(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】神経病性疼痛の治療のための配列類似性19、メンバーA5抗体を有する抗ファミリーの用途
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221108BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20221108BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20221108BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20221108BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20221108BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20221108BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20221108BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20221108BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221108BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221108BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20221108BHJP
【FI】
A61K39/395 D
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/24
A61P25/04
A61K31/7088
A61K31/713
A61K31/7105
A61K35/76
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K35/12
(21)【出願番号】P 2020543894
(86)(22)【出願日】2019-04-24
(86)【国際出願番号】 IB2019053400
(87)【国際公開番号】W WO2019207513
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-08-18
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518156428
【氏名又は名称】ニューラクル サイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン シク
(72)【発明者】
【氏名】クォン,スン-グ
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0118230(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102775490(CN,A)
【文献】国際公開第2019/003165(WO,A1)
【文献】Brain,2011年,Vol. 134, Issue 4,P. 1127-1139,https://doi.org/10.1093/brain/awr025
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、C12N、C07K、A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする対象の末梢神経病性疼痛を治療するための製薬学的組成物であって、FAM19A5拮抗剤を有し、
前記FAM19A5拮抗剤は、抗FAM19A5抗体、抗FAM19A5抗体をコードするポリヌクレオチド、そのポリヌクレオチドを含むベクター、そのポリヌクレオチドを含む細胞、又はこれらの任意の組合せである、製薬学的組成物。
【請求項2】
神経病性疼痛が身体的損傷、感染、糖尿病、癌療法、アルコール中毒、切断、背中、脚、ヒップ又は顔筋肉の弱化、三叉神経痛、多発性硬化症、帯状疱疹、脊椎手術又はこれらの任意の組合せと関連があることを特徴とする、請求項1に記載の製薬学的組成物。
【請求項3】
神経病性疼痛が手根管症候群、中枢疼痛症候群、退行性ディスク疾患、糖尿病性神経病症、幻肢疼痛、帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹)、陰部神経痛、坐骨神経痛、腰痛、三叉神経痛、又はこれらの任意の組合せを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の製薬学的組成物。
【請求項4】
神経病性疼痛が神経の圧迫によって引き起こされることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【請求項5】
糖尿病性神経病症が糖尿病性末梢神経病症であることを特徴とする、請求項3に記載の製薬学的組成物。
【請求項6】
神経病性疼痛が坐骨神経痛であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の製薬学的組成物。
【請求項7】
必要としている対象において外部刺激に対する閾値又は遅延時間を増加させるための製薬学的組成物
であって、
FAM19A5拮抗剤を有し、
前記FAM19A5拮抗剤は、抗FAM19A5抗体、抗FAM19A5抗体をコードするポリヌクレオチド、そのポリヌクレオチドを含むベクター、そのポリヌクレオチドを含む細胞、又はこれらの任意の組合せである、製薬学的組成物。
【請求項8】
外部刺激が機械的刺激であることを特徴とする、請求項7に記載の製薬学的組成物。
【請求項9】
外部刺激が熱的刺激であることを特徴とする、請求項7に記載の製薬学的組成物。
【請求項10】
感覚神経伝導速度増加を必要とする対象において感覚神経伝導速度を増加させるための製薬学的組成物
であって、
FAM19A5拮抗剤を有し、
前記FAM19A5拮抗剤は、抗FAM19A5抗体、抗FAM19A5抗体をコードするポリヌクレオチド、そのポリヌクレオチドを含むベクター、そのポリヌクレオチドを含む細胞、又はこれらの任意の組合せである、製薬学的組成物。
【請求項11】
FAM19A5拮抗剤が抗FAM19A5抗体であることを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【請求項12】
抗FAM19A5抗体が次から選択された性質を示すことを特徴とする、請求項
11に記載の製薬学的組成物:
(a)酵素結合免疫吸着分析法(ELISA)によって測定される時、10nM以下のKDで可溶性ヒトFAM19A5に結合;
(b)ELISAによって測定される時、10nM以下のKDで膜結合されたヒトFAM19A5に結合;又は
(c)(a)及び(b)両方。
【請求項13】
抗FAM19A5抗体が重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む基準抗体と共にヒトFAM19A5エピトープに結合するために交差競合し、ここで、
(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含み;
(ii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含み;
(iii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含み;又は
(iv)重鎖CDR1はSEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:34のアミノ酸配列を含む
ことを特徴とする、請求項
11又は
12に記載の製薬学的組成物。
【請求項14】
抗FAM19A5抗体が重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む基準抗体と同じFAM19A5エピトープに結合し、ここで、
(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含み
、
前記抗FAM19A5抗体が、SEQ ID NO:9であるFAM19A5エピトープに結合することを特徴とする、請求項
11~13のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【請求項15】
抗FAM19A5抗体が重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含むことを特徴とする、請求項
11~14のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【請求項16】
抗FAM19A5抗体が重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、ここで、
(i)重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:17、18及び19を含み、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:29、30及び31を含み;
(ii)重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:14、15及び16を含み、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ配列26、27及び28を含み;
(iii)重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:11、12及び13を含み、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ
ID NO:23、24及び25を含み;又は
(iv)重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:20、21及び22を含み、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:32、33及び34を含む
ことを特徴とする、請求項
15に記載の製薬学的組成物。
【請求項17】
抗FAM19A5抗体がSEQ ID NO:37を含む重鎖可変ドメイン及びSEQ
ID NO:41を含む軽鎖可変ドメインを含むことを特徴とする、請求項
15又は
16に記載の製薬学的組成物。
【請求項18】
抗FAM19A5抗体がSEQ ID NO:36を含む重鎖可変ドメイン及びSEQ
ID NO:40を含む軽鎖可変ドメインを含むことを特徴とする、請求項
15又は
16に記載の製薬学的組成物。
【請求項19】
抗FAM19A5抗体がSEQ ID NO:35を含む重鎖可変ドメイン及びSEQ
ID NO:39を含む軽鎖可変ドメインを含むことを特徴とする、請求項
15又は
16に記載の製薬学的組成物。
【請求項20】
抗FAM19A5抗体がSEQ ID NO:38を含む重鎖可変ドメイン及びSEQ
ID NO:42を含む軽鎖可変ドメインを含むことを特徴とする、請求項
15又は
16に記載の製薬学的組成物。
【請求項21】
抗FAM19A5抗体がFab、Fab’、F(ab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)を含むことを特徴とする、請求項
11~20のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【請求項22】
抗FAM19A5抗体がIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、その変異体、及びこれらの任意の組合せからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項
11~21のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【請求項23】
抗FAM19A5抗体がIgG2抗体、IgG4抗体又はこれらの組合せであることを特徴とする、請求項
22に記載の製薬学的組成物。
【請求項24】
抗FAM19A5抗体がIgG2/IgG4アイソタイプ抗体を含むことを特徴とする、請求項
22に記載の製薬学的組成物。
【請求項25】
抗FAM19A5抗体がFc機能のない定常領域をさらに含むことを特徴とする、請求項
11~24のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【請求項26】
抗FAM19A5抗体がキメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体であることを特徴とする、請求項
11~25のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【請求項27】
FAM19A5拮抗剤が薬剤に連結されて免疫接合体(immunoconjugate)を形成することを特徴とする、請求項
1~26のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【請求項28】
FAM19A5拮抗剤が薬学的に許容される担体で剤形化されることを特徴とする、請求項
1~27のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【請求項29】
FAM19A5拮抗剤が静脈内、経口、非経口、脊髄腔内、脳室内、肺、筋肉内、皮下、腹腔内、硝子体内又は心室内投与されることを特徴とする、請求項
1~28のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【請求項30】
対象がヒトであることを特徴とする、請求項
1~29のいずれかに記載の製薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願と共に提出されたASCIIテキストファイル(ファイル名:3763_009PC0l_SeqListing_ST25.txt;サイズ:214,313バイト;及び生成日:2019年4月22日)に電子的に提出された配列目録の内容はその全体が本明細書に参考として含まれる。
【0002】
本発明は、配列類似性19、メンバーA5(FAM19A5)を有するファミリーに特異的に結合する抗体、その抗原結合断片、若しくはこのような抗体又はその抗原結合断片を含む組成物を用いて対象(例えば、ヒト)において神経病性疼痛を治療する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
神経病性疼痛は、体性感覚系(somatosensory system)の病変又は疾病による慢性疼痛である。Colloca L.,et al.,Nat Rev Dis Primers 3:17002(2017)。体性感覚系は、接触、圧力、疼痛、温度、位置、動き及び振動の認識を許容する。体性感覚神経は皮膚、筋肉、関節及び筋膜で発生し、脊髄に信号を送り、結局として追加処理のために脳に信号を送る熱受容体、機械受容体、化学受容体、かゆみ症及び痛覚受容体を含む。体性感覚神経系の病変又は疾病は、脊髄及び脳へ感覚信号の変更及び無秩序な伝達を招いて慢性疼痛を誘発することがある。
【0004】
神経病性疼痛は患者、社会及び健康管理システムに相当なる負担を与える。全人口の約7~10%が神経病性疼痛に病んでいると推定される。Cruccu G.and Truini A.,Pain Ther 6:35-42(2017)。様々な要因(例えば、高齢化、肥満率の増加、神経病性疼痛を誘発し得るインターベンション(interventions)によって治療を受ける癌患者の生存率増加)により、神経病性疼痛の有病率は将来さらに増加すると見られる。Moulin D.et al.,Pain Res Manag 19:328-335(2014)。
【0005】
根本原因が常に完全に理解されるわけではないため、神経病性疼痛の管理はしばしば複雑であり、依然として挑戦すべき課題である。Finnerup N.B.,et al.,Lancet Neurol 14:162-173(2015)。現在の接近法は、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン、セロトニン-ノルエピネフリン再吸収抑制剤(SNRI)、カルシウムチャネルアルファ-2-デルタリガンドガバペンチン及びプレガバリン)、及びアヘン類似剤(opioid)のような薬理学的薬剤で神経病性疼痛の症状を治療することにフォーカスしているだけである。Cruccu G.and Truini A.,Pain Ther 6:35-42(2017)。このような薬物はしばしば多くの人々に深刻な副作用をもたらし及び/又は効能が制限的である。そこで、神経病症性疼痛に対するより効果的な治療オプションが望まれる現状である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、神経病性疼痛を必要とする対象において中枢神経病性疼痛又は末梢神経病性疼痛を含む神経病性疼痛の治療方法を提供する。一部の実施形態において、本発明の方法は、配列類似性19、メンバーA5(FAM19A5)タンパク質を有するファミリーに対して拮抗剤を対象に投与することを含む。
【0007】
一部の実施形態において、神経病性疼痛は、身体的損傷、感染、糖尿病、癌治療療法、アルコール中毒、切断、背、脚、ヒップ(hip)又は顔の筋肉の弱化、三叉神経痛(trigeminal neuralgia)、多発性硬化症(multiple sclerosis)、帯状疱疹(shingles)、脊椎手術、又はこれらの任意の組合せと関連がある。一部の実施形態において、神経病性疼痛は、手根管(carpal tunnel)症候群、中枢疼痛(central pain)症候群、退行性ディスク(degenerative disk)疾患、糖尿病性神経病症(diabetic neuropathy)、幻肢痛(phantom limb pain)、帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia)(帯状疱疹)、陰部神経痛(pudendal neuralgia)、坐骨神経痛(sciatica)、腰痛(low back pain)、三叉神経痛又はこれらの任意の組合せを含む。
【0008】
一部の実施形態において、神経病性疼痛は神経の圧迫によって発生する。一部の実施形態において、糖尿病性神経病症は糖尿病性末梢神経病症である。一部の実施形態において、神経病性疼痛は坐骨神経痛である。
【0009】
本発明はまた、FAM19A5タンパク質に対する拮抗剤を対象に投与することを含む、外部刺激を必要とする対象の外部刺激に対する閾値(threshold)又は遅延を増加させる方法を提供する。一部の実施形態において、外部刺激は機械的刺激である。他の実施形態において、外部刺激は熱刺激である。
【0010】
本発明はまた、FAM19A5タンパク質に対する拮抗剤を対象に投与することを含む、必要とする対象において感覚神経伝導速度を増加させる方法を提供する。
【0011】
一部の実施形態において、FAM19A5拮抗剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、dsRNA、アプタマー、FAM19A5を特異的に標的化するPNA、又はこれを含むベクターである。他の実施形態において、FAM19A5拮抗剤は、抗FAM19A5抗体、抗FAM19A5抗体を暗号化するポリヌクレオチド、そのポリヌクレオチドを含むベクター、そのポリヌクレオチドを含む細胞、又はこれらの任意の組合せである。
【0012】
一部の実施形態において、FAM19A5拮抗剤は抗FAM19A5抗体である。
【0013】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、次から選択された性質を示す:(a)酵素結合免疫吸着分析法(ELISA)によって測定される時、10nM以下のKDで可溶性ヒトFAM19A5に結合;(b)ELISAによって測定される時、10nM以下のKDで膜結合したヒトFAM19A5に結合;又は(c)(a)及び(b)の両方。
【0014】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、重鎖(heavy chain)CDR1、CDR2及びCDR3及び軽鎖(light chain)CDR1、CDR2及びCDR3を含む基準抗体と共にヒトFAM19A5エピトープに結合するために交差競合(cross-compete)し、ここで、(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含み;(ii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含み;(iii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含み;又は(iv)重鎖CDR1はSEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:34のアミノ酸配列を含む。
【0015】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖CDR1、CDR2及びCDR3及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む基準抗体と同じFAM19A5エピトープに結合し、ここで(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含み;(ii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含み;(iii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含み;又は(iv)重鎖CDR1はSEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:34のアミノ酸配列を含む。
【0016】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、SEQ ID NO:6又はSEQ ID NO:9である一つ以上のFAM19A5エピトープに結合する。他の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、SEQ ID NO:6又はSEQ ID NO:9であるFAM19A5エピトープにのみ結合する。特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体は追加のFAM19A5エピトープにさらに結合する。一部の実施形態において、追加のFAM19A5エピトープはSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10及びこれらの任意の組合せからなる群から選ばれる。
【0017】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む。特定の実施形態において、重鎖CDR3はSEQ ID NO:19、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:13又はSEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、重鎖CDR1はSEQ ID NO:17、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:11又はSEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、重鎖CDR2はSEQ ID NO:18、SEQ ID NO:15、SEQ ID NO:12又はSEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含む。
【0018】
一部の実施形態において、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:29、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:23又はSEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:30、SEQ ID NO:27、SEQ ID NO:24又はSEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:31、SEQ ID NO:28、SEQ ID NO:25又はSEQ ID NO:34のアミノ酸配列を含む。
【0019】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、ここで、(i)重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:17、18及び19を含み、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:29、30及び31を含み;(ii)重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:14、15及び16を含み、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、配列26、27及び28を含み;(iii)重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:11、12及び13を含み、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:23、24及び25を含み;又は(iv)重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:20、21及び22を含み、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:32、33及び34を含む。
【0020】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体はSEQ ID NO:37、SEQ ID NO:36、SEQ ID NO:35又はSEQ ID NO:38を含む重鎖可変ドメイン及び/又はSEQ ID NO:41、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:39又はSEQ ID NO:42を含む軽鎖可変ドメインを含む。特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、SEQ ID NO:37を含む重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:41を含む軽鎖可変ドメインを含む。他の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、SEQ ID NO:36を含む重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:40を含む軽鎖可変ドメインを含む。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、SEQ ID NO:35を含む重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:39を含む軽鎖可変ドメインを含む。特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、SEQ ID NO:38を含む重鎖可変ドメイン及びSEQ ID NO:42を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0021】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:37、36、35又は38に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:41、40、39又は42に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域はSEQ ID NO:37、36、35又は38に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み;及び、ここで、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:41、40、39又は42に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む。
【0022】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体はFab、Fab’、F(ab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)を含む。
【0023】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、これらの変異体及びこれらの任意の組合せからなる群から選ばれる。特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体はIgG2抗体、IgG4抗体又はこれらの組合せである。他の実施形態において、抗FAM19A5抗体はIgG2/IgG4アイソタイプ抗体を含む。
【0024】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、Fc機能がない定常領域をさらに含む。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体はキメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化抗体である。
【0025】
一部の実施形態において、FAM19A5拮抗剤は薬剤に連結されて免疫接合体を形成する。一部の実施形態において、FAM19A5拮抗剤は製薬学的に許容される担体と共に製剤化される。一部の実施形態において、FAM19A5拮抗剤は静脈内、経口、非経口、脊髄腔内、脳室内、肺、筋肉内、皮下、腹腔内、硝子体内又は心室内投与される。
【0026】
一部の実施形態において、対象はヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】
図1A~
図1Cは、個別scFvクローンのFAM19A5タンパク質に対する結合分析を示す。405nMで吸光度を測定した。クローン番号はX軸に表示された。
図1A、
図1B及び
図1Cはそれぞれ、第1ニワトリ、第2ニワトリ及び第3ニワトリから由来した3次、4次又は5次バイオパンニングから96個のクローンの分析を示す。
【
図1B】
図1A~
図1Cは、個別scFvクローンのFAM19A5タンパク質に対する結合分析を示す。405nMで吸光度を測定した。クローン番号はX軸に表示された。
図1A、
図1B及び
図1Cはそれぞれ、第1ニワトリ、第2ニワトリ及び第3ニワトリから由来した3次、4次又は5次バイオパンニングから96個のクローンの分析を示す。
【
図1C】
図1A~
図1Cは、個別scFvクローンのFAM19A5タンパク質に対する結合分析を示す。405nMで吸光度を測定した。クローン番号はX軸に表示された。
図1A、
図1B及び
図1Cはそれぞれ、第1ニワトリ、第2ニワトリ及び第3ニワトリから由来した3次、4次又は5次バイオパンニングから96個のクローンの分析を示す。
【
図2】
図2は、哺乳動物発現ベクター内にサブクローニングされた抗FAM19A5抗体(scFv)に対する概略図である。
【
図3】
図3は、キメラ抗FAM19A5-IgG2/4単クローン性抗体(1-65)のSDS-PAGE結果を示す。左側パネルには縮小SDS-PAGEが表示され、右側パネルには縮小されないSDS-PAGEが表示される。
【
図4A】
図4Aは、キメラ抗FAM19A5-IgG2/4単クローン性抗体(1-65)がヒトFAM19A5に特異的に結合するということを示す。
【
図4B】
図4Bは、キメラ抗FAM19A5-IgG2/4単クローン性抗体(1-65)がFAM19A5タンパク質に特異的であるが、FAM19A5サブファミリーの他のタンパク質に結合しないことを示す。
【
図5A】
図5A及び
図5Bは、抗FAM19A5抗体の投与が慢性収縮性損傷(CCI)誘導ネズミにおいて機械的痛覚過敏を緩和させるということを示す。機械的痛覚過敏に対する効果は、動物が機械的刺激に反応して足を引っ込める(withdrawal)閾値(threshold)で示される。閾値測定前に、動物には次のいずれか一つが投与された:(i)対照用抗体(ヒトIgG)(“G2”)、(ii)抗FAM19A5抗体(“G3”)又は(iii)プレガバリン(“G4”)。ナイーブ(健康な)動物を“シャム対照群(sham control)”(すなわち、CCI誘導及び抗体投与無し)(“G1”)として使用した。
図5Aは、CCI誘導後6日目の閾値データを示す。
図5Bは、CCI誘導後21日目の閾値データを示す。
図5A及び
図5Bの両方において、棒グラフはデータを平均±S.Dとして示す。グラフの下の表は、各グループの個別マウスに対するデータを示す。
【
図5B】
図5A及び
図5Bは、抗FAM19A5抗体の投与が慢性収縮性損傷(CCI)誘導ネズミにおいて機械的痛覚過敏を緩和させるということを示す。機械的痛覚過敏に対する効果は、動物が機械的刺激に反応して足を引っ込める(withdrawal)閾値(threshold)で示される。閾値測定前に、動物には次のいずれか一つが投与された:(i)対照用抗体(ヒトIgG)(“G2”)、(ii)抗FAM19A5抗体(“G3”)又は(iii)プレガバリン(“G4”)。ナイーブ(健康な)動物を“シャム対照群(sham control)”(すなわち、CCI誘導及び抗体投与無し)(“G1”)として使用した。
図5Aは、CCI誘導後6日目の閾値データを示す。
図5Bは、CCI誘導後21日目の閾値データを示す。
図5A及び
図5Bの両方において、棒グラフはデータを平均±S.Dとして示す。グラフの下の表は、各グループの個別マウスに対するデータを示す。
【
図6A】
図6A及び
図6Bは、抗FAM19A5抗体の投与がCCI誘導ネズミにおいて運動機能を改善することを示す。運動機能に対する影響は、実施例に記述するように、ロータロッドトレッドミル(Rotarod-treadmill)から落ちる遅延時間(秒)で示す。CCI誘導動物は、閾値測定前に次のいずれか一つが投与された:(i)対照用抗体(ヒトIgG)(“G2”)、(ii)抗FAM19A5抗体(“G3”)又は(iii)プレガバリン(“G4”)。ナイーブ(健康な)動物を“シャム対照群”(すなわち、CCI誘導及び抗体投与無し)(“G1”)として使用した。
図6Aは、CCI誘導後6日目のデータを示す。
図6BはCCI誘導後21日目のデータを示す。棒グラフは遅延時間データを平均±S.Dとして示す。グラフの下の表は、各グループの個別マウスに対するデータを示す。
【
図6B】
図6A及び
図6Bは、抗FAM19A5抗体の投与がCCI誘導ネズミにおいて運動機能を改善することを示す。運動機能に対する影響は、実施例に記述するように、ロータロッドトレッドミル(Rotarod-treadmill)から落ちる遅延時間(秒)で示す。CCI誘導動物は、閾値測定前に次のいずれか一つが投与された:(i)対照用抗体(ヒトIgG)(“G2”)、(ii)抗FAM19A5抗体(“G3”)又は(iii)プレガバリン(“G4”)。ナイーブ(健康な)動物を“シャム対照群”(すなわち、CCI誘導及び抗体投与無し)(“G1”)として使用した。
図6Aは、CCI誘導後6日目のデータを示す。
図6BはCCI誘導後21日目のデータを示す。棒グラフは遅延時間データを平均±S.Dとして示す。グラフの下の表は、各グループの個別マウスに対するデータを示す。
【
図7】
図7は、各種(すなわち、ヒト、マウス、ネズミ及びニワトリ)のFAM19A5アミノ酸配列の整列を示す。エピトープマッピング分析に用いられた断片F1-F6が表示される。信号ペプチドは下線が付いている。
【
図8】
図8は、エピトープF1-F6(BSに共役結合した)のアミノ酸配列及びヒトFAM19A5ポリペプチドにおいてそれらの位置を示す。同図上端のアミノ酸配列は、野生型FAM19A5アイソタイプ2(信号ペプチドを除く)である。同図の上端二番目のアミノ酸配列は同一配列であるが、システイン残基をセリンに突然変異させ、ペプチド合成過程において非特異的活性を減少させた。各エピトープ断片のサイズは括弧内に表示されている。
【
図9】
図9は、単クローン性抗体クローン1-65のエピトープ断片F1~F6(それぞれレーン3~8)に対するエピトープマッピングに対するウェスタンブロット結果を示す。FAM19A5-CK(レーン1)、PSA-CK(レーン2)、ペプチドNDV-BSA(レーン9)及びBSA(レーン10)を対照群として使用した。使用された異なる抗原の各サイズは、ブロットの右側に示されている。ウェル当たりに使用された抗原の量は、300ngである。ウェスタンブロットに使用された1次抗体は、1-65-scFv-ウサギ-Fc-SSS(2μg/mL)であり、実験に使用された2次抗体は、抗ウサギIgG(Fc特異的)-HRP(1:4000)である。
【
図10】
図10は、抗FAM19A5抗体の投与が糖尿病性末梢神経病症(DPN)ネズミにおいて機械的異痛を改善したことを示す。機械的異痛に対する影響は、動物が機械的刺激に反応して足を引っ込めた閾値(g)で表示される(“足引っ込め閾値”)。ネズミにおいて糖尿病性末梢神経病症を誘導して約3週目に、動物に対照用抗体(NHI、白四角、n=9)又は抗FAM19A5抗体(3-2)(黒四角、n=9)を毎週投与した。ナイーブ(すなわち、健康でDPNの誘導がない)動物を対照群(白丸、n=5)として使用した。データは平均±S.Dと表示される。“*”は、対照用抗体投与の動物と比較して統計的に大きい差(p<0.05)を表す。
【
図11A】
図11A及び
図11Bは、抗FAM19A5抗体の投与が糖尿病性末梢神経病症(DPN)ネズミにおいて熱痛覚過敏を改善したことを示す。熱痛覚過敏に対する効果は、熱刺激に反応して動物が足を引っ込める前の遅延時間(“足引っ込め待ち時間”)と示される。DPNネズミは、対照用抗体(NHI、四角)又は抗FAM19A5抗体(3-2)(三角)が投与された。
図11Aは、抗体投与4週後の熱痛覚過敏データを示す。
図11Bは、抗体投与後8週に熱痛覚過敏データを示す。ナイーブ(すなわち、健康でDPNの誘導がない)動物を対照群として使用した。各記号は個別動物を表す。平均±S.D.も表示される。
【
図11B】
図11A及び
図11Bは、抗FAM19A5抗体の投与が糖尿病性末梢神経病症(DPN)ネズミにおいて熱痛覚過敏を改善したことを示す。熱痛覚過敏に対する効果は、熱刺激に反応して動物が足を引っ込める前の遅延時間(“足引っ込め待ち時間”)と示される。DPNネズミは、対照用抗体(NHI、四角)又は抗FAM19A5抗体(3-2)(三角)が投与された。
図11Aは、抗体投与4週後の熱痛覚過敏データを示す。
図11Bは、抗体投与後8週に熱痛覚過敏データを示す。ナイーブ(すなわち、健康でDPNの誘導がない)動物を対照群として使用した。各記号は個別動物を表す。平均±S.D.も表示される。
【
図12】
図12は、抗FAM19A5抗体の投与が、抗体投与後8週目に糖尿病性末梢神経病症(DPN)ネズミにおいて感覚神経伝導速度(m/s)を改善したことを示す。DPNネズミは、対照用抗体(NHI、四角)又は抗FAM19A5抗体(3-2)(三角)が投与された。ナイーブ(すなわち、健康でDPNの誘導がない)動物を対照群として使用した。各記号は個別動物を表す。平均±S.D.も表示される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、配列類似性19、メンバーA5(FAM19A5)タンパク質を有するヒトファミリーに特異的に結合する拮抗剤(例えば、単離した単クローン性抗体又はその抗原結合部分)を対象に投与することを含む、必要とする対象において神経病性疼痛を治療する方法を開示する。
【0029】
本明細書に記述された開示内容の理解を容易にするために、多数の用語及び語句が定義される。追加の定義は詳細な説明全体にわたって提示されている。
【0030】
I.定義
本明細書全体において、単数の表現は、一つ以上を意味する。例えば、“抗体”は一つ以上の抗体を表すものと理解される。このように、本明細書において単数の表現は“一つ以上の”及び“少なくとも一つの”と同じ意味で使用可能である。
【0031】
また、“及び/又は”は、明示された二つの特徴又は成分のそれぞれがもう一つと共に又は単独で具体的に開示されるものと解釈されるべきである。したがって、“A及び/又はB”は“A及びB”、“A又はB”、“A”(単独)、及び“B”(単独)を含むものと意図される。また、“A、B及び/又はC”は、A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)の態様をそれぞれ含むものと意図される。
【0032】
ある態様が“含む”と述べられた場合、“構成される”及び/又は“本質的に構成される”と説明された他の類似の態様も提供されるものと理解される。
【0033】
特に言及がない限り、本明細書で用いられた全ての技術及び科学用語は、本発明の当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。例えば、文献(the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed,1999,Academic Press;and the Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Press)は、本明細書で用いられた大部分の用語に対する一般の辞典的意味を当業者に提供する。
【0034】
単位、接頭辞及び記号は、Systeme International de Unites(SI)で承認された形態で表示される。数値範囲はその範囲を限定する数字を包括的に含む。特に言及がない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ配向に左側から右側へと書かれる。開示された表題は、本発明の様々な態様の制限ではなく、これらは明細書全般を参照したものであり得る。したがって、下記定義された用語はその全体が明細書を参照してより詳細に説明される。
【0035】
用語“約”は、概略(approximately)、おおよそ(roughly)、近傍(around)、又は近傍の領域内を意味する。用語“約”が数値範囲と共に使われるとき、それは、提示された数値の上と下に境界を拡張させることによって当該範囲を変形する。一般に、用語“約”は、例えば上や下に(より高かく或いは低く)10パーセントまで、言及された値の上と下に数値を変えることができる。
【0036】
“神経病性疼痛”という用語は、中枢神経系(CNS)及び/又は末梢神経系の任意のレベルに影響を及ぼす損傷、傷害(damage)及び/又は不適切な機能による疼痛を意味する。“神経病性疼痛”という用語は、神経病性疼痛の原因及び全ての症状に関係なく任意の及び全ての類型の神経病性疼痛を含む。
【0037】
神経病性疼痛は、中枢神経病性疼痛及び末梢神経病性疼痛を含む。本明細書に使われた用語“中枢神経病性疼痛”は、障害、先天性欠陥又は中枢神経系(すなわち、脳又は脊髄)の損傷による疼痛を意味する。本明細書に使われた用語“末梢神経病性疼痛”は、末梢感覚神経の損傷又は感染による疼痛を意味する。
【0038】
神経病性疼痛の症状は、持続性/慢性疼痛、自発的疼痛及び異痛(例えば、一般に、痛くない刺激に対する苦しい反応)、痛覚過敏(例えば、一般に、単にピンで刺されたような軽微な不快感)、知覚過敏(例:刺激、特に皮膚刺激に対する過度な身体敏感性)又は異常痛症(例えば、短い不快感が長期間の激しい疼痛となる場合)を含むことができる。一部の実施形態において、症状は長く持続することがあり、一次的原因が存在する場合、その一次的な原因が解決された場合にも持続することがある。Merck Manual,Neuropathic Pain,merckmanuals.com/professional/neurologic-disorders/pain/neuropathic-pain;Campbell J.N.and Meyer R.A.Neuron 52(1):77-92(2006)。
【0039】
一部の実施形態において、神経病性疼痛の類型は、(1)神経痛、(2)求心路遮断疼痛(deafferentation pain)症候群、(3)複合局所疼痛症候群(CRPS)及び(4)神経病症(中枢又は末梢)を含むことができる。
【0040】
一部の実施形態において、神経病性疼痛は神経痛であり、これは一般に、神経構造の明白な病理学的変化無しに一つ以上の特定神経(例えば、脳神経)の過程に沿って放射される疼痛のことを指す。神経痛には三叉神経痛(TN)、非定型三叉神経痛(ATN)、喉頭神経痛、舌咽頭神経痛、帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹又はヘルペスによる)、末梢神経損傷疼痛、坐骨神経痛、腰痛及び非定型顔疼痛が含まれるが、これに制限されない。化学的刺激、慢性腎臓疾患、糖尿病、炎症、外傷(手術を含む)、近傍構造物(例:腫瘍)による神経圧迫、特定医薬品(例えば、シスプラチン、パクリタクセル又はビンクリスチン)、ポルフィリン症(血液障害)、及び感染(例えば、帯状ヘルペス(herpes zoster)(帯状疱疹)、HIV/AIDS、ライム病又は梅毒)はいずれも神経痛につながり得る。
【0041】
一部の実施形態において、神経病性疼痛は求心路遮断疼痛症候群であり、これは、身体の一部から感覚入力損失(例えば、末梢感覚線維又は中枢神経系からの神経中断によって招かれる)に起因し得る。求心路遮断疼痛症候群には脳又は脊髄損傷、脳卒中後疼痛、幻想(phantom)疼痛、下半身麻痺、腕神経叢裂離(brachial plexus avulsion)損傷及び腰髄神経根障害(lumbar radiculopathies)が含まれるが、これに制限されない。
【0042】
一部の実施形態において、神経病性疼痛は“複合局所疼痛症候群”(CRPS)であり、これは最も頻繁に腕又は脚に影響を及ぼす慢性疼痛状態である。一部の実施形態において、CRPSは損傷、手術、脳卒中又は心臓麻痺後に発生する。特定の実施形態において、CRPSはI型CRPS(CRPS-I)(反射性交感ジストロフィー(dystrophy)症候群とも知られている。)である。神経損傷が確認されない個人は、しばしばCRPS-Iを有するものと分類される。他の実施形態において、CRPSは、確認された神経損傷と関連したII型CRPS(CRPS-II)(灼熱痛ともいう。)である。
【0043】
一部の実施形態において、神経病性疼痛は神経病症であり、これは神経における機能的又は病理学的変化(例えば、病態又は傷害)による疼痛のことを指す。神経病症はしばしば、感覚又は運動ニューロン異常によって臨床的に特性化できる。特定の実施形態において、神経病症は、中枢神経病症(例えば、中枢神経系の機能的又は病理学的変化)である。他の実施形態において、神経病症は、末梢神経病症(例えば、運動神経、感覚神経、自律神経又はこれらの組合せを含む一つ以上の末梢神経における機能的又は病理学的変化)である。一部の実施形態において、末梢神経病症は、単一神経又は神経群(すなわち、単神経病症)への機能的又は病理学的変化を伴う。一部の実施形態において、末梢神経病症は多数の神経(局所的に又は全身的に)(すなわち、多発神経病症)に影響を及ぼす機能的又は病理学的変化を含む。一部の実施形態において、末梢神経病症は身体の両側にほぼ同一に影響を及ぼす(すなわち、対称性多発神経病症)。一部の実施形態において、末梢神経病症は身体の異質的な領域に影響を及ぼす(例えば、多発性単神経炎、多病巣性単神経病症又は多発性単神経病症)。
【0044】
本明細書に記載された“単神経病症”は、単一末梢神経又は神経群の損傷又は破壊によって引き起こされた領域への動き又は感覚喪失を伴う末梢神経病症である。単神経病症はたいてい局所部位の負傷又は外傷によって発生し、例えば単一神経に対する圧迫/圧力が持続することになる。しかし、特定全身性障害(例えば、多発性単神経炎)も単神経病症を誘発することがある。一部の実施形態において、局所領域に対する損傷又は外傷は、神経又は神経細胞の一部(軸索突起)の髄鞘(myelin sheath)(被服)の破壊を誘発し、これは、神経を通じた衝撃の伝導を遅延又は防止することができる。一部の実施形態において、単神経病症は身体の任意の部分に影響を与えることができる。単一神経病性疼痛の例には、坐骨神経機能障害、一般的な骨盤神経機能障害、腰骨神経機能障害、尺骨神経機能障害、頭蓋骨単神経病症VI、頭蓋骨単神経病症VII、頭蓋骨単神経病症III(圧迫類型)、頭蓋骨神経病症III(糖尿病類型)、腋窩神経機能障害、手根管症候群、大腿神経機能障害、脛骨神経機能障害、ベル麻痺(Bell’s palsy)、胸部出口症候群、手根管症候群、及び第6(外転)神経痲痺がある。Finnerup N.B.el al.,Pain 157(8):1599-1606(2016);国立神経障害及び脳卒中研究所、末梢神経病理事実資料(National Institute of Neurological Disorders and Stroke,Peripheral Neuropathy Fact Sheet)、ninds.nih.gov/disorders/peripheralneuropathy/detailj3eripheralneuropathy.htmから入手可能。一部の実施形態において、単一神経病性疼痛は坐骨神経痛である。
【0045】
本明細書に使われた“多発神経病症”は、多数の末梢神経に対する損傷又は破壊によって引き起こされた領域への動き又は感覚喪失を伴う末梢神経病症である。多発神経病性疼痛は、小児痲痺後症候群、乳房切除術後症候群、糖尿病性神経病症、アルコール神経病症、アミロイド、毒素、エイズ、甲状腺機能低下症、尿毒症、ビタミン欠乏症、化学療法誘発疼痛、2’,3’-ジデキソイシチジン(ddC)治療、ギランバレー(Guillain-Barre)症候群又はファブリー病(Fabry’ disease)を含むが、これに制限されない。Finnerup N.B.et al.,Pain 157(8):1599-1606(2016);国立神経障害及び脳卒中研究所、末梢神経病理事実資料(National Institute of Neurological Disorders and Stroke,Peripheral Neuropathy Fact Sheet)、ninds.nih.gov/disorders/peripheralneuropathy/detail 3eripheralneuropathy.htm。一部の実施形態において、多発神経病症は糖尿病性末梢神経病症である。特定の実施形態において、糖尿病末梢神経病症は糖尿病患者の血液で高い血中グルコースレベル(血糖)及び/又は高いレベルの脂肪(例えば、トリグリセリド)によって誘発され、これは対象の末梢神経に損傷を引き起こす。
【0046】
一部の実施形態において、本明細書に開示された末梢神経病症は、損傷したり影響を受ける神経細胞の一部(例えば、軸索(axon)、髄鞘(myelin sheath)又は細胞体)に基づいて分類できる。一部の実施形態において、末梢神経病症は遠位軸索病症(distal axonopathy)であり、これは軸索の代謝又は毒性変形によるものである。一部の実施形態において、代謝障害は、糖尿病、腎不全、栄養不足及びアルコール中毒のような欠乏症候群を含む。一部の実施形態において、代謝障害は糖尿病であり、遠位軸索病症は糖尿病性神経病症である。
【0047】
一部の実施形態において、末梢神経病症は髄鞘病(myelinopathy)であり、これは髄鞘又は髄鞘性シュワン(Schwann)細胞に対する1次攻撃から発生してインパルス伝導の急性失敗を引き起こす。最も通常の原因は急性炎症性脱髄鞘性多発神経病症(AIDP;aka Guillain-Barre syndrome)であるが、他の原因としては慢性炎症性脱髄鞘性症候群(CIDP)、遺伝子代謝障害(例えば、白質変性症)又は毒素がある。
【0048】
一部の実施形態において、末梢神経病症は神経病症であり、これは末梢神経系(PNS)ニューロンの破壊に起因する。一部の実施形態において、神経病症は、運動ニューロン疾患、感覚神経病症(例えば、帯状疱疹)、毒素又は自律機能障害によって引き起こされる。一部の実施形態において、神経病症は化学療法剤ビンクリスチン(vincristin)のような神経毒によって引き起こされる。
【0049】
神経病性疼痛は、様々な病因(例えば、身体的損傷(例えば、外傷又は反復ストレス)、疾病又は障害、毒性物質に対する露出、又はこれらの組合せ)に起因するか或いはこれに関連し得る。一部の実施形態において、神経病性疼痛は、外傷性損傷又は傷害、例えば、神経圧迫損傷(例えば、神経クラッシュ、神経伸張、神経絞扼又は不完全な神経横切断);脊髄損傷(例えば、脊髄の片側切断);末梢神経(例えば、運動神経、感覚神経又は自律神経又はこれらの組合せ)の損傷又は傷害、四肢切断;打撲傷;炎症(例えば、脊髄の炎症);又は手術手順に起因するか或いはそれらと関連する。一部の実施形態において、神経病性疼痛は、例えば長期間の任意の関節グループの動きを必要とする反復的、鈍い及び/又は強力な活動を含む反復的ストレスから発生するか或いはこれと関連する。これらに制限されないものとして、結果的に刺激は靭帯、腱及び筋肉に炎症ができて腫れ上がるようにし、神経が通過する狭い通路を収縮させることがある(例えば、肘又は手首に閉じ込められたり圧迫された神経の神経病症である尺骨神経病症及び手根管症候群)。一部の実施形態において、神経病性疼痛は、例えば次を含む疾患又は障害によって発生するか或いはこれと関連する:虚血性事例(例:脳卒中又は心臓麻痺)、多発性硬化症、代謝及び/又は内分泌疾患又は障害(例えば、糖尿病、代謝性疾患及び肥大症、成長ホルモンの過剰生成によって発生し、関節を含む骨格部分の異常拡大によって特性化されて神経絞扼及び疼痛を誘発する病態)、末梢神経への酸素供給を減少させて神経組織損傷を誘発する小さな血管疾患(例えば、血管炎、すなわち血管炎症)、自己免疫疾患(例えば、シェーグレン(Sjogren’s)症候群、ループス、リウマチ関節炎及びギランバレー症候群とも知られた急性炎症性脱髄鞘性神経病症)、腎臓疾患、癌又は腫瘍(例えば、新生物腫瘍、神経腫、副腎生物症候群及び化学療法剤からの毒性及び癌治療の放射線)、感染(例えば、ヘルペス水痘帯状疱疹(帯状疱疹)、エプスタインバーウイルス、ウェストナイルウイルス、サイトメガロウイルス及び単純疱疹ウイルス、後天性免疫欠乏症候群(AIDS)又はライム病、ジフテリアのようなバクテリア及びハンセン病による感染)、炎症性障害、末梢神経障害(例えば、神経腫)、遺伝的又は新生の遺伝因子障害(例えば、Charcot-Marie-Tooth障害は、脚と足の筋肉弱化及び衰弱、歩行以上、腱反射の喪失、下肢麻痺など)、単神経病症又は多発神経病症。一部の実施形態において、神経病性疼痛は、感染源(例えば、ダニ媒介感染、ヘルペス水痘帯状疱疹(herpes varicellazoster)、エプスタインバーウイルス、ウェストナイルウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、AIDS)から発生するか或いはこれと関連する。一部の実施形態において、神経病性疼痛は、例えば薬物、アルコール、重金属(例えば、鉛、ヒ素、水銀)、工業用製剤(例えば、溶剤、接着剤から発生する煙)又は亜酸化窒素を含む毒性製剤への露出から発生するか或いはそれと関連する。
【0050】
疾患又は障害と“関連した神経病性疼痛”という用語は、疾患又は障害(例えば、本明細書に開示されたもの)に同伴したり、疾患又は障害(例えば、本明細書に開示されたもの)によって引き起こされたり或いはそれによる神経病性疼痛をいう。
【0051】
本明細書において、用語“治療する(treat)”、“治療する(treating)”及び“治療(treatment)”は、疾患と関連した症状、合併症、病態又は生化学的指標の進行、発生、深刻性又は再発を反転、改善、緩和、抑制又は遅延させる目的で対象に対して行われた任意の種類の介入又は過程、又は対象に活性剤を投与することを意味する。治療は、疾患を持つ対象又は疾患を持たない対象に対してなされ得る(例えば、予防のために)。
【0052】
本明細書において、用語“投与”は、当業者に公知の様々な方法及び伝達システム(delivery systems)のいずれかを用いて、対象に治療剤又は治療剤を含む組成物を物理的に注入することを指す。本明細書に開示された抗体の好ましい投与経路は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊椎又は他の非経口投与経路、例えは注射又は注入によるものを含む。本明細書において、用語“非経口投与”は一般に注射による、腸内(enteral)及び局部的(topical)投与以外の投与方式を意味し、制限されないが、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、脊椎腔内、リンパ内、病巣内、嚢内(intracapsular)、眼窩内(intraorbital)、心臓内、血内(intradermal)、気管支経(transtracheal)、皮下(subcutaneous)、表皮下、硝子体内、関節内、嚢下、蜘蛛膜下、髄腔内、硬膜外、及び胸骨下注射及び注入の他、生体内電気穿孔も含む。代案として、本明細書に開示された抗体は、非-非経口経路を通じて、例えば局部的、上皮又は粘膜投与経路を通じて、例えば鼻内、経口、膣、直腸、舌下又は局部的経路を通じて投与され得る。また、投与は、例えば、1回、複数回、及び/又は1回以上の延長された期間にわたって行われ得る。
【0053】
本明細書において、用語“治療的有効量”は、単独で又は他の治療剤と組み合わせて、対象の疾患又は障害を“治療することに”有効な又は疾患又は障害(例えば、神経病性疼痛)の危険、潜在性、可能性又は発生を減少させることに有効な薬物の量を指す。“治療的有効量”は疾患又は障害(例えば、本明細書に記載された神経病性疼痛)を有するか或いは有する危険のある対象に一部の改善や利益を提供する薬物又は治療剤の量を含む。したがって、“治療的有効量”は、疾患又は障害の危険、潜在性、可能性又は発生を減少させたり又は一部緩和、軽減させる、及び/又は少なくとも一つの指標(例えば、神経病性疼痛)を減少させる、及び/又は疾患又は障害の少なくとも一つの臨床症状を減少させる量である。
【0054】
本明細書において、用語“対象”は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。用語“非ヒト動物”は、全ての脊椎動物、例えば哺乳類及び非哺乳類、例えば非ヒト霊長類、ヤギ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両棲類、爬虫類などを含む。
【0055】
用語“配列類似性19、メンバーA5を有するファミリー”又は“FAM19A5”は、5個の高度に相同性であるタンパク質のTAFAファミリー(FAM19ファミリーとも知られている)に属し、脳と脊髄で優勢に発現するタンパク質のことを指す。FAM19A5はまた、TAFA5又はケモカイン様タンパク質TAFA-5(Chemokine-like protein TAFA-5)とも知られている。
【0056】
ヒトにおいて、FAM19A5を暗号化する遺伝子は染色体22に位置する。次のような多数のヒトFAM19A5(UniProt:Q7Z5A7)アイソタイプがあり、それらは選択的スプライシング(splicing)によって生成されると推定される:132個のアミノ酸で構成されたアイソタイプ1(UniProt:Q7Z5A7-1);125個のアミノ酸で構成されたアイソタイプ2(UniProt:Q7Z5A7-2);及び53個のアミノ酸で構成されたアイソタイプ3(UniProt:Q7Z5A7-3)。ヒトFAM19A5タンパク質は膜結合形態及び可溶性(分泌された)形態で存在すると推定される。アイソタイプ1は一つの硬膜領域を有する膜タンパク質であると推定される。アイソタイプ2は、分泌されたタンパク質(可溶性)としてTang T Y et al.,Genomics 83(4):727-34(2004)に報告されており、アミノ酸位置1-25に信号ペプチドを含有する。アイソタイプ1は膜タンパク質であると推定される。次は3つの公知されたヒトFAM19A5アイソタイプのアミノ酸配列である。
【0057】
(I)アイソタイプ1(UniProt:Q7Z5A7-1、硬膜タンパク質):このアイソタイプは標準配列として選択された。
【0058】
MAPSPRTGSR QDATALPSMS STFWAFMILA SLLIAYCSQL AAGTCEIVTL DRDSSQPRRT IARQTARCAC RKGQIAGTTR ARPACVDARI IKTKQWCDML PCLEGEGCDL LINRSGWTCT QPGGRIKTTT VS(SEQ ID NO:1)
(II)アイソタイプ2(UniProt:Q7Z5A7-2、可溶性タンパク質):
MQLLKALWAL AGAALCCFLV LVIHAQFLKE GQLAAGTCEI VTLDRDSSQP RRTIARQTAR CACRKGQIAG TTRARPACVD ARIIKTKQWC DMLPCLEGEG CDLLINRSGW TCTQPGGRIK TTTVS(SEQ ID NO:2)
(III)アイソタイプ3(UniProt:Q7Z5A7-3):
MYHHREWPAR IIKTKQWCDM LPCLEGEGCD LLINRSGWTC TQPGGRIKTT TVS(SEQ ID NO:3)
用語“FAM19A5”は、細胞によって自然的に発現するFAM19A5の任意の変異体又はアイソタイプを含む。したがって、本明細書に開示された抗体は同種の異なるアイソタイプ(例えば、ヒトFAM19A5の各アイソタイプ)と交差反応できるか、又はヒト以外の種のFAM19A5(例えば、マウスFAM19A5)と交差反応することができる。代案として、抗体はヒトFAM19A5に特異的であり得、他の種とは交差反応性を示さないことがある。FAM19A5又はその任意の変異体及びアイソタイプは、それらを自然的に発現する細胞又は組織から単離されたり又は組換え的に生成され得る。ヒトFAM19A5を暗号化するポリヌクレオチドはGenBank受託番号BC039396を有し、次の配列を有する:
【0059】
【0060】
用語“FAM19A5タンパク質に対する拮抗剤”は、FAM19A5タンパク質の発現を抑制する全ての拮抗剤のことを指す。このような拮抗剤は、ペプチド、核酸、又は化合物であり得る。より具体的に、拮抗剤は、アンチセンス-オリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、dsRNA、アプタマー、FAM19A5標的化PNA(ペプチド核酸)、又はこれらを含むベクターであり得る。一部の実施形態において、拮抗剤は、FAM19A5タンパク質に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分であり得る。
【0061】
用語“抗体(antibody)”及び“抗体(antibodies)”は当業界の用語であり、本明細書で同じ意味で使用可能であり、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を有する分子を指す。本明細書で使われた用語は全抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち“抗原結合部分”)又はこれらの単鎖を含む。一部の実施形態において、“抗体”は二硫化物結合によって相互連結された少なくとも2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)を含む糖タンパク質、又はその抗原結合部分を指す。他の実施形態において、“抗体”は単一可変ドメイン、例えばVHHドメインを含む単鎖抗体を指す。各重鎖は重鎖可変領域(VHと略称)と重鎖定常領域とからなる。特定自然発生抗体において、重鎖定常領域は3個のドメインCH1、CH2及びCH3からなる。特定自然発生抗体において、各軽鎖は軽鎖可変領域(VLと略称)と軽鎖定常領域とからなる。軽鎖定常領域は一つのドメインCLからなる。
【0062】
VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称する、より保存される領域が散在している、相補性決定領域(CDR)と称する、超可変性の領域にさらに細分化できる。それぞれのVH及びVLは3個のCDR及び4個のFRからなり、これらはFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4の順にアミノ末端からカルボキシ末端に向かって配列される。重鎖及び軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫システムの様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び伝統補体システムの第1成分(C1q)を含む宿主組織又は因子と免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0063】
用語“Kabatナンバリング”は当業界で認定され、抗体、又はその抗原結合部分の重鎖及び軽鎖可変領域においてアミノ酸残基をナンバリングするシステムを指す。特定態様において、抗体のCDRは、Kabatナンバリングシステムによって決定され得る(例えば、Kabat EA & Wu TT(1971)Ann NY Acad Sci 190:382-391 and Kabat EA et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition,US Department of Health and Human Services,NIH Publication No 91-3242参考)。Kabatナンバリングシステムを用いると、抗体重鎖分子内におけるCDRは典型的にアミノ酸位置31~35(これは、選択的に35以降に1個又は2個の追加のアミノ酸を含み得る;Kabatナンバリング方式において35A及び35Bと言及される。)(CDR1)、アミノ酸位置50~65(CDR2)、及びアミノ酸位置95~102(CDR3)に存在する。Kabatナンバリングシステムを用いると、抗体軽鎖分子内からCDRは典型的にアミノ酸位置24~34(CDR1)、アミノ酸位置50~56(CDR2)、及びアミノ酸位置89~97(CDR3)に存在する。特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体のCDRはKabatナンバリング方式によって決定されている。
【0064】
用語“Kabatでのアミノ酸位置ナンバリング”及び“Kabat位置”又は関連する変形用語は文献(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md(1991))で抗体編集の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに対して使われたナンバリングシステムをいう。このナンバリングシステムを用いると、実際線形アミノ酸配列はより少ない又は追加のアミノ酸を含有することができるが、これは、可変ドメインのFW又はCDRの短縮、又は可変ドメインのFW又はCDRへの挿入に該当する。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52以降の単一アミノ酸挿入(Kabatによれば残基52a)及び重鎖FW残基82以降に挿入された残基(Kabatによれば残基82a、82b、及び82cなど)を含むことができる(表1B参照)。
【0065】
【0066】
残基のKabatナンバリングは、“標準”Kabatナンバリングされた配列と抗体の配列の相同性の領域で整列によって与えられた抗体に対して決定され得る。Chothiaは、構造ループの位置を代わりに参照する(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Chothia CDR-H1ループの端部は、Kabatナンバリング慣例を用いてナンバリングされたとき、ループの長さによってH32~H34の間で変わる(これは、Kabatナンバリング方式がH35AとH35Bに挿入を位置させるためである;35Aも35Bも存在しなければ、ループは32で終わる;35Aだけ存在すれば、ループは33で終わる;35Aと35Bがともに存在すればループは34で終わる)。AbM超可変領域はKabat CDRとChothia構造ループ間の折衝点を表示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられる。
【0067】
IMGT(ImMunoGeneTics)もCDRを含む免疫グロブリン可変領域に対するナンバリングシステムを提供する。例えば、Lefranc,MP et al.,Dev Comp Immunol.27:55-77(2003)を参照し、これは本明細書に参照として含まれる。IMGTナンバリングシステムは5,000個を越える配列の整列、構造データ、及び超可変ループの特性化に基づており、全種に対して可変領域とCDR領域を容易に比較する。IMGTナンバリングスキマーによれば、VH-CDR1は位置26~35にあり、VH-CDR2は位置51~57にあり、VH-CDR3は位置93~102にあり、VL-CDR1は位置27~32にあり、VL-CDR2は位置50~52にあり、そしてVL-CDR3は位置89~97にある。
【0068】
本明細書に開示された全ての重鎖定常領域アミノ酸位置に対して、ナンバリングは、配列化された最初のヒトIgG1である骨髄腫タンパク質EUのアミノ酸配列を説明した文献(Edelman et al.,1969,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 63(1):78-85)に最初に提示されたEUインデックスに従う。EdelmanなどのEUインデックスはまた、文献(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda)にも提示される。したがって、用語“Kabatに提示されたEUインデックス”又は“KabatのEUインデックス”及び“Kabatに提示されたEUインデックスによる位置”及び関連する変形用語は、Kabat 1991に提示のEdelmanなどのヒトIgG1EU抗体に基づく残基ナンバリングシステムのことをいう。
【0069】
可変ドメイン(重鎖及び軽鎖の両方)及び軽鎖定常領域アミノ酸配列に用いられたナンバリングシステムは、Kabat 1991に提示されたものである。
【0070】
抗体は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY)、任意の類型(例えば、IgD、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1又はIgA2)、又は任意の亜型(例えば、ヒトにおいてIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4;及びマウスにおいてIgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3)を有することができる。免疫グロブリン、例えばIgG1はいくつかのアロタイプで存在し、これらは最大でいくつかのアミノ酸が互いに異なる。本明細書に開示された抗体は、通常知られたアイソタイプ、類型、亜型、又はアロタイプのいずれかから由来し得る。特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体はIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4亜型又はこれらの任意のハイブリッドである。特定の実施形態において、抗体はヒトIgG1亜型又はヒトIgG2又はヒトIgG4亜型のものである。
【0071】
“抗体”は、例えば、自然発生及び非自然発生抗体;単クローン性及び多クローン性抗体;キメラ及びヒト化された抗体;ヒト及び非ヒト抗体、全体合成抗体;単鎖抗体;単一特異的抗体;多重特異的抗体(二重特異的抗体を含む);2本の重鎖と2本の軽鎖分子を含むテトラマー抗体;抗体軽鎖モノマー;抗体重鎖モノマー;抗体軽鎖ダイマ-;抗体重鎖ダイマ-;抗体軽鎖-抗体重鎖対;イントラボディー;ヘテロコンジュゲート抗体;1価抗体;単鎖抗体;ラクダ化(camelized)抗体;アフィボディー(affybodies);抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗抗Id抗体を含む)、及び十分に抗原結合可能な単一モノマー可変抗体ドメイン(例えば、VHドメイン又はVLドメイン)で構成された結合分子を含む単一-ドメイン抗体(sdAb)を含む(Harmen M.M.and Haard H.J.Appl Microbiol Biotechnol.77(1):13-22(2007))。
【0072】
本明細書において用語“抗体の抗原結合部分”又は“抗体の抗原結合断片”とは、抗原(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する能力を保有した抗体の一つ以上の断片を指す。このような“断片”は、例えば、約8個~約1,500個のアミノ酸長、好適には約8個~約745個のアミノ酸長、より好適には約8個~約300個、約8個~約200個のアミノ酸長、又は約10個~約50個、又は100個のアミノ酸長である。抗体の抗原結合機能は全長抗体の断片によって行われ得るということが明らかにされた。抗体、例えば本明細書に開示の抗FAM19A5抗体の“抗原結合部分”に含まれる結合断片の例は、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインで構成された1価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域において二硫化物ブリッジによって連結された2個のFab断片を含む2価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインで構成されたFd断片;(iv)抗体の単一腕のVL及びVHドメインで構成されたFv断片、及び二硫化物-連結されたFvs(sdFv);(v)VHドメインで構成されたdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);及び(vi)単離した相補性決定領域(CDR)又は(vii)合成リンカーによって選択的につながり得る2以上の単離したCDRの組合せを含む。また、Fv断片の2ドメインであるVLとVHは別個の遺伝子によってコードされるが、これらは合成リンカーによって、組換え方法を用いて、つながり得、これによってVLとVH領域が対をなして1価分子を形成した単一タンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)という。)になり得る;(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参考)。このような単鎖抗体もまた、抗体の“抗原結合部分”に含まれる。これらの抗体断片は当業者に公知の従来の技術によって得られ、断片は無損傷抗体と同じ方式で有用性に対してスクリーニングされる。抗原結合部分は組換えDNA技術によって、又は無損傷免疫グロブリンの酵素又は化学切断によって生成され得る。
【0073】
本明細書において用語“可変領域”又は“可変ドメイン”は当業界で通常同じ意味で使用される。可変領域は典型的に抗体の一部分、一般的に軽鎖又は重鎖の一部分、典型的に成熟した重鎖において約アミノ末端110~120個アミノ酸及び成熟した軽鎖において約90~115個アミノ酸を指し、抗体のうち、配列が広範囲に互いに異なり、特定抗原に対する特定抗体の結合及び特異性と関連して用いられる。配列変動性は相補性決定領域(CDR)と呼ばれる領域に集中し、可変ドメインにおいてより高度に保存された領域はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。
【0074】
特定メカニズムや理論に拘わらず、軽鎖及び重鎖のCDRは抗原と抗体の相互作用及び特異性を主に担当するものと推定される。特定の実施形態において、可変領域はヒト可変領域である。特定の実施形態において、可変領域は、齧歯類又はミューリンCDRとヒトフレームワーク領域(FR)を含む。特定の実施形態において、可変領域は霊長類(例えば、非ヒト霊長類)可変領域である。特定の実施形態において、可変領域は齧歯類又はミューリンCDRと霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域(FR)を含む。
【0075】
本明細書において、用語“重鎖”(HC)は、抗体と関連して用いられた場合、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、任意の異なるタイプ、例えば、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ)を指すことができ、これらはそれぞれIgGの亜型、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含み、抗体のIgA、IgD、IgE、IgG及びIgM類型を発生させる。
【0076】
本明細書において、用語“軽鎖”(LC)は、抗体と関連して用いられた場合、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて任意の互いに異なるタイプ、例えばカッパ(κ)及びラムダ(λ)を指すことができる。軽鎖アミノ酸配列は当業界に公知されている。特定の実施形態において、軽鎖はヒト軽鎖である。
【0077】
用語“VL”及び“VLドメイン”は同じ意味で使用され、抗体の軽鎖可変領域のことを指す。
【0078】
用語“VH”及び“VHドメイン”は同じ意味で使用され、抗体の重鎖可変領域のことを指す。
【0079】
本明細書において、用語“定常領域”又は“定常ドメイン”は同じ意味で使用可能であり、当業界における通常の意味を有する。定常ドメインは抗体部分であり、例えば抗体と抗原の結合には直接関係しないが、Fc受容体との相互作用のような様々なエフェクター機能を示し得る軽鎖及び/又は重鎖のカルボキシ末端部分である。免疫グロブリン分子の定常領域は一般に、免疫グロブリン可変ドメインに比べてより保存されたアミノ酸配列を有する。
【0080】
“Fc領域”(断片決定化可能な領域)又は“Fcドメイン”又は“Fc”は、免疫システムの様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)上に位置したFc受容体又は伝統補体システムの第1成分(C1q)との結合を含み、宿主組織又は因子と免疫グロブリンの結合を媒介する抗体の重鎖のC末端領域をいう。したがって、Fc領域は、第1定常領域免疫グロブリンドメイン(例えばCH1又はCL)以外の抗体の定常領域を含む。IgG、IgA及びIgD抗体イソタイプにおいて、Fc領域は、抗体の両重鎖の第2(CH2)及び第3(CH3)定常ドメインから由来した2個の同じタンパク質断片を含む;IgM及びIgE Fc領域は、各ポリペプチド鎖に3個の重鎖定常ドメイン(CHドメイン2~4)を含む。IgGの場合、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3、並びにCγ1とCγ2との間のヒンジを含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は一般に、位置C226又はP230にあるアミノ酸残基(又は、これら両アミノ酸間のアミノ酸)から重鎖のカルボキシ末端まで伸びたものに限定され、ここで、ナンバリングはKabatにおけるようなEUインデックスに従う。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、約アミノ酸231から約アミノ酸340まで延長され、CH3ドメインはFc領域においてCmドメインのC末端側に位置するが、これはIgGの約アミノ酸341から約アミノ酸447まで延長される。Fc領域は、任意のアロタイプ変異体を含む自生配列Fc、又は変異体Fc(例えば、非自然発生Fc)であり得る。また、Fcは単離した状態の領域を指すか、或いは“Fc融合タンパク質”(例えば、抗体又は免疫癒着(immunoadhesion))とも呼ばれる、“Fc領域を含む結合タンパク質”のような含Fcタンパク質ポリペプチドと関係している領域のことを指す。
【0081】
“自生配列Fc領域”又は“自生配列Fc”は自然で発見されたFc領域のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む。自生配列ヒトFc領域は、自生配列ヒトIgG1Fc領域;自生配列ヒトIgG2Fc領域;自生配列ヒトIgG3Fc領域;及び自生配列ヒトIgG4Fc領域だけでなく、これらの自然発生変異体を含む。自生配列FcはFeの様々なアロタイプを含む(例えば、Jefferis et al.,(2009)mAbs 1:1;Vidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)
“Fc受容体”又は“FcR”は、免疫グロブリンのFc領域に結合する受容体である。IgG抗体に結合するFcRはFcγファミリーの受容体を含み、これらの受容体の対立形質変異体及び他の方式でスプライシングされた形態を含む。Fcγファミリーは、3個の活性化受容体(マウスにおいてFcγRI、FcγRIII、及びFcγRIV;ヒトにおいてFcγRIA、FcγRIIA、及びFcγRIIIA)と一つの抑制受容体(FcγRIIB)で構成される。ヒトIgG1は大部分のヒトFc受容体と結合し、最も強いFcエフェクター機能を導出する。ヒトIgG1が結合する活性化Fc受容体の種類に対してはミューリンIgG2aと同等であると見なされる。一方、ヒトIgG4は最小限のFcエフェクター機能を導出する(Vidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。
【0082】
定常領域は一つ以上のエフェクター機能を除去するために、例えば組換え技術によって操作され得る。“エフェクター機能”は、抗体Fc領域とFc受容体又はリガンドの相互作用、又はこれに起因する生化学的事例(event)のことを指す。例示的な“エフェクター機能”は、C1q結合、補体依存性細胞毒性(CDC)、Fc受容体結合、FcγR媒介エフェクター機能、例えばADCC及び抗体依存性細胞媒介飽食作用(ADCP)、及び細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下向き調節を含む。このようなエフェクター機能は一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わせられることを必要とする。したがって、用語“Fc機能のない定常領域”は、Fc領域によって媒介された一つ以上のエフェクター機能が減少した或いはない定常領域を含む。
【0083】
抗体のエフェクター機能は個別の接近法によって減少又は回避され得る。抗体のエフェクター機能は、Fc領域を欠如した抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、単鎖Fv(scFv)、又はモノマーVH又はVLドメインで構成されたsdAb)を用いて減少又は回避し得る。あるいは、Fc領域の他の価値ある属性(例えば、延長された半減期及びヘテロダイマ-化)は保有しながら抗体のエフェクター機能を減少させるために、いわゆる無グリコシル化(aglycosylated)抗体がFc領域で特定残基に連結された糖を除去することによって生成され得る。無グリコシル化抗体は、例えば、糖の付着した残基を欠失又は変更することによって、糖を酵素的に除去することによって、グリコシル化抑制剤の存在の下に培養された細胞で抗体を生成することによって、又はタンパク質をグリコシル化できない細胞(例えば、バクテリア宿主細胞)で抗体を発現することによって生成され得る(例えば、米国特許公開第20120100140号参考)。他の接近法は、エフェクター機能の減少したIgG亜型からのFc領域を利用することであるが、例えば、IgG2及びIgG4抗体はIgG1及びIgG3に比べてより低いレベルのFcエフェクター機能を有することを特徴とする。Fc部分のCH2ドメインにおいてヒンジ領域に最も近接している残基が抗体のエフェクター機能を担当し、それは先天免疫システムのエフェクター細胞上でC1q(補体)及びIgG-Fc受容体(FcγR)に対して相当重なった結合部位を含有する(Vidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開))。したがって、Fcエフェクター機能が減少した又はない抗体は、例えば、IgG4イソタイプのIgG抗体からのCH2ドメインとIgG1イソタイプのIgG抗体からのCH3ドメインを含むキメラFc領域、又はIgG2からのヒンジ領域とIgG4からのCH2領域を含むキメラFc領域(例えば、Lau C et al.,J Immunol.191:4769-4777(2013)参考)、又は変更されたFcエフェクター機能、例えばFc機能が減少した又はない突然変異を有するFc領域を生成することによって製造され得る。突然変異を有するかかるFc領域は、当業界に公知されている。例えば、米国特許公開第20120100140号とそこに引用された米国出願及びPCT出願、及びAn et al.,mAbs 1:6,572-579(2009)を参照し、これらの開示はその全体が本明細書に参照として含まれる。
【0084】
“ヒンジ”、“ヒンジドメイン”又は“ヒンジ領域”又は“抗体ヒンジ領域”は、CH1ドメインをCH2ドメインと結合し、ヒンジの上部、中央、及び下部部分を含む重鎖定常領域のドメインのことを指す(Roux et al.,J.Immunol 1998 161:4083)。ヒンジは、抗体の結合領域とエフェクター領域間に可撓性のレベルを変化させ、また2本の重鎖定常領域間に分子間二硫化物結合のための部位を提供する。本明細書に開示されたヒンジは、全てのIgGイソタイプに対してGlu216から始まってGly237で終わる(Roux et al.,1998 J Immunol 161:4083)。野生型IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4ヒンジの配列が当業界に公知されている(例えば、Kabat EA et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition,US Department of Health and Human Services,NIH Publication No 91-3242;Vidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。
【0085】
用語“CH1ドメイン”は、重鎖定常ドメインにおいて可変ドメインとヒンジを連結する重鎖定常領域のことを指す。本明細書に開示されたCH1ドメインはA118から始まってV215で終わる。用語“CH1ドメイン”は、野生型CH1ドメインの他に、その自然的に存在する変異体(例えば、アロタイプ)も含む。(野生型及びアロタイプを含む)IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のCH1ドメイン配列は当業界に公知されている(例えば、Kabat EA et al.,(1991)(同上)及びVidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。例示的なCH1ドメインは、抗体の生物学的活性、例えば半減期を変形する突然変異を有するCH1ドメインを含み、これらは、例えば米国特許公開第20120100140号及びそこに引用された米国特許及び公報とPCT公報に開示される。
【0086】
用語“CH2ドメイン”は、重鎖定常ドメインにおいてヒンジとCH3ドメインを連結する重鎖定常領域のことを指す。本明細書に開示されたCH2ドメインはP238から始まってK340で終わる。用語“CH2ドメイン”は、野生型CH2ドメインの他に、その自然的に存在する変異体(例えば、アロタイプ)も含む。(野生型及びアロタイプを含む)IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のCH2ドメイン配列は当業界に公知されている(例えば、Kabat EA et al.,(1991)(同上)及びVidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。例示的なCH2ドメインは、抗体の生物学的活性、例えば半減期及び/又は減少したFcエフェクター機能を変形する突然変異を有するCH2ドメインを含み、これらは、例えば米国特許公開第20120100140号及びそこに引用された米国特許及び公報とPCT公報に開示される。
【0087】
用語“CH3ドメイン”は、重鎖定常ドメインにおいてCH2ドメインに対してC末端である重鎖定常領域のことを指す。本明細書に開示されたCH3ドメインはG341から始まってK447で終わる。用語“CH3ドメイン”は野生型CH3ドメインの他に、その自然的に存在する変異体(例えば、アロタイプ)も含む。(野生型及びアロタイプを含む)IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のCH3ドメイン配列は当業界に公知されている(例えば、Kabat EA et al.,(1991)(同上)及びVidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。例示的なCH3ドメインは、抗体の生物学的活性、例えば半減期を変形する突然変異を有するCH3ドメインを含み、これらは、例えば米国特許公開第20120100140号及びそこに引用された米国特許及び公報とPCT公報に開示される。
【0088】
本明細書において用語“アイソタイプ”は、重鎖定常領域遺伝子によって暗号化される抗体類型(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、及びIgE抗体)を指す。
【0089】
用語“アロタイプ”は、いくつかのアミノ酸が異なる特定のアイソタイプグループ内で自然発生した変異体のことを指す(例えば、Jefferis et al.,(2009)mAbs 1:1参照)。本明細書に開示された抗体は任意のアロタイプを有することができる。IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のアロタイプは当業界に公知されている(例えば、Kabat EA et al.,(1991)(同上);Vidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開);及びLefranc MP,mAbs 1:4,1-7(2009)参照)。
【0090】
用語“抗原を認識する抗体”及び“抗原に特異的な抗体”は、用語“抗原に特異的に結合する抗体”と共に本明細書において同じ意味で使われる。
【0091】
本明細書において、用語“単離した抗体”は、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的にない抗体を指す。例えば、FAM19A5に特異的に結合する単離した抗体は、FAM19A5以外の抗原に特異的に結合する抗体が実質的に存在しない。しかし、FAM19A5のエピトープに特異的に結合する単離した抗体は、異なる種からの他のFAM19A5タンパク質に対して交差反応性を有することができる。
【0092】
“結合親和性”は一般に、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)間の非共有相互作用の全体の合計強度を指す。特に言及がない限り、用語“結合親和性”は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性のことを指す。パートナーYに対する分子Xの親和性は一般に解離定数(KD)によって表示され得る。親和性は、制限されないが、平衡解離定数(KD)、及び平衡結合定数(KA)を含む、当業界に公知の多数の方式で測定及び/又は表示され得る。KDは、koff/konの商から計算され、モル濃度(M)で表示され、KAはkon/koffの商から計算される。konは、例えば抗原に対する抗体の結合速度定数を指し、koffは、例えば、抗原に対する抗体の解離速度定数を指す。kon及びkoffは免疫分析(例えば、酵素結合免疫吸着分析(ELISA))、BIACORE(登録商標)又は力学的排除分析(KinExA)のような、当業者に公知の技術によって決定され得る。
【0093】
本明細書において、用語“特異的に結合する”、“特異的に認識する”、“特異的結合”、“選択的結合”及び“選択的に結合する”とは、抗体と関連して類似の用語であり、抗原(例えば、エピトープ又は免疫複合体)に結合する分子(例えば、抗体)をいい、このような結合は当業者にとって理解される通りである。抗原に特異的に結合する分子は、例えば、免疫分析、BIACORE(登録商標) KinExA 3000機器(Sapidyne Instruments,Boise,ID)、又は当業界に公知の他の分析によって決定されたとき、通常、より低い親和性で他のペプチド又はポリペプチドに結合し得る。特定の実施形態において、抗原に特異的に結合する分子は、この分子が他の抗原に結合する時のKAに比べて少なくとも2logs、2.5logs、3logs、4logs又はそれ以上のKAでその抗原に結合する。
【0094】
抗体は典型的に10-5~10-11M以下の解離定数(KD)によって反映される、高い親和性で同族抗原に特異的に結合する。約10-4Mを超えるKDは、通常、非特異的結合を示すと見なされる。抗原と“特異的に結合する”抗体は、高い親和性で抗原及び実質的に同じ抗原に結合する抗体のことを指し、これは、例えば定められた抗原を用いて免疫分析(例えば、ELISA)又はBIACORE 2000機器で表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定された時、10-7M以下、好ましくは10-8M以下、より好ましくは10-9M以下、及び最も好ましくは10-8M~10-10M以下のKDを有するものを意味し、これは、関連していない抗原には高い親和性で結合しない。
【0095】
本明細書において、用語“抗原”は、任意の天然又は合成免疫原性物質、例えばタンパク質、ペプチド又はハプテンのことを指す。抗原はFAM19A5又はその断片であり得る。
【0096】
本明細書において、“エピトープ”は当業界の用語であり、抗体が特異的に結合し得る抗原の局所化された領域のことを指す。エピトープは、例えばポリペプチドの連続(contiguous)アミノ酸(線形又は連続エピトープ)であり得るか、又はエピトープは、例えばポリペプチド又はポリペプチドの2以上の非連続領域が合わせられたもの(立体形態的、非線形、不連続、又は非連続エピトープ)であり得る。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、いつもそうであるわけではないが、典型的に変性溶媒に露出時に保有され、3次フォルディングによって形成されたエピトープは典型的に変性溶媒で処理時に喪失される。エピトープは典型的に独特の空間的立体形態において少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は20個のアミノ酸を含む。エピトープが与えられた抗体によって結合したものを決定する方法(すなわち、エピトープマッピング)が当業界に公知されており、これは、例えば免疫ブロット及び免疫沈殿分析を含み、例えばFAM19A5からの重複又は連続ペプチドが与えられた抗体(例えば、抗FAM19A5抗体)との反応性に対して試験される。エピトープの空間的立体形態を決定する方法は、当業界の技術及び本明細書に開示されたものを含み、例えば、X線結晶学、2次元核磁気共鳴及びHDX-MSを含む(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol 66,G.E.Morris,Ed.(1996)参照)。
【0097】
特定の実施形態において、抗体が結合したエピトープは、例えばNMR分光法、X線回折結晶学研究、ELISA分析、質量分光法と結合した水素/重水素交換(例えば、液体クロマトグラフィー電子噴霧質量分光法)、アレイ基盤オリゴ-ペプチドスキャニング分析、及び/又は突然変異誘発マッピング(例えば、部位指定突然変異誘発マッピング)によって決定され得る。X線結晶学の場合、結晶化は当業界に公知の方法のいずれかを用いて達成され得る(例えば、Giege R et al.,(1994)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50(Pt4):339-350;McPherson A(1990)Eur J Biochem 189:1-23;Chayen NE(1997)Structure 5:1269-1274;McPherson A(1976)J Biol Chem 251:6300-6303)。抗体:抗原結晶は、公知のX線回折技術を用いて研究でき、X-PLOR(Yale University,1992,Molecular Simulations,Inc.によって配布;例えば、Meth Enzymol(1985)volumes 114 & 115,eds Wyckoff HW et al.,;米国特許公開第2004/0014194号参照)、及びBUSTER(Bricogne G(1993)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 49(Pt1):37-60;Bricogne G(1997)Meth Enzymol 276A:361-423,ed Carter CW;Roversi P et al.,(2000)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 56(Pt 10):1316-1323)のようなコンピュータソフトウェアを用いて研究できる。突然変異誘発マッピング研究は、当業者に公知の任意の方法で行うことができる。アラニンスキャニング突然変異誘発技術を含む突然変異誘発技術に関する説明は、例えばChampe M et al.,(1995)J Biol Chem 270:1388-1394及びCunningham BC & Wells JA(1989)Science 244:1081-1085を参照する。
【0098】
用語“エピトープマッピング”は、抗体-抗原認識に対する分子決定の確認過程を指す。
【0099】
2つ以上の抗体と関連して用語“同じエピトープに結合する”とは、与えられた方法によって決定された時、抗体がアミノ酸残基の同じセグメントに結合するということを意味する。抗体が本明細書に開示の抗体と“FAM19A5上の同じエピトープ”に結合するか否かを決定する技術は、エピトープマッピング方法、例えば、エピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体の結晶のX線分析及び水素/重水素交換質量分光法(HDX-MS)を含む。他の方法は、抗体と抗原断片又は抗原の突然変異された変異体の結合をモニタリングし、ここで、抗原配列内でアミノ酸残基の変形による結合の損失が主にエピトープ成分の表示として見なされる。これに加えて、エピトープマッピング用コンピュータ組合せ方法が用いられてもよい。これらの方法は組合せファージディスプレイペプチドライブラリーから特定の短いペプチドを親和性単離できる関心抗体の能力に依存する。同じVH及びVL又は同じCDR1、2及び3配列を有する抗体は同じエピトープに結合すると予想される。
【0100】
“標的との結合に対して他の抗体と競合する”抗体は、残り抗体と標的の結合を(部分的に又は完全に)抑制する抗体を指す。2つの抗体が標的との結合に対して互いに競合するか否か、すなわち、一つの抗体がもう一つの抗体と標的の結合を抑制するか否かと抑制する程度は、公知の競合実験によって決定され得る。特定の実施形態において、抗体は他の抗体と標的の結合に対して競合し、この結合を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%まで抑制する。抑制又は競合のレベルは、抗体が“遮断抗体”(すなわち、標的とまずインキュベーションされた低温抗体)であるか否かによって異なり得る。競合分析は、例えば、Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harb Protoc;2006;doi:10.1101/pdbprot 4277又はEd Harlow and David Laneによる“Using Antibodies”(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,USA1999)の第11章に説明された通りに行われ得る。競合抗体は、同じエピトープ、重複エピトープ又は隣接エピトープ(例えば、立体障害によって証明されたとおり)に結合する。
【0101】
他の競合結合分析は、固体相直接又は間接放射性免疫分析(RIA)、固体相直接又は間接酵素免疫分析(EIA)、サンドウィッチ競合分析(Stahli et al.,Methods in Enzymology 9:242(1983)参照);固体相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al.,J.Immunol.137:3614(1986)参照);固体相直接標識化分析、固体相直接標識化サンドウィッチ分析(Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)参照);1-125標識を使用した固体相直接標識RIA(Morel et al.,Mol Immunol.25(1):7(1988)参照);固体相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al.,Virology 176:546(1990));及び直接標識化RIA(Moldenhauer et al.,Scand.J.Immunol.32:77(1990))を含む。
【0102】
“二重特異的”又は“二重機能性抗体”は、2つの異なる重鎖/軽鎖対と2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異的抗体はハイブリドーマの融合又はFab’断片の連結を含む様々な方法によって生成され得る(例えば、Songsivilai & Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315-321(1990);Kostelny et al.,J.Immunol.148,1547-1553(1992)参照)。
【0103】
本明細書において、用語“単クローン性抗体”は、特定エピトープに対して単一結合特異性及び親和性を示す抗体又は全ての抗体が特定エピトープに対して単一結合特異性及び親和性を示す抗体の組成物を指す。したがって、用語“ヒト単クローン性抗体”は、単一結合特異性を示し、ヒトジャームライン(germline)免疫グロブリン配列から由来した可変及び選択的定常領域を有する抗体又は抗体組成物をいう。一部の実施形態において、ヒト単クローン性抗体は、遺伝子導入非ヒト動物、例えば不滅化細胞に融合されたヒト重鎖導入遺伝子と軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、遺伝子導入マウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって生成される。
【0104】
本明細書において、用語“組換えヒト抗体”は、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に対して遺伝子導入或いは染色体導入(transchromosomal)した動物(例えば、マウス)から単離した抗体又はこれによって製造されたハイブリドーマ、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマ(transfectoma)から単離した抗体、(c)組換え、組合せヒト抗体ライブラリーから単離した抗体、及び(d)他のDNA配列に対するヒト免疫グロブリン遺伝子配列をスプライシングを伴う任意の他の手段によって製造、発現、生成又は単離した抗体のような、組換え手段によって製造、発現、生成又は単離した全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体はジャームライン遺伝子によって暗号化されるが、例えば抗体成熟化の間に発生する後続再配列及び突然変異を含む特定のヒトジャームライン免疫グロブリン配列を利用する可変及び定常領域を含む。当業界に公知のとおり(例えば、Lonberg(2005)Nature Biotech.23(9):1117-1125参照)、可変領域は、外来抗原に対して特異的な抗体を形成するように再配列した様々な遺伝子によって暗号化された、抗原結合ドメインを含有する。再配列に加えて、可変領域は、外来抗原に対する抗体の親和性を増加させるために多数の単一アミノ酸変化(体細胞突然変異又は超突然変異という。)によってさらに変形され得る。定常領域は抗原に対する追加の反応(すなわちアイソタイプスイッチ)で変わるだろう。したがって、抗原に反応して軽鎖及び重鎖免疫グロブリンポリペプチドを暗号化する再配列され体細胞突然変異された核酸分子は元来の核酸分子と配列同一性を有することができないが、実質的に同一又は類似であろう(すなわち、少なくとも80%同一の性を有する)。
【0105】
用語“ヒト抗体(HuMAb)”は、フレームワークとCDR領域が両方も、ヒトジャームライン免疫グロブリン配列から由来した可変領域を有する抗体を指す。また、この抗体が定常領域を含有すると、定常領域もヒトジャームライン免疫グロブリン配列から由来する。本明細書に開示された抗体はヒトジャームライン免疫グロブリン配列(例えば、試験管内無作為又は部位特定突然変異誘発によって又は生体内体細胞突然変異によって導入された突然変異)によって暗号化されないアミノ酸残基を含むことができる。しかし、本明細書に開示された“ヒト抗体”は、マウスのような他の哺乳類種のジャームラインから由来したCDR配列がヒトフレームワーク配列に結び付けられた抗体は含まない。用語“ヒト抗体”と“完全なヒト抗体”は同じ意味で使われる。
【0106】
用語“ヒト化された抗体”は、非ヒト抗体のCDRドメイン外のアミノ酸の一部、大部分又は全部がヒト免疫グロブリンから由来した相応するアミノ酸に置換された抗体を指す。抗体のヒト化された形態の一部の実施形態において、CDRドメイン外のアミノ酸の一部、大部分又は全部がヒト免疫グロブリンからのアミノ酸に置換され、1以上のCDR領域内のアミノ酸の一部、大部分又は全部はそのまま残る。アミノ酸の小さな添加、欠失、挿入、置換又は変形は、抗体が特定抗原に結合する能力をなくさない限り許容される。“ヒト化された抗体”は元来の抗体と類似の抗原特異性を保有する。
【0107】
“キメラ抗体”は、一つの種から可変領域が由来し、他の種から定常領域が由来した抗体、例えば、マウス抗体から可変領域が由来し、ヒト抗体から定常領域が由来した抗体のことを指す。
【0108】
本明細書で用語“交差反応する”とは、異なる種からのFAM19A5に結合する本明細書に開示された抗体の能力をいう。例えば、ヒトFAM19A5に結合する本明細書に開示された抗体はまた、他の種のFAM19A5(例えば、マウスFAM19A5)にも結合可能である。交差反応性は結合分析(例えば、SPR、ELISA)で精製された抗原との特異的反応性を検出することによって又はFAM19A5を生理学的に発現する細胞との結合、又は機能的相互作用を検出することによって測定され得る。交差反応性を決定する方法は、本明細書に開示の標準結合分析、例えば、BIACORETM2000 SPR機器(Biacore AB,Uppsala,Sweden)を使用したBIACORETM表面プラズモン共鳴(SPR)分析、又は流細胞計数(flow cytometric)技術を含む。
【0109】
用語“自然発生”は、自然で発見可能であることを指す。例えば、自然の出処から単離可能であり、実験室で人間によって意図的に変形されない有機体に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は自然発生的である。
【0110】
用語“ポリペプチド”は、少なくとも2つの連続連結されたアミノ酸残基を含む鎖のことを指し、鎖の長さに上限はない。タンパク質における一つ以上のアミノ酸残基は、制限されないが、グリコシル化、リン酸化又は二硫化物結合形成のような変形を含有し得る。“タンパク質”は、一つ以上のポリペプチドを含むことができる。
【0111】
本明細書において“核酸分子”は、DNA分子及びRNA分子を含む。核酸分子は一本鎖又は二本鎖であり得、cDNAであり得る。
【0112】
本明細書において用語“ベクター”は、それが連結された他の核酸を輸送できる核酸分子のことを指す。ベクターの一種類は“プラスミド”であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る円形の二本鎖DNAループのことを指す。ベクターの他の種類は、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得るウイルスベクターである。特定のベクター(例えば、バクテリア複製起源を有するバクテリアベクター及びエピゾーム哺乳類ベクター)は、それらが導入された宿主細胞で自己複製可能である。他のベクター(例えば、非エピゾーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入時に宿主細胞のゲノムに統合可能であり、これによって宿主ゲノムと共に複製される。また、特定のベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは本明細書において“組換え発現ベクター”(又は、簡単に“発現ベクター”)と言及される。一般に、組換えDNA技術において有用性を有する発現ベクターは主にプラスミドの形態である。本明細書において、“プラスミド”と“ベクター”は、プラスミドがベクターの最も多く用いられる形態であることから、同じ意味で使用可能である。しかし、ウイルス(例えば、複製結合レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス)ベクターのような他の形態の発現ベクターも含まれ、これらは同等の機能を果たす。
【0113】
本明細書において、用語“組換え宿主細胞”(又は、簡単に“宿主細胞”)は、細胞に自然的に存在しない核酸を含む細胞のことを指し、組換え発現ベクターが導入された細胞であり得る。かかる用語は、特定の該当細胞の他にそれら細胞の子孫も言及するものとして理解されるべきである。突然変異や環境的影響によってつながった世代では特定の変形が起こり得るので、このような子孫は実際に母細胞と同一であるとは言えなくとも、相変らず用語“宿主細胞”の範囲内に含まれる。
【0114】
本明細書において、用語“連結された”とは、2つ以上の分子のアソシエーションをいう。連結は、共有連結又は非共有連結であり得る。連結はまた、遺伝子連結(すなわち、組換え的に融合される。)であり得る。このような連結は化学的共役結合(conjugation)及び組換えタンパク質生成のような当業界に公知の様々な技術を用いて達成され得る。
【0115】
II.神経病性疼痛の治療方法
本発明ではFAM19A5に特異的に結合する拮抗剤(例えば、単離した単クローン性抗体又はその抗原結合断片)を対象に投与することを含む、必要とする対象において神経病症性疼痛を治療する方法を提供する。一部の実施形態において、神経病性疼痛は、中枢神経病性疼痛、すなわち中枢的体性感覚神経系を含めてCNSの全部位に影響を及ぼす負傷又は損傷(例えば、脳損傷及び脊髄損傷)による疼痛、又は発作、多発性硬化症、又は延髄外側梗塞(lateral medullary infarction)のような疾患又は障害から発生するか或いはそれと関連した疼痛である。一部の実施形態において、中枢神経病性疼痛は自発的であるか或いは刺激を誘発し得る。一部の実施形態において、中枢神経病性疼痛は力学的機械的異痛及び冷感異痛を含むことができる。中枢神経病性疼痛の症状には、例えば、灼熱痛、刺痛、電撃痛、圧迫痛、苦しい低温症、感覚異常及び不快感覚が一般的である(例:チクチク感、ピン及び針感、冷症及び圧迫感)。中枢神経病性疼痛の分布は、例えば、末梢領域において小さい領域から広い領域に達する領域、又は脊髄損傷において脳卒中又は身体の半分を覆ったり顔の片方を含んだり或いは身体又は四肢の反対側を含む領域を含む。脊髄損傷による中枢神経病性疼痛は、損傷部位において分節パターンで知覚される“損傷部位(at-level)”疼痛、及び損傷レベルの下方で感じられる“損傷部位下部(below-level pain)”疼痛を含む。一部の実施形態において、前記方法は、中枢神経病性疼痛、疼痛と関連した症状、疼痛の根本原因又はこれらの組合せを減少、逆転、緩和、改善、抑制又は鈍化又は予防する。
【0116】
一部の実施形態において、神経病性疼痛は、末梢神経病性疼痛、末梢神経系の任意の部位に影響を及ぼす損傷(例えば、運動神経、感覚神経、自律神経又はこれらの組合せの損傷)又は傷害による痛み、或いは疾病又は障害によるか又はそれに関連する痛みである。運動神経の損傷又は傷害は、筋肉弱化(例えば、背中、脚、ヒップ又は顔筋肉の弱化)、苦しい痙攣及び線維束性筋収縮(皮膚の下で統制されない筋肉痙攣)、筋肉萎縮(筋肉サイズの深刻な収縮)及び反射作用減少のような症状と関連がある。感覚神経の損傷又は傷害は皮膚において疼痛及び疼痛受容体の過敏性を含めて様々な症状を誘発し、異痛(例えば、一般に疼痛のない刺激による激しい疼痛)をもたらす。
【0117】
一部の実施形態において、本発明の方法は、FAM19A5拮抗剤(例えば、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片)をそれを必要とする対象に投与することを含む、一つ以上の類型の神経病性疼痛を治療する。一部の実施形態において、本発明の方法で治療可能な神経病性疼痛は神経痛であり、これは非制限的に次を含む:三叉神経痛(TN)(例:顔面又は口腔三叉神経領域内疼痛)、非定型三叉神経痛(ATN)、喉頭神経痛、帯状疱疹後神経痛(例えば、一つ以上の脊椎皮膚又は三叉眼神経分枝(trigeminal ophthalmic division)に分布した片側疼痛)、末梢神経損傷疼痛(例えば、病変神経の神経分布領域の疼痛、典型的に外傷、手術又は圧迫に対する遠位の損傷神経の神経分布領域の疼痛)、舌咽頭神経痛(例えば、首、舌及び耳の裏側に深刻な疼痛を誘発する第9脳神経の刺激)、坐骨神経痛、腰痛及び非定型顔面疼痛。一部の実施形態において、神経痛は、化学的刺激、炎症、外傷(手術を含む)、例えば近傍の構造物(例えば、腫瘍)による神経の圧迫又は感染に起因するか或いはこれと関連がある。一部の実施形態において、神経病性疼痛は求心路疼痛症候群であり、これは、制限されないが次を含む:脳又は脊髄損傷、脳卒中後疼痛、幻想疼痛、下半身麻痺、腕神経叢裂離損傷、腰髄神経根障害。一部の実施形態において、神経病性疼痛は、CRPS1及びCRPS2を含む複合局所疼痛症候群(CRPS)である。CRPSは制限なく含む。一部の実施形態において、CRPSと関連した症状は激しい疼痛、爪、骨及び皮膚の変化;及び影響を受けた四肢に触れる感覚の増加を含むことができる。一部の実施形態において、神経病性疼痛は神経病症(例えば、中枢又は末梢)である。神経病性疼痛の非制限的な例は、例えば、単一神経病性疼痛(単神経病症)及び多発神経病性疼痛(多発神経病症)を含む。
【0118】
一部の実施形態において、神経病性疼痛は、例えば、次のようなものを含む身体的損傷から発生するか或いはそれと関連がある:(1)神経圧迫(例えば、神経クラッシュ、神経伸張、神経絞扼又は不完全な神経切開)を含む外傷性損傷又は傷害;(2)脊髄損傷(例えば、脊髄の半分切開);(3)末梢神経の損傷又は傷害(例えば、運動神経、感覚神経又は自律神経又はこれらの組合せ)、(4)四肢切断;打撲傷;炎症(例えば、脊髄の炎症);又は手術手順;及び(5)反復的なストレス、例えば、長期間の関節グループの動きを必要とする反復的、鈍い及び/又は強力な活動(例えば、尺骨神経病症及び手根管症候群)。一部の実施形態において、前記方法は毒性製剤の露出に起因するか或いはこれと関連した神経病性疼痛を治療する。
【0119】
一部の実施形態において、神経病性疼痛は、例えば次のような一つ以上の疾病又は障害から発生するか或いはこれと関連する:(1)虚血性事例(例:脳卒中又は心臓麻痺)、(2)多発性硬化症、(3)代謝及び/又は内分泌疾患又は障害(例えば、糖尿病、代謝疾患、及び肥大症、成長ホルモンの過剰生成によって引き起こされ、関節を含む骨格部分の異常拡大によって特性化されて神経捕獲及び疼痛をもたらす病態)、(4)末梢神経への酸素供給を減少させて神経組織損傷を誘発する小さな血管疾患(例:血管炎、すなわち血管炎症)、(5)自己免疫疾患(例えば、シェーグレン症候群、ループス、リウマチ関節炎及びギランバレー症候群とも知られた急性炎症性脱髄鞘性神経病症)、(6)腎臓障害、(7)癌又は腫瘍(例えば、新生物腫瘍、神経腫、副腎生物症候群及び化学療法剤及び癌治療放射線からの毒性)、(8)感染(例えば、ヘルペス水痘帯状疱疹(帯状疱疹)、エプスタインバーウイルス、ウェストナイルウイルス、サイトメガロウイルス及び単純ヘルペスウイルス、AIDSのようなウイルスによる感染、又はライム病、ジフテリアのようなバクテリア及びハンセン病による感染)、(9)炎症性障害、(10)末梢神経障害(例:神経腫)、(11)遺伝的又は新生の遺伝因子障害(例えば、Charcot-Marie-Tooth障害)、(12)単神経病症、(13)多発神経病症又はこれらの組合せ。一部の実施形態において、神経病性疼痛は、糖尿病(類型I又は類型II)に起因するか或いはこれと関連する。一部の実施形態において、神経病性疼痛は糖尿病末梢神経病症である。
【0120】
一部の実施形態において、神経病性疼痛は、例えば、ダニ感染、ヘルペス水痘帯状疱疹、エプスタインバーウイルス、ウェストナイルウイルス、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、AIDSを含む感染源、又は毒性物質(例えば、薬物、アルコール、重金属(例えば、鉛、ヒ素、水銀)、又は産業物質(例えば、溶媒、接着剤からのヒューム)及び亜酸化窒素)を含む感染源への露出から発生するか或いはこれと関連する。
【0121】
一部の実施形態において、神経病性疼痛は、身体的損傷、感染、糖尿病、癌療法、アルコール中毒、切断、多発性硬化症、帯状疱疹、脊椎手術、坐骨神経痛(坐骨神経を通じた疼痛)、腰痛、三叉神経痛(例えば、顔面又は口腔三叉神経領域内の疼痛)のような神経痛、疼痛性多発神経病症(例えば、足の疼痛は下肢、大腿部及び手を含むように延長されることがある。)のような神経病性疼痛、又はこれらの組合せによって発生するか或いはこれと関連がある。一部の実施形態において、神経病性疼痛は三叉神経痛である。一部の実施形態において、神経病性疼痛は背中、脚、ヒップ又は顔の筋肉弱化と関連がある。一部の実施形態において、神経病性疼痛は神経、例えば脚、足、ヒップの神経又は顔面筋肉神経の圧迫によって引き起こされる。一部の実施形態において、神経病性疼痛は坐骨神経損傷を含む。一部の実施形態において、神経病性疼痛は坐骨神経痛である。
【0122】
一部の実施形態において、本発明の方法は、神経病性疼痛と関連した一つ以上の症状を逆転、緩和、改善、抑制、鈍化又は予防することができる。したがって、一態様において、本発明は、必要とする対象にFAM19A5に対する拮抗剤を投与することを含む、痛覚過敏症を改善させる方法を提供する。本明細書において用語“痛覚過敏症”は、苦しい刺激(例えば、針刺し又はホットプレート)に対する増加又は強調された反応のことを指す。一部の実施形態において、痛覚過敏は針刺し(機械的痛覚過敏)に関する。他の実施形態において、痛覚過敏はホットプレート(熱痛覚過敏)のような熱刺激に関する。一部の実施形態において、これを必要とする対象は慢性収縮性損傷(例えば、坐骨神経痛)を有する。一部の実施形態において、これを必要とする対象は糖尿病性末梢神経病症を有する。
【0123】
一部の実施形態において、FAM19A5拮抗剤をそれを必要とする対象(例えば、FAM19A5拮抗剤を投与していない神経病性疼痛対象)に投与すれば、対象が、基準対照群と比較して、機械的刺激に対してより高い閾値を有することができる。本明細書において用語“機械的刺激に対する閾値”とは、対象が刺激(例えば、引っ張ることによる刺激)に反応する前に(機械的刺激からの)圧迫の量を指す。したがって、相対的に高い閾値を有する対象は、相対的に低い閾値を有する対象と比較して遥かに多い量の機械的刺激に耐えるか或いは抵抗することができる。一部の実施形態において、本発明の方法は、基準対照群(例えば、FAM19A5投与前対象の閾値)と比較して対象の閾値を機械的刺激によって少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%又は少なくとも200%増加させることができる。
【0124】
一部の実施形態において、FAM19A5拮抗剤をそれを必要とする対象に投与すれば、基準対照群(FAM19A5拮抗剤を投与しない神経病症性疼痛対象)と比較して対象の熱刺激(例えば、ホットプレート)に対する遅延時間(すなわち、刺激と反応間の時間間隔)を増加させる。一部の実施形態において、本発明の方法は、基準対照群(例えば、FAM19A5投与前対象の閾値)と比較して熱刺激に対する対象の遅延時間を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%又は少なくとも200%増加させることができる。
【0125】
他の態様において、本発明は、感覚神経伝導速度増加を必要とする対象において感覚神経伝導速度を改善させる方法を提供する。本明細書において用語“感覚神経伝導速度”(SNCV)は、電気信号が末梢神経を通じて移動する速度のことを指す。健康な神経は損傷した神経に比べてより速くて強力な電気信号を送る。Chouhan S.,J Clin Diagn Res l0(l):CC0l-3(2016)参照。したがって、SNCV(例えば、感覚神経伝導速度試験)を測定することに役立つ試験は、対象の潜在的な神経損傷及び/又は機能障害を識別することに有用であり得る。一部の実施形態において、本発明の方法は、基準対照群(例えば、FAM19A5拮抗剤投与前対象の閾値)と比較して神経病性疼痛対象のSNCVを少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも150%又は少なくとも200%増加させることができる。
【0126】
神経病性疼痛を研究するための動物モデルが存在する。このような動物モデルの非制限的な例としては次を含む:(1)足に行く一つ以上の脊髄神経が結紮され切断される脊髄神経結紮(SNL)モデル(Kim SH及びChung JM.,Pain 50:355-363(1992)参照);(2)坐骨神経の一部が堅く結紮された部分坐骨結紮(PSL)モデル(Seltzer el.,Pain 43:205-218(1990)参照);(3)坐骨神経に4個の緩い縫合糸(chromic-gut)による結紮を配置し、縫合に対する免疫反応が神経膨脹及び神経収縮を誘発する慢性収縮損傷(CCI)モデル(例:実施例6参照);(4)腓腹神経(sural nerve)を残して共通神経網及び脛骨神経が切断される余分の神経損傷(SNI)モデル(Deosterd I.and Woolf C.J.,Pain 87:149-158(2000)参照);及び(5)STZ注射がランゲルハンス島β細胞で膵臓浮腫及び退行を誘発してネズミで実験的な糖尿病を誘発するSTZ注射によって誘発された糖尿病性ネズミ(例えば、実施例8;Akbarzadeh A.et al.,Indian.J.Clin.Biochem.22(2):60-64(2007)参照)。これらのモデルは動物において痛覚過敏を誘発し、これは、機械的及び/又は熱的刺激に対して強化された反応によって現れる。
【0127】
動物の機械的痛覚過敏検査にはフォンフレイ(Von Frey)試験を含み、ここで、曲げ力が互いに異なるフォンフレイモノフィラメントが足裏の表面に適用される。足引っ込め閾値は神経損傷後に急激に減少する。Li et al.,Pain 85:493-502(2000);実施例6参照。したがって、一部の実施形態において、本発明の方法は神経病性疼痛動物モデル(例えば、慢性収縮損傷モデル)で足引っ込めに対する閾値を増加させることができる。
【0128】
熱的痛覚過敏に対する試験は、足の裏の表面に焦点をおいた輻射熱源(例:ホットプレート)を使用することを含むことができ、足引っ込めに対する反応時間が測定される。神経損傷後、足引っ込めは損傷前よりも早い。Kim SH and Chung JM.Pain 50:355-363(1992);実施例8参照。一部の実施形態において、本発明の方法は、神経病性疼痛動物モデル(例えば、糖尿病性末梢神経病症モデル)で足引っ込め遅延を増加させることができる。
【0129】
一部の実施形態において、本発明の方法で治療する対象は、非ヒト動物、例えばネズミ又はマウスである。一部の実施形態において、この方法で治療する対象はヒトである。
【0130】
一部の実施形態において、FAM19A5拮抗剤(例えば、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分)、二重特異的分子、又は免疫接合体(immunoconjugate)、又は本発明の組成物は静脈内、経口、非経口、脊髄腔内、脳室内、肺、筋肉内、皮下、腹腔内、硝子体内又は脳室内に投与される。
【0131】
一部の実施形態において、FAM19A5拮抗剤又はその組成物は、神経病症性疼痛を治療するために一つ以上の追加薬剤と組み合わせて投与され得る。例えば、神経病性疼痛を治療するための非制限的な例示的な薬剤としては次を含む:ベンラファキシン(EFFEXOR(登録商標))、カルバマゼピン(CARBATROL(登録商標)、TEGRETOL(登録商標)、三叉神経痛の疼痛緩和のためにFDA承認)のような抗てんかん剤、ガバペンチン(NEURONTIN(登録商標)、GRALISE(登録商標)、帯状疱疹後神経痛(PHN)管理承認:帯状疱疹が治療された後1~3ヶ月間持続する疼痛)、プレガバリン(LYRICA(登録商標)、PHN、苦しい糖尿病性神経病性疼痛及び線維筋肉痛に対して承認)、リカドインのようなナトリウムチャネル遮断剤、クロニジン、フェントラミン、フェノキシベンザミン、レセルピン、デクスメデトミジンのようなアドレナリン薬物、モルヒネのようなオピオイド、及びアミトリプチリン、イミプラミン及びデュロキセチンのような抗うつ剤。
【0132】
一つ以上の追加治療薬物の容量及び投与は当業界に公知であり、例えば、それぞれの薬物の製品ラベルによって指示される。
【0133】
III.FAM19A5拮抗剤
一つ以上のFAM19A5拮抗剤は、神経病性疼痛を治療するために用いることができる。一部の実施形態において、FAM19A5拮抗剤は、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、dsRNA、アプタマー、FAM19A5を特異的に標的化するPNA(ペプチド核酸)、又はこれらを含むベクターである。他の実施形態において、FAM19A5拮抗剤はFAM19A5タンパク質に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分を暗号化するポリヌクレオチド、又はこれらのポリヌクレオチドを含むベクターである。
【0134】
本明細書に開示された方法に有用な抗体は、特定の機能的特性を特徴とする単クローン性抗体を含む。例えば、抗体は、可溶性FAM19A5及び膜結合FAM19A5を含むヒトFAM19A5に特異的に結合する。可溶性及び/又は膜結合ヒトFAM19A5に特異的に結合することに加えて、本明細書に開示された抗体はまた、(a)10nM以下のKDで可溶性ヒトFAM19A5に結合したり;(b)10nM以下のKDで膜結合ヒトFAM19A5に結合したり;或いは(a)及び(b)の両方である。
【0135】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、例えば、10-7M以下、10-8M以下、10-9M(1nM)以下、10-10M(0.1nM)以下、10-11M以下、又は10-12M以下、例えば10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、又は10-9M~10-7M、例えば10-12M、5×10-12M、10-11M、5×10-11M、10-10M、5×10-10M、10-9M、5×10-9M、10-8M、5×10-8M、10-7M、又は5×10-7MのKDの高い親和性で可溶性ヒトFAM19A5又は膜結合ヒトFAM19A5に特異的に結合する。様々な種のヒトFAM19A5に対する抗体の結合能力を評価する標準分析は当業界に公知されており、例えばELISA、ウェスタンブロット、及びRIAを含む。好適な分析が実施例に詳細に説明される。抗体の結合動力学(例えば、結合親和性)がまた、ELISA、BIACORE(登録商標)分析又はKINEXA(登録商標)のような当業界に公知の標準分析によって評価され得る。FAM19A5の機能的特性(例えば、リガンド結合)に対する抗体の効果を評価する分析が下記及び実施例においてより詳細に説明される。
【0136】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、例えばELISAによって決定された時、10-7M以下、10-8M(10nM)以下、10-9M(1nM)以下、10-10M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、10-9M~10-7M、又は10-8M~10-7MのKDで可溶性ヒトFAM19A5と結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、10nM以下、例えば0.1~10nM、0.1~5nM、0.1~1nM、0.5~10nM、0.5~5nM、0.5~1nM、1~10nM、1~5nM、又は5~10nMのKDで可溶性FAM19A5と結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、ELISAによって決定された時、約1pM、2pM、3pM、4pM、5pM、6pM、7pM、8pM、9pM、10pM、20pM、30pM、40pM、50pM、60pM、70pM、80pM、90pM、100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM、又は900pM、又は約1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、又は9nM、又は約10nM、20nM、30nM、40nM、50nM、60nM、70nM、80nM、又は90nMのKDで可溶性ヒトFAM19A5と特異的に結合する。
【0137】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、例えばELISAによって決定された時、10-7M以下、10-8M(10nM)以下、10-9M(1nM)以下、10-10M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、10-9M~10-7M、又は10-8M~10-7MのKDで膜結合ヒトFAM19A5と結合する。特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、ELISAによって決定された時、10nM以下、例えば0.1~10nM、0.1~5nM、0.1~1nM、0.5~10nM、0.5~5nM、0.5~1nM、1~10nM、1~5nM、又は5~10nMのKDで膜結合ヒトFAM19A5と特異的に結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、ELISAによって決定された時、約1pM、2pM、3pM、4pM、5pM、6pM、7pM、8pM、9pM、10pM、20pM、30pM、40pM、50pM、60pM、70pM、80pM、90pM、100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM、又は900pM、又は約1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、又は9nM、又は約10nM、20nM、30nM、40nM、50nM、60nM、70nM、80nM、又は90nMのKDで膜結合ヒトFAM19A5と結合する。
【0138】
一部の実施形態において、本明細書に開示された方法に適した抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、ヒトFAM19A5エピトープとの結合に対して本明細書に開示されたCDR又は可変領域を含む抗FAM19A5抗体と交差競合する(又は、結合を抑制する)。
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3と軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む基準抗体の結合を抑制し、ここで(i)基準抗体の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12及びSEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含み、基準抗体の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:23、SEQ ID NO:24及びSEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含んだり;(ii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含んだり;(iii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含んだり;(iv)重鎖CDR1はSEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:34のアミノ酸配列を含んだり;(v)重鎖CDR1はSEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:90のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:91のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:93のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:94のアミノ酸配列を含んだり;(vi)重鎖CDR1はSEQ ID NO:95のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:98のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:99のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:100のアミノ酸配列を含んだり;(vii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:101のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:102のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:103のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:104のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:106のアミノ酸配列を含んだり;(viii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:108のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:109のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:110のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:111のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:112のアミノ酸配列を含んだり;(ix)重鎖CDR1はSEQ ID NO:113のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:114のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:115のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:116のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:117のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含んだり;(x)重鎖CDR1はSEQ ID NO:119のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:120のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:121のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:122のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:123のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:124のアミノ酸配列を含んだり;(xi)重鎖CDR1はSEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含んだり;(xii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:131のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:132のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:133のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:134のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:135のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:136のアミノ酸配列を含んだり;(xiii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:137のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:138のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:139のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:140のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:141のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:142のアミノ酸配列を含んだり;(xiv)重鎖CDR1はSEQ ID NO:143のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:144のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:145のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:146のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:147のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:148のアミノ酸配列を含んだり;又は(xv)重鎖CDR1はSEQ ID NO:149のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:150のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:151のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:152のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:153のアミノ酸配列を含み、及び軽鎖CDR3はSEQ ID NO:154のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、基準抗体の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、表2に提示されたCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、そして基準抗体の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、表3に提示されたCDR1、CDR2及びCDR3配列を含む。
【0139】
一部の実施形態において、基準抗体は(a)SEQ ID NO:35及び39をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(b)SEQ ID NO:36及び40をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(c)SEQ ID NO:37及び41をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(d)SEQ ID NO:38及び42をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(e)SEQ ID NO:155及び166をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(f)SEQ ID NO:156及び167をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(g)SEQ ID NO:157及び168をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(h)SEQ ID NO:158及び169をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(i)SEQ ID NO:159及び170をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(j)SEQ ID NO:160及び171をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(k)SEQ ID NO:161及び172をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(l)SEQ ID NO:162及び173をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(m)SEQ ID NO:163及び174をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(n)SEQ ID NO:164及び175をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;又は(o)SEQ ID NO:165及び176をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む。一部の実施形態において、基準抗体は重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは表4に提示されたようなアミノ酸配列を含み、VLは表5に提示されたアミノ酸配列を含む。
【0140】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はこのような基準抗体とヒトFAM19A5の結合を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%又は100%まで抑制する。競合抗体は同一のエピトープ、重複エピトープ又は隣接エピトープ(例えば、立体障害によって証明される)と結合する。両抗体が標的との結合に対して互いに競合するか否かは、RIA及びEIAのような当業界に公知の競合実験によって決定され得る。
【0141】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3と軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む本明細書に開示された基準抗体と同じFAM19A5エピトープに結合し、ここで、(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含んだり;(ii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含んだり;(iii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含んだり;(iv)重鎖CDR1はSEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:34のアミノ酸配列を含んだり;(v)重鎖CDR1はSEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:90のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:91のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:93のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:94のアミノ酸配列を含んだり;(vi)重鎖CDR1はSEQ ID NO:95のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:98のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:99のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:100のアミノ酸配列を含んだり;(vii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:101のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:102のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:103のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:104のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:106のアミノ酸配列を含んだり;(viii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:108のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:109のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:110のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:111のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:112のアミノ酸配列を含んだり;(ix)重鎖CDR1はSEQ ID NO:113のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:114のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:115のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:116のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:117のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:118のアミノ酸配列を含んだり;(x)重鎖CDR1はSEQ ID NO:119のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:120のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:121のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:122のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:123のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:124のアミノ酸配列を含んだり;(xi)重鎖CDR1はSEQ ID NO:125のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:126のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:127のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:128のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:129のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:130のアミノ酸配列を含んだり;(xii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:131のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:132のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:133のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:134のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:135のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:136のアミノ酸配列を含んだり;(xiii)重鎖CDR1はSEQ ID NO:137のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:138のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:139のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:140のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:141のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:142のアミノ酸配列を含んだり;(xiv)重鎖CDR1はSEQ ID NO:143のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:144のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:145のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:146のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:147のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:148のアミノ酸配列を含んだり;又は(xv)重鎖CDR1はSEQ ID NO:149のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR2はSEQ ID NO:150のアミノ酸配列を含み、重鎖CDR3はSEQ ID NO:151のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:152のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:153のアミノ酸配列を含み、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:154のアミノ酸配列を含む。
【0142】
一部の実施形態において、基準抗体は(a)SEQ ID NO:35及び39をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(b)SEQ ID NO:36及び40をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(c)SEQ ID NO:37及び41をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(d)SEQ ID NO:38及び42をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(e)SEQ ID NO:155及び166をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(f)SEQ ID NO:156及び167をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(g)SEQ ID NO:157及び168をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(h)SEQ ID NO:158及び169をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(i)SEQ ID NO:159及び170をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(j)SEQ ID NO:160及び171をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(k)SEQ ID NO:161及び172をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(l)SEQ ID NO:162及び173をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(m)SEQ ID NO:163及び174をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;(n)SEQ ID NO:164及び175をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;又は(o)SEQ ID NO:165及び176をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列を含む。
【0143】
両抗体が同じエピトープに結合するか否かを決定する技術は、例えばエピトープマッピング方法、例えばエピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体結晶のx-線分析及び水素/重水素交換質量分光法(HDX-MS)、抗体と抗原断片又は抗原の突然変異された変異体の結合をモニタリングする方法(ここで、抗原配列内でアミノ酸残基の変形による結合は、損失が主にエピトープ成分の表示として見なされる)、エピトープマッピングのためのコンピュータ組合せ方法を含む。
【0144】
本明細書に開示された方法に有用な抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、例えば抗体とヒトFAM19A5の断片との結合によって決定された時、成熟したヒトFAM19A5の少なくとも一つのエピトープと結合し得る。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、TLDRDSSQPRRTIARQTARC(SEQ ID NO:6又はSEQ ID NO:2のアミノ酸残基42~61)のアミノ酸配列内に位置した断片、例えばSEQ ID NO:6の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個アミノ酸を有するエピトープと結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、SEQ ID NO:2のアミノ酸残基46~51(すなわち、DSSQPR)、例えばアミノ酸残基46、50、及び52(すなわち、D---P-R)、例えばアミノ酸残基46、47、48、及び50(すなわち、DSS-P)に該当する一つ以上のアミノ酸でSEQ ID NO:6に結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はCDMLPCLEGEGCDLLINRSG(SEQ ID NO:9又はSEQ ID NO:2のアミノ酸残基90~109)のアミノ酸配列内に位置した断片、例えばSEQ ID NO:9の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個アミノ酸を有するエピトープと結合する。特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、SEQ ID NO:4の一つ以上のアミノ酸残基99~107(すなわち、EGCDLLINR)、例えばアミノ酸残基102、103、105、及び107(すなわち、DL-I-R)、例えばアミノ酸残基99、100、102、103、105、及び107(すなわち、EG-DL-I-R)、例えばアミノ酸残基99、100、及び107(すなわち、EG------R)でSEQ ID NO:9に結合する。
【0145】
一部の実施形態において、少なくとも一つのエピトープは、SEQ ID NO:6と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同じアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、少なくとも一つのエピトープは、SEQ ID NO:9と少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同じアミノ酸配列を有する。
【0146】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、SEQ ID NO:5、6、7、8、9、又は10、又はSEQ ID NO:5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸配列内に位置した断片、例えばSEQ ID NO:5、6、7、8、9、又は10の3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個アミノ酸を有するエピトープである、ヒトFAM19A5にのみ結合する。
【0147】
一部の実施形態において、本発明の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、SEQ ID NO:6又はその断片と自生立体形態(すなわち不変性)状態で結合する。一部の実施形態において、本発明の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、SEQ ID NO:9又はその断片と自生立体形態(すなわち不変性)状態で結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、グリコシル化及び非グリコシル化ヒトFAM19A5の両方に結合する。
【0148】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、1以上の追加のFAM19A5エピトープによって結合する。したがって、特定の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、(i)SEQ ID NO:6のエピトープ及び追加のエピトープ、又は(ii)SEQ ID NO:9のエピトープ及び追加のエピトープに結合する。他の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、SEQ ID NO:5のエピトープ、SEQ ID NO:9のエピトープ、及び追加のエピトープに結合し得る。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、SEQ ID NO:6のエピトープ、SEQ ID NO:10のエピトープ、及び追加のエピトープに結合する。
【0149】
一部の実施形態において、一つ以上の追加のFAM19A5エピトープは、QLAAGTCEIVTLDR(SEQ ID NO:5、エピトープF1)、TLDRDSSQPRRTIARQTARC(SEQ ID NO:6、エピトープF2)、TARCACRKGQIAGTTRARPA(SEQ ID NO:7、エピトープF3)、ARPACVDARIIKTKQWCDML(SEQ ID NO:8、エピトープF4)、CDMLPCLEGEGCDLLINRSG(SEQ ID NO:9、エピトープF5)、又はNRSGWTCTQPGGRIKTTTVS(SEQ ID NO:10、エピトープF6)、又はSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、又はこれらの任意の組合せのアミノ酸配列内に位置した断片から選択される。SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、又はSEQ ID NO:10のアミノ酸配列内に位置した断片は、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、又はSEQ ID NO:10のいずれかの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個アミノ酸を有する断片を含む。一部の実施形態において、一つ以上の追加のFAM19A5エピトープは、SEQ ID NO:5、6、7、8、9、又は10、又はSEQ ID NO:5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸配列内に位置した断片、例えばSEQ ID NO:5、6、7、8、9、又は10の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20個のアミノ酸を有する断片、又はこれらの任意の組合せから選択される。一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、その固有形態(すなわち、変性されない)において一つ以上の追加エピトープのいずれか一つに結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、一つ以上の追加のFAM19A5エピトープのグリコシル化及び非グリコシル化形態にともに結合する。
【0150】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、EP2、EP4、及び/又はEP8として確認された少なくとも一つのFAM19A5エピトープに結合し、ここで、EP2はアミノ酸DSSQP(SEQ ID NO:66)を含み、EP4はアミノ酸ARCACRK(SEQ ID NO:68)を含み、EP8はアミノ酸TCTQPGGR(SEQ ID NO:72)を含む。一部の実施形態において、少なくとも一つのエピトープは、EP2、EP4、又はEP8と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同じアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はEP2にのみ結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はEP4及びEP8に結合する。
【0151】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、EP6、EP7、又はEP8として確認された少なくとも一つのFAM19A5エピトープに結合し、ここで、EP6はアミノ酸KTKQWCDML(SEQ ID NO:70)を含み、EP7はアミノ酸GCDLLINR(SEQ ID NO:71)を含み、EP8はアミノ酸TCTQPGGR(SEQ ID NO:72)を含む。一部の実施形態において、少なくとも一つのエピトープはEP6、EP7、又はEP8と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同じアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はEP6、EP7、又はEP8にのみ結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はEP6、EP7、及びEP8に結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はEP7及びEP8に結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はEP7に結合する。
【0152】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はSEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:67、SEQ ID NO:68、SEQ ID NO:69、SEQ ID NO:70、SEQ ID NO:71、SEQ ID NO:72、及びこれらの任意の組合せで構成される群から選ばれる一つ以上のFAM19A5エピトープに結合する。
【0153】
一部の実施形態において、例えば、免疫分析(例えば、ELISA)、表面プラズモン共鳴、又は力学的排除分析によって測定された時、FAM19A5ファミリーの他のタンパク質に比べて20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はさらに高い親和性でFAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)と結合する抗体又はその抗原結合部分が提供される。特定の実施形態において、例えば免疫分析によって測定された時、FAM19A5ファミリーの他のタンパク質と交差反応性無しでFAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に結合する抗体又はその抗原結合部分が開示される。
【0154】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は自生抗体でないか或いは自然発生抗体ではない。例えば、抗FAM19A5抗体は、例えば、より多いか少ない、又は互いに異なる類型の翻訳後修飾(post-translational modification)を有することによって、自然発生の抗体のそれとは異なる翻訳後修飾を有する。
【0155】
IV.例示的な抗FAM19A5抗体
本発明の方法に使用可能な特定の抗体は、実施例1で単離した抗体1-65のCDR及び/又は可変領域配列を有する抗体、例えば単クローン性抗体の他にも、それらの可変領域又はCDR配列に対して少なくとも80%の同一性(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の同一性)を有する抗体である。異なる抗FAM19A5抗体に対するVH及びVL CDRのアミノ酸配列はそれぞれ表2及び3に提供される。Kabatナンバリングスキーム(上記を参照)を用いて下記抗体に対するCDRを確認した:1-65、3-2、2-13、1-28、P2-C12、13B4、13F7、15A9、P1-A03、P1-A08、P1-F02、P2-A01、P2-A03、P2-F07、P2-F11、SS01-13、SS01-13-s5及びS5-2.GKNG.IMGTナンバリングシステム(上記を参照)を用いて下記抗体に対するCDRを確認した:1-7A-IT、Low-PI、1-30、1-17、1-32、4-11、6-10、2-13D、2-13D-37、2-13D-37-1.5W-41及び2-13D-37-3W-16。本発明の異なる抗FAM19A5抗体のVH及びVLアミノ酸配列はそれぞれ表4及び5に提供される。
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は重鎖及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域はSEQ ID NO:35-38、155-165、203、223-226、254、257、271又は275のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、単離した抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はSEQ ID NO:35-38、155-165、203、223-226、254、257、271又は275からなる群から選ばれる重鎖可変領域のCDRを含む。
【0168】
一部の実施形態において、単離した抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は重鎖及び軽鎖可変領域を含み、ここで、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:39-42、166-176、204、227-234又は272のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、単離した抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分はSEQ ID NO:39-42、166-176、227-234又は272からなる群から選ばれる軽鎖可変領域のCDRを含む。
【0169】
一部の実施形態において、単離した抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、SEQ ID NO:35-38、155-165、203、223-226、254、257、271又は275からなる群から選ばれる重鎖可変領域のCDR及びSEQ ID NO:39-42、166-176、227-234又は272からなる群から選ばれる軽鎖可変領域のCDRを含む。
【0170】
一部の実施形態において、単離した抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は重鎖及び軽鎖可変領域を含み、ここで、(i)重鎖可変領域はSEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含み;(ii)重鎖可変領域はSEQ ID NO:36のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:40のアミノ酸配列を含み;(iii)重鎖可変領域はSEQ ID NO:35のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:39のアミノ酸配列を含み;(iv)重鎖可変領域はSEQ ID NO:38のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:42のアミノ酸配列を含み;(v)重鎖可変領域はSEQ ID NO:155のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:166のアミノ酸配列を含み;(vi)重鎖可変領域はSEQ ID NO:156のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:167のアミノ酸配列を含み;(vii)重鎖可変領域はSEQ ID NO:157のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:168のアミノ酸配列を含み;(viii)重鎖可変領域はSEQ ID NO:158のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:169のアミノ酸配列を含み;(ix)重鎖可変領域はSEQ ID NO:159のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:170のアミノ酸配列を含み;(x)重鎖可変領域はSEQ ID NO:160のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:171のアミノ酸配列を含み;(xi)重鎖可変領域はSEQ ID NO:161のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:172のアミノ酸配列を含み;(xii)重鎖可変領域はSEQ ID NO:162のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:173のアミノ酸配列を含み;(xiii)重鎖可変領域はSEQ ID NO:163のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:174のアミノ酸配列を含み;(xiv)重鎖可変領域はSEQ ID NO:164のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:175のアミノ酸配列を含み;及び(xv)重鎖可変領域はSEQ ID NO:165のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:176のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、単離した抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHは表4に提示されたようなVH配列を含み、そしてVLは表5に提示されたVL配列を含む。
【0171】
一部の実施形態において、単離した抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域はSEQ ID NO:35-38、155-165、203、223-226、254、257、271又は275に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む。
【0172】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、軽鎖可変領域はSEQ ID NO:39-42、166-176、227-234、又は272に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む。
【0173】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は重鎖及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域はSEQ ID NO:35-38、155-165、203、223-226、254、257、271又は275に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み;及び軽鎖可変領域はSEQ ID NO:39-42、166-176、227-234又は272に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は少なくとも約100%同じアミノ酸配列を含む。
【0174】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体、又はその抗原結合部分は次を含む:
(a)SEQ ID NO:35及び39をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(b)SEQ ID NO:36及び40をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(c)SEQ ID NO:37及び41をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(d)SEQ ID NO:38及び42をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(e)SEQ ID NO:155及び166をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(f)SEQ ID NO:156及び167をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(g)SEQ ID NO:157及び168をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(h)SEQ ID NO:158及び169をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(i)SEQ ID NO:159及び170をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(j)SEQ ID NO:160及び171をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(k)SEQ ID NO:161及び172をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(l)SEQ ID NO:162及び173をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(m)SEQ ID NO:163及び174をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列;
(n)SEQ ID NO:164及び175をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列、又は
(o)SEQ ID NO:165及び176をそれぞれ含む重鎖及び軽鎖可変領域配列
を含む。
【0175】
特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、(i)1-65の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又は1-65の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ;(ii)3-2の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又は3-2の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(iii)2-13の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又は2-13の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(iv)1-28の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又は1-28の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(v)P2-C12の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又はP2-C12の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(vi)13B4の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又は13B4の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(vii)13F7の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又は13F7の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(viii)15A9の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又は15A9の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(ix)P1-A03の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又はP1-A03の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(x)P1-A08の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又はP1-A08の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(xi)P1-F02の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又はP1-F02の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(xii)P2-A01の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又はP2-A01の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(xiii)P2-A03の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又はP2-A03の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;(xiv)P2-F07の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又はP2-F07の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せ;又は(xv)P2-F11の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの組合せ、及び/又はP2-F11の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3、又はこれらの任意の組合せを含む。本明細書に開示された各抗FAM19A5抗体に対するVH CDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列が表2に提供される。本明細書に開示された各抗FAM19A5抗体に対するVL CDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列は表3に提供される。
【0176】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、
(a)SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むVH CDR2;及び/又は
(c)SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むVH CDR3
を含む。
【0177】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記VH CDRのうち1個、2個、又は3個全部を含む。
【0178】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、
(a)SEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(b)SEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(c)SEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含む。
【0179】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記VL CDRのうち1個、2個、又は3個全部を含む。
【0180】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、
(a)SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(c)SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むVH CDR3;
(d)SEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(e)SEQ ID NO:30のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(f)SEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含む。
【0181】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むVH CDR2;及び/又は
(c)SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むVH CDR3
を含む。
【0182】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、前記VH CDRのうち1個、2個、又は3個全部を含む。
【0183】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(b)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(c)SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含む。
【0184】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、前記VL CDRのうち1個、2個、又は3個全部を含む。
【0185】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(c)SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むVH CDR3
(d)SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(e)SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(f)SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含む。
【0186】
一部の実施形態において、ヒトFAM19A5に特異的に結合する抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むVH CDR2;及び/又は
(c)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むVH CDR3
を含む。
【0187】
一部の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、前記VH CDRのうち1個、2個、又は3個全部を含む。
【0188】
一部の実施形態において、ヒトFAM19A5に特異的に結合する抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(b)SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(c)SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含む。
【0189】
一部の実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、前記VL CDRのうち1個、2個、又は3個全部を含む。
【0190】
一部の実施形態において、ヒトFAM19A5に特異的に結合する抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(c)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むVH CDR3
(d)SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(e)SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(f)SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含む。
【0191】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含むVH CDR2;及び/又は
(c)SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含むVH CDR3
を含む。
【0192】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、前記VH CDRのうち1個、2個、又は3個全部を含む。
【0193】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(b)SEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(c)SEQ ID NO:34のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含む。
【0194】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、前記VL CDRのうち1個、2個、又は3個全部を含む。
【0195】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、
(a)SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含むVH CDR1;
(b)SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含むVH CDR2;
(c)SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含むVH CDR3
(d)SEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含むVL CDR1;
(e)SEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含むVL CDR2;及び/又は
(f)SEQ ID NO:34のアミノ酸配列を含むVL CDR3
を含む。
【0196】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、前記CDRのうち1個、2個、3個、4個、5個、又は6個を含む。
【0197】
本明細書に開示されたVHドメイン、又はその一つ以上のCDRは、重鎖、例えば全長重鎖を形成するために定常ドメインに連結され得る。類似に、本明細書に開示されたVLドメイン、又はその一つ以上のCDRは、軽鎖、例えば全長軽鎖を形成するために定常ドメインに連結され得る。全長重鎖と全長軽鎖は組み合わせられて全長抗体を形成することができる。
【0198】
したがって、特定の実施形態において、抗体軽鎖及び重鎖、例えば本発明の方法において有用な別途の軽鎖及び重鎖を含む抗体が開示される。軽鎖と関連して、特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体の軽鎖はカッパ軽鎖である。他の特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体の軽鎖はラムダ軽鎖である。さらに他の特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体の軽鎖はヒトカッパ軽鎖又はヒトラムダ軽鎖である。特定の実施形態において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)ポリペプチドに特異的に結合する、本発明の方法において有用な抗体は、本明細書で開示された任意のVL又はVL CDRアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、ここで、軽鎖の定常領域はヒトカッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)ポリペプチドに特異的に結合する、本発明の方法において有用なものと開示された抗体は、VL又はVL CDRアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、ここで、軽鎖の定常領域はヒトラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。ヒト定常領域配列の非制限的な例は当業界に公知であり、例えば、米国特許第5,693,780号及びKabat EA et al.,(1991)(同上)を参照する。
【0199】
重鎖と関連して、一部の実施形態において、本明細書に開示された抗体の重鎖は、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)又はミュー(μ)重鎖であり得る。他の特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体の重鎖は、ヒトアルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)又はミュー(μ)重鎖を含むことができる。一部の実施形態において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する、本明細書に有用なものと開示された抗体は、VH又はVH CDRアミノ酸配列を含む重鎖を含み、ここで、重鎖の定常領域はヒトガンマ(γ)重鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する、本明細書に開示された抗体は、VH又はVH CDRアミノ酸配列を含む重鎖を含み、ここで、重鎖の定常領域は、本明細書に開示又は当業界に公知のヒト重鎖のアミノ酸配列を含む。ヒト定常領域配列の非制限的な例は当業界に公知であり、例えば、米国特許第5,693,780号及びKabat EA et al.,(1991)(同上)を参照する。
【0200】
一部の実施形態において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する、本明細書に開示された抗体は、VH又はVH CDR及びVL又はVL CDRを含むVLドメイン及びVHドメインを含み、ここで、定常領域はIgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY免疫グロブリン分子、又はヒトIgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY免疫グロブリン分子の定常領域のアミノ酸配列を含む。他の特定の実施形態において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する、本明細書に開示された抗体は、任意のアミノ酸配列を含むVLドメイン及びVHドメインを含み、ここで、定常領域はIgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の任意の亜型(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)の定常領域のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、定常領域は亜型(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)及びアロタイプ(例えば、G1m、G2m、G3m及びnG4m)及びこれらの変異体を含む、自然発生である、ヒトIgGの定常領域のアミノ酸配列を含む(例えば、Vidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)及びJefferis R and Lefranc MP,mAbs 1:4,1-7(2009)参照)一部の実施形態において、定常領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4、又はこれらの変異体の定常領域のアミノ酸配列を含む。
【0201】
特定の実施形態において、本発明の方法において有用であると開示された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、Fcエフェクター機能、例えば補体依存性細胞毒性(CDC)及び/又は抗体依存性細胞飽食作用(ADCP)を有しない。エフェクター機能はFc領域によって媒介され、先天免疫システムのエフェクター細胞上でC1q(補体)及びIgG-Fc受容体(FcγR)に対して非常に重なった結合部位を含有するので、Fc領域のCH2ドメインにおいてヒンジ領域と最も近くにある残基が抗体のエフェクター機能を担当する。また、IgG2及びIgG4抗体は、IgG1及びIgG3抗体に比べてより低いレベルのFcエフェクター機能を有する。抗体のエフェクター機能は、次のような当業界に公知の異なる接近法によって減少又は回避され得る:(1)Fc領域を欠如した抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、単鎖Fv(scFv)、又はモノマーVH又はVLドメインで構成されたsdAb)の使用;(2)糖が付着した残基の欠失又は変更、酵素的に糖の除去、グリコシル化抑制剤の存在の下に培養された細胞において抗体の生成、又はタンパク質をグリコシル化できない細胞(例えば、バクテリア宿主細胞)における抗体の発現(米国特許公開第20120100140号参照)によって生成され得る、無グリコシル化抗体の生成;(3)エフェクター機能が減少したIgG亜型からのFc領域(例えば、IgG2又はIgG4抗体からのFc領域又はIgG2又はIgG4抗体からのCH2ドメインを含むキメラFc領域)の利用(米国特許公開第20120100140号及びLau C et al.,J Immunol.191:4769-4777(2013)参照);及び(4)Fc機能が減少した又はない突然変異を有するFc領域の生成(米国特許公開第20120100140号及びそこに引用された米国出願及びPCT出願とAn et al.,mAbs 1:6,572-579(2009)参照)。
【0202】
したがって、一部の実施形態において、本発明の方法において有用なものと開示された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単鎖Fv(scFv)、又はモノマーVH又はVLドメインで構成されたsdAbである。このような抗体断片は当業界に公知であり、上述されている。
【0203】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、Fcエフェクター機能が減少した又はないFc領域を含む。一部の実施形態において、定常領域はヒトIgG2又はIgG4のFc領域のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体はIgG2/IgG4アイソタイプのものである。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、IgG4アイソタイプのIgG抗体からのCH2ドメインとIgG1アイソタイプのIgG抗体からのCH3ドメインを含むキメラFc領域、又はIgG2からのヒンジ領域とIgG4からのCH2領域を含むキメラFc領域、又は減少する又はないFc機能をもたらす突然変異を有するFc領域を含む。Fcエフェクター機能が減少した又はないFc領域は当業界に公知のものを含む(例えば、Lau C et al.,J Immunol.191:4769-4777(2013);An et al.,mAbs 1:6,572-579(2009);及び米国特許公開第20120100140号及びそこに引用された米国特許と特許公開及びPCT公開を参照)。また、Fcエフェクター機能が減少した又はないFc領域は当業者によって容易に製造可能である。
【0204】
V.核酸分子
本発明の他の態様は、本発明の方法において有用な抗体又はその抗原結合部分のいずれか一つを暗号化する一つ以上の核酸分子に関する。核酸は全体細胞に、細胞溶解物に、又は部分的に精製された形態や実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、アルカリ性/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、制限酵素、アガロースゲル電気泳動及び当業界に公知の他の技術を含む標準技術によって、他の細胞成分又は他の汚染物、例えば他の細胞核酸(例えば、他の染色体DNA、例えば自然で単離したDNAに連結された染色体DNA)又はタンパク質から精製された時、“単離されたり”又は“実質的に純粋である”(F Ausubel,et al.,ed.(1987)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley Interscience,New York参照)。本明細書に開示された核酸は、例えばDNA又はRNAであり得、イントロン配列を含有してもよく、含有しなくてもよい。特定の実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0205】
本明細書に開示された核酸は、標準分子生物学技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、下記詳述されるヒト免疫グロブリン遺伝子を有する遺伝子導入マウスから製造されたハイブリドーマ)によって発現した抗体の場合、このハイブリドーマによって製造された抗体の軽鎖及び重鎖を暗号化するcDNAは、標準PCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリー(例えば、ファージディスプレイ技術を利用)から得られた抗体の場合、この抗体を暗号化する核酸がライブラリーから回収され得る。
【0206】
本明細書に開示された特定核酸分子は、本発明の抗FAM19A5抗体のVH及びVL配列を暗号化するものである。このような抗体のVH配列を暗号化する例示的なDNA配列がSEQ ID NO:43-46、177、205、235-243、255、258、273、及び276(表6参照)に提示される。このような抗体のVL配列を暗号化する例示的なDNA配列は、SEQ ID NO:47-50、178、206、244-252、256、259、274、及び277(表7参照)に提示される。
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
明細書に開示された抗FAM19A5抗体及びその抗原結合断片の製造方法は、信号ペプチドと共に重鎖及び軽鎖を暗号化するヌクレオチド配列、例えば、それぞれSEQ ID NO:43及び47、SEQ ID NO:44及び48、SEQ ID NO:45及び49、SEQ ID NO:46及び50、SEQ ID NO:177及び178を含む細胞株で抗体の関連した重鎖及び軽鎖を発現することを含むことができる。これらのヌクレオチド配列を含む宿主細胞は本発明に含まれる。
【0213】
VH及びVLセグメントを暗号化するDNA断片が得られた後、これらのDNA断片は、例えば可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子又はscFv遺伝子に転換するために、標準組換えDNA技術によってさらに操作され得る。それらの操作において、VL-又はVH-暗号化DNA断片は、抗体定常領域又は可撓性リンカーのような他のタンパク質を暗号化する他のDNA断片に作動可能に連結される。用語“作動可能に連結された”とは、2個のDNA断片によって暗号化されたアミノ酸配列がイン-フレーム(in-frame)を維持するように2個のDNA断片がつながることを意味する。
【0214】
VH領域を暗号化する単離したDNAは、VH-暗号化DNAを重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2及び/又はCH3)を暗号化する他のDNA分子に作動可能に連結することによって全長重鎖遺伝子に転換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当業界に公知であり(例えば、Kabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition,US Department of Health and Human Services,NIH Publication No 91-3242参照)、これらの領域を含むDNA断片を標準PCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域、例えばIgG2及び/又はIgG4定常領域であり得る。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VH-暗号化DNAは単に重鎖CH1定常領域のみを暗号化する他のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0215】
VL領域を暗号化する単離したDNAは、VL-暗号化DNAを軽鎖定常領域CLを暗号化する他のDNA分子に作動可能に連結することによって全長軽鎖遺伝子に転換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当業界に公知であり(例えば、Kabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition,US Department of Health and Human Services,NIH Publication No 91-3242参照)、これらの領域を含むDNA断片を標準PCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域はカッパ又はラムダ定常領域であり得る。
【0216】
scFv遺伝子を生成するために、VH-及びVL-暗号化DNA断片が可撓性リンカーを暗号化する、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3を暗号化する他の断片に作動可能に連結され、これによってVLとVH領域が可撓性リンカーによって結合された状態でVH及びVL配列が連続単鎖タンパク質として発現し得る(例えば、Bird et al.,(1988)Science242:423-426;Huston et al.,(1988)Proc Natl Acad Sci USA 85:5879-5883;McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552-554参照)。
【0217】
一部の実施形態において、本発明は抗体又はその抗原結合部分を暗号化するヌクレオチド配列を含む単離した核酸分子を含むベクターを提供する。他の実施形態において、ベクターは遺伝子療法に用いられ得る。
【0218】
本発明に好適なベクターは、発現ベクター、ウイルスベクター、及びプラスミドベクターを含む。一部の実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。
【0219】
本発明で用いられたように、発現ベクターが適切な宿主細胞に導入された時、挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳のための必須要素、又はRNAウイルスベクターの場合、複製及び翻訳のための必須要素を含有する任意の核酸構成物である。発現ベクターはプラスミド、ファージミド、ウイルス、及びこれらの誘導体を含むことができる。
【0220】
VI.抗体生成
本明細書に開示された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、抗体の合成のための当業界に公知の任意の方法によって、例えば化学的合成又は組換え発現技術によって生成され得る。本明細書に開示された方法は、特に言及がない限り、分子生物学、微生物学、遺伝子分析、組換えDNA、有機化学、生化学、PCR、オリゴヌクレオチド合成及び変形、核酸混成化、及び当業界技術範囲内の関連分野の従来の技術を利用する。これらの技術は本明細書で引用された参考資料に詳細に記述されている(例えば、Maniatis T et al.,(1982)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Sambrook J et al.,(1989),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Sambrook J et al.,(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Ausubel FM et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987 and annual updates);Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons(1987 and annual updates)Gait(ed)(1984)Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein(ed)(1991)Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,IRL Press;Birren B et al.,(eds)(1999)Genome Analysis:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)。
【0221】
一部の実施形態において、本明細書に開示された方法において有用な抗体は、例えば、合成、DNA配列の遺伝子操作を用いた生成を伴う任意の手段によって製造、発現、生成又は単離した抗体(例えば、組換え抗体)である。特定の実施形態において、このような抗体は生体内動物又は哺乳類(例えば、ヒト)の抗体ジャームライン(germline)レパートリー内に自然的に存在しない配列(例えば、DNA配列又はアミノ酸配列)を含む。
【0222】
VII.製薬学的組成物
生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)Mack Publishing Co,Easton,PA)のうち、所望する程度の純度を有する本明細書に開示された方法に有用な抗体又はその抗原結合部分を含む組成物が開示される。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、用いられた投薬量及び濃度において受領者に非毒性であり、緩衝剤、例えばホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10個未満の残基)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート化剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン(salt-forming counter-ions)、例えばナトリウム;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又は非イオン界面活性剤、例えばTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)又はポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0223】
特定の実施形態において、製薬学的組成物は、本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分、二重特異的分子、又は免疫コンジュゲート、及び選択的に一つ以上の追加の予防又は治療剤を、製薬学的に許容される担体中に含む。特定の実施形態において、製薬学的組成物は、本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分の有効量、及び選択的に一つ以上の追加の予防又は治療剤を、製薬学的に許容される担体中に含む。一部の実施形態において、抗体は製薬学的組成物に含まれた唯一の活性成分である。本明細書に開示された製薬学的組成物はFAM19A5活性を増進、誘発又は活性化し、且つ中枢神経系損傷、退行性脳障害又は神経病性疼痛のような病態を治療するのに有用である。
【0224】
非経口製剤に用いられた製薬学的に許容される担体は、水性ビークル、非水性ビークル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所痲酔剤、懸濁及び分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤又はキレート化剤及び他の製薬学的に許容される物質を含む。水性ビークルの例は、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース及び乳酸加リンゲル液を含む。非水性非経口ビークルは、植物起源の固定油、綿実油、トウモロコシ油、胡麻油及ラッカセイ油を含む。静菌又は静真菌濃度の抗菌剤が多回投与容器に包装された非経口製剤に添加されてもよく、これらはフェノール又はクレゾール、水銀含有物質、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルp-ヒドロキシベンゾ酸エステル、チメロサール、ベンザルコニウムクロリド及びベンゼトニウムクロリドを含む。等張剤は塩化ナトリウム及びデキストロースを含む。緩衝剤は、ホスフェート及びシトレートを含む。抗酸化剤は重硫酸ナトリウムを含む。局所痲酔剤はプロカイン塩酸塩を含む。懸濁剤及び分散剤は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンを含む。乳化剤はポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)を含む。金属イオンの封鎖剤又はキレート化剤はEDTAを含む。製薬学的担体はまた、水混和性ビークル用エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールを含み、pH調整用水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸又は乳酸を含む。
【0225】
製薬学的組成物は対象に対する任意の投与経路に合うように製剤化され得る。投与経路の具体的な例は、鼻内、経口、非経口、脊椎腔内、脳室内、肺、皮下、又は心室内経路を含む。皮下、筋肉内又は静脈内注射を特徴とする非経口投与がまた考慮される。注射可能物質が従来の形態で、液体溶液又は懸濁液、注射前に液体中で溶液又は懸濁液になるに適した固体形態、又はエマルジョンとして製造され得る。注射可能物質、溶液及びエマルジョンはまた、一つ以上の賦形剤を含有する。好適な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール又はエタノールである。また、所望時には、投与される製薬学的組成物は少量の非毒性補助物質、例えば湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解性増進剤、及び他のそのような製剤、例えば酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン及びシクロデキストリンを含有し得る。
【0226】
抗体の非経口投与用製剤は、直に注射可能な滅菌溶液、使用直前に溶媒と直に調合可能な凍結乾燥した粉末のような滅菌乾燥可溶性製品、皮下注射用錠剤、直に注射可能な滅菌懸濁液、使用直前にビークルと直に調合可能な滅菌乾燥不溶性製品及び滅菌エマルジョンを含む。溶液は水性又は非水性であり得る。
【0227】
静脈内投与される場合、好適な担体は、生理学的食塩水又はリン酸緩衝食塩水(PBS)、及び増粘及び溶解剤を含有する溶液、例えばグルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール及びこれらの混合物を含む。
【0228】
抗体を含む局部用混合物は、局所及び全身投与について説明されたとおりに製造される。得られた混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり得、クリーム、ゲル、軟膏、エマルジョン、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、フォーム、エアゾール、灌注剤、スプレー、坐薬、包帯、皮膚パッチ又は局部的投与に適した任意の他の製剤として製剤化できる。
【0229】
本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分は、例えば吸入による、局部的投与用エアゾールとして製剤化できる(例えば、米国特許第4,044,126号、第4,414,209号、及び第4,364,923号を参考、これらの特許は炎症性疾患、特に喘息の治療に有用なステロイドの分配のためのエアゾールを開示する。)。経気道投与用のこれらの製剤は、噴霧器用のエアゾール又は溶液の形態であるか、又は吸込剤用の超微細粉末であり得、単独で用いられたり又はラクトースのような非活性担体と組み合わせて使用される。この場合、製剤の粒子は、一部の実施形態において、50ミクロン未満、一部の実施形態において、10ミクロン未満の直径を有する。
【0230】
本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分は、局所又は局部的適用、例えば皮膚及び粘膜に局部的適用、例えば目に局所適用のために、ゲル、クリーム及びローションとして製剤化でき、目に適用又は胸骨内又は髄腔内適用のために製剤化できる。局部的投与は経皮伝達のために考慮され、また目や粘膜投与、又は吸入療法用に考慮される。他の製薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて又は単独で抗体の鼻液も投与され得る。
【0231】
イオン泳動及び電気泳動装置を含む経皮パッチが当業者にとって公知であり、抗体投与用に使用され得る。例えば、このようなパッチは、米国特許第6,267,983号、第6,261,595号、第6,256,533号、第6,167,301号、第6,024,975号、第6,0.10715号、第5,985,317号、第5,983,134号、第5,948,433号、及び第5,860,957号に開示されている。
【0232】
特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分を含む製薬学的組成物は凍結乾燥した粉末であり、これは、溶液、エマルジョン及び他の混合物として投与用に再構成され得る。凍結乾燥した粉末はまた、固形物又はゲルとして再構成及び製剤化されてもよい。凍結乾燥した粉末は、本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分、又はその製薬学的に許容される誘導体を適切な溶媒に溶解することによって製造される。一部の実施形態において、凍結乾燥した粉末は滅菌状態である。溶媒は粉末又は粉末から製造された再構成溶液の安定性又は他の薬物学的成分を改善する賦形剤を含有できる。使用可能な賦形剤は、制限ではないが、デキストロース、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース又は他の好適な製剤を含む。また、溶媒は、一部の実施形態において、pHが弱中性である緩衝剤、例えばシトレート、ナトリウム又はカリウムホスフェート又は当業者に公知の他の緩衝剤を含有し得る。溶液を後続滅菌濾過した後、当業者に公知の標準条件下で凍結乾燥することによって所望の製剤を提供する。一部の実施形態において、得られた溶液は凍結乾燥用バイアルに配分される。各バイアルは、化合物の単一投薬量又は多回投薬量を含有し得る。凍結乾燥した粉末は適切な条件の下に、例えば約4℃~室温で保管され得る。
【0233】
注射用水によるこの凍結乾燥した粉末の再構成は、非経口投与に使用するための製剤を提供する。再構成のために凍結乾燥した粉末が滅菌水又は他の適切な担体に添加される。正確な量は選択された化合物に依存する。このような量は経験的に決定され得る。
【0234】
本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分、二重特異的分子、又は免疫コンジュゲート及び本明細書に開示された他の組成物はまた、治療対象の特定組織、受容体、又は他の身体領域に標的化するように製剤化され得る。多くの標的化方法が当業者に公知されている。全てのこのような標的化方法を本組成物に使用することが考慮される。標的化方法の非制限的な例は、例えば、米国特許第6,316,652号、第6,274,552号、第6,271,359号、第6,253,872号、第6,139,865号、第6,131,570号、第6,120,751号、第6,071,495号、第6,060,082号、第6,048,736号、第6,039,975号、第6,004,534号、第5,985,307号、第5,972,366号、第5,900,252号、第5,840,674号、第5,759,542号及び第5,709,874号を参照する。特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体又はその抗原結合部分は、中枢神経系損傷、退行性脳障害又は神経病性疼痛を治療するために標的化される。
【0235】
生体内投与に用いられる組成物は滅菌され得る。例えば、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に滅菌され得る。
【0236】
VIII.キット
本発明の方法に有用な一つ以上の抗体、又はその抗原結合部分、二重特異的分子、又はその免疫コンジュゲートを含むキットが提供される。特定の実施形態において、本明細書に開示された一つ以上の抗体又はその抗原結合部分のような、製薬学的組成物の成分のうち一つ以上で満たされた一つ以上の容器、選択的な使用説明書を含む製薬学的パック又はキットが提供される。一部の実施形態において、キットは、本明細書に開示された製薬学的組成物及び任意の予防又は治療剤を含有する。
【0237】
実施例
次の実施例は例示的に提供され、制限的なものではない。
【0238】
実施例1:ヒトFAM19A5タンパク質の発現及び精製
組換えヒトFAM19A5タンパク質を下に説明されたとおりに生成して精製し、この精製されたタンパク質を結合親和性分析に基づく抗体スクリーニング分析に使用した。まず、FAM19A5遺伝子を発現するLPS-hTプラスミドをバクテリアに形質転換し、タンパク質過発現を誘導した。生成されたFAM19A5タンパク質をNi-NTA親和性クロマトグラフィー(Qiagen,Valencia,CA,USA)を用いて精製した。イミダゾールを漸次高い濃度で使用してNi-カラムからHis-タグされたFAM19A5タンパク質を除去した。溶液中タンパク質発現をクマシーブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue)R-250染料を用いて測定した。FAM19A5イミダゾール含有溶液だけを取り、PBSを用いてFAM19A5タンパク質を濃縮した。濃縮が完了した時、FAM19A5タンパク質の純度と濃度をウェスタンブロット分析を用いて測定した。次いで、濃縮されたタンパク質を用いてFAM19A5-特異的抗体に対してスクリーニングした。
【0239】
実施例2:抗体ライブラリーFAM19A5の生成
1.免疫化
FAM19A5ペプチドを合成し、C末端端部でKLH(Anygen)に共役結合してニワトリの免疫化のための抗原として使用した。合成ペプチドKLHコンジュゲート(KLH-VTLDRDSSQPRRTIARQT)(SEQ ID NO:262)50μgを750μLリン酸緩衝食塩水(PBS)に混合し、37℃で30分間インキュベーションした。その後、2%スクアレン内毒素MPL(モノホスホリレート脂質A種)から毒素を除去し、油中水(water in oil)エマルジョン補助剤(RIBI+MPL+TDM+CWS補助剤、Sigma,St Louis,Mo,USA)を含有するTDW及びCWSの細胞壁成分のミコバクテリアをエマルジョン化し、その後、これを3匹のニワトリに皮下注射した。ニワトリは免疫化中に略2~3週間隔で総3回免疫化した。FAM19A5タンパク質を過発現させたHEK293T細胞の細胞溶解物を用いて、免疫化されたニワトリから得られた抗体の力価を免疫ブロッティングを用いて測定した。3回免疫化させたニワトリの血清を1次抗体として使用した。使用された2次抗体はHRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ)(ウサギ抗ニワトリIgG(Y)-HRP,Millipore corporation,Billeria,MA,USA)に共役結合した抗ニワトリIgG(Y)多クローン性抗体だった。
【0240】
2.免疫化されたニワトリからの単鎖可変断片(scFv)ライブラリーの製造
TRI試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を用いて、前記説明された免疫化されたニワトリの脾臓、骨髄及び滑液嚢(synovial sac)からRNAを抽出した。Oligo-dTプライマーとSuperscript(商標)III第1鎖合成システム(Invitrogen)を用いて第1鎖cDNAを合成した。ニワトリの免疫システムから得られたcDNAに対して、拡張型高忠実度PCRシステム(Roche Molecular Systems,IN,USA)を用いて単鎖可変領域ライブラリーを生成した。各反応においてcDNA 1μL、各プライマー60pmol、10倍反応緩衝溶液10μL、8μLの2.5mM dNTP(Promega,Madison,WI,USA)、及びTaq DNA重合酵素0.5μLを水と混合した。最終体積は100μLであった。PCR反応を次の条件を用いて行った:30サイクル(i)94℃で15秒、(ii)56℃で30秒、及び(iii)72℃で90秒、その後72℃で10分間最終拡張。約350bpの長さを有する断片を含むPCR生成物を1.5%アガロースゲル上にローディングし、電気泳動後にQIAGEN Gel II抽出キット(QIAGEN,Valencia,CA,USA)を用いてヌクレオチド断片を精製した。精製されたPCR生成物をOD 260nmで読み取って定量した(1ユニットOD=50μL/mL)。
【0241】
2次PCRからの2個のVH及びVL第1生成物を重複拡張PCR(オーバーラップエクステンションPCR)によって無作為に連結した。各PCR反応物を100ngの精製されたVL及びVH生成物、各プライマー60pmol、10倍反応緩衝剤10μL、8μLの2.5mM dNTP、Taq DNA重合酵素0.5μL及び水と100μLの最終体積として混合した。PCRを次の条件下で行った:25サイクル(i)94℃で15秒、(ii)56℃で30秒、及び(iii)72℃で2分、その後72℃で10分間最終拡張。約700bpの長さを有する単鎖可変領域断片を含むPCR生成物を1.5%アガロースゲル上にローディングし、電気泳動後にQIAGEN Gel II抽出キット(QIAGEN)を用いてヌクレオチド断片を精製した。精製されたPCR生成物をOD 260nmで読み取って定量した(1ユニットOD=50μL/mL)。
【0242】
3.ライブラリー、ライゲーション(ligation)及び形質転換
PCR生成物のscFv断片とベクターpComb3X-SS(The Scripps Research Institute CA,USA)をSfiI制限酵素で切断(digest)した。精製された重複PCT生成物10μgをSfiI 360ユニット(16ユニット当たりμg DNA,Roche Molecular Systems,Pleasanton,CA,USA)、10倍反応緩衝剤20μL及び水と混合して最終体積200μLにした。pComb3X-SS緩衝液20μgをSfiI 120ユニット(6ユニット当たりμg DNA)、10倍反応緩衝剤20μL及び水と混合して最終体積200μLにした。混合物を50℃で8時間切断した。その後、scFv断片(約700bp)及びベクター(約3400bp)を含む切断された生成物を1%アガロースゲル上にローディングし、ゲル抽出キットII QIAGEN(QIAGEN,Valencia,CA,USA)を用いて精製した。SfiI-制限されたpComb3Xベクター1400ngと切断されたscFv断片700ngを5倍リガーゼ緩衝液、10μLのT4DNAリガーゼ(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)及び水と混合して最終体積200μLにした。混合物を16℃で16時間インキュベーションしてライゲーションを行った。
【0243】
エタノールで沈殿後、DNAペレットを水15μLに溶解した。ライブラリーを生成するために、ライゲーションサンプルを大腸菌(E.coli)菌株ER2738(New England Biolabs Inc,Hitchin,Hertfordshine,SG4 OTY,England,UK)にバイブレーター遺伝子(遺伝子パルサー:Bio-Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)を用いて電気穿孔によって形質転換した。細胞をスーパーブロス(SB)培地5mLと混合し、37℃で1時間250rpmで撹拌しながらインキュベーションした。その後、100mg/mLカナマイシン3μLをSB培地10mLに添加した。ライブラリーサイズを決定するために、培養物サンプル0.1μL、1μL及び10μLを50μg/mLカナマイシンを含有するルリアブロス(LB)寒天板上に擦り塗った。1時間撹拌後、100mg/mLカナマイシン4.5μLをLB培養物に添加し、さらに1時間追加撹拌した。その後、水中のVCM13ヘルパーファージ2mL(>1011cfu/mL)を100mg/mLカナマイシン92.5μLを含有する予熱されたLB(183mL)と共にLB培地に添加した。この混合物を2時間37℃で250rpmでさらに撹拌した。その後、カナマイシン280μL(50mg/mL)を培養物に添加し、37℃で一晩撹拌した。翌日、バクテリアペレットを高速遠心分離機(Beckman,JA-10ローター)を用いて4℃、3,000gで遠心分離した。その後、バクテリアペレットを用いてファージミドDNAを抽出し、上澄液は滅菌遠心分離瓶に移した。その後、ポリエチレングリコール-8000(PEG-8000,Sigma)8gと塩化ナトリウム(NaCl,Merck)6gを上澄液に添加した後、氷で30分間維持した。その後、上澄液を4℃、15,000gで15分間遠心分離した。その後、上澄液を捨て、1% BSA-再生を含有するファージペレットTrisを緩衝食塩水(TBS)に懸濁した。
【0244】
実施例3:免疫化された抗原に対するライブラリーパンニング(バイオパンニング)(bio-panning)
磁気ビーズ(Dynabeads M-270Epoxy,Invitrogen)を用いてバイオパンニングを行った。室温で約1×107ビーズを組換えFAM19A5タンパク質5μgで室温で20時間ビーズとタンパク質を共に回転撹拌してコーティングした。コーティングが完了するとビーズをリン酸緩衝食塩水(PBS)で4回洗浄し、室温で3% BSAを含有するPBS中で1時間遮断した。その後、コーティングされたビーズを前記説明されたファージディスプレイされたscFvと共に室温で2時間培養した。抗原コーティングされたビーズに結合しないファージを除去するために、ビーズを0.05% Tween 20/PBSで洗浄した。その後、結合したファージを50μLの0.1Mグリシン/塩化水素(0.1Mグリシン-HCl、pH2.2)で溶出し、塩化水素と共に2M Tris(Tris-HCl、pH9.1)3μLで中和した。このファージ含有上澄液を用いて大腸菌ER2738細胞を感染させ、VCSM13ヘルパーファージを用いて一晩増幅し救済した。また、50μg/mLカナマイシンを含有するLB寒天板上にファージ-感染された培養物をブロットすることによって、ファージ-感染された培養物からのファージ力価によって投入(インプット)及び生成(アウトプット)を決定した。翌日、PEG-8000及びNaClを用いてファージを沈殿させ、次いでこれをバイオパンニングに使用した。バイオパンニングは、前記過程を反復することによって最大で総5回行った。各増幅においてファージをスクリーニングし、FAM19A5タンパク質に対する高い親和性に対して選択した。
【0245】
実施例4:ファージELISAによるクローンの選択
バイオパンニングから選択されたクローンを分析するために、ファージディスプレイされたscFvから個別クローンを無作為に選択し、ELISAを用いてクローンがFAM19A5組換えタンパク質に結合することを確認した。FAM19A5組換えタンパク質を0.1M NaHCO
3緩衝剤に希釈し、タンパク質をウェル当たり100ngを用いて16時間4℃で96ウェルマイクロタイタープレートをコーティングした。翌日、プレートを1時間37℃で3% BSA/PBSで遮断した。その後、ファージ上澄液を6% BSA/PBSと混合し、37℃で2時間培養した。その後、上澄液を含有するプレートを0.05% Tween 20/PBSで洗浄した。HRP-共役結合したM13抗体(a-M13-HRP,Pierce Chemical Co,Rockford,IL,USA)を1/5,000に希釈した。希釈された抗体50μLをプレートに添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション及び洗浄後、色展開のためにプレートに0.05Mクエン酸緩衝溶液、1μg/mLの2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS,Amresco,Solon,OH,USA)、及び0.1% H
2O
2を添加した。各ウェルに対する吸光度を405nmで測定した。
図1A、
図1B及び
図1Cは、第1ニワトリ、第2ニワトリ及び第3ニワトリから由来した3次、4次又は5次バイオパンニングから96個クローンの分析を示す。
【0246】
図1A~
図1Cに示すように、FAM19A5組換えタンパク質に結合するとともに高い吸光度を示した24個クローンを分析し、24個クローンから独特の配列を有する13個のscFvクローンを得た。クローンの追加選択後、最高の親和性を有するクローン1-65を得た。
【0247】
実施例5:抗FAM19A5-IgG2/4抗体の生成
1.哺乳類発現ベクターに抗FAM19A5 scFvのサブクローニング
FAM19A5 scFv遺伝子配列において、ヒトCκ遺伝子を軽鎖可変ドメインに連結し、CH1、CH2、及びCH3遺伝子のヒト免疫グロブリンアイソタイプIgG2/4を重鎖可変領域に連結した。制限部位(Genscript,USA)を添加することによって各軽鎖と各重鎖を有する抗体を合成した。クローニングを容易にするために、合成された遺伝子を変形された制限部位を有する哺乳類細胞発現ベクターに挿入した。まず、軽鎖遺伝子をHind III及びXba I(New England Biolabs,UK)制限酵素を用いてベクターに挿入した後、NheI及びBamHI(New England Biolabs,UK)制限酵素を用いてベクターに重鎖遺伝子を添加した(
図2)。
【0248】
2.抗FAM19A5抗体の精製
抗FAM19A5-IgG2/4抗体を発現及び精製するために、哺乳類細胞トランスフェクション及び過発現注射システムを用いた。細胞培養体積の1/10に相応する150mM塩化ナトリウム(NaCl,Merck)中で2μg/mLの哺乳類発現ベクターと4μgのポリエチレンイミン(PEI,Polysciences,Warrington,PA,USA)を混合した。混合物を室温で15分間放置した。混合物をHEK293F細胞(2×10
6細胞/mL,Invitrogen)に加えた後、これを7% CO
2及び37℃で6日間135rpmの撹拌条件で100U/mLペニシリン及びストレプトマイシン(Invitrogen)を含有するFreestyle(商標)293発現培養培地でインキュベーションした。細胞培養上澄液から発現した抗FAM19A5 IgG2/4抗体を精製するために、タンパク質Aビーズ(RepliGen,Waltham,MA,USA)親和性ゲルクロマトグラフィーを用いた。タンパク質Aクロマトグラフィー精製された抗体は4~12% Bis-Tris勾配ゲル電気泳動上で展開した。タンパク質のサイズ及び収率をクマシーブリリアントブルー染色によって確認した(
図3)。
【0249】
実施例6:慢性構造的損傷のネズミモデルにおいて抗FAM19A5抗体の生体内投与後機械的高血圧の評価
生体内FAM19A5活性の中和が神経病性疼痛を緩和させ得るかどうかを研究するために、慢性収縮性損傷(CCI)のネズミモデルが、Bennett and Xie,Pain 33(1):87-107(1988)、Austin et al.,J Vis Exp 61:3393(2012)によって以前に記述された通りに用いられた。坐骨神経の実験的CCIは神経病性疼痛の研究に最も広く用いられるモデルの一つであり、胴側後足で炎症反応を誘導することが報告された。したがって、例えば、フォンフレイ(Von Frey)試験で測定された後足引っ込め閾値(hind paw withdrawal threshold)は神経病性疼痛の良い指標として役立つ。
【0250】
1.慢性収縮損傷による神経病性疼痛の誘導
簡略に述べると、6週齢雄スプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ネズミをZoletil 50(VIRBAC、フランス)及びキシラジン(ROMPUN(登録商標),Bayer AG、ドイツ)IP(腹腔内注射)で深く麻酔させた。その後、ネズミの腰と大腿部の毛を剃り、ポビドンヨードで皮膚を殺菌した。その後、大腿部側面の皮膚を切開し、大腿2頭筋を通じた鈍的剥離で大腿部中間程度の共通坐骨神経を露出させた。坐骨神経の3分岐(trifurcation)近位部に約7mmの神経に付着した組織が存在しないようにし、4個の結紮糸(4.0黒色シルク)で約1mm間隔で緩く神経を縛った。これによって影響を受ける神経の長さは4~5mmであった。神経結紮を行った後、筋肉層及び皮膚層を糸のある層に直ちに縫合し、局所抗生剤を適用した。
【0251】
2.抗FAM19A5抗体投与
雄スプラーグドーリー(Sprague-Dawley)ネズミにZoletil 50(VIRBAC、フランス)及びキシラジン(ROMPUN(登録商標),Bayer AG、ドイツ)を用いて麻酔させ、表8に示す通り、4個のグループに分けた。慢性収縮損傷(“CCI誘導ネズミ”)(G3、n=10)を有する限り、グループのネズミには脊髄腔内注射によって抗FAM19A5抗体(0.1ml体積の10μg/ネズミ)が投与された。抗体は1週に1回ずつ総2週間(すなわち、CCI誘導7日目及び14日目)投与された。他のグループのCCI誘導ネズミ(G2、n=10)は“陰性対照群”として用いられ、単にヒトIgGのみが投与された。他のグループのCCI誘導ネズミ(G4、n=10)は、神経病性疼痛の治療に用いられる薬物であるプレガバリン(Pregabalin)で治療された。残り群のネズミ(G1、n=10)を“シャム対照群”(すなわち、CCI誘導及び投与無し)とした。
【0252】
【0253】
3.フォンフレイ試験
坐骨神経の慢性収縮後6日及び21日目に、フォンフレイ試験を用いて足引っ込め閾値を評価した。ネズミをワイヤーメッシュ底を有する装置に入れて約20分間環境に安定化させた。その後、足引っ込め閾値は、10秒間隔でメッシュ底を通じてフォンフレイフィラメント(0.5mm直径)を3回、後足の足裏の表面に適用することによって測定された。
【0254】
結果
図5A及び
図5Bに示すように、CCI誘導後、抗FAM19A5抗体の生体内投与は足引っ込め閾値を非常に増加させた。投与して初期に(例えば、6日目)、グループ間に大差はなかった。しかし、坐骨神経の慢性収縮後21日頃まで、治療群(すなわち、抗FAM19A5抗体(G3)又はプレガバリン(G4))と陰性対照群(G2)には顕著な差があった。例えば、6日目に、陰性対照群(G2)及び抗FAM19A5抗体処理されたネズミ(G3)に対する平均足引っ込め閾値はそれぞれ、5.1±1.0及び6.6±2.0であった(
図5A)。しかし、坐骨神経の慢性収縮後21日目に、陰性対照群(G2)の平均閾値は5.5±l.3であるのに対し、抗FAM19A5抗体処理群(G3)の場合、平均閾値は8.5±1.7であった(p<0.01)が、これは神経病性疼痛の治療に用いられる薬物であるプレガバリンのそれと類似である(G4:8.5±1.7)(
図5B)。このような結果は、抗FAM19A5抗体の生体内投与によってFAM19A5作用を中和する場合、神経病性疼痛を改善できるということを示す。
【0255】
実施例7:抗FAM19A5抗体の生体内投与後の運動機能の評価
抗FAM19A5抗体処理が運動機能を変化させ得るかどうかを研究するために、ロタロッド(Rotarod)試験を用いてCCI誘導ネズミの運動機能を評価した。この試験はCCI誘導(Chen L et al.,2014,Vadakkan KI et al.,2005)による下肢の疼痛や筋肉弱化に対する良い指標として用いられる。CCI誘導及び抗FAM19A5抗体投与は、実施例1に記載された通りに行われた。
【0256】
1.ロタロッド試験
各スプラーグドーリーネズミ(シャム対照群及びCCI誘導)をロータロッドトレッドミル(Biological Research Apparatus 7750,ETGO BASILE Inc.,Italy)に慎重に配置し、ロタロッドの回転速度を4rpmから20rpmに一定の間隔で増加させた。抗FAM19A5抗体投与後6日(基準線)及び21日目に、落ちるまでの遅延時間を記録した。運動機能は、各時間ごとにそれぞれのネズミに対して3回の試験において平均時間から決定された、ロタロッド装置から落ちる遅延時間と見なされた。
【0257】
2.結果
図6A及び
図6Bに示すように、CCI誘導後、抗FAM19A5抗体の生体内投与は遅延時間を改善した(すなわち、ロタロッド装置にネズミがより長く残った)。坐骨神経の慢性収縮後6日目にグループ間に目立つ差はなかったが(
図6A)、21日目に抗FAM19A5抗体処理されたネズミは陰性対照群に比べて遥かに大きい遅延時間を示した(G2:64.3±14.1対G3:92.8±11.5)が、これはプレガバリン(G4:9l.1±l7.8)のそれと類似である(
図6B)。このような結果は、CCI誘導後、抗FAM19A5抗体の生体内投与が神経病性疼痛を減少させるだけでなく、運動機能を改善できるということを示す。
【0258】
実施例8:糖尿病性末梢神経病症のネズミモデルにおいて抗FAM19A5抗体の生体内投与後の機械式痛覚過敏症の評価
神経病性疼痛に対するFAM19A5活性を中和する利点をさらに評価するために、糖尿病性末梢神経病症のネズミモデルを使用した。ストレプトゾトシン(STZ)を動物(50mg/kg、腹腔内)に投与することによってスプラーグドーリーネズミにおいて糖尿病性末梢神経病症(DPN)を誘導した。STZ投与後約1週目に血糖レベルを測定し、空腹血糖レベルが300mg/dL以上である動物だけを抗体投与のために選択した。STZ投与後約3週目に、選択されたDPNネズミに対照用抗体(正常ヒトIgG、“NHI”)又は抗FAM19A5抗体(3-2)を毎週投与した(総8回投与、すなわちSTZ投与後4週~11週目)。抗体は、25μg/ネズミの容量で動物に脊髄腔内に投与された。ナイーブ(健康な)動物を“シャム対照群”(すなわち、DPN誘導及び抗体投与無し)として使用した。STZ投与後7週目及び11週目に(すなわち、抗体投与を始めてそれぞれ4週及び8週目に)、実施例6に記述されたようなフォンフレイ試験を用いて動物において足引っ込め閾値を測定した。
【0259】
図10に示すように、抗FAM19A5抗体投与のDPN動物は、対照用抗体投与のDPN動物に比べて足引っ込め閾値が著しく高かった。このような閾値の増加は、STZ投与後7週目及び11週目(すなわち、それぞれ、抗体投与後4週目及び8週目)に観察された。
【0260】
実施例9:糖尿病性末梢神経病症のネズミモデルにおいて抗FAM19A5抗体の生体内投与後の熱痛覚過敏の評価
その後、熱痛覚過敏に関連した神経病性疼痛に対する抗FAM19A5投与の効果を評価するために、糖尿病性末梢神経病症(DPN)がスプラーグドーリーネズミで誘導され、対照群(NHI)又は抗FAM19A5抗体(3-2)を、実施例8で記載された通りに動物に投与した。次に、抗体投与を始めて4週目及び8週目に(すなわち、STZ投与後7週目及び11週目に)、動物をホットプレートに置いて温度を直ちに55℃に上げた。続いて、動物が上昇した温度に反応する(例えば、走ったり足をなめる)のにかかった時間を測定した。
【0261】
図11A及び
図11Bに示すように、対照用抗体投与のDPN動物は、足引っ込め遅延時間が約6秒であって、熱刺激に遥かに敏感であった。対照的に、抗FAM19A5抗体投与のDPNネズミは、4週目及び8週目の両方において顕著に高い足引っ込め遅延時間を有した。このデータは、FAM19A5活性を中和すと、機械的及び熱痛覚過敏に関連した神経病性疼痛が改善され得るということをさらに確認する。
【0262】
実施例10:糖尿病性末梢神経病症のネズミモデルにおいて抗FAM19A5抗体の生体内投与後の感覚神経伝導速度の分析
末梢感覚神経損傷及び/又は機能障害に対する抗FAM19A5投与の効果を決定するために、感覚神経伝導速度(SNCV)試験を行った。この試験は、電気信号が下降する感覚神経から上昇する感覚神経へどれくらい速く移動するかを測定することによって潜在的な神経損傷及び/又は機能障害を確認することに役立ち得る。実施例8に記述された通り、STZ投与とともにスプラーグドーリーネズミで糖尿病性末梢神経病症を誘導し、対照群又は抗FAM19A5抗体(3-2)を動物に投与した。次いで、抗体投与を始めて8週目に腓腹神経内の神経伝導速度を測定した。10mA及び10μVでバイキングクエスト(Viking Quest)(Natus Neurology Incorporated,U.S.A.)装備を用いて電気刺激を誘導した。
【0263】
図12に示すように、抗FAM19A5抗体投与のDPNネズミは対照用抗体投与のDPN動物に比べて改善された伝導速度を有した。この結果は、FAM19A5活性が末梢神経損傷/機能障害を改善及び/又は減少させることができ、これは、以前の実施例で観察された通り、神経病性疼痛を緩和させることに役立ち得ることを示唆する。結論的に、前記結果は、本発明で開示された抗FAM19A5抗体のようなFAM19A5拮抗剤が神経病性疼痛に適する治療オプションであり得ることを示唆する。
【0264】
実施例11:エピトープマッピング
ヒトFAM19A5タンパク質の重複ペプチド断片(F1-F5、
図9参照)を合成してBSAに共役結合(conjugated)させた。BSA共役結合したペプチド断片F1-F6に対する単クローン性抗体F1-F6の結合を、ウェスタンブロット分析によって決定した。ウェスタンブロット分析のために、BSA共役結合したFAM19A5断片F1-F6を、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、標準手順にしたがってニトロセルロース膜に移した。膜を抗FAM19A5抗体1-65(2μg/ml、1-65-scFv-ウサギFc-SSS)と共に培養し、抗原-抗体複合体をホースラディッシュペルオキシダーゼ(抗ウサギIgG(Fc特異的)-HRP、1:4,000希釈)と共役結合した適切な2次抗体で検出した(
図9)。
図9に示すように、抗FAM19A5抗体1-65は断片F5に強く結合する。F5の他に、断片F2及びF3にも結合する。
【0265】
概要及び要約部分を含む詳細な説明部分は、請求項の解釈に用いられるように意図されるということが認められるべきである。概要及び要約部分は、本発明者らによって考察された通り、本発明の全部ではないが、一つ以上の例示的な実施形態を提示でき、したがって、本発明と添付の請求項をいかなる方法でも制限しようと意図しない。
【0266】
本発明は、明示された機能とこれらの関係の実施形態を例示する機能的構成要素の補助下に以上開示された。それらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜のために本明細書で恣意的に限定された。明示された機能とそれらの関係が適切に行われる限り、代案の境界も限定され得る。
【0267】
特定の実施形態に関する前述した説明は、本発明の通常の性質を十分に表すことができ、第三者は当業界の知識を適用することによって本発明の一般概念から逸脱することなく過度な実験無しでこのような特定の実施形態を様々な用途に合わせて容易に変形及び/又は改造することができる。したがって、このような改造及び変形は、本明細書に提示された教示及び指針に基づいて開示された実施形態の等価物の意味と範囲内にあるように意図される。本明細書で用いられた語句又は用語は制限ではなく説明のためのものであることが理解されるべきであり、本明細書の用語又は語句は教示及び指針に照らして当業者によって解釈されるべきである。
【0268】
本発明の範囲及び領域は、前記説明された例示の実施形態のいずれによっても制限されず、請求項及びその等価物によってのみ限定されるべきである。
【0269】
本明細書で引用された全ての刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト及び受託番号/データベース配列(ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列の両方を含む)は、各個別刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト又は受託番号/データベース配列が参考として含まれるように具体的にそして個別的に簡潔に適示されたのと同じ範囲で全ての目的のためにその全体が参考として本明細書に含まれる。
【0270】
本PCT出願は2018年4月24日付に提出された米国仮出願第62/661,923号の優先権を主張し、それはその全体が本明細書に参考として含まれる。
【配列表】