶部130に保持させる。
【0015】
決定部122は、制御部121から送られた位置候補を表す情報に基づいて、設置されている無線機200の識別情報を取得する位置候補Aを決定する。位置候補Aの決定において、まず決定部122は位置候補間の距離に関する情報を生成する。位置候補間の距離に関する情報は、位置候補間の距離そのものの情報でもよいし、位置候補間の距離を評価した評価値の情報であってもよい。決定部122は、次に生成した位置候補間の距離に関する情報に基づいて、位置候補のうち、設置されている無線機200の識別情報を取得する位置候補Aを決定する。決定部122は、決定した位置候補Aの情報を、出力部140に送る。
【0016】
推定部123は、制御部121から送られた位置候補を表す情報、通信情報、および無線機200Aの識別情報に基づいて、無線機200が設置されている位置を、位置候補のうちから推定する。無線機200Aについては位置候補Aに設置されていることが既知であるため、推定部123は無線機200A以外の無線機200の位置について、位置候補A以外の位置候補のうちから推定するようにしてもよい。推定部123は、推定した無線機200の位置の情報を、出力部140に送る。推定した無線機200の位置の情報は、無線機200Aの位置の情報を含んでいてもよい。
【0017】
図2では、制御部121、決定部122、推定部123は処理部120に含まれる。処理部120は、制御装置と演算装置を含む1つ以上の電子回路である。電子回路は、アナログまたはデジタル回路等で実現される。例えば、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ASIC、FPGA、およびその組合せが可能である。また、処理部120はソフトウェアによってこれらの電子回路で実行されてもよい。
【0018】
記憶部130は、制御部121から送られる情報を保持する。記憶部130はメモリ等であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、EEPROM(Electrically EPROM)、フラッシュメモリ、レジスタなどである。また、記憶部130は推定装置100の内部の他、外部に設けられてもよい。外部に設けられる場合、記憶部130はインターネットを経由して情報を保持するクラウドでもよい。
【0019】
出力部140は、決定部122から送られる位置候補Aの情報と、位置候補Aにおける無線機200Aの識別情報を取得部110に送る指示を表す情報を出力する。この出力により、取得部110は無線機200Aの識別情報を取得する。位置候補Aの情報の出力先および形態は任意であり、例えば、ユーザが無線機200Aの識別情報を入力するよう促すメッセージを視覚的に表示する装置、情報処理装置などである。
【0020】
出力部140は、推定部123から送られる、推定した無線機200の位置を表す情報を出力する。位置候補Aの情報および推定した無線機200の位置を表す情報の出力先および形態は任意であり、例えば、推定した無線機200の位置を表す情報を分析する装置や、視覚的に表示する装置、保持する装置などである。
【0021】
出力部140が情報を出力する出力先の装置は、推定装置100内部の図示しない要素であってもよいし、推定装置100の外部に設けられていてもよい。また、出力部140は通信部111の一部を含み、通信によって位置候補Aの情報や無線機200の位置を表す情報を出力してもよい。
【0022】
なお、
図2では、取得部110は通信部111および入力部112を有しているが、少なくとも一方であってもよいし、情報または信号を取得する新たな部があってもよい。本実施形態では一例として、通信部111は通信情報を、入力部112は位置候補を表す情報、無線機200Aの識別情報、および応答を取得する。取得部110が位置候補を表す情報、通信情報、無線機200Aの識別情報、および応答が取得できれば、任意の取得方法が適用可能である。例えば、通信部111が位置候補を表す情報、無線機200Aの識別情報、および応答の少なくとも1つを受信し取得してもよいし、入力部112が通信情報を取得してもよい。取得部110が取得した位置候補を表す情報、通信情報、無線機200Aの識別情報は、制御部121に送られる。
【0023】
以上、推定装置100の構成を説明した。推定装置100の構成要素の少なくとも一部は、物理的に統合された半導体集積回路(LSI等)に実装されてもよい。
図3は、無線機200の構成図である。通信システム300では、複数の無線機200が想定されているが、それぞれ
図3と同様の構成を有する。無線機200は、通信部201、処理部202、記憶部203を備える。
【0024】
通信部201はアンテナを含み、通信により無線信号を送信および受信する。例えば他の無線機200(例えば、無線機200Bとする)や、推定装置100と通信することができる。通信部201は、推定装置100に通信情報を送るほか、無線機200Bに信号を送信する。送信方式は任意であるが、例えば、ブロードキャストが用いられる。これにより、無線機200Bにおいて伝搬情報が測定され、通信情報が生成される。通信部201は、無線機200Bから信号を受信し、処理部202に送る。この信号は伝搬情報の測定に使われる。
【0025】
処理部202は、無線機200Bから送られた信号に基づいて、無線機200と200Bの間の伝搬情報を測定する。処理部202は、測定した伝搬情報に基づいて通信情報を生成する。処理部202は、伝搬情報および/または通信情報を記憶部203に保持させたり、記憶部203に保持されている情報の少なくとも1つを取得して通信情報として通信部201に送る。処理部202は、複数の無線機200B(200B1、200B2…)と無線機200間の伝搬情報をまとめて通信情報を生成してもよいし、それぞれの無線機200Bとの伝搬情報ごとに通信情報を生成してもよい。処理部202は、処理部120で説明した電子回路の少なくとも1つで構成されている。
【0026】
記憶部203は、処理部202から送られる情報を保持する。記憶部203は、記憶部130で説明したメモリ等の少なくとも1つで構成されている。以上、無線機200の構成を説明した。無線機200の構成要素の少なくとも一部は、物理的に統合された半導体集積回路(LSI等)に実装されてもよい。
【0027】
以下に、推定装置100の動作を説明する。本実施形態では一例として、推定装置100は、無線機200のそれぞれの位置を推定する場合の動作を説明する。なお、通信システム300の無線機200は、無線機200間における伝搬情報を測定済であるとする。推定装置100は、無線機200が設置される複数の位置候補を表す位置候補を表す情報および無線機200間の伝搬情報を含む通信情報を取得する。推定装置100は、複数の位置候補間の距離に関する情報を生成し、設置されている無線機200の識別情報を取得する位置候補Aを決定する。推定装置100は、位置候補Aおよび位置候補Aに設置されている無線機200Aの識別情報を入力または送る指示を出力する。推定装置100は、指示に応じて入力されたまたは送られた無線機200Aの識別情報を取得する。推定装置100は、位置候補を表す情報、無線機200Aの識別情報、および通信情報に基づいて、無線機200のそれぞれの位置を、位置候補を表す情報に含まれる位置候補のうちから推定する。推定装置100は、推定した無線機200のそれぞれの位置を表す情報を出力し、推定した無線機200のそれぞれの位置に対する応答を取得する。推定装置100は、取得した応答に応じて無線機200のそれぞれの位置を修正し、無線機200の位置を確定する。なお、推定装置100は、無線機200のそれぞれの特定を、通信情報に含まれる識別情報に基づいて行っている。
【0028】
図4は、推定装置100の動作のフローチャートである。推定装置100の動作の詳細を、
図4を用いて説明する。取得部110は、位置候補を表す情報および通信情報を取得する(ステップS101)。本実施形態では一例として、通信部111は通信情報を取得し、入力部112は位置候補を表す情報を取得する。通信情報に含まれる伝搬情報は、RSSIとする。取得された各種情報は制御部121に送られ、記憶部130に保持される。制御部121は、位置候補を表す情報を決定部122に送る。
図5は、本実施形態の一例として通信システム300の位置候補および無線機200を表す図である。通信システム300は位置候補を表す情報に含まれる位置候補として位置候補P1~P15を有し、無線機200として無線機200D1~D15を有する。位置候補P1~P15は、それぞれの位置(座標)が明らかとなっている。例えば
図5では、位置候補P1~P15のそれぞれはx座標とy座標により特定される。位置候補P1は(x,y)=(1,3)、位置候補P2は(x,y)=(1,2)、位置候補P3は(x,y)=(2,1)、…、位置候補P15は(x,y)=(10,1)のように表される。推定装置100は、取得した通信情報に含まれる無線機200の識別情報によって、無線機200が無線機200D1~D15であることを認識するが、位置候補P1~P15のどの位置候補に位置しているかについては未知である。
【0029】
決定部122は、制御部121から送られた位置候補を表す情報に基づいて、設置されている無線機200の識別情報を取得する位置候補Aの決定に用いる、複数の位置候補間の距離に関する情報を生成する(ステップS102)。本実施形態では、ある位置候補に着目し、着目した位置候補からそれ以外の位置候補の間の距離の算出を、すべての位置候補について行うことにより、複数の位置候補間の距離に関する情報を生成する。例えば、決定部122は位置候補P1から位置候補P2~P15までの距離を算出し、位置候補P2から位置候補P1、P3~P15までの距離を算出し、…位置候補P15から位置候補P1~P14までの距離を算出する。
図6は、位置候補ごとにおける他の位置候補(14個)までの距離を、7つの区間に分類して表した図である。距離の区間(以降、距離区間とも称する)については、番号が大きくなるほど位置候補間の距離が長くなることを表している。以降、
図6に表された距離区間のそれぞれを、距離区間1、距離区間2、…、距離区間7とも称する。例えば、位置候補P1~P3、P13~P15に着目すると、距離区間1~7それぞれに他の位置候補が存在している。これは、
図5に表されているように、位置候補P1~P3、P13~P15は左右の端の位置候補であるので、一方の端の位置候補からもう一方の端の位置候補の距離は大きくなるためである。一方、位置候補P6~P8、P10~P11などは、距離区間5~7には他の位置候補が存在しない。これは、
図5に表されているように、位置候補P6~P8、P10~P11は中央寄りの位置候補であるため、距離が遠い位置候補が少ないためである。
【0030】
決定部122は、生成した複数の位置候補間の距離に関する情報に基づいて、設置されている無線機200の識別情報を取得する位置候補Aを決定する(ステップS103)。本実施形態では一例として、決定部122は、位置候補P1~P15のそれぞれについて、距離区間における他の位置候補の割合を評価し、他の位置候補との距離が長い位置候補を位置候補Aとして決定する。決定部122は、あらかじめ定めた基準を満たす位置候補すべてを位置候補Aとして決定してもよいし、他の位置候補との距離が長いと評価された上位からあらかじめ定めた個数を位置候補Aとして決定してもよい。本実施形態では一例として、位置候補P1、P3、P13、およびP15を位置候補Aとして決定する。決定部122は、位置候補Aの情報を出力部140に送る。決定部122は、位置候補を表す情報を合わせて出力部140に送ってもよい。
【0031】
位置候補Aは、他の位置候補との距離が長いため、位置候補Aに設定されている無線機200の推定に誤りが生じる可能性が、他の位置候補と比較して高い(推定精度が低い)。その理由を、
図7を用いて説明する。
図7はRSSIと距離dの関係を表す図である。複数の無線機200間のRSSIは、距離のべき乗に比例して減衰する。例えば自由空間中では、RSSIは距離の2乗に比例して減衰する。同じ距離の差であっても、距離の差に対応するRSSIの差は一定ではない。
図7では、無線機200のうち、信号をブロードキャストする1つの無線機と、その無線機からの距離に応じたRSSIが表されている。距離d
AではR
A、距離d
BではR
B、距離d
CではR
C、距離d
DではR
Dであるとする。距離d
Aから距離d
Bまでの差分Δd
1と、距離d
Cから距離d
Dまでの差分Δd
2は等しい。しかし、R
AとR
Bの差分ΔR
1と、R
CとR
Dの差分ΔR
2では、ΔR
2はΔR
1よりも小さい。このように、信号をブロードキャストする無線機から離れるほど、測定されるRSSIの変化は小さくなる。
【0032】
一方、RSSIには距離以外の要因による変動が生じる。例えば、マルチパスフェージングによる変動である。この変動において、距離の大小はRSSIの減衰ほど大きくは影響しない。RSSIは距離のべき乗に比例して減衰するので、距離が離れるほどRSSIに対する、距離以外の要因による変動の影響が大きくなる。したがって、通信システム300の隅、あるいは長辺の端などの位置候補については、設置される無線機200の推定精度が低くなる。
図5では、位置候補P1、P3、P13、P15などは、他の位置候補に比べて推定精度が低い。
【0033】
出力部140は、位置候補Aの情報および位置候補Aに設置されている無線機200Aの識別情報を入力または送る指示を出力する(ステップS104)。本実施形態では一例として、出力部140は決定部122から位置候補を表す情報および位置候補Aの情報を受け取り、位置候補Aおよび位置候補Aに設置されている無線機200Aの識別情報を入力する指示を視覚的に表示する装置を含んでいる。
図8は、本実施形態の一例として、出力部140によって視覚的に表される位置候補Aおよび無線機200Aの識別情報を入力する指示である。位置候補P1~P15の位置関係と合わせて、位置候補Aである位置候補P1、P3、P13およびP15に設置されている無線機200の識別情報として、例えば機器IDを入力する指示が表示されている。
【0034】
入力部112は、出力部140の指示に応じて、入力された位置候補Aに設置されている無線機200Aの識別情報を取得する(ステップS105)。本実施形態では一例として、ユーザが無線機200Aの機器IDを入力することで、入力部112は無線機200Aの識別情報を取得する。入力部112は制御部121を介して記憶部130に無線機200Aの識別情報を送る。
【0035】
図9は、ステップS105終了時において、推定装置100が認識している無線機200D1~D15の設置状況である。推定装置100は、位置候補Aに設置されている無線機200Aの識別情報を取得したので、位置候補P1に無線機200D1、位置候補P3に無線機200D3、位置候補P13に無線機200D13、位置候補P15に無線機200D15が設置されていることを認識している。推定装置100は、位置候補P2、P4~P12、P14にどの無線機200が設置されているかは未知である。
【0036】
推定部123は、無線機200Aの識別情報、位置候補を表す情報、および通信情報に基づいて、無線機200のそれぞれの位置を、位置候補を表す情報に含まれる位置候補のうちから推定する(ステップS106)。無線機200Aの識別情報、位置候補を表す情報、および通信情報は制御部121から推定部123に送られる。ここで、推定部123は位置候補Aに設置されている無線機200Aの識別情報から、無線機200の一部に既知の無線機200Aがあることを認識しているが、既知の無線機200が含まれていても、無線機200の位置の推定と称する。推定部123は、既知の無線機200A以外の無線機200の位置を推定している場合でも、無線機200のそれぞれの位置を推定しているものとする。
図9では、推定部123は、未知である無線機200D2、D4~D12、D14の位置を、位置候補P2、P4~P12、P14のうちから推定するが、無線機200のそれぞれの位置を推定するものとする。以下、推定部123の推定方法について説明する。
【0037】
推定部123は、位置候補P2、P4~P12、P14に、無線機200D2、D4~D12、D14を仮に配置した組合せ(以降、仮説とも称する)を複数生成する。位置候補P1に無線機200D1が、位置候補P3に無線機200D3が、位置候補P13に無線機200D13が、位置候補P15に無線機200D15がそれぞれ位置していることは既知であるため、いずれの仮説においても固定されている。推定部123は、仮説ごとに評価値を算出し、無線機200D1~D12の配置として最も適切な組合せを無線機200のそれぞれの位置として推定する。仮説における評価値の指標となる評価指標の例を以下に説明する。推定部123は評価指標として、ピアソンの相関係数やスピアマンの順位相関係数を用いることができる。これらは、仮説ごとに無線機200D1~D15のそれぞれの距離とRSSIの相関関係を用いる。2つの無線機200間のRSSIは距離の相関が強いため、RSSIが大きいほど2つの無線機200間の距離が近いとされる。そこで推定部123は、仮説における無線機200D1~D15のそれぞれの距離が小さいほど伝搬情報のRSSIが大きくなっているかを評価する。例えば推定部123は、仮説における無線機200D1~D15のそれぞれの距離と、伝搬情報のRSSIとの相関関係が-1に最も近い組合せを無線機200のそれぞれの位置として推定する。また、評価指標の例として、推定部123はレイリー分布の尤度を求めてもよい。これらは、仮説ごとに無線機200D1~D15の距離を求め、距離ごとの平均受信電力を求める。レイリー分布の尤度を用いる場合、伝搬情報には無線機200間の受信電力に関する情報が含まれる。推定部123は、求めた平均受信電力をパラメータとし、レイリー分布を用いてRSSIの算出値を求める。推定部123は、RSSIの算出値と、伝搬情報として計測された無線機200間のRSSIを比較し、尤度を求める。推定部123は、尤度が最大となる組合せを無線機200のそれぞれの位置として推定する。推定部123は、すべての仮説を評価(全組合せ探索)してもよいし、一部の仮説について遺伝的アルゴリズム等を用いることにより省略してもよい。
【0038】
図10は、本実施形態の一例として、推定部123が推定した無線機200のそれぞれの位置である。推定部123は、位置候補P1には無線機200D1、位置候補P2には無線機200D2、…、位置候補P15には無線機200D15が位置すると推定する。推定部123は、推定した無線機200のそれぞれの位置を含む情報を制御部121および出力部140に送る。制御部121は、送られた無線機200のそれぞれの位置の情報を記憶部130に保持させるようにしてもよい。
【0039】
出力部140は、推定部123から送られた無線機200のそれぞれの位置を含む情報を出力する(ステップS107)。出力先および出力形態は任意であるが、本実施形態では一例として、推定装置100のユーザが認識可能であり、ユーザが無線機200のそれぞれの位置を含む情報に対する応答が入力可能な出力装置(
図8に表した装置)に出力する。
【0040】
取得部110は、無線機200のそれぞれの位置を含む情報に対するユーザからの応答を取得する(ステップS108)。応答の内容および形態は任意であるが、本実施形態では一例として、出力された無線機200のそれぞれの位置について、ユーザは正しいとすることを応答として入力したとする。出力された無線機200のそれぞれの位置について一部誤りがあった場合、ユーザは無線機200の正しい位置を応答として入力してもよい。取得部110(この場合では入力部112)は、ユーザからの無線機200のそれぞれの位置に対する応答を取得する。取得部110は、取得した応答を表す情報を制御部121に送る。
【0041】
制御部121は、推定部123から送られた無線機200のそれぞれの位置を含む情報および取得部110から送られた応答を表す情報に基づいて、無線機200のそれぞれの位置を確定し、確定情報とする(ステップS109)。例えば、応答が無線機200のそれぞれの位置が正しいことを表す場合、制御部121は推定部123から送られた無線機200のそれぞれの位置を正しいとして確定し、確定情報として記憶部130に保持させる。制御部121は、記憶部130に無線機200のそれぞれの位置の情報を保持させている場合、応答に応じて確定してもよい。応答が無線機200のそれぞれの位置を少なくとも一部修正することを表す場合、制御部121は推定部123から送られた無線機200のそれぞれの位置を修正および確定し、確定情報として記憶部130に保持させる。制御部121は、取得部110が取得した確定情報を出力する指示に応じて、出力部140に確定情報を出力させてもよい。
【0042】
制御部121は、推定装置100の動作を終了させる終了指令が届いているか否かを確認する(ステップS110)。この終了指令は、推定装置100の動作を本フローで終了させる指令である。この終了指令は、ユーザによる入力部112への入力や、終了指令を含んだ信号を通信部111が取得するなどして制御部121に伝えられる。この終了指令は、直ちに推定装置100の動作を終了させる指令であってもよい。
【0043】
制御部121にこの終了指令が届いていない場合(ステップS110:No)、ステップS101に戻る。一方、制御部121にこの終了指令が届いている場合(ステップS110:Yes)、フローは終了し、推定装置100は動作を終了する。
【0044】
以上に本実施形態の推定装置100を説明した。本実施形態で説明した推定装置100は一例であり、変形例は様々に実装、実行可能である。以下に本実施形態の変形例を説明する。
【0045】
(変形例1)
以下、本実施形態の推定装置100における動作の変形例について説明する。ステップS101について、本実施形態では通信情報を取得しているが、他のステップで取得するようにしてもよい。通信情報は、ステップS106の無線機200の位置の推定までに取得されていればよい。
【0046】
ステップS103について、本実施形態では位置候補Aとして決定する位置候補の数を4つとしていたが、この個数は座標軸の個数および位置候補の対称性を考慮して定めてられてもよい。例えば、座標が3次元(x,y,z)の場合、座標軸の個数分の位置候補を位置候補Aとすることで、位置候補がいずれかの座標軸について回転する場合を排除することができる。また、位置候補の一部が規則的に配置されている場合、位置候補の一部について対称性を有する場合がある。例えば、点対称となる場合がある。
図10において位置候補A、無線機200Aを決定しなかった場合、位置候補P1には無線機200D15、位置候補P2には無線機200D14、位置候補P14には無線機200D2、位置候補P15には無線機200D1が設置されているとの推定も考えられる。そこで、決定部122は、位置候補の一部が規則的に配置されている場合、点対称となる位置候補の少なくとも1つを位置候補Aに含めて決定することで、位置候補の一部についての対称性を排除した推定を行うことができる。
【0047】
ステップS104について、本実施形態では
図8に説明したように、位置候補Aに設置された無線機200Aの識別情報を入力させる指示と、位置候補Aおよび他の位置候補とを合わせて視覚的に表示させていたが、出力方法は様々に考えられる。例えば、出力部140は、位置候補Aの座標を合わせて表示してもよいし、ユーザ又は推定装置100の位置情報を合わせて表示してもよいし、文字、図、音、振動等を組み合わせて出力してもよい。また、無線機200Aの識別情報を入力させる指示および位置候補Aの情報は、信号で出力されてもよいし、送信先の通信装置に音、振動などで通知してもよい。以上に説明した出力方法は、ステップS107の出力の際にも適用可能である。
【0048】
ステップS109について、本実施形態では、無線機200のそれぞれの位置について修正があった場合、修正された無線機200のそれぞれの位置を確定情報としていた。変形例では、修正された無線機200のそれぞれの位置に基づいて、無線機200のそれぞれの位置の推定(ステップS106)を再度行うようにしてもよい。この際、修正されなかった無線機200の位置は確定したものとして扱う。
【0049】
(変形例2)
本実施形態では、無線機200すべてについてそれぞれの位置を推定していたが、推定部123は、確定情報を用いて、無線機200の一部の位置を推定してもよい。例えば、無線機200D1~D15の一部が交換となった場合に、交換された無線機200の位置を推定する必要があるが、交換されなかった無線機200については既に推定済みの場合、確定情報を用いて計算量を削減することができる。
【0050】
図11は、無線機200D1~D15のうち、無線機200D8およびD9が、無線機200D16およびD17に交換された通信システム300を表す図である。推定装置100は、通信情報を取得することにより、無線機200D8およびD9が通信システム300から外れ、無線機200D16およびD17が通信システム300に加入したことを認識する。推定装置100は確定情報から、無線機200D1~D7、D10~D15の位置を認識している。この場合、推定装置100は無線機200の一部である無線機200D16およびD17の位置を推定してもよい。推定方法は本実施形態と同様であるので、説明を省略する。
図12は、本実施形態の一例として、推定部123が推定した無線機200のそれぞれの位置である。推定装置100は、位置候補P8には無線機200D16が、位置候補P9には無線機200D17が設置されていると推定する。本変形例では、交換される無線機200は2つであったが、1つでもよいし、3つ以上でも同様に適用可能である。
【0051】
(変形例3)
以下、推定装置100が用いた各種情報の変形例を説明する。本実施形態では伝搬情報としてRSSIを用いたが、伝搬情報の特徴量を用いてもよい。例えば、RSSIの平均値、最大値、標準偏差や、伝搬時間の平均値、最小値、標準偏差を用いてもよい。伝搬情報の特徴量を用いることで、伝搬情報のデータ量を削減することができる。この伝搬情報の特徴量は、無線機200のそれぞれによって抽出されてもよい。無線機200が抽出した伝搬情報の特徴量を推定装置100に送信することで、推定装置100が無線機200と通信する情報量や時間を削減することができる。
【0052】
(変形例4)
以下、本実施形態の通信システム300の変形例を説明する。本実施形態では、無線機200は同一の番号を振って説明したが、無線機200D1~D15がすべて同じ無線機である必要はない。推定装置100および無線機200の通信と、複数の無線機200間の通信が可能であり、伝搬情報が測定可能であれば任意の無線機が適用可能である。
【0053】
本実施形態では、推定装置100と無線機200は別の装置として表したが、無線機200のうちの1台が推定装置100を兼ねていてもよい。この場合でも本実施形態で説明した推定動作が可能である。
【0054】
本実施形態では、位置候補の数と無線機200の数が同数であったが、必ずしも同数である必要はない。例えば、位置候補の数が無線機200の数よりも多く、一部の位置候補では無線機200が存在していない場合においても、本実施形態で説明した方法で無線機200のそれぞれの位置を位置候補から推定することができる。
【0055】
本実施形態では、位置候補P1~P15は一部規則的(格子状)な位置(座標)だったが、必ずしも規則的である必要はない。位置候補の位置(座標)は少なくとも一部ランダムであってもよい。
【0056】
(変形例5)
以下、推定装置100の機能をプログラムによって実現する変形例を説明する。推定装置100の構成要素が行う機能は、処理部120と同様の処理装置がプログラムを処理することにより実現してもよい。このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、メモリカード、CD-RおよびDVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由で提供されるようにしてもよいし、ROM、HDD、SSDなどの記憶媒体に組み込んで提供されるようにしてもよい。
【0057】
以上、推定装置100の変形例を説明した。本実施形態の推定装置100は、位置候補間の距離に関する情報に応じて、設置されている無線機200の識別情報を取得する位置候補Aを決定する。推定装置100は、位置候補Aに設置されている無線機200Aの識別情報を取得する。これにより、推定装置100は設置されている無線機200の推定に誤りが生じる可能性が低い位置候補に対して設置されている無線機200の推定を行うことができ、推定精度を向上させることができる。また、すべての無線機200について推定を行う場合と比較して、推定に必要な計算量を削減することができる。
【0058】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。第2の実施形態でも、推定装置100、無線機200D1~D15、位置候補P1~P15を含む通信システム300は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。本実施形態では、推定装置100は位置候補を表す情報、通信情報に基づく無線機200の位置の推定を、複数の評価指標ごとに行う。推定装置100は、評価指標によって異なる無線機200が推定されている位置bを位置候補のうちから決定する。推定装置100は、位置bに設置されている無線機200bの識別情報を取得させる指示を出力し、無線機200bの識別情報を取得する。これにより、推定装置100は無線機200の位置の推定精度を向上させることができる。
【0059】
図13は、本実施形態における推定装置100の動作のフローチャートである。推定装置100の動作の詳細を、
図13を用いて説明する。本実施形態では一例として、推定装置100は、無線機200のそれぞれの位置を推定する場合の動作を説明する。各ステップのうち、第1の実施形態と同様のステップについては一部の説明を省略し、差異を説明する場合がある。
【0060】
ステップS201は、ステップS101と同様である。制御部121は、取得部110から受け取った位置候補を表す情報および通信情報を推定部123に送る。推定部123は、位置候補を表す情報および通信情報に基づいて、複数の評価指標ごとに無線機200のそれぞれの位置を、位置候補を表す情報に含まれる位置候補のうちから推定する(ステップS202)。推定部123が無線機200のそれぞれの位置の推定する方法は、第1の実施形態と同様の方法が適用される。本実施形態の一例として、推定部123は、ピアソンの相関係数(評価指標A)、スピアマンの順位相関係数(評価指標B)、レイリー分布を利用した最尤推定(評価指標C)の3つの評価指標を用いる。推定部123は、この3つの評価指標ごとに無線機200のそれぞれの位置を、位置候補を表す情報に含まれる位置候補のうちから推定する。
図14は本実施形態の一例として、評価指標ごとにおける無線機200のそれぞれの位置の推定結果である。
図14では、評価指標A、B、Cが共通の位置(位置aとも称する)に設置されていると推定する無線機200aと、評価指標A、B、Cが異なる位置(位置bとも称する)に設置されている推定する無線機200bがある。無線機200aは無線機200D3~D12、D15であり、無線機200bは無線機200D1~D2、D13~D14である。推定部123は、制御部121および決定部122に評価指標ごとにおける無線機200のそれぞれの位置の推定結果を表す情報を送る。
【0061】
以下に、評価指標によって無線機200のそれぞれの位置の推定結果が異なる場合がある理由を説明する。
図15は、ピアソンの相関係数(
図15(A))、スピアマンの相関係数(
図15(B))、レイリー分布を利用した最尤推定(
図15(C))における距離dとそれぞれの評価指標におけるRSSIの関係を表す図である。推定部123は、無線機200間の距離dに応じて、評価指標ごとにRSSIのグラフを作成することができる。ピアソンの相関係数では、同じ距離dにおいてRSSIは正規分布に従うことが前提とされている。
図15(A)では一例として、距離d
1~d
5それぞれにおけるRSSIの正規分布を破線で表している。ピアソンの相関係数では、距離ごとのRSSIの正規分布を考慮したRSSIのグラフ(
図15(A)の実線)となる。スピアマンの順位相関係数では、同じ距離においてRSSIは一意に定まることを前提としたRSSIのグラフ(
図15(B)の実線)となる。レイリー分布を利用した最尤推定では、同じ距離dにおいてRSSIはレイリー分布に従うことが前提とされている。
図15(C)では一例として、距離d
1~d
5それぞれにおけるRSSIのレイリー分布を破線で表している。レイリー分布を利用した最尤推定では、距離ごとのRSSIのレイリー分布を考慮したRSSIのグラフ(
図15(C)の実線)となる。以上から、評価指標によって伝搬情報であるRSSIの測定値と比較するRSSIのグラフが異なるため、評価指標によって無線機200のそれぞれの位置の推定結果が異なる場合がある。なお、評価指標が異なっても、RSSIが距離のべき乗に応じて減衰する点は共通である。
【0062】
図13のフローチャートに戻ると、決定部122は、評価指標ごとにおける無線機200のそれぞれの位置の推定結果を表す情報に基づいて、位置bを決定する(ステップS203)。位置bは評価指標によって設置されていると推定された無線機200が異なる位置である。本実施形態では、位置bは位置候補P1、P2、P13、P14である。
【0063】
出力部140は、位置bの情報および位置bに設置されている無線機200bの識別情報を入力または送る指示を出力する(ステップS204)。本実施形態では一例として、ステップS104と同様に、出力部140は決定部122から位置候補を表す情報および位置bの情報を受け取り、位置bおよび無線機200bの識別情報を入力する指示を視覚的に表示する。
【0064】
入力部112は、指示に応じて入力された位置bに設置されている無線機200bの識別情報を取得する(ステップS205)。本実施形態では一例として、ステップS105と同様に、位置bおよび無線機200bの識別情報を入力する指示が視覚的に表示されている出力部140にユーザが無線機200bの機器IDを入力することで、入力部112は無線機200bの識別情報を取得する。これにより、入力部112は、位置候補P1には無線機200D1が、位置候補P2には無線機200D2が、位置候補P13には無線機200D13が、位置候補P14には無線機200D14が、設置されている情報を取得する。
【0065】
制御部121は、推定部123から送られた評価指標ごとにおける無線機200のそれぞれの位置の推定結果を表す情報および取得部110から送られた無線機200bの識別情報に基づいて、無線機200のそれぞれの位置を確定し、確定情報とする(ステップS206)。制御部121は異なる評価指標でも推定結果が一致する無線機200の位置と、無線機200bの識別情報によって修正した無線機200bの位置を合わせて確定情報とする。本実施形態では、無線機200D3~D12、D15の位置がそれぞれ位置候補P3~P12、P15であることに加えて、無線機200bの識別情報によって無線機200D1~D2、D13~D14の位置がそれぞれ位置候補P1~P2、P13~P14であると修正し、確定情報とする。制御部121は、確定情報を記憶部130に保持させる。制御部121は、取得部110が取得した確定情報を出力する指示に応じて、出力部140に確定情報を出力させてもよい。ステップS207はステップS110と同様である。
【0066】
以上に本実施形態の推定装置100を説明した。本実施形態で説明した推定装置100は一例であり、変形例は様々に実装、実行可能である。例えば、第1の実施形態および変形例を、矛盾のない範囲で適用することができる。
【0067】
推定装置100は位置候補を表す情報、通信情報に基づく無線機200の位置の推定を、複数の評価指標ごとに行う。推定装置100は、評価指標によって異なる無線機200が推定されている位置bを位置候補のうちから決定する。推定装置100は、位置bに設置されている無線機200bの識別情報を取得させる指示を出力し、無線機200bの識別情報を取得する。これにより、設置されている無線機200の推定に誤りが生じる可能性が高い位置bに対して設置されている無線機200の識別情報を取得することができ、推定精度を向上させることができる。また、すべての無線機200について推定を行う場合と比較して、推定に必要な計算量を削減することができる。
【0068】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、推定装置100の推定精度を向上させることができる。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0070】
100:推定装置
110:取得部
111:通信部
112:入力部
120:処理部
121:制御部
122:決定部
123:推定部
130:記憶部
140:出力部
200、200D1~200D17:無線機
201:通信部
202:処理部
203:記憶部
300:通信システム