(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】自動走行筆記装置、自動走行筆記方法、および自動走行筆記プログラム
(51)【国際特許分類】
B43L 13/00 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
B43L13/00 C
(21)【出願番号】P 2019001467
(22)【出願日】2019-01-08
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】500433373
【氏名又は名称】ヴイストン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】大和 信夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 武志
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-178368(JP,A)
【文献】特開平01-228899(JP,A)
【文献】特開昭61-288206(JP,A)
【文献】特開2006-231461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43L 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に互いに間隔をあけて配置され、筆記面上をそれぞれが自律して回転する一対の駆動輪を有し、前記筆記面上を前後左右に自律走行可能とされた車体と、
前記一対の駆動輪の回転を個別に制御する制御部と、
前記車体に設けられ、筆記用具の筆記部が前記筆記面と接触するように、前記筆記用具を支持する支持部と、を備え、
前記一対の駆動輪それぞれの車軸は、互いに同軸となるように配置され、
前記支持部は、前記筆記部および前記車軸それぞれの前後方向の位置が一致するとともに、前記筆記部が前記一対の駆動輪の間の中央部に位置するように、前記筆記用具を支持
し、前記筆記用具における前記筆記部側の一端部を支持する第1支持部と、前記筆記用具における前記一端部と反対側の他端部が挿入される第2支持部と、を備え、
前記車体には、前記第1支持部を前記筆記面に対して近接および離間させる支持用モータが設けられ、
前記制御部は、前記支持用モータを制御する自動走行筆記装置。
【請求項2】
前記車体に設けられ、前記一対の駆動輪それぞれを回転駆動する一対の走行用モータと、
一対の駆動輪それぞれの車軸と同軸に配置され、かつ前記一対の走行用モータと連結された一対の連結ギアと、を備え、
前記一対の走行用モータは、横方向から見た側面視で、互いに重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の自動走行筆記装置。
【請求項3】
前記車体のうち、上面視で前記支持部を横方向に挟む位置には、バッテリが搭載されるバッテリ搭載部が一対設けられていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の自動走行筆記装置。
【請求項4】
前記車体は、前記一対の駆動輪と前後方向に間隔をあけて配置されるとともに、前記車体の走行に従って、前記筆記面上を回転する従動輪を備えていることを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の自動走行筆記装置。
【請求項5】
前記従動輪は、単一のボールキャスターであることを特徴とする請求項
4に記載の自動走行筆記装置。
【請求項6】
横方向に互いに間隔をあけて配置され、筆記面上をそれぞれが自律して回転する一対の駆動輪を有し、前記筆記面上を前後左右に自律走行可能とされた車体と、
前記一対の駆動輪の回転を個別に制御する制御部と、
前記車体に設けられ、筆記用具の筆記部が前記筆記面と接触するように、前記筆記用具を支持する支持部と、を備え、
前記一対の駆動輪それぞれの車軸は、互いに同軸となるように配置され、
前記支持部は、前記筆記部および前記車軸それぞれの前後方向の位置が一致するとともに、前記筆記部が前記一対の駆動輪の間の中央部に位置するように、前記筆記用具を支持
し、前記筆記用具における前記筆記部側の一端部を支持する第1支持部と、前記筆記用具における前記一端部と反対側の他端部が挿入される第2支持部と、を備え、
前記車体には、前記第1支持部を前記筆記面に対して近接および離間させる支持用モータが設けられ、
前記制御部は、前記支持用モータを制御する自動走行筆記装置を走行させながら筆記させる自動走行筆記方法であって、
前記制御部が、
ユーザからの指令値を受付ける受付ステップと、
前記受付ステップにおいて受付けた指令値に基づいて、前記一対の駆動輪それぞれの回転数を算出する回転数算出ステップと、
前記筆記部を前記筆記面に接触するタイミングを算出する筆記時間算出ステップと、
前記回転数算出ステップにおいて算出された回転数に基づいて、前記一対の駆動輪それぞれを回転させる駆動輪回転ステップと、
筆記時間算出ステップにより算出された前記タイミングに、前記筆記部を前記筆記面に接触させる筆記ステップと、を実行する自動走行筆記方法。
【請求項7】
横方向に互いに間隔をあけて配置され、筆記面上をそれぞれが自律して回転する一対の駆動輪を有し、前記筆記面上を前後左右に自律走行可能とされた車体と、
前記一対の駆動輪の回転を個別に制御する制御部と、
前記車体に設けられ、筆記用具の筆記部が前記筆記面と接触するように、前記筆記用具を支持する支持部と、を備え、
前記一対の駆動輪それぞれの車軸は、互いに同軸となるように配置され、
前記支持部は、前記筆記部および前記車軸それぞれの前後方向の位置が一致するとともに、前記筆記部が前記一対の駆動輪の間の中央部に位置するように、前記筆記用具を支持
し、前記筆記用具における前記筆記部側の一端部を支持する第1支持部と、前記筆記用具における前記一端部と反対側の他端部が挿入される第2支持部と、を備え、
前記車体には、前記第1支持部を前記筆記面に対して近接および離間させる支持用モータが設けられ、
前記制御部は、前記支持用モータを制御する自動走行筆記装置を走行させながら筆記させる自動走行筆記プログラムであって、
前記制御部に、
ユーザからの指令値を受付ける受付機能と、
前記受付機能において受付けた指令値に基づいて、前記一対の駆動輪それぞれの回転数を算出する回転数算出機能と、
前記筆記部を前記筆記面に接触させるタイミングを算出する筆記時間算出機能と、
前記回転数算出機能において算出された回転数に基づいて、前記一対の駆動輪それぞれを回転させる駆動輪回転機能と、
筆記時間算出機能により算出された前記タイミングに、前記筆記部を前記筆記面に接触させる筆記機能と、を実現させる自動走行筆記
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行筆記装置、自動走行筆記方法、および自動走行筆記プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記用具を支持しながら、自動で筆記面上を走行し、筆記面に筆記を行う自動走行筆記装置が知られている。
例えば下記特許文献1には、スライドレールを有する支持機構を備え、筆記用具を支持しながら上下させて、筆記面上に筆記用具を接触させながら走行することにより、筆記面に筆記を行う自動走行筆記装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、筆記用具が、一対の駆動輪の車軸の位置に対して、前後方向の一方側にずれた位置で支持機構により支持されている。
このため、自動走行筆記装置が方向転換をする際に、筆記具と車軸との間の前後方向の距離に応じて、一対の駆動輪同士の間に位置する部分を旋回中心とした旋回運動を筆記具が行うこととなる。これにより、ユーザが所期する描画内容を指示する指令値を作成する際に、所定の補正を行う必要があり、自動走行筆記装置に描画精度を確保させることが困難であった。
【0005】
そこで本発明は、ユーザが所期する描画内容に対する描画精度を、容易に確保することができる自動走行筆記装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る自動走行筆記装置は、横方向に互いに間隔をあけて配置され、筆記面上をそれぞれが自律して回転する一対の駆動輪を有し、筆記面上を前後左右に自律走行可能とされた車体と、一対の駆動輪の回転を個別に制御する制御部と、車体に設けられ、筆記用具の筆記部が筆記面と接触するように、筆記用具を支持する支持部と、を備え、一対の駆動輪それぞれの車軸は、互いに同軸となるように配置され、支持部は、筆記部および車軸それぞれの前後方向の位置が一致するとともに、筆記部が一対の駆動輪の間の中央部に位置するように、筆記用具を支持する。
【0007】
支持部は、筆記用具における筆記部側の一端部を支持する第1支持部と、筆記用具における一端部と反対側の他端部が挿入される第2支持部と、を備え、車体には、第1支持部を筆記面に対して近接および離間させる支持用モータが設けられ、制御部は、支持用モータを制御してもよい。
【0008】
また、車体に設けられ、一対の駆動輪それぞれを回転駆動する一対の走行用モータと、一対の駆動輪それぞれの車軸と同軸に配置され、かつ一対の走行用モータと連結された一対の連結ギアと、を備え、一対の走行用モータは、横方向から見た側面視で、互いに重ならない位置に配置されてもよい。
【0009】
また、車体のうち、上面視で支持部を横方向に挟む位置には、バッテリが搭載されるバッテリ搭載部が一対設けられてもよい。
【0010】
また、車体は、一対の駆動輪と前後方向に間隔をあけて配置されるとともに、車体の走行に従って、筆記面上を回転する従動輪を備えてもよい。
【0011】
また、従動輪は、単一のボールキャスターであってもよい。
【0012】
また、本発明に係る自動走行筆記方法は、横方向に互いに間隔をあけて配置され、筆記面上をそれぞれが自律して回転する一対の駆動輪を有し、筆記面上を前後左右に自律走行可能とされた車体と、一対の駆動輪の回転を個別に制御する制御部と、車体に設けられ、筆記用具の筆記部が筆記面と接触するように、筆記用具を支持する支持部と、を備え、一対の駆動輪それぞれの車軸は、互いに同軸となるように配置され、支持部は、筆記部および車軸それぞれの前後方向の位置が一致するとともに、筆記部が一対の駆動輪の間の中央部に位置するように、筆記用具を支持する自動走行筆記装置を走行させながら筆記させる自動走行筆記方法であって、制御部が、ユーザからの指令値を受付ける受付ステップと、受付ステップにおいて受付けた指令値に基づいて、一対の駆動輪それぞれの回転数を算出する回転数算出ステップと、筆記部を筆記面に接触するタイミングを算出する筆記時間算出ステップと、回転数算出ステップにおいて算出された回転数に基づいて、一対の駆動輪それぞれを回転させる駆動輪回転ステップと、筆記時間算出ステップにより算出されたタイミングに、筆記部を筆記面に接触させる筆記ステップと、を実行する。
【0013】
また、本発明に係る自動走行筆記プログラムは、横方向に互いに間隔をあけて配置され、筆記面上をそれぞれが自律して回転する一対の駆動輪を有し、筆記面上を前後左右に自律走行可能とされた車体と、一対の駆動輪の回転を個別に制御する制御部と、車体に設けられ、筆記用具の筆記部が筆記面と接触するように、筆記用具を支持する支持部と、を備え、一対の駆動輪それぞれの車軸は、互いに同軸となるように配置され、支持部は、筆記部および車軸それぞれの前後方向の位置が一致するとともに、筆記部が一対の駆動輪の間の中央部に位置するように、筆記用具を支持する自動走行筆記装置を走行させながら筆記させる自動走行筆記プログラムであって、制御部に、ユーザからの指令値を受付ける受付機能と、前記受付機能において受付けた指令値に基づいて、一対の駆動輪それぞれの回転数を算出する回転数算出機能と、筆記部を筆記面に接触させるタイミングを算出する筆記時間算出機能と、回転数算出機能において算出された回転数に基づいて、一対の駆動輪それぞれを回転させる駆動輪回転機能と、筆記時間算出機能により算出されたタイミングに、筆記部を筆記面に接触させる筆記機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の自動走行筆記装置では、筆記用具を支持する支持部が、一対の駆動輪それぞれの車軸と、筆記部と、の前後方向の位置が一致するとともに、筆記部が一対の駆動輪の間の中央部に位置するように、筆記用具を支持している。このため、筆記用具の筆記部が、一対の駆動輪による自動走行筆記装置における車体の旋回中心に位置することとなる。
【0015】
これにより、一対の駆動輪がそれぞれの回転量を異ならせて、走行中の自動走行筆記装置が方向転換をした際に、車軸と支持部との間の距離に基づいて、筆記用具が旋回運動を行うことを抑制することができる。このようにして、ユーザが所期する描画内容に対する描画精度を、自動走行筆記装置が容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動走行筆記装置の後方からの斜視図である。
【
図2】
図1に示す自動走行筆記装置の前方からの斜視図である。
【
図3】
図1に示す自動走行筆記装置のブロック図である。
【
図4】
図2に示す自動走行筆記装置の本体カバーを外した状態の斜視図である。
【
図5】
図4に示す自動走行筆記装置の正面図である。
【
図6】(a)
図2に示す自動走行筆記装置の正面図、(b)(a)におけるB-B線矢視断面図である。
【
図7】(a)
図6(b)に示す支持部を動かす前の状態、(b)支持部を上方に向けて動かした後の状態を示す図である。
【
図8】それぞれの駆動輪の連結ギアと、モータの出力ギアと、の連結状態を説明する図である。
【
図9】
図1に示す自動走行筆記装置における制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る自動走行筆記装置1について、
図1から
図8を参照して説明する。自動走行筆記装置1とは、ユーザの指令に基づいて自律走行しながら、筆記用具Pを用いて、筆記面Sにユーザが所期する文字や図柄を描画する装置である。
図1に示すように、本実施形態に係る自動走行筆記装置1は、一対の駆動輪20を有し、筆記面S上を前後左右に自律走行可能とされた車体10を備えている。
以下の説明において、車体10の走行方向を前後方向Xといい、筆記面Sと直交する平面視(以下、単に平面視という)で、前後方向Xと直交する方向を横方向Yという。また、前後方向Xおよび横方向Yそれぞれと直交する方向を、上下方向Zという。
【0018】
図1および
図2に示すように、車体10は、前後方向Xから見た正面視で矩形状を呈する車体本体11と、車体本体11を前後方向Xの一方側から覆う車体カバー12と、を備えている。この説明では便宜上、前後方向Xのうち、車体本体11に対する車体カバー12側を前方Aといい、その反対側を後方Bという。
【0019】
車体10の上下方向Zの大きさは、横方向Yの大きさよりも大きくなっている。
図6(b)に示すように、車体カバー12は、横方向Yから見た平面視において、下方に向かうに従って、前方Aに向けて広がる台形状を呈している。なお、車体10の大きさは、任意に変更することができる。
図1に示すように、車体本体11の後面の下端部それぞれに、駆動輪20が一対取り付けられている。
【0020】
一対の駆動輪20は、横方向Yに互いに間隔をあけて配置されている。一対の駆動輪20は、筆記面S上をそれぞれが自律して回転する。一対の駆動輪20それぞれの車軸O1は、互いに同軸となるように配置されている。また、一対の駆動輪20それぞれの外径は、互いに同等になっている。
一対の駆動輪20それぞれには、一対の連結ギア21が設けられている。連結ギア21は、駆動輪20の車軸O1と同軸に配置されている。
【0021】
図3から
図5に示すように、車体本体11には、制御部30、一対の走行用モータ40、支持部50、支持用モータ60、従動輪70、バッテリ搭載部80、及び記憶部110(
図3参照)が設けられている。
制御部30は、一対の駆動輪20の回転を個別に制御する。制御部30は各種の電子部品が実装された制御基板31により構成されている。制御基板31は、車体本体11の上側に配置されている。
【0022】
制御基板31に実装された各種の電子部品としては、USBポート32、無線モジュールと一体に形成され、制御部30の主な機能を果たすマイコン33、電解コンデンサ34、コネクタ35等である。なお、マイコン33は、無線モジュールと別体であってもよい。
USBポート32にはUSB90を接続することができる。制御部30は、記憶部1109に記憶された指令値や制御プログラムを用いた制御を行うことができるコンピュータである。
【0023】
無線モジュールは、ユーザからの指令値を無線通信により外部から受信して制御部30に入力することができる。また、制御部30は、無線モジュールを用いることなく、USBポート32を用いて、有線通信によりユーザからの指令値を受信してもよい。
制御部30は、外部から受信した指令値に基づく制御を行ってもよいし、記憶部110に予め記憶された指令値に基づく制御を行ってもよい。
【0024】
制御部30は、バッテリ搭載部80に搭載されたバッテリからの電力を、指令値に基づいて、走行用モータ40および支持用モータ60に供給する。これにより、走行用モータ40および支持用モータ60が駆動する。
【0025】
一対の走行用モータ40は、車体本体11の下側に配置されている。一対の走行用モータ40は、一対の駆動輪20それぞれを回転駆動する。
一対の走行用モータ40は、駆動輪20の連結ギア21と各別に連結されている。具体的には、一対の走行用モータ40それぞれの出力軸の端部に取り付けられた出力ギア41が、駆動輪20の連結ギア21と各別に噛み合っている。
【0026】
そして、
図6(b)に示すように、一対の走行用モータ40は、横方向Yから見た側面視で、互いに重ならない位置に配置されている。すなわち、一対の走行用モータ40は、上下方向Zの位置が重なるように配置されている。
このため、
図8に示すように、走行用モータ40それぞれの出力ギア41は、上下方向Zの位置が互いに異なっている。
【0027】
図1に示すように、支持部50は、筆記用具Pの筆記部P1が筆記面Sと接触するように、筆記用具Pを支持する。筆記用具Pとしては、鉛筆、ポールペン、サインペン、万年筆、筆ペン、チョーク等、様々な筆記用具を採用することができる。
図1および
図6に示すように、支持部50は、筆記部P1および車軸O1それぞれの前後方向Xの位置が一致するとともに、筆記部P1が一対の駆動輪20の間の中央部に位置するように、筆記用具Pを支持している。
【0028】
図1に示すように、支持部50は、筆記用具Pにおける筆記部P1側の下端部(一端部)を支持する第1支持部51と、筆記用具Pにおける一端部と反対側の上端部(他端部)が挿入される第2支持部52と、を備えている。
【0029】
第1支持部51は、車体本体11の下端部に配置されている。
図6(b)に示すように、第1支持部51は、車体10の内部から前後方向Xに延び、車体10の後方Bに向けて突出する板状に構成されている。
第1支持部51は、表裏面が上下方向Zを向いている。第1支持部51には、上下方向Zに貫通する貫通孔51Bが形成されている。貫通孔51Bの内径は、使用される筆記用具Pの筆記部P1周辺の外径よりも大きくなっている。
【0030】
ここで、筆記用具Pの筆記部P1周辺の内径が、下方に向かうに従って縮径している場合には、第1支持部51の貫通孔51Bの周縁部に、筆記用具Pの筆記部P1が載置された状態となる。これにより、筆記用具Pが上下方向Zに保持されている。
【0031】
第2支持部52は、車体本体11の上端部に配置されている。第2支持部52は車体本体11の上端縁と一体に形成され、後方Bに向けて突出している。第2支持部52には、上下方向Zに貫通し、筆記用具Pが挿入される挿入孔52Aが形成されている。
挿入孔52Aの内径は、使用される筆記用具Pの外径よりも少し大きくなっている。このため、筆記用具Pの上端部は、第2支持部52に上下方向Zに拘束することなく、筆記用具Pを支持している。
第2支持部52の挿入孔52Aの内径は、第1支持部51の貫通孔51Bの内径よりも大きくなっている。
【0032】
支持用モータ60は第1支持部51を、筆記面Sに対して近接および離間させる。支持用モータ60は、車体10の内部のうち、一対の走行用モータ40よりも前方Aに位置する部分に配置されている。支持用モータ60は、車体10内部の底部に載置されている。
支持用モータ60は、第1支持部51を、支持用モータ60と接続された接続部回りに、上方又は下方に向けて回動させるための動力を提供する。
【0033】
図7に示すように、支持用モータ60が、第1支持部51を上方に向けて回動させて、第1支持部51の筆記部P1が載置された部分を、上方に向けて変位させる。これにより、第1支持部51と筆記面S、すなわち、筆記部P1と筆記面Sとの間の距離が変更される。そして制御部30は、支持用モータ60を制御する。
【0034】
従動輪70は、一対の駆動輪20と前後方向Xに間隔をあけて配置されている。従動輪70は、車体10の走行に従って、筆記面S上を回転する。
本実施形態では、従動輪70として、単一のボールキャスターが採用されている。従動輪70は、車体本体11の底部に取り付けられている。従動輪70は車体本体11の底部のうち、横方向Yの中央部に配置されている。
【0035】
バッテリ搭載部80には、バッテリが搭載される。バッテリ搭載部80は、車体10における車体本体11の後面のうち、上面視で支持部50を横方向Yに挟む位置に一対配置されている。
図示の例では、バッテリとして2本の単三形の乾電池が採用される。バッテリ搭載部80には、単三形の乾電池であるバッテリが、上下方向Zに沿って配置される。
なお、バッテリの種類や大きさは、自動走行筆記装置1のサイズに合わせて任意に変更することができる。
【0036】
図3に示すように、記憶部110には、制御部30を制御するための制御プログラム、入力された指令値、および入力された指令値から、走行用モータ40および支持用モータ60の回転数を算出する計算プログラムが記憶される。記憶部110は、例えば、HDD、SSD、フラッシュメモリなど各種の記憶媒体により実現される。
【0037】
次に、制御部30による制御手順である自動走行筆記方法について
図9を用いて説明する。
図9は、自動走行筆記装置1における制御フローを示す図である。
図9に示すように、本実施形態における自動走行筆記方法では、制御部30が、受付ステップ(S501)と、回転数算出ステップ(S502)と、筆記時間算出ステップ(S503)と、駆動輪回転ステップ(S504)と、筆記ステップ(S505)と、を実行する。
自動走行筆記方法は、記憶部110に記憶された制御プログラムを、制御部30が実行することで行うことができる。なお、下記に示す自動走行筆記方法はあくまで一例であり、他の方法により自動走行筆記を行ってもよい。
【0038】
受付ステップでは、ユーザからの指令値を制御部30が受付ける。
回転数算出ステップでは、受付ステップにおいて受付けた指令値に基づいて、一対の駆動輪20それぞれの回転数を算出する。
筆記時間算出ステップでは、筆記部P1を筆記面Sに接触するタイミングを算出する。
【0039】
駆動輪回転ステップでは、回転数算出ステップにおいて算出された回転数に基づいて、一対の駆動輪20それぞれを回転させる。
筆記ステップでは、筆記時間算出ステップにより算出されたタイミングに、筆記部P1を筆記面Sに接触、又は筆記部P1を筆記面Sから離隔させる。これにより、筆記面Sに指令値に基づく筆記が行われる。
【0040】
次に、車体10の走行の態様について説明する。
まず、一対の駆動輪20が同じ回転数で回転する場合には、自動走行筆記装置1は前方A又は後方Bに向けて真っすぐ走行することができる。
次に、一対の駆動輪20のうち、例えば右側の駆動輪20の回転数を、左側の駆動輪20の回転数よりも速くすることで、車体10を前方A又は後方Bに向けて走行させながら、次第に左側に向けて湾曲するように走行させることができる。
同様に、左側の駆動輪20の回転数を、右側の駆動輪20の回転数よりも速くすることで、車体10を前方A又は後方Bに向けて走行させながら、次第に右側に向けて湾曲するように走行させることができる。
【0041】
また、停止した状態で、一対の駆動輪20を互いに逆方向に回転させることにより、その場で前後左右の任意の方向に向けて方向転換を行うことができる。
そして、このように車体10を様々な方向に向けて走行させながら、筆記用具Pの筆記部P1を筆記面Sに接触させることで、筆記面Sに文字や図形を描画することができる。
【0042】
次に、車体10の移動量については、モータの回転に応じて回転する車軸O1の回転数と、車輪の外径と、から算出される車体10の走行距離により、相対位置を管理してもよい。
また、車体10に例えばGPS等の測位システムを搭載して、絶対座標を管理してもよい。
また例えば、筆記面S上に座標原点を予め設定し、外部から車体10の位置を検出して車体の位置座標を特定してもよい。車体10の位置検出方法としては、例えば車体10を撮像して画像解析を行ってもよい。また、上述した位置管理の各手法を組み合わせて、車体10の位置を評価してもよい。
また、スマートフォン等のユーザが使用する携帯端末により、例えば車体10の位置情報を取得し、指令値を無線モジュールに送信するような遠隔操作を行ってもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行筆記装置1によれば、筆記用具Pを支持する支持部50が、一対の駆動輪20それぞれの車軸O1と、筆記部P1と、の前後方向Xの位置が一致するとともに、筆記部P1が一対の駆動輪20の間の中央部に位置するように、筆記用具Pを支持している。このため、筆記用具Pの筆記部P1が、一対の駆動輪20による自動走行筆記装置1における車体10の旋回中心に位置することとなる。
【0044】
これにより、一対の駆動輪20がそれぞれの回転量を異ならせて、走行中の自動走行筆記装置1が方向転換をした際に、車軸O1と支持部50との間の距離に基づいて、筆記用具Pが旋回運動を行うことを抑制することができる。
このようにして、ユーザが所期する描画内容に対する描画精度を、自動走行筆記装置1が容易に確保することができる。
【0045】
また、車体10には、第1支持部51と筆記面Sとの間の距離を変更可能な支持用モータ60が設けられ、制御部30が、筆記部P1を筆記面Sから離間させるように、支持用モータ60を制御する。
このため、ユーザの指令値に合わせて、筆記用具Pの筆記部P1を、筆記面Sに接触させたり、筆記面Sから離間させたりすることで、描画精度を向上することができる。
【0046】
また、第2支持部52において、筆記用具Pが上下方向Zに拘束されることなく支持されている。このため、筆記用具Pの筆記部P1を筆記面Sに押し付けるような構造と比較して、筆記部P1の筆記面Sへの筆圧を小さく抑えることができる。
これにより、筆記部P1が筆記面S上に描画しながら車体10が走行している最中に、筆記部P1が筆記面Sに接触していることから生じる筆記抵抗を小さくし、駆動輪20がスリップするのを抑えることができる。また、筆記用具Pを全方向に保持するような構成と比較して、支持部50の構造をシンプルにすることができる。
【0047】
また、一対の連結ギア21と連結される一対の走行用モータ40が、横方向Yから見た側面視で、互いに重ならない位置に配置されている。このため、一対の走行用モータ40同士の横方向Yの位置を互いに近接させて、上下方向Zの位置が互いに重なるように配置することができる。これにより、一対の駆動輪20の横方向Yの間隔を短くすることが可能になり、車体10をコンパクトな構成とすることができる。
【0048】
また、車体10のうち、上面視で前記支持部50を横方向Yに挟む位置に、バッテリが搭載されるバッテリ搭載部80が一対設けられている。これにより、例えば車体10がコンパクトに構成されている場合等に、支持部50に支持された筆記用具Pの周囲の横方向Yにおける重量バランスの偏りを抑え、車体10が走行した際に、車体10の重量バランスの変化に起因して描画精度が悪くなるのを抑制することができる。
【0049】
また、一対の駆動輪20と前後方向Xに間隔をあけて配置されるとともに、車体10の走行に従って、筆記面S上を回転する従動輪70を備えている。このため、車体10全体の走行を滑らかにして、駆動輪20の制御による車体10の走行精度を確保することができる。
【0050】
また、従動輪70が、単一のボールキャスターであるので、従動輪70の車体10の走行に対する追従性および応答性を確保することができる。このため、駆動輪20の制御による車体10の走行精度をより一層効果的に顕著に確保することができる。
【0051】
なお、前述の実施形態は、本発明の代表的な実施形態を単に例示したものにすぎない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述の実施形態に対して種々の変形を行ってもよい。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、車体10に支持用モータ60が設けられた構成を示したが、このような態様に限られない。車体10には支持用モータ60が設けられなくてもよい。
また、上記実施形態においては、支持部50が、第1支持部51と第2支持部52とを備えている構成を示したが、このような態様に限られない。一つの支持部50により、筆記用具Pを支持してもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、一対の走行用モータ40が、横方向Yから見た側面視で、互いに重ならない位置に配置されている構成を示したが、このような態様に限られない。
一対の走行用モータ40は、側面視で互いに重なるように配置されてもよい。
【0054】
また、上記実施形態においては、車体10のうち、上面視で支持部50を横方向Yに挟む位置に、バッテリが搭載されるバッテリ搭載部80が一対設けられている構成を示したが、このような態様に限られない。車体10のうち、バッテリ搭載部80を配置する位置は、任意に変更することができる。また、バッテリ搭載部80は、必ずしも一対設ける必要は無く、一つだけ設けてもよい。
【0055】
また、上記実施形態においては、車体10が、車体10の走行に従って、筆記面S上を回転する従動輪70を備えている構成を示したが、このような態様に限られない。車体10が従動輪70を備えていなくてもよい。
また、制御部30が、車体10に設けられている構成を示したが、このような態様に限られない。制御部30を車体10とは別に設けて、遠隔制御により自動走行筆記装置1を制御してもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、従動輪70が単一のボールキャスターである構成を示したが、このような態様に限られない。例えば従動輪70として、横方向Yに互いに間隔をあけて配置された2つの車輪を採用してもよい。
【0057】
また、前述した変形例に限られず、これらの変形例を選択して適宜組み合わせてもよいし、その他の変形を施してもよい。
すなわち、本開示の実施形態を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、順番を変更したり、或いは分割したりすることが可能である。また、各実施形態に示す構成を適宜組み合わせることとしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 自動走行筆記装置
10 車体
20 駆動輪
30 制御部
40 走行用モータ
50 支持部
51 第1支持部
52 第2支持部
60 支持用モータ
70 従動輪
80 バッテリ搭載部
O1 車軸