(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】クロマトグラフィーシステムにおけるUVセル光路長の適合方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/74 20060101AFI20221108BHJP
G01N 30/42 20060101ALI20221108BHJP
G01N 30/86 20060101ALI20221108BHJP
B01D 15/00 20060101ALI20221108BHJP
B01D 15/08 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
G01N30/74 E
G01N30/42
G01N30/86 G
B01D15/00 101A
B01D15/08
(21)【出願番号】P 2019545366
(86)(22)【出願日】2018-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2018053659
(87)【国際公開番号】W WO2018153743
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-12-02
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】597064713
【氏名又は名称】サイティバ・スウェーデン・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】ハンス・ブローム
(72)【発明者】
【氏名】ミケール・バーリ
(72)【発明者】
【氏名】ハンノ・エリング
(72)【発明者】
【氏名】リンダ・マティアション
(72)【発明者】
【氏名】エレナ・スコグラー
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ・ヒミェレフスキ
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0091063(US,A1)
【文献】特表2013-518278(JP,A)
【文献】特表2016-510981(JP,A)
【文献】特開2007-113979(JP,A)
【文献】特開2000-329757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/46,30/74,30/86,
G01N 21/05,21/17,
B01D 15/00
A61K 39/00,
C07K 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフィーカラム(1;39、47、59;107、109、111、113)の動作状態を決定する方法であって、
- カラムの入口に供給される供給液材料に含まれる生成物の組成を表す供給液シグナル(21;201)を検出する工程と、
- 供給液材料におけるUV吸光度を検出する工程と、
- カラムからの溶出液に含まれる生成物の組成を表す溶出液シグナル(23;203、205、207、209)を検出する工程と、
- 供給液シグナル及び溶出液シグナルを使用して、カラムの動作状態を決定する工程であって、供給液シグナルは、第1のUV波長で動作する第1のUVセル光路長を有する第1のUV検出器を使用して生成され、溶出液シグナルは、第2のUV波長において動作する第2のUVセル光路長を有する第2のUV検出器を使用して生成される、カラムの動作状態を決定する工程と
を含み、当該方法が、
- 供給液材料で検出されるUV吸光度における、第1の閾値を決定する工程と、
- 第1の閾値に基づいて、第1のUVセル光路長及び/又は第1のUV波長を選択する工程と、
- 溶出液におけるUV吸光度を検出する工程と、
- 溶出液で検出されるUV吸光度における、第2の閾値を決定する工程と、
- 第2の閾値に基づいて、第2のUVセル光路長及び/又は第2のUV波長を選択する工程と、
を更に含む、方法。
【請求項2】
- 供給液シグナル(21;201)及び溶出液シグナル(23;203、205、207、209)を使用して、供給液シグナルから溶出液シグナルを引いたデルタシグナルと、供給液材料中のカラムに結合し得ないすべての非結合成分がカラムを通過したために溶出液シグナルがプラトー(25)を示すときの供給液シグナルから溶出液シグナルを引いたデルタシグナルmax(27)と、を決定する工程と、
- デルタシグナル及びデルタシグナルmaxを決定したときの時間遅延を補償する工程であって、前記時間遅延は、非結合成分がカラムを通過するのにかかる時間を表す、時間遅延を補償する工程、及び/又は、デルタシグナルを使用して、カラムの破過点(c)かつ/若しくは飽和点(d)を決定する工程であって、前記破過点かつ飽和点は、デルタシグナルmax(27)のそれぞれ予め定義されたある百分率として計算される工程と、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
周期的向流(PCC)システムで各クロマトグラフィーカラム(39、47、59;107、109、111、113)からの溶出液シグナル(203、205、207、209)を検出する工程と、これらの溶出液シグナルを供給液シグナル(201)と一緒に使用して、クロマトグラフィープロセス時にPCCシステムの異なるクロマトグラフィーカラム(39、47、59;107、109、111、113)の動作状態を連続的に決定する工程とを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
供給液材料が、
- 第1のUV検出器で測定されるときバックグラウンド吸光度を生じる不純物と、
- 第1のUV検出器で測定されるとき供給液材料中の吸光度レベルを生じる生成物と
を含み、生成物の吸光度レベルが、供給液材料のバックグラウンド吸光度の少なくとも40%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
供給液材料中の生成物の吸光度レベルが、第1のUV検出器で測定された吸光度の70%~90%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1のUVセル光路長を選択する工程が、
- 複数の予め選択されたUVセル光路長から固定UVセル光路長を選択する工程、又は
- UVセル光路長を調整する工程
を含
む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の閾値を決定する工程が、
- 供給液材料における最大UV吸光度を推定する工程と、
- 供給液材料における最大UV吸光度の推定値が第1のUV検出器で検出可能であることを保証するように、第1の閾値を選択する工程と
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
供給液材料のUV吸光度を計算する工程を更に含み、最大UV吸光度を推定する工程が、UV吸光度の計算値に基づく、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2の閾値を決定する工程が、
- 溶出液における選択された破過点のUV吸光度を推定する工程と、
- 第2の閾値を、選択された破過点のUV吸光度の推定値が第2のUV検出器で検出可能であることを保証するように選択する工程と
を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
a)当該方法
において、選択された破過点のUV吸光度を推定する工程が、UV吸光度の測定値に基づき、
b)当該方法が、第2のUVセル光路長を、第1のUVセル光路長と等しくなるように選択する工程を更に含み、
c)第2のUVセル光路長を選択する工程が、
- 複数の予め選択されたUVセル光路長から固定UVセル光路長を選択する工程、若しくは
- UVセル光路長を調整する工程
を含み、
d)第2のUV波長を選択する工程が、第2のUV波長を調整する工程を含む、
請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも2つのカラム(39、47、59;107、109、111、113)を備える周期的向流クロマトグラフィーシステムを制御する方法であって、
- カラムの入口に供給される供給液材料の組成を表す供給液シグナル(201)を検出する工程と、
- システム中の各カラムからの溶出液の組成を表す溶出液シグナル(203、205、207、209)を検出する工程と、
- 請求項1から
10のいずれか一項に規定のように各クロマトグラフィーカラムの動作状態を決定する工程と、
- 決定された動作状態に依存して、供給液がカラム及びカラム間に供給されるように制御する工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択可能なUVセル光路長を有するUV検出器を使用して、クロマトグラフィーカラムの動作状態、例えば結合容量を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クロマトグラフィーカラムの溶質に対する結合容量は、プロセスクロマトグラフィーにおいて非常に重要な因子である。結合容量は、クロマトグラフィー工程の生産性及びコストに直接影響を及ぼす。結合容量は、動的/破過容量で表して、又は最大結合容量として定義される。動的容量は、カラム体積と供給液流速との比と定義される滞留時間等、クロマトグラフィー媒体が充填されたカラムを溶液が通って流れる条件に依存する。最大結合容量は、滞留時間が平衡状態である場合にカラムの破過容量を表す。初期破過容量は、溶質が溶出液に最初に検出される時点でカラムによって取り込まれている結合溶質の量と定義される。破過容量は、所与の百分率の破過における容量としても定義されうる。ここで、その百分率は、カラムからの溶出液中に存在する結合溶質の量を供給液中に存在する溶質の%で示して表す。この定義によれば、最大結合容量は、100%の破過における、すなわち、溶質がもはやカラムに結合することができない時点における破過容量と等しい。したがって、最大容量を決定するために、破過容量は、異なる破過レベルで測定される。ここで、そのレベルは、試料のローディング時にカラムからの溶出液において測定される溶質の濃度レベルによって定義される。これらの濃度は、溶出液ラインに配置されたフロースルー検出器におけるシグナルを連続的にモニタリングすることによって決定されることが多い。これらの濃度(シグナル)を時間(又はローディングされた体積若しくは質量)に対してプロットした図は、破過曲線と呼ばれる。クロマトグラム上の破過の位置及びその形状は、溶質がカラム上に結合することができる量及びすべての吸着部位が溶質で飽和される速さに関連している。また、任意の所与の時間にカラムに結合されうる溶質の増加量も示す。不純物の存在下における溶質の破過結合容量は、精製プロトコルを開発するとき最適化するべき最も決定的なパラメータの1つである。というのは、溶質の結合破過容量の決定が退屈で骨の折れる作業となるように、不純物は同様の光吸着特性を有することがかなり多いからである。典型的な実験において、カラムからの溶出液が一連の画分として収集され、それらは、引き続いて、HPLC等の高分解能技法を使用して溶質を分析される。したがって、クロマトグラフィーカラムの結合容量の決定はかなり複雑である。供給液をクロマトグラフィーカラム上に加えるとき供給液溶液の濃度がランダムに変わる場合、真の破過容量は扱いにくく、又は測定が極めて困難である。結合容量の決定は、カラムを最適のプロセス条件で操作したい場合非常に重要である。例えば、目的の溶質がカラム溶出液中のその濃度のある値、例えばその初期濃度の10%に到達するとき、ある条件下でキャプチャークロマトグラフィー工程の最高の生産性が得られることが示されうる。破過容量が上記の方法に従って決定される場合、供給液濃度か流速及び/又はクロマトグラフィー媒体特性を含めてプロセス条件のいずれかが時間によって予測不可能に変わるならば、カラムのローディングをまさに10%破過で終えることはできない。
【0003】
更に、様々なプロセス条件下で異なる破過レベルにおける破過容量を決定することは、連続クロマトグラフィーの場合非常に重要である。
【0004】
連続クロマトグラフィーでは、いくつかの同一のカラムが、方法要件に応じて直列及び/又は並列でカラムを操作することができる配列で連結されている。したがって、すべてのカラムは、原則として同時ではあるが、方法工程で若干ずらされた状態で実行されうる。手順は繰り返されうるので、したがって各カラムは、プロセスにおいて数回ローディング、溶出、及び再生される。ただ1回のクロマトグラフィーサイクルがローディング、洗浄、溶出及び再生等いくつかの連続工程に基づいて行われる「従来の」クロマトグラフィーと比較して、複数の同一のカラムに基づく連続クロマトグラフィーでは、これらの工程がすべて、同時ではあるが、それぞれ異なるカラムで行われる。連続クロマトグラフィー操作によって、クロマトグラフィー樹脂のよりよい利用、処理時間の低減及びバッファー要件の低減がもたらされ、これらのすべては、プロセスの経済に利益を与える。連続クロマトグラフィーは、疑似移動床式(SMB)クロマトグラフィーと表示されることもある。疑似移動床式クロマトグラフィーは、システムを構成するクロマトグラフィーカラムがすべて、周期的に試料の流れと反対の方向に同時に動くので周期的向流プロセスの一例である。カラムの見かけ上の動きは、入口及び出口流の方向をカラムに/カラムから適切に変更することによって実現される。
【0005】
Bishopら(「Simulated Moving Bed technology in Biopharmaceutical Processing」、Bischops, M.及びPennings, M.、Recovery Biological Products XI、(2003)、Banff, Alberta, Canada)は、プロテインA親和性樹脂を用いたIgGの実験室規模の精製に使用することに成功した、疑似移動床式(SMB)技術に基づく連続クロマトグラフィー方法を開示している。SMBによって実現されるマルチカラム及びマルチゾーン連続手法がプロセス効率を大いに高めるという事実にもかかわらず、SMBシステムは、ハードウェアと操作の両方の観点からシステムが複雑であるという主な理由で、今までのところcGMPバイオ医薬品生産に利用されていない。連続方法はより複雑であり、多くの操作(工程)が非常に正確に予め定義された時点で同時に行われることを要するので、操作の観点は特に重要である。定義によれば、連続プロセスは、システムへの入力の変動性がない場合にのみ確立されうる定常状態という仮定で動作するので、プロセス変動性の原因となる安全因子の導入は、バッチクロマトグラフィーとは対照的に、連続プロセスには推奨されない。
【0006】
実際は、疑似移動床式技術は何十年間も様々な他の分野で利用されてきた。例えば、US3,291,726(Universal Oil Products社)には、石油化学工業のための連続的疑似向流収着方法が1966年という早期に記載された。
【0007】
Heeterら(Heeter, G.A.及びLiapis, A.I.、J. Chrom A、711 (1995))は、典型的な4ゾーンSMBシステムに代わるものとして、3カラム周期的向流クロマトグラフィー(3C-PCC)原理に基づく方法示唆した。更に最近では、Lackiら(「Protein A Counter-Current Chromatography for Continuous Antibody Purification」、Lacki, K.M.及びBryntesson, L.M.、ACS (2004)、Anaheim, CA USA)によって、そのような3C-PCCシステムの、MabSelect(商標)親和性樹脂へのIgG吸着のための使用が記載された。この3C-PCC方法では、典型的な4ゾーンSMBシステムより単純なハードウェア及び簡単な操作が必要であるので、資本設備及びシステムの維持に関連するコストが直接削減される。
【0008】
歴史的に見ると、信頼できる連続プロセスに必須の因子は、1)使用されるカラムの品質、更に詳細にはカラム間の類似性又は更には同一性、2)一定の供給液組成、及び3)ハードウェアの信頼性、更に詳細にはポンプによって送達される一定の流速である。カラムが同一でない場合、連続クロマトグラフィープロセスを設計するのに典型的に使用される理論計算は妥当でなく、効率的で確固とした連続クロマトグラフィープロセスを設計することが困難になる。供給液濃度及び流速が、時間と共に予想外に変わる場合、同じ議論が当てはまる。したがって、スケールアップを検討するには、同一のカラム、信頼できるポンプをシステムに有することが必須である。しかし、反復可能な結果を得るためには、カラムへのクロマトグラフィー媒体充填が非常に複雑である。プレートの数又は他の充填特性のわずかな差でさえ、最終結果に大きな影響を及ぼすことができる。更に、クロマトグラフィー樹脂の容量は、典型的に樹脂の寿命/使用時に変化するので、新鮮な樹脂のために選択されるプロセス条件は、数回使用された樹脂には適用できない。供給液溶液濃度も変わる場合、常にその最適で動作する効率的な連続クロマトグラフィープロセスを設計することははるかに複雑になる。
【0009】
通常、供給液材料(試料)の組成は、試料を生成する方法に基づいて経時的に変わる。したがって、クロマトグラフィープロセスへの供給液材料の組成を決定するのに使用される検出器は、供給液組成における差異、すなわち試料中の標的化合物の濃度における差異をモニターすることができなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】US3,291,726
【文献】US8,649,005
【文献】US20140255994(A1)
【非特許文献】
【0011】
【文献】「Simulated Moving Bed technology in Biopharmaceutical Processing」、Bischops, M.及びPennings, M.、Recovery Biological Products XI、(2003)、Banff, Alberta, Canada
【文献】Heeter, G.A.及びLiapis, A.I.、J. Chrom A、711 (1995)
【文献】Lacki, K.M.及びBryntesson, L.M.、「Protein A Counter-Current Chromatography for Continuous Antibody Purification」、ACS (2004)、Anaheim, CA USA
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、クロマトグラフィーカラムの動作状態を決定及びモニタリングするための信頼できる動的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これは、請求項1に記載の方法によって達成される。これによって、供給液シグナル及び溶出液シグナルのUV吸光度は、クロマトグラフィーカラムの動作状態を連続的に決定するのに使用されうる。
【0014】
本発明の別の目的は、クロマトグラフィーシステムを制御するための信頼できる動的な方法を提供することである。
【0015】
これは、請求項28に記載の方法で達成される。これによって、クロマトグラフィーシステムは、クロマトグラフィーカラムの動作状態のリアルタイム測定に基づいて動的に制御されうる。
【0016】
本発明の一実施形態において、クロマトグラフィーシステムは周期的向流システムである。
【0017】
本発明の別の好適な実施形態は、従属請求項で定義される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】1つのクロマトグラフィーカラム及び2つの検出器を備えるクロマトグラフィーシステムを示す概略図である。
【
図2】
図1における2つの検出器からのシグナルを示す図である。
【
図3】4つの検出器を備える3カラム周期的向流(3C-PCC)システムを示す概略図である。
【
図5】本発明による4カラム周期的向流(4C-PCC)システムを示す概略図である。
【
図6】
図5に示す4C-PCCシステムにおける5つの検出器から検出されたシグナルを示す図である。
【
図7】典型的なフローセル吸収モニターシステムを示す概略図である。
【
図8a】光学フローセル検出器を示す概略図である。
【
図8b】光学フローセル検出器を示す概略図である。
【
図8c】光学フローセル検出器を示す概略図である。
【
図10】PCCシステムにおける動的制御機能を示す概略図である。
【
図11a】0.5mm対2mmのUVセル光路長の場合の抗体破過を示す図である。
【
図11b】0.5mm対2mmのUVセル光路長の場合の抗体破過を示す図である。
【
図12a】UVセル光路長の関数としてUV吸光度を示す図である。
【
図12b】UVセル光路長の関数としてUV吸光度を示す図である。
【
図12c】UVセル光路長の関数としてUV吸光度を示す図である。
【
図12d】UVセル光路長の関数としてUV吸光度を示す図である。
【
図13a】タンパク質ローディングのクロマトグラフィーを示す図である。
【
図13b】タンパク質ローディングのクロマトグラフィーを示す図である。
【
図13c】タンパク質ローディングのクロマトグラフィーを示す図である。
【
図13d】タンパク質ローディングのクロマトグラフィーを示す図である。
【
図14a】FNVIPプールの収率データ及び品質データを示す図である。
【
図14b】FNVIPプールの収率データ及び品質データを示す図である。
【
図14c】FNVIPプールの収率データ及び品質データを示す図である。
【
図14d】FNVIPプールの収率データ及び品質データを示す図である。
【
図15】UV光路長の関数としてUV300nm吸光度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先行技術に関して述べられた難点を回避するために、フィードバック様制御原理に基づくリアルタイム制御アルゴリズムが、本発明によって提供される。それに応じて、プロセスの任意の所与の瞬間において異なるカラムの状態を評価する方法が特に重要である。例えば、特定の破過レベルにおけるクロマトグラフィーカラムの動作状態、例えば結合容量を知ることによって、カラムがやはり溶質を結合させることができるかどうか、及びカラムが完全飽和に到達する前にやはり結合されうる溶質の量を評価することが可能になる。同様に、初期破過容量に到達されたかどうかを知ることは、この時点で、溶質がカラムからの溶出液流中で認められ、適切な措置を取らなければ、直接消耗することになり、又は他の非結合成分と一緒に回収されるので、プロセス収率の観点から特に重要である。
【0020】
図1は、本発明による単純なクロマトグラフィーシステムの一部分を概略的に示す。このクロマトグラフィーシステムは、1つのクロマトグラフィーカラム1を備える。それは、クロマトグラフィーカラム1の入口端部5に連結されている供給液ライン3を更に備える。カラム1に通す試料は、供給液ライン3に通して添加されうる。システムは、反対の端部、すなわちクロマトグラフィーカラム1の出口端部7に連結されている溶出液ライン9を更に備える。クロマトグラフィーカラム1を通過した試料は、溶出液ライン9を通り抜けることができる。クロマトグラフィーシステムは、本発明によれば、供給液ライン3に沿ってどこかに配置された第1の検出器11を更に備える。第1の検出器11は、供給液ラインにおいて通過する供給液材料(試料)の組成を表す供給液シグナルを検出するように適合される。更に、クロマトグラフィーシステムは、溶出液ライン9に沿ってどこかに配置され、カラム1から溶出液ライン9を通って流出する試料の組成を表す溶出液シグナルを検出するように適合される第2の検出器13を備える。第1の検出器11及び第2の検出器13は、好適には同じタイプの検出器であり、一実施形態において、これは、UV検出器、すなわち試料のUV吸光度を測定する検出器である。他の利用可能なタイプの検出器は、pH、伝導率、光散乱、蛍光、IR又は可視光を測定する検出器である。システムにおける様々な検出器が同じタイプの検出器でない場合、検出されたシグナルは、本発明による別の計算のために使用されるとき相互に関連付ける必要がある。
【0021】
更に、本発明によれば、第1の検出器11及び第2の検出器13は両方とも、決定ユニット15に連結されている。クロマトグラフィーカラムの動作状態を決定するために、前記ユニットは、第1の検出器11及び第2の検出器13で検出されたシグナルを分析する。第1の検出器11及び第2の検出器13からのありうるシグナルが、シグナル強度を経時的に示す
図2に示される。供給液シグナルは21と表わされ、第1の検出器11からのシグナルである。そのシグナルは、供給液試料の組成がこの場合及びこの時間窓の間一定であるので、本質的に直線である。しかし、供給液シグナルは、標的生成物及び/又はバックグラウンドの濃度における差異が原因で変わりうる。
【0022】
溶出液シグナルは23と表わされ、第2の検出器13からのシグナルである。溶出液シグナル23は、試料のいくらかがカラム1を通過し、第2の検出器13が配置されている溶出液ライン9の通路に入るとすぐに、点aにおけるゼロから上昇を始める。次いで、シグナルは、点bまで上昇し、そこで水平になり、プラトー25に達する。このプラトー25は、供給液中の非結合成分すべてがカラムを通過すると立ち上がる。シグナル23が再び上昇し始めるとき、破過点cが、プラトー25の後に更に画定される。これは、カラム1中のクロマトグラフィー媒体が飽和し始め、カラムにおいて結合されるべきだった試料の一部分のいくらかがカラムを破過し始めるという事実が原因である。シグナル23がシグナル21に接近するにつれて、破過点dが更に画定される。この点は飽和点と定義され、クロマトグラフィー媒体が試料の結合成分でほぼ完全に飽和される瞬間を表す。
【0023】
任意の所与の時点で、デルタシグナルが計算される。これは、所与の時間から特定のハードウェア構成のために指定された時間遅延を減じた時間と所与の時間との間で測定されたシグナルから選択される供給液シグナル21から、所与の時間に測定された溶出液シグナル23を差し引いたものであると定義される。供給液シグナル21は、供給液の非結合成分と結合成分の両方の特徴(一実施形態において、UV吸光度)の尺度となる。時間遅延は、試料中の非結合化合物が供給液検出器11(
図1)から溶出液検出器13(
図1)に移動する時間と定義される。時間遅延は、滞留時間分布理論を適用して測定されうる。又は、シグナル21が最高のプラトーeに最初に到達する時間をシグナル23がプラトー25に到達する時間から減じることによって測定されうる。これは、
図2において矢印29として示される。特定の一時点におけるデルタシグナルは、
図2において矢印28として示される。示されているように、この矢印28は、時間遅延が補償される場合に傾斜されうる。
【0024】
本発明によれば、デルタシグナルmax 27が計算される。それは、供給液シグナル21から溶出液シグナル23のプラトー25であるときのシグナルレベルを差し引いたものであると定義される。次いで、このデルタシグナルmax 27は、例えば破過点及び飽和点に適したレベルを定義するのに使用されうる。破過点cは、デルタシグナルmaxの予め定義されたある百分率、例えば1~10%の範囲又はより好適には1~3%の範囲のどこかであると好適には定義されうる。飽和点dは、デルタシグナルmaxの予め定義されたある百分率、例えば60~90%の範囲又はより好適には70~80%の範囲のどこかであると好適には定義されうる。
【0025】
破過点及び飽和点を決定するこの手法の1つの利点は、これが、自動的にリアルタイムで実施可能であり、供給液シグナルが自動的に補償されるので供給液濃度及び/又は組成とは無関係であることである。
【0026】
本発明の別の態様において、動作状態、例えば破過点や飽和点等結合容量のこれらの決定は、異なるクロマトグラフィープロセス工程の始動及び停止を自動的に制御するのに使用される。すなわち、ある破過点又は飽和点レベルに到達したとき、制御システムは、クロマトグラフィーシステムが、カラム溶出液の方向を異なる回収点に変更する等の次のプロセス工程に進行する、又はローディング工程を停止し、カラム洗浄工程を開始するように制御することができる。
【0027】
本発明の別の態様において、クロマトグラフィーシステムは、いわゆる周期的向流(PCC)システムに1つより多いクロマトグラフィーカラムを備える。周期的向流システムでは、大半の場合、供給液は、直列に連結されている少なくとも2つのカラムに通される。この直列は、ローディングゾーンと呼ばれることが多く、カラムをローディングゾーンに加えること及びローディングゾーンから取り除くことは、それぞれ直列の最後及び最初のカラムの所定の破過点及び飽和点に基づいて行われる。
図3において、3つのカラムを備える本発明によるそのようなシステムが概略的に示されている。本発明の利点は、PCCシステムにおける1つの共通の問題が、効率的なシステム操作を得ることができるためには、システムにおいて使用されるカラムはできる限り同一である必要があり、供給液組成及び流速は一定であるべきであり、又は少なくともそれらのプロセス時間に伴う変化は演繹的に知られるべきであるという点であるので、この例で更に一層明白である。本発明では、カラムの動作状態及び/又は流速におけるいかなる差も、決定された破過点及び飽和点に従って、異なるカラムがローディングゾーンに存在すべき時間及び位置を調整することによって補償されうる。
【0028】
図3において、第1の検出器33を介して第1のバルブブロック35に連結している供給液ポンプ31が示されている。バッファーポンプ37も、この第1のバルブブロック35に連結されている。第1のバルブブロック35は、第1のT-バルブ41を介して第1のカラム39の入口に更に連結されている。第1のカラム39の出口端部は、第2の検出器45を通して第2のT-バルブ43に連結されている。第1のバルブブロック35は、第2のバルブブロック49を介して第2のカラム47の入口に更に連結されている。第2のカラム47の出口端部は、第3の検出器53を介して第3のバルブブロック51に連結されている。更に、第3のT-バルブ55は、第2のT-バルブ43と第3のバルブブロック51の間に連結されている。第3のT-バルブ55は、第4のT-バルブ57にも連結されており、その第4のT-バルブ57は、第1のT-バルブ41及び第2のバルブブロック49にも連結されている。これによって、第1のカラム39からの溶出液は、T-バルブ43、55、57及びバルブブロック49に通して第2のカラム47の入口に方向付けされうる。更に、第1のバルブブロック35は、第5のT-バルブ61を介して第3のカラム59の入口に連結されている。第3のカラム59の出口端部は、第4の検出器65を介して第6のT-バルブ63に連結されている。更に、第7のT-バルブ67は、第3のバルブブロック51と第6のT-バルブ63の間に連結されている。第7のT-バルブ67は、第8のT-バルブ69にも連結されており、その第8のT-バルブ69は、第2のバルブブロック49及び第5のT-バルブ61にも連結されている。これによって、第2のカラム47の溶出液は、第3のカラム59の入口に方向付けされる。第3のカラム59からの溶出液は、バルブ63、67、51、55、57及び41に通して第1のカラム39の入口に方向付けされる。第1のバルブブロック35の構造を、
図4aに概略的に示し、第2のバルブブロック49の構造を、
図4bに概略的に示し、第3のバルブブロック51の構造を、
図4cに概略的に示す。これらの図において、1群4箱のそれぞれは、T-バルブ(3方バルブ)を表す。更に、本発明によれば、第1、第2、第3及び第4の検出器33、45、53、65はすべて、決定ユニット71に連結されている。決定ユニットは、検出器から検出されたシグナルを使用して、異なる3つのカラムの破過点及び飽和点を決定するように適合される。決定ユニット71並びにバルブブロック及びT-バルブ及びポンプはすべて、制御ユニット73に更に連結されており(連結はすべて、図に示されていない)、その制御ユニット73は、カラムをローディングゾーンから取り除く又はローディングゾーンに加えるタイミング、流速を変化させるタイミング、新しい洗浄工程を開始するタイミング等の点から、クロマトグラフィーシステムを制御するように適合される。検出器33、45、53、65は、一実施形態においてUV検出器である。本発明に使用されうることができる検出器の他の例は、すでに述べられている。
【0029】
本発明の一実施形態において、
図3のシステムで実施されるクロマトグラフィープロセスは、
(a)第1の検出器33を伴う供給液ライン及びカラム39、47、59(第2、第3及び第4の検出器45、53、65を伴う)のそれぞれからの溶出液におけるシグナルを連続的にモニタリングし、予め定義された遅延時間によって時間的に後ろにずらされた供給液シグナルと各カラム39、47、59からの流出液ラインにおける溶出液シグナルとの差を計算する工程と、
(b)少なくとも1つの標的化合物を含む供給液を第1の吸着剤(第1のカラム39中のクロマトグラフィー媒体)に通し、供給液ラインと第1の吸着剤からの溶出液との間で測定されたデルタシグナル(
図2に関して以上で説明したような定義)が所定のx1値に到達するとき、第1の吸着剤からの流出液を第2の吸着剤(第2のカラム47中のクロマトグラフィー媒体)に向ける工程と、
(c)供給液ラインと第1の吸着剤からの溶出液との間で測定されたデルタシグナルが所定の値x2に到達するとき、供給液の方向を第2の吸着剤に変更し、洗浄液体を標的化合物が結合している第1の吸着剤に通す工程と、
(d)供給液ラインと第2の吸着剤からの溶出液との間で測定されたデルタシグナルが所定の値x1に到達するとき、洗浄液体流出液を第3の吸着剤(第3のカラム59中のクロマトグラフィー媒体)に向け、引き続いて第2の吸着剤からの流出液を第3の吸着剤に向ける工程と、
(e)第1の吸着剤を再生する工程と、
(f)供給液ラインと第2の吸着剤からの溶出液との間で測定されたデルタシグナルが所定の値x2に到達するとき、供給液の方向を前記第3の吸着剤に変更し、洗浄液体を標的化合物が結合している第2の吸着剤に通す工程と、
(g)供給液ラインと第3の吸着剤からの溶出液との間で測定されたデルタシグナルが所定の値x1に到達するとき、洗浄液体流出液を第1の吸着剤に向け、引き続いて第3の吸着剤からの流出液を第1の吸着剤に向ける工程と、
(h)第2の吸着剤を再生する工程と、
(i)供給液ラインと第3の吸着剤からの溶出液との間で測定されたデルタシグナルが所定の値x2に到達するとき、供給液の方向を前記第1の吸着剤に変更し、洗浄液体を標的化合物が結合している第3の吸着剤に通す工程と、
(j)供給液ラインと第1の吸着剤からの溶出液との間で測定されたデルタシグナルが所定の値x1に到達するとき、洗浄液体流出液を第2の吸着剤に向け、引き続いて第1の吸着剤からの流出液を第2の吸着剤に向ける工程と、
(k)第3の吸着剤を再生する工程と、
(l)工程(b)~(k)を繰り返す工程と
を含み、少なくとも1つの標的化合物が、工程(d)、(g)及び/又は(j)において回収される。
【0030】
x1及びx2の所定の値は、それぞれ破過点及び飽和点を表す。
【0031】
本発明によれば、カラムのそれぞれを測定されたデルタシグナル及びデルタシグナルmaxに基づいて、破過及び飽和切替点を自動的に調整することによって、カラム特性におけるいずれの差も補償されうるので、向流システムを操作するとき同一でないカラムの使用が可能になる。本発明によれば、供給液濃度における差異を自動的に補償するデルタシグナル及びデルタシグナルmaxに基づいて破過及び飽和切替点を自動的に調整することによって、供給液濃度のいかなる変化も、したがって各カラムにローディングされた質量の変化も補償されうるので、供給液濃度の予想外の変化が起こるとき向流システムを操作することが可能になる。
【0032】
本発明の別の実施形態において、2つより多いクロマトグラフィーカラムを備えるクロマトグラフィーシステムが、灌流細胞培養から生じた供給液流からの生成物の直接キャプチャーに使用されうる。そのような流中の成分の濃度は時間と共に変わり、自動制御アルゴリズムがなければ、クロマトグラフィーシステムの操作を、誤って演繹的に指定された方向変更点のために生成物の著しい損失のリスクなしに行うことは不可能であることが当業者に周知である。
【実施例】
【0033】
本実施例は、例示の目的で提供されるものにすぎず、添付の特許請求の範囲で定義される本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0034】
本実施例は、本発明によるデルタUVmax制御を備えた4カラム周期的向流(4C-PCC)システム(すなわち、本実施例において、検出器はUV検出器であり、デルタシグナルmaxはデルタUVmaxと呼ばれる)を使用して、プロテインAクロマトグラフィー樹脂で、モノクローナル抗体(MAb)及びウシ血清アルブミン(BSA)を含有する混合物からMAbを精製するための連続的一次キャプチャー工程を示す。更に詳細には、同様の4つのカラムに、プロテインAクロマトグラフィー樹脂MabSelect(商標)(GE Healthcare Bio-Sciences社、Uppsala, Sweden)を充填した。カラムを、4つのカラムのそれぞれの前後で測定されたUVシグナルの連続比較に基づく自動制御機能を備えた4カラム周期的向流システム(4C-PCC)に構成されたカスタム改変AKTAexplorer(商標)(GE Healthcare Bio-Sciences社、Uppsala, Sweden)クロマトグラフィーシステム(
図5)に連結した。システムは、独立した3つのポンプ、供給液ポンプ101、第1のバッファーポンプ153及び第2のバッファーポンプ155を備える。システムは、第1のカラム107、第2のカラム109、第3のカラム111及び第4のカラム113を更に備える。システムは、5つのUV検出器、供給液ライン上に配置された第1のUV検出器115、第1のカラム107の後に配置された第2のUV検出器117、第2のカラム109の後に配置された第3のUV検出器119、第3のカラム111の後に配置された第4のUV検出器121、及び第4のカラム113の後に配置された第5のUV検出器123を更に備える。システムは、いくつかのロータリーバルブ125a~j及びフロースプリッター127を更に備える。UV検出器115、117、119、121、123は、供給液流及びカラムのそれぞれからの溶出液をUV検出器に通すように配置されている(
図5)。UNICORN(商標)ソフトウェア(GE Healthcare Bio-Sciences社、Uppsala, Sweden)を使用して、各UV検出器からの吸光度を記録した。UNICORN(商標)は、すべてのポンプ及びバルブを制御するのにも使用される。プロテインAカラムから溶出されたMAbを
単一のプールに回収した。
【0035】
4C-PCCシステムを連続的に操作するためのベースとして、以下の単一カラムクロマトグラフィーサイクルを使用した:1)3カラム体積(CV)のバッファーAを用いたカラム平衡化工程;2)供給液のカラムローディング工程;3)4CVのバッファーAを用いたカラム洗浄工程;4)4CVのバッファーBを用いたカラム溶出工程;5)4CVのバッファーCを用いたカラムCIP工程;及び6)3CVのバッファーAを用いたカラム再生工程。すべての工程を流速0.4mL/分で行った。
【0036】
使用された溶液の組成を以下に示す:
バッファーA:PBS、pH 7
バッファーB:0.1Mクエン酸ナトリウム、pH=3.5
バッファーC:50mM NaOH
供給液:バッファーAに溶解させた約2.00g/L MAb及び3mg/ml BSA(Sigma社)
【0037】
数百ミリリットルの供給液含有溶液を上記の実験的4C-PCC装置に連続的に供給した。供給液溶液の吸光度を、供給液ライン上に配置された第1のUV検出器115(
図5)によって連続的に測定した。飽和したカラムにバッファーBを加えることによって、精製MAbをシステムから慎重に溶出した。飽和したカラムを、溶出工程より前に洗浄した。
図6において、1)供給液を第1のカラム107にローディングする;2)第1のカラム107及び第2のカラム109を直列連結する;3)供給液を第2のカラム109に方向付けると同時に、第1のカラム107を洗浄して第3のカラム111に入れる;4)第2のカラム109及び第3のカラム111を直列連結すると同時に、供給液を加える;5)第1のカラム107を溶出する;6)第1のカラム107を再生する;7)第供給液を第3のカラム111に方向付けると同時に、2のカラム109を洗浄して第4のカラム113に入れる;8)第3のカラム111及び第4のカラム113を直列連結すると同時に、供給液を連続的に加える;9)第2のカラム109を溶出する;10)第2のカラム109を再生する;11)供給液を第4のカラム113に方向付けると同時に、第3のカラム111を洗浄して第1のカラム107に入れる;12)第4のカラム113及び第1のカラム107を直列連結すると同時に、供給液を連続的に加える;13)第3のカラム111を溶出する;14)第3のカラム111を再生する;15)供給液を第1のカラム107に方向付けると同時に、第4のカラム113を洗浄して第2のカラム109に入れる;16)第1のカラム107及び第2のカラム109を直列連結すると同時に、供給液を連続的に加える;17)第4のカラム113を溶出する;18)第4のカラム113を再生する;19)工程3~18をもう1回繰り返す工程からなる最初の起動時4C-PCCサイクル時における供給液ライン及びクロマトグラフィーカラム107、109、111、113のそれぞれからの溶出液において記録されたシグナルが示される。
【0038】
図2に示すUVパターンの反復を
図6に示す。
図6においては、9回の単一カラムローディング時に記録されたUVシグナルが呈示され、2回の4C-PCCサイクルを表す。201と表された曲線は、
図5における第1のUV検出器115から生じるシグナルである。すなわち、これは供給液シグナルである。203と表された曲線は、
図5における第2のUV検出器117から生じるシグナルである。すなわち、これは、第1のカラム107からの溶出液シグナルである。205と表された曲線は、
図5における第3のUV検出器119から生じるシグナルである。すなわち、これは、第2のカラム109からの溶出液シグナルである。207と表された曲線は、
図5における第4のUV検出器121から生じるシグナルである。すなわち、これは、第3のカラム111からの溶出液シグナルである。209と表された曲線は、
図5における第5のUV検出器123から生じるシグナルである。すなわち、これは、第4のカラム113からの溶出液シグナルである。
図6に示されるカラムのそれぞれからの溶出液中のMAbの濃度を表すクロマトグラムは、本発明に記載されている原理に従って、破過点及び飽和点をそれぞれx=デルタUVmaxシグナルの3%及びx=デルタUVmaxシグナルの70%において検出するデルタUV(すなわち、本実施例において、検出器はUV検出器であり、デルタシグナルはデルタUVと呼ばれる)基準を設定することによって得られた。ここで、xは、
【0039】
【0040】
によって与えられる。この実験で得られた結果の概要を以下のTable 1(表1)及びTable 2(表2)に示す。ここで、供給液溶液の体積及び各カラムにローディングされた量の計算値を示す。これらのデータは、本発明による自動制御されたものが使用されなかった場合、すなわち参照実行が同じカラムを備えた同じシステムで行われた場合に、記載されているフロー方向変更の予め指定された適切な切替時間を使用して、1~18の時点でを行った場合に得られる計算された結果と比較される。
図6に示されているように、第1のカラム107からの溶出液において測定されたUVシグナルは、MAbの破過が観察される前の第1のカラムへのロードが、同じレベルの破過まで他の3つのカラムに加えられたロードと比べて短いことを示す。この早期破過は、このカラム中の樹脂の量又は樹脂自体が他の2つのカラムと異なることを示す。実際は、4C-PCC実験に先立って、第1のカラム107を処理して、その結合容量を低減し、そうすることによって、他の3つのカラムと異なるものとした。
【0041】
第1のカラム107は第2のカラム109と異なったので、このカラムの早期破過が、予め定義されたカラム切替時間に基づいて4C-PCCシステムが操作されたときの実験で観察されたはずである。そのような条件下では、サイクルの工程1におけるMAbの損失が観察されたはずである。更に、工程2において第2のカラム109にローディングされたMAbの量は、計算された量より多く、引き続いてMAbの一部は、このカラムが工程4において第3のカラム111に連結される前に第2のカラム109からの溶出液中で失われる。次いで、カラムにローディングされた量のこの不整合は、工程5~18を通して普及し、カラムによってキャプチャーされていないMAbの量は、各カラム切替と共に着実に増加する。結合していないMAbのこのような損失は、本発明による制御アルゴリズムを履行することによって回避された。Table 1(表1)において、実験時にカラムのそれぞれにローディングされたMAbの質量の推定値を示す。ローディングされた質量は、各カラムの後の溶出液ラインにおいて測定されたそれぞれのUV曲線上の面積に基づいて推定された。1つのカラムから洗い出され、直列の第2のカラムとそれ以降のカラムにローディングされた質量は無視した。Table 1(表1)に示されているように、他の3つのカラムでローディングされた質量と比べて、有意差があるMAbの質量が第1のカラム107にローディングされた。第1のカラム107でローディングされた質量は、ほとんど同じで、カラムとサイクルとの差が5%以下である、他のカラムのそれぞれで異なる2回のサイクル時においてローディングされた質量より20~30%少なかった。他方では、4C-PCCシステムを、自動制御なしで、切替時間を樹脂1ミリリットル当たり77mgのロードを可能にするように設定して操作した場合、1サイクル及び1カラム当たり失われたMAbの量は著しく(表2)、実験全体においてシステムにローディングされた質量の約10%を占める。
【0042】
Table 1(表1)
4C-PCC実行の概要。2回のローディングサイクル時において各カラムでローディングされたMAbの質量(単位ミリグラム)*
【0043】
【0044】
Table 2(表2):4C-PCCが樹脂1リットル当たり77gのロードに等しい一定の切替時間で操作された場合に1サイクル及び1カラム当たり失われる(廃液流中で見出される)質量の推定値。
【0045】
【0046】
液体クロマトグラフィー用の標準紫外(UV)検出器は、UV又は可視波長範囲(典型的には190nm~400nm)における固定波長の単色光の参照ビームに対する吸光度を測定し、吸光度の大きさを検出器内に入っているフローセルを通り抜ける試料中の化合物の濃度と関連付ける。
【0047】
UV検出に適している化合物は、典型的に、π*及びσ*非結合軌道を含み、そこに電子が入って、入射エネルギーを吸収する、不飽和結合、芳香族基、又はヘテロ原子を含む官能基を含む。これらの非結合軌道は、振動及び回転エネルギーレベルの広範な分布を含み、吸光度エネルギーの分布、したがってシャープではなくブロードな特徴をもつスペクトルを導く。
【0048】
化合物濃度は、以下に更に詳細に記載されているランベルト-ベールの法則から決定されうる。
【0049】
図7は、GE HEALTHCARE BIO SCIENCES AB社に譲渡されたUS8,649,005(参照により本明細書に組み込まれる)で開示されている多波長紫外(UV)-可視モニター等のフローセル吸収モニターシステムの一実施形態を示す。このモニター151は、交換可能なフローセル153と、フローセルをモニターユニット151に連結する光ファイバー155とを含む。モニター151は、例えばUppsala, SwedenにあるGE Healthcare, Life Sciences社によって製造されたMonitor UV-900とすることができる。このモニターは、先端光ファイバー技術を利用して、190~700nmの範囲で同時に最大3波長にて高感度で光をモニターする。ファイバー光学系を独特のフローセル設計と共に使用することによって、最小のドリフト及び屈折率感度で信号対雑音比が保証される。典型的には、モニター151は、高強度で連続スペクトルの光を提供するキセノンフラッシュランプ(図示せず)等の光源(図示せず)、及びファイバー155に出力される光の波長を選択する調節可能なモノクロメータ機構(図示せず)を備えたモノクロメータ157を含む。ランプは、クロマトグラフフィー実行時にのみ稼働され、その有効動作約4000時間という長寿命が効率的に使用されることを保証する。しかし、調節可能なモノクロメータは、所望の波長範囲を提供するいずれか適当なタイプ、又は更には補色主波長範囲の2つ以上のユニットとすることができる。一実施形態において、調節可能なモノクロメータは、指定範囲にわたって単色光を提供することができる調節可能なレーザーユニットである。一部の実施形態において、調節可能性があまり重要でないときには、調節可能なモノクロメータは、別個の1つ又は複数の単色光源によって置換されてよい。別の実施形態において、モノクロメータは広帯域光源によって置き換えられ、光検出ユニット165は、例えば受信スペクトルを分光学的に分別することができる分光計である。開示されたモニター151では、光ファイバー155光学系は、光をモノクロメータ157から光学スプリッターユニット159に導き、光を参照ファイバー161とフローセルファイバー163に分け、フローセル153に直接導き、その全強度を液体流路に集中させ、したがってモニタリングの感度を最大にする。フローセル153は、光路長2mm及び細胞容積2μl又は光路長10mm及び細胞容積8μl等いかなる光路長でも有することができる。フローセル153を通過した透過光は、光ファイバー171を介して光検出ユニット165に導かれる。光検出ユニット165は、ファイバー171に連結されているフローセル入力169及び参照ファイバー161に連結されている参照入力167を有する。検出ユニット165は、フローセル入力と参照を比較して、フローセルにおける光吸収の変化を検出するのに適した処理手段を更に含むことができる。
【0050】
図8a及び
図8bは、本発明の実施形態による光学フローセル検出器200の概略図を示す。光学フローセル検出器200は、断面積Aのフローセルチャネル230を通して流体連結している試料入口210及び出口220を備えた検出器体205を含む。フローセルチャネル230は、本質的に、使用されることになっている特定の用途のために、流速、粘度等の因子に応じて必要とされるいずれかの断面積Aを有することができる。開示された実施形態において、断面形状は円形であり、製造の観点並びに流体流れの観点から有益であるが、実際に、流体流れの特徴が所望の範囲内で保存される限り本質的にいずれか適当な形状を有することができる。
【0051】
検出光学系は、出力光ガイド270の光入射面260に隣接して、光学的に一直線になって配置された光射出面250を備える入力光ガイド240からなる。開示されているように、入力光ガイド240及び出力光ガイド270は、光射出面250と光入射面260との光学ギャップがフローセルチャネル230の中心にあるようにフローセルチャネル230に突出する。光学ギャップは、例えば、ギャップにおける流体が流体流れを表すことを保証するために、停滞ゾーン、例えばチャネルの壁に隣接した停滞ゾーンに位置しない限りフローセルチャネル230のいかなる位置にあってもよい。開示された実施形態において、入力光ガイド240及び出力光ガイド270は、フローセルチャネル230に本質的に横断して突出し、それによって光学ギャップにおける流体の交換が促進される。しかし、流体流れチャネルと光ガイド240及び270との角度関係は横断である必要はなく、光学ギャップにおける流体の所望の更新が達成されることを条件としていずれか好適な角度及び構成でありうる。代替実施形態において、流体流れチャネル230は直線である必要はなく、曲線等であってよい。
【0052】
驚くべきことに、流体流れチャネル230に突出する比較的小型の光ガイド240及び270を用いる本手法は、互いに0.5mm以下等の短距離に配置されているとき例えば流れ中における高濃度のタンパク質を測定する優れた能力を提供することが判明した。以下で更に詳細に述べるように、高濃度のための高度の直線性が、0.12mm及び0.07mmの光学ギャップの実施形態の場合に開示された。光学ギャップは、測定される濃度範囲に応じて選択され、例えば0.7、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.07、0.05mm又はそれらの間等0.02~2mmのいずれかの値とすることができる。光学ギャップにおける流体は、最小のギャップ及び中程度の流速でさえ容易に交換され、それは、流体流れチャネルの本質的に中心にあるギャップの狭い光学断面積及び「突出」位置の結果であると考えられることが判明した。
【0053】
図8a及び
図8bにおいて、光学ギャップは、光ガイド240及び270がそれぞれネジ付きフェルール280及び290に配置されているという点で調整可能であり、光学ギャップがフェルール280及び290をひねることによって調整されうる。
図8a及び
図8bにおいて、光ガイド240及び270は、例えばO-リング等の形をした封止物295によって流体流れチャネルから封止されて、流体がそこを通って出ていくのを回避する。
【0054】
記載されているように、流体流れの崩壊を回避することが不可欠であると考えられ、それによって、光ガイド及び出力光ガイドの突出部の流れ方向における断面積が狭いことが不可欠であり、開示された実施形態において、入力光ガイド240及び出力光ガイド270の突出部の全断面積は、流れ方向において約A/2未満であり、又はA/4でさえある。
図8cは、
図8a及び
図8bのフローセル検出器200のフローセルチャネル230領域の拡大図を示す。ここで、面積Aのフローセルチャネル230は、幅広い斜線パターンで埋められ、入力光ガイド240及び出力光ガイド270の突出部は、菱面体パターンで埋められている。
図8cから、フローセルチャネル230の中断されていない面積は、突出光ガイド240及び270の全面積より本質的に大きく、それによって、フローセルチャネルの流体流れは比較的中断されていないことが明らかである。記載のように、入力光ガイド240及び出力光ガイド270の突出区分の寸法は、それぞれ入力光ガイド240及び出力光ガイド270の光学端面の厳密な位置決めを、それらの間で所望の光学透過を達成するために行いながら、流れチャネル230の面積Aと比べて狭い断面積を達成するのに適しているいずれかの方式で設計されうる。
図8cにおいて、入力光ガイド240と出力光ガイド270との間の光学断面積又は「検出面積」は破線領域245で示される。他の箇所で結論付けられているように、本フローセル検出器200中の光学断面積245は、流れチャネル230の全面積Aと比べて非常に狭く、例えばA/50、A/100、A/200、A/1000未満又はそれ以下である。しかし、本光ガイド型設計は、狭い光学断面積245(体積)における高光束を保証する。
【0055】
光ガイドは、ガラス、石英、光透過性ポリマー等、光を透過することができるいずれか好適な光学材料からなることができる。一方又は両方は、光の漏洩を回避するために、光学的に遮断するスリーブ又はコーティング(図示せず)が周辺面に設けられうる。光ガイド240及び270は円柱状で、直径5mm以下、例えば3mm又は1mm等でありうる。光ガイド240及び270の直径は、流れチャネル230の全面積Aに明らかに依存する。
図8a及び
図8bで概略的に開示された流体流れチャネルの流れ断面積は、フローセル全体にわたって流れ方向において本質的に均一でありうる。突出する光ガイド240及び270が原因である流れ断面積の低減は、流体流れチャネルの局所的拡幅によって補償される。これは、突出する光ガイドと比べて比較的狭い流体流れチャネルを有するフローセルに特に有用であるが、他の実施形態においては、補償が必要でないことがある。
【0056】
図8a及び
図8bに示されうるように、光ガイド240及び270は、コアサイズにおいて非対称であってよく、光入射面260における光射出面から現れる光の円錐(その開口数)を本質的にキャプチャーするために、入力光ガイドは出力波ガイドより細い。
【0057】
図8a及び
図8bにおいて、光ガイド240及び270はそれぞれ、モニターユニット151(図示せず)に連結されている光ファイバー163及び171と光学接触して示されている。しかし、光ガイド240及び270の一方又は両方は、フローセルモニターシステム151の光学的検出システムに直接接続されうる。
【0058】
検出器のUVセル光路長は、上限を有する操作ウインドウを画定し、UVセル光路長を適合する工程は、標的化合物の最大濃度の推定値を上限未満に維持しながら、UVセル光路長を低減する工程を更に含む。
【0059】
本発明の背後にある概念は、クロマトグラフィーカラムの動作状態、例えば結合容量を決定する方法であって、
- カラムの入口に供給される供給液材料の組成を表す供給液シグナルを検出する工程と、
- 供給液材料におけるUV吸光度を検出する工程と、
- カラムからの溶出液の組成を表す溶出液シグナルを検出する工程と、
- 供給液シグナル及び溶出液シグナルを使用して、カラムの動作状態を決定する工程と
を含む方法を提供することである。
【0060】
供給液シグナルは、第1のUV波長において動作する第1のUVセル光路長を有する第1のUV検出器を使用して生成され、溶出液シグナルは、第2のUV波長において動作する第2のUVセル光路長を有する第2のUV検出器を使用して生成される。方法は、
- 供給液における検出されたUV吸光度に基づいて、第1の閾値を決定する工程と、
- 第1の閾値に基づいて、第1のUVセル光路長及び/又は第1のUV波長を選択する工程と
を更に含む。
【0061】
上記の特徴の利点は、供給液材料の組成が経時的に変わるときでさえ供給液材料の組成を測定する可能性が、最初に予想された値より高いことである。
【0062】
第1の閾値を決定する工程が、
- 供給液材料における最大UV吸光度を推定する工程と、
- 第1の閾値を、供給液材料における最大UV吸光度の推定値が第1のUV検出器で検出可能であることを保証するように選択する工程と
を含むことができる。
【0063】
供給液材料は、不純物と生成物を含み、第1のUV検出器によって測定される吸光度は、両方からの寄与の組合せである。不純物は、第1のUV検出器で測定されるときバックグラウンド吸光度になり、生成物は、第1のUV検出器で測定されるとき供給液材料中の生成物の吸光度レベルになる。
【0064】
一態様において、生成物の吸光度レベルは、供給液材料のバックグラウンド吸光度の少なくとも40パーセント(40%)である。別の態様において、供給液材料中の生成物の吸光度レベルは、バックグラウンド吸光度より高く、好ましくは供給液材料中の生成物の吸光度レベルは、第1のUV検出器で測定された吸光度の70%~90%である。
【0065】
第1のUVセル光路長を選択する工程は、複数の予め選択されたUVセル光路長から固定UVセル光路長を選択する工程、又はUVセル光路長を調整する工程を含むことができる。しかし、第1のUV波長を選択する工程は、第1のUV波長を調整する工程も含むことができる。
【0066】
一態様によれば、第1のUVセル光路長及び/又は第1のUV波長を選択する工程は、第1のUV検出器の好適な操作ウインドウが実現されるまで行われる。これは、第1のUV検出器が直線検出範囲内であるとき実現される。
【0067】
第1の実施形態において、供給液材料のUV吸光度が計算され、最大UV吸光度を推定する工程は、UV吸光度の計算値に基づく。計算は、ランベルト-ベールの法則(上記を参照のこと)に基づいて行われうる。
【0068】
第2の実施形態において、供給液材料のUV吸光度が測定され最大UV吸光度を推定する工程が、UV吸光度の測定値に基づく。測定は、UV検出器を較正するためにクロマトグラフィーシステムでバッチを実行する前に行われうる。或いは、供給液材料のUV吸光度が連続的に測定され、UV吸光度の変化に基づいて、第1の閾値が連続的に選択される。
【0069】
第1の閾値を選択する工程は、UV吸光度の変化が第1の閾値と比較して所定の分率より大きいとき行われうる。例として、所定の百分率は、UVセル光路長を選択するのに使用される閾値の1%、2%、5%、10%、15%又は20%でありうる。特定の実施形態において、UV検出器は、複数の予め選択されたUVセル光路長を含む。これは、異なるUVセル光路長を有する平行光ガイドがいくつか設けられているUV検出器によって実現されうる。別の実施形態において、光ガイド間の距離は、所望の特徴に応答して異なるUVセル光路長を得るように調整されうる。
【0070】
したがって、UV検出器がUV吸光度の所定の百分率、例えば5%の増加を測定する場合、供給液材料の組成がやはり検出されうることを保証するようにUVセル長が低減される。
【0071】
方法は、同じタイプの検出器、すなわちUV検出器を使用して、供給液シグナル及び溶出液シグナルを検出して、溶出液におけるUV吸光度を検出する工程を更に含む。溶出液シグナルは、第2の波長で動作する第2のUVセル光路長を有する第2のUV検出器を使用して生成され、方法は、
- 検出されたUV吸光度及び/又は第1の閾値に基づいて、第2の閾値を決定する工程と、
- 第2の閾値に基づいて、第2のUVセル光路長及び/又は第2のUV波長を選択する工程と
を更に含む。
【0072】
好ましくは、第2の閾値は第1の閾値以下である。
【0073】
一実施形態によれば、第2の閾値を決定する工程は、
- 溶出液における選択された破過点のUV吸光度を推定する工程と、
- 第2の閾値を、選択された破過点のUV吸光度の推定値が第2のUV検出器で検出可能であることを保証するように選択する工程と
を含む。選択された破過点は、すでに記載したように通常デルタシグナルmaxのある百分率と定義される。
【0074】
破過点は、クロマトグラフィーカラムが充満しており、カラムへの材料の供給液を停止又は別のカラムに移す必要があることを示すものである。
【0075】
選択された破過点のUV吸光度を計算することができ、溶出液における選択された破過点のUV吸光度を推定する工程は、選択された破過点のUV吸光度の計算値に基づく。
【0076】
別の実施形態において、方法は、溶出液におけるUV吸光度を好ましくは連続的に測定する工程と、UV吸光度の測定値に基づいて、選択された破過点のUV吸光度を推定する工程とを更に含む。
【0077】
実施形態において、方法は、第2のUVセル光路長を、第1のUVセル光路長と等しくなるように選択する工程を更に含む。
【0078】
第1のUV検出器と同様に、第2のUVセル光路長を選択する工程は、複数の予め選択されたUVセル光路長から固定UVセル光路長を選択する工程、又はUVセル光路長を調整する工程を含むことができる。しかし、第2のUV波長を選択する工程は、第2のUV波長を調整する工程も含むことができる。
【0079】
一態様によれば、第2のUVセル光路長及び/又は第2のUV波長を選択する工程は、第2のUV検出器の好適な操作ウインドウが実現されるまで行われる。これは、第2のUV検出器が直線検出範囲内であるとき実現される。
【0080】
方法は、第1のUVセル光路長及び/又は第1のUV波長を変化させるとき、第2のUVセル光路長及び/又は第2のUV波長を変化させる前にカラムにおける滞留時間に対応する時間遅延を適用する工程を更に含むことができる。
【0081】
細胞培養技術の進歩によって、30g/L以上の抗体タイターの産生が可能になった。これらの高生産性細胞培養システムは、特に一次キャプチャークロマトグラフィー工程におけるカラムローディングの低下が原因で、潜在的に下流精製における生産性のボトルネックになりうる。このボトルネックを改善するのに役立つ代替のクロマトグラフィー解決策には、周期的向流クロマトグラフィー(PCC)等の連続処理システムの利用が含まれる。
【0082】
最近の研究によって、最高で5g/Lの細胞培養タイターのためにPCCの設計を最適化及び改良する方法がもたらされた。本開示は、最高で約41g/Lの一連の細胞培養タイターの精製のための実験戦略を定義する。初期の実験は、細胞培養供給液とモノクローナル抗体(mAb)濃度とのUV280nmシグナルの変化における差(すなわち、ΔUV)を、少なくとも100g/Lまでのカラムローディングでは決定できないことが示された。更なる調査によって、抗体を含まない細胞培養供給原料のUV280吸光度は直線検出範囲の外であることが明らかになった。追加の実験によって、様々な細胞培養供給原料のΔUVにおける差は、培地バックグラウンド及び不純物の既知の吸光度が与えられてベールの法則によって理論的に予測され、又は様々なUV280セル光路長を使用して実験により決定されうることが示された。これらの結果に基づいて、0.35mmの光路長が動的制御のために選択された。動的結合実験は、供給液タイプ及び破過クロマトグラフの形状に大いに依存している、実験対理論の抗体破過曲線における差を示した。DBC及びΔUVデータに基づいて、カラム実験に対する破過のチャレンジは、70%のΔUVに設定された。性能測定基準、収率、及び純度は、様々な細胞培養供給液と最高で約31g/Lのタイターの間で許容されるものであり、ΔUVが連続クロマトグラフィープロセスにおいてローディングを動的に制御及び定義することを示した。31g/Lを超えるタイターでは、直線性がUV280nmシグナルにおいて0.35mmのUV光路長では低下するが、同じ光路長を使用して、UV300nmシグナルにおいて直線性が保持される。したがって、UV300nmシグナルは、31g/Lより多い供給液のローディングを制御するための検出選択肢でありうる。本開示に呈示される戦略及び結果は、連続クロマトグラフィー工程におけるカラムローディングが、細胞培養供給原料及びタイターとは無関係に動的に制御され、下流の連続操作への導入のプロセス制御を向上させうることを示す。
【0083】
バッチ処理から連続処理への移行は多くの産業で非常に成功していることが判明したが、生物学的製剤製造へのその導入は現在のところ比較的慎重である[1~3]。これは、主に連続技術がまだその初期(すなわち、新興技術)であるという認識に起因すると考えられ、バッチ生産から連続生産に移動する規制上の要求に関する不確かさが原因でありうる[4、5]。適合の更なる懸念は、操作及びプロセス制御における複雑さが高まることを中心とする[6]。
【0084】
連続処理に向かう傾向は、他の多くの産業において見られるように、全コストを削減し、設備設置面積を低減し、一貫した生成物品質で、より高い生産性をより短い処理時間に実現することができるので、経済上の見通しからみて明らかである[7]。連続処理は広範囲にわたって研究され、灌流培養技術を使用して発酵操作のために確立されたが、限定された例が下流の連続処理のために存在する[8~10]。例えば、最近の文献(参照により本明細書に組み込まれるUS20140255994(A1)、Genzyme Corporation社)は、キャプチャー及びポリッシングクロマトグラフィー工程のために周期的向流クロマトグラフィーを使用する、灌流バイオリアクターから下流のポリッシング工程に至る連続プロセスを明らかにした。下流の連続クロマトグラフィーのための現在の手法には、疑似移動床式クロマトグラフィー(SMB)、周期的向流クロマトグラフィー(PCC)、及びシーケンシャルマルチカラムクロマトグラフィー(SMCC)が含まれる[11~14]。これらの実現技術は、供給液流れの方向に向かって周期的に動かされる複数のカラムを利用するクロマトグラフィーキャプチャー工程を指す。各技術の主な差は、異なるマルチカラムクロマトグラフィーシステム間の実際のハードウェアの設計に表されている。1つの主なチャレンジは、限定された情報、プロセス制御、及び方法が、実験室規模から製造規模に至るこれらのクロマトグラフィー技術を導入して、連続的な下流プロセスを可能にするために存在することである。
【0085】
連続クロマトグラフィープロセスを操作するための1つの重要な面は、各カラムへの定常状態タンパク質ローディングの決定を含む。定常状態ローディングは、バッチプロセスと比べて高い生産性をもたらすプロセスにおける最小のタンパク質損失を可能にする。連続クロマトグラフィー時にタンパク質ローディングを制御するための以前の解決策は、時間ベース制御モード又は動的制御モードを含む。時間ベースモードは、時間の設定値の関数としてタンパク質ローディングを含む。これは、動的結合容量が時間と共に低下すると仮定して、樹脂再使用に応じてより高いタンパク質損失をもたらす可能性がある[15]。更に、タンパク質ローディングの時間ベースモードは、カラム間における性能のいずれか潜在的変動性も考慮しない。タンパク質ローディングの動的制御は、百分率に変換された、カラム入口UV吸光度と出口UV吸光度との紫外(UV)シグナルにおける相対的差(すなわち、ΔUV)に基づいている。最小の生成物損失及び各クロマトグラフィー溶出プール中の一貫したタンパク質濃度を保証するようにカラムローディングを最大にするために、この関係を使用すると、定義されたレベルの破過へのローディングが可能になる[16]。文献に引用されている動的制御の1つのチャレンジは、不純物及び抗体のUVシグナルにおける最小の差が、異なる細胞培養供給原料で生じうることであり、これは、動的制御の堅牢性及び有用性を大幅に低下させる。その結果として、この低信号対雑音比のため、使用者は、タンパク質ローディングのために時間ベースモードで操作せざるを得ない[17]。本明細書全体にわたって、タンパク質という用語は、タンパク質一般を含み、抗体、モノクローナル抗体、抗体コンジュゲート及びタンパク質コンジュゲートを含むが、これらに限定されないように一般的に使用され、解釈されるべきである。
【0086】
文献における先行研究は、約2~3g/Lの灌流タイターを与えられた抗体破過シグナルを制御及び等化するための多変数波長検出器の使用を明らかにした[18]。これによって、使用者が、カラム全体で一貫したデルタUV百分率を実現して、カラムローディングの変動性をなくすことが可能になる[18]。この動的制御手法の1つの欠点は、干渉問題の根本的原因が様々な波長で調査及び決定される必要があり、これは、現在の細胞培養培地設計及び連続的上流細胞培養最適化について扱いにくいチャレンジでありうることである。多変数波長検出器の別のチャレンジは、タンパク質吸光度が大幅に低下し、これは、UV検出器によって動的に制御されうる供給液タイターの範囲を限定する可能性があることである。本発明者らの発見は、不純物とタンパク質とのUVシグナルにおける差を克服するための解決策を提供することによって、UV制御の初期の原理で築かれ、これによって、使用者が、連続クロマトグラフィープロセスにおけるタンパク質ローディングのための動的制御を利用することが可能になる。更に、本開示において、最高で約31g/Lの高濃度細胞培養供給原料のタンパク質ローディングを動的に制御する能力も明らかにされ、追加のデータは、UV300nm波長が利用された場合、31g/Lより高いタイターの動的制御が可能であることを示す。
【0087】
様々な異なるUVセル光路長の場合の不純物対抗体の吸光度レベルの調査を評価し、理論計算値と比較して、シグナル検出及び制御に最適な光路長を決定した。異なる採取不純物供給原料及びタイターを使用して、連続クロマトグラフ実験を実行して、異なるタイプの採取供給原料とは無関係にカラムローディングを動的に制御する能力を決定した。これらのデータ群を利用して、細胞培養供給原料とは無関係にタンパク質ローディングを動的に制御し、一貫した品質の溶出プールを生み出し、下流の連続操作への導入のプロセス制御を向上させることができる連続クロマトグラフィープロセスを定義した。
【0088】
材料及び方法
採取された細胞培養液(HCCF)
この研究で細胞培養培地と共に使用される抗体をTable I(表3)に列挙する。
【0089】
【0090】
各発酵バッチは、少なくとも60%の採取生存率で14日フェドバッチプロセスからなるものであった。各バッチは、オプションの遠心工程、続いて深層濾過及び無菌濾過によって採取された。次いで、材料を冷凍して貯蔵し、使用前に解凍した。HCCFの一部分は、必要なら限外濾過されて、所望の供給液濃度目標値の一部に到達する。不純物のUVバックグラウンドは、この濃縮段階によってさほど影響を受けなかった。
【0091】
プロテインAクロマトグラフィープロセス
この研究全体にわたって使用されたクロマトグラフィー樹脂は、アガロースベースのプロテインA親和性マトリックスであるMabSelect SuRe(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)であった。カラムを3カラム体積(CV)の10mMのリン酸ナトリウム(pH 6.5)で平衡化した。採取された細胞培養液のローディング後に、カラムを、3CVの平衡化バッファーで洗浄した。生成物に関連した不純物を除去するために、カラムを3CVの10mMのリン酸ナトリウム、0.5Mの塩化ナトリウム(pH 6.5)で洗浄し、次に3CVの平衡化バッファーで洗浄した。約3~4CVの20mMの酢酸ナトリウム(pH 3.5)を使用して、抗体を溶出した。100mMの酢酸(pH 2.9)と0.1NのNaOHの組合せを使用して、カラムを浄化した。すべてのカラムを、200mMの酢酸ナトリウム、2体積%のベンジルアルコール(pH 5.5)中に貯蔵した。
【0092】
逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)
RP-HPLC分析方法は、R2/10、2.1mm×30mmのカラム(Applied Biosystems社)からなり、カラム温度を70℃に維持した。抗体濃度は、以下の勾配を使用して決定した。流速2mL/分:移動相A:水中0.2体積%のトリフルオロ酢酸(TFA)、移動相B:90%アセトニトリル中0.2体積%のTFA、方法:5分で68%Aから40%A、次に1分間100%B、次いで2分間68%A。UV280nm吸光度を各注入時に記録し、Chemstationソフトウェア(Agilent Technologies社)を使用して、ピークを積分した。検量線を使用して、抗体濃度を決定した。
【0093】
超高性能サイズ排除クロマトグラフィー(UP-SEC)
UP-SEC分析方法は、BEH 200、4.6×150mmのカラム(Waters社)からなり、カラム温度を室温(15~30℃)に維持した。モノマー、ダイマー、及びより高次のアグリゲート分離が、100mMのリン酸ナトリウム、100mMの塩化ナトリウム(pH 7.2)中、流速0.5mL/分で5分間得られた。UV214nm吸光度を各注入時に記録し、Chemstationソフトウェア(Agilent Technologies社)を使用して、ピークを積分した。モノマー純度百分率は、モノマーピークを全ピーク面積で割った商によって決定された。アグリゲート含有量百分率は、各アグリゲートピークのピーク面積の合計を全ピーク面積で割った商によって決定された。
【0094】
高性能イオン交換クロマトグラフィー(HP-IEX)
Agilent 1200 HPLCシステムで4mm×250mmのDionexカチオン交換ProPac WCX-10カラム(Waltham社、MA, USA)を使用して、高性能イオン交換クロマトグラフィー(HP-IEX)分析方法を行った。増え続ける塩濃度及びpHで直線勾配を使用して、主モノマーピークを酸性及び塩基性mAb変異体から分離した。酸性変異体は、モノマーの平均pI未満のpIを有する種と定義され、塩基性変異体は、モノマーの平均pIより高いpIを有する種と定義される。主ピーク百分率は、UV280nmを使用して、主モノマーピーク面積を全ピーク面積によって割ることによって決定された。酸性又は塩基性変異体百分率は、それぞれ酸性又は塩基性変異体ピーク面積の合計を全ピーク面積で割った商によって決定された。酸性及び塩基性変異体は、モノマー及びアグリゲートから構成されうる。
【0095】
HCCFの紫外(UV)吸光度測定
3~41g/Lに及ぶ、抗体なしのHCCF供給液と試料の両方(すなわち、プロテインAフロースルー)のUV280nm測定を、Solo VPE(C Technologies社、Bridgewater, NJ)を使用して、0.05~2mmの光路長で行った。吸光度対光路長の曲線を作成して、供給液の直線性を決定した。理論的抗体吸光度も、ベールの法則によって測定し、様々な細胞培養供給液の実験値と比べた。ベールの法則を次式で示す:
【0096】
【0097】
式中、A=吸光度(Au)
E1%=280nm吸光度の1%における消衰係数
b=光路長(mm)
c=タンパク質濃度(g/L)
【0098】
動的結合クロマトグラフィー(DBC)実験
HCCFを、MabSelect SuRe樹脂が入っている約4mLのカラム(0.5cm×20cm)に、樹脂1リットル当たりタンパク質約120グラム(g/L)の樹脂ローディングまでローディングして、完全抗体破過を保証した。ローディング時に、画分を回収し、RP-HPLCを使用して、分析して、抗体破過の百分率を決定した。100~600cm/時の線速度範囲を検討した。動的結合実験では、次式を使用して、抗体破過百分率を計算した:
【0099】
【0100】
式中、BT=抗体破過(%)
Cローディング画分=カラムローディング時における各画分のオフラインRP-HPLCによる抗体濃度(g/L)
CHCCF=HCCFのオフラインRP-HPLCによる抗体濃度(g/L)
【0101】
動的結合容量は、細孔拡散モデルを使用して、Method Design Tool(GE Healthcare社、Uppsala, Sweden)で様々な抗体供給液濃度及び線速度の場合について予測された。理論的DBC結果を実験的DBC結果と比較して、抗体供給液濃度の関数として細孔拡散モデルの正確度を決定した。
【0102】
周期的向流クロマトグラフィー(PCC)実験
PCCクロマトグラフィーシステムは、4mLのカラムを3本使用して3-カラムモードで操作した。
図9a及び
図9bは、3-カラムモードで操作したときのPCCシステムのプロセス記述を詳述する。
図9aは、3-カラムAKTA pcc 75システムの起動相(すなわち、ローディング)及びループ相の概略図を示し、
図9bは、3-カラムAKTA pcc 75システムの閉鎖相の概略図を示す。HCCFローディングを動的に制御し、樹脂容量を最大にするためのUVセルの容量を試験する試みにおいて、デルタUVを、HCCFローディング時において70%に設定した。起動相において、
図9aに示されるように、HCCFをローディングゾーンの第1のカラム(カラム1)にローディングし、カラム1が70%破過容量に到達するまで、破過(BT)をローディングゾーンの第2のカラム(カラム2)に回収した。HCCFローディングをカラム2に切り替え、第1の洗浄緩衝液をカラム1に加え、カラム3に通して、いずれの結合していないタンパク質も保持した。第2及び第3の洗浄工程、溶出、再生、及び平衡化は、カラム1で行われ、HCCFは、カラム2(すなわち、ローディングゾーンの第1のカラム)へのローディングを継続し、破過はカラム3(すなわち、ローディングゾーンの第2のカラム)に回収された。デルタUVがループの終了前に70%に到達する場合、カラムへのHCCFローディングは新しいカラムが利用可能になるまで停止する。PCCシステムは、プログラムにPCCサイクルを停止するように指定されるまで、記載されている他のカラムへの切替及びローディングを継続する(すなわち、1回のPCCサイクルは、3回のカラム溶出に等しく、1つのPCCループは1回のカラム溶出に等しい)。閉鎖ブロックの第1の相において、第1の洗浄剤をカラム1に加え、カラム2に通して、いずれの結合していないタンパク質も保持する。
【0103】
閉鎖ブロックの第2の相において、
図9bに示されるように、カラム1及び2を別々に洗浄、溶出、及び再生する。各溶出ピークを、UV開始トリガー及びCV終了回収基準に基づいて1つの主溶出プール中に回収する。各カラムを、各PCC実験の終わりに200mMの酢酸ナトリウム、2体積%のベンジルアルコール(pH 5.5)に貯蔵する。
【0104】
動的制御
動的制御機能は、生成物及びバックグラウンドからの全UV吸光度と供給液のバックグラウンドとのUV吸光度における差を利用する。この差は、ΔUVと定義される。
【0105】
図10は、AKTA pcc 75システムの場合に動的制御機能及びHCCF時のΔUVの決定の概略図を示す。動的制御を担うUV検出器は、カラム前(UV
カラム前)及びカラム後(UV
カラム後)のUV吸光度シグナルにおける差からΔUVを定める。図示していない更に2つのUV検出器がぞれぞれ、ローディングゾーンの第2のカラム(UV試料再循環)後及び溶出されたカラム(UV Prod)後のUVのモニタリングを担う。本発明者らの研究では、単一のUV280nmセルで約2mm又は約0.35mmの光路長を利用して、ΔUVを検出した。実験の前に、各UVセルをUV Prodセルに対して較正した。ΔUVは、初期実験では70%に設定され、その後の実験では約20~45%であった。
【0106】
結果及び考察
様々なHCCF供給液流のための動的結合容量の評価
HCCF供給液のいずれかを3-カラムPCC方法で試験する前に、カラムローディングの関数としての抗体破過とΔUVとの関係を調査した。高UV吸光度HCCFを使用して、動的結合容量 (DBC)実験を実施して、不純物対抗体のΔUVの差を決定した。
【0107】
図11aは、mAb 1トリッキー供給液流の場合に、0.5mmのUVセル光路長(実線)対2mmのUVセル光路長(点線)を使用した抗体破過の比較を、HCCFのローディング時におけるカラム体積の関数として示す。ローディング時にカラム画分を回収し、RP-HPLCによって試験して、抗体濃度(破線)を決定し、AKTA avantクロマトグラフから得られたUV280nm吸光度曲線を被せた。
図11bは、mAb 1低UV吸光度供給液流の場合に、2mmのUVセル光路長におけるUV280nm吸光度(実線)に対してオフラインで被せた測定された抗体破過(破線)を、タンパク質ローディング(樹脂1リットル当たりmAbのグラム数)の関数として示す。
【0108】
培地不純物は、UV検出器の直線範囲外で非常に高いバックグラウンド吸収を有したので、DBC実験は、
図11aに示されるようにΔUVにおける差を全く示さなかった。したがって、UVセル光路長の低減により、測定を直線範囲に戻し、2mmのセルの場合より低いがカラムにおける破過を検出するのに十分なほどやはり著しい抗体吸光度シグナルをもたらすと仮定された。
【0109】
この仮説を確認するために、ランベルト-ベールの法則を利用して、0.5mm対2mmのUVセル光路長における異なる2つのタイプのmAb #1 HCCF供給液流の理論的抗体吸光度を計算した。高UV吸光度供給液では、理論的mAb #1吸光度は0.85Auであったが、HCCF成分に抗体を加えたものは少なくとも4.4AUであった。これは、Table II(表4)に示されるように直線範囲外であり、DBC実験で抗体破過を検出できなかった理由の説明となる。しかし、280nmにおいて光路長0.5mmで、理論的抗体吸光度は0.85AUから0.21AUに低下し、これは、ΔUVを使用する動的制御を可能にするのに十分であるはずである。抗体を含まないHCCF吸光度は、直線範囲内で1.6AUに大幅に低下した。0.5mmのUV280nm光路長を使用して、別のDBC実験を行い、約0.22AUのΔUVをもたらし、これは、オフラインRP-HPLC分析により検出された抗体破過の増加と正確に相互関係があった。
【0110】
【0111】
mAb #1低UV吸光度HCCF供給液流では、ランベルト-ベールの法則は、0.41Auにおける理論的抗体吸光度が、2mm光路長におけるΔUV制御に十分であるが、0.10Auにおける理論的抗体吸光度が、0.5mm光路長における正確なΔUV制御には低すぎることを示す。2mmの光路長セルを使用して、DBC実験を行い、0.42AuのΔUV差を確認し、これは、
図11bに示されるようにベールの法則からの抗体吸光度の計算値である0.41Auと一致した。したがって、mAb #1低UV吸光度供給液のカラムローディングは、2mmのUVセル光路長を使用してPCCモードで動的に制御されうる。
【0112】
しかし、mAb #1高吸光度供給液のカラムローディングは、より短いUVセル光路長を使用したときのみ動的に制御することができ、本研究では0.5mmの光路長が十分であった。将来のPCC実験においてより短いUVセル光路長を利用するために、ΔUVを十分に制御する直線性及び能力を、
図12a~
図12dに関連して調査した。
【0113】
様々なHCCF供給液の動的制御のためのUVセル光路長及び直線性の決定
カラムローディング又は溶出時におけるUV吸光度の信頼できるリアルタイムモニタリングのための必須要件は、UV吸光度シグナルが直線範囲内であることである。これは、PCC又は連続クロマトグラフィーを実行することによる制限ではない。むしろ、プロセスにおいて使用される供給液の固有の特徴であり、ここで、抗体タイターと不純物、培地及び成分のバックグラウンドは共に、動的制御の利用可能な範囲に影響を及ぼす。ベールの法則を使用して、所与の抗体の場合に異なるHCCF供給液流にとってΔUV制御が成功であるかどうか予測されうることが明らかになったので、様々な抗体にとって異なるHCCF供給原料の吸光度を測定して、ΔUV差と直線性対UVセル光路長とを両方決定した。この情報は、Table I(表3)に示されるように、3~41g/Lの様々なタイターにおける異なるHCCF供給原料のカラムローディングがPCCモードで動的に制御されうるかどうかを決定する価値ある洞察を与える。
【0114】
図12a~
図12dは、UV280nm吸光度対UVセル光路長の比較を示す。
図12a:3~26g/Lに及ぶタイターにおけるmAb #1高UV吸光度HCCF。
図12b:4~31g/Lに及ぶタイターにおけるmAb #1低UV吸光度HCCF。
図12c:3~38g/Lに及ぶタイターにおけるmAb #2中UV吸光度HCCF。
図12d:3~26g/Lに及ぶタイターにおけるmAb #3高UV吸光度HCCF。
【0115】
抗体を含まない試料(すなわち、プロテインAフロースルー)を含めて、各HCCF試料のUV280nm吸光度を、0.05~2mmに及ぶ光路長で測定した。両方の高UV吸収供給液(mAb #1及びmAb #3)では、抗体を含まない試料の吸光度が、1mmの光路長で直線性を失う(以前の研究で見られる)。UVセル光路長が低下するにつれて、ブランク試料の吸光度がUVセル光路長の関数として直線になるが、
図12a及び
図12dに示されるように、0.05~0.15mmの光路長におけるΔUV差が最小である。というのは、抗体吸光度が大幅に低下するからである。高UV吸光度を含有するHCCFに最適な光路長範囲は、約3~30g/Lに及ぶ供給液の場合に0.2~0.5mmである。0.5mmの光路長で、直線性は、約30g/Lのより高い濃度において低下し始めている。直線性は、0.5mm未満の光路長で維持され、これは、0.2~0.35mmの光路長が、UV直線性及びΔUV制御を様々な条件下で維持するのに最善であることを示す。ベースラインドリフト及びシグナルノイズ(すなわち、少なくとも約150mAu)に対して適切なΔUV差を維持する最小のタイターは、高UV HCCF供給液の場合に約3g/Lである。
【0116】
最低の全UV吸収を含有するmAb #1 HCCF試料では、ΔUV差は、
図12bに示されるように、標的タンパク質が4g/Lを超える場合、(0.35mmに至る)より短い光路長でさえより明白である。動的制御に最適な光路長は、約3~31g/Lの範囲を包含するタイターでは0.35mmである。低HCCFバックグラウンドの条件でさえ、ΔUVは決定されうる。中UV吸収を含有するmAb #2 HCCF試料では、
図12cに示されるように、動的制御に最適なUVセル光路長は0.2~0.5mmである。しかし、26g/Lの最高タイター条件において、UV吸光度は、0.5mmの光路長で直線性を失うが、0.35mmの光路長でかろうじて許容される。異なるHCCF供給液の分析に基づいて、ΔUVにおける強固な差を実現し、更には約3~31g/LのHCCFタイターの場合に直線性を維持するための最善の妥協は、0.35mmの光路長である。ΔUVは、様々なローディング条件で不安定になる。ΔUVは、生成物の不純物に対する比に基づいて変わる。31g/Lより高い濃度では、0.35mmより短い光路長のUVセル、又はセル光路長を保存しながら、分析物がより低い消衰係数を有する代替UVセル波長を考慮すべきである。
【0117】
3C-PCCカラムシステムのために、ΔUV機能性を使用して、タンパク質ローディングを動的に制御する能力は、Table I(表3)に列挙された4つのHCCF供給液を使用して試験した。UV280nmのUVセルがタンパク質ローディングを制御する能力にチャレンジするために、ΔUV百分率を実行のすべてで70%に設定した。カラム実験の性能測定基準には、動的制御機能の成功を決定するためのバッチモードプロセスである、収率及び純度レベルの対照との比較が含まれた。タンパク質ローディング並びに起動相及びループ内におけるカラム前UVとカラム後UVとのUV280nm差を、実行毎にモニタリングして、UV280nmのより短い光路長セルを使用して、タンパク質ローディングを制御する能力の決定に役立てた。
【0118】
Table IV(表5)に示されるように、起動相におけるこのより高いローディングによって、ローディングゾーンの第2のカラムによってキャプチャーされず、したがってフロースルーにおいて失われた何らかの抗体を得ることができる。
【0119】
【0120】
しかし、ΔUVのより低い設定値、又はことによるとローディング時により早期にベースライン値を設定することによって、タンパク質ローディングを低下し、抗体回収をバッチモード対照レベルの数百分率以内に増加すべきである。41g/Lの中UV吸光度HCCF供給液は、この供給液のUV能力が、
図12a~
図12dに関連して説明する直線範囲外であることが示されたので、唯一の例外でありうる。更に、20g/L供給液と比べて41g/L供給液では、UV280nmシグナルにおける差が、ループの外で約13mAuであり、ループの中で約15mAuであり、これは、41g/Lの供給液濃度でUVセル直線性を失うことも示す。少なくとも約35g/Lの濃度の供給液では、はるかに短い光路長のUVセル、又は300nmの波長を用いたUVセルを考慮すべきである。
【0121】
UV前試料及び後試料セルがΔUV設定値を一貫して制御する能力を
図13a~
図13dに示し、これらは、4~31g/Lに及ぶHCCFタイターのmAb #1低UV供給液でΔUVによってタンパク質ローディング対照を示すAKTAクロマトグラフの例を示す。HCCFのUV280nm吸光度(すなわち、UV試料前)をUV前試料として示し、UV後試料は、ローディングゾーンの第1のカラムの出口のUV280nm吸光度(すなわち、UV試料後)を示す。周期的ピークは、3つのカラムのそれぞれの洗浄、溶出、及び抜取ピークを示す。
【0122】
最高で10g/LのHCCFタイターの場合に、カラムローディングは、AKTAクロマトグラフによって示される各カラムの全体で一貫している。
図13c~
図13dを参照のこと。しかし、HCCFタイターが31g/Lまで増加するとき、各カラムは、抗体破過における時間差を経験する。これは、ループ時においてカラム毎に若干異なる時間にカラムローディングを70%の設定値で停止するΔUV機能によって見られうる。
図13a~
図13bを参照のこと。この結果は、カラム毎に一貫したタンパク質ローディングを維持する動的制御の能力を強調し、精製されている供給原料とは無関係である。
【0123】
プロテインAクロマトグラフィー工程のプロセス性能及びFNVIPプールの品質に対するΔUV設定値の影響を決定する追加の研究が実施された。より低い濃度のHCCF供給液と同様であるループのカラムローディングを維持するために、ΔUVのより低い範囲は、
図13及び
図14に関連してDBC曲線に基づいて20%に設定された。比較のために、20~70%の範囲の真ん中に45%の追加のΔUV設定値も選択された。実験に使用されたHCCF供給液は、少なくとも15g/Lのタイターと低~中UVバックグラウンドからなるものであった。というのは、収率損失がこれらのパラメータの両方と強い相互関係があるからである。実験のために、3g/LのHCCF供給液を選択して、収率損失に対する20~70%以内のΔUVの最小の影響を確認した。
【0124】
図14a~
図14dは、追加のΔUV設定値におけるFNVIPプールの収率及び品質データを示す。
図14aにおいて、プロテインAクロマトグラフィー収率は、mAb #1高UV供給液を除いて研究されたすべての供給液でΔUVが増加するにつれて約10~20%の減少を示す。
図14bにおいて、FNVIPプールのUP-SECによる純度は、各群の試料で非常に一貫しており、より高いタンパク質ローディングで変わらない(すなわち、ΔUV設定値の増加)。
図14cにおいて、残留HCPレベルは、mAb #1高UV、3g/L供給液及びmAb #2中UV、20g/L供給液の異なるΔUV設定値の全体で同様であった。HCPレベルは、他の2つの供給液で若干増加し、最大に到達した。
図14dにおいて、残留プロテインAリガンドレベルは、タンパク質ローディングがmAb #2中UV、20g/L供給液を除いて供給液毎に増加するにつれて約5~10ppm増加する。*は、mAb 1低UV、15g/Lを表す;**は、mAb 1低UV、31g/Lを表す;#は、mAb #1高UV、3g/Lを表す;##は、mAb #2中UV、20g/Lを表す。
【0125】
プロテインAクロマトグラフィー工程全体の収率損失は、ΔUVが、≧20g/LのHCCFタイターの場合に20から45%に増加したとき、約13~19%実質的に低下した。
図14aを参照のこと。更に調査すると、ループの外及び中でのタンパク質ローディングは、Table V(表6)に示されるように45%のΔUVで約10~15g/L高く、これは、ローディングゾーンの第2のカラムで可能な抗体破過を示す。HCCFタイターが15g/Lに低下するとき、収率損失は明白でなく、約2%にすぎない。これは、20%と45%の両方のΔUV設定値で同様のカラムローディングであることを考えれば理解できる。
図14a、Table V(表6)を参照のこと。プロテインA工程収率は、3g/L供給液で一貫しており、ΔUV 又はカラムローディングの増加にかかわらず約95~100%で維持される(
図14a、Table V(表6))。高いタイターHCCF供給液のΔUV設定値に対する感度についての1つの仮説は、実際の抗体破過の勾配が細孔拡散モデルによって与えられた予測よりはるかに急峻であるということでありうる。これは、抗体破過の過小評価、したがってローディングゾーンの第2のカラムの全体で収率損失を導くことができる。更に、収率損失は、破過体積を乗じたより高いタイターのために、より大きいことがありうる。これによって、フロースルーで失われた抗体の量が、より低いタイターHCCF供給液と比べて増加する。
【0126】
【0127】
各FNVIP プールのUP-SEC純度は一貫しており、20~70%のΔUV範囲とは無関係である。
図14bを参照のこと。HCPレベルは3g/Lと20g/Lの両供給液で一貫していたが、15g/L及び31g/LのmAb 1低UV供給液では最高で約9,000ppm変化するようである。
図14cを参照のこと。残留プロテインAリガンドは、15g/L及び31g/L mAb 1低UV供給液では70%と等しいΔUVで若干約3~10ppm増加した。
図14dを参照のこと。残留プロテインAリガンドレベルは、3g/L供給液ではΔUVレベルにかかわらず同様であった。
図14dを参照のこと。20g/L供給液では、残留プロテインAリガンドレベルは、20~70%のΔUV範囲で5~20ppmであった。ΔUV設定値の変化は、最高で31g/LのHCCFタイターの場合にFNVIPプールの生成物品質への大きな影響を与えず、細胞培養UV280バックグラウンド吸光度とは無関係であった。
【0128】
一実施形態によれば、採取された細胞培養液(HCCF)からタンパク質を分離する方法が定義される。方法は、HCCFを少なくとも2つのカラムを備える連続クロマトグラフィーシステムに供給する工程を含む。システムは、前記カラムの上流に第1のUV検出器及びHCCFを受けるカラムの下流に第2のUV検出器を備え、第1及び第2のUVセンサーによって記録されたシグナルを比較して、タンパク質のカラムからの破過を示唆するデルタUV応答をもたらすように配置されている。
【0129】
各UV検出器は、UV波長で動作するUV光路長を有し、システムは、デルタUVシグナルが所定の破過点に到達すると、HCCFの供給液を異なるカラムに切り替えるように配置されている。UV検出器の光路長は、0.05~2.0mmの範囲であり、破過点は、UV波長が280~300の範囲であるときデルタUV応答の5~90%の範囲であり、HCCF中のタンパク質の濃度は、最高で41g/lである。光路長は、特に0.05、0.10、0.15、0.20、0.35、0.50、1.0、又は2.0mmとなるように選択されうる。
【0130】
タンパク質としては、モノクローナル抗体、タンパク質コンジュゲート及び抗体コンジュゲートが挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質がモノクローナル抗体である場合、方法は、HCCFの初期シグナルが3.0AUより大きいとき、直線シグナルが得られるまでUVセル光路長及び/又はUV波長を調整する工程を含むことができる。直線シグナルは、UVシグナルが約2.5AU未満になるまでUVセル光路長及び/又はUV波長を調整することによって得られうる。
【0131】
連続クロマトグラフィーシステムは、周期的向流クロマトグラフィー、疑似移動床式クロマトグラフィー、連続的向流タンジェンシャルクロマトグラフィー、及びシーケンシャルマルチカラム連続クロマトグラフィーの群から選択されうる。好ましくは、連続クロマトグラフィーシステムは、周期的向流クロマトグラフィーシステムとなるように選択される。
【0132】
バックグラウンド吸光度が2.0Au未満であり、HCCF中のタンパク質の濃度が最高で31g/Lであるとき、方法は、光路長を≦2.0mmとなるように選択し、波長を280nmとなるように選択する工程を含むことができる。好ましくは、光路長は、0.05~0.35mmとなるように選択されうる。
【0133】
バックグラウンド吸光度が2.1Au未満であり、HCCF中のタンパク質の濃度が最高で41g/Lであるとき、方法は、光路長を≦1.0mmとなるように選択し、波長を280nmとなるように選択する工程を含むことができる。好ましくは、光路長は、0.05~0.20mmとなるように選択されうる。
【0134】
タンパク質の濃度は、UV吸光度の直線性が維持されることを条件として、41g/Lより高いことがありうることに留意されたい。
【0135】
バックグラウンド吸光度が2.0Au未満であり、HCCF中のタンパク質の濃度が最高で26g/Lであるとき、方法は、光路長を≦0.5mmとなるように選択し、波長を280nmとなるように選択する工程を含むことができる。タンパク質の濃度は、UV吸光度の直線性が維持されることを条件として、26g/Lより高いことがありうることに留意されたい。
【0136】
バックグラウンド吸光度が1.2Au未満であり、HCCF中のタンパク質の濃度が最高で41g/Lであるとき、方法は、光路長を≦2mmとなるように選択し、波長を300nmとなるように選択する工程を含む。タンパク質の濃度は、UV吸光度の直線性が維持されることを条件として、41g/Lより高いことがありうることに留意されたい。
【0137】
図15は、UV300nm吸光度をUV光路長(単位mm)の関数として示す。UVシグナルの直線性と供給液材料の選択されたモノクローナル抗体濃度の異なる光路長との関係を示す。
【0138】
動的ローディングのプロセスは、フェドバッチ、強化、及び灌流抗体細胞培養流に適用されうることに言及すべきである。基本的に、動的制御は供給液に依存しない。更に、特許請求された方法及びシステムは、非抗体モダリティを含み、プロテインA樹脂、アニオン交換、混合モード、及びHICを含むが、これらに限定されない樹脂モダリティも網羅するように拡大されうる。プロテインA樹脂の例としては、Mabselect、Mabselect Sure、Mabselect Sure PCC、Mabselect Sure LX、Mabselect Xtra、及びTOYOPEARL AF-rProtein A HC -650Fが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
略語
PCC:周期的向流クロマトグラフィー
3C-PCC:3カラム周期的向流クロマトグラフィー
UV:紫外
DBC:動的結合容量
RP-HPLC:逆相高速液体クロマトグラフィー
HCCF:採取された細胞培養液
UP-SEC:超高性能サイズ排除クロマトグラフィー
Med:中
mAb:モノクローナル抗体
HCP:宿主細胞タンパク質
SMB:疑似移動床式クロマトグラフィー
SMCC:シーケンシャルマルチカラムクロマトグラフィー
HP-IEX:高性能イオン交換クロマトグラフィー
FNVIP:濾過中和ウイルス不活性化プロテインA生成物
【0140】
参考文献
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