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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 5/02 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
F25B5/02 530C
F25B5/02 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019036503
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020139703
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【弁理士】
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 剛
(72)【発明者】
【氏名】内田 実
(72)【発明者】
【氏名】守屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭輔
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-236330(JP,A)
【文献】特開2010-025412(JP,A)
【文献】特開2002-286309(JP,A)
【文献】特開2004-028354(JP,A)
【文献】特開平04-251164(JP,A)
【文献】特開2008-224163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 5/02
F25B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、凝縮器と、第1の膨張弁と、第1の蒸発器とが、この順に冷媒を循環させるように接続された冷凍回路と、
前記冷凍回路における前記凝縮器の下流側で且つ前記第1の膨張弁の上流側の部分から冷媒を分岐させ、第2の膨張弁、第2の蒸発器及び蒸発圧力調整弁の順で通過させて、前記冷凍回路における前記第1の蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分に戻す並列回路と、
前記並列回路における前記第2の蒸発器と前記蒸発圧力調整弁との間を流れる冷媒の圧力を検出する並列側圧力センサと、
前記第1の膨張弁、前記第2の膨張弁及び前記蒸発圧力調整弁の各開度を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1の膨張弁から流出する冷媒の流量と、前記第2の膨張弁から流出する冷媒の流量とが互いに異なる値となるように前記第1の膨張弁及び/又は前記第2の膨張弁の開度を制御した際に、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が所定値よりも小さい場合には、前記並列側圧力センサで検出する冷媒の圧力が、前記第1の蒸発器における冷媒の蒸発圧力と一致するように、前記蒸発圧力調整弁の開度を制御し、
前記第1の膨張弁から流出する冷媒の流量と、前記第2の膨張弁から流出する冷媒の流量とが互いに異なる値となるように前記第1の膨張弁及び/又は前記第2の膨張弁の開度を制御した際に、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が前記所定値以上の場合には、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が前記所定値よりも小さくなるように前記蒸発圧力調整弁の開度を、前記第1の膨張弁及び/又は前記第2の膨張弁の開度を制御する前の状態よりも小さくする、冷凍装置。
【請求項2】
前記並列回路は、前記第2の膨張弁及び前記第2の蒸発器に対して並列に設けられた第3の膨張弁及び第3の蒸発器をさらに有し、前記冷凍回路における前記凝縮器の下流側で且つ前記第1の膨張弁の上流側の部分から分岐する冷媒を前記第3の膨張弁及び前記第3の蒸発器の順で通過させ、前記第2の蒸発器から流出した冷媒と合流させた後、前記冷凍回路に戻すようにもなっており、
前記制御装置は、前記第3の膨張弁の開度も制御し、
前記制御装置は、
前記第1の膨張弁から流出する冷媒の流量と、前記第2の膨張弁及び/又は前記第3の膨張弁から流出する冷媒の流量とが互いに異なる値となるように前記第1の膨張弁、前記第2の膨張弁及び第3の膨張弁のうちの少なくともいずれかの開度を制御した際に、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差、及び、前記第3の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第3の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が前記所定値よりも小さい場合には、前記並列側圧力センサで検出する冷媒の圧力が、前記第1の蒸発器における冷媒の蒸発圧力と一致するように、前記蒸発圧力調整弁の開度を制御し、
前記第1の膨張弁から流出する冷媒の流量と、前記第2の膨張弁及び/又は前記第3の膨張弁から流出する冷媒の流量とが互いに異なる値となるように前記第1の膨張弁、前記第2の膨張弁及び第3の膨張弁のうちの少なくともいずれかの開度を制御した際に、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差、及び、前記第3の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第3の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差のうちの少なくともいずれかが前記所定値以上の場合には、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差及び前記第3の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第3の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が前記所定値よりも小さくなるように前記蒸発圧力調整弁の開度を前記第1の膨張弁、前記第2の膨張弁及び前記第3の膨張弁のうちの少なくともいずれかの開度を制御する前の状態よりも小さくする、請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記並列側圧力センサは、前記第2の蒸発器から流出した冷媒と前記第3の蒸発器から流出した冷媒との合流部分又は合流部分の下流側における冷媒の圧力を検出する、請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記冷凍回路における前記第1の蒸発器の下流側であって、前記並列回路の接続位置の上流側の部分を流れる冷媒の圧力を検出する冷凍回路側圧力センサをさらに備え、
前記冷凍回路側圧力センサによって、前記第1の蒸発器における冷媒の蒸発圧力を特定する、請求項1乃至3のいずれかに記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列に設けた複数の蒸発器によって複数の温度制御対象を温度制御する冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び一つの蒸発器を有し、蒸発器と圧縮機との間に蒸発圧力調整弁を設ける冷凍装置が従来から知られている。このような冷凍装置における蒸発圧力調整弁は、通常、蒸発器のフロスト(着霜)防止のために設けられる。カーエアコン用等の外気に晒される冷凍装置には、通常、このような蒸発圧力調整弁が設けられている。
【0003】
一方で、特許文献1には、圧縮機と、凝縮器と、並列に設けられた膨張弁及び蒸発器の複数の組とを有し、複数の蒸発器のうちの一部の蒸発器と圧縮機との間に蒸発圧力調整弁を設け、他の蒸発器と圧縮機との間には蒸発圧力調整弁を設けない冷凍装置が開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された冷凍装置では、一部の蒸発器と他の蒸発器とで異なる温度の温度制御を実施するために蒸発圧力調整弁が設けられている。すなわち、このような冷凍装置では、蒸発圧力調整弁の開度調整により、一部の蒸発器内の冷媒の蒸発圧力と他の蒸発器内の冷媒の蒸発圧力とを互いに異ならせることが可能であり、これにより、一部の蒸発器による冷凍能力と他の蒸発器による冷凍能力とを異なせることができる。
【0005】
特許文献1に開示されるような冷凍装置は、フットプリントを抑制しつつ、複数の蒸発器によって複数の温度制御対象を異なる温度で冷却できる点で有用である。特許文献1は、複数の蒸発器によって、コンビニエンスストア等における室内空間と、冷蔵庫と、冷凍庫とを互いに異なる温度で冷却する例を開示するが、特許文献1の冷凍装置は、複数の温度制御領域を有する精密部品の製造装置等に対しても好適に適用できる。
【0006】
特許文献1の冷凍装置が精密部品の製造装置等に適用される場合、複数の蒸発器によって液体を冷却し、異なる温度に冷却された複数の液体によって複数の温度制御領域を温度制御してもよい。このようなタイプの温度制御装置(温調システム)の一例として、本件出願人による特許文献2を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-70835号公報
【文献】特開2018-194240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のような複数の温度制御領域を有する製造装置等に適用される冷凍装置又は温度制御装置では、複数の温度制御領域のうちの一部をある目標温度で一定に温度制御した後に、大きく異なる目標温度で同じ部分を温度制御するといった制御パターンの実施を求められる場合がある。また、複数の温度制御領域のうちの一部を冷却する必要がある一方で、他の一部を加熱する必要があるような制御パターンの実施を求められる場合がある。ここで、他の一部を加熱する必要がある場合には、当該他の一部に対応する蒸発器の冷凍能力は不要となるか、又は、極めて小さくてよい。後者のような制御パターンでは、蒸発器を通過する冷媒の温度と、蒸発器によって温度制御される温度制御対象の温度との温度差が大きくなり得るため、蒸発器の耐温度差性能に関する配慮が求められる。また、上記のような特殊な制御パターン及び定常の温度制御のいずれも、通常、高精度に実施することが求められる。
【0009】
しかしながら、特許文献1の冷凍装置は、コンビニエンスストア等における室内空間、冷蔵庫及び冷凍庫を温度制御対象とするものであって、精密部品の製造現場等への適用を想定していない。また、温度制御の精密さを強く求められるものでもない。そのため、特許文献1には、精密部品の製造装置等において生じ得る上述のような要望に対応できる知見は開示されていない。
【0010】
本件発明者は、上述の要望を考慮し鋭意研究した結果、並列に設けた複数の蒸発器を備える冷凍装置において蒸発圧力調整弁等の動作を工夫することで、複数の温度制御領域のうちの一部をある目標温度で一定に温度制御した後に、大きく異なる目標温度で同じ部分を温度制御するような制御パターンを高精度且つ安定的に実施でき、また、複数の温度制御領域のうちの一部を冷却する必要がある一方で、他の一部を加熱する必要があるような制御パターンの際、蒸発器に対する負担を簡易に軽減できる手法を見出した。
【0011】
本発明は、並列に設けられた複数の蒸発器で複数の温度制御対象を温度制御する際、一部の温度制御対象の目標温度を変化させた場合であっても、高精度な温度制御を安定的に実施できるとともに、一部の温度制御領域を冷却する必要がある一方で、他の一部の温度制御領域を加熱する必要があるような制御パターンの際に生じ得る蒸発器の負担を簡易に軽減できる冷凍装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる冷凍装置は、圧縮機と、凝縮器と、第1の膨張弁と、第1の蒸発器とが、この順に冷媒を循環させるように接続された冷凍回路と、前記冷凍回路における前記凝縮器の下流側で且つ前記第1の膨張弁の上流側の部分から冷媒を分岐させ、第2の膨張弁、第2の蒸発器及び蒸発圧力調整弁の順で通過させて、前記冷凍回路における前記第1の蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分に戻す並列回路と、前記並列回路における前記第2の蒸発器と前記蒸発圧力調整弁との間を流れる冷媒の圧力を検出する並列側圧力センサと、前記第1の膨張弁、前記第2の膨張弁及び前記蒸発圧力調整弁の各開度を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第1の膨張弁から流出する冷媒の流量と、前記第2の膨張弁から流出する冷媒の流量とが互いに異なる値となるように前記第1の膨張弁及び/又は前記第2の膨張弁の開度を制御した際に、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が所定値よりも小さい場合には、前記並列側圧力センサで検出する冷媒の圧力が、前記第1の蒸発器における冷媒の蒸発圧力と一致するように、前記蒸発圧力調整弁の開度を制御し、前記第1の膨張弁から流出する冷媒の流量と、前記第2の膨張弁から流出する冷媒の流量とが互いに異なる値となるように前記第1の膨張弁及び/又は前記第2の膨張弁の開度を制御した際に、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が前記所定値以上の場合には、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が前記所定値よりも小さくなるように前記蒸発圧力調整弁の開度を前記第1の膨張弁及び/又は前記第2の膨張弁の開度を制御する前の状態よりも小さくする。
【0013】
本発明では、例えば、第1の蒸発器で温度制御する温度制御対象の目標温度をある時点から低温側に大きく変化させる必要があり、第2の蒸発器で温度制御する温度制御対象が大きい冷凍能力を必要としない状況下において、第1の膨張弁から流出する冷媒の流量を第2の膨張弁から流出する冷媒の流量よりも大きくすることで、第1の蒸発器の冷凍能力を増加する方向へ変更できるとともに、第2の膨張弁の冷凍能力を低下させる方向へ変更できる。しかし、この際、第2の蒸発器側から流出した冷媒の圧力が第1の蒸発器における冷媒の蒸発圧力よりも小さくなり得るため、第2の蒸発器側からの冷媒が第1の蒸発器側からの冷媒と合流した際に、冷媒の状態が乱れ得ることで、冷凍装置の運転の安定性が損なわれ得る。ここで、本発明では、第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が所定値よりも小さい場合には、第2の蒸発器側から流出した冷媒の蒸発圧力が第1の蒸発器における冷媒の蒸発圧力と一致するように蒸発圧力調整弁が開度の調整を行う。これにより、第1の蒸発器側から流出した冷媒と第2の蒸発器側から流出した冷媒とが合流した際の冷媒の状態が安定する。
また、例えば、第1の蒸発器で温度制御する温度制御対象を冷却する必要があり、第2の蒸発器で温度制御していた温度制御対象を加熱する必要がある場合に、第1の膨張弁から流出する冷媒の流量を第2の膨張弁から流出する冷媒の流量よりも大きくすることで、第1の蒸発器の冷凍能力を増加する方向へ変更できるとともに、第2の膨張弁の冷凍能力を低下させる方向へ変更できる。しかし、この際、第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と第2の蒸発器によって熱交換される前の温度制御対象の温度との差が過剰に大きい場合には、第2の蒸発器に負担がかかり、損傷のリスクが生じ得る。ここで、本発明では、第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が所定値以上の場合には、温度差警戒レベルであると判定し、第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が所定値よりも小さくなるように蒸発圧力調整弁の開度を、第1の膨張弁及び/又は第2の膨張弁の開度を制御する前の状態よりも小さくする。これにより、第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度を引き上げて、第2の蒸発器における冷媒と温度制御対象との温度差を抑制することで、第2の蒸発器に対する負担を軽減できる。
よって、並列に設けられた複数の蒸発器で複数の温度制御対象を温度制御する際、一部の温度制御対象の目標温度を変化させた場合であっても、高精度な温度制御を安定的に実施できるとともに、一部の温度制御領域を冷却する必要がある一方で、他の一部の温度制御領域を加熱する必要があるような制御パターンの際に生じ得る蒸発器(加熱側の蒸発器)の負担を簡易に軽減できる。
【0014】
また、前記並列回路は、前記第2の膨張弁及び前記第2の蒸発器に対して並列に設けられた第3の膨張弁及び第3の蒸発器をさらに有し、前記冷凍回路における前記凝縮器の下流側で且つ前記第1の膨張弁の上流側の部分から分岐する冷媒を前記第3の膨張弁及び前記第3の蒸発器の順で通過させ、前記第2の蒸発器から流出した冷媒と合流させた後、前記冷凍回路に戻すようにもなっており、前記制御装置は、前記第3の膨張弁の開度も制御し、前記制御装置は、前記第1の膨張弁から流出する冷媒の流量と、前記第2の膨張弁及び/又は前記第3の膨張弁から流出する冷媒の流量とが互いに異なる値となるように前記第1の膨張弁、前記第2の膨張弁及び第3の膨張弁のうちの少なくともいずれかの開度を制御した際に、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差、及び、前記第3の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第3の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が前記所定値よりも小さい場合には、前記並列側圧力センサで検出する冷媒の圧力が、前記第1の蒸発器における冷媒の蒸発圧力と一致するように、前記蒸発圧力調整弁の開度を制御し、前記第1の膨張弁から流出する冷媒の流量と、前記第2の膨張弁及び/又は前記第3の膨張弁から流出する冷媒の流量とが互いに異なる値となるように前記第1の膨張弁、前記第2の膨張弁及び第3の膨張弁のうちの少なくともいずれかの開度を制御した際に、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差、及び、前記第3の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第3の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差のうちの少なくともいずれかが前記所定値以上の場合には、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差及び前記第3の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第3の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が前記所定値よりも小さくなるように前記蒸発圧力調整弁の開度を前記第1の膨張弁、前記第2の膨張弁及び前記第3の膨張弁のうちの少なくともいずれかの開度を制御する前の状態よりも小さくしてもよい。
【0015】
この場合、一つの蒸発圧力調整弁を、第2の蒸発器と第3の蒸発器とで共有することで、回路構成を簡素化しつつ、第1~第3の蒸発器による温度制御を精密に且つ安定的に行うことができる。
【0016】
また、前記並列側圧力センサは、前記第2の蒸発器から流出した冷媒と前記第3の蒸発器から流出した冷媒との合流部分又は合流部分の下流側における冷媒の圧力を検出してもよい。
【0017】
この場合も、一つの並列側圧力センサで、第2の蒸発器と第3の蒸発器の下流側の冷媒の圧力を所望の値に制御できるため、回路構成を簡素化できる。
【0018】
また、本発明にかかる冷凍装置は、前記冷凍回路における前記第1の蒸発器の下流側であって、前記並列回路の接続位置の上流側の部分を流れる冷媒の圧力を検出する冷凍回路側圧力センサをさらに備え、前記冷凍回路側圧力センサによって、前記第1の蒸発器における冷媒の蒸発圧力を特定してもよい。
【0019】
この場合、簡易的に、並列側圧力センサで検出する冷媒の圧力に対する目標制御値、つまり第1の蒸発器における冷媒の蒸発圧力を的確に設定できる。
【0020】
また、本発明にかかる他の冷凍装置は、圧縮機と、凝縮器と、第1の膨張弁と、第1の蒸発器とが、この順に冷媒を循環させるように接続された冷凍回路と、前記冷凍回路における前記凝縮器の下流側で且つ前記第1の膨張弁の上流側の部分から冷媒を分岐させ、第2の膨張弁、第2の蒸発器及び蒸発圧力調整弁の順で通過させて、前記冷凍回路における前記第1の蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分に戻す並列回路と、前記蒸発圧力調整弁の開度を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が所定値以上の場合に、前記第2の蒸発器における冷媒の蒸発温度と前記第2の蒸発器において冷媒と熱交換する前の温度制御対象の温度との差が前記所定値よりも小さくなるように前記蒸発圧力調整弁の開度を制御する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、並列に設けられた複数の蒸発器で複数の温度制御対象を温度制御する際、一部の温度制御対象の目標温度を変化させた場合であっても、高精度な温度制御を安定的に実施できるとともに、一部の温度制御領域を冷却する必要がある一方で、他の一部の温度制御領域を加熱する必要があるような制御パターンの際に生じ得る蒸発器に対する負担を簡易に軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施の形態に係る冷凍装置を備える温調システムの概略構成を示す図である。
図2図1に示す冷凍装置の動作の一例を説明するフローチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る冷凍装置1を備える温調システムSの概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態に係る温調システムSは、冷凍装置1と、冷凍装置1によって温度制御される流体を通流させる流体通流ユニット2と、制御装置50と、を備えている。温度制御される流体は、液体であっても、気体であってもよい。冷凍装置1は、冷凍回路10と、並列回路20と、冷凍回路側圧力センサ30と、並列側圧力センサ40と、並列側第1温度センサ61、並列側第2温度センサ62と、を備えている。流体通流ユニット2は、第1の流体を通流させる第1流体通流装置2Aと、第2の流体を通流させる第2流体通流装置2Bと、第3の流体を通流させる第3流体通流装置2Cと、を備えている。
【0025】
<冷凍装置>
まず、冷凍装置1について説明する。冷凍装置1の冷凍回路10は、圧縮機11と、凝縮器12と、第1の膨張弁13と、第1の蒸発器14とが、この順に冷媒を循環させるように配管によって接続されたものである。
【0026】
冷凍回路10では、圧縮機11によって圧縮された冷媒が、凝縮器12に流入し、凝縮器12に流入した冷媒は、空冷又は液冷により凝縮される。その後、冷媒は、第1の膨張弁13によって減圧されて低温の気液混合状態となり、第1の蒸発器14に流入する。第1の蒸発器14に流入した冷媒は、温度制御対象(本例では、第1の流体)と熱交換を行った後に、圧縮機11に流入し、その後、圧縮機11によって再度圧縮される。
【0027】
第1の膨張弁13は電子膨張弁であり、パルス信号等の制御信号によって開度を調整自在である。第1の膨張弁13は、制御装置50に電気的に接続され、制御装置50が出力する制御信号に応じて開度を調整するようになっている。
【0028】
並列回路20は、冷凍回路10における凝縮器12の下流側で且つ第1の膨張弁13の上流側の部分から冷媒を分岐させ、第2の膨張弁21、第2の蒸発器22及び蒸発圧力調整弁23の順で通過させて、冷凍回路10における第1の蒸発器14の下流側で且つ圧縮機11の上流側の部分に戻すように構成されたものである。
【0029】
また、本実施の形態における並列回路20は、上記第2の膨張弁21及び第2の蒸発器22に対して並列に設けられた第3の膨張弁24及び第3の蒸発器25をさらに有している。そして、並列回路20は、冷凍回路10から分岐する冷媒を第3の膨張弁24及び第3の蒸発器25の順で通過させて冷凍回路10に戻すようにもなっている。第2の膨張弁21は、冷媒を減圧して低温の気液混合状態とし、第2の蒸発器22に送る。第3の膨張弁24は、冷媒を減圧して低温の気液混合状態とし、第3の蒸発器25に送る。これにより、冷凍装置1では、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25によって、第1の蒸発器14の温度制御対象とは別の温度制御対象(本例では、第2の流体と第3の流体)を温度制御することができる。第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25は、同じ温度制御対象を温度制御してもよいし、別々の温度制御対象を温度制御してもよい。
【0030】
また、本実施の形態では、第2の蒸発器22から流出した冷媒と、第3の蒸発器25から流出した冷媒が、蒸発圧力調整弁23の上流側で合流している。そして、合流した冷媒は、蒸発圧力調整弁23を通って、圧縮機11に流入する。
【0031】
なお、第3の蒸発器25から流出した冷媒は、蒸発圧力調整弁23の下流側に流入するようになっていてもよいが、この場合には、第3の蒸発器25の下流側に蒸発圧力調整弁23とは別の蒸発圧力調整弁を設けることが好ましい。また、本実施の形態では、第3の膨張弁24及び第3の蒸発器25が設けられるが、これらは無くてもよい。また、第2の膨張弁21及び第2の蒸発器22、第3の膨張弁24及び第3の蒸発器25に対して、さらに並列に設けられる膨張弁及び蒸発器の組がさらに設けられても構わない。
【0032】
第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24は電子膨張弁であり、パルス信号等の制御信号によって開度を調整自在となっている。第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24は、制御装置50に電気的に接続され、制御装置50が出力する制御信号に応じて開度を調整するようになっている。
【0033】
蒸発圧力調整弁23も電子膨張弁であり、第1の蒸発器14と同様に、パルス信号等の制御信号によって開度を調整自在となっている。蒸発圧力調整弁23は、制御装置50に電気的に接続され、制御装置50が出力する制御信号に応じて開度を調整する。蒸発圧力調整弁23は、第2の蒸発器22と第3の蒸発器25とから流出して合流した冷媒の圧力を所望の値に調整するために設けられている。
【0034】
一方で、冷凍回路側圧力センサ30は、冷凍回路10における第1の蒸発器14の下流側であって、並列回路20の接続位置の上流側の部分を流れる冷媒の圧力を検出するために設けられている。より具体的に説明すると、冷凍回路側圧力センサ30は、第1の蒸発器14における冷媒の蒸発圧力(P1)を特定するために設けられている。
【0035】
並列側圧力センサ40は、並列回路20における第2の蒸発器22と蒸発圧力調整弁23との間を流れる冷媒の圧力を検出する。より詳しくは、本実施の形態における並列側圧力センサ40は、第2の蒸発器22から流出した冷媒と第3の蒸発器25から流出した冷媒との合流部分又は合流部分の下流側における冷媒の圧力を検出することで、第2の蒸発器22と第3の蒸発器25とから流出して合流した冷媒の圧力を検出するようになっている。
【0036】
また、並列側第1温度センサ61は、第2の膨張弁21で膨張された気液混合状態の冷媒の蒸発温度、すなわち第2の蒸発器22における冷媒の蒸発温度を検出するようになっている。また、並列側第2温度センサ62は、第3の膨張弁24で膨張された気液混合状態の冷媒の蒸発温度、すなわち第3の蒸発器25における冷媒の蒸発温度を検出するようになっている。
【0037】
<流体通流ユニット>
流体通流ユニット2では、第1流体通流装置2Aが通流させる第1の流体が第1の蒸発器14によって温度制御され、第2流体通流装置2Bが通流させる第2の流体が第2の蒸発器22によって温度制御され、第3流体通流装置2Cが通流させる第3の流体が第3の蒸発器25によって温度制御される。流体通流ユニット2は、各温度制御された流体により温度制御を行うようになっている。
【0038】
第1流体通流装置2Aは、第1の流体を通流させるための駆動力を発生させる第1ポンプ2A1を有する。
【0039】
第2流体通流装置2Bは、第2の流体を通流させるための駆動力を発生させる第2ポンプ2B1と、第2の蒸発器22において冷媒と熱交換する前の第2の流体の温度を検出する第2の流体用温度センサ2B2とを有する。
【0040】
第3流体通流装置2Cは、第3の流体を通流させるための駆動力を発生させる第3ポンプ2C1と、第3の蒸発器25において冷媒と熱交換する前の第3の流体の温度を検出する第3の流体用温度センサ2C2とを有する。
【0041】
<制御装置>
続いて制御装置50は、第1の膨張弁13、第2の膨張弁21、第3の膨張弁24及び蒸発圧力調整弁23の各開度を少なくとも制御するようになっている。また、制御装置50は、冷凍回路側圧力センサ30が検出した冷媒の圧力と、並列側圧力センサ40が検出した冷媒の圧力とを取得可能となっている。また、制御装置50は、並列側第1温度センサ61が検出した、第2の蒸発器22における冷媒の蒸発温度と、並列側第2温度センサ62が検出した、第3の蒸発器25における冷媒の蒸発温度とを取得可能となっている。さらに、制御装置50は、第2の流体用温度センサ2B2が検出した、第2の蒸発器22において冷媒と熱交換する前の第2の流体の温度と、第3の流体用温度センサ2C2が検出した、第3の蒸発器25において冷媒と熱交換する前の第3の流体の温度とを取得可能となっている。
【0042】
制御装置50は、各蒸発器(14、22、25)が出力する冷凍能力を調整するために、第1の膨張弁13、第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24の開度を調整して各弁から流出する冷媒の流量を増減させる。また、このような冷媒の流量調整がなされた際に、制御装置50は蒸発圧力調整弁23の開度を連動して調整するようになっている。蒸発圧力調整弁23の調整は、第2の蒸発器22における冷媒の蒸発温度と第2の蒸発器22において冷媒と熱交換する前の温度制御対象(第2の流体)の温度との差(温度差ΔTx)、及び、第3の蒸発器25における冷媒の蒸発温度と第3の蒸発器25において冷媒と熱交換する前の温度制御対象(第3の流体)の温度との差(温度差ΔTy)が所定値Thよりも小さいか又は所定値Th以上であるかに応じて、異なる態様で行われる。所定値Thは、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25に過度な負担を与えない程度の第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25における冷媒と温度制御対象との温度差の上限側に設定され、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25の仕様(耐温度差性能)によって変化する値である。本実施の形態では、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25における冷媒と温度制御対象との温度差が90℃以上である場合を温度差警戒レベルと想定しており、所定値Thを一例として80℃に設定している。
【0043】
制御装置50の制御について具体的に説明すると、制御装置50は、例えば第1の蒸発器14によって温度制御していた温度制御対象に対する目標温度が現在の値から大幅に低い温度に変更された場合等に、第1の膨張弁13から流出する冷媒の流量と、第2の膨張弁21及び/又は第3の膨張弁24から流出する冷媒の流量とが互いに異なる値となるように第1の膨張弁13、第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24のうちの少なくともいずれかの開度を制御することができる。具体的には、第1の膨張弁13から流出する冷媒の流量が、第2の膨張弁21及び/又は第3の膨張弁24から流出する冷媒の流量よりも大きくなるように、第1の膨張弁13、第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24のうちの少なくともいずれかの開度を制御することができる。このような制御では、例えば、第1の膨張弁13から流出する冷媒の流量を、第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24のそれぞれから流出する冷媒の流量よりも大きくすることで、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25の冷凍能力の一部を第1の蒸発器14の冷凍能力に加算し、第1の蒸発器14が出力する冷凍能力を増加させ、変更された目標温度に即座に対応することができる。
【0044】
上述のような制御を実施した際に、第2の蒸発器22における冷媒の蒸発温度と第2の蒸発器22において冷媒と熱交換する前の温度制御対象(第2の流体)の温度との差(温度差ΔTx)、及び、第3の蒸発器25における冷媒の蒸発温度と第3の蒸発器25において冷媒と熱交換する前の温度制御対象(第3の流体)の温度との差(温度差ΔTy)が所定値Thよりも小さい場合には、制御装置50は、並列側圧力センサ40で検出する冷媒の圧力が、第1の蒸発器14における冷媒の蒸発圧力と一致するように、蒸発圧力調整弁23の開度を制御する。このとき、第1の蒸発器14における冷媒の蒸発圧力は、冷凍回路側圧力センサ30から取得される。
より具体的に説明すると、第1の膨張弁13から流出する冷媒の流量を、第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24のそれぞれから流出する冷媒の流量よりも大きくした場合には、第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24のそれぞれから流出する冷媒の流量が少なくなることで、対応する第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25から流出する冷媒の圧力(蒸発圧力)が、第1の蒸発器14における冷媒の蒸発圧力よりも下がる状況が生じ得る。この際に、蒸発圧力調整弁23の開度を、膨張弁(13、21、24)の開度を制御する前(流量制御の前)の状態よりも小さくすることで、並列側圧力センサ40で検出する冷媒の圧力が、第1の蒸発器14における冷媒の蒸発圧力と一致するようにする。これにより、後述するように冷凍装置1の運転が安定する。
【0045】
一方で、第1の膨張弁13から流出する冷媒の流量を、第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24のそれぞれから流出する冷媒の流量よりも大きくした際に、第2の蒸発器22における冷媒の蒸発温度と第2の蒸発器22において冷媒と熱交換する前の温度制御対象(第2の流体)の温度との差(温度差ΔTx)、及び、第3の蒸発器25における冷媒の蒸発温度と第3の蒸発器25において冷媒と熱交換する前の温度制御対象(第3の流体)の温度との差(温度差ΔTy)のうちの少なくともいずれかが所定値Th以上である場合には、制御装置50は、第2の蒸発器22における冷媒の蒸発温度と第2の蒸発器22において冷媒と熱交換する前の温度制御対象(第2の流体)の温度との差(温度差ΔTx)及び第3の蒸発器25における冷媒の蒸発温度と第3の蒸発器25において冷媒と熱交換する前の温度制御対象(第3の流体)の温度との差(温度差ΔTy)が所定値Thよりも小さくなるように蒸発圧力調整弁23の開度を、膨張弁(13、21、24)の開度を制御する前(流量制御の前)の状態よりも小さくする。蒸発圧力調整弁23の開度が小さくした場合には、冷媒の蒸発温度が上がるため、第2の蒸発器22及び/又は第3の蒸発器25における冷媒と温度制御対象との温度差を抑制でき、第2の蒸発器22及び/又は第3の蒸発器25にかかる負担を軽減することが可能となる。
なお、制御装置50は、CPU,ROM,RAM等を備えるコンピュータで構成され、記憶されたプログラムに従って各部の動作を制御してもよい。
【0046】
次に、冷凍装置1の動作の一例について図2に示したフローチャートを参照しつつ説明する。
【0047】
図2に示す処理は、膨張弁(13、21、24)の開度制御による流量制御が行われた際に開始する。
【0048】
処理が開始すると、まずステップS1において、制御装置50は、第2の蒸発器22における冷媒の蒸発温度と第2の蒸発器22において冷媒と熱交換する前の第2の流体の温度との温度差ΔTx、及び、第3の蒸発器25における冷媒の蒸発温度と第3の蒸発器25において冷媒と熱交換する前の第3の流体の温度との温度差ΔTyのうちの少なくともいずれかが所定値Th以上であるか否かを検出する。温度差ΔTx及び温度差ΔTyがともに所定値Thよりも小さいときには、処理がステップS2に移行し、所定値Th以上のときには、処理がステップS6に移行する。
【0049】
ステップS2に処理が移行した際、制御装置50は、冷凍回路10における第1の蒸発器14の下流側であって、並列回路20の接続位置の上流側の部分を流れる冷媒の圧力(P1)を冷凍回路側圧力センサ30から取得する。ここで検出された圧力(P1)は、第1の蒸発器14における冷媒の蒸発圧力として扱われる。また、制御装置50は、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25から流出して合流した冷媒の圧力(P2)を並列側圧力センサ40から取得する。そして、制御装置50は、圧力(P1)と圧力(P2)とが一致するか否かを判定し、一致する場合は、温度差の監視(S1)の処理に戻る。一致しなかった場合は、ステップS3の処理に移行する。
【0050】
ステップS3においては、制御装置50は、圧力(P1)が圧力(P2)よりも大きいか否かを判定する。圧力(P1)が圧力(P2)よりも大きい状態は、第1の蒸発器14における冷媒の蒸発圧力が、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25から流出して合流した冷媒の蒸発圧力よりも大きいことを意味する。この場合、ステップS4において、制御装置50は、蒸発圧力調整弁23の開度を小さくして(DOWN)、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25から流出して合流した冷媒の蒸発圧力を上昇させる。そして、制御装置50は、温度差の監視(S1)の処理に戻り、温度差ΔTx及び温度差ΔTyが上述所定値Thよりも小さいときには、圧力(P1)が圧力(P2)と一致するまで蒸発圧力調整弁23の開度を調整する。
【0051】
一方で、圧力(P1)が圧力(P2)よりも小さい場合、この状態は、第1の蒸発器14における冷媒の蒸発圧力が、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25から流出して合流した冷媒の蒸発圧力よりも小さいことを意味する。この場合、ステップS5において、制御装置50は、蒸発圧力調整弁23の開度を大きくして(UP)、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25から流出して合流した冷媒の蒸発圧力を低下させる。そして、制御装置50は、温度差ΔTx及び温度差ΔTyが上述所定値Thよりも小さいときには、圧力(P1)が圧力(P2)と一致するまで蒸発圧力調整弁23の開度を調整する。
【0052】
上述のような蒸発圧力調整弁23の開度調整により、並列側圧力センサ40で検出する冷媒の圧力(P2)が、第1の蒸発器14における冷媒の蒸発圧力(P1)と一致した場合には、第1の蒸発器14側から流出した冷媒と、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25側から流出した冷媒とが合流した際に、冷媒の状態が乱れることを抑制でき、その結果、冷凍装置1の運転が安定することになる。
【0053】
一方で、ステップS1において、温度差ΔTx及び温度差ΔTyの少なくともいずれかが上述所定値Th以上のときには、温度差ΔTx及び/又は温度差ΔTyが第2の蒸発器22及び/又は第3の蒸発器25に与える負荷が大きいと判断される。この際、制御装置50は、温度差ΔTx及び温度差ΔTyが所定値Thよりも小さくなるように蒸発圧力調整弁23の開度を小さくして(DOWN)、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25における冷媒の蒸発温度を上昇させる。これにより、温度差ΔTx及び温度差ΔTyを抑えることが可能となる。
【0054】
以上に説明した本実施の形態にかかる冷凍装置1では、例えば、第1の蒸発器14で温度制御する温度制御対象(第1の流体)の目標温度をある時点から低温側に大きく変化させる必要があり、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25で温度制御する温度制御対象(第2の流体、第3の流体)が大きい冷凍能力を必要としない状況下において、第1の膨張弁13から流出する冷媒の流量を第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24から流出する冷媒の流量よりも大きくすることで、第1の蒸発器14の冷凍能力を増加させる方向へ変更できるとともに、第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24の冷凍能力を低下させる方向へ変更できる。しかし、この際、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25側から流出した冷媒の圧力が第1の蒸発器14における冷媒の蒸発圧力よりも小さくなり得るため、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25側から流出した冷媒が第1の蒸発器14側からの冷媒と合流した際に、冷媒の状態が乱れ得ることで、冷凍装置1の運転の安定性が損なわれ得る。ここで、本実施の形態にかかる冷凍装置1では、上述した温度差ΔTx及び温度差ΔTyが所定値Thよりも小さい場合には、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25側から流出した冷媒の圧力が第1の蒸発器14おける冷媒の蒸発圧力と一致するように蒸発圧力調整弁23が開度の調整を行う。これにより、第1の蒸発器14側から流出した冷媒と、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25側から流出した冷媒とが合流した際の冷媒の状態が安定する。
【0055】
また、例えば、第1の蒸発器14で温度制御する温度制御対象(第1の流体)を冷却する必要があり、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25で温度制御していた温度制御対象(第2の流体、第3の流体)を加熱する必要がある場合に、第1の膨張弁13から流出する冷媒の流量を第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24から流出する冷媒の流量よりも大きくすることで、第1の蒸発器14の冷凍能力を増加する方向へ変更できるとともに、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25の冷凍能力を低下させる方向へ変更できる。しかし、この際、第2の蒸発器22における冷媒の蒸発温度と第2の蒸発器22によって熱交換される前の温度制御対象(第2の流体)の温度との温度差ΔTx及び/又は第3の蒸発器25における冷媒の蒸発温度と第3の蒸発器25によって熱交換される前の温度制御対象(第3の流体)の温度との温度差ΔTyが過剰に大きい場合には、第2の蒸発器22及び/又は第3の蒸発器25に負担がかかり、損傷のリスクが生じ得る。
ここで、本実施の形態にかかる冷凍装置1では、温度差ΔTx及び温度差ΔTyのうちの少なくともいずれかが所定値Th以上の場合には、温度差警戒レベルであると判定し、温度差ΔTx及び温度差ΔTyが所定値Thよりも小さくなるように蒸発圧力調整弁23の開度を、第1の膨張弁13、第2の膨張弁21及び第3の膨張弁24のうちの少なくともいずれかの開度を制御する前の状態よりも小さくする。これにより、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25における冷媒の蒸発温度を引き上げて、温度差ΔTx及び温度差ΔTyを抑制することで、第2の蒸発器22及び第3の蒸発器25に対する負担を軽減できる。
【0056】
よって、並列に設けられた複数の蒸発器(14、22、25)で複数の温度制御対象を温度制御する際、一部の温度制御対象の目標温度を変化させた場合であっても、高精度な温度制御を安定的に実施できるとともに、一部の温度制御領域を冷却する必要がある一方で、他の一部の温度制御領域を加熱する必要があるような制御パターンの際に生じ得る蒸発器(加熱側の蒸発器)に対する負担を簡易に軽減できる。
【0057】
以上、本発明の一実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、上述の実施の形態には各種の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0058】
1…冷凍装置
2…流体通流ユニット
2A…第1流体通流装置
2A1…第1ポンプ
2B…第2流体通流装置
2B1…第2ポンプ
2B2…第2の流体用温度センサ
2C…第3流体通流装置
2C1…第3ポンプ
2C2…第3の流体用温度センサ
10…冷凍回路
11…圧縮機
12…凝縮器
13…第1の膨張弁
14…第1の蒸発器
20…並列回路
21…第2の膨張弁
22…第2の蒸発器
23…蒸発圧力調整弁
24…第3の膨張弁
25…第3の蒸発器
30…冷凍回路側圧力センサ
40…並列側圧力センサ
50…制御装置
61…並列側第1温度センサ
62…並列側第2温度センサ
図1
図2