(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】外設部材を備える屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/00 20060101AFI20221108BHJP
E04D 13/18 20180101ALI20221108BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20221108BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
E04D13/00 K ETD
E04D13/18
E04D13/00 B
H02S20/23 A
E04G23/02 H
(21)【出願番号】P 2019042623
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】川島 次郎
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-221884(JP,A)
【文献】特開平11-247368(JP,A)
【文献】特開2015-148140(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0119850(KR,A)
【文献】特開平9-25693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00
E04D 13/18
H02S 20/23
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜勾配を有する屋根下地に、上部保持部材と下部保持部材で縦葺き屋根板を敷設した上に外設部材を固定してなる外設部材を備える屋根構造であって、
前記下部保持部材は、流れ方向に所定間隔を隔てて取り付けられ、前記上部保持部材は、少なくとも流れ方向に隣り合う前記下部保持部材に跨るように取り付けられ、
前記縦葺き屋根板は、面板部の左右の端縁に、下り段状に成形されると共にその先端が上方へ屈曲された側縁部が形成され、左右に隣り合う縦葺き屋根板の側縁部間にカバー材が配されて接続され、
屋根下地上に固定された前記下部保持部材の左右に、前記縦葺き屋根板を配設すると共に、流れ方向に隣り合う前記下部保持部材に前記上部保持部材を跨るように連結し、前記カバー材にて前記縦葺き屋根板の左右の側縁部を上下から挟着して保持し、この縦葺き屋根板上に外設部材を配すると共に前記上部保持部材に固定していることを特徴とする外設部材を備える屋根構造。
【請求項2】
少なくとも下部保持部材の裏面側に流れ方向に連続する排水部材が配されていることを特徴とする請求項1に記載の外設部材を備える屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の屋根構造の構築や既設の屋根構造の改修にも利用でき、外装面(屋根面)の任意の位置に化粧材や雪止め、避雷針、太陽電池パネル等の外設部材を取り付けることができる外設部材を備える屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、左右側縁部を裏面側へ折り曲げ加工した屋根板を用いて施工した平坦状の屋根構造の上に雪止杆を取り付ける構造として、特許文献1のような構造が提案されている。
当該特許文献1に提案された構造は、固定部材7の内部に締付用螺子部材11を備える外れ止部材10を配すると共に左右に屋根材(フラット状建築用板A)を配し、外れ止部材10の押圧支持部10bの上端をガッター5の水平部5bに係止させた状態でキャップ材Cを取り付け、該キャップ材C上に雪止杆13を固着したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に提案される屋根構造では、外れ止部材10をガッター5内に位置させているため、キャップ材Cの取り付け前に配置する必要があり、施工に制限を受ける。また、外れ止部材10の押圧支持部10bの上端をガッター5の水平部5bに係止させるが、固定部材7が存在しない箇所では強度が不足するため、実際のところ、外れ止部材10の押圧支持部10bの上端を固定部材7の押さえ部7bに係止させて強度不足を補っているが、そのため取付箇所も制限を受ける。さらに、この構造では、締付用螺子部材11がキャップ材Cを貫通するため、予めキャップ材Cに「孔」を設ける必要があるため、取付箇所を任意にすることは困難である。
そこで、本発明は、新規の屋根構造の構築や既設の屋根構造の改修にも利用でき、外装面(屋根面)の任意の位置に化粧材や雪止め、避雷針、太陽電池パネル等の外設部材を取り付けることができる外設部材を備える屋根構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、傾斜勾配を有する屋根下地に、上部保持部材と下部保持部材で縦葺き屋根板を敷設した上に外設部材を固定してなる外設部材を備える屋根構造であって、前記下部保持部材は、流れ方向に所定間隔を隔てて取り付けられ、前記上部保持部材は、少なくとも流れ方向に隣り合う前記下部保持部材に跨るように取り付けられ、前記縦葺き屋根板は、面板部の左右の端縁に、下り段状に成形されると共にその先端が上方へ屈曲された側縁部が形成され、左右に隣り合う縦葺き屋根板の側縁部間にカバー材が配されて接続され、屋根下地上に固定された前記下部保持部材の左右に、前記縦葺き屋根板を配設すると共に、流れ方向に隣り合う前記下部保持部材に前記上部保持部材を跨るように連結し、前記カバー材にて前記縦葺き屋根板の左右の側縁部を上下から挟着して保持し、この縦葺き屋根板上に外設部材を配すると共に前記上部保持部材に固定していることを特徴とする外設部材を備える屋根構造に関するものである。
【0006】
また、本発明は、前記屋根構造において、少なくとも下部保持部材の裏面側に流れ方向に連続する排水部材が配されていることを特徴とする外設部材を備える屋根構造をも提案する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の外設部材を備える屋根構造は、例えば化粧材や雪止め、避雷針、太陽電池パネル等の外設部材の取付位置を下部保持部材の配置位置に限定されることなく、外装面(屋根面)の任意の位置に外設部材を取り付けることができるので、新規の屋根構造の構築や既設の屋根構造の改修にも利用できる。
【0008】
また、少なくとも下部保持部材の裏面側に流れ方向に連続する排水部材が配されている場合、仮に側縁部の裏面側に雨水等が廻り込んだとしても排水部材にて確実に傾斜勾配に沿って流下(排水)させることができる。さらに、上部保持部材に外設部材を固定するための固定具を打ち込むので、その固定具と共に雨水が裏面側に浸入したとしても、排水部材にて確実に傾斜勾配に沿って流下(排水)させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)本発明の第1実施例において外設部材を配設する以前の屋根構造を示す桁行き方向における断面図、(b)縦桟状材である外設部材を配設した後の屋根構造を示す桁行き方向における断面図、(c)その流れ方向における側断面図である。
【
図2】(a)第1実施例に用いた下部保持部材と上部保持部材とを拡大して示す斜視図、(b)その取付(連結)状態を示す斜視図である。
【
図3】(a)本発明の第2実施例において外設部材を配設する以前の屋根構造を示す桁行き方向における断面図、(b)太陽電池パネルである外設部材を配設した後の屋根構造を示す桁行き方向における断面図、(c)その流れ方向における側断面図である。
【
図4】(a)本発明の第3実施例において外設部材を配設する以前の屋根構造を示す桁行き方向における断面図、(b)雪止め金具である外設部材を配設した後の屋根構造を示す桁行き方向における断面図、(c)その流れ方向における側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の屋根構造は、傾斜勾配を有する屋根下地に、上部保持部材と下部保持部材で縦葺き屋根板を敷設した上に外設部材を固定してなるものである。
前記下部保持部材は、流れ方向に所定間隔を隔てて取り付けられる部材である。
前記上部保持部材は、少なくとも流れ方向に隣り合う前記下部保持部材に跨るように取り付けられる部材である。
前記縦葺き屋根板は、面板部の左右の端縁に、下り段状に成形されると共にその先端が上方へ屈曲された側縁部が形成され、左右に隣り合う縦葺き屋根板の側縁部間にカバー材が配されて接続される部材である。
そして、屋根下地上に固定された前記下部保持部材の左右に、前記縦葺き屋根板を配設すると共に、流れ方向に隣り合う前記下部保持部材に前記上部保持部材を跨るように連結し、前記カバー材にて前記縦葺き屋根板の左右の側縁部を上下から挟着して保持し、この縦葺き屋根板上に外設部材を配すると共に前記上部保持部材に固定していることを特徴とする。
【0011】
前記屋根構造を構成する下部保持部材、上部保持部材、縦葺き外装材、カバー材、外設部材を、以下にそれぞれ詳細に説明する。
【0012】
前記下部保持部材は、前述のように屋根下地に所定間隔を隔てて取り付けられる短尺(定尺)材であって、上部保持部材と連結する連結受部と、を備える。
前記屋根下地へ取り付けられる部位は、後述する図示実施例のように固着具を打ち込む固着部でもよいし、この下部保持部材の大きさ(横幅)に応じて左右にそれぞれ設けてもよいし、略中央に一箇所に設けてもよい。
前記連結受部は、上部保持部材に設けられる連結部に係合等により連結されるものであれば、特に限定するものではなく、一箇所のみに限定されず、左右にそれぞれ設けてもよい。
【0013】
この下部保持部材には、後述する図示実施例のように縦葺き屋根板の側縁部が保持される保持部を設けることが望ましい。
この保持部は、縦葺き屋根板の側縁部を下方から保持するものであれば、特に限定するものではない。この保持部についても、一箇所のみに限定されず、左右に隣り合う縦葺き屋根板の側縁部がそれぞれ保持される保持部を左右に設けてもよい。
なお、この「保持」の具体的態様としては、後述する図示実施例のように弾性的に嵌合させて保持する構成が望ましい。
【0014】
この下部保持部材において、前述のように連結受部と保持部を設ける態様では、後述する図示実施例のようにそれぞれ上方が開放する溝状(凹状部)に形成してもよく、その場合には、手順を考慮し、外側から保持部用の凹状部、その内側に連結受部用の凹状部を形成する構成となる。
【0015】
前記上部保持部材は、前述のように少なくとも流れ方向に隣り合う前記下部保持部材に跨るように取り付けられる通し材であって、前記下部保持部材の連結受部に連結される連結部と、外設部材を固定する被固定部と、を備え、連絡受部用の凹状部に対応する形状であれば、単一部材からなるのもので、複数部材からなるものでもよい。
前記連結部は、前記下部保持部材に設けられる連結受部に係合等により連結されるものであれば、特にその形状等を限定するものではなく、上方から押圧するだけで前記下部保持部材の連結受部に弾性的に嵌合する構成が望ましい。
前記被固定部は、外設部材を固定する固定ボルト等の固定具を打ち込む部位であり、一箇所のみに形成してもよいし、左右にそれぞれ形成してもよい。
【0016】
前記縦葺き屋根板は、面板部の左右の端縁に、裏面側への下り段状に成形されると共にその先端が上方へ屈曲された側縁部が形成される長尺材又は定尺材であって、言い換えれば下り段状部と水返し片状の側縁部とを備える。
前記面板部は平坦状でも波状でも特に限定するものではないが、前述のようにこの縦葺き屋根板上に外設部材を固定するので、専ら後述する図示実施例のように平坦状とすることが望ましい。
なお、この縦葺き屋根板は、公知の金属素材等より成形され、ロール成形やプレス成型、或いは両者の組合せにより成形(成型)されるものであり、その素材厚は特に限定するものではないが、概ね0.4乃至1.6mm程度である。
【0017】
前記縦葺き屋根板の側縁部は、前記下部保持部材の保持部にて保持される部分である。
この側縁部は、前述のように保持部に係合される被保持部を備え、先端が上方へ屈曲されて水返し片状に形成されるため、その裏面側への雨水等の浸入が防止される。
【0018】
前記カバー材は、左右に隣り合う前記縦葺き屋根板間に配設される長尺材又は定尺材であって、平板部の左右に、その先端が上方へ屈曲された取付部を備える。
前記平板部は、前記縦葺き屋根板の面板部と同様に平坦状でも波状でも特に限定するものではないが、前記縦葺き屋根板の面板部と同様にその表面側に外設部材を固定することを想定すると、専ら後述する図示実施例のように平坦状とすることが望ましい。
前記取付部は、前記下部保持部材の保持部にて保持された前記縦葺き屋根板の側縁部の上方から配設されるものであって、後述する図示実施例のようにその先端が上方へ跳ね上げ状に形成することで、前記側縁部の被保持部の外側へ係合される構成となる。
【0019】
前記外設部材は、前記上部保持部材に固定される部材であって、具体的には桟状材や雪止め、或いは太陽電池パネル等であり、特にその固定手段等については限定するものではなく、公知のどのような方法(構造)にて取り付けられるものでもよい。
【0020】
さらに、この屋根構造においては、少なくとも前記下部保持部材(の連結受部及び保持部)の裏面側に流れ方向に連続する排水部材が配されていることが望ましい。
この場合、仮に側縁部の裏面側に雨水等が廻り込んだとしても排水部材にて確実に傾斜勾配に沿って流下(排水)させることができる。また、上部保持部材に外設部材を固定するための固定具を打ち込むので、その固定具と共に雨水が裏面側に浸入したとしても、排水部材にて確実に傾斜勾配に沿って流下(排水)させることができる。
【0021】
これらの各部材を備える本発明の屋根構造は、屋根面の形成施工と外設部材の取付施工とを同時に且つ取付部位を集中させること無く容易に行うことができるので、特に大面積の屋根面の構築や改修に際しても施工時間が短縮化でき、新規の屋根構造の構築や既設の屋根構造の改修にも好適に利用できる。そのため、外設部材として、巨大な桟状材、或いは太陽電池パネル等にも好適に用いられる。
また、少なくとも下部保持部材の裏面側に流れ方向に連続する排水部材が配されている場合、仮に側縁部の裏面側に雨水等が廻り込んだとしても排水部材にて確実に傾斜勾配に沿って流下(排水)させることができる。さらに、上部保持部材に外設部材を固定するための固定具を打ち込むので、その固定具と共に雨水が裏面側に浸入したとしても、排水部材にて確実に傾斜勾配に沿って流下(排水)させることができる。
【実施例1】
【0022】
図1(b)に示す本発明の第1実施例の外設部材6Aを備える屋根構造は、傾斜勾配を有する屋根下地に、上部保持部材3と下部保持部材2で縦葺き屋根板1を敷設した上に桟状材である外設部材6Aを固定してなる構造である。
前記下部保持部材2は、流れ方向に所定間隔を隔てて取り付けられる部材である。
前記上部保持部材3は、少なくとも流れ方向に隣り合う前記下部保持部材2,2に跨るように取り付けられ部材である。
前記縦葺き屋根板1は、面板部11の左右の端縁に、下り段状に成形される下り段状部12、V字状に窪む部分及び縦片の途中がく字状に形成された被保持部を備えると共にその上端が上方へ延在する側縁部13が形成され、左右に隣り合う縦葺き屋根板1,1の下り段状部12,12間にカバー材4が配されて接続される部材である。
そして、屋根下地5上に固定された前記下部保持部材2の左右に、前記縦葺き屋根板1を配設すると共に、流れ方向に隣り合う前記下部保持部材2,2に前記上部保持部材3を跨るように連結し、前記カバー材4にて前記縦葺き屋根板1,1の左右の側縁部13,13間を覆うことで雨水の浸入を防ぎ、これらのカバー材4や縦葺き屋根板1上に外設部材(桟状材)6Aを配すると共に前記上部保持部材3に固定している。
【0023】
前記下部保持部材2は、前述のように屋根下地5に所定間隔を隔てて取り付けられる短尺(定尺)材であって、上部保持部材3と連結する連結凹部24と、を備える。
この第1実施例における下部保持部材2は、
図2(a)に示すように左右対称状の広幅の短尺材であり、略水平状の平板部21の左右に、段差状の支持固定部25を介してそれぞれ上方が開放する凹状の保持凹部23及び連結凹部24を備え、左右の最外側に屋根下地5へ取り付けられる固着部22,22が設けられている。なお、各固着部22の表面の略中央には、溝部221が形成されている。
前記連結凹部24及び前記保持部23は、その上端に内側へ突出する係止凸部241,231が形成されている。
【0024】
なお、保持凹部23は、縦葺き屋根板1の側縁部13を保持する、即ち側縁部13のく字状の被保持部を弾性的に係合させるものであるから、凹状を形成する対向状の縦面の一方の上端のみに係止凸部231が設けられている。この保持凹部23の外側面の上端に形成される弧状面232は、縦葺き屋根板1の面板部11の端縁に設けられる下り段状部12やカバー材4の側端、及びその間に設けられる止水材4cを受支する部位である。
それに対し、連結凹部24は、上方保持部材3に設けられた二枚の垂下片である連結部33を係合させるものであるから、該垂下片(33)の上方に設けられた係止受部331,331と係合する係止凸部241,241が凹状を形成する対向状の両縦面に設けられている。
前記下部保持部材2を固定する屋根下地5は、母屋などの躯体7の上に木毛セメント板などからなる野地板を敷設した構成である。
【0025】
前記上部保持部材3は、流れ方向に隣り合う前記下部保持部材2,2に跨るように取り付けられる通し材であって、前記下部保持部材2の連結凹部24に連結される連結部33と、外設部材6を固定する被固定部31と、を備える。
この第1実施例における上部保持部材3は、
図2(a)に示すように左右対称状の狭幅の長尺材であり、二枚の対向状の垂下片である連結部33には、前記下部保持部材2に設けられる連結凹部24に係合により連結される係止受部331,331が形成され、上方から押圧するだけで前記下部保持部材2に弾性的に嵌合することができる。
前記被固定部31は、連結凹部24を覆う厚肉状の横面状であって、その裏面側から前記連結部33が垂下状に設けられ、この被固定部31のそれぞれの外側には、略水平状に連結固定部32が延設されている。なお、この連結固定部32には、前記固着部22と同様に溝部321が形成されている。
【0026】
前記縦葺き屋根板1は、この図示実施例では略水平状の平坦部分である面板部11の左右の端縁に、下り段状部12と、V字状に窪む部分及び縦片の途中がく字状に形成された被保持部を備えると共にその上端が上方へ延在する側縁部13とを備える長さ方向に連続する通し材であり、ロール成形やプレス成型、或いは両者の組合せにより成形(成型)され、その素材厚は概ね0.4乃至1.6mm程度に成型した。なお、1bは面板部11の裏面に添設された裏貼り材であり、1Cは更に裏面側に配設された断熱材である。
【0027】
また、左右に隣り合う前記縦葺き屋根板1,1間には、カバー材4が配設されて接続している。
このカバー材4は、前記縦葺き屋根板1と同様に通し材であり、その材質や成形法等も同様に行うことができ、左右に隣り合う縦葺き屋根板1,1の側縁部13,13間を覆う略平坦状の被覆部41の左右の端縁を裏面側へ折り返し、更に下方へ折り下げると共に、その下端をそれぞれ外側へ跳ね上げ状に折り曲げた係合部42,42を形成した構成である。なお、このカバー材4の被覆部41の左右の端縁の裏面側には、両面粘着フォーム等である弾性を有する止水材4cが配され、段差12との隙間からの雨水の浸入を防止している。
【0028】
この第1実施例には、左右に隣り合う縦葺き屋根板1,1間に排水部材8を配設する構成を採用している。
この第1実施例における排水部材8は、底面部81の左右端を上方へ立ち上げて側面部82,82としており、前記底面部81上に前記下地保持部材2の左右の連結凹部24,24の底面を沿わせている構成である。
【0029】
また、前記外設部材6Aは、前記上部保持部材2に固定される桟状材である。
この第1実施例における外設部材6Aは、
図1(b)に示すように隣り合う前記上部保持部材3,3の被固定部31,31に、それぞれ固定具9bにてL字状のアングル材9cを固定し、これら左右のアングル材9c,9cの上端に、枠環状の取付補助材9Aが配され、該取付補助材9Aの外側に桟状材である外設部材6Aが取り付けられている。なお、この取付補助材9Aは、
図1(c)に示すように流れ方向に短幅のピース材であり、流れ方向に所定間隔で配され、流れ方向に連続する通し材である外設部材9Aを内面側から支持している。
【0030】
これらの各部材からなる第1実施例の屋根構造を施工するには、以下の手順で行うことが望ましい。
まず、C型鋼などから構成される躯体(母屋)7の上に木毛セメント等の野地材を敷設した屋根下地5の上に、適宜間隔で前記排水部材8を配し、該排水部材8の左右の側面を跨ぐように前記下部保持部材2を配設し、その固着部22の溝部221に固定ボルト2bにて屋根下地5及び躯体7に固定する。この工程にて、下部保持部材2の保持凹部23及び連結凹部24の裏面側に排水部材8が配された状態となる。
【0031】
次に、左右の下部保持部材2,2間に縦葺き屋根板1及び断熱材1Cを配し、その保持凹部23に側縁部13を弾性的に係合させる状態で敷設する。具体的には縦葺き屋根板1を配設し、側縁部13,13をそれぞれ上方から押圧するだけで、保持凹部23,23に弾性的に係合して取り付けられる。
【0032】
続いて、前記下部保持部材2の左右の連結凹部24,24に、それぞれ前記上部保持部材3の連結部33を弾性係合させて取り付ける。具体的には前記縦葺き屋根板1の配設と同様に、上部保持部材3をそれぞれ上方から押圧するだけで、連結凹部24,24に弾性的に係合して取り付けられる。その後、連結固定部32の溝部321に、上方からビス3bを打ち込んで下部保持部材2の流れ方向のズレ止め(流れ止め)を行う。
【0033】
その後、左右の前記縦葺き屋根板1,1間に前記カバー材4を配し、その被覆部41が前記下地保持部材2の平板部21に沿い、その左右の係合部42,42が側縁部13,13に弾性的に係合するように取り付ける。具体的には前記縦葺き屋根板1や前記上部保持部材3の配設と同様に、カバー材4を上方から押圧するだけで、保持凹部23に取り付けた側縁部13の外側に係合部42が弾性的に係合して取り付けられる。その際、カバー材4の被覆部41の端縁の裏面側には、止水材4cを介在させて前記縦葺き屋根板1の下り段状部12に沿わせる。
最後に外設部材6Aとして、桟状材を配設する。
【0034】
そして、前記各部材から構成される第1実施例の屋根構造は、屋根面の形成施工(=縦葺き屋根板1及びカバー材4の取付)と外設部材6Aの取付施工(=その取付面となる上部支持部材3の取付)とを同時に且つ取付部位を集中させること無く容易に行うことができるので、特に大面積の屋根面の構築や改修に際しても施工時間が短縮化でき、新規の屋根構造の構築や既設の屋根構造の改修にも好適に利用できる。
【0035】
特に上部保持部材3と下部保持部材2との連結は、連結凹部24と連結部33との弾性的係合に加え、連結固定部32を支持固定部25に沿わせてビス3bにて固定しているため、下部保持部材2も流れ方向にズレ動くことがない。
【0036】
また、この第1実施例では、上部保持部材3の裏面側に流れ方向に連続する排水部材8が配されているので、仮に側縁部13の裏面側に雨水等が廻り込んだとしてもこの排水部材8にて確実に傾斜勾配に沿って流下(排水)させることができる。さらに、上部保持部材2に外設部材6Aを固定するための固定具9bを打ち込むので、その固定具9bと共に雨水が裏面側に浸入したとしても、排水部材8にて確実に傾斜勾配に沿って流下(排水)させることができる。
【0037】
さらに、この第1実施例では、下部保持部材2の平板部21の上面と取り付けた状態の上部保持部材3の被固定部31の上面とが、水平状の略同一面となるように形成されているため、その表面側へ配設する縦葺き屋根板1の面板部11とカバー材4の被覆部41も、水平状の略同一面とすることができ、その更に表面側へ配する外設部材6Aに限らず各種の外設部材に対し、その取付に際して支障を生ずることが無い平坦状の水平状外装面を施工できる。
【0038】
図3(b)に示す第2実施例の屋根構造は、外設部材6Bとして、平面視矩形状の太陽電池パネルを用いた以外は、前記第1実施例と全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
この第2実施例における外設部材6Bである太陽電池パネルは、流れ方向より桁行方向が長い横長であって、
図3(c)に示すように流れ方向に隣り合う太陽電池パネル6B,6Bを押さえ材9Dにて固定されている。この押さえ材9Dは、逆ハット形状の部材であって、流れ方向に隣り合う太陽電池パネル6B,6B間に配され、前記上部保持部材3の被固定部31に固定具9bにて固定されることで、太陽電池パネル6Bの水上端及び水下端を表面側から押さえ保持することができる。
【0039】
図4(a)に示す第3実施例の屋根構造は、外設部材6Cとして、L字状アングル材である雪止め金具を用いた以外は、前記第1実施例と全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
この第3実施例における外設部材6Cである雪止め金具は、
図3(c)に示すように桁行方向に連続するアングル材であって、雪止め面である縦面が流れ方向の水上側へ正対するように固定されている。即ちこの雪止め金具6Cの横面を、前記上部保持部材3の被固定部31に固定具9bにて固定されることで、雪止め金具6Cを流れ方向の水上側へ正対するように固定することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 縦葺き屋根板
11 面板部
12 下り段状部
13 側縁部
2 下部保持部材
21 平板部
22 固着部
23 保持凹部
24 連結凹部
25 支持固定部
3 上部保持部材
3b ビス
31 被固定部
32 連結固定部
33 連結部
4 カバー材
41 被覆部
42 係合部
4c 止水材
5 屋根下地
6A 外設部材(桟状材)
6B 外設部材(太陽電池パネル)
6C 外設部材(雪止め金具)
7 躯体
8 排水部材
9A 取付補助材
9b 固定具
9c アングル材
9D 押さえ材