(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】パイプシステムの漏れ又は漏れのリスクを減少させる方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/10 20060101AFI20221108BHJP
F17D 5/02 20060101ALI20221108BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20221108BHJP
G01M 3/02 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
F16L55/10
F17D5/02
C09K3/10 Q
C09K3/10 Z
G01M3/02 G
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018220731
(22)【出願日】2018-11-26
【審査請求日】2021-10-13
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519080595
【氏名又は名称】ピコテ ソリューションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ロッキネン,ミカ
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-047933(JP,A)
【文献】特開平01-207173(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0248265(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0056691(US,A1)
【文献】米国特許第8486314(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0024125(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0037146(US,A1)
【文献】特開平10-066928(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108373742(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/10
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプシステムの漏れ又は漏れのリスクを減少させる方法であって、
a.前記パイプシステム内へ封止組成物を導入するステップ(101,202)と、
b.前記パイプシステムからガスを除去して、パイプシステムに前記封止組成物を充填するステップ(102,203)と、
c.前記パイプシステム内の前記封止組成物に圧力を印加するステップ(103,204)と、
d.前記パイプシステムから前記封止組成物を部分的に排出して排出された封止組成物を収集するステップ(104,205)と、
を含む方法において、
前記封止組成物が金属粉末とキシレンとを含む単一成分組成物であり、前記部分的な排出は、前記パイプシステムの内面上に前記封止組成物の膜を残すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記膜の厚さは、前記パイプシステムの内面上で平均して500ミクロン未満である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記封止組成物が重量の少なくとも40%の固体内容物を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記封止組成物がアルミニウム粉末を含む請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記封止組成物が酸化亜鉛を含む請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記パイプシステム内へ封止組成物を導入する前記ステップ(202)の前にパイプシステムの初期漏れ流量の測定を行なうステップ(201)と、前記パイプシステムの内面上の封止組成物の前記膜が乾燥された(206)後にパイプシステムの残存漏れ流量の測定を行なうステップ(207)とを更に含む請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、少なくとも残存漏れ流量測定が漏れのないことを示すまで或いは初期漏れ流量測定と比べて5%未満の減少が残存漏れ流量において測定されるまで前の処理中に収集された封止組成物を再使用することによって繰り返される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
初期漏れ流量の測定及び残存漏れ流量の測定は、パイプシステム内が所定の空気圧に達するまで空気をパイプシステム内へ圧送するステップを含む請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
パイプシステムの前記部分的な排出は、前記封止組成物をパイプシステムから容器へと圧送するステップを含む請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記封止組成物は、金属粉末と、m-キシレン、p-キシレン、及び、o-キシレンのうちの少なくとも1つとを含む単一成分組成物である請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記封止組成物は、少なくとも3重量パーセントの金属粉末と、少なくとも25重量パーセントであるが50重量パーセント未満の反応質量のm-キシレン及びo-キシレン及びp-キシレン及びエチルベンゼンとを含む単一成分組成物である請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
パイプシステムの漏れ又は漏れのリスクを減少させるための、少なくとも3重量パーセントの金属粉末と、m-キシレン、p-キシレン、及び、o-キシレンのうちの少なくとも1つとを含む単一成分組成物の、前記パイプシステムの内面上に前記封止組成物の膜を形成することによる使用。
【請求項13】
単一成分組成物は、少なくとも3重量パーセントの金属粉末と、少なくとも25重量パーセントであるが50重量パーセント未満の反応質量のm-キシレン及びo-キシレン及びp-キシレン及びエチルベンゼンとを含む請求項12に記載の使用。
【請求項14】
単一成分組成物が物理的に乾燥する組成物である請求項12又は13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプを修理する方法に関し、特に、漏れ又は漏れのリスクを減少させるためにパイプに封止組成物が充填される修理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプは、気体及び液体のためのユーティリティ管路として使用される。一般に、大型の主パイプが舗装道路下に配置され、小型の横方向パイプが主パイプを道路に隣接する家屋に接続する。これらのパイプは、例えば、天然ガスを消費者へ運ぶためのステンレス鋼管であってもよい。パイプは経時的に腐食して劣化し、それにより、ガスを漏らす極めて小さい穴が形成される。したがって、パイプはメンテナンス或いは最終的には交換を要する。ガスパイプは直径が小さくなり得る。一般的な横方向パイプは直径が約20~30mmとなる可能性があり、それにより、下水管復旧から知られる方法による反転ライナを用いたパイプのライニングが不可能となる。また、パイプは、同様に下水管復旧から知られる方法による吹き付け塗装又はブラシ塗装のためにはあまりにも小さすぎる。また、ガスパイプがしばしば人口密集地域内で道路下及び建物下にあるため、パイプの交換も問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、工具を用いてアクセスすることが困難なパイプ内の漏れを減少させる方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、独立請求項1に係る方法及び独立請求項12に係る組成物の使用を用いて達成される。従属請求項が本発明の実施形態を開示する。
【0005】
以下、添付図面に関連する好ましい実施形態を用いて本発明を更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の一実施形態に係る方法の簡単な例を示す。
【
図2】本発明の一実施形態に係る反復方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の実施形態は、金属粉末とキシレンとを含む単一成分組成物である封止組成物の使用に基づく。好ましくは、パイプシステムには、封止組成物が任意の開口、穴、接合部、又は、他の漏れ構造に侵入するように封止組成物が完全に充填されて圧力が加えられる。最終的に、封止組成物は、パイプシステムの内面上に及び開口、穴、接合部、又は、他の漏れ構造に膜を残しつつパイプシステムから排出され、それにより、パイプシステムの漏れを減少させる又は阻止する。方法の開示された実施形態は、パイプシステムにおける漏れを減少させるため又はパイプシステムにおける漏れの危険を減少させるために使用され得る。
【0008】
この開示との関連において、単一成分組成物とは、それを増粘剤又は硬化剤と混合させる必要なくその状態をそのまま使用して送出できることを意味する。一例として、使用前に互いに混合されるエポキシ樹脂と硬化剤とから成る二成分エポキシは、この開示における単一成分組成物であると見なされない。
【0009】
この開示の実施形態は、金属パイプ、特に鋼管及びステンレス鋼管を備えるパイプシステムを処理するのに適している。前記実施形態は、2インチ、すなわち、50mm、1.25インチ、すなわち、32mm、1インチ、すなわち、25mm、及び/又は、1インチ未満、すなわち、25mm未満のパイプ直径に適している。パイプシステムは、圧縮空気、天然ガス、LNG、蒸気、プロセス流体、又は、任意の他の領域などの気体或いは液体を送出する工業用パイプシステム又はユーティリティパイプシステムであってもよい。
【0010】
ここで、
図1を参照すると、本発明に係る方法の簡略化された例が詳細に記載される。
図1の方法は4つの連続的なステップ101~104から成り、これらのステップの後に方法が終了する105。
【0011】
ステップ101:封止組成物がパイプシステムに導入される。好ましくは、封止組成物は、直接に或いは膨張タンクを介してパイプシステム内へ圧送される。パイプシステムは1つ以上の主パイプを備えることができ、該主パイプは、都市のガス分配ネットワーク又は前記ガス分配ネットワークの一部など、1つ以上の主パイプに流体接続する更に小さい横方向パイプを有する。大型パイプシステムは、ステップ101の前に差し込みパイプ又は閉鎖弁によって更に小さいパイプへと分割されることが好ましい。この方法を用いて処理されるべきパイプシステムに適したサイズは、封止組成物の意図しない乾燥又は他の同様の問題を伴うことなく確実に処理され得るようなサイズである。また、パイプシステムは、建物のストーブ及び加熱炉のためのガスを送出するガスパイプシステムなどの建物内の内部パイプシステムであってもよい。
【0012】
封止組成物は、好ましくは、金属粉末とキシレンとを含む単一成分組成物である。より好ましくは、前記封止組成物は、金属粉末と、m-キシレン、p-キシレン、及び、o-キシレンのうちの少なくとも1つとを含む単一成分組成物である。最も好ましくは、前記封止組成物は、少なくとも3重量パーセント及び/又は最大で5重量パーセント及び/又は最大で50重量パーセントの金属粉末と、少なくとも25重量パーセントであるが50重量パーセント未満の反応質量のm-キシレン及びo-キシレン及びp-キシレン及びエチルベンゼンとを含む単一成分組成物である。好ましくは、前記金属粉末は、アルミニウム粉末又は亜鉛粉末である。また、前記封止組成物は、少なくとも3重量パーセント及び/又は最大で5重量パーセントの酸化亜鉛を含むこともできる。前記封止組成物は、好ましくは重量の少なくとも40%、より好ましくは重量の少なくとも50%、及び、最も好ましくは重量の50%~55%の固体内容物を有する。封止組成物は、好ましくは、溶媒の蒸発によってのみ乾燥する物理的に乾燥する組成物である。一実施形態では、封止組成物が酸化アルミニウムを含む。一実施形態において、キシレンは、開示される方法において封止組成物として使用されるときにキシレン系組成物と同様のコーティング特性及び/又は封止特性をもたらす他の溶媒と置き換えられ得る。
【0013】
ステップ102:ガスを前記パイプシステムから除去して、パイプシステムに前記封止組成物を充填する。ステップ101では、パイプシステム内のエアポケット又はガスポケットの形成が実質的に避けられない。したがって、任意のガスがパイプシステムから除去される。システムから除去されるガスは、パイプシステムが封止組成物で満たされるまで封止組成物と置き換えられる。パイプシステムが完全に満たされると、封止組成物は、パイプシステムの露出内面の好ましくは95%、より好ましくは99%、及び、最も好ましくは約100%又は100%と接触する。パイプシステムの露出内面は、パイプシステムを完全に満たす流体と接触する処理されるパイプシステムの領域である。
【0014】
ガスの除去は、パイプシステムの各パイプのエアリングによって行なうことができる。パイプのエアリングは、封止組成物をパイプ又はパイプシステムへ導入するための端部とは反対側の端部で弁、接続、タップ、又は、パイプを開放することによって行なうことができる。例えば、主パイプと家屋の近傍で供給を行なう幾つかの横方向パイプとから成るパイプシステムは、封止組成物を主パイプ内へ導入して家屋内の横方向ラインの端部を開放することにより横方向ラインを一つずつエアリングすることによって充填され得る一方で、横方向ラインの端部においてガスが家屋内で外気に晒されるようにポンプがより多くの封止組成物を主パイプ内へ圧送する。封止組成物の任意の不測の排出物は、容器へと集められ、前記ポンプを介してこの排出物を元のパイプシステムに導入することによって再使用され得る。
【0015】
ステップ103:前記パイプシステム内の前記封止組成物に圧力を印加する。ステップ101において開示されたように、封止組成物は、直接に又は膨張タンクを介してパイプシステム内へ圧送される。ポンプは、パイプシステムがエアリングされて封止組成物で満たされた時点でパイプシステム内の超大気圧を維持するように動作される。前記圧力は、好ましくは100~500kPa、より好ましくは150~300kPaである。前記圧力は、パイプシステム又はその任意の部分の最大許容圧力を超えるべきではない。この圧力により、封止組成物が任意の開口、穴、接合部、又は、他の漏れ構造或いは劣化構造に侵入する。好ましくは、圧力が経時的に減少する傾向がある場合にパイプシステムから漏れる封止組成物の量を推定するために、封止組成物の漏れ流量がこのステップ中に測定される。
【0016】
圧力は、封止組成物の適切な侵入を確保するために特定の期間にわたって維持される。圧力は、例えば1秒間~1時間、好ましくは10秒間~10分間、及び、最も好ましくは15秒間~5分間にわたって維持され得る。
【0017】
ステップ104:前記パイプシステムから前記封止組成物を部分的に排出させて、排出された封止組成物を収集する。部分的な排出という用語は、封止組成物の任意の溜り又は小溜りがパイプシステムから除去されてしまうまで封止組成物を排出することを指す。前記部分的な排出の後、封止組成物の薄膜が、パイプシステムの内面、好ましくはパイプシステムの露出内面の95%、より好ましくは99%、最も好ましくは約100%又は100%を覆う。前記膜は、想定し得る開口、穴、接合部、及び、他の漏れ構造も覆い、それにより、パイプシステムの漏れを減少又は阻止する。前記膜の厚さは、パイプシステムの内面上で好ましくは、平均して、500ミクロン未満、より好ましくは300ミクロン未満、及び、最も好ましくは50~200ミクロンである。
【0018】
排出は、吸引ポンプ、空気の吹き出し、空気の吸引を用いて、或いは、液体を排出するための他の手段を用いて容易にされ得る。排出された封止組成物は、同じパイプシステム内で又はその後に他のパイプシステム内で封止組成物を再使用するために封止可能なタンクなどの容器内へと収集される。封止組成物は単一成分組成物であるため、排出された封止組成物は、閉じられた容器内に長期間にわたって保管されて例えば他のパイプシステムで再使用され得る。長期にわたる保管期間が排出された封止組成物の乾燥をもたらした場合には、必要に応じて、封止組成物の当初の粘性を回復させるためにキシレンなどの適切なシンナーを使用することができる。
【0019】
この時点で、パイプシステムは、封止組成物を用いて処理され、例えば8時間、24時間にわたって、或いは、パイプシステムが再び使用される前に封止組成物が完全に乾燥するまで、乾燥させることができる。
【0020】
ここで、
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る反復方法の一例について詳しく説明する。
図2の方法は7つのステップ201~207から成り、これらのステップの後に、方法は、条件208及び/又は209が満たされるか否かに応じて、終了する210、或いは、ステップ202~207が繰り返される。
【0021】
ステップ201:パイプシステムの漏れ流量が測定される。漏れ流量は、封止組成物を前記パイプシステムに導入するステップ202の前に、パイプシステムがその初期状態にあるときに測定される。漏れ流量の測定は、例えば、パイプシステム内が所定の空気圧に達するまで空気をパイプシステム内へ圧送して経時的な圧力変化を監視することによって実現され得る。また、当該技術分野において知られる他の漏れ流量測定を使用することもできる。結果として得られる漏れ流量が初期漏れ流量である。
【0022】
ステップ202:封止組成物がパイプシステムに導入される。好ましくは、封止組成物は、直接に或いは膨張タンクを介してパイプシステム内へ圧送される。パイプシステムは1つ以上の主パイプを備えることができ、該主パイプは、都市のガス分配ネットワーク又は前記ガス分配ネットワークの一部など、1つ以上の主パイプに流体接続する更に小さい横方向パイプを有する。大型パイプシステムは、ステップ201の前に差し込みパイプ又は閉鎖弁によって更に小さいパイプへと分割されることが好ましい。この方法を用いて処理されるべきパイプシステムに適したサイズは、封止組成物の意図しない乾燥又は他の同様の問題を伴うことなく確実に処理され得るようなサイズである。また、パイプシステムは、建物のストーブ及び加熱炉のためのガスを送出するガスパイプシステムなどの建物内の内部パイプシステムであってもよい。
【0023】
封止組成物は、好ましくは、金属粉末とキシレンとを含む単一成分組成物である。より好ましくは、前記封止組成物は、金属粉末と、m-キシレン、p-キシレン、及び、o-キシレンのうちの少なくとも1つとを含む単一成分組成物である。最も好ましくは、前記封止組成物は、少なくとも3重量パーセント及び/又は最大で5重量パーセント及び/又は最大で50重量パーセントの金属粉末と、少なくとも25重量パーセントであるが50重量パーセント未満の反応質量のm-キシレン及びo-キシレン及びp-キシレン及びエチルベンゼンとを含む単一成分組成物である。好ましくは、前記金属粉末は、アルミニウム粉末又は亜鉛粉末である。また、前記封止組成物は、少なくとも3重量パーセント及び/又は最大で5重量パーセントの酸化亜鉛を含むこともできる。前記封止組成物は、好ましくは重量の少なくとも40%、より好ましくは重量の少なくとも50%、及び、最も好ましくは重量の50%~55%の固体内容物を有する。封止組成物は、好ましくは、溶媒の蒸発によってのみ乾燥する物理的に乾燥する組成物である。一実施形態では、封止組成物が酸化アルミニウムを含む。一実施形態において、キシレンは、開示される方法において封止組成物として使用されるときにキシレン系組成物と同様のコーティング特性及び/又は封止特性をもたらす他の溶媒と置き換えられ得る。
【0024】
ステップ203:ガスを前記パイプシステムから除去して、パイプシステムに前記封止組成物を充填する。ステップ201では、パイプシステム内のエアポケット又はガスポケットの形成が実質的に避けられない。したがって、任意のガスがパイプシステムから除去される。システムから除去されるガスは、パイプシステムが封止組成物で満たされるまで封止組成物と置き換えられる。パイプシステムが完全に満たされると、封止組成物は、パイプシステムの露出内面の好ましくは95%、より好ましくは99%、及び、最も好ましくは約100%又は100%と接触する。パイプシステムの露出内面は、パイプシステムを完全に満たす流体と接触する処理されるパイプシステムの領域である。
【0025】
ガスの除去は、パイプシステムの各パイプのエアリングによって行なうことができる。パイプのエアリングは、封止組成物をパイプ又はパイプシステムへ導入するための端部とは反対側の端部で弁、接続、タップ、又は、パイプを開放することによって行なうことができる。例えば、主パイプと家屋の近傍で供給を行なう幾つかの横方向パイプとから成るパイプシステムは、封止組成物を主パイプ内へ導入して家屋内の横方向ラインの端部を開放することにより横方向ラインを一つずつエアリングすることによって充填され得る一方で、横方向ラインの端部においてガスが家屋内で外気に晒されるようにポンプがより多くの封止組成物を主パイプ内へ圧送する。封止組成物の任意の不測の排出物は、容器へと集められ、前記ポンプを介してこの排出物を元のパイプシステムに導入することによって再使用され得る。
【0026】
ステップ204:前記パイプシステム内の前記封止組成物に圧力を印加する。ステップ202において開示されたように、封止組成物は、直接に又は膨張タンクを介してパイプシステム内へ圧送される。ポンプは、パイプシステムがエアリングされて封止組成物で満たされた時点でパイプシステム内の超大気圧を維持するように動作される。前記圧力は、好ましくは100~500kPa、より好ましくは150~300kPaである。前記圧力は、パイプシステム又はその任意の部分の最大許容圧力を超えるべきではない。この圧力により、封止組成物が任意の開口、穴、接合部、又は、他の漏れ構造或いは劣化構造に侵入する。好ましくは、圧力が経時的に減少する傾向がある場合にパイプシステムから漏れる封止組成物の量を推定するために、封止組成物の漏れ流量がこのステップ中に測定される。結果として得られる漏れ流量が封止組成物漏れ流量である。
【0027】
圧力は、封止組成物の適切な侵入を確保するために特定の期間にわたって維持される。圧力は、例えば1秒間~1時間、好ましくは10秒間~10分間、及び、最も好ましくは15秒間~5分間にわたって維持され得る。
【0028】
ステップ205:前記パイプシステムから前記封止組成物を部分的に排出させて、排出された封止組成物を収集する。部分的な排出という用語は、封止組成物の任意の溜り又は小溜りがパイプシステムから除去されてしまうまで封止組成物を排出することを指す。前記部分的な排出の後、封止組成物の薄膜が、パイプシステムの内面、好ましくはパイプシステムの露出内面の95%、より好ましくは99%、最も好ましくは約100%又は100%を覆う。前記膜は、想定し得る開口、穴、接合部、及び、他の漏れ構造も覆い、それにより、パイプシステムの漏れを減少又は阻止する。前記膜の厚さは、パイプシステムの内面上で好ましくは、平均して、500ミクロン未満、より好ましくは300ミクロン未満、及び、最も好ましくは50~200ミクロンである。
【0029】
排出は、吸引ポンプ、空気の吹き出し、空気の吸引を用いて、或いは、液体を排出するための他の手段を用いて容易にされ得る。排出された封止組成物は、同じパイプシステム内で又はその後に他のパイプシステム内で封止組成物を再使用するために封止可能なタンクなどの容器内へと収集される。封止組成物は単一成分組成物であるため、排出された封止組成物は、閉じられた容器内に長期間にわたって保管されて例えば他のパイプシステムで再使用され得る。長期にわたる保管期間が排出された封止組成物の僅かな乾燥をもたらした場合には、必要に応じて、封止組成物の当初の粘性を回復させるためにキシレンなどの適切なシンナーを使用することができる。エポキシなどの二成分組成物は、2つの成分の混合後に硬化プロセスを停止させる又は遅らせることができないため、適していない。二成分組成物が使用された場合、最良の場合のシナリオでは、二成分組成物が排出後に直ちに硬化し、また、二成分組成物がそれ自体を多量の廃棄物にならしめる。それぞれの処理は、新たな組成物が混合された後に処分されることを要し、それにより、莫大な量の廃棄物がもたらされて、生態学的及び経済的の両方において方法が実行不可能になる。
【0030】
ステップ206:パイプシステム内に残る封止組成物は、過剰な封止組成物の排出後に乾燥できるようになる。残存する封止組成物は、例えば8時間、24時間にわたって、或いは、封止組成物が完全に乾燥するまで、乾燥させることができる。任意の漏れが検出された場合には、この時点で、乾燥された封止組成物がパイプシステムの任意の穴、開口、亀裂、及び、他の漏れ部分を狭くする或いは更には塞ぐ膜を形成してしまっている。漏れがない部分は、乾燥した封止組成物により形成される薄膜に起因して補強される。前記薄膜は、封止組成物の金属粉末及び想定し得る他の金属成分から大部分が又は全体が形成され、それにより、パイプを補強するとともに当初のパイプシステムの特性が似ている金属層を構成する。例えば、溶媒が蒸発する際に封止組成物の乾燥薄膜から形成される金属層は、100℃よりもかなり高い温度に耐えることができるとともに、エポキシ及び他の高分子コーティングとは異なり、溶媒及び摩耗に対する良好な抵抗も有する。
【0031】
ステップ207:パイプシステムの漏れ流量が測定される。漏れ流量は、最近処理されたパイプシステムの封止組成物が少なくとも漏れ流量測定によって損なわれないように十分に乾燥されてしまったときに測定される。漏れ流量の測定は、例えば、パイプシステム内が所定の空気圧に達するまで空気をパイプシステム内へ圧送して経時的な圧力変化を監視することによって実現され得る。また、当該技術分野において知られる他の漏れ流量測定を使用することもできる。結果として得られる漏れ流量が残存漏れ流量である。
【0032】
ステップ208:漏れが減少されたか否かを評価するために、ステップ201で測定された初期漏れ流量がステップ207で測定された残存漏れ流量と比較される。処理に起因して漏れが減少されてしまっていない場合、それは、パイプシステム内にパイプの大きな穴又は欠けている断片が存在することを示す。減少が10%未満、好ましくは5%未満である場合、漏れが減少されなかったと見なされ得る。これは、封止組成物漏れ流量がステップ204中に測定されてそれがかなりの漏れを示した場合に確かめられ得る。封止組成物漏れ流量が最小量であるが他の2つの漏れ流量と比べて実在した場合には、漏れ流量測定のうちの1つにエラーが起こったことが想定し得ることから、測定設定がチェックされた後にステップ201へ戻されるべきである。3つの漏れ流量測定の全てが漏れのないことを示すことも想定でき、その場合、パイプシステムは、当初は漏れがなかったが、この時点で処理に起因して補強された。ステップ210では、方法の実行を終わらせることができる。
【0033】
漏れが例えば10%を超えて、好ましくは5%を上回って減少してしまった場合、それは、ステップ202~206で行なわれた処理がパイプシステムの漏れ部分の領域をかなり減少させたことを示す。これは、これらの部分内の乾燥した封止組成物の薄膜がこれらの部分を通じた漏れのかなりの減少をもたらしたことから、パイプシステムが複数の極めて小さい穴、開口、亀裂、又は、他の漏れ部分を有しているという間接的な表示である。方法は一時的に繰り返されるべきである。
【0034】
ステップ209:初期漏れ流量測定と残存漏れ流量測定との間の漏れの減少が100%である場合、それは、パイプシステムが当初は漏れていたがステップ202~206で行なわれた処理が最初の漏れを引き起こした任意の穴、開口、又は、亀裂を塞いだ又は封止したことを意味する。問題が解決され、ステップ201において方法の実行を終わらせることができる。一実施形態では、ステップ209が省かれ、また、ステップ208において漏れが減少した場合には、あらゆる場合において、方法がステップ202から継続する。これは、ステップ202~206で行なわれた処理が最初の漏れを引き起こした任意の穴、開口、又は、亀裂を塞いだ又は封止した後に、前の層の上に乾燥した封止組成物の他の薄膜を形成することによって最初の漏れを引き起こした部分を補強するべくパイプシステムが1回以上処理されるようにする。
【0035】
初期漏れ流量測定と残存漏れ流量測定との間の漏れの減少が100%未満である場合、それは、パイプシステムが当初は漏れていたがステップ202~206で行なわれた処理が最初の漏れを引き起こした任意の穴、開口、又は、亀裂を通じた漏れを減少したことを意味する。この場合、処理は、漏れを更に減少させる又は漏れを完全に阻止するために再び行なわれるべきである。方法の実行がステップ202から継続する。
【0036】
ステップ202:残存漏れ流量測定及び初期漏れ流量測定との比較の後に処理が繰り返されると、この時点で、ステップ205中に容器内へ収集された排出された封止組成物が、それをパイプシステムに導入することによって再使用される。これにより、封止組成物の廃棄物の生成が排除されて方法の使用が可能になる。これは、ステップ202においてパイプシステムに導入される封止組成物の大部分がステップ205においてパイプシステムから排出されて再び使用され得るからである。
【0037】
当業者であれば分かるように、前述の典型的な実施形態は、例示目的のため、工程がかなり単純である。この特許出願に示されるモデルに従うことにより、この特許出願に開示される発明力のある着想を利用する異なる非常に複雑でさえある解決策を構成することができる。