(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】エンジンの冷却装置
(51)【国際特許分類】
F01P 11/16 20060101AFI20221108BHJP
F01P 7/04 20060101ALI20221108BHJP
F01P 11/04 20060101ALI20221108BHJP
F01P 11/18 20060101ALI20221108BHJP
F02D 35/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
F01P11/16 D
F01P7/04 J
F01P11/04 C
F01P11/18 A
F02D35/00 360B
(21)【出願番号】P 2018140258
(22)【出願日】2018-07-26
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】冨永 敬幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼▲旗▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】西本 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】鮎川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】渡部 晋治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佳太
(72)【発明者】
【氏名】笹田 卓司
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-131820(JP,A)
【文献】特開平08-021242(JP,A)
【文献】特開2009-074381(JP,A)
【文献】特開2015-068292(JP,A)
【文献】特開2016-078596(JP,A)
【文献】特開2017-053269(JP,A)
【文献】特開2017-132362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 7/04
F01P 11/04
F01P 11/16
F01P 11/18
F02D 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ガスを集合させる排気マニホールドと、この排気マニホールドの側方近傍位置において上側から下側に向かって配設された冷却水配管と、この冷却水配管に取り付けられて冷却水の状態を検出するセンサと、前記冷却水配管を流れる冷却水量を調整可能な流量調整手段と、この流量調整手段をエンジンに固定するための取付ブラケットとを備えたエンジンの冷却装置において、
前記センサを前記冷却水配管の上側位置に配置すると共に前記流量調整手段を前記センサの下側位置に配置し、
前記取付ブラケットが、前記排気マニホールドと前記流量調整手段との間に配設され、
前記センサと取付ブラケットとの間に対応する上下方向位置において、前記排気マニホールドと前記センサとの間に遮熱部材を設けたことを特徴とするエンジンの冷却装置。
【請求項2】
前記冷却水配管が、前記エンジンのシリンダヘッドから前後方向一方側に延設された後下方に湾曲するように形成され、
前記遮熱部材と取付ブラケットの間を通過した熱輻射が、前記冷却水配管の湾曲部内側を指向するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの冷却装置。
【請求項3】
前記センサが、前記冷却水配管
をシリンダヘッドに連結する連結部の上側近傍に装着されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの冷却装置。
【請求項4】
前記エンジンのシリンダヘッドに前後方向一方側に突出したリブ部を設け、
前記遮熱部材が、熱輻射を遮熱する本体部と、前記本体部に連なり且つ本体部を前記シリンダヘッドに固定するための固定部と、前記本体部の端部から前記シリンダヘッドに近接すると共に前記リブ部から離間した状態で重複する重複部とを備えたことを特徴とする請求項2に記載のエンジンの冷却装置。
【請求項5】
前記センサが水圧センサであることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のエンジンの冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの冷却装置に関し、特に排気マニホールドの側方近傍位置に配設された冷却水配管に取り付けられたセンサを有するエンジンの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの冷却水を熱交換するラジエータと、このラジエータをバイパスするバイパス通路と、このバイパス通路を開閉操作するサーモスタットと、電動ポンプとからなる冷却系を設け、冷間始動時、冷却水がラジエータをバイパスすることによりエンジンの早期暖機を図っている。サーモスタットが作動異常、所謂全開や半開のような開異常の場合、エンジンが過冷却になり、燃費やエミッション等の悪化を招く。
そこで、サーモスタットの作動異常によるバイパス機能の故障診断(OBD:On Board Diagnosis)が行われている。
【0003】
特許文献1の診断装置は、バイパス流路の開閉を調節するサーモスタットと、シリンダヘッド出口近傍の冷却水温度を検出する水温センサと、冷却水温度に基づいてサーモスタットの状態を診断する診断部とを有し、診断部が、冷却水の放熱量を減少させる放熱量減少制御を実行すると共に、放熱量減少制御の実行に基づいて冷却水温度の上昇量が上昇閾値以上になったとき、サーモスタットの異常を診断している。
【0004】
通常、サーモスタットの開作動温度は、燃費等を考慮して極力高温側に設定されている。
しかし、ワックスタイプのサーモスタットは、応答性が低いことから、冷間始動時であっても負荷が急激に増大した場合、エンジンの温度が過渡的に上昇する懸念がある。
そこで、バイパス通路を開閉操作するサーモスタットに加え、バイパス通路とラジエータへの送水通路とを択一的に強制切替可能な流量調整手段(電動式切替弁)を冷却水経路に設けた冷却系も存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バイパス通路にオンオフバルブのような流量調整手段を設けた場合でも、前述と同様に、作動異常に関する故障診断を行い、バイパス機能の異常時には報知する必要がある。
流量調整手段の故障診断は、作動指令が入力された際、流量調整手段を介して流れる冷却水の温度、流量或いは水圧等を計測することで作動状態を診断することが可能である。
しかし、エンジンの構造上、流量調整手段の故障診断を精度良く行うことができない虞がある。
【0007】
レイアウトの要求から、バイパス通路がエンジンの排気ガスを集合させる排気マニホールドの側方近傍位置に配設された場合、流量調整手段を介して流れる冷却水の温度、流量或いは水圧等を計測するための計測センサも排気マニホールドの近傍位置に配設される。
一般に、計測センサは、制御基板を覆う支持部材、カプラ、コネクタ等合成樹脂部分を多く含んで構成され、この合成樹脂部分の耐熱限界は、約120~130℃である。
これに対し、排気マニホールド近傍の雰囲気温度は200℃以上であり、排気マニホールド周辺に配置された部品は排気マニホールドから放出された熱輻射に晒されている。
それ故、故障診断に用いるセンサの熱害に起因して流量調整手段の動作保証が難しいため、精度の高い故障診断の実行が難しい虞がある。
【0008】
本発明の目的は、高精度の故障診断を実行可能なエンジンの冷却装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のエンジンの冷却装置は、エンジンの排気ガスを集合させる排気マニホールドと、この排気マニホールドの側方近傍位置において上側から下側に向かって配設された冷却水配管と、この冷却水配管に取り付けられて冷却水の状態を検出するセンサと、前記冷却水配管を流れる冷却水量を調整可能な流量調整手段と、この流量調整手段をエンジンに固定するための取付ブラケットとを備えたエンジンの冷却装置において、前記センサを前記冷却水配管の上側位置に配置すると共に前記流量調整手段を前記センサの下側位置に配置し、前記取付ブラケットが、前記排気マニホールドと前記流量調整手段との間に配設され、前記センサと取付ブラケットとの間に対応する上下方向位置において、前記排気マニホールドと前記センサの間に遮熱部材を設けたことを特徴としている。
【0010】
このエンジンの冷却装置では、前記センサを前記冷却水配管の上側位置に配置すると共に前記流量調整手段を前記センサの下側位置に配置したため、流量調整手段の作動に連動した冷却水の流動状態を検出することができる。
前記取付ブラケットが、前記排気マニホールドと前記流量調整手段との間に配設されたため、流量調整手段を保持しつつ、取付ブラケットを排気マニホールドに対して対向配置させることができる。前記センサと取付ブラケットとの間に対応する上下方向位置において、前記排気マニホールドと前記センサの間に遮熱部材を設けたため、排気マニホールドからセンサに進行する直接的な熱輻射を遮熱部材で遮断することができ、遮断されずに遮熱部材を越えた熱輻射を取付ブラケットを介してセンサ以外の領域に誘導することができる。
これにより、排気マニホールドからの熱輻射に起因したセンサの熱害を防止することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記冷却水配管が、前記エンジンのシリンダヘッドから前後方向一方側に延設された後下方に湾曲するように形成され、前記遮熱部材と取付ブラケットの間を通過した熱輻射が、前記冷却水配管の湾曲部内側を指向するように形成されたことを特徴としている。
この構成によれば、熱輻射を冷却水配管の湾曲部内側を利用して拡散することができる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記センサが、前記冷却水配管をシリンダヘッドに連結する連結部の上側近傍に装着されたことを特徴としている。
この構成によれば、流量調整手段の作動に連動した冷却水の流動状態を検出しつつ、遮熱部材と取付ブラケットの間を通過した熱輻射を冷却水配管を用いて遮断している。
【0013】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、前記エンジンのシリンダヘッドに前後方向一方側に突出したリブ部を設け、前記遮熱部材が、熱輻射を遮熱する本体部と、前記本体部に連なり且つ本体部を前記シリンダヘッドに固定するための固定部と、前記本体部の端部から前記シリンダヘッドに近接すると共に前記リブ部から離間した状態で重複する重複部とを備えたことを特徴としている。
この構成によれば、遮熱部材とリブ部とを離間しつつ、遮熱部材とリブ部との隙間から漏れる熱輻射を抑制することができる。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1~4の何れか1項の発明において、前記センサが水圧センサであることを特徴としている。
この構成によれば、水圧センサの熱害を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエンジンの冷却装置によれば、排気マニホールドからの熱輻射に起因したセンサの熱害を防止することにより、精度の高い冷却水制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例1に係るエンジンの冷却装置の概念構成図である。
【
図4】
シリンダブロックとシリンダヘッドとバイパス通路周辺部分を斜め
下方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を直列4気筒レシプロエンジン1に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1について
図1~
図8に基づいて説明する。
エンジン1は、排気マニホールド11の近傍に冷却系の故障診断に用いる水圧センサ9を備えたエンジンである。まず、前提となるエンジン1の冷却系について説明する。
図1に示すように、エンジン1の冷却系は、通常運転時にエンジン1の冷却水が流れる第1循環経路R1と、暖機運転時にエンジン1の冷却水が流れる暖機経路R2と、通常運転時に自動変速機のATF(Automatic Transmission Fluid)7及びオイルクーラ8の冷却水が流れる第2循環経路R3との3つの経路を主な構成要素としている。
【0019】
第1循環経路R1について説明する。
第1循環経路R1は、送水通路L1と、ラジエータ4と、返水通路L2とを備えている。
送水通路L1には、エンジン1のシリンダヘッド2のウォータジャケット(図示略)とラジエータ4とを連通し、その途中部に切替弁5(流量調整手段)が設けられている。
切替弁5は、流動する冷却水温度に基づき、送水通路L1と後述するバイパス通路Bとの間で冷却水の流動方向を択一的且つ電気的に切替可能なオンオフバルブによって構成されている。例えば、冷却水が90℃以上のとき、オフ操作されて送水通路L1を連通すると共にバイパス通路Bを閉塞し、冷却水が90℃未満のとき、オン操作されてバイパス通路Bを連通すると共に送水通路L1を閉塞している。
尚、切替弁5は定常状態としてオフ操作されている。また、冷間時の例外動作として、冷却水が90℃未満であっても、過渡運転状態ではオフ操作されている。
【0020】
返水通路L2は、ラジエータ4とエンジン1のシリンダブロック3のウォータジャケット(図示略)に連結された電動ポンプ6とを連通している。
返水通路L2には、ラジエータ4と電動ポンプ6との間に第1サーモスタットS1が設けられている。第1サーモスタットS1は、例えば、冷却水が90℃以上のとき、返水通路L2を流動可能に連通し、冷却水が90℃未満のとき、返水通路L2を閉塞している。
通常運転時、シリンダブロック3のウォータジャケットからシリンダヘッド2のウォータジャケットに流れた冷却水は、シリンダヘッド2から送水通路L1に流動して、切替弁5を経由後、ラジエータ4に到達する。走行風と熱交換された冷却水は、返水通路L2を流れて電動ポンプ6に到達後、シリンダブロック3のウォータジャケットに向けて圧送される。
【0021】
次に、暖機経路R2について説明する。
図1に示すように、暖機経路R2は、送水通路L1の途中部(切替弁5)と返水通路L2の途中部(電動ポンプ6)とを連通するバイパス通路Bを備えている。このバイパス通路Bは、返水通路L2の第1サーモスタットS1と電動ポンプ6との間に連結されている。
冷間始動等暖機運転時、シリンダヘッド2から流れた冷却水は、切替弁5を介してバイパス通路Bに誘導される。ラジエータ4をバイパスした冷却水は、返水通路L2を流れて電動ポンプ6に到達後、シリンダブロック3のウォータジャケットに向けて圧送される。
【0022】
次に、第2循環経路R3について説明する。
第2循環経路R3は、シリンダヘッド2のウォータジャケットと電動ポンプ6とを連通するATF通路L3を備えている。ATF通路L3には、その途中部に、第2サーモスタットS2と、ATF7と、オイルクーラ8とが設けられている。
第2サーモスタットS2は、例えば、冷却水が60℃以上のとき、ATF通路L3を流動可能に連通し、冷却水が60℃未満のとき、ATF通路L3を閉塞している。
通常運転時、シリンダヘッド2からATF通路L3に流れた冷却水は、ATF7を経由後、オイルクーラ8に到達する。ATF7及びオイルクーラ8で熱交換された冷却水は、電動ポンプ6に到達後、シリンダブロック3のウォータジャケットに向けて圧送される。
【0023】
このエンジン1では、切替弁5の作動異常に起因したバイパス機能の故障診断(OBD:On Board Diagnosis)が行われている。
シリンダヘッド2において送水通路L1及び返水通路L2の各々の接続部近傍の冷却水温度を検出する温度センサ(図示略)と、エンジン1の負荷を検出する負荷センサ(図示略)と、切替弁5の上流側の冷却水圧力を検出する水圧センサ9が設けられている。
検出された各々のセンサの測定値がECU(Electronic Control Unit)に入力され、切替弁5のオフ操作条件が成立したとき、切替弁5にオフ操作指令信号が出力される。
また、ECUは、切替弁5のオフ操作と並行して、バイパス通路Bに流動する冷却水の圧力と判定閾値とを比較し、冷却水圧が判定閾値よりも高い場合、切替弁5の作動異常を報知している。
【0024】
次に、バイパス通路Bの周辺構造について説明する。
図2~
図5に示すように、エンジン1の後部には、切替弁5と、電動ポンプ6と、排気マニホールド11と、ゴム製の配管12と、バイパス通路B等が配設されている。
電動ポンプ6は、回転軸が
前後に延びるようにシリンダブロック3の
左端後部に配設されている。尚、以下、図において、矢印F方向を前方、矢印L方向を左方、
矢印R方向を右方、矢印U方向を上方として説明する。
【0025】
切替弁5は、略円筒状に形成され、その軸心延長線が
右方上り傾斜状に配置されている。
図2に示すように、この切替弁5は、
その後端部に流入部5aと、
その前端部に第1流出部5bと、
その後端下部に第2流出部5cと、中間部分に形成された上下1対のフランジ部5dとを有している。第1流出部5bは、送水通路L1によってラジエータ4に連通され、第2流出部5cは、バイパス通路Bによって電動ポンプ6の導入部に連通されている。
【0026】
図2~
図5に示すように、切替弁5は、板金製取付ブラケット13を介して電動ポンプ
6に締結固定されている。取付ブラケット13は、水圧センサ9の鉛直下方に配設されている。
図6に示すように、取付ブラケット13は、切替弁5が取り付けられる取付面部13aと、この取付面部13aをエンジン1に対して固定する固定部13bと、補強用ビード部13c等を備えている。
【0027】
取付面部13aは、切替弁5の前側部分全域を覆うように傾斜状の平板構造に構成され、左右方向に対して交差するように下側程左方に移行している。
この取付面部13aには、切替弁5の1対のフランジ部5dに夫々対応するように上下1対のボルト穴が設けられ、1対のボルトを介して切替弁5が締結されている。
固定部13bは、取付面部13aの右端部から延設され、1対のボルト穴が形成されている。この固定部13bは、電動ポンプ6の前側縁部に形成された1対のボス部に1対のボルトを介して締結されている。
ビード部13cは、固定部13bの後部中央位置から取付面部13aの中間位置に亙って略J字状に前方に延びるように形成されている。
これにより、取付ブラケット13が、切替弁5と排気マニホールド11との間に介在され、排気マニホールド11から切替弁5に向かう熱輻射を遮断している。
【0028】
図2~
図4に示すように、排気マニホールド11は、シリンダヘッド2の
左壁部に形成された4つの排気開口に夫々接続され、各排気開口からの排気ガスを集合している。
各排気開口から排出された排気ガスは、一旦、
後側排気開口に対応した集合部に集められ、集合された排気ガスは鉛直下方に誘導されている。
排気マニホールド11は、金属板材をプレス加工した3部品を夫々溶接することで形成されている。具体的には、上半部分11aと
、略L字状
の下半部11bと
、略I字状の
後側下半部11cとから構成されている。
【0029】
図2に示すように、配管12は、送水通路L1の一部を構成し、排気マニホールド11の
後側近傍位置において
左方に延設されると共に上側から下側に向かって湾曲した湾曲部を構成している。この配管12は、シリンダヘッド2の後側
左端部に接続され且つ
左方に突出した合成樹脂製の連結部14と切替弁5の流入部5aとを連通している。
尚、配管12及び連結部14が、本発明の冷却水配管に相当している。
【0030】
連結部14の外周上部には、冷却水の圧力を計測する水圧センサ9を装着可能なコネクタが一体形成されている。この水圧センサ9は、連結部14のコネクタに装着された状態で、配管12及び連結部14に対し
て上方に位置している。
図2~
図5に示すように、水圧センサ9と排気マニホールド11との間には、排気マニホールド11から放出される熱輻射を遮断するための遮熱部材15が配設されている。
【0031】
遮熱部材15は、金属製板材をプレス加工して形成されている。
この遮熱部材15は、水圧センサ9と取付ブラケット13との間の上下方向位置において、水圧センサ9と排気マニホールド11との間に配置されている。
また、この遮熱部材15は、左右方向において、水圧センサ9と排気マニホールド11との間に配置されている。
【0032】
これにより、排気マニホールド11から水圧センサ9に向かって放出された直接的な熱輻射を遮断している。また、取付ブラケット13の取付面部13aが下側程左方に移行しているため、遮熱部材15の下方を通過した熱輻射は水圧センサ9の左方に反射され(
図5 破線矢印参照)、或いは配管12の湾曲部内側を通って水圧センサ9の右方に反射されている(
図5 点線矢印参照)。
尚、遮熱部材15と取付ブラケット13の間を通過して取付ブラケット13により鉛直上方に反射された熱輻射は、配管12によって遮断されると共に水圧センサ9の左方又は右方に拡散されている。
【0033】
図7,
図8に示すように、遮熱部材15は、熱輻射を遮熱する本体部15aと、本体部15aをシリンダヘッド2に固定するための固定部15bと、本体部15aの前端部から前方に延びる重複部15cと、本体部15aの下端部に形成された折返し部15dとを一体的に備えている。
【0034】
本体部15aは、略台形状に形成され、上下方向中段部の前後に延びる折曲げ線にて折り曲げられている。
固定部15bは、本体部15aの下側前端部分を右方に屈曲して形成されている。この固定部15bは、シリンダヘッド2の後壁部から後方に突出したボス部2aにボルトを介して締結固定されている。
【0035】
図7,
図8に示すように、重複部15cは、本体部15aの上側前端部分をクランク状に折り曲げて形成されている。この重複部15cは、シリンダヘッド2の後壁部から後方に突出すると共に上下に延びる補強用リブ部2bから離間した状態で左右方向に重複するように配設されている。これにより、遮熱部材15とリブ部2bとの接触音の発生を防止しながら、遮熱部材15とリブ部2bとの隙間を通過する熱輻射を抑制している(
図8 破線矢印参照)。
折返し部15dは、本体部15aの下端部分を右方に屈曲するように形成している。
これにより、遮熱部材15の下方を通過した熱輻射を取付ブラケット13に指向するように誘導している(
図8 点線矢印参照)。
【0036】
次に、上記エンジンの冷却装置の作用、効果について説明する。
このエンジン1の冷却装置によれば、水圧センサ9を配管12に連結された連結部14の上側位置に配置すると共に切替弁5を水圧センサ9の下側位置に配置したため、切替弁5の作動に連動した冷却水の流動状態を検出することができる。
取付ブラケット13が、排気マニホールド11と切替弁5との間に配設されたため、切替弁5を保持しつつ、取付ブラケット13を排気マニホールド11に対して対向配置させることができる。排気マニホールド11と水圧センサ9との間で且つ水圧センサ9と取付ブラケット13との間に遮熱部材15を設けたため、排気マニホールド11から水圧センサ9に進行する直接的な熱輻射を遮熱部材15で遮断することができ、遮断されずに遮熱部材15を越えた熱輻射を取付ブラケット13を介して水圧センサ9以外の領域に誘導することができる。
これにより、排気マニホールド11からの熱輻射に起因した水圧センサ9の熱害を防止することができる。
【0037】
配管12が、エンジン1のシリンダヘッド2から後側に延設された後下方に湾曲するように形成され、遮熱部材15と取付ブラケット13の間を通過した熱輻射が、配管12の湾曲部内側を指向するように形成されたため、熱輻射を配管12の湾曲部内側を利用して拡散することができる。
【0038】
水圧センサ9が、連結部14(配管12)の外周上部に装着されたため、切替弁5の作動に連動した冷却水の流動状態を検出しつつ、遮熱部材15と取付ブラケット13の間を通過した熱輻射を配管12を用いて遮断している。
【0039】
エンジン1のシリンダヘッド2に後側に突出したリブ部2bを設け、遮熱部材15が、熱輻射を遮熱する本体部15aと、本体部15aに連なり且つ本体部15aをシリンダヘッド2に固定するための固定部15bと、本体部15aの前端部からシリンダヘッド2に近接すると共にリブ部2bと離間した状態で重複する重複部15cとを備えたため、遮熱部材15とリブ部2bとを離間しつつ、遮熱部材15とリブ部2bとの隙間から漏れる熱輻射を抑制することができる。
【0040】
センサが水圧センサ9であるため、水圧センサ9の熱害を防止することができ、冷却系の故障診断を高精度で実行することができる。
【0041】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、冷却水の圧力を計測可能な水圧センサの例を説明したが、少なくとも故障診断に用いられ且つ排気マニホールドから熱害の影響を受けるセンサであれば良く、冷却水の温度を検出する温度センサ、或いは冷却水の流量を検出する流量センサに適用しても良い。
また、排気マニホールドの右側近傍位置に配設されたセンサの例を説明したが、配置場所は限られず、左側、上側、下側の何れであっても良い。
【0042】
2〕前記実施形態においては、取付ブラケットと遮熱部材を夫々専用部品とした例を説明したが、他の機能を備えても良い。また、取付ブラケットと遮熱部材を単一部品で構成しても良い。この場合、取付ブラケットと遮熱部材の間を通過する熱輻射を無くすことができる。
【0043】
3〕前記実施形態においては、切替弁をオンオフバルブで構成した例を説明したが、リニアに流量を調整可能な流量調整弁を用いても良い。
【0044】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0045】
1 エンジン
2 シリンダヘッド
2b リブ部
5 切替弁
9 水圧センサ
11 排気マニホールド
12 配管
13 取付ブラケット
14 連結部
15 遮熱部材
15a 本体部
15b 固定部
15c 重複部