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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】マイクロLED用の蛍光体層
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20221107BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
H01L33/50
G02B5/20
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021573462
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2020064856
(87)【国際公開番号】W WO2020259950
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-12-10
(31)【優先権主張番号】19182324.4
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500507009
【氏名又は名称】ルミレッズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ベクテル,ハンス-ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】ハイデマン,マティーアス
(72)【発明者】
【氏名】フッペルツ,ペトラ
(72)【発明者】
【氏名】フェルドマン,ヨルグ
【審査官】小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-216800(JP,A)
【文献】特開2013-109907(JP,A)
【文献】特開2019-28380(JP,A)
【文献】特開2016-100485(JP,A)
【文献】特開2010-245576(JP,A)
【文献】特表2014-507755(JP,A)
【文献】特開2018-22683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/50
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ基板上に、少なくとも2つの個々にアドレス処理可能な発光ダイオードを有するマイクロLEDと、
前記マイクロLED上に設置され、前記少なくとも2つの発光ダイオードにわたって延在し、前記2つの発光ダイオードの間のギャップを横断するように延在する蛍光体コンバータであって、1μmよりも大きく、10μmよりも小さなD50を有する複数の蛍光体粒子を有し、前記蛍光体コンバータの厚さは、4μm超、20μm未満であり、前記蛍光体コンバータは、さらに、前記蛍光体粒子の各々を被覆する非発光材料の薄い層を有する、蛍光体コンバータと、
を有し、
前記薄い層は、200nm未満の厚さを有し、
前記少なくとも2つの発光ダイオードは、1:18よりも大きなコントラスト比を示し、前記コントラスト比は、少なくとも部分的に、前記蛍光体粒子の前記D50および前記蛍光体コンバータ層の前記厚さに起因する、装置。
【請求項2】
前記複数の蛍光体粒子は、2μmよりも大きく、7μmよりも小さなD50を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記複数の蛍光体粒子は、3μmよりも大きく、5μmよりも小さなD50を有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記蛍光体コンバータの厚さは、8μmよりも大きく、15μmよりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記蛍光体コンバータの厚さは、10μmよりも大きく、13μmよりも小さい、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記蛍光体コンバータは、さらに、マトリクスを有し、該マトリクスは、1以上、1.5以下の屈折率を有する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記マトリクスは、1以上、1.4未満の屈折率を有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記マトリクスは、1以上、1.2未満の屈折率を有する、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記薄い層は、金属酸化物を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記薄い層は、Al2O3、HfO2、Ta2O5、ZrO2、TiO2、およびSiO 2 の少なくとも1つを有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記薄い層は、厚さが40から150nmの間である、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記コントラスト比は、1:100よりも大きい、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
請求項1に記載の装置を製造する方法であって、
前記基板上の前記少なくとも2つの発光ダイオードにわたって延在し、前記少なくとも2つの発光ダイオードの間のギャップを横断するように、層状に複数の蛍光体粒子を成膜するステップと、
前記蛍光体粒子が被覆されるように、前記非発光材料の前記薄い層を形成するステップと、
を有する、方法。
【請求項14】
前記蛍光体コンバータは、スプレーコーティングまたは沈殿により成膜される、請求項13に記載の方法
【請求項15】
前記薄い層は、原子層成膜法により形成される、請求項13に記載の方法
【請求項16】
前記薄い層は、金属酸化物を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記薄い層は、Al 2 O 3 、HfO 2 、Ta 2 O 5 、ZrO 2 、TiO 2 、およびSiO 2 の少なくとも1つを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の蛍光体粒子は、2μmよりも大きく、7μmよりも小さなD50を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記蛍光体コンバータ層の厚さは、8μmよりも大きく、15μmよりも小さい、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記蛍光体コンバータ層は、さらに、マトリクスを有し、該マトリクスは、1以上、1.5以下の屈折率を有する、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2012/223875号には、フリップチップ技術を用いた、高解像度の活性マトリックス(AM)プログラム化モノリシック発光ダイオード(LED)マイクロアレイの製造が記載されている。製造プロセスには、LEDマイクロアレイおよびAMパネルの製造、ならびにフリップチップ技術を用いて得られるLEDマイクロアレイおよびAMパネルの組み合わせが含まれる。LEDマイクロアレイは、サファイア基板上に成長および製造され、AMパネルは、PMOSプロセス、NMOSプロセス、またはCMOSプロセスを用いて製造される。同じ行のLED画素は、AMパネルのアースに接続された共通のNバスラインを共有し、LED画素のp電極は、電気的に分離されており、各p電極は、AMパネルに取り付けられた駆動回路の出力に、独立に接続される。LEDマイクロアレイは、AMパネルにフリップチップボンディングされ、AMパネルは、LED画素を個々に制御し、LED画素は、優れた放射均一性を示す。
米国特許出願公開第2012/223875号には、この構成により、LEDプロセスとPMOS/NMOS/CMOSプロセスの間の非互換性を排除できることが示されている。
【0003】
米国特許出願公開第2018/190712号には、III族-窒化物半導体に基づくフルカラー表示装置が示されている。表示装置は、エピタキシャル成長したLEDヘテロ構造の単一のチップにモノリシックに統合されたマイクロLEDのアレイ、活性マトリクス駆動回路のシリコン背面に結合されたフリップチップ、およびカラー変換層を有する。マイクロLEDアレイのLED基板が除去され、マイクロLEDのp-nまたはp-i-nヘテロ接合のn-領域が、厚さが20μm未満の薄いn-型III族-窒化物エピタキシャル層を介して接続される。薄いn-型III族-窒化物エピタキシャル層の表面は、透明/半透明の導電性材料の層で覆われ、マイクロLED装置の共通のn-型電極が形成され、マイクロLEDエミッタに垂直電流が流れる。活性マトリクス駆動回路の各アドレス処理および駆動画素は、少なくともスイッチングトランジスタ、スイッチング駆動トランジスタ、およびラッチレジスタを含む。
【0004】
米国特許出願公開第2007/273282号には、光源と、屈折率がn1の封止材と、屈折率がn2の蛍光体とを有する光電気装置が記載されており、n2は、約0.85 n1から約1.15 n1の範囲内にある。また、米国特許出願公開第2007/273282号には、蛍光体の屈折率nxを調節する方法が記載されており、この屈折率は、所定の値n2よりも大きい。本方法は、蛍光体において、1または2以上の第1の素子を、1または2以上の第2の素子と部分的にまたは完全に置換するステップを有し、第2の素子は、通常、第1の素子よりも低い原子量を有する。蛍光体は、化学的に安定であり、封止材と光学的に互換可能である。また、光電気装置では、高い光出力効率、製造容易性、およびコスト効率などのような技術的利点が得られる。
【0005】
国際公開第2016/041838号には、ハイブリッドコーティングを有する発光粒子を提供する方法が記載されており、当該方法は、(i)ゾルゲルコーティングプロセスにより、発光粒子に第1のコーティング層を提供し、これによりコーティングされた発光粒子を提供するステップと、(ii)原子層成膜プロセスの提供により、被覆された発光粒子に第2のコーティング層を提供するステップと、を有する。また、国際公開第2016/041838号には、発光コアと、50から300nmの範囲の第1のコーティング層厚さ(d1)を有する第1のコーティング層と、5から250nmの範囲の第2のコーティング層厚さ(d2)を有する第2のコーティング層と、を有する発光粒子が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体発光ダイオードおよびレーザダイオード(本願では、まとめて「LED」と称する)は、現在利用可能な最も効率的な光源である。LEDの放射スペクトルは、通常、装置の構造、および半導体材料の組成で定められる波長で、単一の狭小ピークを示す。装置構造および材料系の好適な選定により、紫外線、可視光、または赤外線の波長で作動するLEDが設計できる。
【0007】
LEDは、1または2以上の波長変換材料(通常、「蛍光体」と称される)と組み合わされ、これは、LEDにより放射される光を吸収し、応答としてより長波長の光を放射する。そのような蛍光体変換LED(pLED)では、蛍光体により吸収されLEDにより放射される光の割合は、LEDにより放射された光の光路における蛍光体材料の量に依存し、例えば、LEDの上、またはその周囲に配置された蛍光体層内の蛍光体材料の量、ならびに層の厚さに依存する。蛍光体は、セラミックタイルで形成され、LEDにより放射される光の光路に配置されてもよい。
【0008】
蛍光体変換LEDは、LEDにより放射される光の全てが、1または2以上の蛍光体により吸収されるように設計されてもよい.この場合、pcLEDからの放射は、完全に蛍光体からとなる。そのような場合、蛍光体は、例えば、LEDによっては直接効率的に形成されない、狭小のスペクトル領域の光を放射するように選択されてもよい。
【0009】
あるいは、pcLEDは、LEDにより放射される光の一部のみが、蛍光体により吸収されるように設計されてもよい。この場合、pcLEDから放射される光は、LEDにより放射される光と、蛍光体により放射される光の混合となる。LED、蛍光体、および蛍光体組成の好適な選定により、そのようなpcLEDを、例えば、所望の色温度および所望の演色特性を有する白色光を放射するように設計することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ある態様では、本発明により、
同じ基板上に、少なくとも2つの個々にアドレス処理可能な発光ダイオードを有するマイクロLEDと、
前記マイクロLED上に設置された蛍光体コンバータであって、1μmよりも大きく、10μmよりも小さなD50を有する、複数の蛍光体粒子を有する、蛍光体コンバータと、
を有する装置が提供される。
【0011】
ある実施形態では、前記複数の蛍光体粒子は、2μmよりも大きく、7μmよりも小さなD50を有する。
【0012】
ある実施形態では、前記複数の蛍光体粒子は、3μmよりも大きく、5μmよりも小さなD50を有する。
【0013】
ある実施形態では、前記蛍光体コンバータの厚さは、4μmよりも大きく、20μmよりも小さい。
【0014】
ある実施形態では、前記蛍光体コンバータの厚さは、8μmよりも大きく、15μmよりも小さい。
【0015】
ある実施形態では、前記蛍光体コンバータの厚さは、10μmよりも大きく、13μmよりも小さい。
【0016】
ある実施形態では、前記蛍光体コンバータは、さらに、マトリクスを有し、該マトリクスは、1以上、1.5以下の屈折率を有する。
【0017】
ある実施形態では、前記マトリクスは、1以上、1.4以下の屈折率を有する。
【0018】
ある実施形態では、前記マトリクスは、1以上、1.2以下の屈折率を有する。
【0019】
ある実施形態では、前記蛍光体コンバータは、さらに、前記蛍光体粒子にコーティングされた非発光材料の薄い層を有する。
【0020】
ある実施形態では、前記薄い層は、金属酸化物を有する。
【0021】
ある実施形態では、前記薄い層は、Al2O3、HfO2、Ta2O5、ZrO2、TiO2、およびSiO3の少なくとも1つを有する。
【0022】
ある実施形態では、前記薄い層は、原子層成膜法により形成される。
【0023】
ある実施形態では、前記薄い層は、厚さが200nm未満である。
【0024】
ある態様では、本発明により、
発光ダイオードと、
該発光ダイオード上の蛍光体コンバータであって、複数の蛍光体粒子、および該蛍光体粒子を覆う非発光材料の薄い層を有する、蛍光体コンバータと、
を有する装置が提供される。
【0025】
ある実施形態では、前記蛍光体コンバータの厚さは、4μmよりも大きく、20μmよりも小さく、前記蛍光体コンバータは、さらに、前記蛍光体粒子を被覆する非発光材料の薄い層を有し、前記薄い層は、200nm未満の厚さを有する。
【0026】
従って、ある態様では、本発明では、
同じ基板上に、少なくとも2つの個々にアドレス処理可能な発光ダイオードを有するマイクロLEDと、
前記マイクロLED上に配置された蛍光体コンバータであって、1μmよりも大きく10μm未満のD50を有する複数の蛍光体粒子を有し、前記蛍光体コンバータの厚さは4μmよりも大きく、20μm未満であり、前記蛍光体コンバータは、さらに、前記蛍光体粒子を覆う非発光材料の薄い層を有する、蛍光体コンバータと、
を有し、
前記薄い層は、200nm未満の厚さを有する、装置が提供される。
【0027】
従って、ある態様では、本発明では、
発光ダイオードと、
前記発光ダイオード上の蛍光体コンバータであって、複数の蛍光体粒子、および前記蛍光体粒子を覆うように形成された非発光材料の薄い層を有する、蛍光体コンバータと、
を有し、
前記蛍光体コンバータの厚さは、4μmよりも大きく、20μmよりも小さく、前記蛍光体コンバータは、さらに、前記蛍光体粒子を覆う非発光材料の薄い層を有し、
前記薄い層は、200nm未満の厚さを有する、装置が提供される。
【0028】
ある実施形態では、粒子サイズD50は、9μm未満であり、前記薄い層の厚さは、15μm未満である。
【0029】
ある実施形態では、蛍光体コンバータは、さらに、前記蛍光体粒子を覆う非発光材料の薄い層を有し、これは、スプレーコーティングまたは沈殿法により得られる。
【0030】
ある実施形態では、前記薄い層は、40から150nmの間の厚さを有する。
【0031】
ある実施形態では、ALDコーティングは、前記蛍光体層の前記蛍光体粒子に直接行われ、別の(非発光材料の)コーティングを(蛍光体留置とALDコーティングの)間に有さなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1a】ある種類のマイクロLED装置の一部の平面図である。
図1b図1aのAA線を通るある種類のマイクロLED装置の一部の側面図である。
図2】ガーネット蛍光体粉末の測定された粒子サイズ分布を示した図である。
図3a】オン状態の画素の単一ラインとオフ状態の隣接画素とを有する、シミュレーションされたマイクロLEDの光解像度を示した図である。
図3b】オン状態の画素の単一ラインとオフ状態の隣接画素とを有する、シミュレーションされたマイクロLEDのカラーオーバーソース変化(color over source variation)を示した図である。
図3c】オン状態の画素の単一ラインとオフ状態の隣接画素とを有する、シミュレーションされたマイクロLEDの放射パターンを示した図である。
図4a】マトリックス材料の屈折率が1に設定されたことを除き、全てが図3a図3bおよび図3cと同様に保持された際のシミュレーションの結果を示した図である。
図4b】マトリックス材料の屈折率が1に設定されたことを除き、全てが図3a図3bおよび図3cと同様に保持された際のシミュレーションの結果を示した図である。
図4c】マトリックス材料の屈折率が1に設定されたことを除き、全てが図3a図3bおよび図3cと同様に保持された際のシミュレーションの結果を示した図である。
図5a】6つの異なる粒子サイズ値と6つの異なる蛍光体コンバータ厚さでシミュレーションが実施されたことを除き、図3a~3cおよび図4a~4cと同様のマイクロLEDのシミュレーションデータを示した図である。
図5b】6つの異なる粒子サイズ値と6つの異なる蛍光体コンバータ厚さでシミュレーションが実施されたことを除き、図3a~3cおよび図4a~4cと同様のマイクロLEDのシミュレーションデータを示した図である。
図5c】6つの異なる粒子サイズ値と6つの異なる蛍光体コンバータ厚さでシミュレーションが実施されたことを除き、図3a~3cおよび図4a~4cと同様のマイクロLEDのシミュレーションデータを示した図である。
図6a】高光学的コントラストの蛍光体コンバータを形成する方法を示した図である。
図6b】高光学的コントラストの蛍光体コンバータを形成する方法を示した図である。
図7a】蛍光体コンバータの厚さおよび粒子サイズが減少されたことを除き、図4a図4b図4cと全てが同様に保持された際のシミュレーションの結果を示した図である。
図7b】蛍光体コンバータの厚さおよび粒子サイズが減少されたことを除き、図4a図4b図4cと全てが同様に保持された際のシミュレーションの結果を示した図である。
図7c】蛍光体コンバータの厚さおよび粒子サイズが減少されたことを除き、図4a図4b図4cと全てが同様に保持された際のシミュレーションの結果を示した図である。
図8】蛍光体コンバータにおけるAl2O3層の厚さの関数としての相対フラックスを示した図である。
図9】一例としての蛍光体コンバータの光学的コントラスト測定用の実験装置の図である。
図10】一例としての蛍光体コンバータを通る青色光のラインの画像である。
図11】一例としての蛍光体コンバータ上のAl層におけるオープンラインに垂直な測定ラインプロファイルを示した図である。
図12】蛍光体材料粒子を被覆するAl2O3の薄い層を有する基板上の蛍光体コンバータの断面の界面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
マイクロLEDは、μLEDとも呼ばれ、1つのチップ上の多数の個々にアドレス可能なLED装置のアレイである。マイクロLEDアレイは、照明、例えば、車両用照明およびディスプレイに用途がある。個々のLEDまたは画素は、個々にアドレス処理可能であるため、マイクロLED上に光パターンを表示することができる。
【0034】
図1aには、あるタイプのマイクロLED装置の一部の平面図を示す。図1aにおいて、各正方形110は、単一のLED装置または画素を表し、これは、マイクロLEDあたり20000個の範囲で存在してもよい。図1aには、説明のため、このようなマイクロLEDの一部のみを示す。各個々のLEDの間には、隙間105が存在し、これは、例えば、LEDダイ110の各サイドを被覆する、金属壁(例えば、Cu)であってもよい。個々の画素の寸法は、例えば、40×40μm2であってもよく、ギャップ105の寸法は、例えば、8μmであってもよい。
【0035】
マイクロLEDを形成するための1つの方法は、エピタキシャル成長を用いて、ダイ上に、従来から知られるようなフリップチップ構造で、複数の個々のLED110を形成することである。図1bには、図1aのAA線を通るあるタイプのマイクロLED装置の一部分の側面図を示す。図1bには、LEDダイ110を示す。
【0036】
LEDダイ110上には、蛍光体コンバータ163がある。蛍光体コンバータ163は、マトリクス中に含まれる蛍光体粒子で構成され、これは、例えば、シリコーン内に含まれるガーネット粒子であってもよい。これとは別にまたはこれに加えて、蛍光体コンバータ163は、Lumiramic(登録商標)のような緻密な焼結蛍光体セラミックを含む。ある例では、個々のLEDは、青色光を生成し、蛍光体コンバータは、この青色光を白色光に変換し、約5700KのCCTでモノクロの白色であるマイクロLEDが形成される。
【0037】
蛍光体コンバータ163は、(a)その厚さ、(b)マトリクスの屈折率、ならびに(c)蛍光体材料の粒子サイズおよび屈折率、の3つのパラメータにより、規定することができる。蛍光体コンバータ163の厚さまたは幅は、図1bにおいてWで表される。マトリクスの屈折率は、マトリクスに選択される材料により定められ、これは、しばしば、屈折率が1.5のシリコーンである。蛍光体コンバータ163内の蛍光体材料は、D50によって与えられる粒子サイズを有する。ここで、Dは、粉体粒子の直径を表し、D50は、体積の累積50%の点(または50%通過粒子径サイズ)を表し、平均粒子サイズまたはメジアン直径と称されてもよい。粒子のD50値は、粉末粒子材料の供給者により提供されるが、測定されてもよい。例えば、図2には、Horiba社製のPA-950レーザー粒子サイズ分析器を用いて解析された、ガーネット蛍光体粉末の測定された粒子サイズ分布を示す。測定範囲は、0.01μmから3000μmである。測定原理は、広い角度範囲における散乱光のパターンの測定に基づく。当業者には理解されるように、散乱光のこの分布を用い、ミー(Mie)理論を用いて、粒子サイズ分布が計算される。図4に示すデータでは、D(v,0.1)=3.10017(μm)であり、D(v,0.5)、すなわちD50=5.26114(μm)であり、D(v,0.9)=8.17130(μm)である。ここで、D(v,x.x)は、分布の10%、50%および90%の累積粒子体積に対する粒子サイズを定める。
【0038】
マイクロLEDに関して遭遇する問題は、1つの画素がオンで、隣接する画素がオフである際、隣接する画素間の光学的コントラストが極めて低くなる可能性があることである。従って、例えば、図1aの行120の画素がオン状態にあり、行130および行140の画素がオフ状態にある場合、行120における画素から放射された光は、隣接するトレンチを横切り、行120の各サイド側における画素およびトレンチ領域を超えて広がり、行130および140(および行120の反対側の等価な行)は、暗く見えず、あるいはオフにならなくなる。この問題は、図3a、3b、および3cに示されており、これらの図には、オン状態の画素の単一ライン(図1aの行120)、およびオフ状態の隣接する画素(図1aの行130および140)に対するシミュレーションが示されている。図3a~3cでは、X座標は、画素のラインに対して垂直である。シミュレーションは、モンテカルロ光線追跡アルゴリズムを用いて実施した。青色LED光子は、散乱蛍光体層に部分的に吸収される。散乱と吸収の確率は、単一粒子のミー係数から得られる。
【0039】
図3aには、マイクロLEDの光解像度を示す。図3aにおいて、行120、130および140の画素は、それぞれX座標に沿って、320、330および340で示されている。シミュレーションにおいて、各画素には、35μmの幅が与えられ、各画素は、5μmだけ分離された。蛍光体コンバータ層、すなわち、図1bにおける163には、30μmの幅が提供された(図1bにおいてWにより表されている)。蛍光体コンバータ層163は、屈折率が1.5のマトリックス中に、13μmのサイズD50を有する蛍光体画素を含むと仮定された。画素行320は、オン状態にあり、画素行330および340は、オフ状態にある。プロット384は、放射された緑色/黄色光を表し、プロット386は、放射された青色光を表す。プロット384および386は、画素行320により放射された光が、隣接する画素を超えて延伸し、光解像度が落ちることを示す。特に、オンライン(320)に対する第2のオフライン(340)にわたる積分フラックスである光学的コントラスト比は、1:3である。
【0040】
図3bには、X座標に沿ったv’の色座標値としての、カラーオーバーソース変化を示し、図3cには、オン状態の画素の単一ラインおよびオフ状態の隣接する画素を有するシミュレートされたマイクロLEDにおける、法線放出方向に向かう極角の関数として、放出された放射線の量(フラックス)を表す放射線パターンを示す。図3bには、余弦分布(350)と比較した蛍光体(384)からの計算された放射を示す。
【0041】
オン状態画素とオフ状態画素との間のコントラストを高め、さらには光解像度を改善するため、蛍光体コンバータ163を画定するパラメータが修正された。
【0042】
蛍光体コンバータ163のマトリクスの屈折率を下げると、散乱が増加し、光学的コントラストが増大する。図4a、4b、および4cには、マトリクス材料の屈折率が1に設定され、すなわち空気の屈折率にされたことを除き、全てが図3a、3b、および3cと同様に維持された場合のシミュレーション結果を示す。図4a、4b、および4cに見られるように、光解像度、カラーオーバーソース変化、および放射パターンは全て、マトリクスの除去、すなわち屈折率値を=1に設定することにより、改善される。例えば、図4aを参照すると、放射緑色/黄色光プロット484および放射青色光プロット486はいずれも、図3aの対応するプロット384および385と比較して、ライン320により近づくように狭くなっている。例えば、図4bを見ると、カラーオーバーソース変化442の色は、図3bの対応する342と比較して改善されており、同様に、図4cでは、放射パターン450は改善されている(ライン448は、余弦関数である)。屈折率=1対1.5のとき、光学的コントラスト比は、1:3から1:18に上昇する。従って、光学的コントラストを改善するため、マトリクスの屈折率は、1.5未満であってもよく、特にマトリクスの屈折率は、1.4未満であってもよく、特にマトリクスの屈折率は、1.2未満であってもよい。
【0043】
また、蛍光体コンバータ163内の蛍光体材料の粒子サイズを低減し、蛍光体コンバータ163の厚さWを低減することによっても、光学的コントラストが上昇する。図5aおよび5bには、6つの異なる蛍光体粒子D50サイズ値、および5つの異なる蛍光体コンバータ層厚さWについてシミュレーションを実施したことを除き、図3a~3c、4a~4cと同様のマイクロLEDについてのシミュレーションデータを示す。シミュレーションは、屈折率を1(図5a)、および1.5(図5b)に設定して実施した。図5aおよび5bにおいて、6つの異なる粒子サイズD50値は、3.8μm、5μm、7μm、9μm、11μm、および13μm(それぞれ、青、赤、緑、紫、水色、およびオレンジの線で示されている)である。破線は、1:300の光学的コントラスト比を示す。5つの異なる蛍光体コンバータ層の厚さWは、10μm、14μm、20μm、27μm、および37μmである。図5aおよび5cにおける図はいずれも、蛍光体コンバータにおける粒子サイズが小さくなる程、光学的コントラストが高まり、特に、屈折率=1の場合、良好であることを示す。従って、光学的コントラストを改善するため、粒子サイズD50は、1μmと10μmの間であってもよく、特に、粒子サイズD50は、2μmと7μmの間であってもよく、特に、粒子サイズは、3μmと5μmの間であってもよい。さらに、光学的コントラストを改善するため、厚さWは、4μmと20μmの間、特に8μmと15μmの間、特に10μmと13μmの間であってもよい。
【0044】
従って、屈折率=1の場合、高い光学的コントラスト(300超)を有する蛍光体コンバータは、蛍光体粒子サイズD50が5μm未満であり、厚さWが15μm未満である場合にのみ、実現することができる。粒子サイズが9μm未満であり、厚さが15μm未満の場合、屈折率=1において、1:100よりも良好な光学的コントラスト比を達成することができる。実際には、蛍光体材料粒子のD50は、1~3μmに制限され、量子効率は、蛍光体の粒子サイズの減少に伴い低下する。また、層全体の厚さは、蛍光体材料の最大許容活性材濃度によって制限される(増加は、量子効率を低下させる場合もある)。(シリコーンのような)蛍光体コンバータ層マトリクス材料では、高コントラスト層のパラメータ空間は、極めて限られる。一方、蛍光体コンバータ内のマトリクス材は、2つの機能を有する。第1は、蛍光体コンバータ層に機械的安定性を提供することであり、第2は、下地のLEDダイからの青色光の抽出が強化されることである。
【0045】
図6a~6bには、そのような高い光学的コントラストの蛍光体コンバータを形成する方法を示す。図6aにおいて、蛍光体材料粒子630が基板610上に堆積され、基板610は、例えば、マイクロ-LED EPI表面であってもよい。蛍光体材料粒子630は、任意の好適な方法を用いて設置されてもよく、例えばスプレーコーティング法、沈殿法などにより、15μm未満の厚さの薄い層において、蛍光体材料粒子630が堆積されてもよい。蛍光体材料粒子は、5μm未満のD50のサイズを有してもよい。
【0046】
次に、図6bに示すように、蛍光体粒子630は、金属酸化物、例えば、Al2O3のような非発光材料の薄い層660で被覆される。薄い層660は、蛍光体粒子を定める線を、図6aに比べて厚くすることにより、図6bに概略的に示されている。以下により詳細に説明されるように、非発光材料の薄い層660は、原子層成膜法を用いて設置されてもよい。原子層成膜により、基板610上の蛍光体粒子630の各々の間の領域に、非発光材料が流入可能となり、その結果、非発光材料は、各粒子の上および周囲にコーティングを形成し、非発光材料の薄い層660が形成される。薄い層660に使用される材料には、例えば、Al2O3、HfO2、Ta2O5、ZrO2、TiO2、およびSiO2が含まれる。非発光材料の薄層660は、200nm未満の厚さを有してもよく、厚さは、20nmから300nmの間、特に、厚さは、150nmから40nmの間であってもよい。
【0047】
得られる蛍光体コンバータ663は、Al2O3のような非発光材料の薄い層660で覆われた蛍光体粒子の薄い層630を含む。蛍光体コンバータ663の厚さWは、15μm未満である。図7a、7b、および7cには、そのような蛍光体コンバータ663のシミュレートされた光解像度、カラーオーバーソース変化、および放射パターンを示す。図7a、7b、および7cにおいて、蛍光体コンバータ層の厚さは、14μmであり、蛍光体材料の粒子サイズは、d50=3.8μmであり、屈折率値は1である。その他の全てのパラメータは、図3a~3c、4a~4cと同様である。図7aのプロット784および786を図3aのプロット384および386と比較することにより、光解像度が改善され、実現されるコントラストが1:375となることがわかる。また、カラーオーバーソース変化742(図7b)および放射パターン748(図7c)も、それぞれ、図3bおよび図3cのものと良好に比較できる。
【0048】
高い光学的コントラストを有することに加えて、蛍光体コンバータ663は、機械的に安定であり、層内の光散乱をあまり低下させずに、LED表面に接触する蛍光体粒子を光学的に結合することにより、LEDダイからの光の抽出が高められる。また、蛍光体コンバータ663は、例えば、自動車の前方照明基準を含む各種用途に必要とされる、高い信頼性を有する。さらに、そのような蛍光体コンバータ層は、マイクロLEDのみならず、任意のLEDに使用することができ、信頼性、および光抽出向上の利点を提供することができる。
【0049】
(ALDの詳細)
原子層成膜法(ALD)は、光コンバータ663上に薄い層660を成膜する際に使用される。ALDは、化学気相成膜プロセスであり、単位サイクル当たり材料の1原子層を制御可能な方法で設置することにより、材料の薄い層の成膜が可能となる。そのようなプロセスにおいて、金属酸化物前駆体と、気相中の水およびまたはオゾンのような酸素源との反応により、ポリマーネットワークが形成される。ALD反応は、(少なくとも)2つの部分に分かれている。第1段階では、金属(酸化物)前駆体が反応器に供給され、表面上の反応基に吸着し、および/または反応基と反応し、実質的に全ての未反応または吸着前駆体分子が、反応器パージにより除去される。第2段階では、酸素源が反応器に供給され、粒子表面上の金属源と反応し、その後の反応器パージにより、実質的に全ての残存する酸素源分子、および縮合反応により形成された加水分解生成物が除去される。この2つの段階により、表面反応の自己制限性のため、原子層(あるいは単分子層)の形成が生じる。これらの原子層反応ステップが複数回繰り返され、最終ALDコーティングが形成される。特に、「金属酸化物前駆体」という用語は、金属酸化物の前駆体を表す。前駆体自体は、金属酸化物でなくてもよいが、例えば、金属有機分子を含んでもよい。従って、特に、ALDの金属(酸化物)前駆体は、典型的には、金属ハロゲン化物、アルコキシド、アミド、および他の金属(有機)化合物を有してもよい。
【0050】
ALDプロセスのステップバイステップの特徴により、蛍光体粒子のような大きなアスペクト比を有する構造の上、および内部で、共形のコーティングが可能となる。ALDプロセスでは、さらに、異なる金属酸化物前駆体を反応器に連続的に供給することにより、異なる組成の層の成膜ができ、調整された光学特性を有する多成分層またはナノ積層体が形成される。
【0051】
従って、特定の実施形態では、ALD層は、蛍光体粒子を有するGaN表面に設置され、粒子は、基板に対して機械的および光学的に結合される。本プロセスは、層により、粒子が基材と結合され、粒子がそれらの隣接粒子と結合されるように設定される。従って、修正された光学特性を有する蛍光体粒子ネットワークがGaN表面に形成され、LEDの光出力が高められる。通常、ALD層は、20~500nmの厚さ、特に50~200nmの範囲の厚さを有してもよい。別の実施形態では、ALDプロセスは、共形の堆積物の形成に加えて、蛍光体粒子間のボイドに、厚い層が得られるCVDのような成長も生じるように設定される。CDVのような成長は、パルス間のパージ時間を短縮したり、あるいは反応器温度を低下させたりすることにより、実現できる。
【0052】
以下の表1には、ALDの第2のコーティング層に好適な(非限定的な)多くの材料を示す。
【0053】
【表1】

これとは別に、またはこれに加えて、酸化ニオブ(特にNb2O5)または酸化イットリウム(Y2O3)が設置されてもよい。そのような金属前駆体は、例えば、それぞれ、tert-ブチルイミド-トリス(ジエチルアミノ)-ニオブ、NbF5、またはNbCl5、およびトリス(エチルシクロペンタジエニル)イットリウムである。ただし、他の材料を設置してもよい。従って、原子層成膜プロセスにおいて、金属酸化物前駆体は、特に、Al、Hf、Ta、Zr、TiおよびSiからなる群から選択された金属の金属酸化物前駆体の群から選択されてもよい。これとは別に、またはこれに加えて、Ga、Ge、VおよびNbの1または2以上が設置されてもよい。さらに、特に、これらの前駆体の2または3以上の交互層が設置され、少なくとも1つの前駆体は、Al金属酸化物前駆体およびSi金属酸化物前駆体からなる群より選定され、特にAl金属酸化物金属酸化物前駆体であり、別の前駆体は、Hf金属酸化物前駆体、Ta金属酸化物前駆体、Zr金属酸化物前駆体およびTi金属酸化物前駆体からなる群から選定され、特に、Hf金属酸化物前駆体、Ta金属酸化物前駆体、およびZr金属酸化物前駆体からなる群から選択され、さらに、特に、Ta金属酸化物前駆体から選択される。特に、Hf、Zr、およびTaは、比較的光透過性の層を提供するように思われる。一方、Tiは、例えば、比較的低い光透過性の層を提供してもよい。例えば、Ta、HfおよびZrによる処理は、Siよりも比較的容易であるように思われる。また、「酸化物前駆体」または「金属酸化物前駆体」または「金属(酸化物)前駆体」という用語は、2または3以上の化学的に異なる前駆体の組み合わせを表してもよい。特に、これらの前駆体は、酸素源と反応した際に、と酸化物を形成する(従って、金属酸化物前駆体として示される)。
【0054】
(実施例)
本願の実施形態により、LED上に蛍光体コンバータ層を形成するため、D50=3.8μmのNYAG4454(Intematix社)蛍光体粒子材料を使用した。エタノール中で、青色薄膜フリップチップ(TFFC)LED上に、スクリーン重量が2.5mg/cm2の蛍光体粒子を沈殿させた。いったん蛍光体粒子がLEDに設置されると、次に、Picosun Oy ALD反応器において、Al2O3コーティングが設置された。前駆体材料は、トリメチアルミニウム、およびO用のH2Oであり、Al2O3膜を作製した。成膜温度は、150℃に設定された。前駆体が導入されるパルス時間は、100msであり、その後、窒素ガスによるパージを30秒間実施し、さらに100msの間、気相水のパルスを導入し、さらに、窒素ガスによる別のパージを30秒実施した。時間は、パルス後に、前駆体の全てが粒子、およびLEDと反応する上で十分であった。
【0055】
ALDサイクルを繰り返し、20nmステップでAl2O3無機コーティング層を形成した。各20nmステップにおいて、1AでのLEDからの放射フラックスを積分球で測定した。図8には、Al2O3層の厚さの関数としての、1A、85℃のソケット温度で測定された相対フラックスを示す。Al2O3層の厚さが増すにつれて、一定の電流および温度におけるLEDのフラックスは、約6%増加する。
【0056】
また、一例としての蛍光体コンバータの光学的コントラストも測定した。図9には、例示的な蛍光体コンバータの光学的コントラスト測定の実験の構成を示す。一例としての蛍光体コンバータ963は、D50が3.8μmのYAG:Ce蛍光体材料粒子を用いて、前述のように形成された。蛍光体コンバータ層は、10μmの厚さであった。ALDにより蛍光体粒子上に成膜されたAl2O3層は、50nmの厚さであった。100nmのアルミニウムの層919でガラス基板910をコーティングした。アルミニウム層919は、幅が50μmのスリット923(または平面図、図10における、)を有する。測定を行うため、基板910の裏側に青色光940を照射した。その一部はスリット923を通過する。
【0057】
図10は、蛍光体コンバータ層963を通る青色光のラインの画像である。光学顕微鏡(キーエンスVHX-5000)を用いて光分布を測定し、アルミニウム層919内のオープンラインに対して垂直な線走査をプロットした。
【0058】
図11には、蛍光体コンバータ層963上のAl層919におけるオープンラインに垂直な、測定されたラインプロファイル11を示す。強度プロファイルは、顕微鏡画像からのものである。顕微鏡カメラのダイナミックレンジを広げるため、露光時間の異なる写真を重ね合わせ、カメラのダイナミックレンジ内の信号を常に選択した(HDR測定)。測定されたラインプロファイル11は、計算されたプロファイル12と一致する。Al層の端から47μmの位置で、1:300(14)のコントラストに達した。
【0059】
図12には、蛍光体材料粒子を被覆するAl2O3の薄い層を有する、基板上の蛍光体コンバータ層の断面の界面のSEM(走査型電子顕微鏡)像を示す。この例では、蛍光体コンバータ層は、YAG蛍光体を用いて、前述のように形成され、蛍光体コンバータ層は、結像を容易にするため、ガラス基板上に形成される。図には、どのようにAl2O3が粒子およびガラス基板の露出表面を被覆するかを示すとともに、どのように粒子がガラス基板と接触するかを示す。このガラス基板は、発光するLEDの表面である。また、コーティング材料は、EDAX分析(元素組成を定めるX線分光法)により評価され得る。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図8
図9
図10
図11
図12