(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】プラスチック回収方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/08 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
C08J11/08 CES
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022107681
(22)【出願日】2022-07-04
【審査請求日】2022-07-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502140558
【氏名又は名称】國立台灣大學
(73)【特許権者】
【識別番号】522268432
【氏名又は名称】盛勢環球系統科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】范致豪
(72)【発明者】
【氏名】林振男
(72)【発明者】
【氏名】黄雅甄
(72)【発明者】
【氏名】李書昂
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特許第2968998(JP,B2)
【文献】特開昭51-016378(JP,A)
【文献】特開昭50-032269(JP,A)
【文献】米国特許第04164484(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B17/00-17/04
C08J11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック回収方法であって、
(一)ポリプロピレン(Polypropylene,PP)を含むプラスチックを含むプラスチック含有材料を準備する準備工程と、
(二)溶剤に溶解可能な該プラスチック含有材料と溶剤と
溶剤混和液とを混合することで、第1の混合物を得る混合工程
であって、
前記溶剤は芳香族炭化水素を含み、
前記溶剤混和液はケトン、エステルのいずれか1種またはその組合せを含み、
前記ケトンはシクロヘキサノン、アセトンまたはその組合せを含み、
前記エステルはプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ブチルアセテート、イソアミルアセテートのいずれか1種またはその組合せを含む、混合工程と、
(三)該第1の混合物を加熱して80℃から140℃の温度で撹拌して、該プラスチックを該溶剤
及び該溶剤混和液に溶解させることで、溶解液を得る加熱工程と、
(四)該溶解液を負圧雰囲気下に置くことで該プラスチックを得る分離工程と、を含むことを特徴とするプラスチック回収方法。
【請求項2】
前記分離工程中に、該溶解液を70℃から100℃の温度で保温する、ことを更に含む、請求項1に記載のプラスチック回収方法。
【請求項3】
前記芳香族炭化水素はベンゼン(benzole)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、テトラヒドロナフタレン(tetralin)、デカヒドロナフタレン(decalin)のいずれか1種またはその組合せを含む、請求項
1に記載のプラスチック回収方法。
【請求項4】
前記溶剤と前記溶剤混和液との合計体積を基準として、該溶剤は45vol%から60vol%であり、および前記溶剤混和液は40vol%から55vol%である、請求項
1に記載のプラスチック回収方法。
【請求項5】
前記プラスチック含有材料は粒子状をなし、且つ前記プラスチック含有材料の平均直径は0mmよりも大きく5mm以下であり、前記加熱工程中の撹拌の速度は15rpmから40rpmであり、時間は15分間から60分間であり、および前記負圧雰囲気の圧力は0mb以上90mb以下である、請求項1に記載のプラスチック回収方法。
【請求項6】
前記溶剤と前記溶剤混和液の合計体積が100mlであることを基準として、前記プラスチック含有材料の重量は0gよりも大きく2.2g以下である、請求項
1に記載のプラスチック回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチック回収方法に関し、特にポリプロピレンを回収するプラスチック回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは19世紀に発明され、製造コストが廉価で安定性が高いという長所を有することから、日用品の主な材料として大量に用いられている。例えばポリプロピレン(Polypropylene,PP)は耐熱性、耐酸性・耐アルカリ性および強靭性などの長所を有するため、飲料用ボトル、ストロー、電子レンジ用容器およびごみ箱などに広く用いられている。また、PPの発がん性のリスクはその他プラスチック材料よりも低いことから、食品容器に一層広く用いられている。
【0003】
プラスチックは自然界では分解されにくい。特に使い捨て使用されるビニール袋またはペットボトルなどの容器は環境問題を引き起こしている。従来のプラスチック回収方法には以下が含まれる。(1)溶融回収法:加工工場にて残った未使用の屑材を回収することで、再生プラスチックとして再成形するか、または、雑多なプラスチック製品を回収して、複合的に再生する方法、および(2)熱分解法:特定プラスチックを回収して燃料を作製する方法であり、例えば、特許文献1では、廃プラスチックを液体油および可燃性ガスとして分解する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
各国ではプラスチック削減政策が徐々に実施されているものの、プラスチック廃棄物がもたらす環境問題はなおも解決が待たれていることから、新たなプラスチック回収方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、(一)ポリプロピレン(Polypropylene,PP)を含むプラスチックを含むプラスチック含有材料を準備する準備工程と、(二)溶剤に溶解可能な該プラスチック含有材料と溶剤とを混合することで、第1の混合物を得る混合工程と、(三)該第1の混合物を加熱して80℃から140℃の温度で撹拌して、該プラスチックを該溶剤に溶解させることで、溶解液を得る加熱工程と、(四)該溶解液を負圧雰囲気下に置くことで該プラスチックを得る分離工程と、を含むプラスチック回収方法を提供する。
【0007】
本発明によれば、まず、溶剤を用いて回収ターゲットとしてのプラスチックを溶解することで、高いプラスチック回収率を確保する。第二に、加熱および撹拌は溶解の一助となり、またプラスチック回収率を向上することができる。第三に、負圧雰囲気により溶剤を蒸発させることから溶剤と回収ターゲットとしてのプラスチックを効果的に分離できる以外に、溶剤またはプラスチックは過度に加熱されることによって変質するのを回避できることから、該回収により得られた溶剤は再利用可能となり、ひいては回収コストを削減することになる。これにより更に多くの業者がプラスチック回収事業に参入するのを促す以外に、溶剤排出によるコスト増加および潜在的な環境問題も回避できることから、環境問題を相乗的に低減することができる。
【0008】
本発明のプラスチック含有材料は重合体、混合物またはその組合せを含む。
【0009】
本発明によれば、該加熱工程中にて、140℃を超えるまで加熱したとき、該溶解液には沸騰現象が現れ始める。
【0010】
1つの実施形態中において、該分離工程中にて、該溶解液を70℃から100℃の温度で保温する、ことを更に含む。本発明では負圧雰囲気を形成することで溶剤の沸点を引き下げるとともに、保温して溶剤の沸騰状態を持続的に維持する。迅速に、そして安定的に溶剤を回収するとともに、エネルギー消費を抑えるという長所を備える。
【0011】
1つの実施形態中において、該分離工程中にて、該負圧雰囲気の圧力は0mb以上90mb以下であり、例えば、1mb、10mb、30mb、50mb、70mbまたは90mbである。好ましくは、該負圧雰囲気の圧力は0mb以上20mb以下である。
【0012】
1つの実施形態中において、該分離工程の時間は5分間から1時間である。好ましくは、該負圧雰囲気の圧力が0mb以上20mb以下であるとき、該分離工程の時間は10分間から20分間であり、および/または該負圧雰囲気の圧力が20mbよりも大きく80mb以下であるとき、該分離工程の時間は20分間から40分間である。
【0013】
1つの実施形態中において、本発明のプラスチック回収方法は、沈殿剤で該プラスチックを分離するものは採用しない。
【0014】
1つの実施形態中において、該溶剤は芳香族炭化水素、ケトン、エーテル、シクロアルカン、エステルのいずれか1種またはその組合せを含む。
【0015】
好ましくは、該エステルはアルキルエステル類を含む。
【0016】
好ましくは、該芳香族炭化水素はベンゼン(benzole)、トルエン(toluene)、キシレン(xylene)、テトラヒドロナフタレン(tetralin)、デカヒドロナフタレン(decalin)のいずれか1種またはその組合せを含む。
【0017】
上記キシレンは有害性が相対的に低いという長所がある。
【0018】
1つの実施形態中において、該混合工程中にて、エーテル、ケトン、エステルのいずれか1種またはその組合せを含む溶剤混和液を更に添加する。
【0019】
好ましくは、該エーテルはテトラヒドロフランを含む。
【0020】
好ましくは、該ケトンはシクロヘキサノン、アセトンまたはその組合せを含む。
【0021】
好ましくは、該エステルはプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ブチルアセテート、イソアミルアセテートのいずれか1種またはその組合せを含む。
【0022】
本発明によれば、該「溶剤混和液」は、該溶剤と混和する液体である。溶剤混和液を採用することで高い回収率を維持するとともに、溶剤の使用量を減らし、コスト、有害性の低減、および環境配慮の向上に寄与する。
【0023】
1つの実施形態中において、該溶剤混和液の溶解度パラメータと該溶剤の溶解度パラメータとの差は0以上2以下である。例えば0.1、0.3、0.5、0.7、0.9、1.1、1.3、1.5、1.7、1.9または2とすることで、溶解効果を向上する。好ましくは、該溶剤混和液の溶解度パラメータと該溶剤の溶解度パラメータとの差は0以上0.5以下である。
【0024】
上記溶解度パラメータ(solubility parameter)は液体材料の相溶性を評価する物理定数であり、これは材料内の凝集エネルギー密度の平方根という物理的な意味を持つ。
【0025】
1つの実施形態中において、該プラスチックは該溶剤混和液に溶解しにくい。好ましくは、該プラスチックは実質的には該溶剤混和液に溶解しない。より好ましくは、該プラスチックは該溶剤混和液に溶解しない。
【0026】
上記「溶解しにくい」とは、該プラスチックが80℃から140℃の温度で、時間が40分間以内にて、該溶剤混和液に実質的に溶解しないことを意味する。
【0027】
1つの実施形態中において、該溶剤と該溶剤混和液との合計体積を基準とする。該溶剤は45vol%から60vol%である。例えば、45vol%、48vol%、51vol%、53vol%、56vol%、59vol%または60vol%である。および該溶剤混和液は40vol%から55vol%である。例えば、40vol%、41vol%、44vol%、47vol%、49vol%、52vol%または55vol%である。
【0028】
好ましくは、該溶剤と該溶剤混和液との合計体積を基準として、該溶剤は48vol%から52vol%であり、および該溶剤混和液は48vol%から52vol%である。より好ましくは、該溶剤と該溶剤混和液との合計体積を基準として、該溶剤は50vol%であり、および該溶剤混和液は50vol%である。
【0029】
1つの実施形態中において、該溶剤の体積と該溶剤混和液の体積との比率は0.8から1.5である。例えば、0.8、1.0、1.2、1.4または1.5である。例えば、該溶剤が100mlであり、および該溶剤混和液が100mlであるとき、該溶剤の体積と該溶剤混和液の体積との比率は1となり、または該溶剤が120mlであり、および該溶剤混和液が100mlであると、該溶剤の体積と該溶剤混和液の体積との比率は1.2となる。
【0030】
1つの実施形態中において、該準備工程の前または該準備工程中に、比重の異なる選別溶液をセットすることで、比重の異なるプラスチック含有材料を浮選分離する分離工程、を更に含む。
【0031】
好ましくは、上記分離工程は、比重の低い方から高い方の順で、比重範囲の異なるプラスチック含有材料を浮選分離する。
【0032】
1つの実施形態中において、該比重は0.8から1.6である。例えば、0.8、1.0、1.2、1.4または1.6である。例えば、比重が0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5および1.6の順序で浮選を行う。好ましくは、該比重は0.8から1.0である。より好ましくは、該比重は0.8から0.9である。本発明は浮選を通じて、非ポリプロピレン系の材料を効果的に選別して、ポリプロピレン回収効率を向上することができる。
【0033】
1つの実施形態中において、該プラスチック含有材料は粒子状をなしている。
【0034】
好ましくは、該プラスチック含有材料の平均直径は0mmよりも大きく5mm以下である。例えば、1mm、2mm、3mm、4mmまたは5mmである。
【0035】
本発明の加熱工程の加熱温度は80℃から140℃である。例えば、80℃、100℃、120℃または140℃である。好ましくは、該加熱工程の加熱温度は130℃から140℃である。例えば、130℃、133℃、136℃、139℃または140℃である。
【0036】
1つの実施形態中において、該加熱工程中での撹拌の速度は15rpmから40rpmである。例えば、15rpm、20rpm、25rpm、30rpm、35rpmまたは40rpmである。本発明は撹拌することで、プラスチック含有材料が持続的に溶剤中で懸濁するように維持して、溶解効率および回収率を向上することができる。
【0037】
1つの実施形態中において、該加熱工程の時間は15分間から60分間である。例えば、15分間、20分間、30分間、40分間、50分間または60分間である。
【0038】
1つの実施形態中において、該溶剤が100mlであることを基準として、該プラスチック含有材料の重量は0gよりも大きく2.2g以下である。例えば、0.05g、0.1g、0.15g、0.2g、0.25g、0.3g、0.35g、0.4g、0.5g、0.6g、0.7g、0.8g、0.9g、1.0g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9g、2.0g、2.1gまたは2.2gである。好ましくは、該溶剤が100mlであることを基準として、該プラスチック含有材料の重量は1.4gから1.6gである。本発明によれば、前記溶剤の体積とプラスチック含有材料の重量との比率範囲は、第1の混合物を撹拌しやすくするのみならず、更にプラスチック回収率の向上に寄与する。
【0039】
1つの実施形態中において、該溶剤と該溶剤混和液との合計体積が100mlであることを基準として、該プラスチック含有材料の重量は0gよりも大きく2.2g以下である。例えば、0.05g、0.1g、0.15g、0.2g、0.25g、0.3g、0.35g、0.4g、0.5g、0.6g、0.7g、0.8g、0.9g、1.0g、1.1g、1.2g、1.3g、1.4g、1.5g、1.6g、1.7g、1.8g、1.9g、2.0g、2.1gまたは2.2gである。好ましくは、該溶剤と該溶剤混和液の合計体積が100mlであることを基準として、該プラスチック含有材料の重量は1.4gから1.6gである。本発明によれば、前記溶剤と溶剤混和液との合計体積とプラスチック含有材料の重量との比率範囲は、第1の混合物を撹拌しやすくするのみならず、プラスチック回収率の向上に寄与する。
【0040】
1つの実施形態中において、前記(三)加熱工程は、(三の一)該第1の混合物を加熱して80℃から140℃の温度で撹拌して、該プラスチックを該溶剤に溶解させることで、第2の混合物を得ることと、(三の二)該第2の混合物をメッシュフィルタでろ過することで、溶解液を得ることと、を含む。本発明では溶剤に溶解しない不純物を除去することで、回収物の純度を向上することができる。
【0041】
1つの実施形態中において、前記(三の二)工程は、該第2の混合物を得たのち、該第2の混合物を静置することで、静置済みの第2の混合物を得る沈殿工程を更に含む。このうち、該静置済みの第2の混合物の温度は該第2の混合物の温度よりも低く、しかも上澄み液と沈殿物を含み、更に該上澄み液中の不純物をメッシュフィルタでろ過することで、該溶解液を得る。言い換えれば、本発明は沈殿工程により、つまり該第2の混合物を加熱せず静置する方式に合わせて、溶解していない成分および懸濁物をメッシュフィルタで除去することで、不純物を除去することができる、ということである。
【0042】
好ましくは、該沈殿工程中にて、該第2の混合物を静置する時間は2時間から3時間である。本発明では、該第2の混合物を室温で静置する方式により、該静置済みの第2の混合物に顕著な沈殿現象が出現した後に、更に該上澄み液をメッシュフィルタでろ過していることから、該第2の混合物を直接ろ過するものと比べても、ろ過に要する時間を短縮し、該溶解液に含まれる不純物量を低減することができる。
【0043】
上記をまとめるに、本発明のプラスチック回収方法は高いプラスチック回収率を有し、且つ溶剤と溶剤混和液とのいずれもが回収・再利用可能であり、コストを削減するのみならず、更には派生的な環境問題も回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明のプラスチック回収方法のフローチャートである。
【
図2】本発明のプラスチック回収方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下では、本発明の実施形態を説明しやすくするために、数種類の操作方式を提供する。当業者であれば、本明細書の内容から、本発明が達成することができる長所と効果を容易に理解することができるうえ、本発明の趣旨から離れることなく各種の付加および変更を行って、本発明の内容を実行し、応用することができる。
【0046】
図1に示すように、本発明のプラスチック回収方法では、まず工程S1:ポリプロピレンを含むプラスチックを含むプラスチック含有材料を準備する準備工程を実行する。具体的には、該プラスチック含有材料は、ポリプロピレンを含む産業廃棄物を粉砕した後に選別して得られた粉末である。例えば、10メッシュ(mesh)の篩で篩い分けして得られた直径が2mm以下である粒子状プラスチック含有材料である。
【0047】
続いて、S2:溶剤に溶解可能な該プラスチック含有材料と溶剤とを混合することで、第1の混合物を得る混合工程を実行する。具体的には、該溶剤にはキシレンを用いて、しかも該プラスチック含有材料とキシレンとを混合することで第1の混合物を得る。
【0048】
その後、S3:該第1の混合物を加熱して80℃から140℃の温度で撹拌して、該プラスチックを該溶剤に溶解させることで、溶解液を得る加熱工程を実行する。具体的には、該加熱工程の加熱温度は140℃であり、該撹拌速度は20rpmから30rpmであり、そして時間は20分間から40分間である。
【0049】
最後に、S4:該溶解液を負圧雰囲気下に置くことで該プラスチックを得る分離工程を実行する。具体的には、該溶解液を減圧濃縮装置に移した後密封して、空気を吸引して負圧を形成して、溶解液を沸騰させてキシレンを分離することで、フレーク状または顆粒状のポリプロピレンを得る。
【0050】
図1および
図2を参照されたい。プラスチック含有材料がポリプロピレンを含む産業廃棄物である場合、溶剤に溶解しない成分を含む。よって、該S3の加熱工程は、S3-1:該第1の混合物を加熱して80℃から140℃の温度で撹拌して、該プラスチックを該溶剤に溶解させることで、第2の混合物を得ることと、S3-2:該第2の混合物をメッシュフィルタでろ過することで、溶解液を得ることと、を含む。具体的には、溶解していない固体をメッシュフィルタを用いて除去することで、不純物を除去する。また、溶解していない固体をメッシュフィルタで除去する前に、まず該第2の混合物を室温に静置して、該静置済みの第2の混合物に顕著な沈殿現象が出現した後、更に上澄み液を取ってろ過を行うことができる。
【0051】
試験例1および試験例2:溶剤回収条件の試験
本発明の工程(四)分離工程は、溶解液を負圧雰囲気に置くことから、まず負圧雰囲気に必要な圧力および対応する回収時間を以下のように試験した。溶剤としてキシレンを用いるとともに、キシレン溶液200mlを試料ビンに注いだ後、負圧雰囲気に置くものである。これはつまり減圧濃縮器中にて、本発明の工程(四)分離工程を模擬試験した。このうち、試験例1および試験例2の試料ビンは減圧濃縮器中でいずれも水浴上で加熱するが、温度は80℃に設定し、試料ビンの回転数は20rpmに設定するとともに、吸気ポンプに付属している圧力計で圧力を計測して、水浴上で室温から加熱し始めて200mlのキシレン溶液が完全に蒸発するまでの時間を記録した。結果を表1に示す。また、吸気ポンプの機能は空気吸引であって、負圧雰囲気の圧力を正確に調節するのが難しいことから、単に20mbを基準として、負圧雰囲気の圧力を2組に分けて試験を行った。
【0052】
【表1】
表1から分かるように、試験例1の負圧雰囲気の圧力は20mbよりも大きく80mbまでであり、約1気圧(1.013bar)の20%から80%であり、必要とする蒸発時間は約30分間であった。試験例2の負圧雰囲気の圧力は0mbから20mbであり、約1気圧(1.013bar)の0%から20%であり、必要とする蒸発時間は約15分間であり、しかも試験例1および試験例2の溶剤回収率はいずれも98%よりも高かった。すなわち、負圧雰囲気の圧力の低下が溶剤回収率に影響しない条件にて、本発明の工程(四)分離工程での必要時間を大幅に短縮して、効率を向上していることが分かる。
【0053】
実施例1から実施例7
実施例1から実施例7で用いたプラスチック含有材料、溶剤および溶剤混和液は表2に示す。まず、プラスチック含有材料を破砕装置で粉砕するとともに、10メッシュ(mesh)の篩で篩い分けすることで、直径が2mm以下の粒子状プラスチック含有材料を得た。粒子状プラスチック含有材料3gを溶剤(または溶剤と溶剤混和液とを含む混合溶液)に加えた後、第1の混合物を得た。その後、該第1の混合物を電気炉で140℃まで加熱するとともに、加熱中に20rpmから30rpmの回転数で該第1の混合物を撹拌し、且つ140℃に維持して20分間から40分間持続的に撹拌することで、該粒子状プラスチック含有材料を溶解して、溶解液を得た。
【0054】
溶解液を減圧濃縮装置に移すとともに、90℃の加温槽で溶解液を保温するとともに、凝縮器の水流スイッチをONにした。減圧濃縮システムが密封されていることを確認した後、吸気ポンプを起動して、システム内の圧力を0mb~20mbにまで下げるとともに、溶解液が沸騰し始めるか、または蒸発した後に、吸気ポンプを停止して、更に凝縮器により溶剤(および溶剤混和液)の蒸気を冷却することで溶剤(および溶剤混和液)を回収すると同時に、システム内の圧力が上昇しないように保持した。最後に、溶剤(および溶剤混和液)が完全に蒸発した後、フレーク状または粒子状の固形ポリプロピレンを得るとともに、残留したキシレン臭を純水で洗浄除去した後に送風乾燥させることで、回収後のポリプロピレンを得て、更に計量および外観検査を行った。結果は表3に示す。上記溶剤および溶剤混和液を含む混合溶液は、回収した後は再利用可能であり、分離する必要はない。または溶剤および溶剤混和液を用いて、それぞれ沸点が異なる特性により分離した。
【0055】
上記回収した溶剤(および溶剤混和液)は清澄な状態であり、再利用可能である。また、本発明の実施例5から実施例7ではポリプロピレンを含む産業廃棄物を用いていることから、溶剤に溶解しない成分を含むため、加熱工程と分離工程との間で、ろ過工程:500メッシュのステンレス製メッシュフィルタでろ過を行うことで、25μm以上の固形分を除去する。また、溶解液をろ過する前に、先に溶解液を室温に2.5時間静置し、これを冷却して顕著な沈殿が出現した後、その上澄み液を取りろ過した。最後に、実施例5から実施例7で用いるポリプロピレンを含む産業廃棄物が溶解する前に、先にポリプロピレンが含まれているかを光学法で確認するとともに、残留した有機物と不純物とを強酸化剤を用いて除去した。
【0056】
【0057】
【表3】
実施例1から実施例4の比較で分かるように、溶剤としてキシレンを用いて得られたポリプロピレンは回収重量が最高で、しかも93.7%(計算式は、2.81/3×100%)にまで達している。そして溶剤の一部分の代わりに溶剤混和液を用いたとき、ポリプロピレンの回収重量はわずかに減少しただけであることから、溶剤混和液は確実に溶剤と置き換えることができることを示す。しかも、ポリプロピレンは溶剤混和液に溶解しにくいとしても、高いポリプロピレンの回収率を維持している。次に、実施例1から実施例4の溶剤の回収率はいずれも90%を超え、場合によっては95%を超えており、損失は極めて低かった。実施例1から実施例4で得られた回収物は、そのFTIR分析結果は市販のポリプロピレンの信号と一致していることから、本発明はポリプロピレンを確実に効果的に回収することができることが分かる。最後に、実施例5から実施例7のポリプロピレンを含む産業廃棄物のポリプロピレン含有量は不明であることから、同じ方式で3回試験を行った。実施例5から実施例7で得られた回収ポリプロピレンの色はいずれも市販のポリプロピレンよりも暗色となることから、これは純ポリプロピレンではないと分析され、キシレンに溶解可能なその他成分も含む可能性がある。
【0058】
実施例8から実施例11
実施例8から実施例11で用いるプラスチック含有材料、溶剤および溶剤混和液は表4に示す通りである。このうち、各グループの粒子状プラスチック含有材料はいずれも市販のポリプロピレンであり、(1)市販のポリプロピレンの添加量が0.8gであり、(2)各グループの溶剤はいずれも100mlのキシレンであり、そして(3)各グループの溶剤および溶剤混和液の体積比が1:1である以外、他の実験方法は実施例1から実施例7と同じである。
【0059】
【表4】
表4から分かるように、溶剤混和液としてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ブチルアセテート、イソアミルアセテートおよびシクロヘキサノンを用いるとき、ポリプロピレンの回収率はいずれも94%よりも高く、しかも実施例
9にてブチルアセテートを用いるとポリプロピレンの回収率は最適で96%に達するが、その溶剤および溶剤混和液の回収率は最低で75%に止まる。また、実施例3および実施例
11の溶剤混和液はいずれもシクロヘキサノンを用いており、且つキシレンとの体積比はいずれも1:1となり、実施例3のポリプロピレンの回収率は92.7%であり、実施例
11の95%と近いことから、ポリプロピレンの重量%(W/V)が1.5g/100mlに近いとき、回収効率は高くなる。
【0060】
上記をまとめて分かるように、本発明のプラスチック回収方法は確かに高いプラスチック回収率を有し、且つ溶剤と溶剤混和液とのいずれもが回収・再利用可能であり、コストを削減するのみならず、更には派生的な環境問題も回避することができる。
【要約】
【課題】本発明では、溶剤に加熱工程を組み合わせることで回収ターゲットを溶解するとともに、溶剤および回収ターゲットを負圧により分離するプラスチック回収方法を提供する。
【解決手段】本発明のプラスチック回収方法は高いプラスチック回収率を有する以外に、溶剤が回収・再利用可能であり、コストを削減するのみならず、更には派生的な環境問題も回避することができる。
【選択図】なし