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特許7170919電気油圧式ブレーキシステム及びそのブレーキ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-04
(45)【発行日】2022-11-14
(54)【発明の名称】電気油圧式ブレーキシステム及びそのブレーキ方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20221107BHJP
   B60T 7/02 20060101ALI20221107BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20221107BHJP
   B60T 8/171 20060101ALI20221107BHJP
【FI】
B60T13/74 D
B60T7/02 D
B60T8/17 C
B60T8/171 Z
B60T8/17 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021575073
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2021110824
(87)【国際公開番号】W WO2022028522
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】202010787359.3
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521549408
【氏名又は名称】格陸博科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】李勳
(72)【発明者】
【氏名】劉兆勇
(72)【発明者】
【氏名】顧勤冬
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-193636(JP,A)
【文献】特開2015-196414(JP,A)
【文献】特表2003-524778(JP,A)
【文献】特開2011-013187(JP,A)
【文献】中国実用新案第209541657(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第101832789(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 1/00-8/1769
B60T 8/32-8/96
B60T 13/00-13/74
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気油圧式ブレーキシステムであって、
メインハウジング(25)を含み、前記メインハウジング(25)内には油圧ユニットのブレーキマスタシリンダ(17)が設けられており、ブレーキマスタシリンダ(17)のピストンロッドの外端は出力押付ロッド(19)に接続されており、出力押付ロッド(19)の他端には入力ロッド(23)が設けられており、入力ロッド(23)は、自身の長さ方向にのみ摺動するようメインハウジング(25)内に接続されており、入力ロッド(23)の他端には、ブレーキペダル力を伝達するためのプッシュロッド(2)が設けられており、
前記メインハウジング(25)内には、更に、プッシュロッド(2)をブレーキマスタシリンダ(17)から離間する方向へ位置復帰させる位置復帰部材と、プッシュロッド(2)の変位を感知する変位センサが設けられており、入力ロッド(23)と出力押付ロッド(19)は隙間状態及び当接状態を有し、隙間状態において、システムは、車両の駆動モータの逆トルク駆動発電によって制動を行い、当接状態において、システムは、車両の駆動モータの逆トルク駆動発電を主な制動力としつつ、出力押付ロッド(19)がブレーキマスタシリンダ(17)のピストンロッドを押し動かすことで発生する油圧制動を補助制動力とし、
前記変位センサは磁性部材(7)及びホールセンサ(8)を含み、ホールセンサ(8)は磁性部材(7)の相対的な変位を感知するために用いられ、
前記磁性部材(7)は、プッシュロッド(2)の移動方向に沿って分布するいくつかの横方向磁性片及び縦方向磁性片を含み、全ての横方向磁性片のうちの2つの磁性片は同一直線上に位置し、且つ、N極の向きが同じであり、隣り合う横方向磁性片の間に縦方向磁性片が設けられており、縦方向磁性片の両端の磁性片接続線方向は、横方向磁性片の接続線方向と垂直であり、且つ、隣り合う縦方向磁性片はN極の向きが反対となっていることを特徴とする電気油圧式ブレーキシステム。
【請求項2】
前記入力ロッド(23)の外周にはネジ山が設けられており、且つ、その外側にネジ山に組み合わされるインサートネジ(11)が配設されており、前記インサートネジ(11)は回動のみが可能なようにメインハウジング(25)内に接続され、前記メインハウジング(25)内には、インサートネジ(11)を回転駆動させるパワーユニットが更に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電気油圧式ブレーキシステム。
【請求項3】
前記パワーユニットはアシストモータ(15)を含み、前記アシストモータ(15)の出力端にはピニオン(14)が同軸に設けられており、メインハウジング(25)内にはアイドルギヤ(13)及び出力ギヤ(12)が回動するよう接続されており、前記アイドルギヤ(13)は、2段接続ヘリカルギヤであり、一方がピニオン(14)と外接し、他方が出力ギヤ(12)と外接し、出力ギヤ(12)は、インサートネジ(11)の外側に覆設されて、インサートネジ(11)を回転駆動させることを特徴とする請求項2に記載の電気油圧式ブレーキシステム。
【請求項4】
前記インサートネジ(11)の外側にはアウタースプラインが設けられており、出力ギヤ(12)の内周は、アウタースプラインと係合するインナースプラインとなっていることを特徴とする請求項2に記載の電気油圧式ブレーキシステム。
【請求項5】
前記入力ロッド(23)とプッシュロッド(2)はボールジョイント方式で接続されることを特徴とする請求項1に記載の電気油圧式ブレーキシステム。
【請求項6】
前記入力ロッド(23)は、出力押付ロッド(19)寄りの一端に取り外し可能に接続される調整パッドを含み、前記調整パッドと出力押付ロッド(19)の間に隙間が保持されていることを特徴とする請求項1に記載の電気油圧式ブレーキシステム。
【請求項7】
請求項1に記載の電気油圧式ブレーキシステムのブレーキ方法であって、
車両に制動要求がある場合には、制動エネルギーの回収を行い、そのステップとして、
S1:ブレーキペダルが踏まれると、ペダル力がプッシュロッド(2)を通じて入力ロッド(23)を前方へ押し動かすことで、入力ロッド(23)が先に前方に向かって出力押付ロッド(19)に近接し、
S2:このとき、トラベルセンサによって現在のプッシュロッド(2)の変位及びプッシュロッド(2)の変位速度を感知して、運転者の制動要求を推測するとともに、所望の制動力を演算し、車両の駆動モータの逆トルク駆動発電によって制動を行い、
S3:入力ロッド(23)が出力押付ロッド(19)との隙間をなくして当接状態になると、駆動モータの能力<制動要求であることを意味し、この場合には、ペダル力及びパワーユニットが出力押付ロッド(19)を前進させ続けることで、ブレーキマスタシリンダ(17)のピストンロッドが押し動かされて油圧制動力が発生し、制動要求は、車両の駆動モータの逆トルク駆動発電を主な制動力源としつつ、油圧制動力を制動力の不足を補うものとする、とのステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
ブレーキ・バイ・ワイヤの場合には、アシストモータ(15)による制動でブレーキマスタシリンダ(17)のピストンロッドに対する全押動力を発生させて、油圧制動を形成し、
アシストモータ(15)又は電子制御システムが機能を喪失した場合には、安全バックアップ制動を実施し、ブレーキペダル力でブレーキマスタシリンダ(17)を直接押し動かすことで、ブレーキマスタシリンダ(17)のピストンロッドに対する全押動力を担って油圧制動を形成することを特徴とする請求項7に記載の電気油圧式ブレーキ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ブレーキシステムの分野に関し、特に、電気油圧式ブレーキシステム及びそのブレーキ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、モータービークルのブレーキシステムは、エンジンの吸気系によってブレーキブースターに真空源を提供することで、ブレーキマスタシリンダを加圧アシストする。これにより、ブレーキ操作者のために制動応答速度を上昇させて、車両の制動距離を短縮し、車両の安全性を向上させている。しかし、この種の機械式ブースターは、真空度が存在しない場合や、真空度が不足している場合に、ブレーキシステムに対し十分なブレーキアシストを付与することができない。
【0003】
上記のアシスト不足の問題を解決するために、現在、多くのメーカーが、真空アシストの代わりにモータアシストを使用する電動アシストブレーキ方案を提案している。一般的に、当該システムには、パワーユニット、トランスミッションユニット、制御装置及びブレーキマスタシリンダが含まれる。このうち、制御装置は、パワーユニット(一般的には、ブラシレスモータ又はブラシ付きモータ)が運転者の制動力要求に応じて迅速に応答又は停止するよう制御するためのものである。
【0004】
現在、多くのメーカーの設計案では、ブレーキペダルとブレーキシリンダが非分離式となっている。この場合、減速過程では、ブレーキペダルを踏むだけでブレーキシリンダに油圧が生じてブレーキがかかるため、制動エネルギーの回収を実現できない。よって、制御戦略として電気制動を機械式の油圧制動に組み合わせて制動を完了可能であったとしても、エネルギーの回収率は低い。このような構造は製品の使用普及を制限しており、特に、電気自動車への応用を制限している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ブレーキペダルと油圧機構が分離されており、ブレーキペダルが踏まれると、モータを主なトルク源とするが、モータ能力<制動要求の場合には、油圧制動を制動トルクの不足を補うものとすることで、電気制動の割合を上昇させて、エネルギー回収率を増加させる電気油圧式ブレーキシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における上記の技術的目的は、以下の技術方案によって実現される。
【0007】
電気油圧式ブレーキシステムはメインハウジングを含む。前記メインハウジング内には油圧ユニットのブレーキマスタシリンダが設けられている。ブレーキマスタシリンダのピストンロッドの外端は出力押付ロッドに接続されており、出力押付ロッドの他端には入力ロッドが設けられている。入力ロッドは、自身の長さ方向にのみ摺動するようメインハウジング内に接続されている。入力ロッドの他端には、ブレーキペダル力を伝達するためのプッシュロッドが設けられている。
【0008】
前記メインハウジング内には、更に、プッシュロッドをブレーキマスタシリンダから離間する方向へ位置復帰させる位置復帰部材と、プッシュロッドの変位を感知する変位センサが設けられている。入力ロッドと出力押付ロッドは隙間状態及び当接状態を有する。隙間状態において、システムは、車両の駆動モータの逆トルク駆動発電によって制動を行う。当接状態において、システムは、車両の駆動モータの逆トルク駆動発電を主な制動力としつつ、出力押付ロッドがブレーキマスタシリンダのピストンロッドを押し動かすことで発生する油圧制動を補助制動力とする。
【0009】
更に、前記変位センサは磁性部材及びホールセンサ(8)を含む。ホールセンサ(8)は磁性部材の相対的な変位を感知するために用いられる。
【0010】
更に、前記磁性部材は、プッシュロッドの移動方向に沿って分布するいくつかの横方向磁性片及び縦方向磁性片を含む。全ての横方向磁性片のうちの2つの磁性片は同一直線上に位置し、且つ、N極の向きが同じである。また、隣り合う横方向磁性片の間に縦方向磁性片が設けられている。縦方向磁性片の両端の磁性片接続線方向は、横方向磁性片の接続線方向と垂直であり、且つ、隣り合う縦方向磁性片はN極の向きが反対となっている。
【0011】
更に、前記入力ロッドの外周にはネジ山が設けられており、且つ、その外側にネジ山に組み合わされるインサートネジが配設されている。前記インサートネジは回動のみが可能なようにメインハウジング内に接続される。前記メインハウジング内には、インサートネジを回転駆動させるパワーユニットが更に設けられている。
【0012】
更に、前記パワーユニットはアシストモータを含む。前記アシストモータの出力端にはピニオンが同軸に設けられており、メインハウジング内にはアイドルギヤ及び出力ギヤが回動するよう接続されている。前記アイドルギヤは、2段接続ヘリカルギヤであり、一方がピニオンと外接し、他方が出力ギヤと外接する。出力ギヤは、インサートネジの外側に覆設されて、インサートネジを回転駆動させる。
【0013】
更に、前記インサートネジの外側にはアウタースプラインが設けられており、出力ギヤの内周は、アウタースプラインと係合するインナースプラインとなっている。
【0014】
更に、前記入力ロッドとプッシュロッドはボールジョイント方式で接続される。
【0015】
更に、前記入力ロッドは、出力押付ロッド寄りの一端に取り外し可能に接続される調整パッドを含み、前記調整パッドと出力押付ロッドの間に隙間が保持されている。
【0016】
本発明の目的は、更に、電気制動の割合を上昇させて、エネルギー回収率を増加可能とする電気油圧式ブレーキ方法を提供することである。
【0017】
本発明における上記の技術的目的は、以下の技術方案によって実現される。
【0018】
ブレーキ方法は、車両に制動要求がある場合には、制動エネルギーの回収を行う。また、そのステップとして以下を含む。
【0019】
S1:ブレーキペダルが踏まれると、ペダル力がプッシュロッドを通じて入力ロッドを前方へ押し動かすことで、入力ロッドが先に前方に向かって出力押付ロッドに近接する。
【0020】
S2:このとき、トラベルセンサによって現在のプッシュロッドの変位及びプッシュロッドの変位速度を感知して、運転者の制動要求を推測する。そして、所望の制動力を演算し、車両の駆動モータの逆トルク駆動発電によって制動を行う。
【0021】
S3:入力ロッドが出力押付ロッドとの隙間をなくして当接状態になると、駆動モータの能力<制動要求であることを意味する。この場合には、ペダル力及びパワーユニットが出力押付ロッドを前進させ続けることで、ブレーキマスタシリンダのピストンロッドが押し動かされ、油圧制動力が発生する。制動要求は、車両の駆動モータの逆トルク駆動発電を主な制動力源としつつ、油圧制動力を制動力の不足を補うものとする。
【0022】
更に、ブレーキ・バイ・ワイヤの場合には、アシストモータによる制動でブレーキマスタシリンダのピストンロッドに対する全押動力を発生させて、油圧制動を形成する。
【0023】
アシストモータ又は電子制御システムが機能を喪失した場合には、安全バックアップ制動を実施する。つまり、ブレーキペダル力でブレーキマスタシリンダを直接押し動かすことで、ブレーキマスタシリンダのピストンロッドに対する全押動力を担って油圧制動を形成する。
【発明の効果】
【0024】
以上述べたように、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0025】
1.ブレーキペダルと油圧機構を分離することで、ブレーキペダルが踏まれたあと、制御装置は、トラベルセンサによる現在のペダルの角度及び角速度から運転者の制動要求を推測し、所望の制動力を演算する。そして、モータを主なトルク源とするが、制動減速度要求が大きいにも関わらず、モータの制動力が不足している場合には(モータ能力<制動要求)、油圧制動を制動トルクの不足を補うものとする。これにより、電気制動の割合を上昇させて、エネルギー回収を増加させる。
【0026】
2.磁性体のN極とS極を特徴的な順序で配列することで、構造サイズが小さい場合でも磁性部材が大きな磁力線単調領域を有するよう保証している。当該磁性片の特定の配列方式によれば、磁性部材の有効動作領域内のいずれの位置においても、磁力線の向きが1つのみとなるよう保証可能である。変位センサの内部にはホールチップが設計されており、磁性体の異なる位置における磁力線の向きを感知することで、ペダルのプッシュロッドの前進及び後退の変位の大きさが得られる。また、磁束線の角度の変化速度を算出することで、ペダルのプッシュロッドの変位速度を推測することも可能である。且つ、このような順に配列することで、変位センサの測定ストロークをより大きくできる。この種の電磁誘導式変位センサは、移動部材と感知部材が非接触となっている。よって、接触式のスライダ抵抗式変位センサよりも精度が高く、長寿命であり、耐電磁干渉効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の全体構造の概略図である。
図2図2は、本発明における変位センサの概略取付図である。
図3図3は、本発明における変位センサ部分の磁界変化の原理図である。
図4図4は、ネジにおけるブレーキマスタシリンダから離間する一端に接続されたホルダの図である。
図5図5は、本発明特許のシステムにおける制動力伝達のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を組み合わせて、本発明の具体的実施形態につき更に説明する。なお、本実施例は本発明を制限するものではない。
【0029】
図1に示すように、電気油圧式ブレーキシステムはメインハウジング25を含む。メインハウジング25内には、油圧ユニットのブレーキマスタシリンダ17が固定されている。ブレーキマスタシリンダ17のピストンロッドの外端は、出力押付ロッド19に同軸に固定接続されており、出力押付ロッド19の他端には入力ロッド23が同軸に設けられている。入力ロッド23は、自身の長さ方向にのみ摺動するようメインハウジング25内に接続されている。また、入力ロッド23の他端には、ブレーキペダル力を伝達するためのプッシュロッド2がボールジョイントにより接続されている。ボールジョイントによる接続方式は、1本のロッドを設置するだけの場合よりも優れている。なぜなら、ペダルの運動軌跡は弧線を描くため、ボールジョイントによれば、配設の非同心度やペダルの揺動角度に伴う運動の滞りを吸収できるからである。
【0030】
図1及び図2に示すように、プッシュロッド2の外側にはリテーナ3が固定されている。リテーナ3には、ブレーキマスタシリンダ17寄りの側にスプリングシート6が当接するか固定されている。スプリングシート6はプッシュロッド2の外側に配設されている。また、メインハウジング25は、ブレーキマスタシリンダ17から離間する一端に固定されるサブハウジング26を含む。サブハウジング26はスプリングシート6の外側に配設されている。サブハウジング26の外端には、更に、スプリングシート6の移動方向に当止する位置規制屈曲が接続されている。更に、サブハウジング26内には、スプリングシート6をブレーキマスタシリンダ17から離間する方向へ押し動かして位置復帰させる位置復帰部材と、プッシュロッド2の変位を感知する変位センサが設けられている。
【0031】
図1に示すように、位置復帰部材は、円筒コイルバネでもよいし、円錐コイルバネでもよい。或いは、弾性ゴムでもよいし、バネとゴムの組み合わせでもよい。また、バネは、等ピッチでもよいし、不等ピッチでもよい。本実施例において、位置復帰部材は戻しバネ9を含む。戻しバネ9は、プッシュロッド2と入力ロッド23の外側に配設されている。戻しバネ9は、スプリングシート6を外側に押し動かし、リテーナ3を介してプッシュロッド2を外側に押し動かすことで位置復帰させるよう、一端がメインハウジング25内に当接するとともに、他端がスプリングシート6の内端面に当接している。
【0032】
図2に示すように、変位センサは、スプリングシート6の外周面に固定される磁性部材7と、サブハウジング26の内周面に固定されるホールセンサ8を含む。ホールセンサ8は、磁性部材7の相対的な変位を感知するために用いられる。センサと磁性部材7に変位が生じた場合には、ホールセンシングの原理を利用して、センサ内部のチップが異なる電気信号を生成するため、演算によって、磁性部材7の直線変位を算出可能である。即ち、ペダルの変位センサからの信号出力によって、ペダルのプッシュロッド2の変位が得られる。
【0033】
図3に示すように、磁性部材7は、プッシュロッド2の移動方向に沿って分布するいくつかの横方向磁性片及び縦方向磁性片を含む。全ての横方向磁性片のうちの2つの磁性片は同一直線上に位置し、且つ、N極の向きが同じである。また、隣り合う横方向磁性片の間に縦方向磁性片が設けられている。縦方向磁性片の両端の磁性片接続線方向は、横方向磁性片の接続線方向と垂直である。且つ、隣り合う縦方向磁性片はN極の向きが反対となっている。
【0034】
図2に示すように、変位センサは静止固定部材である。サブハウジング26には位置決め孔が設けられている。変位センサは、配設後にサブハウジング26の軸方向位置に相対的に固定され、且つ、固定ネジによってサブハウジング26に締結される。磁性部材7は運動部材であって、案内凸型構造が設計されている。また、スプリングシート6の外周には案内凹型溝が設計されている。配設時には凹凸を係合し、磁性部材7が往復運動時に直線運動を常に維持可能となるよう保証することで、変位信号出力の信頼性を保証可能となる。これにより、磁性部材7が左右に揺動して信号ドリフトが発生する結果、信号出力が弱くなり、ひいては信号が出力されなくなるとの事態が回避される。
【0035】
図3に示すように、本実施例において、磁性部材7は、プッシュロッド2の移動方向に沿って分布する2つの横方向磁性片と、2つの縦方向磁性片を含む。これらは、順に、N極がほかの磁性片の方を向く横方向磁性片、N極がホールセンサ8側を向く縦方向磁性片、N極が上記横方向磁性片の向きと同一の横方向磁性片、N極がホールセンサ8から離間する側を向く縦方向磁性片である。
【0036】
当該磁性片の特定の配列方式をこのようにすることで、磁性部材7の有効動作領域内のいずれの位置においても、磁力線の向きが1つのみとなるよう保証可能である。よって、磁性体の異なる位置における磁力線の向きを感知することで、プッシュロッド2の前進及び後退の変位の大きさが得られる。また、磁束線の角度の変化速度を算出することで、ペダルのプッシュロッド2の変位速度を推測することも可能である。且つ、このような順に配列することで、変位センサの測定ストロークをより大きくできる。この種の電磁誘導式変位センサは、移動部材と感知部材が非接触となっている。よって、接触式のスライダ抵抗式変位センサよりも精度が高く、長寿命であり、耐電磁干渉効果に優れる。
【0037】
図1に示すように、変位センサ及び磁性部材7は、いずれもシステムの装着面の後端に装着されている。実際の車両において、装着面の後端部分は運転席であり、前端はエンジンルームである。よって、実際に車両に使用する場合、センサ及び磁性部材7は運転席に位置することになる。つまり、環境温度が適切であり、エンジンルームの高温及び高湿から離れており、電磁干渉や振動が小さい。このような磁気センサは、高温下で信号出力に温度ドリフトが発生しやすく、信号出力の誤差が大きくなる。且つ、磁性部材7は、高温下で磁界強度が弱まり、回復不能となる。よって、運転席に位置することは、センサの信号出力精度にとって都合がよい。
【0038】
図1に示すように、入力ロッド23は、外周に配設される中空のネジ10を含む。ネジ10の外周にはネジ山が設置されており、ネジ10の外側には、ネジ山に組み合わされるインサートネジ11が配設されている。インサートネジ11は、キージョイント(key joint)等の方式で入力ロッド23の外側に固定される。インサートネジ11は、回動のみが可能なようにメインハウジング25内に接続される。
【0039】
図4に示すように、本実施例では、ネジ10におけるブレーキマスタシリンダ17から離間する一端にホルダ51が接続されている。また、メインハウジング25又は車体内には、インサートネジ11と平行な2つのガイドロッド50が固定されている。ガイドロッド50は、ホルダ51を貫通してホルダ51の摺動を案内することで、入力ロッド23が自身の長さ方向にのみ摺動可能にメインハウジング25内に接続されるよう保証する。これにより、ネジ10は、ガイドロッド50に沿って軸線移動のみが可能となり、押動力を発生させる。
【0040】
図1に示すように、メインハウジング25内には、インサートネジ11を回転駆動させるパワーユニットが更に設けられている。パワーユニットは、メインハウジング25内に固定されるアシストモータ15を含む。アシストモータ15の出力端にはピニオン14が同軸に接続されており、メインハウジング25内にはアイドルギヤ13及び出力ギヤ12が回動するよう接続されている。アイドルギヤ13は、中心軸を介してメインハウジング25に固定されている。アイドルギヤ13は、2段接続ヘリカルギヤであり、一方がピニオン14と外接し、他方が出力ギヤ12と外接する。出力ギヤ12は、インサートネジ11の外側に覆設されて、インサートネジ11を回転駆動させる。
【0041】
本実施例において、インサートネジ11の外側にはアウタースプラインが設けられており、出力ギヤ12の内周は、アウタースプラインと係合するインナースプラインとなっている。これにより、出力ギヤ12の回動に伴って、インサートネジ11が回転運動する。同時に、トルクを伝達して、インサートネジ11を回転運動させる。
【0042】
図1に示すように、出力ギヤ12におけるブレーキマスタシリンダ17から離間する一端には軸受がリベット接合されている。軸受は、アウターリングがサブハウジング26に締りばめされることでメインハウジング25に固定される。また、インナーリングがリベット接合により出力ギヤ12に固定される。これにより、出力ギヤ12がメインハウジング25内で周方向にのみ自在に回動し、移動しないよう保証される。サブハウジング26は、アルミダイカストにより成型するか、板金スタンピングにより成型する。サブハウジング26と出力ギヤ12の軸受は、締りばめによる圧入方式で配設されるため、戻しバネ9のプリロードを支承可能である。
【0043】
図1に示すように、戻しバネ9におけるスプリングシート6から離間する一端は軸受のアウターリングに当接する。戻しバネ9は、車両ニーズの違いに応じて調整可能なため、ほかの部材を変更することなく、異なるペダル感覚のマッチングを実現できる。ブレーキペダルを踏むと、戻しバネ9が圧縮されて制動反力が生成される。戻しバネ9の事前圧縮力及び硬さの度合は、ペダルの硬さの快適度合をダイレクトに決定する。更に、アシストモータによるアシストの大きさの制御作用が加わることで、車両において、運動モードと快適モードという2種類のブレーキペダルの状態をマッチング可能となる。
【0044】
本実施例において、アシストモータ15には、フック又は接着剤による接着で制御装置が固定されている。一般的に、接着剤には、耐高温・低温エポキシ接着剤を用いる。接着剤は、単一成分であっても2成分であってもよく、動力出力と制御システムの一体型構造を形成する。制御装置は、車両のCANネットワークを通じて、例えば車輪速信号や制動要求信号等の車両信号を受信する。そして、制御戦略の論理演算によって、アシストモータ15のトルク出力及び方向転換を制御する。アシストモータ15は、アシストモータ15の回動位置、方向及び速度を制御するための回転角度及び回転速度信号を出力する。
【0045】
制御戦略の論理演算は、次の通りである。運転者がブレーキペダルを踏むと、ペダルの変位センサが信号を生成する。ペダルの踏み込み深さが増加するほど、変位センサの出力も大きくなる。この場合には、運転者がより大きな制動減速度要求を有しているとみなし、より大きな電流でアシストモータ15を制御することで、大きなトルクを出力させる。また、運転者がペダルを解除すると、アシストモータ15は通電を停止するか、逆方向に通電することで制動圧を減少させる。
【0046】
図1に示すように、プッシュロッド2における入力ロッド23から離間する一端には、ペダル接続部材1が螺接されている。ペダル接続部材1は、球形又はU型とすることができ、具体的には車両のブレーキペダルの接続構造に応じて決定する。これは従来技術のため、ここではこれ以上詳述しない。
【0047】
図1に示すように、入力ロッド23は、出力押付ロッド19寄りの一端に取り外し可能に接続される調整パッドを含む。また、出力押付ロッド19は、入力ロッド23寄りの一端の緩衝ブロック21を含む。調整パッドと緩衝ブロック21の間には隙間が保持されている。機械制動時には、まず、入力ロッド23が前方へ移動して隙間をなくす必要がある(アイドルストローク)。その後、ブレーキペダルの力を出力押付ロッド19を通じてブレーキマスタシリンダ17のピストンロッドに伝達可能となることで、ブレーキオイルの圧力が生成される。調整パッドの高さを変更することでアイドルストロークの大きさを調節し、制御戦略によって、ペダルのロッド、制動エネルギーの回収ポイント及び回収割合を調整する。
【0048】
図1に示すように、入力ロッド23と出力押付ロッド19は、隙間状態及び当接状態を有する。隙間状態において、システムは、車両の駆動モータの逆トルク駆動発電によって制動を行う。一方、当接状態において、システムは、車両の駆動モータの逆トルク駆動発電を主な制動力としつつ、出力押付ロッド19がブレーキマスタシリンダ17のピストンロッドを押し動かすことで発生する油圧制動を補助制動力とする。
【0049】
図5に示すように、車両に制動要求がある場合には、制動エネルギーの回収を行う。この制動には、次のステップが含まれる。
【0050】
S1:ブレーキペダルが踏まれると、ペダル力がプッシュロッド2を通じて入力ロッド23を前方へ押し動かす。ペダルの制動力はブレーキマスタシリンダ17に直接到達するのではなく、先に、入力ロッド23が前方に向かって出力押付ロッド19に近接する。
【0051】
S2:また、このとき、磁性部材7と変位センサに相対的な変位が発生するため、トラベルセンサによって現在のプッシュロッド2の変位及びプッシュロッド2の変位速度を感知して、運転者の制動要求を推測する。そして、所望の制動力を演算することで、モータのトルク出力を演算及び制御し、車両の駆動モータの逆トルク駆動発電によって制動を行う。
【0052】
具体的には、変位が大きいほど運転者の求める制動力が大きいことを意味する。また、プッシュロッド2の変位速度が大きいほど、運転者はより迅速な圧力上昇率を要求しており、モータの制御速度の加速が必要なことを意味する。また、速度が所定の閾値を超えた場合には、緊急制動を実施し、アシストモータが全速運転することで、最大制動補助を付与する。
【0053】
S3:入力ロッド23が出力押付ロッド19との隙間をなくして当接状態になると、駆動モータの能力<制動要求であることを意味する。この場合には、ペダル力及びパワーユニットが出力押付ロッド19を前進させ続けることで、ブレーキマスタシリンダ17のピストンロッドが押し動かされ、油圧制動力が発生する。そして、車両の動力モータの逆トルク駆動発電を主な制動力源(即ち、回生ブレーキ)としつつ、油圧制動を制動力の不足を補うものとする。
【0054】
ペダルの変位センサ及びアイドルストロークによって動力モータの制動割合が上昇し、発生した電気エネルギーが蓄積されるため、エネルギー回収の増加及び実現が可能となる。
【0055】
図5に示すように、ブレーキ・バイ・ワイヤの場合には、ブレーキペダルを踏む必要はなく、アシストモータ15による制動でブレーキマスタシリンダ17のピストンロッドに対する全押動力を発生させて、油圧制動を形成する。
【0056】
アシストモータ15又は電子制御システムが機能を喪失した場合には、安全バックアップ制動を実施する。つまり、ブレーキペダル力でブレーキマスタシリンダ17を直接押し動かすことで、ブレーキマスタシリンダ17のピストンロッドに対する全押動力を担い、油圧制動を形成する。このとき、アシストモータ15は通電していないため、インサートネジ11は回転しない。よって、ネジ10が前方に運動するのに伴って、インサートネジ11も前方へ直線運動し、車両を減速又は安全停止させる。
【0057】
以上の記載は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を制限するものではない。当業者であれば、本発明の本質及び保護の範囲内において、本発明につき各種の修正又は等価の置換を実施可能である。また、このような修正又は等価の置換も本発明の技術方案の保護範囲に含まれるとみなすべきである。
【符号の説明】
【0058】
1 ペダル接続部材
2 プッシュロッド
3 リテーナ
4 プッシュロッドのバネ
5 プッシュロッドのスプリングシート
6 スプリングシート
7 磁性部材
8 ホールセンサ
9 戻しバネ
10 ネジ
11 インサートネジ
12 出力ギヤ
13 アイドルギヤ
14 ピニオン
15 アシストモータ
17 ブレーキマスタシリンダ
19 出力押付ロッド
20 ベース
21 緩衝ブロック
23 入力ロッド
25 メインハウジング
26 サブハウジング
50 ガイドロッド
51 ホルダ
図1
図2
図3
図4
図5