(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】環境制御システム、このシステムに用いられるセンシングユニット体、及び、環境制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/30 20180101AFI20221108BHJP
E04B 1/62 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
F24F11/30
E04B1/62 Z
(21)【出願番号】P 2018089066
(22)【出願日】2018-05-07
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】518157850
【氏名又は名称】馬場 鉄心
(74)【代理人】
【識別番号】100116573
【氏名又は名称】羽立 幸司
(72)【発明者】
【氏名】馬場 鉄心
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-111540(JP,A)
【文献】特開平08-201180(JP,A)
【文献】実開平05-017434(JP,U)
【文献】実開昭62-125088(JP,U)
【文献】特開2013-104647(JP,A)
【文献】特開2008-303529(JP,A)
【文献】特開2002-140774(JP,A)
【文献】特開平08-110243(JP,A)
【文献】特開2013-181700(JP,A)
【文献】特開2015-031506(JP,A)
【文献】特開2015-143605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/30
E04B 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外又は室内の環境状況を表す環境データをセンシングして、室内、室外又は室内外の環境を制御する環境制御システムにおいて、
前記環境データを前記室外又は室内でセンシングするセンサ手段と、
前記室内に配置され且つ前記センサ手段に電気的に繋がっており、前記センサ手段がセンシングした環境データを前記室内で無線送信する無線送信手段と、
前記無線送信手段から送信された前記環境データを前記室内で受信して、前記室内、室外又は室内外の環境を制御する受信制御手段とを備え、
前記センサ手段と前記無線送信手段とはセンシングユニット体を構成し、
前記センシングユニット体は、前記室内と前記室外との間の壁、床、又は、天井に着脱自在で取り付けられることを特徴と
し、
前記室外は、壁体内、床下、又は、屋根裏であり、
前記センサ手段は前記壁体内、床下、又は、屋根裏に配置される室外センサ手段を少なくとも有し、
前記室外センサ手段は、
前記壁体内の前記室内側の壁側、床側、又は、天井側に設けられる内側センサ手段と、
前記壁体内の前記室内から離れた外側、地面側、又は、屋根側に設けられる外側センサ手段とを、少なくとも有する、環境制御システム。
【請求項2】
前記センシングユニット体は、前記センサ手段及び前記無線送信手段にとっての電源としての電池を内蔵している、請求項1記載の環境制御システム。
【請求項3】
前記壁、床、又は、天井と前記センシングユニット体との間の接合には、気密化又は断熱化が図られた締結具が用いられることを特徴とする、請求項1又は2記載の環境制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の環境制御システムに用いられるセンサ手段と、請求項1に記載の環境制御システムに用いられる無線送信手段とを備えたセンシングユニット体であって、
室内と室外との間の壁、床、又は、天井に着脱自在で取り付けられることを特徴とする、センシングユニット体。
【請求項5】
室外及び室内の環境状況を表す室外環境データ及び室内環境データをセンシングして、室内、室外又は室内外の環境を制御する環境制御方法において、
前記室外は、壁体内、床下、又は、屋根裏であり、
前記壁体内、床下、又は、屋根裏に配置される室外センサ手段が
、前記壁体内の前記室内側の壁側、床側、又は、天井側に設けられる内側センサ手段と、前記壁体内の前記室内から離れた外側、地面側、又は、屋根側に設けられる外側センサ手段とを、少なくとも有して、前記室外環境データを前記室外でセンシングし、
室内センサ手段が前記室内環境データを前記室内でセンシングし、
無線送信手段が、前記室内に配置され且つ前記室外センサ手段及び前記室内センサ手段に電気的に繋がっており、前記室外センサ手段がセンシングした室外環境データ及び前記室内センサ手段がセンシングした室内環境データを前記室内で無線送信し、
受信制御手段が、前記無線送信手段から送信された前記室外環境データ及び前記室内環 境データを前記室内で受信して、前記室内、室外又は室内外の環境を制御する、環境制御方法。
【請求項6】
前記室外センサ手段と前記室内センサ手段と前記無線送信手段とはセンシングユニット体を構成し、
前記センシングユニット体は、前記室内と前記室外との間の壁、床、又は、天井に着脱自在で取り付けられることを特徴とする、
請求項5記載の環境制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境制御システム、このシステムに用いられるセンシングユニット体、及び、環境制御方法に関し、特に室外又は室内の環境状況を表す環境データをセンシングして、室内、室外又は室内外の環境を制御する環境制御システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
2009年6月に「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行された。一方で、国産木材振興も伴い、住宅だけでなく公共建築物においても相当数の木造住宅のストックが存在している。データによると、日本の建築物全体の約40%が木造であり、家屋(一戸建て)の約90%が木造住宅という状況にある。このような現状において、日本は、高多湿であり、地震・集中豪雨等の自然災害等が発生する環境にあり、これらの自然環境要因による建築物の劣化状態や、白蟻等の劣化外力による建築物の劣化状態を検知することは、上記の長期優良住宅の普及においては、その必要性が大きくなってきている。
【0003】
しかしながら、点検措置の有効性は各施工会社の問題意識レベルに大きく依存してしまっている。現状としては、定期的な人による確認が行われている場合もあれば、定期的な点検が行われていないこともある。また、問題が発覚してからのいわゆる対処療法となってしまっていることもあり、その場合には発見時点では既に被害が発生しており、さらに遅れれば大きな損害が発生してしまう恐れがあるという状況にある。すなわち、現状としては、長期優良住宅の各性能(耐震、耐風、省エネルギー性、維持管理容易性等)を担保するためには定期点検が行われることが必要とされる一方で、人手を使うには、その負担や問題意識レベルに依存するという問題がある。したがって、点検措置を行う主体の積極性に左右されず、かつ、未然に劣化状態の発生を予測する仕組みが必要とされている。
【0004】
このような視点に立って、人手によらないシステムとしては、例えば、特許文献1に記載のような住宅管理方法がある。この技術は、例えば、建材の内部に建材と一体化するように埋め込んだ光ファイバに対して、所定の検出信号を入力して光ファイバの信号伝送特性の経時変化を監視することにより、建材に加わる歪、水漏れ、結露、火災等を監視するような技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、外壁壁体内に通気層を有する建物の換気システムが開示されており、床下の空気を室内に取り込む床下給気口、外気を室内に取り込む外気給気口、外壁壁体内の通気層の空気を室内に取り込む通気層給気口の中から、最適な空気導入個所を選択すべく、床下、外気、外壁壁体内の通気層の各部の温度を測定する温度センサを設け、その各部の温度情報に基づく制御を行う技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-140774号公報
【文献】特開2008-303529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のいずれの技術も、建物の建設時に設置されることが前提であり、建築後に設置しようとすると、大掛かりな工事が必要という問題がある。
【0008】
ここで、室内にセンサを設置する場合、又は、屋外にセンサを設置することは、建築後でもあって可能だが、壁体内のような場所にセンサを設けようとすると、大掛かりな工事が必要になるという問題がある。そのため、建設されてしまうと、壁体内での劣化状態の発生を予測することが困難という状態が発生している。
【0009】
なお、室内にセンサを設けるとするとセンサが置かれる場所は必要であり、室内空間の雰囲気を損なわせないことが好ましいが、その点からは現状では十分なものが提供されていなかった。また、屋外にセンサを設けるとすると、そのセンサが検知したデータを無線で飛ばすには障害物(例えば、室内に向けるにしても壁)が多い結果、制御のためのデータの精度の問題が発生してしまう恐れがあり、特許文献1のようにラインで繋ぐ必要性が高いという問題があった。
【0010】
さらに、センサも環境の影響等から劣化するため交換が必要となるが、建設後の設置が困難と同様で、センサの交換も困難という問題も発生していた。
【0011】
また、センサには電源が必要であり、家庭内の電線から電力を得ようとすると、電気工事の資格者による工事が必要という問題があった。
【0012】
故に、本発明は、室内空間への影響を極力抑えつつ、制御に必要な検知データの精度を高いものとしながら、建設後であっても容易にセンサの取り付けを行えて、さらにセンサの交換も容易な環境制御システム等を提供することを第1の目的とする。
【0013】
また、本発明は、第1の目的に加えて、センサへの電力供給が容易で、その維持も容易な環境制御システム等を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点は、室外又は室内の環境状況を表す環境データをセンシングして、室内、室外又は室内外の環境を制御する環境制御システムにおいて、前記環境データを前記室外又は室内でセンシングするセンサ手段と、前記室内に配置され且つ前記センサ手段に電気的に繋がっており、前記センサ手段がセンシングした環境データを前記室内で無線送信する無線送信手段と、前記無線送信手段から送信された前記環境データを前記室内で受信して、前記室内、室外又は室内外の環境を制御する受信制御手段とを備え、前記センサ手段と前記無線送信手段とはセンシングユニット体を構成し、前記センシングユニット体は、前記室内と前記室外との間の壁、床、又は、天井に着脱自在で取り付けられることを特徴とするものである。
【0015】
第1の観点によれば、センシングユニット体が、室内と室外との間の壁、床、又は、天井に着脱自在で取り付けられることから、建設後の設置であっても容易に行え、センサ手段の交換も容易に行える。また、室外、室内に対するいずれのセンサ手段であっても、センシングユニットに収められており、特に室内空間に別途センサ手段を設ける必要がない。さらに、室外、室内に対するいずれのセンサ手段であっても、その検知データの送信は室内空間側からの無線送信であり、ラインを配線する必要はなく、室外(特に屋外)における障害物(例えば壁)による影響を考慮しなくてすむ。
【0016】
本発明の第2の観点は、第1の観点において、前記センシングユニット体は、前記センサ手段及び前記無線送信手段にとっての電源としての電池を内蔵しているものである。
【0017】
第2の観点によれば、電池を使うことから、電気工事の資格者による工事は不要であり、交換も容易に行える。
【0018】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点において、前記壁、床、又は、天井と前記センシングユニット体との間の接合には、気密化又は断熱化が図られた締結具が用いられることを特徴とするものである。
【0019】
第3の観点によれば、気密化又は断熱化が図られることにより、壁等に開けられた穴の場所の気密又は断熱のバラつきを抑えることができる。その結果、劣化が生じることを抑えることができる。
【0020】
本発明の第4の観点は、第1から第3の観点のいずれかにおいて、前記室外は壁体内、床下、又は、屋根裏であり、前記センサ手段は前記壁体内、床下、又は、屋根裏に配置される室外センサ手段を少なくとも有し、前記室外センサ手段は、前記壁体内の前記室内側の壁側、床側、又は、天井側に設けられる内側センサ手段と、前記壁体内の前記室内から離れた外側、地面側、又は、屋根側に設けられる外側センサ手段とを、少なくとも有するものである。
【0021】
この第4の観点によれば、壁体内等に複数のセンサ手段が配置されることになり、1つずつ配置する必要がなく、1回の配置で済むものとできる。
【0022】
本発明の第5の観点は、請求項1に記載の環境制御システムに用いられるセンサ手段と、請求項1に記載の環境制御システムに用いられる無線送信手段とを備えたセンシングユニット体であって、室内と室外との間の壁、床、又は、天井に着脱自在で取り付けられることを特徴とするものである。
【0023】
この観点によれば、建設後でも容易に設置でき、交換も容易なセンサを提供できる。
【0024】
本発明の第6の観点は、室外及び室内の環境状況を表す室外環境データ及び室内環境データをセンシングして、室内、室外又は室内外の環境を制御する環境制御方法において、室外センサ手段が前記室外環境データを前記室外でセンシングし、室内センサ手段が前記室内環境データを前記室内でセンシングし、無線送信手段が、前記室内に配置され且つ前記室外センサ手段及び前記室内センサ手段に電気的に繋がっており、前記室外センサ手段がセンシングした室外環境データ及び前記室内センサ手段がセンシングした室内環境データを前記室内で無線送信し、受信制御手段が、前記無線送信手段から送信された前記室外環境データ及び前記室内環境データを前記室内で受信して、前記室内、室外又は室内外の環境を制御するものである。
【0025】
この第6の観点によれば、室外、室内に対するいずれのセンサ手段であっても、その検知データの送信は室内空間側からの無線送信であり、ラインを配線する必要はなく、室外(特に屋外)における障害物(例えば壁)による影響を考慮しなくてすむ。
【0026】
本発明の第7の観点は、第6の観点において、前記室外センサ手段と前記室内センサ手段と前記無線送信手段とはセンシングユニット体を構成し、前記センシングユニット体は、前記室内と前記室外との間の壁、床、又は、天井に着脱自在で取り付けられることを特徴とするものである。
【0027】
この第7の観点によれば、センシングユニット体が、室内と室外との間の壁、床、又は、天井に着脱自在で取り付けられることから、建設後の設置であっても容易に行え、センサ手段の交換も容易に行えるため、この方法を継続できる。また、室外、室内に対するいずれのセンサ手段であっても、センシングユニットに収められており、特に室内空間に別途センサ手段を設ける必要がなく、ユーザにとっては、快適なものになる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、室内空間への影響を極力抑えつつ、制御に必要な検知データの精度を高いものとしながら、建設後であっても容易にセンサの取り付けを行えて、さらにセンサの交換も容易な環境制御システム等を提供することができる。また、センサへの電力供給が容易で、その維持も容易な環境制御システム等を提供することもできる。その結果、長期優良住宅の普及の実現が現実化できることになる。
【0029】
さらに、現状は、住宅管理方法としては、家屋毎の個別データ管理が主体であり、地域全体の特徴を住宅管理方法に反映できておらず、また、地域特性(気象特性、環境特性)やある時期の特異な気象現象等に関するデータを住宅管理方法に反映できていなかったが、本発明によれば、センサを家屋に網羅的に配置させることにより、地域全体の特徴等も反映した環境制御システム等を提供することも可能になる。その結果、長期優良住宅の普及の実現がより現実化できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる環境制御システムを示す概略ブロック図である。
【
図2】
図1のセンシングユニット体の構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】
図2のセンシングユニット体の詳細を説明するための図であって壁体内に配置されるように壁に取り付けたら状態を示す図である。
【
図4】
図3の取り付け状態をさらに説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0032】
図1は本発明の実施の形態にかかる環境制御システムを示す概略ブロック図である。
【0033】
環境制御システム1は、家屋3の室内5の環境を制御できるものである。また、環境制御システム1は、家屋3の室外である壁体内7、屋根裏9、床下11の環境も制御できるものである。その環境制御のために、環境制御システム1は、室内5と壁体内7との間の壁13に取り付けられたセンシングユニット体19と、室内5と屋根裏9との間の天井15に取り付けられたセンシングユニット体21と、室内5と床下11との間の床17に取り付けられたセンシングユニット体23とを備えている。センシングユニット体19、21、23は、例えば、温度センサ、湿度センサ、音センサを有している。音センサは例えば白蟻のかじる音を検知したり、或いは配管の振動音を検知したりできるものが想定される。これらのセンシングユニット体19、21、23は、壁13、天井15、床17と着脱自在に取り付けられている。
【0034】
環境制御システム1は、室内5に受信制御部24を有している。この受信制御部24は、センシングユニット体19、21、23との間で無線通信を行うことができ、各センシングユニット体19、21、23がセンシングした温度、湿度、音等の環境状況を表すデータを受信し、そのデータに基づいて、室内5の環境を制御し、又は、室外の壁体内7、屋根裏9、床下11の環境を制御し、さらには室内5及び室外の環境を制御できるものとしている。ここで、環境制御は、例えば、室内5のエアコン等の空調制御が挙げられる。
【0035】
環境制御システム1は、さらに、受信制御部24と無線又は有線で接続するビッグデータ部25を有している。このビックデータ部25は、他の家屋27、ホテル29、介護施設31などの室内空間を有する建物に繋がっており、各センシングユニット体からの情報をビッグデータとして集めることができるものとしている。
【0036】
このような着脱自在のセンシングユニット体19、21、23を用いることにより、建設後であっても容易にセンサの取り付けを行えて、さらにセンサの交換も容易な環境制御システムが実現されている。その結果、センサを家屋等に網羅的に配置させることによりビックデータを集めることができ、家屋等毎だけでなく地域全体の特徴を考慮した住宅等管理が可能となり、地域特性(気象特性、環境特性)やある時期の特異な気象現象等に関するデータを住宅等管理に反映できることになる。その結果、長期優良住宅の普及の実現が現実化できることになる。
【0037】
図2は
図1のセンシングユニット体の構成を示す概略ブロック図である。
【0038】
例えば、センシングユニット体19を用いて説明すると、センシングユニット体19は、無線送信部19aと、室内センシング部19bと、室外センシング部19cと、電源部19dと、連結部19eとを備えている。
【0039】
連結部19eは壁13との間で連結される部分であり、この連結部19eは、例えば気密化又は/及び断熱化が図られたネジのような締結具で実現され、ネジの螺合による着脱自在な構成とされている。このような気密性と断熱性を考慮することで、熱橋の原因を抑え、家屋の劣化を発生させない工夫がなされている。室外センシング部19cは、壁体内に配置され、壁体内の環境データのセンシングを可能にしている。室内センシング部19bは、室内5に配置され、室内の環境データのセンシングを可能にしている。無線送信部19aは、室外センシング部19c及び室内センシング部19bに電気的に接続されており、室外センシング部19c及び室内センシング部19bがセンシングした環境データを無線送信できるものとしている。特に、室内センシング19bだけでなく室外センシング部19cがセンシングした環境データも室内に配置される無線送信部19aから無線送信することにより、受信制御部24との間に壁13等の障害がない状態でデータの送受信を行えるようにしているため、データを取り損ねるという不具合を減らしたものにできている。電源部19dは、無線送信部19a、室内センシング部19b、室外センシング部19cの電源として機能し、具体的には電池が使われている。
【0040】
このような構成により、センシングユニット体19は、着脱自在ということから、室内センシング部19b、室外センシング部19c、電源部19dの交換を容易にしており、長い期間の使用に耐えうるセンシングユニット体19が提供されることになっている。
【0041】
図3は
図2のセンシングユニット体の詳細を説明するための図であって壁体内に配置されるように壁に取り付けたら状態を示す図である。
図4は
図3の取り付け状態をさらに説明するための図である。
【0042】
図3及び
図4を用いて、
図2の概略ブロック図での説明よりも詳しく説明する。室内5と壁体内7との間の壁である内壁35には穴が開けられており、その穴からセンシングユニット体41を収めるセンシングユニット体カバー39が取り付けられる。センシングユニット体41の一方端側の先端には無線送信部41aが設けられ、また室内センシング部41bも一方端側に設けられ、無線送信部41a及び室内センシング部41bが室内5に配置されている。センシングユニット体41の他方側には室外センシング部が設けられ、ここでは、室内側壁体内センシング部41cと屋外側壁体内センシング部41dとの二つが設けられており、両者は壁体内7に配置されている。これらの室内側壁体内センシング部41cと屋外側壁体内センシング部41dと対応するセンシングユニット体カバー39の位置には、センシング感度をよくするための穴39b、39cが形成されている。室内側壁体内センシング部41cは内壁35付近の環境データの計測を可能とし、屋外側壁体内センシング部41dは外壁37付近の環境データの計測を可能としている。室内側壁体内センシング部41cと屋外側壁体内センシング部41dとの間には電池41eが設けられており、電池41eの交換用の取り付けネジ41fによって、センシングユニット体41は分離できるものになっている。取り付けネジ41fによって、電池41eだけでなく、例えば、屋外側壁体内センシング41dが故障した場合には、他のものと交換できるようになっている。すなわち、室内センシング部41b、室内側壁体内センシング部41cと屋外側壁体内センシング部41dのいずれかが故障した場合に、センシングユニット体41をすべて交換しなくても済むように工夫されている。ここで、センシングユニット体41とセンシングユニット体カバー39と内壁35とは、互いに気密ネジ42によって締結されている。
【0043】
なお、上記では、壁体内センシング部を二つにしたが、二つに限る必要はなく、例えば、壁体内に配設されている配管のそれぞれの振動を検知するようなセンシング部のその数に合わせて設けてもよい。
【0044】
また、上記では、センシングユニット体の中には、室内センシング部と室外センシング部の両者を設けたが、一方のみでもよい。室内センシング部を設けない場合には、室内側への飛び出し部分は、無線送信部のみを考慮すればよく、最小化できる。また、室内センシング部の有無に関わらず、床11に設ける場合には、お椀型の丸みを帯びた飛び出し部にして、できるだけ室内空間への影響を避けることが好ましい。なお、室内側への飛び出し部分は発生するにしても、壁等に埋め込みにすることで、室内空間への影響は小さくできるので、居住者からすれば、違和感を小さなものにできる。
【0045】
以下、上記のシステムとバイタルデータをIoTで多目的にセンシングし、ビックデータと結び付けて情報処理を行うことにより、家の性能保持の他、健康寿命の延伸、省エネ、セキュリティの観点から最適な暮らしが実現できる点を記載する。
【0046】
まず、設計時に計算された耐震性能は、建設後にどの程度保持されているかという課題に対しては、以下のような対策が取られて効果が得られる。
【0047】
[耐震性能保持]
上記のような環境データのセンシングにより、腐朽菌・白蟻の被害リスクを低減でき、南海トラフ大地震への備えや、対策タイミングの見える化を行えて、被害の最小化に向けた取り組みを行える。
【0048】
次に、住宅環境を適切に制御して、住人の疾病リスクの低減と、健康寿命の延伸という課題に対しては、以下のような対策が取られて効果が得られる。
【0049】
[ヒトの健康寿命の延伸]
SWH(Smart Wellness House)の研究成果に基づき、各部屋間の熱環境・空気環境がとれるセンサをプラスし、さらに、バイタルデータとの相関関係を見える化し、危険な状態になればアラートを行うこともでき、住人に発病リスクを抑える具体的な行動を指導することも可能になる。ここで、SWHは、省エネかつ健康に暮らすことを目的にした住宅であり、「スマートウェルネス住宅等推進モデル事業」の特定部門(国交省)の公募で、「(一社)健康と省エネ住宅を推進する国民会議」が採択を受け、平成27年度から検証、啓蒙事業が開始されており、今に至っている。また、最適な温熱環境・空気環境となるような自動制御を行うことにより、疾病リスクを低減させる温熱環境・空気環境を提供でき、室内環境が適切になることによる住人の活動量を増やし、健康寿命の延伸を図ることができる。なお、SWHの検証データから、冬場の寒さで起こる循環器疾病であるヒートショックと、室内空気環境の汚染(VOCやカビ胞子、ダニの死骸によるハウスダストなど)で起こる呼吸器疾病であるハウスシックについて、住宅で対処された場合に著しいリスクが低減することが分かっている。ここで、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有化合物9とは、揮発性があり、大気中で気体状となる有機化合物(トルエン、キシレン、酢酸エチルなど)の総称であり、環境中へ放出されると、公害などの健康被害を引き起こすと言われており、特に最近では、ホルムアルデヒドによるシックハウス症候群や化学物質過敏症が社会で広く認知されて問題になっている。
【0050】
[医療機関との連携]
かかりつけ医療機関とシステムを連携させることにより、個人・国の医療費の削減、在宅の看取り、地域包括ケア、在宅医療、孤独死、独居老人への未病対策にも展開できる。
【0051】
次に、省エネルギー、省コストの点から、その対策と効果を説明する。
【0052】
[断熱性能保持]
設計時に計算された断熱性能が建設後にどの程度保持されているかという観点でみると、外気温と室内温度の相関関係をモニタリングすることにより、光熱費を抑制し、健康寿命の影響をプラスとし、エネルギー自給率の向上を図ることができる。
【0053】
[太陽光・風・湿度などのパッシブシステムでの自動制御]
特別な動力機器を使わずに、建築設計の工夫によって太陽や自然の風、気温の変化、大地の熱といった自然エネルギーを利用して、暖房や冷房(室内機構調節)を行うことに取り組むことがパッシブシステムであるが、窓の自動開閉システムで温湿度をコントロールし、自動シェードシステムで太陽日射をコントールして住宅環境を省エネで制御することにより、希薄エネルギーの利用や再生エネルギーの利用が可能になる効果が得られる。
【0054】
[冷暖房や加湿除湿器を自動制御]
冷暖房機器などの人工物を効率的に組み合わせることにより、快適な居住空間を確保することを目指した設計手法をアクティブシステムというが、上記のパッシブシステムの次にアクティブシステムを省エネで制御することができる。
【0055】
[HEMSと連動]
HEMS(Home Energy Management System)は、エアコンや照明、家電などを有線や無線でつなぎ、使用している電力をモニターなどで見える化するためのシステムであるが、太陽光発電や蓄電池にも繋げられるので、このようなシステムと連動させることで、電力の見える化による省エネ効果を大きくできる。HEMSだけでなく、家庭の電力消費量を自動で検針するためにネットにつながったメータがスマートメータであるが、これも連動させることができる。すなわち、HEMSとスマートメータをセットにすることにより、CEMS(Community Energy Management System)やAEMS(Area Energy Management System)が実現し、より電力の見える化による省エネ効果を大きくできる。
【0056】
以下、Home Securityの観点から説明する。
【0057】
[火災対策]
火災への対策として取り付ける熱感知器・煙感知器と連動させ、消防、警察に通報するシステムとすることにより、火災時の迅速が対応が可能になる。
【0058】
[防犯]
防犯システムに組み込むことにより、不法侵入を感知し、警察や警備会社に通報し、不法侵入に対する迅速な対応が可能になる。
【0059】
以下、その他の応用を記載する。
【0060】
住宅性能を維持または向上させるための投資判断を客観的にできないかという点からは、下記の展開が想定できる。
【0061】
[生涯住宅コスト(劣化・燃費・医療費)]
上記したようなデータをもとに、その住宅に住み続ける際の生涯コストを計算して、提供できる。それにより、住人は、現状の住宅について健康までをも含めたコストが見える化できる。
【0062】
[住宅改修計画の策定]
生涯住宅コストと性能向上改修計画を比較して、将来投資の意思決定をサポートできる。これにより、トータルな意味で住宅性能を向上したほうが得かどうかの投資判断ができる。
【0063】
上記したようなデータを住宅性能履歴評価システムに蓄積し、適時にその住宅の客観的資産価値を評価できるようにする。ここで、住宅がどのようなつくりで、どのような性能があるか、また、建築後にどのような点検、修繕、リフォームが実施されたか等の記録を保存、蓄積したものが住宅履歴情報であり、この住宅性能履歴評価システムについては、長期優良住宅の普及と促進を契機に、国交省は、住宅を世代を超えて住む継ぐために欠かせないものとして維持保全と一対として重視しており、平成10年から情報発信を続けている。この住宅性能履歴評価システムにより、売手は適切に建ててメンテナスを行うと評価され、買手は建物価値を具体的に知ることができる。その結果、中古市場の活性化にもつながる。
【0064】
[アフターメンテナンスの軽減]
アフターメンテナンスサービスの自動化システムを構築することにより、建てれば建てるほど増えていく住宅メーカのメンテナンスサービスをセンシングで軽減でき、床下や壁の中の状況を把握できれば、定期訪問ではなくても必要な時に必要なメンテナンスを行えることになる。
【0065】
[住宅以外の空間への応用]
電車、船、飛行機、車などの非住宅空間に応用できる。
【0066】
[ペットへの応用]
人だけでなく、自宅内のペットの健康寿命延伸にも展開できる。
【符号の説明】
【0067】
1・・・環境制御システム、5・・・室内、7・・・壁体内、9・・・屋根裏、11・・・床下、19,21,23,41・・・センシングユニット体、19a・・・無線送信部、19b・・・室内センシング部、19c・・・室外センシング部、19d・・・電源部、19e・・・連結部、41a・・・無線送信部、41b・・・室内センシング部、41c・・・室内側壁体内センシング部、41d・・・屋外側壁体内センシング部、41e・・・電池