(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】紙葉類搬送装置及び紙葉類搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65H 5/22 20060101AFI20221108BHJP
G07D 11/10 20190101ALI20221108BHJP
A63F 7/02 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B65H5/22 A
G07D11/10
A63F7/02 352F
(21)【出願番号】P 2022086530
(22)【出願日】2022-05-27
【審査請求日】2022-05-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108247
【氏名又は名称】株式会社ジェッター
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100096105
【氏名又は名称】天野 広
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 国明
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-160038(JP,A)
【文献】特開2017-030973(JP,A)
【文献】特開2021-020744(JP,A)
【文献】特開2011-011910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/22
B65H 29/24
G07D 11/00-11/60
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクトと、
前記ダクトの一端において前記ダクトと連通するように配置された紙葉類収容室と、
前記ダクト内を走行するキャリアと、
前記ダクト内において前記紙葉類収容室に向かう方向に空気流を発生させる第一送風機と、
前記ダクト内において前記方向とは逆の方向に空気流を発生させる第二送風機と、
前記ダクト内に紙葉類を投入する紙葉類投入装置と、
を備え、
前記第一送風機が前記ダクト内に発生させた空気流により前記ダクト内において前記キャリアを走行させ、前記紙葉類投入装置を介して前記ダクト内に投入された紙葉類を前記紙葉類収容室まで前記キャリアを介して搬送する紙葉類搬送装置であって、
前記紙葉類搬送装置は前記第一送風機の出力を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記キャリアが前記紙葉類に到達するまでに前記第一送風機が発生させる空気流を前記キャリアが前記紙葉類に到達して前記紙葉類を搬送するときの空気流より小さく制御するものである紙葉類搬送装置において、
前記キャリアの通過を検出し、キャリア通過検出信号を発信するキャリア通過検出センサーを備え、
前記キャリア通過検出センサーは前記紙葉類投入装置より前記第一送風機に近い位置において前記ダクトの外側に配置され、
前記制御装置は、前記キャリア通過検出センサーから前記キャリア通過検出信号を受信するまでは前記第一送風機の出力を前記第一送風機の最大出力の
P1%に設定し、前記キャリア通過検出センサーから前記キャリア通過検出信号を受信すると前記第一送風機の出力を前記第一送風機の最大出力の
P2%に変更し、
P2はP1より大きい値であり、
前記キャリア通過検出センサーは、前記P2%に変更された前記第一送風機の出力によって発生した空気流が前記キャリアに到達するタイミングと前記キャリアが前記紙葉類を捕捉するタイミングとが同じになるような位置に配置されていることを特徴とする紙葉類搬送装置。
【請求項2】
前記キャリア通過検出センサーは前記紙葉類投入装置から前記第一送風機に向かって、前記ダクトの長さ方向における前記紙葉類の長さの2乃至8倍の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項3】
前記キャリア通過検出センサーは前記ダクトに沿って移動可能であることを特徴とする請求項1に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項4】
前記キャリア通過検出センサーを前記ダクトに沿って移動させるセンサー移動手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項5】
P1は50以上かつ70以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項6】
P1は60であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項7】
P2は90以上かつ100以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項8】
P2は100であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の紙葉類搬送装置。
【請求項9】
第一送風機によってダクト内に空気流を発生させ、この空気流により前記ダクト内においてキャリアを走行させ、前記ダクト内に投入された紙葉類を前記ダクトの終端に配置されている紙葉類収容室まで前記キャリアを介して搬送する紙葉類搬送方法であって、前記第一送風機の出力は、前記キャリアが前記紙葉類に到達するまでに前記第一送風機が発生させる空気流を前記キャリアが前記紙葉類に到達して前記紙葉類を搬送するときの空気流より小さくなるように制御される紙葉類搬送方法において、
前記ダクト内に前記紙葉類が投入された第一位置より前記第一送風機に近い第二位置を前記キャリアが通過したか否かを検出する第一過程と、
前記キャリアの前記第二位置の通過を検出するまでは前記第一送風機の出力を前記第一送風機の最大出力の
P1%に設定する第二過程と、
前記キャリアの前記第二位置の通過を検出したときには前記第一送風機の出力を前記第一送風機の最大出力の
P2%に変更する第三過程と、
を備え、
P2はP1より大きい値であり、
前記第二位置は、前記P2%に変更された前記第一送風機の出力によって発生した空気流が前記キャリアに到達するタイミングと前記キャリアが前記紙葉類を捕捉するタイミングとが同じになるような位置であることを特徴とする紙葉類搬送方法。
【請求項10】
前記第二位置を前記ダクトに沿って変更する第四過程をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の紙葉類搬送方法。
【請求項11】
P1は50以上かつ70以下であることを特徴とする請求項9または10に記載の紙葉類搬送方法。
【請求項12】
P1は60であることを特徴とする請求項9または10に記載の紙葉類搬送方法。
【請求項13】
P2は90以上かつ100以下であることを特徴とする請求項9または10に記載の紙葉類搬送方法。
【請求項14】
P2は100であることを特徴とする請求項9または10に記載の紙葉類搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダクト内に発生させた空気流により紙幣その他のシート状の紙葉類を搬送する紙葉類搬送装置及び紙葉類搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような紙葉類搬送装置の一例として特開2016-160038号公報(特許文献1)に記載されたものがある。
図26乃至
図31は同公報に記載された紙幣搬送装置を示す。
図26は紙幣搬送装置の構造及び紙幣搬送装置が使用される周囲の環境を示す概略図である。
この紙幣搬送装置は、
図26に示すように、紙幣をその前面で押すことにより当該紙幣を搬送するキャリア10(
図28参照)と、キャリア10の外形と相似し、かつ、キャリア10が走行可能な内部空間を有するダクト11と、キャリア10が搬送してきた紙幣を収容する紙幣収容室14と、ダクト11内においてキャリア10を紙幣収容室14に向かう方向に走行させる空気流を発生させる第一送風機12aと、ダクト11内においてキャリア10を紙幣収容室14から離れる方向に走行させる空気流を発生させる第二送風機12bと、ダクト11内においてキャリア10を所定の位置で停止させるストッパー13a、13bと、を備えている。
【0003】
図26に示すように、複数個のパチンコ台20その他の遊戯機器が
図26の左右方向に一列に配置されており(
図26においては、単純化するため1個のパチンコ台20のみを示している)、パチンコ台20の横には紙幣を投入するための紙幣投入装置21が設置されている。紙幣投入装置21に投入された紙幣の額に応じた数の遊技媒体(パチンコ玉やメダルなど)が払い出される。
ダクト11はパチンコ台20の裏側においてパチンコ台20の配列方向と平行に延びるように設置されている。
図27はダクト11の部分的斜視図(一部分解図を含む)である。
図27に示すように、ダクト11は直線状に延びる中空構造を有しており、その縦断面は、上下方向に長い長方形において上下方向の中央部が内側に突出する形状をなしている。すなわち、上下方向の中央の部分が矩形状にダクト11の内側に突出する突出部11aを構成している。
【0004】
さらに、ダクト11の側壁には、紙幣投入装置21の位置に対応して、スリット11bが形成されている。後述するように、各紙幣投入装置21に投入された紙幣はスリット11bを通過してダクト11の内部に送られる。
図28はキャリア10の斜視図である。
キャリア10は、上下方向に延びる中心軸10aと、中心軸10aの一方の側に配置された4個の第一ウィング10bと、中心軸10aの他方の側に配置された4個の第二ウィング10cと、からなる。
第一ウィング10bは、中心軸10aの上端及び下端をそれぞれ起点として、2個一組の第一ウィング10bがV字型になるように、それぞれ配置されている。同様に、第二ウィング10cは、中心軸10aの上端及び下端をそれぞれ起点として、2個一組の第二ウィング10cがV字型になるように、それぞれ配置されている。後述するように、ダクト11の内部に送られた紙幣は4個の第一ウィング10bにその外縁を押されて搬送される。
【0005】
図29はキャリア10がダクト11の内部に収納された状態を示す斜視図である。
図29に示すように、ダクト11の突出部11aが、上下の第一ウィング10bの間に形成された空間10d(
図28参照)及び上下の第二ウィング10cの間に形成された空間10dに嵌まり込む。
図26に示すように、紙幣収容室14はダクト11の一端(
図26の右端)に配置されている。紙幣収容室14には、紙幣投入装置21からダクト11内に投入され、キャリア10によって搬送された紙幣が収容される。
ダクト11の内部に空気流(風)を送り込む第一送風機12a及び第二送風機12bはダクト11の両端に配置されている。
【0006】
第一送風機12a及び第二送風機12bは何れか一方のみが作動するか、あるいは、双方とも作動しない。双方が同時に作動することはない。第一送風機12aが作動すると、ダクト11の内部に収容されているキャリア10の第二ウィング10cが風圧を受けて、キャリア10は紙幣収容室14に向う方向(方向X1)に走行する。一方、第二送風機12bが作動すると、ダクト11の内部に収容されているキャリア10の第一ウィング10bが風圧を受けて、キャリア10は紙幣収容室14から離れる方向(方向X2)に走行する。
なお、ダクト11の一方の端部(
図26の右端)に連続して紙幣収容室14が配置されているため、第二送風機12bは紙幣収容室14に隣接して配置され、バイパス通路12cを介してダクト11と連結している。
図30は紙幣投入装置21の内部構造を示す概略図である。
図30に示すように、紙幣投入装置21は、ローラーユニット21bと、ダクト11に対して斜めの方向に延びる搬送路21cと、を備えている。
【0007】
紙幣投入装置21の紙幣投入口21aから投入された紙幣はローラーユニット21bにより搬送され、真贋や額面などの検査を経て、搬送路21cを介して、ダクト11の内部に投入される。
図31は、ダクト11内においてキャリア10を所定の位置(具体的には、ダクト11の両端の近傍)で停止させるストッパー13a及び13bを示す。
ストッパー13a及び13bは、ダクト11の内部に延びるフック状の部材からなる。キャリア10の第一ウィング10bがストッパー13aに引っ掛かることによって、キャリア10は紙幣収容室14の手前で停止する。また、キャリア10の第二ウィング10cがストッパー13bに引っ掛かることによって、キャリア10は第一送風機12aの手前で停止する。
上記の構造を有する紙幣搬送装置は以下のように作動する。
【0008】
パチンコ台20の顧客が紙幣投入装置21の紙幣投入口21aに紙幣を投入すると、紙幣はローラーユニット21bにより搬送され、搬送路21cを介して、ダクト11のスリット11bからダクト11の内部に投入される。
紙幣投入装置21には紙幣感知センサー(図示せず)が設けられており、紙幣がダクト11の内部に投入されると、紙幣感知センサーは紙幣投入を示す紙幣投入信号を中央制御装置(図示せず)に送信する。
紙幣投入信号を受信した中央制御装置は第一送風機12aを作動させる。第一送風機12aが作動を開始すると、ダクト11の内部には紙幣収容室14に向う方向(方向X1)の空気流(風)が発生する。キャリア10は、第二ウィング10cがこの空気流による風圧を受けることにより、紙幣収容室14に向う方向(方向X1)に走行する。キャリア10は、紙幣収容室14に到達するまでの間に、ダクト11に投入された紙幣を第一ウィング10bで捕捉する。紙幣を捕捉したキャリア10は捕捉した紙幣を押した状態を維持しながら紙幣収容室14に向う方向(方向X1)に走行を続け、次いで、ストッパー13aにより停止させられる。キャリア10が停止することにより、紙幣は慣性力の作用を受けキャリア10から離れ、紙幣収容室14に収容される。
【0009】
紙幣は、その紙面がキャリア10の走行方向(ダクト11の長さ方向)と平行であり、かつ、その短辺がキャリア10の中心軸10aと平行になる姿勢を維持してキャリア10により搬送される。
ストッパー13aの近傍にはキャリア10を検知するセンサー(図示せず)が配置されており、キャリア10がストッパー13aによって停止すると、センサーは、キャリア10がストッパー13aによって停止したことを示すキャリア停止信号を中央制御装置に送信する。
キャリア停止信号を受信した中央制御装置は第一送風機12aの作動を停止するとともに、キャリア10がストッパー13aによって停止してから所定の時間(紙幣が紙幣収容室14に収容されるのに必要な時間)が経過したときに、第二送風機12bを作動させる。
第二送風機12bが作動を開始すると、ダクト11の内部には紙幣収容室14から離れる方向(方向X2)の空気流(風)が発生する。キャリア10は、第一ウィング10bがこの空気流による風圧を受けることにより、紙幣収容室14から離れる方向(方向X2)に走行する。
その後、キャリア10はストッパー13bに引っ掛かり、停止する。このようにして、キャリア10は当初の位置に復帰する。
以上の動作が、紙幣が紙幣投入装置21に投入されてから、紙幣収容室14に収容されるまでの1サイクルの動作である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図26乃至
図31に示した従来の紙幣搬送装置においては、上記のように、第一送風機12aが発生させた空気流を受けたキャリア10がダクト11内を紙幣収容室14に向かって走行し、ダクト11内に投入された紙幣を途中で捕捉し、紙幣収容室14に搬送する。
通常、紙幣の搬送効率を上げるために、第一送風機12aの出力は最大出力に設定され、キャリア10の走行速度が最大速度になるようにしている。キャリア10が最大速度で走行すると、キャリア10が紙幣を捕捉するときに紙幣に与える衝撃はかなり大きいものになる。この衝撃によって、紙幣が折れ曲がることがあり、そのために、キャリア10による搬送が困難になることがある。例えば、紙幣が古かったり、あるいは、紙幣に折れ曲がり癖がついているような場合には、キャリア10が当たるときの衝撃によって、紙幣がその場所でダクト11内に詰まることがある。場合によっては、紙幣そのものが破損する(破れたり、一部が切れたりする)おそれもある。
本発明は以上のような従来の紙葉類搬送装置における問題点に鑑みてなされたものであり、キャリアが紙幣を捕捉するときに紙幣に与える衝撃を緩和することが可能な紙葉類搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明は2通りのアプローチを提供する。第一のアプローチにおいては、第一送風機の出力を制御し、それによって、キャリアの走行速度を間接的に制御する。第二のアプローチにおいては、第一送風機の出力制御は行わず、キャリアの走行速度を直接的に制御する。
【0013】
本発明は、第一のアプローチとして、ダクトと、前記ダクトの一端において前記ダクトと連通するように配置された紙葉類収容室と、前記ダクト内を走行するキャリアと、前記ダクト内において前記紙葉類収容室に向かう方向に空気流を発生させる第一送風機と、前記ダクト内において前記方向とは逆の方向に空気流を発生させる第二送風機と、前記ダクト内に紙葉類を投入する紙葉類投入装置と、を備え、前記第一送風機が前記ダクト内に発生させた空気流により前記ダクト内において前記キャリアを走行させ、前記紙葉類投入装置を介して前記ダクト内に投入された紙葉類を前記紙葉類収容室まで前記キャリアを介して搬送する紙葉類搬送装置であって、前記紙葉類搬送装置は前記第一送風機の出力を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記キャリアが前記紙葉類に到達するまでに前記第一送風機が発生させる空気流を前記キャリアが前記紙葉類に到達して前記紙葉類を搬送するときの空気流より小さく制御するものである紙葉類搬送装置において、前記キャリアの通過を検出し、キャリア通過検出信号を発信するキャリア通過検出センサーを備え、前記キャリア通過検出センサーは前記紙葉類投入装置より前記第一送風機に近い位置において前記ダクトの外側に配置され、前記制御装置は、前記キャリア通過検出センサーから前記キャリア通過検出信号を受信するまでは前記第一送風機の出力を前記第一送風機の最大出力のP1%に設定し、前記キャリア通過検出センサーから前記キャリア通過検出信号を受信すると前記第一送風機の出力を前記第一送風機の最大出力のP2%に変更し、P2はP1より大きい値であり、前記キャリア通過検出センサーは、前記P2%に変更された前記第一送風機の出力によって発生した空気流が前記キャリアに到達するタイミングと前記キャリアが前記紙葉類を捕捉するタイミングとが同じになるような位置に配置されていることを特徴とする紙葉類搬送装置を提供する。
【0014】
前記キャリア通過検出センサーは前記紙葉類投入装置から前記第一送風機に向かって、前記ダクトの長さ方向における前記紙葉類の長さの2乃至8倍の範囲内に配置されていることが好ましい。
前記キャリア通過検出センサーは前記ダクトに沿って移動可能に構成されていることが好ましい。
前記キャリア通過検出センサーを前記ダクトに沿って移動させるセンサー移動手段を備えることが好ましい。
P1は50以上かつ70以下であることが好ましい。また、P1は60であることが最も好ましい。
P2は90以上かつ100以下であることが好ましい。P2は100であることが最も好ましい。
【0017】
本発明は、第一のアプローチとして、さらに、第一送風機によってダクト内に空気流を発生させ、この空気流により前記ダクト内においてキャリアを走行させ、前記ダクト内に投入された紙葉類を前記ダクトの終端に配置されている紙葉類収容室まで前記キャリアを介して搬送する紙葉類搬送方法であって、前記第一送風機の出力は、前記キャリアが前記紙葉類に到達するまでに前記第一送風機が発生させる空気流を前記キャリアが前記紙葉類に到達して前記紙葉類を搬送するときの空気流より小さくなるように制御される紙葉類搬送方法において、前記ダクト内に前記紙葉類が投入された第一位置より前記第一送風機に近い第二位置を前記キャリアが通過したか否かを検出する第一過程と、前記キャリアの前記第二位置の通過を検出するまでは前記第一送風機の出力を前記第一送風機の最大出力のP1%に設定する第二過程と、前記キャリアの前記第二位置の通過を検出したときには前記第一送風機の出力を前記第一送風機の最大出力のP2%に変更する第三過程と、を備え、P2はP1より大きい値であり、前記第二位置は、前記P2%に変更された前記第一送風機の出力によって発生した空気流が前記キャリアに到達するタイミングと前記キャリアが前記紙葉類を捕捉するタイミングとが同じになるような位置であることを特徴とする紙葉類搬送方法を提供する。
上記の紙葉類搬送方法は、前記第二位置を前記ダクトに沿って変更する第四過程をさらに備えることが好ましい。
【0018】
上記の紙葉類搬送方法においては、P1は50以上かつ70以下であることが好ましい。また、P1は60であることが最も好ましい。
P2は90以上かつ100以下であることが好ましく、P2は100であることが最も好ましい。
【発明の効果】
【0020】
従来の紙葉類搬送装置においては、キャリア10が紙幣を捕捉するときには常に最大速度(第一送風機12aの出力は最大出力)であったため、紙幣を破損するおそれが大きかった。
これに対して、本発明の第一のアプローチによる紙葉類搬送装置においては、キャリアが紙幣を捕捉する前の段階においては、第一送風機の出力は比較的低く設定される。これによって、キャリアは紙幣を捕捉するまでは低速で走行することになるため、紙幣の捕捉時に紙幣に与える衝撃は従来のキャリアが紙幣に与える衝撃よりも小さい。このため、紙幣の捕捉時における衝撃による紙幣の破損のおそれを格段に小さくすることができる。
【0021】
本発明の第二のアプローチによる紙葉類搬送装置によれば、キャリアは紙幣を捕捉する直前の段階において、電磁石装置が発する磁力によって、急減速する。このため、紙幣の捕捉時における衝撃による紙幣の破損のおそれを格段に小さくすることができる。
さらに、キャリアは、電磁石装置の内部を通過する時間を除いて、紙幣を捕捉するまで最大速度で走行することが可能であるため、第一のアプローチによる紙葉類搬送装置と比較して、キャリアが紙幣に到達するまでの時間を短縮することが可能であり、ひいては、紙幣を紙幣収容室に収納するまでの時間を短縮化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置の構造及びその周囲の環境を示す概略図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において用いられるキャリアを正面側から見たときの斜視図である。
【
図3】
図2のキャリアを背面側から見たときの斜視図である。
【
図4】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において用いられるダクトの斜視図である。
【
図5】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置におけるキャリア、紙幣及びダクトの相互の位置関係を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置におけるキャリア、紙幣及びダクトの相互の位置関係を示す斜視図である。
【
図7】ダクト及びダクトから分岐したキャリア収納用ダクトの部分的横断面図である。
【
図8】キャリア収納用ダクト側から見たときのダクト及びキャリア収納用ダクトの部分的斜視図である。
【0023】
【
図9】ダクト側から見たときのダクト及びキャリア収納用ダクトの部分的斜視図である。
【
図10】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において、キャリア収納用ダクトにキャリアが収納される状態を示す断面図である。
【
図11】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において、キャリア収納用ダクトにキャリアが収納される状態を示す断面図である。
【
図12】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において、キャリア収納用ダクトにキャリアが収納される状態を示す断面図である。
【
図13】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において、キャリア収納用ダクトにキャリアが収納される状態を示す断面図である。
【
図14】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において、キャリア収納用ダクトにキャリアが収納される状態を示す断面図である。
【0024】
【
図15】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において、キャリア収納用ダクトからキャリアが排出される状態を示す断面図である。
【
図16】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において、キャリア収納用ダクトからキャリアが排出される状態を示す断面図である。
【
図17】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において、キャリア収納用ダクトからキャリアが排出される状態を示す断面図である。
【
図18】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置の部分的な断面図である。
【
図19】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置における中央制御装置による第一送風機の出力制御を示すフローチャートである。
【
図20】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において紙幣がキャリアに捕捉される状況を示す断面図である。
【
図21】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において紙幣がキャリアに捕捉される状況を示す断面図である。
【0025】
【
図22】本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置において紙幣がキャリアに捕捉される状況を示す断面図である。
【
図23】
図23(A)は変形例のキャリア通過検出センサーをダクトに取り付けた状態を示す断面図、
図23(B)は
図23(A)に示したキャリア通過検出センサーの側面図である。
【
図24】
図24(A)は第二変形例のキャリア通過検出センサーをダクトに取り付けた状態を示す断面図、
図24(B)は
図24(A)に示したキャリア通過検出センサーの側面図である。
【
図25】本発明の第二の実施形態に係る紙葉類搬送装置の部分的な断面図である。
【0026】
【
図26】従来の紙葉類搬送装置が使用される周囲の環境を示す概略図である。
【
図27】
図26に示した従来の紙葉類搬送装置の一構成要素であるダクトの部分的斜視図(一部分解図を含む)である。
【
図28】
図26に示した従来の紙葉類搬送装置の一構成要素であるキャリアの斜視図である。
【
図29】
図28に示したキャリアが
図27に示したダクトの内部に収納された状態を示す斜視図である。
【
図30】
図26に示した従来の紙葉類搬送装置の一構成要素である紙幣投入装置の内部構造を示す概略図である。
【
図31】
図26に示した従来の紙葉類搬送装置の一構成要素であるストッパーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置100の構造及びその周囲の環境を示す概略図である。以下、本実施形態に係る紙葉類搬送装置100の構造を説明する。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置100は、直線状に延びるダクト120と、ダクト120の内部を双方向に走行するキャリア110(
図2及び
図3参照)と、ダクト120の一端(
図1では右端)においてダクト120と連通して配置されている第一送風機12aと、ダクト120の他端(
図1では左端)においてダクト120と連通して配置されている第二送風機12bと、ダクト120の他端(
図1では左端)に配置されている紙幣収容室14と、を備えている。
【0028】
第一送風機12aはダクト120の内部において紙幣収容室14に向かう方向(方向X1)の空気流(風)を発生させ、キャリア110を方向X1に走行させる。第二送風機12bはダクト120の内部において第一送風機12aに向かう方向(方向X2)の空気流(風)を発生させ、キャリア110を方向X2に走行させる。
図2は紙葉類搬送装置100において用いられるキャリア110を正面側から見たときの斜視図、
図3はキャリア110を背面側から見たときの斜視図である。
図2及び
図3に示すように、キャリア110は「砲弾」型をなしており、具体的には、円柱形状の本体部分110aと、本体部分110aの背面側に本体部分110aと連続して形成された半球形状の後方部分110bと、から構成されている。
キャリア110は軽量化を図るために中空構造とされている。
【0029】
キャリア110は本体部分110aの前面110cにおいて紙幣と接触し、接触したまま紙幣を押して搬送する。本体部分110aの前面110cには円周に沿って同一形状の複数個の突起110dが等間隔に形成されている。相互に隣接する2個の突起110dの間に紙幣を挟み込み、紙幣を保持するようになっている。突起110dは、例えば、半球形状をなしている。
キャリア110の本体部分110aの中心軸方向における長さは可能な限り短く設定されている。本体部分110aの長さを短くすることにより、カーブしているダクトをスムーズに曲がることが可能になる。
キャリア110は後方部分110bにおいて第一送風機12aからの空気流(風)を受けることにより前進する。
図4は本実施形態に係る紙葉類搬送装置100において用いられるダクト120の斜視図である。
図5及び
図6はキャリア110、紙幣50及びダクト120の相互の位置関係を示す斜視図である。
【0030】
ダクト120は、
図4に示すように、第一領域120aと第二領域120bとから構成されている。
第一領域120aは上下に長い長方形の形状をなしており、その高さは紙幣50の短辺50a(
図5参照)が通過できる高さであり、その幅は紙幣50が折り曲がっていたり、あるいは、湾曲している場合であっても、紙幣50が十分に通過できる幅である。
第二領域120bは円形の縦断面を有しており、キャリア110が通過できるような大きさ(半径)に設定されている。
第一領域120aと第二領域120bとは部分的に重なり合っており、第一領域120aは第二領域120bの中心を通り、さらに、第二領域120bから上下の方向に等しい長さで突出している。
【0031】
図5及び
図6に示すように、キャリア110はその前面110cにおいて紙幣50の短辺50aを押し、ダクト120の内部において紙幣50をX1方向に搬送する。搬送時においては、紙幣50はダクト120の第一領域120aを通過し、キャリア110はダクト120の第二領域120bを通過する。
このように、第一領域120aは紙幣50のみが通過可能であり、キャリア110は第一領域120aを通過することはできない(正確には、キャリア110は第二領域120bから上下の方向に突出している第一領域120aの部分を通過することはできない)。
図7はダクト120及びダクト120から分岐したキャリア収納用ダクト130の部分的横断面図、
図8はキャリア収納用ダクト130側から見たときのダクト120及びキャリア収納用ダクト130の部分的斜視図、
図9はダクト120側から見たときのダクト120及びキャリア収納用ダクト130の部分的斜視図である。
【0032】
図7に示すように、本実施形態に係る紙葉類搬送装置100においては、紙幣収容室14の手前でダクト120から分岐するキャリア収納用ダクト130が形成されている。
図7乃至
図9に示すように、ダクト120を構成する第一領域120a及び第二領域120bのうち、第一領域120aは紙幣収容室14まで延びており、第二領域120bは紙幣収容室14の手前で第一領域120aから左右一方の側(
図7においては左側。右側でも可。あるいは左右両側でも可)に分岐している。この分岐した第二領域120bがキャリア収納用ダクト130を構成している。キャリア収納用ダクト130はその先端において第二送風機12bに接続されている。
図10乃至
図14はキャリア収納用ダクト130にキャリア110が収納される状態を示す断面図であり、
図15乃至
図17はキャリア収納用ダクト130からキャリア110が排出される状態を示す断面図である。
【0033】
図10に示すように、キャリア収納用ダクト130は、ダクト120から湾曲した後に直線的に延びる第一部分130aと、第一部分130aから湾曲した後に直線的に延びる第二部分130bと、から構成されている。第二部分130bは第一領域120aに対してほぼ直交する方向に延びている。
第二部分130bの内部にはキャリア110を停止させる円形状のストッパー130cが嵌め込まれている。キャリア110はダクト120からキャリア収納用ダクト130の第一部分130a及び第二部分130bを通過した後にストッパー130cに当たって停止する。
図7に示すように、キャリア収納用ダクト130がダクト120から湾曲を開始する位置にはキャリア110の通過を検知し、キャリア通過信号を中央制御装置(後述の
図18を参照)に発信するセンサー131が配置されている。
紙幣50は以下のようにして紙幣収容室14に搬送される。
パチンコ台20の顧客が紙幣投入装置21の紙幣投入口21aに紙幣50を投入すると、紙幣50はローラーユニット21bにより搬送され、搬送路21cを介して、紙幣出口21d(
図18参照)からダクト120の内部に投入される。
【0034】
紙幣投入装置21には紙幣感知センサー(図示せず)が設けられており、紙幣50がダクト120の内部に投入されると、紙幣感知センサーは紙幣投入を示す紙幣投入信号を中央制御装置に送信する。
紙幣投入信号を受信した中央制御装置は第一送風機12aを作動させる。第一送風機12aが作動を開始すると、ダクト120の内部には紙幣収容室14に向う方向(方向X1)の空気流(風)が発生する。キャリア110は、後方部分110bがこの空気流による風圧を受けることにより、本体部分110aを前にして紙幣収容室14に向う方向(方向X1)に走行する。
キャリア110は、紙幣収容室14に到達するまでの間に、ダクト120に投入された紙幣を前面110cで捕捉する。紙幣50を捕捉したキャリア110は捕捉した紙幣50を前面110cで押した状態を維持しながら紙幣収容室14に向う方向(方向X1)に走行を続け、
図10に示すように、キャリア収納用ダクト130の手前に到達する。
【0035】
図11に示すように、キャリア110がキャリア収納用ダクト130に到達すると、ダクト120の第一領域120a内をキャリア110に押されて走行していた紙幣50は第一領域120aが続く方向にそのまま走行を続ける。すなわち、紙幣50は、紙幣収容室14に向かって、それまでの慣性力によって走行を継続し、最終的には、紙幣収容室14に収容される。
これに対して、ダクト120の第二領域120bは紙幣収容室14の手前で湾曲しており、キャリア110は第二領域120b内のみを通過可能であるので、
図12に示すように、キャリア110はキャリア収納用ダクト130(第二領域120b)に進入し、キャリア収納用ダクト130の内部を走行する。この際、センサー131がキャリア110の通過を検知し、中央制御装置に1個目のキャリア通過信号を発信する。キャリア通過信号を受信した中央制御装置は第一送風機12aの作動を、例えば、一旦停止する、あるいは、所定枚数以上の紙幣50が紙幣投入装置21に待機しているような場合には、最大出力の50%の出力の状態で第一送風機12aを待機させておく。
【0036】
その後、
図13に示すように、キャリア110はストッパー130cに当たって停止する。
キャリア110が紙幣50を紙幣収容室14に搬送している間にも、各紙幣投入装置21には新たな紙幣50が投入され続けており、投入された紙幣50は紙幣収容室14への搬送を待って紙幣投入装置21の内部に待機している。
図10乃至
図13に示したように、1枚目の紙幣50の紙幣収容室14への搬送が完了すると、1個目のキャリア110をキャリア収納用ダクト130の内部に残したまま、中央制御装置は第一送風機12aを作動させ、2個目のキャリア110を紙幣収容室14に向かって走行させる。1個目のキャリア110と同様に、2個目のキャリア110も途中で紙幣50を捕捉し、紙幣収容室14に向かって紙幣50を搬送する。
【0037】
2個目のキャリア110がキャリア収納用ダクト130に到達すると、1個目のキャリア110と同様に、紙幣50のみがダクト120の第一領域120aを紙幣収容室14に向かって走行し、最終的には紙幣収容室14に収容される。キャリア110は分岐したキャリア収納用ダクト130(第二領域120b)に進入し、キャリア収納用ダクト130の内部を走行し、停止している1個目のキャリア110に当たって停止する。
これ以降、3個目から6個目までのキャリア110が1個目のキャリア110と同様に紙幣50を紙幣収容室14に搬送する。この時点では、
図14に示すように、6個のキャリア110がキャリア収納用ダクト130の内部に収納された状態になっており、センサー131はこれまでに6個のキャリア通過信号を中央制御装置に送信している。また、紙幣収容室14には6枚の紙幣50が収容されている。
【0038】
中央制御装置はセンサー131から6個目のキャリア通過信号を受信すると、第二送風機12bを作動させる。ストッパー130cには空気流を通す孔が形成されており、第二送風機12bが作動すると、第二送風機12bが発生させた空気流はストッパー130cの孔を通ってキャリア110に風圧を及ぼす。この風圧により、
図15及び
図16に示すように、6個のキャリア110は一団となってキャリア収納用ダクト130からダクト120を経て第一送風機12aに向かって送り返される。
先頭のキャリア110(1個目に送られてきたキャリア110)が第一送風機12aの手前に到達すると、センサー(図示せず)がキャリア110の到達を検出し、中央制御装置にキャリア到達信号を送信する。中央制御装置はキャリア到達信号を受信すると、第二送風機12bの作動を停止する。この時点では、
図17に示すように、キャリア収納用ダクト130にはキャリア110は残っていない。
【0039】
第一送風機12aの手前まで到達した6個のキャリア110は1個ずつ所定の格納スペースに格納される。キャリア110を紙幣収容室14に向かって送り込むときには、キャリア110は格納スペースから1個ずつ取り出され、第一送風機12aの空気流による風圧を受けて1個ずつ順番にダクト120の内部を紙幣収容室14に向かって発進して行く。
以上の動作が、複数枚の紙幣50が複数個の紙幣投入装置21に投入されてから、紙幣収容室14に収容されるまでの1サイクルの動作である。
図18は本実施形態に係る紙葉類搬送装置100の部分的な断面図である。
図18に示すように、紙葉類搬送装置100は、さらに、キャリア通過検出センサー140と、中央制御装置150と、を備えている。
キャリア通過検出センサー140は紙幣投入装置21と第一送風機12aとの間であって、紙幣投入装置21の近傍に配置されている。すなわち、方向X1から見て、キャリア通過検出センサー140は紙幣投入装置21の上流側に予め定めれた距離をおいて位置している。
【0040】
キャリア通過検出センサー140はダクト120の外壁に取り付けられており、キャリア110がその前を通過すると、キャリア通過検出センサー140はキャリア通過検出信号を中央制御装置150に送信する。
中央制御装置150は第一送風機12aの出力を制御する。具体的には、以下に述べるように、中央制御装置150はキャリア通過検出センサー140からのキャリア通過検出信号の受信の有無に応じて第一送風機12aの出力を制御する。
図19は中央制御装置150による第一送風機12aの出力制御を示すフローチャート、
図20乃至
図22は紙幣50がキャリア110に捕捉される状況を示す断面図である。
以下、
図18乃至
図22を参照して、中央制御装置150による第一送風機12aの出力制御を説明する。
図20に示すように、紙幣投入装置21を介して紙幣出口21dからダクト120に紙幣50が投入されると、センサー(図示せず)が中央制御装置150に信号を送信し、この信号を受信した中央制御装置150は第一送風機12aの作動を開始する(ステップS110)。
【0041】
第一送風機12aが作動を開始すると、中央制御装置150はキャリア通過検出センサー140からキャリア通過検出信号を受信したか否かを常時モニターする(ステップS120)。
中央制御装置150がキャリア通過検出信号を受信していない場合には(ステップS120のNO)、中央制御装置150は第一送風機12aの出力を第一送風機12aの最大出力の60%に設定する(ステップS130)。あるいは、中央制御装置150は第一送風機12aが作動を開始する前から第一送風機12aの出力を第一送風機12aの最大出力の60%に設定しておくことも可能である。このように、第一送風機12aはその最大出力の60%の出力でダクト120内に空気流を発生させる
【0042】
図21に示すように、キャリア110がキャリア通過検出センサー140を通過すると、キャリア通過検出センサー140はキャリア通過検出信号を中央制御装置150に送信する。
中央制御装置150がキャリア通過検出信号を受信した場合には(ステップS120のYES)、中央制御装置150は第一送風機12aの出力を第一送風機12aの最大出力の60%から100%、すなわち、最大出力に引き上げる(ステップS140)。
これにより、
図22に示すように、紙幣50を捕捉したキャリア110は第一送風機12aの最大出力による空気流を受けて、最大速度で紙幣50を紙幣収容室14に向けて搬送する。
この後、中央制御装置150はセンサー131からキャリア通過信号を受信したか否かを判定する(ステップS150)。
センサー131からキャリア通過信号を受信していない場合には(ステップS150のNO)、センサー131からのキャリア通過信号の受信の有無をモニターし続ける。
【0043】
中央制御装置150がセンサー131からキャリア通過信号を受信した場合には(ステップS150のYES)、紙幣50が紙幣収容室14に収容されたものと判断し、中央制御装置150は第一送風機12aの作動を停止する(出力をゼロにする)(ステップS160)。
以上のように、本実施形態に係る紙葉類搬送装置100においては、キャリア110による紙幣50の搬送に際して第一送風機12aの出力制御が実施されている。
具体的には、キャリア110がキャリア通過検出センサー140を通過するまでは中央制御装置150は第一送風機12aの出力を最大出力の60%に抑え、キャリア110を比較的低い速度で走行させる。
キャリア110がキャリア通過検出センサー140を通過すると、中央制御装置150はキャリア110が紙幣50を捕捉したものと判断し、第一送風機12aの出力を最大出力の60%から100%に引き上げる。これにより、キャリア110は最大速度で走行を開始する。
【0044】
このように、中央制御装置150が実施する第一送風機12aの出力制御によれば、キャリア110は紙幣50を捕捉するまでは比較的低い速度で走行し、紙幣50を捕捉した後は最大速度での走行を開始する。
従来の紙葉類搬送装置においては、キャリア10は紙幣を捕捉するときには常に最大速度(第一送風機12aの出力は最大出力)であったため、紙幣を破損するおそれが大きかった。
これに対して、本実施形態に係る紙葉類搬送装置100においては、キャリア110は紙幣50を捕捉するまでは低速で走行するため、紙幣50の捕捉時に紙幣50に与える衝撃は従来のキャリア10が紙幣に与える衝撃よりも小さい。このため、紙幣50の捕捉時における衝撃による紙幣50の破損のおそれを格段に小さくすることができる。
図18と
図20との比較から明らかであるように、キャリア通過検出センサー140がダクト120に取り付けられている位置と、キャリア110が紙幣50を実際に捕捉する位置とはずれている。前者のほうが後者より上流側にある。
【0045】
これは第一送風機12aの出力を引き上げても、それに伴って増大した風量がキャリア110の位置までに実際に到達するまでにタイムラグがあるためである。
具体的には、キャリア110がキャリア通過検出センサー140を通過したときにキャリア通過検出信号が中央制御装置150に送信され、第一送風機12aの出力が引き上げられるが、引き上げられた出力によって発生した空気流が実際にキャリア110に到達するまでの間に、キャリア110はキャリア通過検出センサー140より先に進んでいる。このため、引き上げられた出力による空気流がキャリア110に追いつくのはキャリア110がちょうど紙幣50を捕捉するタイミングである。
このような理由によって、キャリア通過検出センサー140の位置はキャリア110が紙幣50を捕捉する位置(紙幣50がダクト120に投入される位置、すなわち、紙幣投入装置21からダクト120に紙幣50が出される紙幣出口21d)よりも上流側に設定されている。
【0046】
このため、キャリア通過検出センサー140から紙幣投入装置21の紙幣出口21dまでの距離は、試行を重ねることによって、予め求めておくことができる。
実験的には、キャリア通過検出センサー140から紙幣投入装置21の紙幣出口21dまでの距離は紙幣50の長辺の長さの2倍から8倍の間の長さに設定することが適切である。例えば、紙幣50が千円札である場合には、キャリア通過検出センサー140から紙幣投入装置21の紙幣出口21dまでの距離は千円札の長辺の長さの3倍から4倍ほどが適切な距離である。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置100においては、キャリア110が紙幣50を捕捉する前の第一送風機12aの出力は最大出力の60%、捕捉後は最大出力の100%に設定されているが、第一送風機12aの出力はこれらの数字に限定されるものではない。
【0047】
紙幣50の捕捉前の段階における第一送風機12aの出力を高く設定すれば、キャリア110が紙幣50に到達するまでの時間を短縮することができるが、紙幣50に与える衝撃は大きくなる。逆に、紙幣50の捕捉前の段階における第一送風機12aの出力を低く設定すれば、紙幣50に与える衝撃は小さくすることができるが、キャリア110が紙幣50に到達するまでの時間が長くなる。このため、紙幣50の捕捉前後における第一送風機12aの最大出力に対する出力の比率は、紙幣50に与える衝撃(ダメージ)の程度と、キャリア110が紙幣50に到達するのに要する時間とのバランスを考慮して決定される。
紙幣50の捕捉前の段階における第一送風機12aの最大出力に対する出力の最適な比率を求めるため、以下のようなテストを行った。
濡れたタオルで紙幣の両側を1分間挟み込み、紙幣を湿らせた。このような湿らせた紙幣100枚を用意した。
第一送風機12aの出力を最大出力の30%から100%まで10%ずつ上げ、各出力における紙幣の破損状態を観察するとともに、キャリア110が紙幣に到達するまでの時間を計測した。
【0048】
許容限度(合格ライン)は、紙幣の破損は100枚につき5枚未満であること、紙幣までのキャリア110の到達時間は最大出力のときの紙幣までの到達時間を1としたときに1.5以下であること、とした。
テスト結果を表1に示す。
(表1)
【0049】
表1の結果から明らかであるように、破損枚数及び到達時間の許容限度を満足する出力比率は60%であった。出力比率50%では、破損枚数は許容限度内であるが、到達時間が許容限度を僅かに超える。出力比率70%では、到達時間は許容限度内であるが、破損枚数が許容限度を超える。このように、出力比率50%及び70%は破損枚数及び到達時間の一方の許容限度を満足していないが、実使用に耐えられないほどではない。出力比率60%のみが破損枚数及び到達時間の双方の許容限度を満足しており、出力比率60%(正確には60%前後)が最適値であることがテスト結果から判明した。
以上のように、実験的には、紙幣50の捕捉前の第一送風機12aの出力は50%から70%が好ましく、最も好ましくは60%である。
紙幣50の捕捉後の第一送風機12aの出力は90%から100%が好ましい。紙幣50の捕捉後においては紙幣50の破損のおそれはなくなるので、最も好ましくは100%であるが、90%であっても、キャリア110の走行速度を高く維持することができるので、紙幣50の搬送効率が大きく低下することはない。
【0050】
一般的には、紙幣50の捕捉前の第一送風機12aの出力をP1%、紙幣50の捕捉後の第一送風機12aの出力をP2%とすれば、中央制御装置150による第一送風機12aの出力制御はP2をP1より大きい値(P2>P1)に設定すれば、本実施形態に係る紙葉類搬送装置100を作動させることができる。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置100は上記の構造に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
前述のように、キャリア通過検出センサー140から紙幣投入装置21の紙幣出口21dまでの距離は紙幣50の長辺の長さの2倍から8倍の間の長さに設定することが適切である。しかしながら、実際には、第一送風機12aの出力のバラツキや紙幣50の強靭性(紙幣50は古くなるほど折れやすくなり、搬送しにくくなる)の大小に応じて、キャリア通過検出センサー140の位置を微調整する必要性が生じることがある。
紙葉類搬送装置100におけるキャリア通過検出センサー140はダクト120に対して固定的に取り付けられるものであったが、キャリア通過検出センサー140をダクト120に対して移動可能に取り付けることも可能である。
【0051】
図23(A)はキャリア通過検出センサー140の変形例であるキャリア通過検出センサー141をダクト120に取り付けた状態を示す断面図、
図23(B)はキャリア通過検出センサー141の側面図である。
キャリア通過検出センサー141はダクト120の外壁の一部と同一形状の内壁を有しており、ダクト120に着脱自在に嵌め込むことができるように構成されている。
このため、
図23(B)に示すように、キャリア通過検出センサー141はダクト120の長さ方向においてダクト120に沿ってスライド可能である。キャリア通過検出センサー141をスライドさせることにより、紙幣投入装置21の紙幣出口21dに対する相対的位置を変えることができる。
さらに、手動でスライドさせるキャリア通過検出センサー141に代えて、機械的にスライド可能なキャリア通過検出センサー142を用いることも可能である。
【0052】
図24(A)はキャリア通過検出センサー142をダクト120に取り付けた状態を示す断面図、
図24(B)はキャリア通過検出センサー142の側面図である。
キャリア通過検出センサー142は、
図23(A)に示したキャリア通過検出センサー141と、キャリア通過検出センサー141の底面に固定的に取り付けられ、ダクト120の長さ方向と同一方向に延びる長さを有するラック143と、ラック143の下方においてラック143と噛み合うピニオン144と、ピニオン144を駆動するモーター145と、を備えている。
モーター145の動作は中央制御装置150によって制御される。
中央制御装置150からの信号によってモーター145がピニオン144を時計回りの方向に回転させると、ラック143は第一送風機12aに近づく方向X2に移動し、ラック143に固定されているキャリア通過検出センサー141も方向X2に移動する。これによって、紙幣投入装置21の紙幣出口21dからキャリア通過検出センサー141までの距離が大きくなる。
【0053】
あるいは、中央制御装置150からの信号によってモーター145がピニオン144を反時計回りの方向に回転させると、ラック143は第一送風機12aから離れる方向X1に移動し、ラック143に固定されているキャリア通過検出センサー141も方向X1に移動する。これによって、紙幣投入装置21の紙幣出口21dからキャリア通過検出センサー141までの距離が小さくなる。
図24(A)及び
図24(B)においては、キャリア通過検出センサー141を移動させる手段としてラック143とピニオン144との組み合わせを用いたが、キャリア通過検出センサー141を移動させる手段はこれには限定されず、任意の機構を用いることができる。
このように、キャリア通過検出センサー141は手動でも、あるいは、機械的にもダクト120に沿ってスライドさせることが可能であり、キャリア通過検出センサー141と紙幣投入装置21の紙幣出口21dとの間の距離を自在に調節することができる。
なお、本実施形態においては、6個のキャリア110を用いたが、使用可能なキャリア110の個数は6には限定されない。2以上の任意の数を選択することが可能である。
【0054】
(第二の実施形態)
図25は本発明の第二の実施形態に係る紙葉類搬送装置200の部分的な断面図である。
本実施形態に係る紙葉類搬送装置200は、第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置100と比較して、電磁石装置160を追加的に備えている。
電磁石装置160はシート形状のものであり、ダクト120の長さ方向においてキャリア通過検出センサー140と紙幣投入装置21の紙幣出口21dとの間の全部の領域または一部の領域にわたってダクト120の外側表面に巻かれている。
電磁石装置160のオンオフは中央制御装置150によって制御される。
さらに、紙葉類搬送装置200においては、キャリア110の内部には磁性体が組み込まれている。例えば、鉄製の薄いシートがキャリア110の本体部分110aの内壁に沿って円周方向全体に貼り付けられている。
【0055】
本実施形態に係る紙葉類搬送装置200においては、第一の実施形態とは異なり、第一送風機12aの出力制御は行われない。第一送風機12aの出力制御に代えて、以下のように、キャリア110の速度が直接的に制御される。
紙幣投入装置21を介して紙幣出口21dからダクト120に紙幣50が投入されると、センサー(図示せず)が中央制御装置150に信号を送信し、この信号を受信した中央制御装置150は第一送風機12aの作動を開始する。この場合、中央制御装置150は最初から第一送風機12aを最大出力で作動させる。
キャリア110がキャリア通過検出センサー140を通過すると、キャリア通過検出センサー140はキャリア通過検出信号を中央制御装置150に送信する。中央制御装置150がキャリア通過検出信号を受信すると、中央制御装置150は電磁石装置160を作動させる。
【0056】
電磁石装置160が作動を開始したときには、キャリア110はキャリア通過検出センサー140を通過し、ダクト120に巻かれた電磁石装置160の内部に到達している。電磁石装置160が作動すると、その周囲に磁力を発生する。キャリア110の内部に配置されている磁性体は電磁石装置160の発する磁力に反応する。電磁石装置160の発する磁力はキャリア110の周囲の全方向からキャリア110に作用するため、キャリア110が電磁石装置160に到達するまでに有していた前方への推進力は電磁石装置160の発する磁力によって削がれることとなる。
このため、キャリア110にはブレーキがかかったのと同じ状態になり、キャリア110の走行速度は低下する。キャリア110は電磁石装置160を抜け出た直後に紙幣50を捕捉する。電磁石装置160を抜け出た直後においてはキャリア110の走行速度は低下したままであるので、キャリア110が紙幣50を捕捉するときの衝撃は、キャリア110が最大速度で紙幣50を捕捉するときの衝撃と比較して、小さくなっている。このため、紙幣50を破損するおそれは小さくなっている。
【0057】
キャリア110が電磁石装置160を抜け出れば、キャリア110はもはや電磁石装置160の磁力の影響を受けなくなる。このため、キャリア110が紙幣50を捕捉するタイミングの後に、キャリア110は第一送風機12aの最大出力による空気流を受けて再び最大速度まで走行速度を上げる。
例えば、電磁石装置160の出口にセンサーを設けておき、このセンサーがキャリア110の通過を検出すれば、中央制御装置150は電磁石装置160の作動を停止する。あるいは、中央制御装置150がキャリア通過検出センサー140からキャリア通過検出信号を受信してから所定時間(例えば、1秒乃至2秒)後に自動的に電磁石装置160を停止させるようにすることもできる。電磁石装置160をどの時点で停止させるかは任意に決めることができる。
あるいは、キャリア通過検出センサー140からのキャリア通過検出信号に応じて中央制御装置150による電磁石装置160のオンオフ制御を行うことなく、電磁石装置160を常時作動させておくことも可能である。電磁石装置160を常時作動させておけば、キャリア110は紙幣投入装置21を通過する直前において自動的に減速させられることになり、電磁石装置160のオンオフ制御は不要となる。
【0058】
本実施形態に係る紙葉類搬送装置200は以下の効果を奏する。
第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置100によれば、キャリア110が紙幣50に到達するまでの間においてはキャリア110は低速走行しているので、紙幣50を紙幣収容室14に収納するまでの時間は長くならざるを得ない。
これに対して、本実施形態に係る紙葉類搬送装置200によれば、キャリア110は、電磁石装置160の内部を通過する時間を除いて、紙幣50を捕捉するまで最大速度で走行することが可能であるため、第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置100と比較して、キャリア110が紙幣50に到達するまでの時間を短縮することが可能であり、ひいては、紙幣50を紙幣収容室14に収納するまでの時間を短縮化することができる。
【符号の説明】
【0059】
100 第一の実施形態に係る紙葉類搬送装置
110 キャリア
120 ダクト
130 キャリア収納用ダクト
140 キャリア通過検出センサー
150 中央制御装置
160 電磁石装置
【要約】
【課題】キャリアが紙幣を捕捉するときの衝撃を小さくし、紙幣の破損を防止する。
【解決手段】キャリア(110)がキャリア通過検出センサー(140)を通過するまでは、中央制御装置(150)は第一送風機(12a)をその最大出力の60%の出力で作動させる。キャリア(110)がキャリア通過検出センサー(140)を通過した後は、中央制御装置(150)は第一送風機(12a)の出力を最大出力の100%まで引き上げる。キャリア(110)が紙幣(50)を捕捉するまではキャリア(110)は低速走行を行うので、キャリア(110)が紙幣(50)を捕捉するときの衝撃を小さくすることができる。キャリア(110)が紙幣(50)を捕捉した後は、キャリア(110)は最大速度で走行する。
【選択図】
図21