(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】移注部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61J 1/20 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
A61J1/20 316C
A61J1/20 314B
(21)【出願番号】P 2018232187
(22)【出願日】2018-12-12
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2018080832
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000225278
【氏名又は名称】内外化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】樋上 和紀
【審査官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-077217(JP,A)
【文献】特開2012-239529(JP,A)
【文献】特開2003-102807(JP,A)
【文献】特開2017-192839(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0203481(US,A1)
【文献】国際公開第2013/172449(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体と、
前記筒状体の内部に収容され、当該筒状体の内側面に沿ってスライド移動可能な連通部とを有する移注部材であって、
前記連通部は、
板状部と、
前記板状部の一方の面における中心部において、前記筒状体の開口部に向けて立設する第1穿刺針と、
前記板状部の他方の面における中心部において、前記筒状体の底部に向けて立設する第2穿刺針とを備え、
前記筒状体の底部には、当該底部の孔部を外方から閉塞する底部補完部が設けられており、
前記底部補完部は、
基台部と、
前記基台部の中央に設けられ、前記第2穿刺針による貫通が可能な薄肉部とを備え、
かつ、前記筒状体よりも機械的強度が小さく、
前記底部補完部は、前記筒状体の底部との接触面
で熱溶着
した状態で当該筒状体の底部と接合して
なる移注部材。
【請求項2】
前記底部補完部の前記基台部における前記筒状体の底部との接触面には、当該底部との接合を補強するためのアンカリング部が設けられている請求項1に記載の移注部材。
【請求項3】
前記アンカリング部は、前記基台部上の前記薄肉部が設けられている領域以外の領域に複数設けられており、
かつ、相互に等間隔となる様に同一円周上に配置されている請求項2に記載の移注部材。
【請求項4】
前記アンカリング部の一部は、前記基台部に対し略垂直方向に立設する支持部により支持されており、
前記支持部により支持されていない部分は、前記基台部の表面に対して平行な方向であって、当該基台部の中心方向以外の方向に、前記基台部に対し離間した状態で延在している請求項2又は3に記載の移注部材。
【請求項5】
前記底部補完部と前記筒状体の底部とは、少なくとも前記アンカリング部を熱溶融させて接合している請求項2~4の何れか1項に記載の移注部材。
【請求項6】
前記底部補完部の中央部には、前記第2穿刺針による前記薄肉部の貫通をガイドする筒状の穿刺針ガイド部が設けられ、
前記穿刺針ガイド部の底面には前記薄肉部が設けられており、
前記穿刺針ガイド部は、前記筒状体の底部の孔部から当該筒状体の内方に突出している請求項1~5の何れか1項に記載の移注部材。
【請求項7】
前記基台部の中央部には、前記筒状体の内方に向かって先細りの略円錐台状の補強部が設けられており、
前記穿刺針ガイド部は、前記補強部の中心において、前記筒状体の内方及び外方に
向かってそれぞれ突出
するように設けられ、
かつ、当該穿刺針ガイド部の底面に設けられた前記薄肉部の外側面は、前記基台部の外側面よりも高さ位置が高い請求項6に記載の移注部材。
【請求項8】
前記薄肉部の内側面には、前記第2穿刺針を当該薄肉部に貫通させる際の刺通抵抗を低減させる潤滑剤が塗布されている請求項1~7の何れか1項に記載の移注部材。
【請求項9】
筒状体と、
前記筒状体の内部に収容され、当該筒状体の内側面に沿ってスライド移動可能な連通部とを有する移注部材の製造方法であって、
板状部と、前記板状部の一方の面における中心部において、前記筒状体の開口部に向けて立設する第1穿刺針と、前記板状部の他方の面における中心部において、前記筒状体の底部に向けて立設する第2穿刺針とを備えた、前記連通部を成形する連通部成形工程と、
基台部と、前記基台部の中央に設けられ、前記第2穿刺針による貫通が可能な薄肉部とを備え、
かつ、前記筒状体よりも機械的強度が小さい底部補完部を成形する底部補完部成形工程と、
前記底部との接触面で前記底部補完部が熱溶着により接合した筒状体を、インサート成形又は二色成形により成形する筒状体成形工程と、
前記底部補完部と一体となった前記筒状体の内部に、前記連通部を収容させて前記移注部材を組み立てる組立工程とを含む移注部材の製造方法。
【請求項10】
前記底部補完部成形工程は、前記基台部の中央に設けられる前記薄肉部以外の部分に、前記底部との接合を補強するためのアンカリング部を備えた前記底部補完部を成形する工程である請求項9に記載の移注部材の製造方法。
【請求項11】
前記底部補完部成形工程で成形される前記底部補完部の前記アンカリング部は、前記基台部上の前記薄肉部が設けられている領域以外の領域に、複数設けられており、
かつ、相互に等間隔となる様に同一円周上に配置されている請求項10に記載の移注部材の製造方法。
【請求項12】
前記底部補完部成形工程で成形される前記底部補完部の前記アンカリング部は、
当該アンカリング部の一部が、前記基台部に対し略垂直方向に立設する支持部により支持されており、
前記支持部により支持されていない部分が、前記基台部の表面に対して平行な方向であって、当該基台部の中心方向以外の方向に、前記基台部に対し離間した状態で延在した形状を有している請求項10又は11に記載の移注部材の製造方法。
【請求項13】
前記筒状体成形工程は、前記底部補完部における前記アンカリング部を
溶融樹脂が有する熱により熱溶融させて、当該底部補完部が熱溶着により接合した前記筒状体を成形する工程である請求項10~12の何れか1項に記載の移注部材の製造方法。
【請求項14】
前記底部補完部成形工程で成形される前記底部補完部の中央部には、前記第2穿刺針による前記薄肉部の貫通をガイドする筒状の穿刺針ガイド部が設けられており、
さらに、前記穿刺針ガイド部の底面には前記薄肉部が設けられ、
前記穿刺針ガイド部は、前記筒状体成形工程で成形される前記筒状体の底部の孔部から、当該筒状体の内方に突出している請求項9~13の何れか1項に記載の移注部材の製造方法。
【請求項15】
前記底部補完部成形工程で成形される前記底部補完部において、前記基台部の中央部には、前記筒状体の内方に向かって先細りの略円錐台状の補強部が設けられており、
前記穿刺針ガイド部は、前記補強部の中心において、前記筒状体成形工程で成形される前記筒状体の内方及び外方に
向かってそれぞれ突出
するように設けられ、
かつ、当該穿刺針ガイド部の底面に設けられた前記薄肉部の外側面は、前記基台部の外側面よりも高さ位置が高い請求項14に記載の移注部材の製造方法。
【請求項16】
前記組立工程の前に、前記筒状体成形工程で成形した前記筒状体における前記薄肉部の内側面に、前記第2穿刺針を当該薄肉部に貫通させる際の刺通抵抗を低減させる潤滑剤を塗布する塗布工程を行う請求項9~15の何れか1項に記載の移注部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移注部材及びその製造方法に関し、より詳細には、バイアル瓶等の薬剤容器内に収容された粉末製剤や凍結乾燥製剤等を、使用時に液体に溶解させ、又は当該液体で希釈させる両頭針を備えた移注部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者への点滴注射(輸液)を行うに際しては、バイアル等の薬剤容器に収容された粉末製剤や凍結乾燥製剤等の薬剤を、生理食塩水、ブドウ糖液若しくは純水等の液体に溶解させ、又は当該液体で希釈させて薬液とすることが行われる。その際に、薬剤を収容するバイアル瓶と、液体を収容するバッグ等の容器とを連通させるための器具として、両頭針を備えた移注部材が用いられる。
【0003】
前記移注部材としては、例えば、後記特許文献1に、筒状体と、両頭針を備え、筒状体内をスライド移動可能な第1内筒体と、第1内筒体内をスライド移動可能な第2内筒体とを含むものが開示されている。この移注部材によれば、筒状体と、第1内筒体との間には、第1内筒体のスライド移動を制限する第1係止機構が設けられ、また第1内筒体と第2内筒体との間には、第2内筒体のスライド移動を制限する第2係止機構が設けられている。そして、第1容器と第2容器を、移注部材を介して連通させる際には、第1容器が第2内筒体に挿し込まれておらず、かつ、第1係止機構及び第2係止機構によって第1内筒体及び第2内筒体のスライド移動が制限された状態に於いて、第1容器の前記口部を第2内筒体に向けて押し進めることにより、第1穿刺針を弾性閉鎖膜に刺通させる。また、第1係止機構及び第2係止機構による係止が解除されるとともに第1内筒体が第2容器側に押し進めることにより、第2穿刺針を封鎖膜に刺通させる。第1穿刺針と第2穿刺針は内部で連通している。そのため、特許文献1では、液体が外部に漏れるのを防止しながら、薬剤を溶解液に溶解させることができるとされている。
【0004】
ここで、特許文献1の移注部材を介して第1容器と第2容器を連通させる際には、当該移注部材はその形状維持のため、一定以上の機械的強度を有していることが必要である。しかし、機械的強度の大きい筒状体である場合、その底部における第2穿刺針の貫通が容易でなくなり、針刺性が低下する。その結果、移注部材の取り扱い性及び作業性が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、機械的強度を維持しつつ、取り扱い性及び作業性に優れた移注部材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る移注部材は、前記の課題を解決するために、筒状体と、前記筒状体の内部に収容され、当該筒状体の内側面に沿ってスライド移動可能な連通部とを有する移注部材であって、前記連通部は、板状部と、前記板状部の一方の面における中心部において、前記筒状体の開口部に向けて立設する第1穿刺針と、前記板状部の他方の面における中心部において、前記筒状体の底部に向けて立設する第2穿刺針とを備え、前記筒状体の底部には、当該底部の孔部を外方から閉塞する底部補完部が設けられており、前記底部補完部は、基台部と、前記基台部の中央に設けられ、前記第2穿刺針による貫通が可能な薄肉部とを備え、前記底部補完部は、前記筒状体の底部との接触面での熱溶着により、当該筒状体の底部と接合していることを特徴とする。
【0008】
前記の構成によれば、第1穿刺針及び第2穿刺針等を備える連通部を内部に収容可能な筒状体において、その底部の孔部を外方から閉塞することが可能な底部補完部が設けられている。そして、例えば、筒状体を機械的強度(剛性)の大きい樹脂材料で構成した場合にも、底部補完部を筒状体とは異なる機械的強度の小さい樹脂材料で構成することにより、底部補完部の薄肉部で第2穿刺針の貫通が困難になるのを防止することができる。また、筒状体を、例えば、光透過性を有する樹脂材料で構成した場合には、内部に収容された連結部に対する、筒状体外部からの視認性を良好にすることもできる。その結果、使用の際の取り扱い性及び作業性に優れた移注部材を提供することができる。
【0009】
また、前記構成における底部補完部は、その基台部と筒状体の底部との接触面での熱溶着により当該底部と接合しているため、例えば、筒状体の開口部をシール等により封止した場合には、使用直前まで連通部を筒状体の内部に密封した状態で収納することが可能になる。その結果、筒状体の内部への異物等の混入を防止し、殺菌状態の維持も図ることができる。
【0010】
前記の構成に於いて、前記底部補完部の前記基台部における前記筒状体の底部との接触面には、当該底部との接合を補強するためのアンカリング部が設けられていることが好ましい。これにより、例えば、第2穿刺針を底部補完部の薄肉部に貫通させる際にも、底部補完部が筒状体から脱落するのを防止することができる。
【0011】
また、前記アンカリング部は、前記基台部上の前記薄肉部が設けられている領域以外の領域に複数設けられており、かつ、相互に等間隔となる様に同一円周上に配置されていることが好ましい。複数のアンカリング部を基台部の同一円周上に等間隔で設けることにより、基台部と筒状体の底部との間での接合強度を均等にすることができ、底部補完部の筒状体底部からの脱落を一層防止することができる。
【0012】
前記の構成に於いて、前記アンカリング部の一部は、前記基台部に対し略垂直方向に立設する支持部により支持されており、前記支持部により支持されていない部分は、前記基台部の表面に対して平行な方向であって、当該基台部の中心方向以外の方向に、前記基台部に対し離間した状態で延在していることが好ましい。アンカリング部の一部を、基台部に対し略垂直方向に立設する支持部により支持することで、当該支持部に支持されていない部分を、基台部に対し離間した状態で延在させることができる。このような構造であると、例えば、底部補完部を金型内にインサートして筒状体を成形する際に、当該筒状体の構成材料である溶融樹脂をアンカリング部と基台部の間の隙間に流動させることができる。その結果、底部補完部と筒状体の底部との接触面での接合強度に優れた移注部材が得られる。
【0013】
また、アンカリング部のうち、支持部により支持されていない部分を、基台部の表面に対して平行な方向であって、基台部の中心方向以外の方向に延在させることにより、成形された底部補完部を金型から離型させる際に、金型を基台部の中心から離れる方向にスライド移動させることが可能になり、金型の型開きを容易に行うことができる。
【0014】
また前記の構成に於いて、前記底部補完部と前記筒状体の底部とは、少なくとも前記アンカリング部を熱溶融させて接合していることが好ましい。これにより、底部補完部と筒状体の底部での接合強度を一層向上させることができる。
【0015】
前記の構成に於いて、前記底部補完部の中央部には、前記第2穿刺針による前記薄肉部の貫通をガイドする筒状の穿刺針ガイド部が設けられ、前記穿刺針ガイド部の底面には前記薄肉部が設けられており、前記穿刺針ガイド部は、前記筒状体の底部の孔部から当該筒状体の内方に突出していることが好ましい。底部補完部の中央部に、筒状体の底部の孔部から内方に突出した穿刺針ガイド部を設け、当該穿刺針ガイド部の底面に薄肉部を設けることにより、第2穿刺針を薄肉部に確実に刺通させることができる。
【0016】
前記の構成に於いて、前記基台部の中央部には、前記筒状体の内方に向かって先細りの略円錐台状の補強部が設けられており、前記穿刺針ガイド部は、前記補強部の中心において、前記筒状体の内方及び外方にそれぞれ突出して設けられ、かつ、当該穿刺針ガイド部の底面に設けられた前記薄肉部の外側面は、前記基台部の外側面よりも高さ位置が高いことが好ましい。補強部は筒状体の内方に向かって先細りの略円錐台状であるため、第2穿刺針を薄肉部に刺通させる際の穿刺針ガイド部の機械的強度を向上させることができる。また、薄肉部の外側面は基台部の外側面よりも高さ位置が高いので、当該薄肉部の外側面が容器の口部等と接触するのを防止することができる。
【0017】
前記の構成に於いて、前記薄肉部の内側面には、前記第2穿刺針を当該薄肉部に貫通させる際の刺通抵抗を低減させる潤滑剤が塗布されていることが好ましい。潤滑剤を薄肉部の内側面に塗布しておくことで、第2穿刺針を薄肉部に貫通させる際の刺通抵抗を低減させることができる。その結果、使用の際の取り扱い性に一層優れた移注部材を提供することができる。
【0018】
本発明の移注部材の製造方法は、前記の課題を解決する為に、筒状体と、前記筒状体の内部に収容され、当該筒状体の内側面に沿ってスライド移動可能な連通部とを有する移注部材の製造方法であって、板状部と、前記板状部の一方の面における中心部において、前記筒状体の開口部に向けて立設する第1穿刺針と、前記板状部の他方の面における中心部において、前記筒状体の底部に向けて立設する第2穿刺針とを備えた、前記連通部を成形する連通部成形工程と、基台部と、前記基台部の中央に設けられ、前記第2穿刺針による貫通が可能な薄肉部とを備えた、底部補完部を成形する底部補完部成形工程と、前記底部との接触面で前記底部補完部が熱溶着により接合した筒状体を、インサート成形又は二色成形により成形する筒状体成形工程と、前記底部補完部と一体となった前記筒状体の内部に、前記連通部を収容させて前記移注部材を組み立てる組立工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
前記の構成によれば、先ず、底部補完部を成形した後に(底部補完部成形工程)、当該底部補完部が熱溶着により接合した筒状体を、インサート成形又は二色成形により成形する(筒状体成形工程)。さらに、連通部成形工程で成形した連通部を、底部補完部と一体となった筒状体の内部に収容して移注部材を組み立てる(組立工程)ことにより、本発明の移注部材を製造する。このような製造方法であると、底部補完部については機械的強度の小さい樹脂材料で成形することにより、第2穿刺針による薄肉部の貫通を比較的容易にすることができる。また、筒状体については機械的強度の大きい樹脂材料で成形することにより、移注部材の使用の際にもその形状変形を抑制することができる。さらに筒状体を、光透過性を有する樹脂材料で成形した場合には、内部に収容された連結部に対する、筒状体外部からの視認性を良好にすることもできる。その結果、使用時の取り扱い性及び作業性が良好な移注部材を製造することができる。
【0020】
また、前記構成では、底部補完部を一対の金型内にインサートした状態で筒状体を成形するため、筒状体の底部に底部補完部が熱溶着した移注部材を得ることができる。これにより、底部補完部と筒状体の底部での接合強度を向上させることができ、底部補完部の脱落を防止することができる。
【0021】
前記の構成に於いて、前記底部補完部成形工程は、前記基台部の中央に設けられる前記薄肉部以外の部分に、前記底部との接合を補強するためのアンカリング部を備えた前記底部補完部を成形する工程であることが好ましい。これにより、例えば、第2穿刺針を底部補完部の薄肉部に貫通させる際にも、底部補完部が筒状体から脱落するのを防止することが可能な移注部材を作製することができる。
【0022】
前記の構成に於いて、前記底部補完部成形工程で成形される前記底部補完部の前記アンカリング部は、前記基台部上の前記薄肉部が設けられている領域以外の領域に、複数設けられており、かつ、相互に等間隔となる様に同一円周上に配置されていることが好ましい。複数のアンカリング部を基台部の同一円周上に等間隔で設けることにより、基台部と筒状体の底部との間での接合強度を均等にすることができ、底部補完部が筒状体底部から脱落するのを一層防止することが可能な移注部材を作製することができる。
【0023】
前記の構成に於いて、前記底部補完部成形工程で成形される前記底部補完部の前記アンカリング部は、当該アンカリング部の一部が、前記基台部に対し略垂直方向に立設する支持部により支持されており、前記支持部により支持されていない部分が、前記基台部の表面に対して平行な方向であって、当該基台部の中心方向以外の方向に、前記基台部に対し離間した状態で延在した形状を有していることが好ましい。アンカリング部の一部を、基台部に対し略垂直方向に立設する支持部により支持することで、当該支持部に支持されていない部分を、基台部に対し離間した状態で延在させることができる。これにより、筒状体成形工程において、キャビティ内に溶融樹脂を射出して筒状体を成形する際に、当該溶融樹脂をアンカリング部と基台部の間の隙間に流動させることが可能となり、底部補完部と筒状体の底部との接触面での接合強度に優れた移注部材を作製することができる。
【0024】
また、アンカリング部のうち、支持部により支持されていない部分を、基台部の表面に対して平行な方向であって、基台部の中心方向以外の方向に延在させることにより、成形された底部補完部を金型から離型させる際に、金型を基台部の中心から離れる方向にスライド移動させることが可能になり、金型の型開きを容易に行うことができる。
【0025】
前記の構成に於いて、前記筒状体成形工程は、前記底部補完部における前記アンカリング部を前記溶融樹脂が有する熱により熱溶融させて、当該底部補完部が熱溶着により接合した前記筒状体を成形する工程であることが好ましい。これにより、底部補完部と筒状体の底部での接合強度を一層向上させた移注部材を得ることができる。
【0026】
前記の構成に於いて、前記底部補完部成形工程で成形される前記底部補完部の中央部には、前記第2穿刺針による前記薄肉部の貫通をガイドする筒状の穿刺針ガイド部が設けられており、さらに、前記穿刺針ガイド部の底面には前記薄肉部が設けられ、前記穿刺針ガイド部は、前記筒状体成形工程で成形される前記筒状体の底部の孔部から、当該筒状体の内方に突出していることが好ましい。第2穿刺針による薄肉部の貫通をガイドするための筒状の穿刺針ガイド部を、筒状体の底部の孔部から内方に突出する様に設けることで、当該第2穿刺針を薄肉部に確実に刺通させることが可能な移注部材を作製することができる。
【0027】
前記底部補完部成形工程で成形される前記底部補完部において、前記基台部の中央部には、前記筒状体の内方に向かって先細りの略円錐台状の補強部が設けられており、前記穿刺針ガイド部は、前記補強部の中心において、前記筒状体成形工程で成形される前記筒状体の内方及び外方にそれぞれ突出して設けられ、かつ、当該穿刺針ガイド部の底面に設けられた前記薄肉部の外側面は、前記基台部の外側面よりも高さ位置が高いことが好ましい。基台部の中央部に、筒状体の内方に向かって先細りの略円錐台状の補強部を設けることにより、穿刺針ガイド部の機械的強度を向上させることができる。その結果、第2穿刺針を薄肉部に刺通させる際に、基台部が形状変形するのを防止することが可能な移注部材を得ることができる。また、薄肉部の外側面が基台部の外側面よりも高さ位置が高くなる様に底部補完部及び筒状体が成形されるため、当該薄肉部の外側面が容器の口部等と接触するのを防止することが可能な移注部材を作製することができる。
【0028】
前記の構成に於いて、前記組立工程の前に、前記筒状体成形工程で成形した前記筒状体における前記薄肉部の内側面に、前記第2穿刺針を当該薄肉部に貫通させる際の刺通抵抗を低減させる潤滑剤を塗布する塗布工程を行うことが好ましい。これにより、第2穿刺針を薄肉部に貫通させる際の刺通抵抗を低減させ、使用の際の取り扱い性に一層優れた移注部材を製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、第1穿刺針及び第2穿刺針等を備えた連通部を収容する筒状体の底部に、接触面で熱溶着した底部補完部を設けた構成となっている。これにより、例えば、機械的強度(剛性)の大きい筒状体を用いた場合にも、底部補完部については筒状体よりも機械的強度の小さい樹脂材料で構成することにより、第2穿刺針による底部補完部の薄肉部の貫通が困難になるのを防止することができる。その結果、取り扱い性及び作業性に優れた移注部材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態に係る薬剤混合キットの概略を表す断面模式図である。
【
図2】前記実施の形態に係る第1容器の概略構成を表す断面模式図である。
【
図3】前記薬剤混合キットにおける第2容器の概略構成を表す断面模式図である。
【
図4】前記薬剤混合キットにおける移注部材の概略構成を表す断面模式図である。
【
図5】同図(a)は前記移注部材において、底部補完部が設けられた筒状体の概略構成を表す断面模式図であり、同図(b)は筒状体のみの概略構成を表す断面模式図である。
【
図6】同図(a)及び(b)は、前記筒状体の下側筒状体の内側面を表す拡大断面模式図である。
【
図7】同図(a)は前記下側筒状体と熱溶着させる前の底部補完部の概略構成を表す斜視図であり、同図(b)は底部補完部を表す側面図である。
【
図8】同図(a)は底部補完部の垂直方向における断面図であり、同図(b)は底部補完部の要部を表す断面図である。
【
図9】同図(a)は底部補完部の概略構成を表す平面図であり、同図(b)は底部補完部におけるアンカリング部の概略構成を表す平面図である。
【
図10】同図(a)は前記薬剤混合キットにおける連通部の概略構成を表す斜視図であり、同図(b)は連通部を表す側面図である。
【
図11】前記実施の形態に係る移注部材の連通部における要部を表す部分拡大図である。
【
図12】同図(a)及び(b)は前記移注部材における第1穿刺針及び第2穿刺針の要部を表す部分拡大図であり、同図(c)は第1穿刺針及び第2穿刺針の側面視における要部を表す部分拡大断面図である。
【
図13】本発明の他の実施の形態に係る薬剤混合キットの概略を表す部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(薬剤混合キット)
本実施の形態に係る薬剤混合キットについて、以下に説明する。
図1は、本実施の形態に係る薬剤混合キットの概略を表す断面模式図である。
【0032】
図1に示すように、本実施の形態の薬剤混合キット1は、液体を収容する第2容器20と、両頭針を備えた移注部材30とを少なくとも備え、第1容器10に収容されている薬剤と、第2容器に収容されている液体とを移注部材30を介して混合させるキットである。
【0033】
[第1容器]
先ず、第1容器10について、
図2に基づき説明する。
図2は、本実施の形態に係る第1容器10の概略構成を表す断面模式図である。
【0034】
図2に示すように、第1容器10は、粉末製剤や(凍結)乾燥製剤等の薬剤(図示しない)を収容する。
図2に示すように、第1容器10は、口部102を有する第1容器本体部101と、弾性栓体103とを含む。口部102は略円形状に開口している。また、第1容器本体部101と口部102との間には、ネック部107が設けられている。弾性栓体103は口部102を密閉する様に設けられている。弾性栓体103は円柱状の全体形状を有しており、その針刺面104の中央部には凹部105が設けられている。これにより、弾性栓体103の中央部では周縁部と比較して厚さが薄くなっており、薄肉部が形成されている。さらに、凹部105は後述する第1穿刺針の針刺し位置に対応している。そのため、弾性栓体103の硬度が大きい場合などでは、第1穿刺針による弾性栓体103の貫通が困難になるのを防止することができる。
【0035】
第1容器本体部101としては特に限定されず、例えば、ガラス製容器又は樹脂性容器を採用することができる。
【0036】
弾性栓体103の材料としては特に限定されず、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマー樹脂等が挙げられる。前記ゴムとしては特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレン-イソブチレンゴム等が例示できる。また、前記熱可塑性エラストマー樹脂としては特に限定されず、例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリブタジエン系、ポリアミド系、ポリウレタン系等が例示できる。中でも共役ジエン系の熱可塑性エラストマーに水素添加した熱可塑性エラストマー(SEBS、SEPS、HSBR、SEBR、CEBC)が好適である。これらの熱可塑性エラストマー樹脂は単独で又は2種以上を併用することができる。
【0037】
弾性栓体103の特性について特に限定されない。但し、弾性栓体103の硬度については、第1穿刺針を押圧することにより、当該弾性栓体103が貫通することなく、第2穿刺針が筒状体の底部の薄肉部、及び第2容器の膜部を順次貫通できる程度であればよい。弾性栓体103の硬度は、JIS K6253法による測定に於いて、A30~70であることが好ましく、A40~60であることがより好ましい。
【0038】
弾性栓体103の厚さについても特に限定されない。但し、第1穿刺針を押圧することにより、弾性栓体103が貫通することなく、後述の第2穿刺針が筒状体の底部の薄肉部、及び第2容器の膜部を順次貫通させることができる様に設定するのが好ましい。
【0039】
[第2容器]
次に、第2容器20について、
図3に基づき説明する。
図3は、本実施の形態の薬剤混合キット1における第2容器20の概略構成を表す断面模式図である。
【0040】
図3に示すように、第2容器20は、薬剤と混合してこれを溶解し、又は希釈させる液体を収容する。第2容器20は、第2容器本体部201と、膜部202とを含む。第2容器本体部201は、移注部材30との接続側の一方端部203に連通口204を有している。また、一方端部203とは反対側の他方端部205には取り出し部206が設けられている。膜部202は連通口204を密閉する様に設けられている。また、膜部202は、連通口204の外周面よりも内方に位置する様に設けられている。さらに、一方端部203の周縁部にはフランジ部207が設けられており、移注部材30との接続を可能にしている。
【0041】
取り出し部206には、これを閉塞する医療用キャップが設けられている。さらに、医療用キャップには他の弾性栓体が設けられている。これにより、他の弾性栓体に穿刺針を穿刺することで、取り出し部206から薬液を取り出すことが可能になる。
【0042】
第2容器本体部201としては特に限定されず、例えば、輸液バッグ等の可撓性を有するものが挙げられる。また、第2容器本体部201の材料としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0043】
膜部202は第2容器本体部201と同一の材料からなるものが好ましいが、ゴムや熱可塑性エラストマー樹脂等の異なる材料からなるものであってもよい。膜部202の厚さは、弾性栓体103で後述の第1穿刺針を押圧することにより、薄肉部に第2穿刺針を貫通させる際に、当該弾性栓体103が少なくとも貫通されない範囲内で設定するのが好ましい。また、前記液体としては特に限定されず、例えば、生理食塩水、ブドウ糖液又は純水等が挙げられる。
【0044】
[移注部材]
次に、移注部材30について、
図4に基づき説明する。
図4は、本実施の形態の薬剤混合キット1における移注部材30の概略構成を表す断面模式図である。
【0045】
移注部材30は、第1容器10に収容される薬剤と第2容器20に収容される液体とを混合させる機能を有する。移注部材30は、
図4に示すように、筒状体301と、当該筒状体301の内部に収容され、当該筒状体301の内側面に沿ってスライド移動可能な連通部302とを含む。
【0046】
筒状体301は、
図5(a)に示すように、全体形状が有底の筒状であり、側壁には全周にわたり段差部311が設けられている。段差部311の上方側(第1容器10側)には、上側筒状体312が設けられ、下方側(第2容器20側)には下側筒状体313が設けられている。尚、
図5(a)は、本実施の形態の筒状体301の概略構成を表す断面模式図であり、同図(b)は後述する底部補完部を省略した筒状体301の概略構成を表す断面模式図である。
【0047】
筒状体301の材料としては特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ABS(acrylonitrile butadiene styrene)樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0048】
上側筒状体312には第1容器10を受け入れ可能にする開口部314が設けられている。また、上側筒状体312は、下側筒状体313と比較して内径及び外径が大きい構成となっている。上側筒状体312の直径は、少なくとも第1容器10の第1容器本体部101の直径よりも大きいことが好ましい。これにより、第1容器10の挿着を容易にすることができる。さらに、上側筒状体312の深さは特に限定されないが、少なくとも後述する両頭針の第1穿刺針の高さ(長さ)や、第1容器10の挿着状態を保持する保持部の高さと同等以上であることが好ましい。尚、上側筒状体312の開口部314は、移注部材30の使用前においては、フィルム等により密閉されており、筒状体301の内部の滅菌状態が保持されていることが好ましい。
【0049】
下側筒状体313の内側面であって段差部311の下方の近傍には、
図6(a)に示すように、連通部302の板状部を係止するための第1規制部315が設けられている(板状部の詳細については後述する。)。
図6(a)及び6(b)は、は本実施の形態の下側筒状体313の内側面を表す拡大断面模式図である。第1規制部315は、凹部が下側筒状体313の内側面に環状に設けられた構造となっている。これにより、第1規制部315は、連通部302が下側筒状体313の内側面を底部に向かってスライド移動するのを規制することができる。また、連通部302が筒状体301から脱落するのを防止することもできる。尚、第1規制部の形態としては、本発明はこれに限定されず、例えば、凸部が下側筒状体313の内側面に環状に設けられた構造であってもよい。
【0050】
さらに、下側筒状体313の内側面であって段差部311の下方の近傍には、
図6(b)に示すように、複数の第3規制部318が設けられている。第3規制部318は、凸部が下側筒状体313の内側面に環状に設けられた構造となっている。また、第3規制部318は、連通部302に設けられている乗り越え部337(詳細については後述する。)に対応する位置に設けられている。これにより、連通部302が上側筒状体312に向かってスライド移動し、筒状体301から連通部302が脱落するのを抑制することができる。尚、第3規制部の形態としては、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の凸部の形成位置は等距離でなくてもよい。また、第3規制部は、凸部が下側筒状体313の内側面の全周を環状に設けられた構造であってもよい。
【0051】
また、下側筒状体313の内側面であって第1規制部315よりも底部320側には、
図6に示すように、複数の第2規制部316が設けられている。第2規制部316は、凸部が下側筒状体313の内側面に等間隔で環状に設けられた構造となっている。これにより、第2規制部316は、連通部302が下側筒状体313の内側面を開口部314に向かってスライド移動するのを規制することができ、両頭針による第1容器10と第2容器20との連通状態の維持を図ることができる。尚、第2規制部の形態としては、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の凸部の形成位置は等距離でなくてもよい。また、第2規制部は、凸部が下側筒状体313の内側面の全周を環状に設けられた構造であってもよい。
【0052】
さらに、下側筒状体313の内側面であって、段差部311から底部320にかけては帯状の凹部からなるスライドガイド部317が設けられている(
図5参照)。スライドガイド部317は、連通部302の板状部の外周縁に設けられている張り出し部と嵌合可能となっている(張り出し部の詳細については後述する。)。スライドガイド部317の上端は、段差部311の下方(底部320に向かう方向)であって、環状に設けられている第1規制部315に位置していることが好ましい。また、スライドガイド部317の下端は、第2穿刺針が第2容器20の膜部202、及び筒状体301の底部320における薄肉部(詳細については後述する)を十分に貫通できる様に連通部302がスライド移動できる位置に設けられていることが好ましい。
【0053】
尚、スライドガイド部317は少なくとも1つ設けられていることが好ましい。本実施の形態においては3つのスライドガイド部317が設けられており、下側筒状体313内部における連通部302の安定したスライド移動を可能にしている。
【0054】
下側筒状体313の底部320には、
図5(a)及び
図5(b)に示すように、孔部319を外方から閉塞する底部補完部321が設けられている。この底部補完部321は、下側筒状体313の外部から底部320の接触部分と熱溶着により接合して設けられている。
【0055】
底部補完部321は、
図7~
図9に示すように、円形状の基台部322と、基台部322の中央部に設けられた補強部327と、補強部327の中心に設けられた第2穿刺針ガイド部325と、第2穿刺針ガイド部325の底面に設けられた薄肉部323とを備える。尚、
図7は底部補完部321を説明するための概略図であって、同図(a)は底部補完部321が下側筒状体と熱溶着させる前の概略構成を表す斜視図であり、同図(b)は底部補完部321を表す側面図である。
図8は底部補完部321を説明するための概略図であって、同図(a)は底部補完部321の垂直方向における断面図であり、同図(b)は底部補完部321の要部を表す断面図である。
図9(a)は底部補完部321の概略構成を表す平面図であり、同図(b)は底部補完部321におけるアンカリング部の概略構成を表す平面図である。
【0056】
基台部322の中央部には、筒状体301の内方に向かって先細りの略円錐台状の補強部327が設けられている。これにより、第2穿刺針を薄肉部323に刺通させる際の第2穿刺針ガイド部325の機械的強度を向上させることができる。補強部327の厚さは特に限定されず、穿刺針ガイド部325に付与させたい機械的強度の程度に応じて設定することができる。また、補強部327の斜面lの水平面に対する角度θも特に限定されず、第2穿刺針ガイド部325に付与させたい機械的強度の程度に応じて設定することができる。
【0057】
第2穿刺針ガイド325は、第2穿刺針による薄肉部323の貫通を容易にするため、当該第2穿刺針をガイドする機能を有しており、補強部327の中心に設けられている。第2穿刺針ガイド部325は全体形状が円筒状であり、筒状体301の孔部319から内方に突出している。また、第2穿刺針ガイド325は孔部319から外方にも突出する様に設けられている。さらに、薄肉部323は第2穿刺針ガイド部325の底面となる様に設けられている。第2穿刺針ガイド部325の高さ(基台部322の裏面326からの高さ)H1は、第2穿刺針をガイドすることが可能な高さであれば特に限定されず、適宜設定することができる。
【0058】
薄肉部323は、前述の通り、第2穿刺針ガイド部325の底面となる様に設けられているが、基台部322の裏面326や下側筒状体313の底部320の裏面328よりも高さ位置が内方となる様に設けられるのが好ましい。すなわち、薄肉部323の高さ(基台部322の裏面326から薄肉部323の裏面323aまでの高さ)H2は、第2容器20の連通口204における膜部202と少なくとも接触しない程度に離間していれば特に限定されず、適宜設定することができる。また、薄肉部323は、基台部322において当該薄肉部323が設けられていない部分と比較して厚みが薄くなっている。これにより、底部補完部321の剛性を確保してその機械的強度が低下し過ぎるのを防止しつつ、第2穿刺針による薄肉部323の貫通を容易にする。薄肉部323の厚さは、例えば、弾性栓体103で第1穿刺針を押圧する際に、第2穿刺針が薄肉部323を貫通可能な範囲で設定するのが好ましい。下側筒状体313の底部320に薄肉部323を設けることにより、使用前に行われる移注部材30の内部の滅菌状態を、使用直前まで保持することが可能になる。
【0059】
薄肉部323の内側面には、潤滑剤が塗布されていることが好ましい。これにより、第2穿刺針を薄肉部323に貫通させる際、第2穿刺針の外表面に潤滑剤が接触して付着する結果、刺通抵抗を低減させることができる。その結果、使用の際の取り扱い性に一層優れた移注部材30を提供することができる。潤滑剤としては特に限定されず、例えば、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0060】
底部補完部321は、筒状体301の底部320との接合強度を増大させるためのアンカリング部324を備えている。より具体的には、アンカリング部324は、基台部322における第2穿刺針ガイド部325が設けられている面側であって、当該第2穿刺針ガイド部325及び補強部327が設けられている部分以外の部分に、4つ設けられている(
図7(a)、
図7(b)及び
図9(a)参照)。各アンカリング部324は、基台部322上の同一円周上に均等に配置されている。また、各アンカリング部324は、
図9(a)に示すように、対称面Pを基準に、相互に鏡像関係となる様に設けられている。
【0061】
アンカリング部324は、基台部322に対し垂直方向に立設する支持部324aにより支持されている。また、アンカリング部324は、基台部322に対し一定の距離で離間した状態で、基台部322の表面に対して平行となる様に、当該基台部322の中心方向以外の方向に拡張して延在している。アンカリング部324を基台部322から離間させ、かつ、基台部322の表面に対して平行となる様に設けることで、当該アンカリング部324を金型内にインサートして筒状体301のインサート成形を行う際に、筒状体301の構成材料である溶融樹脂がアンカリング部324と基台部322との間のすき間に流れ込むようにすることができる。その結果、筒状体301と底部補完部321の接合強度を向上させることができる。
【0062】
尚、アンカリング部324及び支持部324aは、筒状体301のインサート成形の際に、前記溶融樹脂の熱により溶融するため、筒状体301と底部補完部321との接合面において、それらの形状は失われている。
【0063】
アンカリング部324の基台部322に対する高さ(厚さ)h1は、筒状体301の底部320の機械的強度、及び底部補完部321と底部320との接合強度の向上の観点から設定するのが好ましい。また、支持部324aの基台部322に対する高さh2は、筒状体301と底部補完部321の接合強度の向上の観点から設定するのが好ましい。
【0064】
また、アンカリング部324は、支持部324aに対し、基台部322の中心方向以外の方向に拡張して延在していることが好ましい。基台部322の中心方向以外の方向に拡張して延在させることにより、成形された底部補完部321を金型から離型させる際に、当該金型を基台部322の外周方向にスライド移動させることが可能になる。その結果、金型の型開きを容易に行うことができる。ここで、アンカリング部324のうち、支持部324aに支持されていない部分の長さLは、当該アンカリング部324を支持する支持部324aの厚さDと同等かそれより小さいことが好ましい(
図8(b)参照。)。これにより、底部補完部321が単独で存在する状態においては、支持部324aは、アンカリング部324を支持するための機械的強度を十分に確保することができる。その結果、アンカリング部324及び支持部324aの倒壊を防止することができる。
【0065】
アンカリング部324及び支持部324aは、ウェルド部分の発生を低減し得る位置に設けられるのが好ましい。そのような形成位置としては、例えば、筒状体301の構成材料である溶融樹脂の射出のゲート位置と対向しない位置が挙げられる。ゲート位置と対向する位置にアンカリング部324及び支持部324aを設けた場合、射出された溶融樹脂がアンカリング部324及び支持部324aに直接衝突して分離し、その後、再合流する部分でウェルドラインが発生することがあり好ましくない。
【0066】
さらに、アンカリング部324の平面視における形状(平面形状)、及び支持部324aの横断面形状(すなわち、基台部322の表面と平行な面における断面形状)は、ウェルド部分の発生を低減し得る形状であることが好ましい。例えば、底部補完部321を一対の金型内にインサートして筒状体301を成形する際、筒状体301の構成材料である溶融樹脂の射出のゲート位置を、
図9(a)に示すG
1及びG
2とし、溶融樹脂を底部補完部321の中心方向に向けて射出する様に設定する。また、アンカリング部の平面形状、及び支持部の横断面形状を左右対称にする。このような条件下では、流動する溶融樹脂が支持部に衝突すると、一旦分岐した後に合流するウェルド部分が、アンカリング部と基台部の間の隙間に形成される場合がある。その場合、金型内の空気はウェルド部分で微細な気泡となって滞留し、当該気泡が成形後の筒状体301におけるボイド発生の要因となり得る。
【0067】
しかし、本実施の形態のアンカリング部324は、その平面形状が全体として略円弧状となるように構成されている。また、アンカリング部324の平面形状において、底部補完部321の中心に対向する側の半径部分は凹状に湾曲している。さらに、支持部324aは、その横断面形状が、アンカリング部324が基台部322との間で間隙を形成する部分を除き、アンカリング部324の平面形状と一致する様に形成されている。アンカリング部324及び支持部324aがこのような形状であると、ゲート位置G1から射出され、
図9(b)の矢印Aで示す方向に流動する溶融樹脂を、極力阻害しない様にすることができる。また、アンカリング部324と基台部322との間の隙間には、矢印Aで示す方向を流動する溶融樹脂が最初に入り込むため、前述のウェルド部分が発生するのを防止することができる。その一方、ゲート位置G1から射出される溶融樹脂のうち、第2穿刺針ガイド部325及び補強部327に衝突した溶融樹脂は、その流動方向を変え、流動方向Aとは反対側からアンカリング部324及び支持部324aに向けて流れる(
図9(b)の矢印Bで示す方向)。しかし、アンカリング部324と基台部322との間の隙間には溶融樹脂がすでに入り込んでいるため、当該隙間で溶融樹脂同士が衝突してウェルド部分が形成されるのを回避することができる。これにより、アンカリング部324と基台部322の隙間において、ボイドが発生するのを防止することができる。
【0068】
基台部322の裏面326は、第2容器20の連通口204との接触面において熱溶着により接合されている。薄肉部323は、基台部322の裏面326と比較して高さ位置が内方となる様に設けられている。そのため、薄肉部323は、第2容器20の連通口204や当該連通口204を密閉する膜部202とは離間しており、非接触状態となっている。
【0069】
連通部302はいわゆる両頭針を備える構造を有しており、具体的には、
図10(a)及び10(b)に示すように、板状部331と、第1穿刺針332と、第2穿刺針333と、保持部334と、ガイド部335とを少なくとも有する。
図10(a)は連通部302の概略構成を表す斜視図であり、同図(b)は連通部302を表す側面図である。
【0070】
連通部302の材料としては特に限定されず、例えば、硬質のポリプロピレンや硬質のポリエチレン、ABS樹脂等の合成樹脂、ステンレス等の金属等が挙げられる。
【0071】
板状部331の全体形状は円形状であり、その直径は筒状体301における下側筒状体313の内側面に当接した状態でスライド移動可能となる様に設定されている。板状部331の厚さは特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0072】
また、板状部331の外周縁部には、連通部302が底部320に向かってスライド移動する際に、第2規制部316を乗り越えるのを容易する乗り越え部337が設けられている。乗り越え部337は、板状部331の外周縁部における、第2規制部316の形状に対応して矩形状に切り欠いた部分において、薄板が基端部分でのみ繋がった形状である。また、乗り越え部337の厚さは、板状部331よりも薄くなっている。乗り越え部337をこの様な構造にすることで、乗り越え部337が第2規制部316を通過する際には、当該乗り越え部337が基端部分で撓む結果、第2規制部316の乗り越えを可能にしている。尚、乗り越え部337は第2規制部316に対応して設けられる。
【0073】
尚、本発明は、乗り越え部に関し、
図10(a)及び10(b)に示す態様のものに限定されない。例えば、
図11に示す様な構造の乗り越え部337’であってもよい。
図11は、移注部材30における連通部302の要部を表す部分拡大図である。乗り越え部337’は、板状部331の外周縁部における取付面343に基端部分でのみ繋がった薄板部337aと、薄板部337aの面に対し垂直方向に立設して設けられたリブ337bとを備える。リブ337bは直角三角形状であり、薄板部337aの中央に位置している。また、リブ337bの底辺は薄板部337aに接合し、対辺(すなわち、底辺及び斜辺以外の辺)は取付面343に接合している。リブ337aを設けることで、第2規制部316の乗り越えを可能にしつつ、第2規制部316が乗り越えた後に薄板部337aが基端部分で折れ曲がった状態で維持されるのを防止することができる。
【0074】
尚、リブ337bについては、薄板部337aの中央に配置する態様の他、当該薄板部337aの両端に一対配置する態様であってもよい。この場合、薄板部337aの機械的強度をさらに向上させることができる。
【0075】
さらに、板状部331の外周縁部には、3つの張り出し部338が設けられている。張り出し部338は、その厚みの分だけ板状部331の外周縁部から張り出している。また、張り出し部338は円形状の板状部331と同様の曲率を有する板状の形状を有しており、板状部331に対し第2穿刺針333が立設する方向と同様の方向に立設して設けられている。これにより、張り出し部338をスライドガイド部317に嵌合させることができ、連通部302が回転しながら底部320に向かってスライド移動するのを防止することができる。
【0076】
尚、張り出し部338はスライドガイド部317に対応させて設けるのが好ましい。また、張り出し部338は、前述のスライドガイド部317に嵌合可能な形状であれば本実施の形態の形状に特に限定されない。さらに、張り出し部338の厚さはスライドガイド部317の深さに応じて設定され得る。また、張り出し部338の長さ(板状部331から立設している張り出し部338における板状部331から張り出し部338の先端までの最大高さ)についても、当該張り出し部338がスライドガイド部317との嵌合を維持できる程度であれば特に限定されない。
【0077】
第1穿刺針332は、第1容器10の弾性栓体103を刺通するものであり、板状部331の一方の面339における中心部において筒状体301の開口部に向けて立設されている。第1穿刺針332の長さ(高さ)は、第1容器10の弾性栓体103を貫通できる程度であれば特に限定されない。また、第1穿刺針332の直径についても適宜設定することができる。
【0078】
第2穿刺針333は、第2容器20の膜部202及び筒状体301の底部320における薄肉部323を刺通するものであり、板状部331の他方の面340における中心部において筒状体301の底部320に向けて立設されている。第2穿刺針333の長さ(高さ)は、第2容器20の膜部202及び筒状体301の底部320における薄肉部323を貫通できる程度であれば特に限定されない。また、第2穿刺針333の直径についても適宜設定することができる。
【0079】
また、第1穿刺針332の全体形状は、
図12(a)及び12(b)に示すように、円柱状であり、その先端部は一対の第1カット部332aと第1カット部332bが相互に背面合わせとなる様に設けられた円錐状となっている。これにより、穿刺抵抗の低減が図られる形状となっている。また、第2穿刺針333も第1穿刺針332と同様、全体形状が円柱状であり、その先端部は一対の第2カット部333aと第2カット部333bが相互に背面合わせとなる様に設けられた円錐状となっている。さらに、第1穿刺針332と第2穿刺針333の内部には、
図4及び
図10(a)に示すように、連通を可能にする連通路336が設けられている。この連通路336は、第1穿刺針332の第1カット部332a及び332bと、第2穿刺針の第2カット部333a及び333bとにより、それぞれ第1穿刺針332及び第2穿刺針333の先端部で開口している。これにより、第1穿刺針332が第1容器10の弾性栓体103を貫通し、第2穿刺針333が第2容器20の膜部202及び筒状体301の底部320における薄肉部323を貫通した場合に、第1容器内に収容されている薬剤と第2容器内に収容されている液体との混合を可能にする。
【0080】
第1カット部332b及び第2カット部333bの終端部(第1穿刺針332の先端とは反対側の端部)には、それぞれ第1切り欠き部332c及び第2切り欠き部333cが設けられていることが好ましい。第1切り欠き部332c等は開口部分の形状(切り欠き形状)が長方形状であり、その長辺が第1穿刺針332及び第2穿刺針333の延在方向と一致している。ここで、第1容器10内の薬剤と第2容器20内の液体を混合させる際には、連通路336内に気体が侵入する結果、エアー溜まりが生じ、液体の表面張力により液体が連通路336内を流動しなくなる、いわゆるエアーロックの現象を発生する場合がある。しかし、本実施の形態の様に、第1穿刺針332及び第2穿刺針333にそれぞれ第1切り欠き部332c等を設けることにより、連通路336内に侵入した気体を第1切り欠き部332c等から逃がすことでエアー溜まりの発生を低減することができる。また、エアー溜まりが発生した場合にも、軽い衝撃を加えることで、容易に取り除くことができる。
【0081】
尚、本実施の形態に於いては、第1切り欠き部332cが第1カット部332bの終端部に設けられ、第2切り欠き部333cが第2カット部333bの終端部に設けられる態様について説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、第1カット部332aや第2カット部333aの終端部に、それぞれ切り欠き部を設けてもよい。また、第1カット部332aの終端部に第1切り欠き部332cを設け、第2カット部333bの終端部に第2切り欠き部333cを設けるなど、第1穿刺針332と第2穿刺針333の異なるカット面側に対となる様に設けてもよい。さらに、第1切り欠き部332c等の切り欠き形状は特に限定されず、例えば、楔状等であってもよい。
【0082】
保持部334は、連通部302の板状部331上に、筒状体301の開口部に向けて立設している。保持部334は板状部331上に3つ設けられており、それぞれ第1穿刺針332から等距離の位置に設けられている。さらに、保持部334同士も相互に等距離となる様に設けられている。これにより、安定した状態で第1容器10を連通部302に保持させることができる。尚、保持部334の設置数や位置については特に限定されず、使用される第1容器10の口部102の形状や直径等に応じて適宜設定することができる。
【0083】
保持部334における第1穿刺針332に対向する面には、第1容器10の口部102と第1容器本体部101との間のネック部107を係止するための凸部334aが設けられている。凸部334aは保持部334が先端に向かうに従い緩やかに傾斜しており、当該方向とは反対側に向かうに従い急斜面となっている。これにより、第1容器10を挿着する際に、口部102は凸部334aを比較的容易に乗り越えることが可能になり、ネック部107での凸部334aによる係止を容易にする。その一方、第1容器10を連通部302に挿着した後においては、口部102が凸部334aを乗り越えるのを困難にし、ネック部107での凸部334aによる係止が容易に解除されない構造となっている。
【0084】
保持部334の高さは特に限定されず、適宜設定することができる。また、保持部334における凸部334aの形成位置についても特に限定されず、適宜設定することができる。
【0085】
ガイド部335は、第1容器10を連通部302に挿着する際に、当該第1容器10の弾性栓体103の中央部に第1穿刺針332が当接する様にガイドする機能を有する。ガイド部335は、連通部302の板状部331上に、筒状体301の開口部に向けて立設している。ガイド部335は板状部331上に3つ設けられており、各ガイド部335は、前述の各保持部334の間に位置する様に設けられている。さらに、各ガイド部335は、保持部334の場合と同様、それぞれ第1穿刺針332から等距離の位置に設けられている。また、保持部334同士も相互に等距離となる様に設けられている。これにより、第1容器10を連通部302に挿着させる際に、当該第1容器10の挿着位置を位置決めする必要がなくなり、第1容器10を容易に連通部302に挿着させることが可能になる。
【0086】
ガイド部335は、外形的には一定の曲率を有する板状となっており、先端に向かうに従い先細りの形状を有している。また、ガイド部335の先端は、第1容器10の挿着を容易にするために、第1穿刺針332から離れる方向に屈曲している。ガイド部335の板状部331からの高さは特に限定されず、第1容器10の大きさや形状等に応じて設定することができる。
【0087】
(移注部材の製造方法)
次に、本実施の形態の移注部材30の製造方法について説明する。
本実施の形態の移注部材30の製造方法は、底部補完部321を成形する底部補完部成形工程と、筒状体301を成形する筒状体成形工程と、連通部302を成形する連通部成形工程と、筒状体301の内部に連通部302を収容させて移注部材30を組み立てる組立工程とを少なくとも含む。
【0088】
底部補完部成形工程は、例えば、一対の上金型A及び下金型Aを用いて、射出成形により行うことができる。すなわち、上金型Aと下金型Aを型閉じし、底部補完部321の成形を可能にするキャビティ内に、底部補完部321の構成材料となる溶融樹脂(以下、「溶融樹脂A」という。)を注入する。溶融樹脂Aの温度は特に限定されず、底部補完部321の構成材料等に応じて適宜設定される。溶融樹脂Aの温度は、通常は、180℃~260℃の範囲内で設定される。また、溶融樹脂Aの射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂Aは所定時間冷却される。冷却後、金型の型開きを行い、底部補完部321が形成される。
【0089】
筒状体成形工程は、底部320との接触面で底部補完部321が熱溶着により接合した筒状体301を、インサート成形又は二色成形により成形する工程である。
【0090】
インサート成形を行う場合、筒状体301を成形するための一対の上金型B及び下金型B内に底部補完部321をインサートした上でインサート成形を行う。底部補完部321のインサートは、当該底部補完部321の何れの面を上向きにして載置してもよい。上金型B及び下金型Bを型閉じすると、金型内に筒状体301を成形するためのキャビティが形成される。筒状体301の成形は、筒状体301の構成材料となる溶融樹脂(以下、「溶融樹脂B」という。)をこのキャビティ内に注入することにより行われる。
【0091】
また、二色成形を行う場合、底部補完部成形工程で用いた下金型Aを共通金型とし、筒状体301を成形するための上金型Bと組み合わせることで、当該筒状体301の成形を行う。すなわち、下金型Aと上金型Bを型閉じし、これらの金型内に形成されるキャビティ内に溶融樹脂Bを注入することにより筒状体301の成形が行われる。
【0092】
金型内に射出する溶融樹脂Bのゲート位置は、インサート成形及び二色成形の何れに於いても、上金型B及び下金型B内にインサートされた底部補完部321に対し、
図9(a)に示すG
1及びG
2の位置に設定される。これらのゲート位置からキャビティ内に溶融樹脂Bが注入されると、底部補完部321の基台部322の表面が、溶融樹脂Bが有する熱により溶融する。また、射出された溶融樹脂のうち、最初に分岐する溶融樹脂がアンカリング部324に到達すると、当該アンカリング部324と基台部322との間の隙間に入り込む様に流動する。
【0093】
他方、ゲート位置G
1から射出された溶融樹脂Bのうち、第2穿刺針ガイド部325及び補強部327に衝突した溶融樹脂Bは、左右方向(
図9(a)に示す対称面Pに平行な方向)に分流して流れる。また、ゲート位置G
2から射出された溶融樹脂Bについても、第2穿刺針ガイド部325及び補強部327に衝突した後、左右方向に分流する。そして、分流したこれらの溶融樹脂Bは再合流した後に再び分流し、前述の最初に分岐した溶融樹脂とは反対側の方向からアンカリング部324に向かって流動する(例えば、
図9(b)の矢印Bで示す方向)。但し、アンカリング部324と基台部322との間の隙間には溶融樹脂Bがすでに流れ込んでいるため、当該隙間で溶融樹脂B同士が衝突してウェルド部分が形成されるのを回避される。その結果、アンカリング部324と基台部322との間の隙間でボイドが発生するのを防止することができる。
【0094】
その後、アンカリング部324及び支持部324aは溶融樹脂Bが有する熱により、それぞれの形状を維持することができず溶融する。続いて、キャビティ内の溶融樹脂Bを所定時間冷却すると、熱溶着により底部補完部321と接合した状態で筒状体301が成形される。
【0095】
尚、溶融樹脂Bの温度は底部補完部321との熱溶着を生じさせ、かつ、筒状体301と一体的に成形される程度であれば特に限定されない。溶融樹脂Bの温度は、通常は、例えば190℃~290℃の範囲内で設定される。また、溶融樹脂Bの射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
【0096】
連通部成形工程は、例えば、一対の上金型Cと下金型Cを用いて、射出成形により行うことができる。すなわち、上金型Cと下金型Cを型閉じし、連通部302の成形を可能にするキャビティ内に、連通部302の構成材料となる溶融樹脂(以下、「溶融樹脂C」という。)を注入する。溶融樹脂Cの射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂Cは所定時間冷却される。冷却後、上金型Cと下金型Cの型開きを行い、連通部302を取り出す。
【0097】
組立工程は、底部補完部321と一体となった筒状体301の内部に、連通部302を収容させて移注部材30を組み立てる。これにより、本実施の形態の移注部材30を作製することができる。
【0098】
尚、本実施の形態に於いては、組立工程の前に、筒状体成形工程で成形した筒状体301における薄肉部323の内側面に、潤滑剤を塗布する塗布工程を行ってもよい。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、予め潤滑剤を含浸させた円柱状の塗布具を用いて、第2穿刺針ガイド部325内に当該塗布具を挿入して塗布する方法が挙げられる。また、第2穿刺針ガイド部325内に潤滑剤を滴下して塗布する方法や、当該潤滑剤を噴霧して塗布する方法も挙げられる。尚、円柱状の塗布具を用いる場合、当該塗布具の直径は、第2穿刺針325の内径よりも小さい方が好ましい。これにより、塗布具が第2穿刺針ガイド部325の内部に挿入される際に、当該第2穿刺針ガイド部325の内側の側壁面に接触するのを防止することができる。
【0099】
また、組立工程後の筒状体301における上側筒状体312の開口部314にフィルムを熱溶着し、開口部314を封止する封止工程を行ってもよい。ここで、未使用の筒状体301の底部320においては、底部補完部321が熱溶着により接合されているため、密閉されている。従って、上側筒状体312の開口部314を熱溶着によりフィルムで封止することにより、筒状体301の内部に異物等が混入するのを防止することができる。さらに、フィルムによる封止工程の後、筒状体301に対し電子線を照射することにより、当該筒状体301の内部を殺菌する殺菌工程を行ってもよい。
【0100】
(その他の事項)
尚、本実施の形態では、筒状体301との接合において、アンカリング部324の形状が維持されなくなる場合を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。アンカリング部324の形状が維持された状態で筒状体301と接合されていてもよい。また、本実施の形態では、4つのアンカリング部324が設けられた場合を例にして説明したが、アンカリング部324の数は特に限定されるものではなく、適宜必要に応じて変更することができる。さらに、本実施の形態では、各アンカリング部324が基台部322上の同一円周上に配置されている場合を例にして説明したが、配置位置についてもこの態様に限定されるものではない。例えば、異なる円周上に各アンカリング部324を配置するなど任意の位置に設けてもよい。
【0101】
また、本実施の形態においては、第2容器20と移注部材30が接触面で熱溶着により接合される場合について説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えば、
図13に示すように、移注部材30の底部320に環状の係止部342を設け、第2容器20の連通口204におけるフランジ部207に係止させて、移注部材30と第2容器20を接合させる態様であってもよい。
【0102】
この場合、第1容器20と第2容器20の移注部材30を用いた連通は、移注部材30の係止部342を第2容器20のフランジ部207に係止させて、移注部材30と第2容器20を接合させた後に行うのが好ましい。尚、係止部の形状としては、フランジ部207に係止可能なものであれば、環状のものに特に限定されない。例えば、任意の位置に少なくとも1つ以上の切り欠きが設けられた環状の係止部や、任意の位置に相互に離間して複数設けられた突起状の係止部であってもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 薬剤混合キット
10 第1容器
20 第2容器
30 移注部材
101 第1容器本体部
102 口部
103 弾性栓体
104 針刺面
105 凹部
107 ネック部
201 第2容器本体部
202 膜部
203 一方端部
204 連通口
205 他方端部
206 取り出し部
207 フランジ部
301 筒状体
302 連通部
311 段差部
312 上側筒状体
313 下側筒状体
314 開口部
315 第1規制部
316 第2規制部
317 スライドガイド部
318 第3規制部
319 孔部
320 底部
321 底部補完部
322 基台部
323 薄肉部
323a 裏面
324 アンカリング部
324a 支持部
325 穿刺針ガイド部
326 裏面
327 補強部
328 裏面
331 板状部
332 第1穿刺針
333 第2穿刺針
334 保持部
334a 凸部
335 ガイド部
336 連通路
337 乗り越え部
338 張り出し部
339 一方の面
340 他方の面
341 中心線
A、B 溶融樹脂の流動方向
P 対称面