(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】生体情報検出装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 7/08 20060101AFI20221108BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20221108BHJP
A61C 19/04 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A61C7/08
A61B5/11
A61C19/04 Z
(21)【出願番号】P 2018141421
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005038
【氏名又は名称】セイコーグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592019213
【氏名又は名称】学校法人昭和大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 宜史
(72)【発明者】
【氏名】槇 宏太郎
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0000565(US,A1)
【文献】特開2017-047206(JP,A)
【文献】国際公開第2012/064684(WO,A2)
【文献】特開2005-192938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/08
A61B 5/11
A61C 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に設置される生体情報検出装置であって、
前記口腔内の歯に付与される外力を検出するセンサと、
前記センサを密封する封止部材と、
前記口腔内の歯茎に取り付けられて前記封止部材を保持可能な保持部材
と、
前記センサに電力を供給する電池と、
前記電池からの電力供給を受けて前記センサからの出力信号に基づきデータ信号を生成する信号処理部と、
前記電池からの電力供給を受けて前記信号処理部からの前記データ信号を外部装置に送信可能であると共に前記外部装置からの制御信号を受信可能である送受信部と
を有
し、
前記電池、前記信号処理部および前記送受信部は、前記歯茎に取り付けられる前記保持部材に封止されている
生体情報検出装置。
【請求項2】
前記センサは、前記封止部材を介して前記歯の側面と対向するように配置されている
請求項1記載の生体情報検出装置。
【請求項3】
前記封止部材は第1の部分および第2の部分を有し、
前記センサは、前記第1の部分を介して頬の内面と対向すると共に前記第2の部分を介して前記歯の側面と対向するように配置されている
請求項1記載の生体情報検出装置。
【請求項4】
前記封止部材は第1の部分および第2の部分を有し、
前記センサは、前記第1の部分を介して舌と対向すると共に前記第2の部分を介して前記歯の側面と対向するように配置されている
請求項1記載の生体情報検出装置。
【請求項5】
前記封止部材および前記保持部材は、熱可塑性高分子化合物により形成されている
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項6】
前記センサは、歪センサまたは圧力センサである
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項7】
前記保持部材および前記封止部材は、一体に形成されたマウスピースである
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項8】
前記歯は、歯科治療が施されている天然歯、義歯またはインプラントである
請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の生体情報検出装置。
【請求項9】
口腔内に設置される生体情報検出装置の製造方法であって、
前記口腔内の歯に付与される外力を検出するセンサ
と、前記センサに電力を供給する電池と、前記電池からの電力供給を受けて前記センサからの出力信号に基づきデータ信号を生成する信号処理部と、前記電池からの電力供給を受けて前記信号処理部からの前記データ信号を外部装置に送信可能であると共に前記外部装置からの制御信号を受信可能である送受信部とを有する生体情報検出モジュールを用意することと、
前記
生体情報検出モジュールを一対の封止フィルムの間に挟んだのち、前記一対の封止フィルムを加熱しつつモールド成型することにより、前記センサが密封された封止部材
と、前記口腔内の歯茎に取り付けられて前記封止部材を保持すると共に前記電池、前記信号処理部および前記送受信部を封止する保持部材とを一括形成することと
を含む生体情報検出装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被験者の生体情報を検出する生体情報検出モジュールおよびそれを備えた生体情報検出装置、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、口腔内に設置して生体情報を得る生体モニタがいくつか提案されている(例えば特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-167120号公報
【文献】米国特許第8771149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような装置においては、高い安全性を確保しつつ、長期に亘って正確な動作が維持されることが望まれる。よって、安全性および長期信頼性に優れた生体情報検出モジュールおよび生体情報検出装置、ならびにそれらの製造方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係る生体情報検出装置は、口腔内に設置されるものであって、口腔内の歯に付与される外力を検出するセンサと、そのセンサを密封する封止部材と、歯および口腔内の歯茎のうちの少なくとも一方に取り付けられて封止部材を保持可能な保持部材と、封止部材に封止され、センサに電力を供給する電池と、封止部材に封止され、電池からの電力供給を受けてセンサからの出力信号に基づきデータ信号を生成する信号処理部と、封止部材に封止され、電池からの電力供給を受けて信号処理部からのデータ信号を外部装置に送信可能であると共に外部装置からの制御信号を受信可能である送受信部とを有するものである。ここで、電池、信号処理部および送受信部は、歯茎に取り付けられた保持部材に配置されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一実施の形態に係る生体情報検出装置によれば、センサが封止部材により密封されているので、センサに対する高い防水性と、生体に対する高い安全性との双方が確保され、優れた長期信頼性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の一実施の形態に係る生体情報検出装置の外観を表す斜視図である。
【
図2】
図1に示した生体情報検出装置の概略断面構成例を表す垂直断面図である。
【
図3】
図1に示した生体情報検出装置の概略断面構成例を表す水平断面図である。
【
図4】
図1に示した生体情報検出装置の、口腔内での設置例を表す斜視図である。
【
図5】
図1に示した生体情報検出装置の全体構成例を表すブロック図である。
【
図6A】
図1に示した生体情報検出装置の製造方法の一工程を表す説明図である。
【
図7】本開示の変形例1としての生体情報検出装置の概略構成例を表す断面図である。
【
図8】本開示の変形例2としての生体情報検出装置の概略構成例を表す斜視図である。
【
図9】本開示の変形例2としての生体情報検出装置の概略構成例を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(歯の外側の側面と対向するように配置された応力検出センサを密封したマウスピース状の生体情報検出装置の例。)
2.変形例
変形例1(歯の内側の側面と対向するように配置された応力検出センサを密封したマウスピース状の生体情報検出装置の例。)
変形例2(センサと電池等とが分離して配置された生体情報検出モジュールを備えた生体情報検出装置の例。)
3.その他の変形例
【0009】
<1.実施の形態>
[生体情報検出装置1の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る生体情報検出装置1の概略構成例を模式的に斜視図にて表したものである。また、
図2は、生体情報検出装置1の概略構成例を模式的に表す垂直断面図であり、
図1に示したII-II切断線に沿った矢視方向の断面を示している。また、
図3は、生体情報検出装置1の概略構成例を模式的に表す水平断面図である。また、
図4は、生体情報検出装置1の使用状態の一例を表す斜視図である。さらに
図5は、生体情報検出装置1に含まれる生体情報検出モジュール2の構成を表すブロック図である。
【0010】
図4に示したように、生体情報検出装置1は、生体内、例えば口腔内に設置されるものであって、より具体的には、一部の歯Tを覆うように設置される。なお、歯Tは、例えば歯科治療が施されている天然歯、義歯またはインプラントである。
【0011】
図1に示したように、生体情報検出装置1は、口腔内の、例えば歯Tに装着可能であるシェル10と、そのシェル10に内蔵された生体情報検出モジュール2とを備えている。なお、シェル10は、歯Tと共に、歯茎Gの一部をも覆うように形成されてもよい。
【0012】
シェル10は、
図1~3に示したように、歯Tを覆うマウスピース状のものであり、例えば熱可塑性高分子化合物などにより構成されている。熱可塑性高分子化合物としては、例えばポリエチレン、ポリウレタンおよびアクリルなどを含有するものが適用できる。生体情報検出モジュール2は、シェル10のうち、歯Tの側面を覆う封止部分10Aに埋め込まれている。封止部分10Aは、外側部分101と、内側部分102とを含んでいる。外側部分101は、シェル10のうち、生体情報検出モジュール2の外側、すなわち、歯Tに装着した際(
図2および
図3参照)において生体情報検出モジュール2から見て歯Tと反対側を覆う部分である。内側部分102は、生体情報検出モジュール2の内側、すなわち歯Tに装着した際(
図2B参照)において生体情報検出モジュール2と歯Tとの間に挟まれる部分である。内側部分102は、生体情報検出モジュール2と反対側に、歯Tの側面TS1と当接することとなる内面102Sを有している。このように、生体情報検出モジュール2はシェル10に密封されるように埋め込まれているので、口腔内の唾液や飲料等の水分、および外気から確実に遮断される。したがって、シェル10は、生体情報検出モジュール2を封止する、本発明の「封止部材」に対応する一具体例である。また、外側部分101は本発明の「第1の部分」に対応する一具体例であり、内側部分102は本発明の「第2の部分」に対応する一具体例である。なお、
図1では、説明の都合上、視認性を向上させるため、シェル10のうち生体情報検出モジュール2を覆う外側部分101を取り去った状態を表している。しかしながら、実際には生体情報検出モジュール2はシェル10の外側部分101により覆われることとなるので、外部から視認することはできない。
【0013】
シェル10は、さらに、封止部分10Aの内側部分102と対向する対向部分10Bを有している。封止部分10Aの内側部分102と対向部分10Bとの間には、歯Tが挿入されることとなる空間10Vが形成されている(
図2および
図3参照)。封止部分10Aの内側部分102および対向部分10Bは本開示の「把持部」に対応する一具体例であり、
図2および
図3に示したように、空間10Vに歯Tが挿入された状態において歯Tを把持するようになっている。したがって、シェル10は、口腔内において生体情報検出モジュール2を保持する、本発明の「保持部材」に対応する一具体例でもある。すなわち、本実施の形態では、シェル10は、保持部材および封止部材が一体に形成されたマウスピースである。
【0014】
生体情報検出モジュール2は、例えば実装基板11に、電池6と、送受信モジュール8と、センサ5とが配置されたものである(
図1~3参照)。
【0015】
実装基板11は、例えば配線がプリントされたシート状のフレキシブル基板である。
【0016】
電池6は、センサ5および送受信モジュール8に対し、それらセンサ5および送受信モジュール8を駆動するための電力を供給する電源として機能する。電池6は、例えばボタン型やコイン型の一次電池である。あるいは、電池6として、非接触充電が可能なものであれば、二次電池を適用してもよい。さらに、電池6の構造は特に限定されるものではなく、例えば金属箔とラミネートフィルムとを貼り合わせた外装を有し、可撓性に優れた電池であってもよい。
【0017】
送受信モジュール8は、例えば
図5に示したように、いずれもシェル10に封止された送受信部3および信号処理部4を有している。一般的には、送受信部3と信号処理部4とが一体化されたチップで流通している。送受信部3は、生体情報検出モジュール2の外部に設けられたネットワーク接続器7との無線方式でのデータ通信を行うアンテナである。なお、ネットワーク接続器7は、パーソナルコンピュータやタブレット端末、あるいはスマートフォンなどの、インターネット等のネットワークに接続可能な通信デバイスである。また、信号処理部4は、例えばメモリやマイクロプロセッサ、アナログ-デジタル(A/D)コンバータなどを含む信号処理回路である。信号処理部4には、センサ5からの検出信号(出力信号)が入力されるようになっている。信号処理部4は、電池6からの電力供給を受けて駆動し、センサ5からの出力信号に基づき、送受信部3において送信可能なデジタルデータ信号を生成する。送受信部3は、電池6からの電力供給を受けて駆動し、信号処理部4からのデジタルデータ信号を、ネットワーク接続器7を介して外部ネットワークに無線送信可能である。さらに、送受信部3は、外部ネットワークからの制御信号を、ネットワーク接続器7を介して無線受信可能である。なお、
図1等では、実装基板11が矩形状の平面形状を有し、電池6と、送受信モジュール8と、センサ5とが一列に並ぶように配置されているが、本開示はそれに限定されるものではなく、電池6、送受信モジュール8およびセンサ5のレイアウトを任意に設定できる。
【0018】
センサ5は、例えば歪みセンサや圧力センサであり、歯Tに印加される物理量、例えば歯Tと接する頬の応力を検出するものである。センサ5としては、例えば箔歪ゲージ、線歪ゲージ、半導体歪ゲージ、磁歪センサ、圧電センサなどが挙げられる。
【0019】
図2に示したように、センサ5は、シェル10を介して歯Tの側面TS1と対向するように配置されている。より具体的には、センサ5は、外側部分101を介して頬CHの内面と対向すると共に内側部分102を介して歯Tの側面TS1と対向するように配置されている。したがって、センサ5は、頬CHの内面と歯Tの側面TS1との間に挟まれ、頬CHの内面から受ける応力を検出するようになっている。
【0020】
[生体情報検出装置1の製造方法]
次に、生体情報検出装置1の製造方法について、上記
図1~
図4に加えて
図6Aおよび
図6Bを参照して説明する。
図6Aは、生体情報検出装置1の製造方法の一工程を表す説明図であり、
図6Bは、
図6Aに続く一工程を表す説明図である。なお、
図6Aおよび
図6Bは、本製造工程の説明に関する主要な部材のみを記載した概略図である。
【0021】
この生体情報検出装置1を製造するにあたっては、まず、上述の生体情報検出モジュール2を用意する。次に、この生体情報検出モジュール2を、例えば
図8Aに示したように、熱可塑性高分子化合物からなる2枚の封止フィルム9A,9Bの間に載置する。ここで、封止フィルム9Aは保持部材21に保持されており、封止フィルム9Bは保持部材21に保持されている。その一方で、この生体情報検出装置1を装着する予定のユーザの歯Tおよび歯茎Gに整合した歯型23を用意する。歯型23は、例えば型押しや3Dプリンタなどにより成形することができる。そののち、封止フィルム9A,9Bのうちのセンサ5の近傍部分を、ヒータ24により280℃程度の温度で加熱しつつ、
図6Bに示したように、歯型23を封止フィルム9A,9Bに押し付けてモールド成形を行う。なお、ヒータ24による加熱温度は上述の280℃に限定されるものではなく、例えば100℃~300℃の範囲で任意に設定可能である。モールド成形の際には、歯型23の抜き穴23Hから歯型23と封止フィルム9A,9Bとの隙間の空気を排出することで、歯型23の表面23Sと封止フィルム9A,9Bとを密着させる。これにより、封止フィルム9A,9Bが歯型23の表面23Sに沿った形状に変形しつつ、溶着される。そののち、歯型23および溶着された封止フィルム9A,9Bを冷却することにより、マウスピース状のシェル10が得られる。最後に、シェル10を歯型23から剥離することにより、生体情報検出装置1が得られる。このように、シェル10を、モールド成型により一括形成するようにしたので、効率的に生体情報検出装置1を製造することができる。なお、
図6Aおよび
図6Bでは、極めて簡略化された形状の表面23Sを有する歯型23を例示しているが、実際には歯型23の表面23Sは個々のユーザに応じた固有の形状を有する。
【0022】
[作用・効果]
このように、本実施の形態の生体情報検出モジュール2および生体情報検出装置1によれば、センサ5により生体情報を含む出力信号を取得し、その出力信号を、信号処理部4を介して送受信部3からネットワーク接続器7へ送信し、さらには外部のネットワークへ送信することができる。この出力信号を解析することにより、生体情報検出装置1が装着されるユーザである患者の頬CHから歯Tに印加される応力を測定することができる。このため、歯Tが歯科治療中、もしくは歯科治療済みの天然歯であれば、その構造物強度情報や歯列診断情報を得ることができる。それらの情報は、例えば義歯やインプラント等の人工歯や人工歯根を形成する際に活用することができるので、ユーザ本人や担当医にとって非常に有益な情報となりうる。
【0023】
また、センサ5により、センサ5が装着された歯Tに印加される応力を検出することができるので、生体情報検出モジュール2を歯列矯正用マウスピースに内蔵させるようにすれば、歯列矯正の効果を正確に、かつタイムリーに検出することができる。すなわち、この場合、歯列矯正用マウスピースが歯Tに対してどの程度の応力を印加しているのかを正確に検出することができる。したがって、センサ5からの検出情報は、例えば、歯列矯正用マウスピースの作製や装着にあたり、その歯列矯正用マウスピースが適切なものかどうかの判断材料に資する。また、歯列矯正用マウスピースを口腔内に装着した当初におけるセンサ5が検出する応力と比較して、所定時間経過後のセンサ5が検出する応力がどの程度減少しているのかを検出することで、測定対象の歯Tの移動量を推定できる。従来、歯列矯正用マウスピースの交換時期は、一般には装着時間を管理することで判断されていた。これに対し、生体情報検出モジュール2は、センサ5により歯Tの移動量を推定できるので、歯列矯正用マウスピースの最適な交換時期をより正確に判断することができる。
【0024】
また、従来の技術においても、例えば上述の特許文献1および特許文献2などに開示されているように、口腔内にセンサを設置して生体情報を検出することは試みられていた。しかしながら、センサモジュールにおけるセンサの一部もしくはセンサ全体や、センサモジュールにおけるその他の構成部材の一部もしくはその他の構成部材の全部が口腔内に暴露されている。このため、生体への影響が懸念されるうえ、センサの劣化やセンサモジュールの劣化が生じやすいと考えられる。これに対し、生体情報検出モジュール2および生体情報検出装置1によれば、センサ5は封止部材としてのシェル10により密封されているので、高い防水性および高い安全性が確保される。よって、生体情報検出モジュール2および生体情報検出装置1は、従来の生体情報検出モジュールに比べて長期信頼性に優れる。
【0025】
さらに、生体情報検出モジュール2および生体情報検出装置1では、シェル10の封止部分10Aの内側部分102を介して歯Tと対向するようにセンサ5が設けられている。このため、センサ5に対し、例えば頬CHから応力が印加された場合に、センサ5およびその周囲のシェル10の沈み込みが比較的小さくなる。よって、頬CHからの応力を、高い精度で検出することができる。すなわち、一般的な歪センサは、高い剛性を有するプレート上に配設されることで検出精度を高めているところ、本実施の形態では、硬い歯Tの存在により、高い剛性を有するプレートに相当するものを別途用意する必要がない。よって、生体情報検出モジュール2および生体情報検出装置1は小型化に有利である。
【0026】
さらに、生体情報検出装置1によれば、シェル10の封止部分10Aと対向部分10Bとの間に歯Tを挟持するようにしたので、センサ5と、頬CHの内面との相対位置が安定し、検出精度の向上が見込める。
【0027】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1,2)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0028】
[変形例1]
上記実施の形態の生体情報検出装置1は、歯Tの外側の側面TS1と対向するようにセンサ5を配置することで、口腔内の頬CHの内面からの応力をセンサ5により検出するようにしたものである。これに対し、
図7に示した本発明の変形例1の生体情報検出装置1Aは、歯Tの内側の側面TS2と対向するようにセンサ5を配置することで、口腔内の舌LLからの応力をセンサ5により検出するようにしたものである。すなわち、生体情報検出装置1Aでは、センサ5は、外側部分101を介して舌LLと対向すると共に内側部分102を介して歯Tの側面TS2(
図2,3,7参照)と対向するように配置されている。生体情報検出装置1Aは、これらの点を除き、他は上記実施の形態の生体情報検出装置1と実質的に同じ構成を有する。この生体情報検出装置1Aにおいては、生体情報検出装置1Aが装着されるユーザである患者の舌LLから歯Tに印加される応力を測定することができる。よって、生体情報検出装置1Aにおいても、上記実施の形態の生体情報検出装置1と同様の効果が得られる。
【0029】
[変形例2]
図8は、本開示の変形例2としての生体情報検出装置1Bの概略構成を表す斜視図である。また、
図9は、
図8に示した生体情報検出装置1Bの概略構成を表す垂直断面図であり、
図8に示したIX-IX 切断線に沿った矢視方向の断面を示している。生体情報検出装置1Bでは、生体情報検出モジュール2のうちセンサ5が歯Tの外側の側面TS1と対向する位置に配置され、電池6や送受信モジュール8などのその他の部分は歯茎Gと対向する位置に配置される。生体情報検出装置1Bにおけるシェル10は、生体情報検出モジュール2のうちのその他の部分を封止する封止部分10Cをさらに有している。封止部分10Cは、本発明の「保持部材」の一部を構成している。生体情報検出装置1Bでは、センサ5と電池6および送受信モジュール8とが配線12により繋がれている。生体情報検出装置1Bは、これらの点を除き、他は上記実施の形態の生体情報検出装置1と実質的に同じ構成を有する。この生体情報検出装置1Bにおいても、上記実施の形態の生体情報検出装置1と同様の効果が得られる。また、生体情報検出装置1Bでは、生体情報検出モジュール2のうち、センサ5とその他の部分とを分離して口腔内に配置するようにしたので、口腔内の装着箇所の自由度が向上する。装着箇所のスペースが狭い場合に有効である。
【0030】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0031】
例えば、上記実施の形態等では、連続する2つの歯冠部を覆うように装着されるシェル10を有する生体情報検出装置1を例示したが、本開示の生体情報検出装置はこれに限定されるものではない。本開示の生体情報検出装置は、例えば1つの歯冠部のみを覆うように装着されるシェルを有するものであってもよいし、3以上の歯冠部を覆うように装着されるシェルを有するものであってもよい。但し、誤飲防止を考慮すると、できる限り大きなシェルを有することが望ましく、例えば下顎の全ての歯もしくは上顎の全ての歯を覆うサイズのシェルを有することがより望ましい。
【0032】
また、上記実施の形態では、生体情報検出装置が1つの応力検出センサを有する場合について説明したが、本開示の生体情報検出装置は2以上の応力検出センサを有するようにしてもよい。また、応力検出センサに加えて、光センサや加速度センサなど、他のセンサを併せて搭載するようにしてもよい。さらに、上顎および下顎の双方に生体情報検出装置を装着するようにしてもよい。
【0033】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0034】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
口腔内に設置される生体情報検出装置であって、
前記口腔内の歯に付与される外力を検出するセンサと、
前記センサを密封する封止部材と、
前記歯および前記口腔内の歯茎のうちの少なくとも一方に取り付けられて前記封止部材を保持可能な保持部材と
を有する生体情報検出装置。
(2)
前記センサは、前記封止部材を介して前記歯の側面と対向するように配置されている
上記(1)記載の生体情報検出装置。
(3)
前記封止部材は第1の部分および第2の部分を有し、
前記センサは、前記第1の部分を介して頬の内面と対向すると共に前記第2の部分を介して前記歯の側面と対向するように配置されている
上記(1)記載の生体情報検出装置。
(4)
前記封止部材は第1の部分および第2の部分を有し、
前記センサは、前記第1の部分を介して舌と対向すると共に前記第2の部分を介して前記歯の側面と対向するように配置されている
上記(1)記載の生体情報検出装置。
(5)
前記封止部材に封止され、前記センサに電力を供給する電池をさらに有する
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(6)
前記封止部材に封止され、前記電池からの電力供給を受けて前記センサからの出力信号に基づきデータ信号を生成する信号処理部と、
前記封止部材に封止され、前記電池からの電力供給を受けて前記信号処理部からの前記データ信号を外部装置に送信可能であると共に前記外部装置からの制御信号を受信可能である送受信部と
をさらに有する
上記(5)記載の生体情報検出装置。
(7)
前記封止部材および前記保持部材は、熱可塑性高分子化合物により形成されている
上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(8)
前記センサは、歪センサまたは圧力センサである
上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(9)
前記保持部材および前記封止部材は、一体に形成されたマウスピースである
上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(10)
前記歯は、歯科治療が施されている天然歯、義歯またはインプラントである
上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(11)
前記電池、前記信号処理部および前記送受信部は、前記歯茎に取り付けられた前記保持部材に配置されている
上記(6)から(10)のいずれか1つに記載の生体情報検出装置。
(12)
口腔内の歯に付与される外力を検出するセンサと、
前記センサを密封する封止部材と
を有する生体情報検出モジュール。
(13)
口腔内に設置される生体情報検出装置の製造方法であって、
前記口腔内の歯に付与される外力を検出するセンサを用意することと、
前記センサを一対の封止フィルムの間に挟んだのち、前記一対の封止フィルムを加熱しつつモールド成型することにより、前記センサが密封された封止部材を形成することと、
前記歯および前記口腔内の歯茎のうちの少なくとも一方に取り付けられて前記封止部材を保持することとなる保持部材を形成することと
を含む生体情報検出装置の製造方法。
(14)
前記封止部材および前記保持部材を、前記モールド成型により一括形成する
上記(13)記載の生体情報検出装置の製造方法。
(15)
外力を検出するセンサを用意することと、
前記センサを一対の封止フィルムの間に挟んだのち、前記一対の封止フィルムを加熱しつつモールド成型することにより、前記センサが密封された封止部材を形成することと
を含む生体情報検出モジュールの製造方法。
【符号の説明】
【0035】
1,1A~1B…生体情報検出装置、2…生体情報検出モジュール、3…送受信部、4…信号処理部、5…センサ、6…電池、7…ネットワーク接続器、8…送受信モジュール、9A,9B…封止フィルム、10…シェル、10A…封止部分、101…外側部分、102…内側部分、10B…対向部分、10C…封止部分、11…実装基板、12…配線、23…歯型、24…ヒータ、31…歪センサ、32…加速度センサ、CH…頬、G…歯茎、LL…舌、T…歯。