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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】被処理物処理装置及び被処理物処理方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/12 20060101AFI20221108BHJP
   B01D 33/15 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B01J2/12
B01D33/22
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018153142
(22)【出願日】2018-08-16
(65)【公開番号】P2020025937
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390008431
【氏名又は名称】高砂工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518293424
【氏名又は名称】田原 耕平
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】大島 士月
(72)【発明者】
【氏名】中村 寿樹
(72)【発明者】
【氏名】田原 耕平
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-086913(JP,A)
【文献】特開平03-109909(JP,A)
【文献】特開平08-215556(JP,A)
【文献】特開2011-136331(JP,A)
【文献】特表2002-532517(JP,A)
【文献】特開平09-253532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00-2/30
B01D 33/00-33/82
B01F 29/00-29/90
F26B 5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を密閉状態で収納可能な処理室が内部に形成された回転体と、
前記回転体を軸心周りに回転可能な駆動源と、
前記処理室と連通する吸引通路が形成された吸引管と、
前記処理室と前記吸引通路との間に設けられ、前記被処理物をろ過可能なろ過材と、
前記吸引管と接続され、前記ろ過材を介して前記処理室を減圧可能なポンプと
前記軸心と同軸に延び、前記処理室と連通する第1連通路を有する第1連通管とを備え
前記第1連通管内には、第1流体を流通可能な第1供給管が設けられ、
前記処理室内には、前記第1供給管と接続され、前記処理室内に前記第1流体を吐出可能な第1吐出具が設けられ、
前記吸引管は、前記軸心と交差する位置で前記処理室と連通し、前記ろ過材が設けられる吸引室が形成された接続部材と、前記軸心と同軸に延び、被接続通路が形成された支持管と、前記吸引室と前記被接続通路とを接続する接続通路が形成された接続管とを有し、
前記吸引通路は、前記吸引室、前記接続通路及び前記被接続通路を有することを特徴とする被処理物処理装置。
【請求項2】
前記軸心と同軸に延び、前記処理室と連通する第2連通路を有する第2連通管を備え、
前記第2連通管内には、第2流体を流通可能な第2供給管が設けられ、
前記処理室内には、前記第2供給管と接続され、前記処理室内に前記第2流体を吐出可能な第2吐出具が設けられている請求項記載の被処理物処理装置。
【請求項3】
前記支持管は、前記回転体と同期回転する回転管と、回転不能な不回転管と、前記回転管と前記不回転管との間を気密に封止するロータリージョイントとを有している請求項1又は2記載の被処理物処理装置。
【請求項4】
前記ろ過材は前記処理室側を向くろ過面を有し、
前記ろ過面を当接しながら移動するスクレーパをさらに備えている請求項1乃至3のいずれか1項記載の被処理物処理装置。
【請求項5】
前記スクレーパは、前記接続部材に設けられ、前記回転体とともに前記軸心周りに回転可能なスクレーパモータによって駆動される請求項記載の被処理物処理装置。
【請求項6】
前記回転体の周囲に設けられ、前記処理室内を加熱可能な熱源をさらに備えている請求項1乃至のいずれか1項記載の被処理物処理装置。
【請求項7】
前記処理室は、前記軸心を直径とする球状である請求項1乃至のいずれか1項記載の被処理物処理装置。
【請求項8】
前記軸心は、傾斜可能である請求項1乃至のいずれか1項記載の被処理物処理装置。
【請求項9】
前記回転体は、密閉状態を維持しながら前記処理室を外部に透過させる透過体を有し、
前記透過体を通じて前記処理室内の前記被処理物の特性を検知可能な光学装置をさらに備えている請求項1乃至のいずれか1項記載の被処理物処理装置。
【請求項10】
被処理物を密閉状態で収納可能な処理室が内部に形成された回転体と、
前記回転体を軸心周りに回転可能な駆動源と、
前記処理室と連通する吸引通路が形成された吸引管と、
前記処理室と前記吸引通路との間に設けられ、前記被処理物をろ過可能なろ過材と、
前記吸引管と接続され、前記ろ過材を介して前記処理室を減圧可能なポンプと
前記軸心と同軸に延び、前記処理室と連通する第1連通路を有する第1連通管とを備え
前記第1連通管内には、第1流体を流通可能な第1供給管が設けられ、
前記処理室内には、前記第1供給管と接続され、前記処理室内に前記第1流体を吐出可能な第1吐出具が設けられ、
前記吸引管は、前記軸心と交差する位置で前記処理室と連通し、前記ろ過材が設けられる吸引室が形成された接続部材と、前記軸心と同軸に延び、被接続通路が形成された支持管と、前記吸引室と前記被接続通路とを接続する接続通路が形成された接続管とを有し、
前記吸引通路は、前記吸引室、前記接続通路及び前記被接続通路を有する被処理物処理装置を用い、
前記被処理物を真空ろ過するろ過工程と、
前記被処理物を真空乾燥する乾燥工程と、
前記被処理物に添加物を混合する混合工程と、
前記被処理物の水分調整を行なう水分調整工程と、
前記被処理物を造粒する造粒工程とを備えていることを特徴とする被処理物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物処理装置と、被処理物処理方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の被処理物処理装置(以下、処理装置という。)が開示されている。この処理装置は、回転体と、駆動源と、吸引管と、フィルタと、ポンプとを備えている。
【0003】
回転体の内部には、粉体や粒体である被処理物を密閉状態で収納可能な処理室が形成されている。駆動源は、水平に対して傾斜した軸心周りに回転体を回転可能である。回転体には軸心と同軸の吸引管が1本接続され、処理室は吸引管の吸引通路と連通されている。回転体は外軸部に固定され、外軸部は軸受部に回転可能に支持されている。また、吸引管は内軸部に設けられ、内軸部は軸受部に固定されている。このため、この処理装置では、回転体を外軸部とともに回転させても、吸引管が内軸部とともに非回転となっている。
【0004】
また、吸引管の回転体側にはフィルタが設けられ、吸引管の他端側にはポンプが接続されている。ポンプはフィルタを介して処理室を減圧可能である。また、回転体と外軸部との間にシール材が設けられているとともに、外軸部と内軸部との間にシール材が設けられている。このため、この処理装置では、吸引通路によって処理室を減圧することができる。この際、フィルタは被処理物がポンプの吸引力によって外部に排出されることを防止している。
【0005】
この処理装置では、ポンプによって減圧された処理室を回転することができるため、処理室内の被処理物を真空乾燥するとともに、混合することが可能である。また、被処理物に液体を混合することにより、被処理物を顆粒の状態に造粒することも可能である。これらの際、回転体をその周囲から加熱すれば、被処理物を加熱することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-215556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の処理装置では、フィルタは被処理物がポンプの吸引力によって外部に排出されることを防止しているに過ぎず、被処理物をろ過できない。つまり、この処理装置は、被処理物が液体である場合には、その被処理物をろ過等して乾燥したり、混合したり、造粒したりすることができない。
【0008】
このため、液体である被処理物について、少なくともろ過する行為と、ろ過物を乾燥する行為とを他の装置によって行なうとすると、装置の交換の際に被処理物に無駄を生じたり、異物が混入したりするおそれがある。
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、被処理物の性状にかかわらず、被処理物に無駄を生じ難く、異物が混入し難い被処理物処理装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の被処理物処理装置は、被処理物を密閉状態で収納可能な処理室が内部に形成された回転体と、
前記回転体を軸心周りに回転可能な駆動源と、
前記処理室と連通する吸引通路が形成された吸引管と、
前記処理室と前記吸引通路との間に設けられ、前記被処理物をろ過可能なろ過材と、
前記吸引管と接続され、前記ろ過材を介して前記処理室を減圧可能なポンプと
前記軸心と同軸に延び、前記処理室と連通する第1連通路を有する第1連通管とを備え
前記第1連通管内には、第1流体を流通可能な第1供給管が設けられ、
前記処理室内には、前記第1供給管と接続され、前記処理室内に前記第1流体を吐出可能な第1吐出具が設けられ、
前記吸引管は、前記軸心と交差する位置で前記処理室と連通し、前記ろ過材が設けられる吸引室が形成された接続部材と、前記軸心と同軸に延び、被接続通路が形成された支持管と、前記吸引室と前記被接続通路とを接続する接続通路が形成された接続管とを有し、
前記吸引通路は、前記吸引室、前記接続通路及び前記被接続通路を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の処理装置では、処理室と吸引通路との間に設けられたろ過材が減圧によって被処理物をろ過する。このため、この処理装置は、被処理物が液体である場合にも、その被処理物をろ過等して乾燥したり、混合したり、造粒したりすることができる。
【0012】
また、被処理物について、少なくともろ過する行為と、ろ過物を乾燥する行為とを同一の処理室内で行なうことができる。また、被処理物に液体を混合することにより、被処理物を顆粒の状態に造粒することも可能である。このため、それらの行為の際に被処理物に無駄を生じたり、異物が混入したりするおそれがない。
【0013】
したがって、本発明の処理装置では、被処理物の性状にかかわらず、被処理物に無駄を生じ難く、異物が混入し難い。
【0014】
また、この処理装置は、軸心と同軸に延び、処理室と連通する第1連通路を有する第1連通管を備えている第1連通管内には、第1流体を流通可能な第1供給管が設けられている処理室内には、第1供給管と接続され、処理室内に第1流体を吐出可能な第1吐出具が設けられているこの場合、第1流体を水等のバインダとすれば、被処理物が粉体の状態にある場合、処理室内で造粒できる。つまり、第1吐出具が噴霧ノズルとなる。
【0015】
軸心と同軸に延び、処理室と連通する第2連通路を有する第2連通管を備えていることが好ましい。第2連通管内には、第2流体を流通可能な第2供給管が設けられていることが好ましい。処理室内には、第2供給管と接続され、処理室内に第2流体を吐出可能な第2吐出具が設けられていることが好ましい。この場合、第2流体を空気等のガスとすれば、処理室の内面に付着する被処理物をそのガスによって掻き落とし、被処理物の無駄をより確実に防止することができる。つまり、第2吐出具が流体スクレーパとなる。第1連通管及び第2連通管を備えれば、回転体を第1連通管及び第2連通管によって軸心周りに回転するように支持し易い。
【0016】
また、この処理装置は、吸引管は、軸心と交差する位置で処理室と連通し、ろ過材が設けられる吸引室が形成された接続部材と、軸心と同軸に延び、被接続通路が形成された支持管と、吸引室と被接続通路とを接続する接続通路が形成された接続管とを有する。そして、吸引通路は、吸引室、接続通路及び被接続通路を有する。この場合、第1連通管や第2連通管の一部を支持管として活用できる。
【0017】
支持管は、回転体と同期回転する回転管と、回転不能な不回転管と、回転管と不回転管との間を気密に封止するロータリージョイントとを有していることが好ましい。この場合、回転体を第1連通管や第2連通管によって軸心周りに回転するように支持し易く、不回転管をポンプに接続し易い。
【0018】
ろ過材は処理室側を向くろ過面を有し得る。ろ過面を当接しながら移動するスクレーパをさらに備えていることが好ましい。この場合、スクレーパがろ過材のろ過面に付着する被処理物を掻き落とし、ろ過材の目詰まりを防止できるとともに、被処理物に無駄を生じ難い。
【0019】
スクレーパは、接続部材に設けられ、回転体とともに軸心周りに回転可能なスクレーパモータによって駆動されることが好ましい。この場合、ろ過材の目詰まりを防止するためにスクレーパモータを回転体とともに回転させながら、処理室内を減圧できる。
【0020】
回転体の周囲に設けられ、処理室内を加熱可能な熱源をさらに備えていることが好ましい。この場合、ろ過中に被処理物を加熱し、乾燥を早めることができる。これにより、処理効率の向上を実現できる。
【0021】
処理室は、軸心を直径とする球状であることが好ましい。この場合、回転体が負圧に耐え易い。また、第1吐出具又は第2吐出具としての流体スクレーパを処理室の内周面に沿った円弧状にすることにより、処理室内に付着する被処理物を掻き落としやすい。
【0022】
軸心は、傾斜可能であることが好ましい。この場合、軸心を水平方向に維持したり、水平方向から傾斜させたりすることにより、ろ過等の状態を変化させることができる。
【0023】
回転体は、密閉状態を維持しながら処理室を外部に透過させる透過体を有し得る。そして、処理装置は、透過体を通じて処理室内の被処理物の特性を検知可能な光学装置をさらに備えていることが好ましい。この場合、ろ過等の状態を検知できる。
【0024】
本発明の被処理物処理方法は、被処理物を密閉状態で収納可能な処理室が内部に形成された回転体と、
前記回転体を軸心周りに回転可能な駆動源と、
前記処理室と連通する吸引通路が形成された吸引管と、
前記処理室と前記吸引通路との間に設けられ、前記被処理物をろ過可能なろ過材と、
前記吸引管と接続され、前記ろ過材を介して前記処理室を減圧可能なポンプと
前記軸心と同軸に延び、前記処理室と連通する第1連通路を有する第1連通管とを備え
前記第1連通管内には、第1流体を流通可能な第1供給管が設けられ、
前記処理室内には、前記第1供給管と接続され、前記処理室内に前記第1流体を吐出可能な第1吐出具が設けられ、
前記吸引管は、前記軸心と交差する位置で前記処理室と連通し、前記ろ過材が設けられる吸引室が形成された接続部材と、前記軸心と同軸に延び、被接続通路が形成された支持管と、前記吸引室と前記被接続通路とを接続する接続通路が形成された接続管とを有し、
前記吸引通路は、前記吸引室、前記接続通路及び前記被接続通路を有する被処理物処理装置を用い、
前記被処理物を真空ろ過するろ過工程と、
前記被処理物を真空乾燥する乾燥工程と、
前記被処理物に添加物を混合する混合工程と、
前記被処理物の水分調整を行なう水分調整工程と、
前記被処理物を造粒する造粒工程とを備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明の被処理物処理方法によれば、被処理物の性状にかかわらず、無駄を生じ難く、異物が混入し難い条件下で被処理物を処理することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の被処理物処理装置によれば、被処理物の性状にかかわらず、被処理物に無駄を生じ難く、異物が混入し難い。また、本発明の被処理物処理方法によれば、被処理物の性状にかかわらず、無駄を生じ難く、異物が混入し難い条件下で被処理物を処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施例の被処理物処理装置の全体構成図である。
図2図2は、実施例の被処理物処理装置における回転体等の拡大断面図である。
図3図3は、実施例の被処理物処理装置が傾斜した状態にある全体構成図である。
図4図4は、実施例の被処理物処理方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例を説明する。
【0029】
実施例の被処理物処理装置は、図1に示すように、回転体1と、吸引管3と、第1連通管5と、第2連通管7と、ろ過材9と、スクレーパ11と、ポンプ13と、ヒータ15とを備えている。
【0030】
回転体1は、図2に示すように、それぞれ椀状に形成されたステンレス製の第1殻体21及び第2殻体22を有している。第1殻体21にはフランジ21aが形成され、第2殻体22にはフランジ22aが形成されている。回転体1は、フランジ21a、22aが互いに対面された状態で固定部材23によって固定されることにより、内部にO点を中心とする球状をなす処理室1aを形成している。
【0031】
また、第1殻体21には第1連通管5が一体的に固定され、第2殻体22には第2連通管7が一体的に固定されている。第1連通管5及び第2連通管7はフランジ21a、22aとは異なる位置で第1殻体21や第2殻体22に固定されている。第1連通管5及び第2連通管7もステンレス製である。第1連通管5と第2連通管7とはそれぞれの中心軸が一致する軸心X方向に延びている。軸心Xは処理室1aの直径方向に延びている。軸心Xは常態では水平である。
【0032】
第1殻体21には、軸心Xと直交する方向に吸引口21bが開口されている。吸引口21bは、O点から見て、円筒状をなしている。吸引口21b周りではボス21cが外側に向けて突設されている。ボス21cの外側には接続部材24が設けられている。接続部材24には第1殻体21のボス21cと対面するようにボス24aが形成されている。第1殻体21のボス21cと接続部材24のボス24aとは、互いに当接された状態で図示しないボルトによって固定されている。
【0033】
接続部材24には吸引口21bと同軸で連通する円柱状の空間である吸引室24bが形成されている。吸引口21bには、処理室1aと吸引室24bとを連通させる多数の連通孔を有する支持台27と、支持台27の処理室1a側に位置するろ過材9とが設けられている。支持台27はステンレス製である。ろ過材9は、ミクロン単位で被処理物をろ過可能な特殊金属製である。第1殻体21のボス21cとろ過材9との間と、支持台27と接続部材24のボス24aとの間とには、それぞれ気密を保つためのシール部材28、29が設けられている。
【0034】
また、接続部材24における処理室1aの反対側の壁には、吸引室24b内に延びる回転軸25aを有するスクレーパモータ25が固定されている。スクレーパモータ25は、自己が回転しても通電が行なわれるようになっている。回転軸25aは、O点に向かって延びている。接続部材24と回転軸25aとの間にはシール部材26が設けられている。
【0035】
ろ過材9は処理室1a側を向くろ過面9aを有している。スクレーパモータ25の回転軸25aは支持台27及びろ過材9を貫通して処理室1a内まで延びている。回転軸25aの先端にスクレーパ11が固定されている。スクレーパ11は、回転軸25aが回転することによってろ過面9aを摺動するようになっている。
【0036】
一方、第2殻体22には、軸心Xと直交する方向に開口22bが形成されている。開口22b周りではボス22cが外側に向けて突設されている。ボス22cには透過体30を挟んで枠状の開閉部材31が設けられている。ボス22cと開閉部材31とは、互いに当接された状態で図示しないボルトによって固定されている。透過体30は石英製である。第2殻体22のボス22cと透過体30との間と、透明体30と開閉部材31との間とには、それぞれ気密を保つためのシール部材32、33が設けられている。
【0037】
第1連通管5は処理室1aと連通する第1連通路5aを有し、第1連通路5a内には軸心X方向に延びる第1供給管41が設けられている。第1連通路5aでは、処理室1a側に内フランジ5bが形成されており、内フランジ5bより処理室1a側には第1供給管41を回転摺動させつつ処理室1aを気密に保つPTFE製のシール材42が設けられている。
【0038】
第2連通管7は処理室1aと連通する第2連通路7aを有し、第2連通路7a内には軸心X方向に延びる第2供給管43が設けられている。第2連通路7aでは、処理室1a側に内フランジ7bが形成されており、内フランジ7bより処理室1a側には第2供給管43を回転摺動させつつ処理室1aを気密に保つPTFE製のシール材44が設けられている。
【0039】
接続部材24には第1接続管34が接続されている。このため、吸引室24bは第1接続管34の第1接続通路34aと連通している。第1接続管34は継手部材35を介して第2接続管36に接続されている。このため、第1接続通路34aは、継手部材35の内部を介し、第2接続管36の第2接続通路36aと連通している。第2接続管36は第2連通管7に接続されている。このため、第2接続通路36aは第2連通管7の第2連通路7aに接続されている。第2連通管7が支持管に相当し、第2連通路7aが被接続通路に相当する。継手部材35には、逆洗用接続管37も接続されている。継手部材35には、第1接続管34、第2接続管36及び逆洗用接続管37を各々開閉するコックが設けられている。
【0040】
第1供給管41は、処理室1a内において、処理室1aの内面に沿って湾曲され、その先端に第1吐出具45が設けられている。図1に示すように、第1連通管5には回転管47が同軸に接続され、回転管47はロータリージョイント48を介して不回転管49と接続されている。不回転管49は揺動板WP上で図示しない支持部材によって支持されている。第1供給管41は、第1連通管5、回転管47、ロータリージョイント48及び不回転管49の内部を挿通し、水供給装置Aに接続されている。水供給装置Aはバインダとしての水を一定量だけ第1吐出具45から噴出できるようになっている。
【0041】
一方、図2に示すように、第2供給管43の先端部分は、処理室1a内において、処理室1aの球状の内面に沿って円弧状に湾曲された第2吐出具46とされている。第2吐出具46には、処理室1aの内面に向かって多数の噴出口が形成されている。第1吐出具45と第2吐出具46とは、軸心X方向から見て45~90°ずれた状態でともに処理室1aの上方に位置している。
【0042】
図1に示すように、第2連通管7には回転管50が同軸に接続され、回転管50はロータリージョイント51を介して不回転管52と接続されている。不回転管52は揺動板WP上で支持部材78によって支持されている。第2供給管43は、第2連通管7、回転管50、ロータリージョイント51及び不回転管52の内部を挿通し、空気圧縮装置Bに接続されている。回転管50、ロータリージョイント51及び不回転管52も支持管に相当する。空気圧縮装置Bは空気を第2吐出具46の各噴出口から噴出できるようになっている。
【0043】
回転管50には従動スプロケット71が固定されている。また、基台C上には揺動板WPが載置されており、揺動板WP上には駆動モータ72が固定されている。駆動モータ72が駆動源に相当する。駆動モータ72の回転軸72aには駆動スプロケット73が固定されている。従動スプロケット71と駆動スプロケット73との間にはチェーン74が巻き掛けられている。
【0044】
また、揺動板WP上にはヒータ台75が固定されており、ヒータ台75上に紙面の手前と奥とで一対のヒータ15が取り付けられるようになっている。両ヒータ15が熱源に相当する。回転体1の上方には光学装置76が設けられている。光学装置76は、近赤外分光法(NIR)によって、開口22bが上方に位置する際に透過体30を介して処理室1a内の被処理物を照射し、被処理物の乾燥度、混合度、原薬量等を検知可能である。
【0045】
図3に示すように、揺動板WPは昇降装置Dによって揺動できるようになっている。これによって軸心Xが水平から傾斜するようになる。昇降装置Dによって軸心Xを水平にしたり、水平に対してやや傾斜させたりすれば、液体である被処理物がろ過材9と接触し易く、被処理物を減圧によってろ過し易い。
【0046】
不回転管52は、揺動板WPが揺動しても連通するドラム77を介してポンプ13に接続されている。接続部材24、第1接続管34、継手部材35、第2接続管36、第2連通管7、回転管50、ロータリージョイント51、不回転管52及びドラム77が吸引管3に相当し、吸引室24b、第1接続通路34a、継手部材35の内部、第2接続通路36a、第2連通路7a、回転管50の内部、ロータリージョイント51の内部、不回転管52の内部及びドラム77の内部が吸引通路に相当する。
【0047】
この処理装置により、被処理物としてのアセトアミノフェン(AAP)の原薬液に対し、図4に示す処理方法を実行する。
【0048】
(ろ過工程S1)
まず、25mLの蒸留水に1gのAAPが含まれる原薬液を用意する。そして、軸心Xが水平の状態において、回転体1の開閉部材31を開け、透過体30を外し、処理室1a内に原薬液を入れ、透過体30を載置し、開閉部材31を閉じる。そして、ポンプ13を作動し、回転体1の処理室1a内を減圧する。実施例の処理装置では、処理室1a内を1Paまで減圧可能である。こうして、被処理物を真空ろ過する。
【0049】
この状態で駆動モータ72を駆動し、回転体1を軸心X周りで回転させる。この際、処理装置は、第1連通管5及び第2連通管7を備えているため、回転体1を第1連通管5及び第2連通管7によって軸心X周りに回転するように好適に支持し易い。
【0050】
この際、スクレーパモータ25を作動し、ろ過材9のろ過面9a上に残る被処理物を掻き落とす。このため、ろ過材9の目詰まりを防止できるとともに、被処理物に無駄を生じ難い。
【0051】
また、スクレーパ11が回転体1とともに軸心X周りに回転可能なスクレーパモータ25によって駆動されるため、ろ過材9の目詰まりを防止するためにスクレーパモータ25を回転体1とともに回転させながら、処理室1a内を減圧できる。
【0052】
これらの間、処理室1aが軸心Xを直径とする球状であるため、回転体1が負圧に耐え易い。
【0053】
一定時間経過後、駆動モータ72を停止し、開口22bを上方に位置させた状態で光学装置76によって透過体30を介して処理室1a内の被処理物を照射し、被処理物の乾燥度を確認する。
【0054】
(乾燥工程S2)
こうして、被処理物を真空乾燥する。必要に応じ、ヒータ15を作動し、ろ過中に被処理物を加熱し、乾燥を早めることができる。これにより、処理効率の向上を実現できる。
【0055】
(混合工程S3)
被処理物の乾燥度が一定値になれば、ポンプ13の作動を停止し、処理室1a内に添加物としてのコーンスターチを一定量入れ、回転体1を軸心X周りで再び回転させる。こうして、被処理物に添加物を混合する。この際も、スクレーパモータ25を作動し、ろ過材9のろ過面9a上に残る被処理物を掻き落とす。
【0056】
また、空気圧縮装置Bを作動し、第2吐出具46の各噴出口から空気を噴出する。こうして、処理室1aの内面に付着する被処理物を空気によって掻き落とす。この際、処理室1aが軸心Xを直径とする球状であるため、第2吐出具46が処理室1aの内周面に沿って空気を噴出し、処理室1a内に付着する被処理物を掻き落としやすい。
【0057】
一定時間経過後、駆動モータ72を停止し、光学装置76によって被処理物の混合度を確認する。
【0058】
(水分調整工程S4)
被処理物の混合度が一定値になれば、回転体1を軸心X周りで回転させながら、水供給装置Aを作動し、第1吐出具45からバインダとしての水を一定量だけ噴出する。この際も、スクレーパモータ25を作動し、ろ過材9のろ過面9a上に残る被処理物を掻き落とす。また、空気圧縮装置Bを作動し、第2吐出具46の各噴出口から空気を噴出する。こうして、処理室1aの内面に付着する被処理物を空気によって掻き落とす。こうして、被処理物の水分調整を行なう。
【0059】
一定時間経過後、駆動モータ72を停止し、光学装置76によって被処理物の水分量を確認する。水分量が少なければ、第1吐出具45から水を噴出する。
【0060】
(造粒工程S5)
水分量が所定範囲内にあれば、回転体1の回転を継続し、被処理物を顆粒状に造粒する。この際も、スクレーパモータ25を作動し、ろ過材9のろ過面9a上に残る被処理物を掻き落とす。こうして、処理室1aの内面に付着する被処理物を空気によって掻き落とす。
【0061】
ろ過工程S1、乾燥工程S2、混合工程S3、水分調整工程S4又は造粒工程S5において、必要に応じ、軸心Xを傾斜させ、ろ過等の状態を変化させてもよい。
【0062】
こうして、造粒された被処理物は回転体1から取り出され、錠剤に成形される。また、必要な場合には、錠剤に糖衣が施される。被処理物の処理後、蒸留水を逆洗用接続管37から流し、処理室1a等を洗浄することができる。
【0063】
このように、実施例の処理装置では、処理室1aと吸引室24bとの間に設けられたろ過材9が減圧によって被処理物をろ過する。このため、この処理装置は、被処理物が液体である場合にも、その被処理物をろ過して乾燥することができる。特に、この処理装置では、処理室1a内に噴霧ノズルとしての第1吐出具45が設けられているため、水分量を調整しながら混合したり、造粒したりすることができる。
【0064】
また、被処理物について、少なくともろ過する行為と、ろ過物を乾燥する行為とを同一の処理室1a内で行なうことができる。また、被処理物に水を混合することにより、被処理物を顆粒の状態に造粒することも可能である。このため、それらの行為の際に被処理物に無駄を生じたり、異物が混入したりするおそれがない。特に、この処理装置では、処理室1a内に流体スクレーパとしての第2吐出具46が設けられているため、処理室1aの内面に付着する被処理物を空気によって掻き落とし、被処理物の無駄をより確実に防止することができる。
【0065】
したがって、この処理装置では、被処理物の性状にかかわらず、ろ過、混合及び造粒を連続して行い、被処理物に無駄を生じ難く、異物が混入し難い。特に、この処理装置は、回転体1を小型にすることにより、小ロットでの薬剤等の被処理物を処理することが可能である。
【0066】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0067】
例えば、実施例ではAAPの原薬液を被処理物としたが、他の薬剤の原薬を被処理物として採用することも可能である。本発明の処理装置は被処理物の無駄を生じ難いことから、薬剤以外にも、比較的高価な原材料を被処理物とすることができる。
【0068】
また、第1吐出具45から噴霧する第1流体としては、水の他、アルコール、石油系溶剤等が適宜選択され得る。また、第2吐出具46から吐出する第2流体としてのガスは、空気の他、窒素、不活性ガス等が処理物に応じて選択され得る。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、医薬品、加工食品、飼料、肥料等を製造する製造装置、特に小ロットでこれらを製造する製造装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1a…処理室
1…回転体
X…軸心
72…駆動源(駆動モータ)
24b、34a、36a、7a等…吸引通路(24b…吸引室、34a…第1接続通路、36a…第2接続通路、7a…第2連通路)
24、34、35、36、7、50、51、52、77…吸引管
9…ろ過材
13…ポンプ
5a…第1連通路
5…第1連通管
41…第1供給管
45…第1吐出具
7a…第2連通路、被接続通路
7…第2連通管、支持管
43…第2供給管
46…第2吐出具
24b…吸引室
24…接続部材
34a、36a…接続通路(34a…第1接続通路、36a第2接続通路)
34、36…接続管(34…第1接続管、36…第2接続管)
47、50…回転管
49、52…不回転管
48、51…ロータリージョイント
9a…ろ過面
11…スクレーパ
25…スクレーパモータ
15…熱源(ヒータ)
30…透過体
76…光学装置
S1…ろ過工程
S2…乾燥工程
S3…混合工程
S4…水分調整工程
S5…造粒工程
図1
図2
図3
図4