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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】エンジンの燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/00 20060101AFI20221108BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20221108BHJP
【FI】
F02M37/00 321B
F02M37/00 301D
B60L50/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019074224
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020172879
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】外園 和昭
(72)【発明者】
【氏名】野崎 修
(72)【発明者】
【氏名】生嶋 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 弘隼
(72)【発明者】
【氏名】松山 一俊
(72)【発明者】
【氏名】伊達 哲也
(72)【発明者】
【氏名】江田 紘基
【審査官】齊藤 彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137001(JP,A)
【文献】特開2012-040893(JP,A)
【文献】特開2014-208518(JP,A)
【文献】特開2009-068349(JP,A)
【文献】特開2010-112228(JP,A)
【文献】特開2006-321413(JP,A)
【文献】特開2010-174900(JP,A)
【文献】特開2011-117337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
B60L 50/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に配置されたエンジンに固定された燃料ポンプと、前記エンジンの下方且つ後方に配置され車幅方向に延びる下部車体メンバと、車体後部に配置された燃料タンクと、前記燃料ポンプと燃料タンクを接続する燃料供給管と、前記燃料タンクと下部車体メンバとの間に配置された電気部品に接続された高電圧ハーネスとを備えた車両に搭載されたエンジンの燃料供給装置において、
前記燃料供給管は、前記燃料タンクから前記下部車体メンバの上側を通って車体前後方向前方に延設された後、上方に延びて前記燃料ポンプに接続され、
前記高電圧ハーネスが、前記燃料供給管と前記下部車体メンバとの間において前記燃料供給管の一部と平面視にて重複するように配索されたことを特徴とするエンジンの燃料供給装置。
【請求項2】
前記高電圧ハーネスが、前記燃料供給管の下方に配置された前記電気部品と前記燃料ポンプの近傍に配設された端子台を接続するワイヤハーネスであることを特徴とする請求項1に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項3】
前記燃料供給管の一部は、平面視にて前記電気部品の上方に配索されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項4】
前記電気部品が、インバータとコンバータの少なくとも一方であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のエンジンの燃料供給装置。
【請求項5】
前記エンジンの後側に配設されたトランスミッションと、
前記エンジンとトランスミッションとの間に配置された車両を駆動可能な電動モータとを有し、
前記端子台は、前記電動モータよりも前側に配置されたことを特徴とする請求項2に記載のエンジンの燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ポンプと燃料供給管と電気部品に接続された高電圧ハーネスとを備えた車両に搭載されたエンジンの燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料の噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレールと、このコモンレール内に蓄圧された高圧燃料をエンジンの各気筒の燃焼室に噴射供給する複数のインジェクタと、燃料タンクから吸引した燃料を高圧化してコモンレールに圧送する高圧燃料ポンプとを備えた蓄圧式燃料噴射装置は知られている(例えば、特許文献1)。
高圧燃料ポンプは、ポンプカムを有するカム軸と、ポンプカムによって往復移動されるプランジャ等を備え、カム軸が、エンジンのシリンダヘッドに配設されたカムシャフトにより回転駆動される。それ故、通常、高圧燃料ポンプは、カムシャフトに近いエンジン上部に配設されている。
【0003】
インバータやコンバータ等の電気部品を備えた車両、例えばハイブリッド車両では、電気部品と燃料タンクとが車体前後方向に並ぶように配置されている。
特許文献2のハイブリッド車両は、燃料タンクが、フロアパネルの下方で且つ前後方向及び幅方向中央部に形成された燃料タンク収容部に配置され、バッテリモジュール、インバータユニット、及びDC/DCコンバータユニットをユニット化したIPUが、燃料タンク収容部よりも後側に位置するリヤフロア上部に形成されたIPU収容部に配置されている。そして、電装配線(高電圧ハーネス)は、フロアパネルの下方であるトンネル部の内側に沿って配索されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-112228号公報
【文献】特開2012-040893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エンジン上部に配設された高圧燃料ポンプは、車両衝突時、ボンネットや上部メンバ等の車体部材或いはエンジンの装備品と干渉して損傷することが懸念される。
高圧燃料ポンプの衝突安全性を考慮したとき、高圧燃料ポンプは、エンジン下部に相当するシリンダブロックの側壁部に装着することが望ましい。
しかし、高圧燃料ポンプをシリンダブロックに装着した場合、高圧燃料ポンプの安全性を確保できるものの、新たな問題を招く虞がある。
【0006】
シリンダブロックの側壁部に装着された高圧燃料ポンプの高さ位置が低いため、燃料タンクと高圧燃料ポンプとを接続する燃料供給管が、フロアパネルの下方を通って高圧燃料ポンプまで配索される。一方、エンジンの下方には、一般に、サスペンションを支持する車幅方向に延びるサスペンションクロスメンバが配設されている。つまり、燃料供給管がサスペンションクロスメンバ上を横切る配置になるため、車両の側面衝突時、サスペンションクロスメンバが山折れ変形して燃料供給管が損傷する虞がある。
即ち、燃料ポンプと燃料供給管を含めた燃料系の衝突安全性には改善の余地が存在する。
【0007】
本発明の目的は、燃料ポンプと燃料供給管を含めた燃料系の衝突安全性を改善可能なエンジンの燃料供給装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1のエンジンの燃料供給装置は、車体前部に配置されたエンジンに固定された燃料ポンプと、前記エンジンの下方且つ後方に配置され車幅方向に延びる下部車体メンバと、車体後部に配置された燃料タンクと、前記燃料ポンプと燃料タンクを接続する燃料供給管と、前記燃料タンクと下部車体メンバとの間に配置された電気部品に接続された高電圧ハーネスとを備えた車両に搭載されたエンジンの燃料供給装置において、前記燃料供給管は、前記燃料タンクから前記下部車体メンバの上側を通って車体前後方向前方に延設された後、上方に延びて前記燃料ポンプに接続され、前記高電圧ハーネスが、前記燃料供給管と前記下部車体メンバとの間において前記燃料供給管の一部と平面視にて重複するように配索されたことを特徴としている。
【0009】
このエンジンの燃料供給装置では、前記燃料供給管は、前記燃料タンクから前記下部車体メンバの上側を通って車体前後方向前方に延設された後、上方に延びて前記燃料ポンプに接続されているため、燃料ポンプをエンジン下部に配置することができ、車両衝突時、燃料ポンプの損傷を抑制することができる。
前記高電圧ハーネスが、前記燃料供給管と前記下部車体メンバとの間において前記燃料供給管の一部と平面視にて重複するように配索されたため、車両衝突時、高電圧ハーネスによって燃料供給管と下部車体メンバとの干渉を回避することができる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記高電圧ハーネスが、前記燃料供給管の下方に配置された前記電気部品と前記燃料ポンプの近傍に配設された端子台を接続するワイヤハーネスであることを特徴としている。
この構成によれば、燃料供給管の下方に配置された電気部品の高電圧ハーネスを利用して燃料供給管の安全性を確保することができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記燃料供給管の一部は、平面視にて前記電気部品の上方に配索されたことを特徴としている。
この構成によれば、電気部品を利用して燃料供給管の安全性を確保することができる。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1~3の何れか1項の発明において、前記電気部品が、インバータとコンバータの少なくとも一方であることを特徴としている。
この構成によれば、インバータとコンバータの少なくとも一方を利用して燃料供給管の安全性を確保することができる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項2の発明において、前記エンジンの後側に配設されたトランスミッションと、前記エンジンとトランスミッションとの間に配置された車両を駆動可能な電動モータとを有し、前記端子台は、前記電動モータよりも前側に配置されたことを特徴としている。
この構成によれば、下部車体メンバと電動モータとの間隔に拘らず電動モータと高電圧ハーネスとを接続することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエンジンの燃料供給装置によれば、別途保護部材を必要とすることなく、燃料ポンプと燃料供給管を含めた燃料系の衝突安全性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1に係る車両の全体構成図である。
図2】車両の底面図である。
図3】側面図である。
図4】インバータ、ハーネス、燃料供給管、及び燃料還流管の斜視図である。
図5図3の要部拡大図である。
図6】燃料フィルタの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明をハイブリッド車両に適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の実施例1について図1図6に基づいて説明する。
まず、本発明に係るエンジンの燃料供給装置が適用される車両Vの全体構成について、図1に基づいて説明する。
図1に示すように、この車両Vは、例えば、第1動力源として直列6気筒ディーゼルエンジン1と、このエンジン1の下流側位置に配設された第2動力源としてのモータジェネレータ(以下、モータと略す。)2と、このモータ2の下流側位置に配設された自動変速機(以下、ATと略す。)3と、駆動力を左右1対の後輪8に対して分配するデファレンシャルギヤ機構(以下、デフ機構と略す。)4と、電力供給機構Eと、燃料供給機構F等を備えたハイブリッド車両である。
【0018】
エンジン1は、車体前部に形成されたエンジンルーム内に気筒配列方向が車体前後方向に沿うように縦置き配置され、燃料供給機構Fから供給される軽油を動力源として駆動される。このエンジン1の出力軸は、後述するフロアパネル9に形成されたトンネル部9aの前側位置(正面)に対応するように配置されている。エンジン1の出力軸とモータ2の回転軸とは、断続可能な第1クラッチ5を介して連結されている。
【0019】
図2図3に示すように、車室床面を形成するフロアパネル9は、車幅方向中央部分に車室内に膨出すると共に前後に延びるトンネル部9aが形成されている。
トンネル部9aの左右両側端部には、フロアパネル9と協働して前後に延びる断面略矩形状の閉断面を形成する左右1対のトンネルサイドフレーム10が夫々設けられている。1対のトンネルサイドフレーム10の左右両側部分には、フロアパネル9と協働して前後に延びる断面略矩形状の閉断面を形成する左右1対のフロアフレーム11が夫々設けられている。トンネル部9aの前端部下方には、車幅方向に延びると共に左右1対の前輪のサスペンションを支持するためのサスペンションクロスメンバ(以下、サスクロスと略す。)12が配設されている。以下、矢印F方向を前方、矢印L方向を左方、矢印U方向を上方として説明する。
【0020】
モータ2は、例えば、48Vで駆動される25kWの永久磁石電動機である。
図2図4に示すように、モータ2は、トンネル部9aとサスクロス12との間において、エンジン1の後端部に同軸上且つ直列的に連結されている。
このモータ2は、電力供給機構Eから供給される電力を動力源として駆動される。モータ2の回転軸とAT3の回転軸とは、断続可能な第2クラッチ6を介して連結されている。
AT3はトンネル部9aに略収容されている。デフ機構4は、AT3の出力軸を介して駆動力が入力され、操舵状態に応じて左右の後輪8に夫々対応した駆動軸7への駆動力分配率を変更可能に構成されている。
【0021】
次に、電力供給機構Eについて説明する。
図1図4に示すように、電力供給機構Eは、バッテリ21と、このバッテリに電気的に接続されたインバータ22と、このインバータ22に電気的に接続されたDC/DCコンバータ(以下、コンバータと略す。)23と、モータ2に電気的に接続された端子台24と、インバータ22と端子台24とを電気的に接続する高電圧ハーネス(以下、ハーネスと略す。)25等を備えている。
【0022】
バッテリ21は、モータ2を作動させる電力を蓄積するための蓄電器である。
このバッテリ21は、例えば、48V、3.5kWhのリチウムイオンバッテリが使用され、トンネル部9aの内部に適宜配置されている。
【0023】
インバータ22は、バッテリ21の直流電流を交流に変換すると共に変換された交流電流をモータ2にハーネス25及び端子台24を介して供給するように構成されている。
図2図4に示すように、短冊状のインバータ22は、パネル状のブラケット26に固定され、トンネル部9aの左側領域において、その長手方向が前後に向かう状態で車体に取り付けられている。インバータ22を載置したブラケット26は、左側部分が、フロアフレーム11にボルトを介して締結固定され、右側部分が、トンネルサイドフレーム10にボルトを介して締結固定されている。
【0024】
コンバータ23は、バッテリ21に蓄積された48Vの電力を12Vに降圧して、車両Vに搭載された12Vで作動可能な電装機器に供給するように構成されている。
図2に示すように、短冊状のコンバータ23は、その前端部がインバータ22の後端部から離間した状態で直列的に接続されると共に、トンネル部9aの左側領域において、その長手方向が前後に向かう状態で車体に取り付けられている。このコンバータ23は、左側部分から突出した固定部がフロアフレーム11にボルトを介して締結固定され、前側部分から突出した固定部がブラケット26の後端部にボルトを介して締結固定されている。
コンバータ23は、側面視にてインバータ22よりも下方に配置されている。
【0025】
端子台24は、インバータ22から供給された電力をモータ2に対して分配している。
モータ2がトンネル部9aとサスクロス12との間に配設され、インバータ22がサスクロス12の後側に配設されているため、モータ2とインバータ22との間には、端子台24を設置するためのスペース確保が難しい。そこで、端子台24を、最後列の気筒のシリンダブロック51の左側壁部下部、具体的には、燃料ポンプ33の下側近傍位置に装着し、配線系統をモータ2まで左側壁部に沿って延設している。
【0026】
図2図4に示すように、ハーネス25は、前後方向に沿って略直線状に延設され、インバータ22の前端部と端子台24の下端部とを電気的に連結している。このハーネス25は、電線と、この電線をシールドする編組シールドと、これらを被覆する絶縁性の外装部から構成された一般的なワイヤハーネスであり、径方向に所定の弾性特性を有している。
また、このハーネス25は、サスクロス12の上方を所定距離離隔して横切るように配索されている。
【0027】
次に、燃料供給機構Fについて説明する。
燃料供給機構Fは、燃料である軽油を貯留可能な扁平状の燃料タンク31と、この燃料タンク31に第1燃料供給管34を介して接続された燃料フィルタ32と、この燃料フィルタ32に第2燃料供給管35を介して接続されると共に前後に延びる前後1対のコモンレール54a,54bに第3燃料供給管36a,36bを介して接続された燃料ポンプ33と、余剰燃料を燃料タンク31まで搬送する燃料還流管37等を主な構成要素としている。
【0028】
図2図3に示すように、燃料タンク21は、フロアパネル9の後端側部分の下方、具体的には、フロアパネル9の後部において後方上り傾斜状に形成されたキックアップ部の下方に左右1対の固定ベルト13によって吊下げ固定されている。この燃料タンク21は、側面視にてインバータ22及びコンバータ23と略同じ高さ位置になる様に配置されている。これにより、燃料タンク21は、保有する熱量を前側近傍位置に配置された燃料フィルタ32に対して付与している。
【0029】
図2図3図6に示すように、燃料フィルタ32は、略楕円筒状に形成され、その軸心が前後に延びるように車体に対して取り付けられている。フロアパネル9の下側に配置された燃料フィルタ32は、前後方向において、コンバータ23と燃料タンク31との間に配置され、左右方向において、トンネルサイドフレーム10とフロアフレーム11との間に配置されている。燃料フィルタ32の外周には、前後1対の左側ブラケットb1と、右側ブラケットb2とが固定されている。1対の左側ブラケットb1は、フロアフレーム11にボルトを介して締結され、右側ブラケットb2は、トンネルサイドフレーム10にボルトを介して締結されている。
【0030】
燃料フィルタ32は、金属製のケースと、このケースに収容された補強材や不織布等のフィルタエレメント(図示略)と、電気ヒータ(図示略)等によって構成されている。この燃料フィルタ32のケースの前壁部には、前方に延びる導入部32aが形成され、後壁部には、後方に延びる導出部32bが形成されている。
【0031】
第1燃料供給管34は、略直線状に延設される領域を金属製配管34aで形成され、導入部32aに接続された湾曲状の前端領域をゴム製配管34bで形成されている。第2燃料供給管35は、略直線状に延設される領域を金属製配管35aで形成され、導出部32bに接続された湾曲状の後端領域をゴム製配管35bで形成されている。
それ故、第1,第2燃料供給管34,35には、燃料フィルタ32の上部近傍領域において、交差部分と並行部分とが夫々存在している。
【0032】
図6に示すように、燃料フィルタ32の上部には、第1,第2燃料供給管34,35に加えて、金属製の燃料還流管37及び左右2本の金属製ブレーキ液パイプ14が前後に延びると共に各々が近接して配索されている。これらの配管14,34,35,37は、3つの金属製クリップc1~c3を用いて燃料フィルタ32の上部で夫々連結されている。
クリップc1は、燃料フィルタ32の前部上方にて第2燃料供給管35(35a)と燃料還流管37と2本のブレーキ液パイプ14を連結している。クリップc2は、クリップc1の後方にて第1,第2燃料供給管34(34a),35(35a)と燃料還流管3を連結している。クリップc3は、クリップc2の後方にて第1燃料供給管34(34a)と燃料還流管37と2本のブレーキ液パイプ14を連結している。
【0033】
図3図5に示すように、燃料ポンプ33は、エンジン1の左側壁部にボルトを介して締結固定されている。具体的には、最後列の気筒の吸気マニホールド53の下側で且つシリンダブロック51の中段部に装着されている。この燃料ポンプ33は、低圧ポンプ機能と高圧ポンプ機能を一体的に備えている。低圧ポンプ機能によって、燃料タンク31から燃料ポンプ33まで第1,第2燃料供給管34,35を介して燃料を搬送し、高圧ポンプ機能によって、燃料ポンプ33から1対のコモンレール54a,54bまで第3燃料供給管36a,36bを介して燃料を圧送している。
【0034】
燃料ポンプ33の余剰燃料は、燃料ポンプ33の前側近傍位置に設置されたリターン集合部49に集められ、その後、燃料還流管37を流れて燃料タンク31に還流される。
図3図4に示すように、第2燃料供給管35及び燃料還流管37は、燃料フィルタ32上からエンジン1付近までの領域において、インバータ22及びコンバータ23の上部を前後に延びるように並設された後、屈曲して上方に延びている。
インバータ22の上部には、クリップc4と、このクリップc4の後側のクリップc5とが設けられ、第2燃料供給管35及び燃料還流管37の途中部が固定されている。
【0035】
第2燃料供給管35及び燃料還流管37は、サスクロス12の上方を所定距離離隔して横切るように配索されている。第2燃料供給管35及び燃料還流管37とサスクロス12との間には、弾性特性を備えたハーネス25が所定間隔を空けて配索されている。
具体的には、ハーネス25が、第2燃料供給管35及び燃料還流管37とサスクロス12との間において、第2燃料供給管35及び燃料還流管37の一部と平面視にて重複するように配設されている。これにより、車両側突時、サスクロス12が山折れ変形しても、ハーネス25が緩衝部材として介在し、第2燃料供給管35及び燃料還流管37とサスクロス12との直接的な干渉を回避している。
【0036】
図5に示すように、燃料ポンプ33は、略L字状に形成された2連ポンプであって、低圧フィードポンプ(図示略)と、前側の3気筒に装着されたインジェクタ55にコモンレール54aを介して燃料を供給する第1高圧ポンプ部33aと、後側の3気筒に装着されたインジェクタ55にコモンレール54bを介して燃料を供給する第2高圧ポンプ部33bとを備えている。この燃料ポンプ33は、エンジン1のカムシャフト及びクランクシャフトにベルト部材(何れも図示略)を介して回転駆動される
【0037】
コモンレール54a,54bに蓄積された高圧燃料は、各気筒のシリンダヘッド52に設けられたインジェクタ(図示略)に分配され、所定の噴射タイミングにて燃焼室に夫々噴射される。図5に示すように、コモンレール54a,54bの余剰燃料は、単一のコモンレール還流管39に集合されてリターン集合部49に送られている。同様に、各インジェクタ55の余剰燃料は、単一のインジェクタ還流管40に集合されてリターン集合部49に送られ、燃料ポンプ33の余剰燃料は、ポンプ還流管38を介してリターン集合部49に送られている。燃料ポンプ33、コモンレール54a,54b、及び各インジェクタ55の余剰燃料は、リターン集合部49に集められた後、燃料還流管37により燃料タンク31にリターンされる。
【0038】
次に、本発明の実施形態によるエンジンの燃料供給装置の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、第2燃料供給管35は、燃料タンク31からサスクロスメンバ12の上側を通って前方に延設された後、上方に延びて燃料ポンプ33に接続されているため、燃料ポンプ33をエンジン1下部に配置することができ、車両衝突時、燃料ポンプ33の損傷を抑制することができる。ハーネス25が、第2燃料供給管35とサスクロスメンバ12との間において第2燃料供給管35の一部と平面視にて重複するように配索されたため、車両衝突時、ハーネス25によって第2燃料供給管35とサスクロスメンバ12との干渉を回避することができる。
【0039】
ハーネス25が、第2燃料供給管35の下方に配置されたインバータ22と燃料ポンプ33の近傍に配設された端子台24を接続するワイヤハーネスであるため、第2燃料供給管35の下方に配置されたインバータ22のハーネス25を利用して第2燃料供給管35の安全性を確保することができる。
【0040】
第2燃料供給管35の一部は、平面視にてインバータ22の上方に配索されたため、インバータ22を利用して第2燃料供給管35の安全性を確保することができる。
【0041】
電気部品が、インバータ22とコンバータ23であるため、インバータ22とコンバータ23を利用して第2燃料供給管35の安全性を確保することができる。
【0042】
エンジン1の後側に配設されたAT3と、エンジン1とAT3との間に配置された車両Vを駆動可能なモータ2とを有し、端子台24は、モータ2よりも前側に配置されたため、サスクロスメンバ12とモータ2との間隔に拘らずモータ2とハーネス25とを接続することができる。
【0043】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、6気筒のディーゼル縦置きエンジンの例について説明したが、エンジン種類、気筒数、型式、配置形態等は任意に設定することが可能であり、例えば、4気筒ガソリンエンジンであっても良い。また、ハイブリッド車両の例について説明したが、少なくともエンジンと燃料タンクと燃料ポンプと電気部品を備えた車両であれば良く、ハイブリッド車両に限られない。
【0044】
2〕前記実施形態においては、電気部品としてインバータ22とコンバータ23とを備えた例について説明したが、インバータ22とコンバータ23のうち何れか一方であっても良い。また、高電圧ハーネス25に接続される電気部品は、特に、インバータ22とコンバータ23に限られず、バッテリ、キャパシタ等であっても良い。
【0045】
3〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0046】
1 エンジン
2 モータ
3 AT
12 サスクロスメンバ
22 インバータ
23 コンバータ
24 端子台
25 ハーネス
31 燃料タンク
33 燃料ポンプ
35 第2燃料供給管
V 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6