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特許7171115シラン含有縮合環ジペプチド化合物及びその製造方法、並びにそれを用いたポリペプチド化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】シラン含有縮合環ジペプチド化合物及びその製造方法、並びにそれを用いたポリペプチド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20221108BHJP
   C07K 5/06 20060101ALI20221108BHJP
   C07K 1/02 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
C07F7/18 V
C07K5/06
C07K1/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022516422
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2021044773
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2021037691
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】服部 倫弘
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043700(JP,A)
【文献】特開2011-213823(JP,A)
【文献】特開2004-177666(JP,A)
【文献】特開2009-001624(JP,A)
【文献】特開平05-326477(JP,A)
【文献】特開平08-299777(JP,A)
【文献】国際公開第2015/114966(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/099808(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/00
C07K 5/00
C07K 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物。
【化1】
但し、式(A)中、
11、R12 21、及びR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
13 は、水素原子、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、チオール基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
a1及びRa2は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、及び複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数は、何れも20以下である。
【請求項2】
請求項1に記載のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を製造する方法であって、下記工程(i)及び(ii)を含む方法。
(i)下記式(S1)で表される第1のシラン化合物及び下記式(S2)で表される第2のシラン化合物に、下記式(R1)で表されるアミノ酸を加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、下記式(R2)で表されるアミノ酸エステルを加えて更に反応させることにより、前記式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を得る工程。
【化2】
但し、式(S1)中、
a1及びRa2は、前記式(A)における定義と同じ基を表し、
1及びX2は、各々独立に、ハロゲン原子を表す。
【化3】
但し、式(S2)中、
b1、Rb2、及びRb3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、及び複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数は、何れも20以下であり、
Zは、1又は2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1以上の窒素原子を含む5~10員の複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、及び複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、20以下である
【化4】
但し、式(R1)中、
11、R12、及びR13は、各々独立に、前記式(A)における定義と同じ基を表す。
【化5】
但し、式(R2)中、
21及びR22は、各々独立に、前記式(A)における定義と同じ基を表し、
PGbは、カルボキシル基の保護基を表す。
【請求項3】
前記工程(i)において、反応系に塩基を共存させる、及び/又は、前記工程(ii)において、反応系にルイス酸触媒を共存させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1に記載のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を用いて、ポリペプチド化合物を製造する方法であって、前記式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物、下記式(R3)で表される保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物、及び、下記式(R4)で表されるアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得ることを含む方法。
【化6】
但し、式(R3)中、
PGaは、アミノ基の保護基を表し、
31及びR32は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
33は、水素原子、は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、チオール基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
或いは、R31とR33とが互いに結合して、R31が結合する炭素原子及びR33が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、及び複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該複素環の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、20以下であり、
31及びA32は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p31及びp32は、各々独立に、0又は1を表し、
mは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、mが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化7】
但し、式(R4)中、
PGbは、カルボキシル基の保護基を表し、
41及びR42は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
43は、水素原子、は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、チオール基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
或いは、R41とR43とが互いに結合して、R41が結合する炭素原子及びR43が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
41及びA42は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p41及びp42は、各々独立に、0又は1を表し、
nは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、nが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化8】
但し、式(P1)中、
11、R12、R13、R21、及びR22は、前記式(A)における定義と同じ基を表し、
PGa、R31、R32、R33、A31、A32、p31、p32、及びmは、前記式(R3)における定義と同じ基を表し、
PGb、R41、R42、R43、A41、A42、p41、p42、及びnは、前記式(R4)における定義と同じ基を表す。
【請求項5】
以下の工程を含む、請求項4に記載の方法。
(i)前記式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、前記式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物を加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、前記式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を加えて更に反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得る工程。
【請求項6】
以下の工程を含む、請求項4に記載の方法。
(i)前記式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、化合物前記式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、前記式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを加えて更に反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得る工程。
【請求項7】
前記工程(i)及び/又は(ii)において、反応系に塩基及び/又は縮合剤を共存させる、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記式(P1)のポリペプチド化合物のアミノ基の保護基PGa及び/又はカルボキシル基の保護基PGbを脱保護する工程を更に含む、請求項4~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を用いて、ポリペプチド化合物を製造する方法であって、下記式(A1)で表されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物、下記式(A2)で表されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物、下記式(R3)で表される保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物、及び下記式(R4)で表されるアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を反応させることにより、下記式(P2)で表されるポリペプチド化合物を得ることを含む方法。
【化9】
但し、式(A1)中、
111、R112 121、及びR122は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
113 は、水素原子、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、チオール基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
a11及びRa12は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、及び複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、20以下である
【化10】
但し、式(A2)中、
211、R212 221、及びR222は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
213 は、水素原子、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、チオール基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
a21及びRa22は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、及び複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基の炭素原子数は、20以下である
【化11】
但し、式(R3)中、
PGaは、アミノ基の保護基を表し、
31及びR32は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
33は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、チオール基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
或いは、R 31 とR 33 とが互いに結合して、R 31 が結合する炭素原子及びR 33 が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、及び複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該複素環の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、20以下であり、
31及びA32は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p31及びp32は、各々独立に、0又は1を表し、
mは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、mが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化12】
但し、式(R4)中、
PGbは、カルボキシル基の保護基を表し、
41及びR42は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
43は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、当該置換基は、各々独立に、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、チオール基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の炭素原子数、及び、複素環式基の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、何れも20以下であり、
或いは、R 41 とR 43 とが互いに結合して、R 41 が結合する炭素原子及びR 43 が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、ここで、当該置換基は、各々独立に、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、及び複素環スルホニルオキシ基から選択され、ここで、置換基を有する場合は置換基も含めた当該複素環の炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、20以下であり、
41及びA42は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p41及びp42は、各々独立に、0又は1を表し、
nは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、nが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化13】
但し、式(P2)中、
111、R112、R113、R121、及びR122は、前記式(A1)における定義と同じ基を表し、
211、R212、R213、R221、及びR222は、前記式(A2)における定義と同じ基を表し、
PGa、R31、R32、R33、A31、A32、p31、p32、及びmは、前記式(R3)における定義と同じ基を表し、
PGb、R41、R42、R43、A41、A42、p41、p42、及びnは、前記式(R4)における定義と同じ基を表す。
【請求項10】
下記工程(i)、(ii)、及び(iii)を含む、請求項9に記載の方法。
(i)前記式(A1)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、前記式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物を加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、前記式(A2)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を加えて更に反応させる工程。
(iii)前記工程(ii)の反応物に、前記式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を加えて更に反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得る工程。
【請求項11】
下記工程(i)、(ii)、及び(iii)を含む、請求項9に記載の方法。
(i)化合物前記式(A2)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、前記式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、前記式(A1)のシラン含有縮合環ジペプチドを加えて更に反応させる工程。
(iii)前記工程(ii)の反応物に、前記式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物を加えて更に反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得る工程。
【請求項12】
前記工程(i)及び/又は(ii)及び/又は(iii)において、反応系に塩基及び/又は縮合剤を共存させる、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記式(P2)のポリペプチド化合物のアミノ基の保護基PGa及び/又はカルボキシル基の保護基PGbを脱保護する工程を更に含む、請求項9~12の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシラン含有縮合環ジペプチド化合物及びその製造方法、並びに斯かるシラン含有縮合環ジペプチド化合物を用いたポリペプチド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペプチドに代表されるアミド化合物は、医薬品、化粧品、機能性食品をはじめ、幅広い分野で利用されており、その合成法の開発は、合成化学における重要な研究課題として精力的に実施されてきた(非特許文献1~3)。しかし、そのペプチド合成に最も重要であるアミド化にはカルボン酸活性化剤の他には、真に有効な触媒や反応剤が殆ど存在していない。そのため、大量の副生成物を生ずる反応様式を用いざるを得ず、しかも多段階の反応を繰り返すペプチド合成はアトム・エコノミー(原子収率)の観点から極めて非効率な合成であり、副生成物は膨大な量となり、また、有効な精製手段も少ない。その結果、副生成物の廃棄と精製にかかるコストがペプチド合成の殆どの必要経費を占め、この分野の発展における最大障壁の一つとなっている。
【0003】
アミノ酸又はその誘導体を原料とするペプチド合成では、高立体選択的にアミド化を行うことが求められる。高立体選択的なアミド化としては、生体内での酵素反応が挙げられる。例えば、生体内では、酵素と水素結合を巧みに利用して、極めて高立体選択的にペプチドを合成している。しかしながら、酵素反応は、大量生産には不向きであり、合成化学に適用すると、膨大な金銭的・時間的なコストが必要となる。
【0004】
合成化学においても、触媒を用いたアミド化が検討されているが、従来の手法では、主にカルボン酸を活性化する手法によりアミド結合を形成しているため、ラセミ化の進行が早く、高立体選択的且つ効率的にアミド化合物を合成することは困難である。
【0005】
また、従来の方法では、複数のアミノ酸又はその誘導体が連結されてなるペプチドに、更にアミノ酸又はその誘導体をアミド結合によりライゲーション(Chemical Ligation)することや、二以上のペプチドをアミド結合によりライゲーションすることは、極めて困難である。斯かるペプチドに対するライゲーションのためのアミド化法としては、硫黄原子を有するアミノ酸を用い、硫黄原子の高い反応性を利用してライゲーションを行う方法(非特許文献4)や、アミノ酸のヒドロキシアミンを合成し、ヒドロキシアミンの高い反応性を利用してライゲーションを行う方法(非特許文献5)が知られているが、前者は硫黄原子を有するアミノ酸の合成が難しく、後者は数工程に亘るヒドロキシアミン合成が別途必要となるため、何れも時間・費用がかかり、効率性の面で難がある。
【0006】
本発明者等は、β位にヒドロキシ基を有するカルボン酸/エステル化合物を特定の金属触媒の存在下でアミド化する方法(特許文献1)、アミノ酸前駆体としてヒドロキシアミノ/イミノ化合物を用い、これを特定の金属触媒の存在下でアミド化した後、特定の金属触媒の存在下で還元する方法(特許文献2)、カルボン酸/エステル化合物を特定の金属触媒の存在下でアミド化する方法(特許文献3)等により、高化学選択的にアミド化合物を合成する技術を開発している。更には、N末端保護アミノ酸・ペプチドのカルボキシル基と、C末端保護アミノ酸・ペプチドのアミノ基を、特定のシリル化剤及びルイス酸触媒の存在下でアミド反応させた後、脱保護することにより、種々のアミノ酸残基からなるペプチドを高効率・高選択的に合成する技術も開発している(特許文献4)。
【0007】
なお、近年では無保護アミノ酸を用いたペプチド合成の試みもなされているが(非特許文献6~8)、何れも使用可能なアミノ酸の種類や反応効率の点で満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2017/204144号
【文献】国際公開第2018/199146号
【文献】国際公開第2018/199147号
【文献】国際公開第2019/208731号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Chem. Rev., 2011, 111, 6557- 6602
【文献】Org. Process Res. Dev., 2016, 20(2), 140-177
【文献】Chem. Rev., 2016, 116, 12029-12122
【文献】Science, 1992, 256, 221-225
【文献】Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 1248-1252
【文献】Chem. Eur. J. 2019, 25, 15091
【文献】Org. Lett. 2020, 22,8039
【文献】Chem. Eur. J. 2018, 24, 7033
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の背景から、種々のアミノ酸からなるポリペプチドを効率的に合成する方法が求められていた。本発明は、斯かる課題に鑑みなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は鋭意検討の結果、特定のシリルジハライド化合物と特定の含窒素複素環式基置換シラン化合物との存在下、無保護アミノ酸、次いでアミノ酸エステルを反応させることにより、新規な構造のシラン含有縮合環ジペプチド化合物が得られることを見出した。また、この縮合環ジペプチド化合物を、N保護アミノ酸又はペプチドと反応させ、次いでC保護アミノ酸又はペプチドと反応させることにより、環化ジペプチドのN末端伸長及びC末端伸長が連続して進行し、テトラペプチド等のポリペプチドを効率的に合成することが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明の趣旨は、例えば以下に関する。
[項1]下記式(A)で表されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物。
【化1】
但し、式(A)中、
11、R12、R13、R21、及びR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、
a1及びRa2は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。
[項2]項1に記載のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を製造する方法であって、下記工程(i)及び(ii)を含む方法。
(i)下記式(S1)で表される第1のシラン化合物及び下記式(S2)で表される第2のシラン化合物に、下記式(R1)で表されるアミノ酸を加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、下記式(R2)で表されるアミノ酸エステルを加えて更に反応させることにより、前記式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を得る工程。
【化2】
但し、式(S1)中、
a1及びRa2は、前記式(A)における定義と同じ基を表し、
1及びX2は、各々独立に、ハロゲン原子を表す。
【化3】
但し、式(S2)中、
b1、Rb2、及びRb3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、
Zは、1又は2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1以上の窒素原子を含む5~10員の複素環式基を表す。
【化4】
但し、式(R1)中、
11、R12、及びR13は、各々独立に、前記式(A)における定義と同じ基を表す。
【化5】
但し、式(R2)中、
21及びR22は、各々独立に、前記式(A)における定義と同じ基を表し、
PGbは、カルボキシル基の保護基を表す。
[項3]前記工程(i)において、反応系に塩基を共存させる、及び/又は、前記工程(ii)において、反応系にルイス酸触媒を共存させる、項2に記載の方法。
[項4]項1に記載のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を用いて、ポリペプチド化合物を製造する方法であって、前記式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物、下記式(R3)で表される保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物、及び、下記式(R4)で表されるアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得ることを含む方法。
【化6】
但し、式(R3)中、
PGaは、アミノ基の保護基を表し、
31及びR32は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、
33は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
或いは、R31とR33とが互いに結合して、R31が結合する炭素原子及びR33が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
31及びA32は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p31及びp32は、各々独立に、0又は1を表し、
mは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、mが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化7】
但し、式(R4)中、
PGbは、カルボキシル基の保護基を表し、
41及びR42は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、
43は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
或いは、R41とR43とが互いに結合して、R41が結合する炭素原子及びR43が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
41及びA42は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p41及びp42は、各々独立に、0又は1を表し、
nは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、nが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化8】
但し、式(P1)中、
11、R12、R13、R21、及びR22は、前記式(A)における定義と同じ基を表し、
PGa、R31、R32、R33、A31、A32、p31、p32、及びmは、前記式(R3)における定義と同じ基を表し、
PGb、R41、R42、R43、A41、A42、p41、p42、及びnは、前記式(R4)における定義と同じ基を表す。
[項5]以下の工程を含む、項4に記載の方法。
(i)前記式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、前記式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物を加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、前記式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を加えて更に反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得る工程。
[項6]以下の工程を含む、項4に記載の方法。
(i)前記式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、化合物前記式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、前記式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを加えて更に反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得る工程。
[項7]前記工程(i)及び/又は(ii)において、反応系に塩基及び/又は縮合剤を共存させる、項5又は6に記載の方法。
[項8]前記式(P1)のポリペプチド化合物のアミノ基の保護基PGa及び/又はカルボキシル基の保護基PGbを脱保護する工程を更に含む、項4~7の何れか一項に記載の方法。
[項9]項1に記載のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を用いて、ポリペプチド化合物を製造する方法であって、下記式(A1)で表されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物、下記式(A2)で表されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物、下記式(R3)で表される保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物、及び下記式(R4)で表されるアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を反応させることにより、下記式(P2)で表されるポリペプチド化合物を得ることを含む方法。
【化9】
但し、式(A1)中、
111、R112、R113、R121、及びR122は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、
a11及びRa12は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基を表す。
【化10】
但し、式(A2)中、
211、R212、R213、R221、及びR222は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、
a21及びRa22は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、鎖状又は環状の脂肪族炭化水素基を表す。
【化11】
但し、式(R3)中、
PGaは、アミノ基の保護基を表し、
31及びR32は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、或いは、
31とR32とが互いに結合して、R31が結合する炭素原子及びR32が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
33は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
31及びA32は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p31及びp32は、各々独立に、0又は1を表し、
mは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、mが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化12】
但し、式(R4)中、
PGbは、カルボキシル基の保護基を表し、
41及びR42は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表し、或いは、
41とR42とが互いに結合して、R41が結合する炭素原子及びR42が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
43は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
41及びA42は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
p41及びp42は、各々独立に、0又は1を表し、
nは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、nが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。
【化13】
但し、式(P2)中、
111、R112、R113、R121、及びR122は、前記式(A1)における定義と同じ基を表し、
211、R212、R213、R221、及びR222は、前記式(A2)における定義と同じ基を表し、
PGa、R31、R32、R33、A31、A32、p31、p32、及びmは、前記式(R3)における定義と同じ基を表し、
PGb、R41、R42、R43、A41、A42、p41、p42、及びnは、前記式(R4)における定義と同じ基を表す。
[項10]下記工程(i)、(ii)、及び(iii)を含む、項9に記載の方法。
(i)前記式(A1)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、前記式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物を加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、前記式(A2)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を加えて更に反応させる工程。
(iii)前記工程(ii)の反応物に、前記式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を加えて更に反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得る工程。
[項11]下記工程(i)、(ii)、及び(iii)を含む、項9に記載の方法。
(i)化合物前記式(A2)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、前記式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、前記式(A1)のシラン含有縮合環ジペプチドを加えて更に反応させる工程。
(iii)前記工程(ii)の反応物に、前記式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物を加えて更に反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得る工程。
[項12]前記工程(i)及び/又は(ii)及び/又は(iii)において、反応系に塩基及び/又は縮合剤を共存させる、項10又は11に記載の方法。
[項13]前記式(P2)のポリペプチド化合物のアミノ基の保護基PGa及び/又はカルボキシル基の保護基PGbを脱保護する工程を更に含む、項9~12の何れか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、新規な構造のシラン含有縮合環ジペプチド化合物が提供されると共に、本化合物を用いた効率的なポリペプチドの製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0015】
[I.概要]
本発明者等は、特定のシリルジハライド化合物と特定の含窒素複素環式基置換シラン化合物との存在下、無保護アミノ酸、次いでアミノ酸エステルを反応させることにより、新規な構造のシラン含有縮合環ジペプチド化合物が得られることを見出した。これはおそらく、系内で2つの含窒素複素環式基を有するシリルジハライド化合物が生成し、これが無保護アミノ酸とシリルジイミダゾールとの五員環環化反応、アミノ酸エステルとのカップリング反応、アミノ酸エステルの加水分解及び五員環環化反応を連続して進行させることによるものと推測される。本発明者等の検討によれば、本反応はあらゆるアミノ酸の組み合わせで進行し、対応する縮合環ジペプチド化合物を高収率で得ることができる(以上、後記の実施例群I参照)。また、この縮合環ジペプチド化合物はジペプチドのN末端及びC末端が共に脱保護容易なケイ素により保護されているため、容易に脱保護することができる上に、求核種としても求電子種としても使用でき、極めて有用な化合物である(以上、後記の参考例群参照)。
【0016】
特に、本発明者等が更に検討したところ、斯かる縮合環ジペプチド化合物を、N保護アミノ酸と反応させ、次いでC保護アミノ酸と反応させることにより、環化ジペプチドのN末端伸長及びC末端伸長が連続して進行し、テトラペプチド、ペンタペプチド等のポリペプチドをワンポットで効率的に合成することが可能となる。更には、斯かる合成反応において縮合環ジペプチド化合物を複数使用することもでき、これによりヘキサペプチド等の更に大型のポリペプチドを高い効率で合成することが可能である(以上、後記の実施例群II参照)。
【0017】
以下の記載ではまず、本開示で使用される主な用語を定義した後([II.用語の定義])、新規なシラン含有縮合環ジペプチド化合物(以下、適宜「本発明の縮合環ジペプチド化合物」等略称する場合がある。)について説明し([III.本発明の縮合環ジペプチド化合物])、次いで特定のシリルジハライド化合物及び特定の含窒素複素環式基置換シラン化合物を用いたその製造方法(以下、適宜「本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法」等略称する場合がある。)について説明し([IV.本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法])、続いて斯かる本発明の縮合環ジペプチド化合物を用いたポリペプチドの新規な製造方法(以下、適宜「本発明のポリペプチドの製造方法」等略称する場合がある。)について説明する([V.本発明のポリペプチドの製造方法])。
【0018】
[II.用語の定義]
本開示において「アミノ酸」とは、カルボキシル基及びアミノ基を有する化合物を意味する。別途明示しない限り、アミノ酸の種類は特に限定されない。例えば、光学異性の観点からは、D体でもL体でもラセミ体でもよい。また、カルボキシル基とアミノ基との相対位置の観点からは、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸、ω-アミノ酸等の何れであってもよい。アミノ酸の例としては、これらに限定されるものではないが、タンパク質を構成する天然アミノ酸等が挙げられ、具体例としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、トレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリン等が挙げられる。
【0019】
本開示において「ペプチド」とは、複数のアミノ酸がペプチド結合を介して連結された化合物を意味する。別途明示しない限り、ペプチドを構成する複数のアミノ酸単位は、互いに同じ種類のアミノ酸単位であってもよく、二種類以上の異なるアミノ酸単位であってもよい。ペプチドを構成するアミノ酸の数は、2以上であれば特に制限されない。例としては、2(「ジペプチド」ともいう)、3(「トリペプチド」ともいう)、4(「テトラペプチド」ともいう)、5(「ペンタペプチド」ともいう)、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、100、又はそれ以上が挙げられる。また、トリペプチド以上のペプチドを指して「ポリペプチド」という場合もある。
【0020】
本開示において「アミノ基」とは、アンモニア、第一級アミン、又は第二級アミンから水素を除去して得られる、それぞれ式-NH2、-NRH、又は-NRR’(但しR及びR’はそれぞれ置換基を意味する。)で表される官能基を意味する。
【0021】
本開示において、別途明示しない限り、炭化水素基は、脂肪族でも芳香族でもよい。脂肪族炭化水素基は鎖状でも環状でもよい。鎖状炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。環状炭化水素基は、単環式でも橋かけ環式でもスピロ環式でもよい。炭化水素基は、飽和でもよいが、不飽和でもよく、言い換えれば、一又は二以上の炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を含んでいてもよい。即ち、炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基等を含む概念である。なお、別途明示しない限り、炭化水素基の一又は二以上の水素原子が、任意の置換基で置換されていてもよく、炭化水素基の一又は二以上の炭素原子が、価数に応じた任意のヘテロ原子に置き換えられていてもよい。
【0022】
本開示において「炭化水素オキシ基」とは、前記定義の炭化水素基がオキシ基(-O-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0023】
本開示において「炭化水素カルボニル基」とは、前記定義の炭化水素基がカルボニル基(-C(=O)-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0024】
本開示において「炭化水素スルホニル基」とは、前記定義の炭化水素基がスルホニル基(-S(=O)2-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0025】
本開示において、複素環式基は、飽和でもよいが、不飽和でもよく、言い換えれば、一又は二以上の炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を含んでいてもよい。また、複素環式基は単環式でも橋かけ環式でもスピロ環式でもよい。また、複素環式基の複素環構成原子に含まれるヘテロ原子は制限されないが、例としては窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素等が挙げられる。
【0026】
本開示において「複素環オキシ基」とは、前記定義の複素環式基がオキシ基(-O-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0027】
本開示において「複素環カルボニル基」とは、前記定義の複素環式基がカルボニル基(-C(=O)-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0028】
本開示において「複素環スルホニル基」とは、前記定義の複素環式基がスルホニル基(-S(=O)2-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0029】
本開示において「置換基」とは、各々独立に、別途明示しない限り、本発明の製造方法におけるアミド化工程が進行すれば特に制限されず、任意の置換基を意味する。例としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素基、複素環式基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基等が挙げられる。また、これらの官能基が、その価数及び物理化学的性質が許容する限りにおいて、更にこれらの官能基により置換された官能基も、本開示における「置換基」に含まれるものとする。なお、ある官能基が置換基を有する場合、その個数は、その価数及び物理化学的性質が許容する限りにおいて、特に限定されない。また、複数の置換基が存在する場合、これらの置換基は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
本開示において使用する主な略語を以下の表1に示す。
【表1】
【0031】
本開示において、アミノ酸及びその残基は、当業者に周知の三文字略称で表す場合がある。本開示において使用する主なアミノ酸の三文字略称を以下の表に示す。
【表2】
【0032】
本開示において、β-ホモアミノ酸及びその残基は、対応するα-アミノ酸の三文字略称の前に「Ho」を付して表す場合がある。
【0033】
[III.本発明の縮合環ジペプチド化合物]
本発明の一態様は、下記の式(A)で表される新規なシラン含有縮合環ジペプチド化合物(以下、適宜「本発明の縮合環ジペプチド化合物」等略称する場合がある。)
【0034】
【化14】
【0035】
式(A)中、R11、R12、R13、R21、及びR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表す。これらの基が置換基を有する場合、その種類は先に詳述した中から任意に選択される。置換基の数も制限されないが、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0036】
式(A)において、R11、R12、R13、R21、及び/又はR22が、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基である場合は、斯かる脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基とそれが結合する炭素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0037】
【化15】
【0038】
式(A)において、R11、R12、R13、R21、及び/又はR22が(1又は2以上の置換基を有していてもよい)脂肪族炭化水素基である場合、斯かる脂肪族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は脂肪族炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0039】
式(A)において、R11、R12、R13、R21、及び/又はR22が(1又は2以上の置換基を有していてもよい)芳香族炭化水素基である場合、斯かる芳香族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は芳香族炭化水素基の種類によっても異なるが、通常4以上、例えば5以上、又は6以上である。当該原子数の具体例は、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0040】
式(A)において、R11、R12、R13、R21、及び/又はR22が(1又は2以上の置換基を有していてもよい)複素環式基である場合、斯かる複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0041】
中でも、式(A)におけるR11、R12、R21、及びR22としては、各々独立に、水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはハロゲン原子、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アシル基、複素環式基、若しくは複素環オキシ基等であることが好ましい。
【0042】
式(A)におけるR11、R12、R13、R21、及びR22の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0043】
・水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基;
・フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フェニロキシ基、ベンジロキシ基、ナフチロキシ基等のアリーロキシ基;
・アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基、シンナモイル基等のアシル基;
・無置換のアミノ基、及び、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、トリフェニルメチルアミノ基等の置換アミノ基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;
・フラニルオキシ基、ピロリルオキシ基、インドリルオキシ基、キノリルオキシ基等の複素環オキシ基;
・以上の基が1又は2以上の置換基(例えばハロゲン基)で置換された基;等。
【0044】
なお、上記の基のうち、カルボキシル基を有する基は、保護基を有していてもよいが、いなくてもよい。カルボキシル基の保護基については後述する。
【0045】
式(A)中、Ra1及びRa2は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。これらの基が置換基を有する場合、その種類は先に詳述した中から任意に選択される。置換基の数も制限されないが、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0046】
a1及び/又はRa2が(1又は2以上の置換基を有していてもよい)脂肪族炭化水素基である場合、脂肪族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は脂肪族炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0047】
a1及び/又はRa2が(1又は2以上の置換基を有していてもよい)芳香族炭化水素基である場合、芳香族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は芳香族炭化水素基の種類によっても異なるが、通常4以上、例えば5以上、又は6以上である。当該原子数の具体例は、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0048】
中でも、Ra1及びRa2としては、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等であることが好ましい。
【0049】
a1及びRa2の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0050】
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・以上の基が1又は2以上の置換基(例えばハロゲン基)で置換された基;等。
【0051】
本発明の縮合環ジペプチド化合物は、2つのα-アミノ酸残基からなるジペプチドが環化することで、2つの五員環がケイ素原子及び窒素原子を共有して縮合環を形成した、極めて特徴的な構造を有する。また、本化合物のジペプチドのN末端及びC末端は、ともに脱保護容易なケイ素原子により保護されているため、後述の参考例1及び2に示すように、酸又は塩基の存在下で容易に脱保護され、求核種としても求電子種としても使用することができる。また、本発明の縮合環ジペプチド化合物は、空気中安定で、取り扱い容易である。従って、後述するペプチドの製造反応の基質として利用できるほか、種々の用途が期待される。
【0052】
[IV.本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法]
本発明の一態様は、特定のシリルジハライド化合物及び特定の含窒素複素環式基置換シラン化合物を用いて、前述の本発明の縮合環ジペプチド化合物を製造する方法(本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法)に関する。
【0053】
本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法は、少なくとも下記工程(i)及び(ii)を含む。
(i)後述の式(S1)で表される第1のシラン化合物及び後述の式(S2)で表される第2のシラン化合物に、後述の式(R1)で表されるアミノ酸を加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、後述の式(R2)で表されるアミノ酸エステルを加えて更に反応させることにより、前記式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を得る工程。
【0054】
・アミノ酸及びアミノ酸エステル(基質化合物):
本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法において基質化合物として使用されるアミノ酸及びアミノ酸エステルは、下記の式(R1)で表される。
【0055】
【化16】
【0056】
【化17】
【0057】
式(R1)におけるR11、R12、及びR13、並びに、式(R2)におけるR21及びR22は、各々独立に、前記式(A)における定義と同じ基、即ち、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表す。その詳細については先に説明した通りである。
【0058】
式(R2)中、PGbは、カルボキシル基の保護基を表す。PGbとしては、所与の反応時に当該カルボキシル基が反応しないように保護することができ、反応後にこれを脱保護してカルボキシル基に変換可能なものであれば、特に制限されない。斯かるカルボキシル基の保護基の詳細については、後述する。
【0059】
式(R1)のアミノ酸、及び、式(R2)のアミノ酸エステルの基本化合物としての(即ち、カルボキシル基の保護基PGbを有さない)アミノ酸の例としては、任意のα-アミノ酸が挙げられる。その具体例としては、限定されるものではないが、生体タンパク質を構成する20種のα-アミノ酸、即ちアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンの他、オルニチン、2-アミノイソ酪酸、メチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン等が挙げられる。また、これらのα-アミノ酸の側鎖が、1又は2以上の前述の置換基(例えばハロゲン等)、及び/又は、1又は2以上の後述の保護基(カルボシキル基の保護基及び/又はアミノ基の保護基)で置換されてなるアミノ酸、例えばt-ブチル置換アスパラギン、t-ブチル置換グルタミン、t-ブチル置換セリン、t-ブチル置換トレオニン、t-ブチル置換トリプトファン、t-ブチル置換リシン、Boc置換アスパラギン、Boc置換グルタミン、Boc置換セリン、Boc置換トレオニン、Boc置換トリプトファン、Boc置換リシン、t-ブチル置換アスパラギン酸、t-ブチル置換グルタミン酸、トリチル置換アスパラギン、トリチル置換グルタミン、トリチル置換ヒスチジン、t-ブチル置換チロシン、メチル置換チロシン、メチル置換スレオニン、メチル置換セリン、Cbz置換リシン、Fmoc置換リシン等も挙げられる。なお、これらのα-アミノ酸の光学異性は特に制限されず、L体であってもD体であっても、或いはラセミ体であっても構わない。
【0060】
・カルボキシル基の保護基:
本発明の各製造方法(本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法、及び、後述する本発明の第1及び第2のポリペプチド製造方法)において使用されるカルボキシル基の保護基PGbの例としては、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基等が挙げられる。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0061】
カルボキシル基の保護基PGbが脂肪族炭化水素基の場合、脂肪族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は脂肪族炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0062】
カルボキシル基の保護基PGbが芳香族炭化水素基の場合、芳香族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は芳香族炭化水素基の種類によっても異なるが、通常4以上、例えば5以上、又は6以上である。当該原子数の具体例は、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0063】
カルボキシル基の保護基PGbの具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0064】
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、クミル基、1,1-ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基及びアリールアルキル基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;
トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、トリtert-ブチルシリル(TBS)基、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基、トリス(トリアルキルシリル)シリル基等のケイ素系保護基;等。
【0065】
なお、一態様によれば、式(R2)のアミノ酸エステルのカルボキシル基の保護基PGbとして、クミル基等のアリール基及びアリールアルキル基等が好ましい場合がある。特に、保護基PGbとしてこれらの基を用いることで、ルイス酸触媒を使用しなくとも、本発明の縮合環ジペプチド化合物を高収率で得ることが可能となる場合がある。また、式(R2)のアミノ酸エステルとして、フェニルアラニンやシステイン等の比較的ラセミ化を伴う傾向があるアミノ酸のエステルを使用する場合、カルボキシル基の保護基PGbとしてこれらの基を用いることで、ラセミ化を抑制し、ジアステレオマー比率を向上させることができる場合がある。
【0066】
・第1及び第2のシラン化合物:
本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法では、下記式(S1)で表される第1のシラン化合物と、下記式(S2)で表される第2のシラン化合物という、2種類のシラン化合物を組み合わせて使用することを、特徴の一つとする。
【0067】
第1のシラン化合物は、下記式(S1)で表される。
【化18】
【0068】
式(S1)中、Ra1及びRa2は、前記式(A)における定義と同じ基を表す。
【0069】
式(S1)中、X1及びX2は、各々独立に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を表す。中でもフッ素又は塩素が好ましい。
【0070】
式(S1)の第1のシラン化合物の具体例としては、これらに制限されるものではないが、ジメチルジクロロシラン、メチルエチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、エチルフェニルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジクロロシラシクロブタン、ジクロロシラシクロペンタン等が挙げられる。
【0071】
第2のシラン化合物は、下記式(S2)で表される。
【化19】
【0072】
式(S2)中、Rb1、Rb2、及びRb3は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。これらの基が置換基を有する場合、その種類は先に詳述した中から任意に選択される。置換基の数も制限されないが、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0073】
脂肪族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は脂肪族炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0074】
芳香族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は芳香族炭化水素基の種類によっても異なるが、通常4以上、例えば5以上、又は6以上である。当該原子数の具体例は、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0075】
中でも、Rb1、Rb2、及びRb3としては、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基等であることが好ましい。
【0076】
b1、Rb2、及びRb3の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0077】
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・以上の基が1又は2以上の置換基(例えばハロゲン基)で置換された基;等。
【0078】
式(S2)中、Zは、1又は2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1個以上(好ましくは2~4個、更に好ましくは2個又は3個)の窒素原子を含む5~10員(好ましくは5員、6員、又は10員)の複素環式基を表す。なお、複素環式基が置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりであるが、中でもアルキル基(例えば炭素数1~10個の直鎖又は分岐鎖のアルキル基。以下-Rと示す場合がある。)、アルコキシ基(-O-R)、アミノ基(-NH2)、アルキルアミノ基(-NHR)、ジアルキルアミノ基(-NR2:二つのアルキル基Rは同一でも、異なっていてもよい。)、チオアルキル基(-SR)、並びにこれらの基が1又は2以上のハロゲン原子(例えば臭素又は塩素原子)で置換された基等が好ましい。置換基の数の具体例は、例えば10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0である。置換基の数が2以上の場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0079】
cの含窒素複素環式基の具体例としては、これらに制限されるものではないが、ピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基(1,2,3-トリアゾール基、1,2,4-トリアゾール基)、ピペリジル基、ピリジニル基、ピペラジニル基、、テトラゾール基、インドール基、ベンズイミダゾール基等、更にはこれらの基が前述の置換基で置換されて得られる基、例えば(2-/3-/4-/5-)メチルイミダゾール基、(2,3-/2,4-/2,5-)ジメチルイミダゾール基等が挙げられる。中でもイミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、2-メチルイミダゾール基等が好ましい。
【0080】
式(S2)の第2のシラン化合物の具体例としては、これらに制限されるものではないが、トリメチルシリルイミダゾール、トリエチルシリルイミダゾール、トリイソプロピルシリルイミダゾール、トリtert-ブチルジメチルシリルイミダゾール等が挙げられる。
【0081】
・ルイス酸触媒:
本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法では、反応系にルイス酸触媒を共存させてもよい。反応系にルイス酸触媒を共存させて反応を実施することにより、反応収率の向上や立体選択性の向上等、種々の利点が得られる場合がある。但し一方で、ルイス酸触媒を使用した場合、反応生成物からルイス酸触媒を分離除去する作業が必要となる場合もある。よって、ルイス酸触媒の使用如何は、本発明の製造方法を使用する目的等を考慮して適宜決定することが好ましい。特に前述のように、式(R2)のアミノ酸エステルのカルボキシル基の保護基PGbとして、クミル基等のアリール基及びアリールアルキル基を用いた場合等は、ルイス酸触媒を使用しなくとも、本発明の縮合環ジペプチド化合物を高収率で得ることができる場合がある。
【0082】
本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法にルイス酸触媒を使用する場合、その種類は制限されないが、ルイス酸として機能する金属化合物であることが好ましい。金属化合物を構成する金属元素としては、元素周期律表の第2族から第15族に属する種々の金属が挙げられる。金属元素の具体例としては、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、珪素、カルシウム、鉛、ビスマス、水銀、遷移金属、ランタノイ系元素等が挙げられる。遷移金属の具体例としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、タリウム等が挙げられる。ランタノイ系元素の具体例としては、ランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム等が挙げられる。これらの中でも、優れた反応促進効果を発揮し、高立体選択的にアミド化合物を製造する観点からは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、ホウ素、バナジウム、タングステン、ネオジム、鉄、鉛、コバルト、銅、銀、パラジウム、スズ、タリウム等から選択される1種又は2種以上が好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ等から選択される1種又は2種以上が好ましい。なお、金属化合物に含まれる金属元素は1つでも2つ以上でもよい。金属化合物が2つ以上の金属元素を含む場合、これらはそれぞれ同じ種類の元素でもよく、2種類以上の異なる金属元素であってもよい。
【0083】
金属化合物を構成する配位子としては、金属の種類に応じて適宜選択される。配位子の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、トリフルオロエトキシ基、トリクロロエトキシ基等の、置換又は非置換の炭素数が1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;炭素数1~10のアリロキシ基;アセチルアセトナート基(acac)、アセトキシ基(AcO)、トリフルオロメタンスルホナート基(TfO);置換又は非置換の炭素数が1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基;フェニル基、酸素原子、硫黄原子、基-SR(ここでRは置換基であり、置換基の例としては、置換又は非置換の炭素数が1~20程度の炭化水素基が挙げられる。)、基-NRR’(ここでR及びR’は、各々独立に、水素原子又は置換基であり、置換基の例としては、置換又は非置換の炭素数が1~20程度の炭化水素基が挙げられる。)、シクロペンタジエニル(Cp)基等が挙げられる。
【0084】
中でも、金属化合物としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、タンタル化合物、又はニオブ化合物が好ましい。以下、それぞれの具体例を挙げる。なお、これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0085】
チタン化合物の具体例としては、TiX1 4(但し、4つのX1は、各々独立に、前記で例示した配位子である。4つのX1は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるチタン化合物が挙げられる。X1がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X1がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X1がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばTi(OMe)4、Ti(OEt)4、Ti(OPr)4、Ti(Oi-Pr)4、Ti(OBu)4、Ti(Ot-Bu)4、Ti(OCH2CH(Et)Bu)4、CpTiCl3、Cp2TiCl2、Cp2Ti(OTf)2、(i-PrO)2TiCl2、(i-PrO)3TiCl等が好ましい。
【0086】
ジルコニウム化合物の具体例としては、ZrX2 4(但し、4つのX2は、各々独立に、前記で例示した配位子である。4つのX2は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるジルコニウム化合物が挙げられる。X2がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X2がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X2がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばZr(OMe)4、Zr(OEt)4、Zr(OPr)4、Zr(Oi-Pr)4、Zr(OBu)4、Zr(Ot-Bu)4、Zr(OCH2CH(Et)Bu)4、CpZrCl3、Cp2ZrCl2、Cp2Zr(OTf)2、(i-PrO)2ZrCl2、(i-PrO)3ZrCl等が好ましい。
【0087】
ハフニウム化合物の具体例としては、HfX3 4(但し、4つのX3は、各々独立に、前記で例示した配位子である。4つのX3は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるハフニウム化合物が挙げられる。X3がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X3がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X3がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばHfCp2Cl2、HfCpCl3、HfCl4等が好ましい。
【0088】
タンタル化合物の具体例としては、TaX4 5(但し、5つのX4は、各々独立に、前記で例示した配位子である。5つのX4は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるタンタル化合物が挙げられる。X4がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~3の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X4がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X4がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、タンタルアルコキシド化合物(例えばX4がアルコキシ基の化合物)等であることが好ましく、例えばTa(OMe)5、Ta(OEt)5、Ta(OBu)5、Ta(NMe25、Ta(acac)(OEt)4、TaCl5、TaCl4(THF)、TaBr5等が好ましい。また、X4が酸素である化合物、即ちTa25も使用することができる。
【0089】
ニオブ化合物の具体例としては、NbX5 5(但し、5つのX5は、各々独立に、前記で例示した配位子である。5つのX5は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるニオブ化合物が挙げられる。X5がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~3の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X5がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X5がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、ニオブアルコキシド化合物(例えばX5がアルコキシ基の化合物)であることが好ましく、例えばNbCl4(THF)、NbCl5、Nb(OMe)5、Nb(OEt)5等が好ましい。また、X5が酸素である化合物、即ちNb25も使用することができる。
【0090】
なお、ルイス酸触媒は、担体に担持されていてもよい。ルイス酸触媒を担持する担体としては、特に制限されず、公知のものが使用できる。また、ルイス酸触媒を担体に担持させる方法としても、公知の方法が採用できる。
【0091】
・塩基:
本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法では、反応効率を高める観点から、塩基を系内に共存させてもよい。塩基の種類は制限されず、反応効率を向上させることが知られている公知の塩基を使用することができる。斯かる塩基の例としては、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)、トリエチルアミン(Et3N)、ジイソプロピルアミン(i-Pr2NH)、ジイソプロピルエチルアミン(i-Pr2EtN)等の、炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基を1~4個有するアミンなどが挙げられる。挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0092】
・その他の成分:
本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法では、基質化合物である前述の式(R1)のアミノ酸及び式(R2)のアミノ酸エステル、前述の式(S1)の第1のシラン化合物及び式(S2)の第2のシラン化合物、並びに任意により用いられるルイス酸触媒及び塩基に加えて、他の成分を共存させてもよい。斯かる他の成分の例としては、制限されるものではないが、ヨウ素、トリメチルシリルクロライド、トリメチルシリルブロマイド、トリメチルシリルヨージド等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0093】
なお、反応効率を高める観点からは、溶媒中で反応を行ってもよい。溶媒としては、特に制限されないが、例えば水性溶媒や有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、制限されるものではないが、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、石油エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1-メチルテトラヒドロフラン(1-MeTHF)、ジイソプロピルエーテル(i-Pr2O)、ジエチルエーテル(Et2O)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル類、アセトニトリル(MeCN)等の窒素系有機溶媒、ジクロロメタン(DCM)等の塩素系有機溶媒、酢酸エチル(AcOEt)等のエステル類、酢酸等の有機酸などが挙げられる。これらの溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0094】
・反応手順:
本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法では、工程(i)として、基質化合物のうち式(R1)のアミノ酸を、式(S1)の第1のシラン化合物及び式(S2)の第2のシラン化合物と接触させて反応させた後、次いで工程(ii)として、もう一方の基質化合物である式(R2)のアミノ酸エステルを反応系に加えて反応させる。このような反応手順により、本発明の縮合環ジペプチド化合物が形成される。その反応機序は定かではないが、本発明者等の推測では、最初に式(S1)の第1のシラン化合物及び式(S2)の第2のシラン化合物を接触させることで、系内で2つの含窒素複素環を有するシリルジイミダゾールが生成し、これと式(R1)の無保護アミノ酸との五員環環化反応、式(R2)のアミノ酸エステルとのカップリング反応、アミノ酸エステルの加水分解及び五員環環化反応を連続して進行させることによるものと推測される。
【0095】
なお、任意により用いられるルイス酸触媒及び塩基等、その他の成分を反応系に添加するタイミングは特に制限されず、何れも任意のタイミングで加えればよい。但し、ルイス酸触媒を使用する場合は、工程(ii)の開始時に系内に添加することが好ましい。また、塩基を使用する場合には、工程(i)の開始時に系内に添加することが好ましい。また、溶媒を用いて反応を行う場合には、溶媒中で各成分を混合し、相互に接触させればよい。
【0096】
・各成分の使用量比:
本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法において、各成分の使用量は限定されるものではないが、好ましくは以下の通りである。
【0097】
式(R1)のアミノ酸と式(R2)のアミノ酸エステルとの量比は、特に制限されないが、式(R1)のアミノ酸1モルに対して、式(R2)のアミノ酸エステルを例えば0.05モル以上、又は0.1モル以上、又は0.2モル以上、又は0.3モル以上、又は0.4モル以上、また、例えば10モル以下、又は5モル以下、又は4モル以下、又は3モル以下、又は2モル以下の範囲で用いることができる。なお、式(R1)のアミノ酸を式(R2)のアミノ酸エステルよりも多く用いることが、反応の効率が高くなる点で好ましい。具体的には、式(R1)のアミノ酸1モルに対して、式(R2)のアミノ酸エステルが概ね0.5モル程度となるように用いることができる。なお、当然ながら、製造対象となる本発明の式(A)の縮合環ジペプチド化合物の目標製造量に対し、基質となる式(R1)のアミノ酸及び式(R2)のアミノ酸エステルをそれぞれ1モル以上用いる必要がある。
【0098】
式(S1)の第1のシラン化合物及び式(S2)の第2のシラン化合物の使用量は、本発明の製造方法の実施を通じて、式(R1)のアミノ酸及び式(R2)のアミノ酸エステルから(A)の縮合環ジペプチド化合物の形成反応を誘導しうる量であれば、特に制限されない。例えば、式(R1)のアミノ酸1モルに対して、式(S1)の第1のシラン化合物を例えば0.1モル以上、又は0.2モル以上、又は0.3モル以上、又は0.4モル以上、又は0.5モル以上、また、例えば20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は8モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下、又は2モル以下の範囲で用いることができる。また、式(R1)のアミノ酸1モルに対して、式(S2)の第2のシラン化合物を例えば0.2モル以上、又は0.4モル以上、又は0.6モル以上、又は0.8モル以上、又は1.0モル以上、また、例えば40モル以下、又は30モル以下、又は20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下の範囲で用いることができる。なお、2種類以上の式(S1)の第1のシラン化合物を併用する場合には、2種類以上の式(S1)の第1のシラン化合物の合計量が前記範囲を満たすようにすればよい。また、2種類以上の式(S2)の第2のシラン化合物を併用する場合には、2種類以上の式(S2)の第2のシラン化合物の合計量が前記範囲を満たすようにすればよい。
【0099】
塩基を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、式(R1)のアミノ酸1モルに対して、塩基を例えば0.2モル以上、又は0.4モル以上、又は0.6モル以上、又は0.8モル以上、又は1.0モル以上、また、例えば40モル以下、又は30モル以下、又は20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下の範囲で用いることができる。
【0100】
ルイス酸触媒を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、式(R1)のアミノ酸の使用量を100mol%とした場合に、通常0.1mol%以上、例えば0.2mol%以上、又は0.3mol%以上、また、通常30mol%以下、例えば20mol%以下、又は15mol%以下のルイス酸触媒を用いることができる。
【0101】
・反応条件:
本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法における反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応手順毎に例示すると以下のとおりである。
【0102】
まず、工程(i)として、基質化合物のうち式(R1)のアミノ酸を、式(S1)の第1のシラン化合物及び式(S2)の第2のシラン化合物と接触させて反応させる際の反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0103】
工程(i)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0104】
工程(i)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0105】
工程(i)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0106】
工程(i)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0107】
一方、工程(ii)として、もう一方の基質化合物である式(R2)のアミノ酸エステルを反応系に加えて反応させる際の反応条件も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0108】
工程(ii)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0109】
工程(ii)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0110】
工程(ii)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0111】
工程(ii)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0112】
なお、工程(i)及び工程(ii)は各々、逐次法(バッチ法)にて実施してもよく、連続法(フロー法)にて実施してもよい。具体的な逐次法(バッチ法)及び連続法(フロー法)の実施手順の詳細は、本技術分野では公知である。また、工程(i)及び工程(ii)を連続してワンポッドで行ってもよい。
【0113】
・後処理等(精製・回収等):
上述の製造方法により得られた本発明の縮合環ジペプチド化合物に対して、更に種々の後処理を施してもよい。例えば、生成された本発明の縮合環ジペプチド化合物を、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って単離・精製することができる。また、生成された本発明の縮合環ジペプチド化合物を直接、又は単離・精製後、後述する本発明のポリペプチドの製造方法に供し、ポリペプチドの製造に利用してもよい。
【0114】
[V.本発明のポリペプチドの製造方法]
本発明の縮合環ジペプチド化合物は、種々の反応に利用することが可能であるが、中でも、ポリペプチドの製造における利用が好適である。本発明の縮合環ジペプチド化合物を用いたポリペプチドの製造方法(本発明のポリペプチドの製造方法)としては、二種類の態様が挙げられる(これらの態様を以下、適宜「本発明の第1のポリペプチド製造方法」及び「本発明の第2のポリペプチド製造方法」と略称する。)。但し、本発明の縮合環ジペプチド化合物を用いたポリペプチドの製造方法は、これら2つの態様に限定されるものではない。
【0115】
(1)第1のポリペプチド製造方法:
本発明の第1のポリペプチド製造方法は、一分子のポリペプチド化合物の製造に、本発明の縮合環ジペプチド化合物を一分子用いる方法であって、前記式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物、下記式(R3)で表される保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物、及び、下記式(R4)で表されるアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得ることを含む方法である。
【0116】
・シラン含有縮合環ジペプチド化合物(基質化合物):
本発明の第1のポリペプチド製造方法において基質化合物として使用されるアミノ酸は、前記の式(A)で表されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物(本発明の縮合環ジペプチド化合物)である。その詳細は詳述したとおりである。
【0117】
・保護アミノ酸・ペプチド及びアミノ酸・ペプチドエステル(基質化合物):
本発明の第1のポリペプチド製造方法において基質化合物として使用される保護アミノ酸又は保護ペプチド、及びアミノ酸エステル又はペプチドエステルは、それぞれ下記の式(R3)及び式(R4)で表される化合物である。
【0118】
【化20】
【0119】
【化21】
【0120】
式(R3)及び式(R4)において、R31、R32、R41、及びR42は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、一価の脂肪族炭化水素基、一価の芳香族炭化水素基、若しくは一価の複素環式基を表す。なお、これらの基が置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0121】
式(R3)及び式(R4)において、R31、R32、R41、及び/又はR42が、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基である場合は、斯かる脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基とそれが結合する炭素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0122】
【化22】
【0123】
式(R3)及び式(R4)において、R31、R32、R41、及び/又はR42が脂肪族炭化水素基である場合、斯かる脂肪族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は脂肪族炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0124】
式(R3)及び式(R4)において、R31、R32、R41、及び/又はR42が芳香族炭化水素基である場合、斯かる芳香族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は芳香族炭化水素基の種類によっても異なるが、通常4以上、例えば5以上、又は6以上である。当該原子数の具体例は、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0125】
式(R3)及び式(R4)において、R31、R32、R41、及び/又はR42が複素環式基である場合、斯かる複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0126】
式(R3)及び式(R4)におけるR31、R32、R41、及びR42としては、各々独立に、水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはハロゲン原子、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アシル基、複素環式基、若しくは複素環オキシ基等であることが好ましい。
【0127】
式(R3)及び式(R4)におけるR31、R32、R41、及びR42の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0128】
・水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基;
・フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フェニロキシ基、ベンジロキシ基、ナフチロキシ基等のアリーロキシ基;
・アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基、シンナモイル基等のアシル基;
・無置換のアミノ基、及び、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、トリフェニルメチルアミノ基等の置換アミノ基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;
・フラニルオキシ基、ピロリルオキシ基、インドリルオキシ基、キノリルオキシ基等の複素環オキシ基;等。
【0129】
式(R3)及び式(R4)において、R33及びR43は、各々独立に、水素原子、カルボキシル基、若しくは水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表す。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0130】
式(R3)及び式(R4)において、R33及び/又はR43が、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基である場合は、斯かる脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基とそれが結合する窒素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0131】
【化23】
【0132】
式(R3)及び式(R4)において、R33及び/又はR43が脂肪族炭化水素基である場合、斯かる脂肪族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は脂肪族炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0133】
式(R3)及び式(R4)において、R33及び/又はR43が芳香族炭化水素基である場合、斯かる芳香族炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は芳香族炭化水素基の種類によっても異なるが、通常4以上、例えば5以上、又は6以上である。当該原子数の具体例は、例えば4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0134】
式(R3)及び式(R4)において、R33及び/又はR43が複素環式基である場合、斯かる複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0135】
式(R3)及び式(R4)におけるR33及び/又はR43としては、各々独立に、水素原子、水酸基、若しくはカルボキシル基、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アシル基、複素環式基、若しくは複素環オキシ基等であることが好ましい。
【0136】
式(R3)及び式(R4)におけるR33及び/又はR43の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0137】
・水素原子、水酸基、カルボキシル基;
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;等。
【0138】
或いは、式(R3)において、R31とR33とが互いに結合して、R31が結合する炭素原子及びR33が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。同様に、式(R4)において、R41とR43とが互いに結合して、R41が結合する炭素原子及びR43が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0139】
斯かる複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0140】
斯かる複素環の具体例としては、これらに限定されるものではないが、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基等が挙げられる。
【0141】
式(R3)及び式(R4)において、A31、A32、A41、及びA42は、各々独立に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表す。具体例としては、これらに限定されるものではないが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びイソプロピレン基等、並びにこれらの基が1又は2以上の前記の置換基で置換された基が挙げられる。置換基の数の具体例は、例えば3、2、1、又は0である。
【0142】
式(R3)及び式(R4)において、p31、p32、p41、及びp42は、各々独立に、0又は1を表す。
【0143】
式(R3)及び式(R4)において、m及びnは、各々独立に、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す、1以上の整数である。即ち、mは、式(R3)の[ ]内のアミノ酸単位の数を表す。mが1の場合、式(R3)の化合物は保護アミノ酸となり、mが2以上の場合、式(R3)の化合物は保護ペプチドとなる。同様に、nは、式(R4)の[ ]内のアミノ酸単位の数を表す。nが1の場合、式(R4)の化合物はアミノ酸エステルとなり、nが2以上の場合、式(R4)の化合物はペプチドエステルとなる。m及びnの上限は、反応が進行する限りにおいて特に制限されないが、例えば100以下、80以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、12以下、又は10以下等である。m及びnの具体例は、各々独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100等である。
【0144】
式(R3)中、PGaは、アミノ基の保護基を表す。アミノ基の保護基PGaとしては、所与の反応時に当該アミノ基が反応しないように保護することができ、反応後にこれを脱保護してアミノ基に変換可能なものであれば、特に制限されない。斯かるアミノ基の保護基の詳細については、後述する。
【0145】
式(R4)中、PGbは、カルボキシル基の保護基を表す。カルボキシル基の保護基PGbとしては、所与の反応時に当該カルボキシル基が反応しないように保護することができ、反応後にこれを脱保護してカルボキシル基に変換可能なものであれば、特に制限されない。斯かるカルボキシル基の保護基の詳細については、先に詳述したとおりである。
【0146】
・アミノ基の保護基:
本発明の各製造方法(本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法、及び、本発明の第1及び第2のポリペプチド製造方法)において使用されるアミノ基の保護基PGaとしては、公知の多種多様のものが知られている。例としては、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の複素環式基等が挙げられる。中でも、1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基が好ましい。但し、斯かる脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基と、それが保護するアミノ基の窒素原子(式(R3)中PGaが結合する窒素原子)との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す連結基から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0147】
【化24】
【0148】
アミノ基の保護基PGaの炭素数は、通常1以上、又は3以上、また、通常20以下、又は15以下が挙げられる。
【0149】
中でも、アミノ基の保護基PGaは、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基、アシル基、炭化水素オキシカルボニル基、及び炭化水素スルホニル基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0150】
以下、アミノ基の保護基PGaの具体例を列記する。なお、アミノ基の保護基の名称としては、アミノ基の窒素原子に結合している官能基の名称の他、窒素原子をも含めた名称も存在しており、以下の名称においても両者が含まれている。
【0151】
非置換又は置換の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、アリル基、等のアルケニル基;プロパルギル基等のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ベンジル基、パラメトキシベンジル基、トリル基、トリフェニルメチル基(トロック基)等のアリール基;シアノメチル基等の置換炭化水素基等が挙げられる。炭素数は、通常1以上、又は3以上、また、通常20以下、又は15以下が挙げられる。
【0152】
非置換又は置換のアシル基の具体例としては、ベンゾイル基(Bz)、オルトメトキシベンゾイル基、2,6-ジメトキシベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、シンナモイル基、フタロイル基(Phth)等が挙げられる。
【0153】
非置換又は置換の炭化水素オキシカルボニル基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz又はZ)、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2-トリメチルシリルエトキシカルボニル基、2-フェニルエトキシカルボニル基、1-(1-アダマンチル)-1-メチルエトキシカルボニル基、1-(3,5-ジ-t- ブチルフェニル)-1-メチルエトキシカルボニル基、ビニロキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、N-ヒドロキシピペリジニルオキシカルボニル基、p-メトキシベンジルオキシカルボニル基、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基、2-(1,3-ジチアニル)メトキシカルボニル、m-ニトロフェノキシカルボニル基、3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、o-ニトロベンジルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。
【0154】
非置換又は置換の炭化水素スルホニル基の具体例としては、メタンスルホニル基(Ms)、トルエンスルホニル基(Ts)、2-又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)基等が挙げられる。
【0155】
非置換又は置換のアミド基の具体例としては、アセトアミド、o-(ベンゾイロキシメチル)ベンズアミド、2-[(t-ブチルジフェニルシロキシ)メチル]ベンズアミド、2-トルエンスルホンアミド、4-トルエンスルホンアミド、2-ニトロベンゼンスルホンアミド、4-ニトロベンゼンスルホンアミド、tert-ブチルスルフィニルアミド、4-トルエンスルホンアミド、2-(トリメチルシリル)エタンスルホンアミド、ベンジルスルホンアミド等が挙げられる。
【0156】
また、脱保護の手法の観点からは、水素化による脱保護、弱酸による脱保護、フッ素イオンによる脱保護、一電子酸化剤による脱保護、ヒドラジンによる脱保護、酸素による脱保護等のうち、少なくとも1種の手法により脱保護可能な保護基も、アミノ基の保護基PGaの例として挙げられる。
【0157】
アミノ基の保護基PGaの好ましい具体例としては、メシル基(Ms)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジル基(Bn又はBzl)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンゾイル基(Bz)、パラメトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)、フタロイル基(Phth)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、シンナモイル基、トルエンスルホニル基(Ts)、2又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、シアノメチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。これらの保護基は、前記の通り、容易にアミノ基を保護でき、かつ比較的温和な条件で除去することができるためである。
【0158】
アミノ基の保護基PGaのより好ましい具体例としては、メシル基(Ms)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンジル基(Bn)、パラメトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、ベンゾイル基(Bz)、シアノメチル基、シンナモイル基、2又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、トルエンスルホニル基(Ts)、フタロイル基(Phth)、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。
【0159】
アミノ基の保護基PGaの更に好ましい具体例としては、メシル基(Ms)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンジル基(Bn)、パラメトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、ベンゾイル基(Bz)、シアノメチル基、シンナモイル基等が挙げられる。
【0160】
前記工程(i)及び/又は(ii)において、反応系に、縮合剤及び/又はラセミ化防止剤を共存させてもよい。
【0161】
前記式(P1)のポリペプチド化合物のアミノ基の保護基PGa及び/又はカルボキシル基の保護基PGbを脱保護する工程を更に含んでいてもよい。
【0162】
・縮合剤及びラセミ化防止剤:
本発明の第1のペプチド製造方法では、ペプチド形成反応の効率を高める観点から、縮合剤を系内に共存させてもよい。縮合剤の種類は制限されず、縮合反応効率を向上させることが知られている公知の縮合剤を使用することができる。斯かる縮合剤の例としては以下が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0163】
・カルボジイミド系縮合剤:1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド(wsc、edc)、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(wscHCl、edcHCl)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)等。
【0164】
・ホスホニウム系縮合剤:1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩(BOP)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩(PyBOP)、(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩(PyAOP)、クロロトリピロリジノホスホ二ウムヘキサフルオロりん酸塩(PyCloP)、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩(Brop)、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン(DEPBT)等。
【0165】
・イミダゾール系縮合剤:N,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、1,1’-カルボニルジ(1,2,4-トリアゾール)(CDT)等。
【0166】
・ウロニウム系縮合剤:O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩(HBTU)、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩(HATU)、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩(TSTU)等。
【0167】
・トリアジン系縮合剤:4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウム=クロリドn水和物(DMT-MM)等。
【0168】
なお、縮合剤を使用する場合、ペプチド形成反応時のラセミ化を防止する観点から、ラセミ化防止剤を併用してもよい。ラセミ化防止剤の種類も制限されず、縮合反応時のラセミ化を防止することが知られている公知のラセミ化防止剤を使用することができる。斯かるラセミ化防止剤の例としては、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAtN-ヒドロキシこはく酸イミド(HOSu)、炭酸N,N’-ジスクシンイミジル(DSC)等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0169】
・塩基:
本発明の第1のペプチド製造方法では、反応効率を高める観点から、塩基を系内に共存させてもよい。塩基の種類は制限されず、反応効率を向上させることが知られている公知の塩基を使用することができる。斯かる塩基の例としては、フッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)、トリエチルアミン(Et3N)、ジイソプロピルアミン(i-Pr2NH)、ジイソプロピルエチルアミン(i-Pr2EtN)等の、炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基を1~4個有するアミンや、フッ化セシウム等の無機塩基などが挙げられる。挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0170】
・その他の成分:
本発明の第1のペプチド製造方法では、基質化合物である前述の式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル、並びに任意により用いられる塩基、縮合剤、及びラセミ化防止剤に加えて、他の成分を共存させてもよい。斯かる他の成分の例としては、制限されるものではないが、アミド化反応に使用可能な従来の触媒や、シラン化合物、リン化合物等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0171】
触媒の例としては、前述の本発明の縮合環ジペプチド化合物の製造方法の欄で詳述した種々のルイス酸触媒、例えばチタン化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、タンタル化合物、ニオブ化合物等や、メチルアルミニウムビス(4-ブロモ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシド)(MABR)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMS-OTf)、メチルアルミニウムビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシド)(MAD)等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0172】
シラン化合物の例としては、HSi(OCH(CF323、HSi(OCH2CF33、HSi(OCH2CF2CF2H)3、HSi(OCH2CF2CF2CF2CF2H)3等の各種のトリス{ハロ(好ましくはフッ素)置換アルキル}シランの他、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMS-OTf)、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMSIM)、ジメチルエチルシリルイミダゾール(DMESI)、ジメチルイソプロピルシリルイミダゾール(DMIPSI)、1-(tert-ブチルジメチルシリル)イミダゾール(TBSIM)、1-(トリメチルシリル)トリアゾール、1-(tert-ブチルジメチルシリル)トリアゾール、ジメチルシリルイミダゾール、ジメチルシリル(2-メチル)イミダゾール、トリメチルブロモシラン(TMBS)、トリメチルクロロシラン(TMCS)、N-メチル-Nトリメチルシリルトリフルオロアセタミド(MSTFA)、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(BSTFA)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセタミド(BSA)、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)、N-(tert-ブチルジメチルシリル)-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0173】
リン化合物の例としては、ホスフィン化合物(例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリメチロキシホスフィン、トリエチロキシホスフィン、トリプロピロキシホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリフェニロキシホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4-メチルフェニロキシ)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニロキシ)ホスフィン、トリス(4-フルオロフェニロキシ)ホスフィン等)、ホスフェート化合物(例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリメチロキシホスフェート、トリエチロキシホスフェート、トリプロピロキシホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリフェニロキシホスフェート、トリス(4-メチルフェニル)ホスフェート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフェート、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフェート、トリス(4-メチルフェニロキシ)ホスフェート、トリス(4-メトキシフェニロキシ)ホスフェート、トリス(4-フルオロフェニロキシ)ホスフェート等)、多価ホスフィン化合物又は多価ホスフェート化合物(例えば、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)、5,5’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール(SEGPHOS)等)等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で使用してもよいが、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0174】
また、反応効率を高める観点から、反応時に溶媒を用いてもよい。溶媒としては、特に制限されないが、例えば水性溶媒や有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、制限されるものではないが、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、石油エーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1-メチルテトラヒドロフラン(1-MeTHF)、ジイソプロピルエーテル(i-Pr2O)、ジエチルエーテル(Et2O)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル類、アセトニトリル(MeCN)等の窒素系有機溶媒、ジクロロメタン(DCM)等の塩素系有機溶媒、酢酸エチル(AcOEt)等のエステル類、酢酸等の有機酸などが挙げられる。これらの溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0175】
・反応手順:
本発明の第1のペプチド製造方法では、式(A)の縮合環ジペプチド化合物、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物、及び、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を反応させる。懸かる反応により、式(A)の縮合環ジペプチド化合物の式中左側のアミノ酸残基の環が開いて、そのN末端に式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結されると共に、式(A)の縮合環ジペプチド化合物の式中右側のアミノ酸残基の環が開いて、そのC末端に式(R4)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結され、その結果として、式(P1)のポリペプチド化合物が形成される。
【0176】
本発明の第1のペプチド製造方法では、上記の反応が生じる限り、各基質化合物の混合順は制限されない。例としては以下の2つの態様が挙げられるが、各基質化合物の混合順は、これらに限定されるものではない。
【0177】
第1の態様としては、工程(i)として、式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを加えて反応させた後、次いで工程(ii)として、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを反応系に加えて反応させる態様が挙げられる。本態様では、工程(i)において、式(A)の縮合環ジペプチド化合物の式中左側のアミノ酸残基の環が開いて、そのN末端に式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結されると共に、工程(ii)において、式(A)の縮合環ジペプチド化合物の式中右側のアミノ酸残基の環が開いて、そのC末端に式(R4)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結され、その結果として、式(P1)のポリペプチド化合物が形成される。
【0178】
第2の態様としては、工程(i)として、式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを加えて反応させた後、次いで工程(ii)として、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを反応系に加えて反応させる態様が挙げられる。本態様では、工程(i)において、式(A)の縮合環ジペプチド化合物の式中右側のアミノ酸残基の環が開いて、そのC末端に式(R4)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結されると共に、工程(ii)において、式(A)の縮合環ジペプチド化合物の式中左側のアミノ酸残基の環が開いて、そのN末端に式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結され、その結果として、式(P1)のポリペプチド化合物が形成される。
【0179】
なお、任意により用いられる縮合剤及び塩基等、その他の成分を反応系に添加するタイミングは特に制限されず、何れも任意のタイミングで加えればよい。但し、縮合剤及び/又は塩基を使用する場合は、第1及び第2の何れの態様においても、工程(i)及び/又は工程(ii)の開始時に系内に添加することが好ましい。また、縮合剤に加えてラセミ化防止剤を使用する場合には、縮合剤と一緒に系内に添加することが好ましい。また、溶媒を用いて反応を行う場合には、溶媒中で各成分を混合し、相互に接触させればよい。
【0180】
・各成分の使用量比:
本発明の第1のペプチド製造方法において、各成分の使用量は限定されるものではないが、好ましくは以下の通りである。
【0181】
式(A)の縮合環ジペプチド化合物と式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドとの量比は、特に制限されないが、式(A)の縮合環ジペプチド化合物1モルに対して、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを、例えば0.1モル以上、又は0.2モル以上、又は0.3モル以上、又は0.4モル以上、又は0.5モル以上、また、例えば20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は8モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下、又は2モル以下の範囲で用いることができる。
【0182】
式(A)の縮合環ジペプチド化合物と式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルとの量比は、特に制限されないが、式(A)の縮合環ジペプチド化合物1モルに対して、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを、例えば0.1モル以上、又は0.2モル以上、又は0.3モル以上、又は0.4モル以上、又は0.5モル以上、また、例えば20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は8モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下、又は2モル以下の範囲で用いることができる。
【0183】
なお、当然ながら、製造対象となる本発明の式(P1)のポリペプチド化合物の目標製造量に対し、基質となる式(A)の縮合環ジペプチド化合物、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド、及び式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルをそれぞれ1モル以上用いる必要がある。
【0184】
塩基を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、式(A)の縮合環ジペプチド化合物1モルに対して、塩基を例えば0.2モル以上、又は0.4モル以上、又は0.6モル以上、又は0.8モル以上、又は1.0モル以上、また、例えば40モル以下、又は30モル以下、又は20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下の範囲で用いることができる。なお、複数の工程において塩基を添加する場合には、各工程において上記範囲内の量の塩基を添加することが好ましい。
【0185】
縮合剤を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、式(A)の縮合環ジペプチド化合物1モルに対して、縮合剤を例えば0.2モル以上、又は0.4モル以上、又は0.6モル以上、又は0.8モル以上、又は1.0モル以上、また、例えば40モル以下、又は30モル以下、又は20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下の範囲で用いることができる。なお、複数の工程において縮合剤を添加する場合には、各工程において上記範囲内の量の縮合剤を添加することが好ましい。
【0186】
縮合剤に加えてラセミ化防止剤を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、式(A)の縮合環ジペプチド化合物1モルに対して、ラセミ化防止剤を例えば0.2モル以上、又は0.4モル以上、又は0.6モル以上、又は0.8モル以上、又は1.0モル以上、また、例えば40モル以下、又は30モル以下、又は20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下の範囲で用いることができる。なお、複数の工程においてラセミ化防止剤を添加する場合には、各工程において上記範囲内の量のラセミ化防止剤を添加することが好ましい。
【0187】
・反応条件:
本発明の第1のペプチド製造方法における反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例として、前記の第1及び第2の各態様について、反応手順毎に例示すると以下のとおりである。
【0188】
まず、第1の態様の場合、工程(i)として、式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを加えて反応させる際の反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0189】
工程(i)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0190】
工程(i)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0191】
工程(i)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0192】
工程(i)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0193】
一方、工程(ii)として、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを反応系に加えて反応させる際の反応条件も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0194】
工程(ii)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0195】
工程(ii)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0196】
工程(ii)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0197】
工程(ii)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0198】
次に、第2の態様の場合、工程(i)として、式(A)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを加えて反応させる際の反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0199】
工程(i)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0200】
工程(i)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0201】
工程(i)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0202】
工程(i)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0203】
一方、工程(ii)として、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを反応系に加えて反応させる際の反応条件も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0204】
工程(ii)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0205】
工程(ii)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0206】
工程(ii)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0207】
工程(ii)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0208】
なお、第1及び第2の態様のいずれにおいても、工程(i)及び工程(ii)は各々、逐次法(バッチ法)にて実施してもよく、連続法(フロー法)にて実施してもよい。具体的な逐次法(バッチ法)及び連続法(フロー法)の実施手順の詳細は、本技術分野では公知である。また、工程(i)及び工程(ii)を連続してワンポッドで行ってもよい。
【0209】
・ポリペプチド(目的化合物):
本発明の第1のポリペプチド製造方法において最終的に製造される目的化合物たるポリペプチド化合物は、下記の式(P1)で表される化合物である。
【化25】
【0210】
式(P1)中、R11、R12、R13、R21、及びR22は、前記式(A)における定義と同じ基を表し、PGa、R31、R32、R33、A31、A32、p31、p32、及びmは、前記式(R3)における定義と同じ基を表し、PGb、R41、R42、R43、A41、A42、p41、p42、及びnは、前記式(R4)における定義と同じ基を表す。
【0211】
ここで、式(P1)の化合物は、m+n+2をアミノ酸残基数とするポリペプチド化合物となる。即ち、例えば式(R3)の化合物が保護アミノ酸であり、式(R4)の化合物がアミノ酸エステルである場合(即ち、m及びnが共に1の場合)、製造される式(P1)の化合物はアミノ酸残基数m+n+2=4のポリペプチド化合物、即ちテトラペプチド化合物となる。また、例えば式(R3)の化合物が保護ジペプチドであり、式(R4)の化合物がアミノ酸エステルである場合(即ち、mが2、nが1の場合)や、例えば式(R3)の化合物が保護アミノ酸であり、式(R4)の化合物がジペプチドエステルである場合(即ち、mが1、nが2の場合)、製造される式(P1)の化合物はアミノ酸残基数m+n+2=5のポリペプチド化合物、即ちペンタペプチド化合物となる。また、例えば式(R3)の化合物が保護ジペプチドであり、式(R4)の化合物がジペプチドエステルである場合(即ち、mが2、nが2の場合)、製造される式(P1)の化合物はアミノ酸残基数m+n+2=6のポリペプチド化合物、即ちヘキサペプチド化合物となる。即ち、使用する式(R3)及び式(R4)の基質化合物の各アミノ酸残基数(m及びn)によって、得られる式(P1)のポリペプチド化合物(m+n+2)を調整することが可能となる。
【0212】
なお、上述の製造方法により得られた式(P1)のポリペプチド化合物に対して、更に種々の後処理を施してもよい。斯かる後処理としては、より得られた式(P1)のポリペプチド化合物の単離・精製や、アミノ基の保護基PGa及び/又はカルボキシル基の保護基PGbの脱保護等が挙げられる。斯かる後処理についてはまとめて後述する。
【0213】
(2)第2のポリペプチド製造方法:
本発明の第2のポリペプチド製造方法は、一分子のポリペプチドの製造に、本発明の縮合環ジペプチド化合物を二分子用いる方法であって、少なくとも下記工程(i)~(iii)を含む方法である。
(i)下記式(A1)で表されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、下記式(R3)で表される保護アミノ酸又は保護ペプチドを加えて反応させる工程。
(ii)前記工程(i)の反応物に、下記式(A2)で表されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物を加えて更に反応させる工程。
(iii)前記工程(ii)の反応物に、下記式(R4)で表されるアミノ酸エステル又はペプチドエステルを加えて更に反応させることにより、下記式(P1)で表されるポリペプチド化合物を得る工程。
【0214】
・シラン含有縮合環ジペプチド化合物(基質化合物):
本発明の第2のポリペプチド製造方法において基質化合物として使用されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物は、前記の式(A)で表されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物(本発明の縮合環ジペプチド化合物)と同様の化合物であるが、一分子のポリペプチドの合成に際し二分子のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を使用する点で、前述した本発明の第1のポリペプチド製造方法とは異なる。ここで、これら二分子のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を区別するために、それぞれ下記の式(A1)及び式(A2)で表すものとする。
【0215】
【化26】
【0216】
【化27】
【0217】
式(A1)におけるR111、R112、R113、R121、及びR122、並びに、式(A2)におけるR211、R212、R213、R221、及びR222は、各々独立に、式(A)におけるR11、R12、R21、及びR22と同様の定義を表す。また、式(A1)におけるRa11及びRa12、並びに、式(A2)におけるRa21及びRa22は、各々独立に、式(A)におけるRa1及びRa2と同様の定義を表す。その詳細については、何れも前述したとおりである。
【0218】
・保護アミノ酸・ペプチド及びアミノ酸・ペプチドエステル(基質化合物):
本発明の第2のポリペプチド製造方法において基質化合物として使用される保護アミノ酸又は保護ペプチド、及び、アミノ酸エステル又はペプチドエステルは、本発明の第2のポリペプチド製造方法と同様、前述の式(R3)及び式(R4)で表される化合物である。その詳細については前述したとおりである。
【0219】
・縮合剤:
本発明の第2のペプチド製造方法でも、ペプチド形成反応の効率を高める観点から、縮合剤を系内に共存させてもよい。また、縮合剤を使用する場合、ラセミ化防止剤を併用してもよい。縮合剤及びラセミ化防止剤の詳細については、先の本発明の第1のペプチド製造方法の説明において詳述したとおりである。
【0220】
・塩基:
本発明の第2のペプチド製造方法でも、反応効率を高める観点から、塩基を系内に共存させてもよい。塩基の詳細についても、先の本発明の第1のペプチド製造方法の説明において詳述したとおりである。
【0221】
・その他の成分:
本発明の第2のペプチド製造方法でも、基質化合物である前述の式(A1)及び式(A2)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル、並びに任意により用いられる塩基、縮合剤、及びラセミ化防止剤に加えて、他の成分を共存させてもよい。例としては、触媒、シラン化合物、リン化合物等が挙げられる。斯かる他の成分の詳細についても、先の本発明の第1のペプチド製造方法の説明において詳述したとおりである。
【0222】
なお、反応効率を高める観点からは、溶媒中で反応を行ってもよい。斯かる溶媒の詳細についても、先の本発明の第1のペプチド製造方法の説明において詳述したとおりである。
【0223】
・反応手順:
本発明の第2のペプチド製造方法では、式(A1)及び式(A2)の縮合環ジペプチド化合物、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド化合物、及び、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステル化合物を反応させる。懸かる反応により、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物の式中右側のアミノ酸残基の環と、式(A2)の縮合環ジペプチド化合物の式中左側のアミノ酸残基の環が共に開いて、前者のアミノ酸残基のC末端に、後者のアミノ酸残基のN末端が連結されると共に、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物の式中左側のアミノ酸残基の環が開いて、そのN末端に式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結され、更には、式(A2)の縮合環ジペプチド化合物の式中右側のアミノ酸残基の環が開いて、式(R4)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結され、その結果として、式(P2)のポリペプチド化合物が形成される。
【0224】
本発明の第1のペプチド製造方法では、上記の反応が生じる限り、各基質化合物の混合順は制限されない。例としては以下の2つの態様が挙げられるが、各基質化合物の混合順は、これらに限定されるものではない。
【0225】
第1の態様としては、工程(i)として、式(A1)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを加えて反応させ、次いで工程(ii)として、式(A2)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を反応系に加えて反応させ、更に工程(iii)として、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを反応系に加えて反応させる態様が挙げられる。本態様では、工程(i)において、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物の式中左側のアミノ酸残基の環が開いて、そのN末端に式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結され、工程(ii)において、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物の式中右側のアミノ酸残基の環と、式(A2)の縮合環ジペプチド化合物の式中左側のアミノ酸残基の環が共に開いて、前者のアミノ酸残基のC末端に、後者のアミノ酸残基のN末端が連結され、工程(iii)において、式(A2)の縮合環ジペプチド化合物の式中右側のアミノ酸残基の環が開いて、式(R4)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結され、その結果として、式(P2)のポリペプチド化合物が形成される。
【0226】
第2の態様としては、工程(i)として、式(A2)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを加えて反応させ、次いで工程(ii)として、式(A1)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を反応系に加えて反応させ、更に工程(iii)として、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを反応系に加えて反応させる態様が挙げられる。本態様では、工程(i)において、式(A2)の縮合環ジペプチド化合物の式中右側のアミノ酸残基の環が開いて、式(R4)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結され、工程(ii)において、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物の式中右側のアミノ酸残基の環と、式(A2)の縮合環ジペプチド化合物の式中左側のアミノ酸残基の環が共に開いて、前者のアミノ酸残基のC末端に、後者のアミノ酸残基のN末端が連結され、工程(iii)において、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物の式中左側のアミノ酸残基の環が開いて、そのN末端に式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドが連結され、その結果として、式(P1)のポリペプチド化合物が形成される。
【0227】
なお、任意により用いられる縮合剤及び塩基等、その他の成分を反応系に添加するタイミングは特に制限されず、何れも任意のタイミングで加えればよい。但し、縮合剤及び/又は塩基を使用する場合は、第1及び第2の何れの態様においても、工程(i)及び/又は工程(ii)及び/又は工程(iii)の開始時に系内に添加することが好ましい。また、縮合剤に加えてラセミ化防止剤を使用する場合には、縮合剤と一緒に系内に添加することが好ましい。また、溶媒を用いて反応を行う場合には、溶媒中で各成分を混合し、相互に接触させればよい。
【0228】
・各成分の使用量比:
本発明の第2のペプチド製造方法において、各成分の使用量は限定されるものではないが、好ましくは以下の通りである。
【0229】
式(A1)の縮合環ジペプチド化合物と式(A2)の縮合環ジペプチド化合物との量比は、特に制限されないが、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物1モルに対して、式(A2)の縮合環ジペプチド化合物を、例えば0.1モル以上、又は0.2モル以上、又は0.3モル以上、又は0.4モル以上、又は0.5モル以上、また、例えば20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は8モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下、又は2モル以下の範囲で用いることができる。
【0230】
式(A1)の縮合環ジペプチド化合物と式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドとの量比は、特に制限されないが、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物1モルに対して、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを、例えば0.1モル以上、又は0.2モル以上、又は0.3モル以上、又は0.4モル以上、又は0.5モル以上、また、例えば20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は8モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下、又は2モル以下の範囲で用いることができる。
【0231】
式(A1)の縮合環ジペプチド化合物と式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルとの量比は、特に制限されないが、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物1モルに対して、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを、例えば0.1モル以上、又は0.2モル以上、又は0.3モル以上、又は0.4モル以上、又は0.5モル以上、また、例えば20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は8モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下、又は2モル以下の範囲で用いることができる。
【0232】
なお、当然ながら、製造対象となる本発明の式(P2)のポリペプチド化合物の目標製造量に対し、基質となる式(A)の縮合環ジペプチド化合物、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチド、及び式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルをそれぞれ1モル以上用いる必要がある。
【0233】
塩基を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物1モルに対して、塩基を例えば0.2モル以上、又は0.4モル以上、又は0.6モル以上、又は0.8モル以上、又は1.0モル以上、また、例えば40モル以下、又は30モル以下、又は20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下の範囲で用いることができる。なお、複数の工程において塩基を添加する場合には、各工程において上記範囲内の量の塩基を添加することが好ましい。
【0234】
縮合剤を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物1モルに対して、縮合剤を例えば0.2モル以上、又は0.4モル以上、又は0.6モル以上、又は0.8モル以上、又は1.0モル以上、また、例えば40モル以下、又は30モル以下、又は20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下の範囲で用いることができる。なお、複数の工程において縮合剤を添加する場合には、各工程において上記範囲内の量の縮合剤を添加することが好ましい。
【0235】
縮合剤に加えてラセミ化防止剤を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、式(A1)の縮合環ジペプチド化合物1モルに対して、ラセミ化防止剤を例えば0.2モル以上、又は0.4モル以上、又は0.6モル以上、又は0.8モル以上、又は1.0モル以上、また、例えば40モル以下、又は30モル以下、又は20モル以下、又は15モル以下、又は10モル以下、又は6モル以下、又は4モル以下の範囲で用いることができる。なお、複数の工程においてラセミ化防止剤を添加する場合には、各工程において上記範囲内の量のラセミ化防止剤を添加することが好ましい。
【0236】
・反応条件:
本発明の第2のペプチド製造方法における反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例として、前記の第1及び第2の各態様について、反応手順毎に例示すると以下のとおりである。
【0237】
まず、第1の態様の場合、工程(i)として、式(A1)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを加えて反応させる際の反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0238】
工程(i)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0239】
工程(i)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0240】
工程(i)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0241】
工程(i)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0242】
次に、工程(ii)として、式(A2)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を反応系に加えて反応させる際の反応条件も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0243】
工程(ii)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0244】
工程(ii)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0245】
工程(ii)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0246】
工程(ii)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0247】
更に、工程(iii)として、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを反応系に加えて反応させる際の反応条件も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0248】
工程(iii)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0249】
工程(iii)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0250】
工程(iii)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0251】
工程(iii)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0252】
次に、第2の態様の場合、工程(i)として、式(A2)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物に、式(R4)のアミノ酸エステル又はペプチドエステルを加えて反応させる際の反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0253】
工程(i)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0254】
工程(i)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0255】
工程(i)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0256】
工程(i)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0257】
次に、工程(ii)として、式(A1)のシラン含有縮合環ジペプチド化合物を反応系に加えて反応させる際の反応条件も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0258】
工程(ii)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0259】
工程(ii)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0260】
工程(ii)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0261】
工程(ii)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0262】
更に、工程(iii)として、式(R3)の保護アミノ酸又は保護ペプチドを反応系に加えて反応させる際の反応条件も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0263】
工程(iii)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば0℃以上、又は10℃以上、又は20℃以上、また、例えば100℃以下、又は80℃以下、又は60℃以下とすることができる。
【0264】
工程(iii)の反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0265】
工程(iii)の反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0266】
工程(iii)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、又は20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、又は60時間以内、又は50時間以内とすることができる。
【0267】
なお、第1及び第2の態様のいずれにおいても、工程(i)、工程(ii)、及び工程(ii)は各々、逐次法(バッチ法)にて実施してもよく、連続法(フロー法)にて実施してもよい。具体的な逐次法(バッチ法)及び連続法(フロー法)の実施手順の詳細は、本技術分野では公知である。また、工程(i)及び工程(ii)、及び/又は、工程(ii)及び工程(ii)を、それぞれ連続してワンポッドで行ってもよい。
【0268】
・ポリペプチド(目的化合物):
本発明の第2のポリペプチド製造方法において最終的に製造される目的化合物たるポリペプチドは、下記の式(P2)で表される化合物である。
【化28】
【0269】
式(P2)中、R111、R112、R113、R121、及びR122は、前記式(A1)における定義と同じ基を表し、R211、R212、R213、R221、及びR222は、前記式(A2)における定義と同じ基を表し、PGa、R31、R32、R33、A31、A32、p31、p32、及びmは、前記式(R3)における定義と同じ基を表し、PGb、R41、R42、R43、A41、A42、p41、p42、及びnは、前記式(R4)における定義と同じ基を表す。
【0270】
ここで、式(P2)の化合物は、m+n+4をアミノ酸残基数とするポリペプチド化合物となる。即ち、例えば式(R3)の化合物が保護アミノ酸であり、式(R4)の化合物がアミノ酸エステルである場合(即ち、m及びnが共に1の場合)、製造される式(P2)の化合物はアミノ酸残基数m+n+4=6のポリペプチド化合物、即ちヘキサペプチド化合物となる。また、例えば式(R3)の化合物が保護ジペプチドであり、式(R4)の化合物がアミノ酸エステルである場合(即ち、mが2、nが1の場合)や、例えば式(R3)の化合物が保護アミノ酸であり、式(R4)の化合物がジペプチドエステルである場合(即ち、mが1、nが2の場合)、製造される式(P2)の化合物はアミノ酸残基数m+n+4=7のポリペプチド化合物、即ちヘプタペプチド化合物となる。即ち、使用する式(R3)及び式(R4)の基質化合物の各アミノ酸残基数(m及びn)によって、得られる式(P2)のポリペプチド化合物(m+n+4)を調整することが可能となる。
【0271】
なお、上述の製造方法により得られた式(P2)のポリペプチド化合物に対して、更に種々の後処理を施してもよい。斯かる後処理としては、より得られた式(P2)のポリペプチド化合物の単離・精製や、アミノ基の保護基PGa及び/又はカルボキシル基の保護基PGbの脱保護等が挙げられる。斯かる後処理についてはまとめて後述する。
【0272】
(3)その他:
上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物に対して、更に種々の後処理を施してもよい。
【0273】
例えば、上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物を、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って単離・精製することができる。
【0274】
また、上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物において、保護基PGaにより保護されたアミノ基の脱保護を行うこともできる。保護アミノ基を脱保護する方法は特に制限されず、保護基PGaの種類に応じて様々な方法を用いることができる。例としては、水素化による脱保護、弱酸による脱保護、フッ素イオンによる脱保護、一電子酸化剤による脱保護、ヒドラジンによる脱保護、酸素による脱保護などが挙げられる。水素化による脱保護の場合、(a)水素ガスの存在下に、還元触媒として、パラジウム、パラジウム-炭素、水酸化パラジウム、水酸化パラジウム-炭素等のなどの金属触媒を用いて還元して脱保護する方法、(b)パラジウム、パラジウム-炭素、水酸化パラジウム、水酸化パラジウム-炭素等のなどの金属触媒の存在下、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウム、ジボラン等の水素化還元剤を用いて還元して脱保護する方法等が挙げられる。
【0275】
また、上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物において、保護基PGbにより保護されたカルボキシル基の脱保護を行うこともできる。保護カルボキシル基を脱保護する方法は特に制限されず、保護基PGbの種類に応じて様々な方法を用いることができる。例としては、水素化による脱保護、塩基による脱保護、弱酸による脱保護などが挙げられる。塩基による脱保護の場合、塩基として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基を用いて脱保護する方法等が挙げられる。
【0276】
また、上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物を(必要に応じて脱保護した上で)、前記の式(R3)の保護ペプチド及び/又は式(R4)のペプチドエステルとして用い、再び本発明の第1又は第2のペプチド製造方法に供してもよい。或いは、上述の製造方法により得られた式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物を(必要に応じて脱保護した上で)、従来公知の他のアミド化方法又はペプチド製造方法に供してもよい。こうして、式(P1)又は式(P2)のポリペプチド化合物に他のアミノ酸又はペプチドをアミド結合により連結し、アミノ酸残基を伸長して、より大型のポリペプチドを合成することができる。こうした手順を逐次繰り返すことにより、原理的には任意のアミノ酸残基数及びアミノ酸配列のポリペプチドを合成することが可能となる。
【0277】
なお、本発明者等はアミノ酸又はペプチドを連結するためのアミド化反応やそれによるポリペプチドの製造方法に関し、以下の先行特許出願を行っているところ、本発明の種々のポリペプチドの製造方法を、これらの先行特許出願に記載のアミド化反応やポリペプチドの製造方法と適宜組み合わせて実施し、及び/又は、これらの先行特許出願に記載のアミド化反応やポリペプチドの製造方法の条件を考慮して適宜改変することも可能である。なお、これらの先行特許出願の記載は、その全体が援用により本明細書に組み込まれる。
(1)国際公開第2017/204144号(2017年5月22日出願)
(2)国際公開第2018/199146号(2018年4月25日出願)
(3)国際公開第2018/199147号(2018年4月25日出願)
(4)国際公開第2019/208731号(2019年4月25日出願)
(5)国際特許出願PCT/JP2020/040951号(2020年10月30日出願)
(6)国際特許出願PCT/JP2020/040960号(2020年10月30日出願)
(7)国際特許出願PCT/JP2021/002306号(2021年1月22日出願)
【実施例
【0278】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下に述べるアミノ酸のうち、光学異性を有するものについては、別途明記するものを除き、L体を指すものとする。
【0279】
[実施例群I:縮合環ジペプチド化合物の調製]
【0280】
・一般反応手順I(1):
【化29】
【0281】
16mL試験管に、スターラーバーと、無保護アミノ酸(2当量)、シリルジクロライド(2当量)、トリメチルシリルイミダゾール(TMS-IM、146.7μL、4当量)、及びトリエチルアミン(70μL、2当量)を入れ、ジクロロメタン(DCM)中、室温で1時間攪拌する。その後、グローブボックスで、試験管内にタンタルエトキシド(6.5μL、10mol%)及びアミノ酸tert-ブチルエステル(0.25mmol)を加えて、室温又は50℃で24時間攪拌する。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離することで、目的とする化合物を得る。
【0282】
・一般反応手順I(2):
【化30】
【0283】
16mL試験管に、スターラーバーと、無保護アミノ酸(2当量)、シリルジクロライド(2当量)、トリメチルシリルイミダゾール(TMS-IM、146.7μL、4当量)、及びトリエチルアミン(70μL、2当量)を入れ、ジクロロメタン(DCM)中、室温で1時間攪拌する。その後、グローブボックスで、試験管内にアミノ酸クミルエステル(0.25mmol)を加えて、室温で24時間攪拌する(タンタルエトキシド等のルイス酸触媒は使用しない。)。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離することで、目的とする化合物を得る。
【0284】
なお、反応に使用するアミノ酸クミルエステルは、例えばRoesner et al., Chem. Sci., 2019, 10:2465-2472の記載を参考に、以下の手順で合成することができる。即ち、試験管に2-フェニル-2-プロパノール(2.2当量)及び水酸化ナトリウム(0.5当量)を入れ、ジエチルエーテル中、0℃~室温で1時間、攪拌しながら反応させる。次いで、試験管内にトリクロロアセトニトリル(2当量)を加え、0℃~室温で3時間、攪拌しながら反応させ、ジエチルエーテルによりろ紙にて固形物をろ去した後、減圧下で溶媒を除去する。その後、目的とするアミノ酸クミルエステルに対応するアミノ酸のアミノ基がFmoc基で保護されたFmoc保護アミノ酸1当量を加え、ジクロロメタン中、室温で一晩攪拌しながら反応させ、Fmoc保護アミノ酸クミルエステルを得る。最後に、ジエチルアミン(2当量)を加え、ジクロロメタン中で室温で1時間反応させることにより、Fmoc基を脱保護して所望のアミノ酸クミルエステルを得ることができる。
【0285】
・実施例I(1)縮合環ジペプチド化合物-Si(Me) 2 -Phe-Ala-の合成
【化31】
【0286】
一般合成手順I(1)に従い、L-フェニルアラニン(82.6mg、0.500mmol)、ジメチルジクロロシラン(59.8μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(4/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として86%収率(62.8mg)で得た。ジアステレオマー比率は>17:1であった。
【0287】
・実施例I(2)縮合環ジペプチド化合物-Si(Me,Ph)-Phe-Ala-の合成
【化32】
【0288】
一般合成手順I(1)に従い、L-フェニルアラニン(82.6mg、0.500mmol)、ジクロロメチルフェニルシラン(80.5μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(4/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として48%収率(42.5mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0289】
・実施例I(3)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Phe-Ala-の合成
【化33】
【0290】
一般合成手順I(1)に従い、L-フェニルアラニン(82.6mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(4/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として91%収率(77.4mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0291】
・実施例I(4)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Val-Ala-の合成
【化34】
【0292】
一般合成手順I(1)に従い、L-バリン(58.6mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて50℃で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(3/2)で単離した結果、表題化合物を白色固体として83%収率(76.4mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0293】
・実施例I(5)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ile-Ala-の合成
【化35】
【0294】
一般合成手順I(1)に従い、L-イソロイシン(65.6mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて50℃で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(1/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として76%収率(72.6mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0295】
・実施例I(6)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Leu-Ala-の合成
【化36】
【0296】
一般合成手順I(1)に従い、L-ロイシン(65.6mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて50℃で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(1/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として85%収率(81.2mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0297】
・実施例I(7)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ser(t-Bu)-Ala-の合成
【化37】
【0298】
一般合成手順I(1)に従い、O-tert-ブチル-L-セリン(80.6mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(3/2)で単離した結果、表題化合物を白色固体として92%収率(94.8mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0299】
・実施例I(8)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Thr(t-Bu)-Ala-の合成
【化38】
【0300】
一般合成手順I(1)に従い、O-tert-ブチル-L-スレオニン(87.6mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(3/2)で単離した結果、表題化合物を白色固体として91%収率(97.0mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0301】
・実施例I(9)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Met-Ala-の合成
【化39】
【0302】
一般合成手順I(1)に従い、L-メチオニン(74.6mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて50℃で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(3/2)で単離した結果、表題化合物を白色固体として92%収率(92.0mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0303】
・実施例I(10)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Lys(Boc)-Ala-の合成
【化40】
【0304】
一般合成手順I(1)に従い、Nε-Boc-L-リシン(123mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(3/2)で単離した結果、表題化合物を白色固体として88%収率(109mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0305】
・実施例I(11)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Tyr(t-Bu)-Ala-の合成
【化41】
【0306】
一般合成手順I(1)に従い、O-tert-ブチル-L-チロシン(119mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(1/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として90%収率(110mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0307】
・実施例I(12)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Trp(Boc)-Ala-の合成
【化42】
【0308】
一般合成手順I(1)に従い、N1-Boc-L-トリプトファン(152mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(1/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として81%収率(112mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0309】
・実施例I(13)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Asp(t-Bu)-Ala-の合成
【化43】
【0310】
一般合成手順I(1)に従い、L-アスパラギン酸4-tert-ブチル(94.6mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(1/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として95%収率(105mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0311】
・実施例I(14)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Glu(t-Bu)-Ala-の合成
【化44】
【0312】
一般合成手順I(1)に従い、L-グルタミン酸5-tert-ブチル(102mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(1/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として93%収率(105mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0313】
・実施例I(15)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Aib-Gly-の合成
【化45】
【0314】
一般合成手順I(1)に従い、2-アミノイソ酪酸(51.6mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、グリシンtert-ブチルエステル(32.8mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(1/1)で単離した結果、表題化合物を無色固体として84%収率(71.4mg)で得た。
【0315】
・実施例I(16)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Val-の合成
【化46】
【0316】
一般合成手順I(1)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-バリンtert-ブチルエステル(43.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(1/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として81%収率(74.6mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0317】
・実施例I(17)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ser(t-Bu)-の合成
【化47】
【0318】
一般合成手順I(1)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、O-tert-ブチル-L-セリンtert-ブチルエステル(54.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(3/2)で単離した結果、表題化合物を白色固体として91%収率(93.8mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0319】
・実施例I(18)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Thr(t-Bu)-の合成
【化48】
【0320】
一般合成手順I(1)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、O-tert-ブチル-L-スレオニンtert-ブチルエステル(57.8mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(2/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として90%収率(95.9mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0321】
・実施例I(19)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Met-の合成
【化49】
【0322】
一般合成手順I(1)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-メチオニンtert-ブチルエステル(51.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(3/2)で単離した結果、表題化合物を白色固体として93%収率(93.0mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0323】
・実施例I(20)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Lys(Boc)-の合成
【化50】
【0324】
一般合成手順I(1)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、Nε-Boc-L-リシンtert-ブチルエステル(75.6mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(2/1)で単離した結果、表題化合物を白色固体として87%収率(108mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0325】
・実施例I(21)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Glu(t-Bu)-の合成
【化51】
【0326】
一般合成手順I(1)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-グルタミン酸ジtert-ブチルエステル(64.8mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(3/2)で単離した結果、表題化合物を白色固体として93%収率(106mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0327】
・実施例I(22)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -MeAla-Ala-の合成
【化52】
【0328】
一般合成手順I(1)に従い、N-メチル-L-アラニン(51.6mg、0.500mmol)、ジメチルジクロロシラン(59.8μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、L-アラニンtert-ブチルエステル(36.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチルで単離した結果、表題化合物を白色固体として84%収率(48.3mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0329】
・実施例I(23)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Phe-の合成(1)
【化53】
【0330】
一般合成手順I(1)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、フェニルアラニンtert-ブチルエステル(55.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチルで単離した結果、表題化合物を白色固体として91%収率(94.6mg)で得た。ジアステレオマー比率は約4:1であった。
【0331】
・実施例I(24)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Phe-の合成(2)
【化54】
【0332】
一般合成手順I(2)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でフェニルアラニンクミルエステル(70.8mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチルで単離した結果、表題化合物を白色固体として93%収率(96.8mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0333】
・実施例I(25)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Tyr(t-Bu)-の合成
【化55】
【0334】
一般合成手順I(2)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内で(tert-ブチル)チロシンクミルエステル(88.8mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチルで単離した結果、表題化合物を白色固体として95%収率(116mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0335】
・実施例I(26)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Phg-の合成
【化56】
【0336】
一般合成手順I(2)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でフェニルグリシンクミルエステル(67.3mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチルで単離した結果、表題化合物を白色固体として97%収率(97.5mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0337】
・実施例I(27)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Cys(Trt)-の合成(1)
【化57】
【0338】
一般合成手順I(1)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でタンタルエトキシド(6.5μL、0.0250mmol)、S-トリチルシステインtert-ブチルエステル(105mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチルで単離した結果、表題化合物を白色固体として85%収率(131mg)で得た。ジアステレオマー比率は約4:1であった。
【0339】
・実施例I(28)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Cys(Trt)-の合成(2)
【化58】
【0340】
一般合成手順I(2)に従い、L-アラニン(44.5mg、0.500mmol)、ジクロロジフェニルシラン(104μL、0.500mmol)、TMS-IM(147μL、1.00mmol)及びトリエチルアミン(70.0μL、0.500mmol)をDCM中一時間攪拌後、グローブボックス内でS-トリチルシステインクミルエステル(120mg、0.250mmol)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチルで単離した結果、表題化合物を白色固体として91%収率(140mg)で得た。ジアステレオマー比率は>20:1であった。
【0341】
[参考例群:縮合環ジペプチド化合物とアリール化合物との反応]
【0342】
・参考例(1)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-とベンジルブロミドとの反応
【化59】
【0343】
20mL試験管にスターラーバーと縮合環ジペプチド化合物(0.25mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(750μL、3.0当量)及びベンジルブロマイド(89μL、3.0当量)を添加し、THF中室温で24時間攪拌した。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈した後シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離した結果、目的とする化合物が得られた。
【0344】
・参考例(2)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-とベンジルアミンとの反応
【化60】
【0345】
20mL試験管にスターラーバーと縮合環ジペプチド化合物(0.25mmol)、メチルアルミニウムビス(4-ブロモ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシド)(MABR:THF中1mol/L)(25μL、10mol%)、TMS-OTf(67.7μL、1.5当量)及びベンジルアミン(55μL、2.0当量)を添加し、アセトニトリル中90℃で攪拌した。24時間後、TBAF(THF中1mol/L)(250μL、1.0当量)を添加し、3時間室温下で攪拌した。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈した後シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離した結果、目的とする化合物が得られた。
【0346】
[実施例群II:縮合環ジペプチド化合物を用いたテトラ/ペンタ/ヘキサペプチドの合成]
【0347】
・一般反応手順II(1):
【化61】
【0348】
20mL試験管に、スターラーバーと、縮合環ジペプチド化合物(0.25mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、1.5当量)、wscHCl(95.9mg.2当量)、HOBt(67.6mg、2当量)、及びN-保護アミノ酸(1.1当量)を入れ、DCM中、室温で一晩攪拌する。その後、試験管内にアミノ酸tert-ブチルエステル(3当量)、wscHCl(95.9mg.2当量)、HOBt(67.6mg、2当量)、トリエチルアミン(53μL、1.5当量)及びDCM(1.00mL)を加えて、室温で24時間攪拌する。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離することで、目的とする化合物を得る。
【0349】
・一般反応手順II(2):
【化62】
【0350】
20mL試験管に、スターラーバーと、縮合環ジペプチド化合物(0.25mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMS-OTf)(THF中1mol/L)(67.8μL、1.5当量)、メチルアルミニウムビス(4-ブロモ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシド)(MABR)ヘキサン溶液(12.5μL、10mol%)、及びアミノ酸tert-ブチルエステル(2当量)を入れ、アセトニトリル(MeCN)中、80℃に加熱しながら24時間攪拌する。その後、試験管内にアミノ基をFmoc基で保護し、カルボキシル基を塩素化カルボニル基に変換したアミノ酸(2当量)及びTBAF(THF中1mol/L)(500μL、2当量)を加えて、室温で一晩攪拌する。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離することで、目的とする化合物を得る。
【0351】
・実施例II(1)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたテトラペプチドCbz-Ala-Ala-Ala-Ala-Ot-Buの合成:
【化63】
【0352】
一般合成手順II(1)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph)2-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、Cbz-アラニン(61.4mg、0.275mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、0.375mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、及びHOBt(67.6mg、0.500mmol)を窒素雰囲気下、一晩室温で攪拌した。その後、アラニンtert-ブチルエステル(109mg、0.750mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、HOBt(67.6mg、0.500mmol)、トリエチルアミン(52.4μL、0.375mmol)、及びDCM(1mL)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチルで単離した結果、表題化合物を白色固体として82%収率(101mg)で得た。
【0353】
・実施例II(2)縮合環ジペプチド-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたテトラペプチドFmoc-Ala-Ala-Ala-Ala-Ot-Buの合成:
【化64】
【0354】
一般合成手順II(1)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph)2-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、Fmoc-アラニン(85.6mg、0.275mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、0.375mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、及びHOBt(67.6mg、0.500mmol)を窒素雰囲気下、一晩室温で攪拌した。その後、アラニンtert-ブチルエステル(109mg、0.750mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、HOBt(67.6mg、0.500mmol)、トリエチルアミン(52.4μL、0.375mmol)、及びDCM(1mL)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチルで単離した結果、表題化合物を白色固体として81%収率(118mg)で得た。
【0355】
・実施例II(3)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたテトラペプチドCbz-Ser(t-Bu)-Ala-Ala-Ala-Ot-Buの合成:
【化65】
【0356】
一般合成手順II(1)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph)2-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、Cbz-O-tert-ブチルセリン(81.2mg、0.275mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、0.375mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、及びHOBt(67.6mg、0.500mmol)を窒素雰囲気下、一晩室温で攪拌した。その後、アラニンtert-ブチルエステル(109mg、0.750mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、HOBt(67.6mg、0.500mmol)、トリエチルアミン(52.4μL、0.375mmol)、及びDCM(1mL)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(9/1)で単離した結果、表題化合物を無色固体として77%収率(109mg)で得た。
【0357】
・実施例II(4)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたテトラペプチドCbz-Met-Ala-Ala-Ala-Ot-Buの合成:
【化66】
【0358】
一般合成手順II(1)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph)2-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、Cbz-メチオニン(77.9mg、0.275mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、0.375mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、及びHOBt(67.6mg、0.500mmol)を窒素雰囲気下、一晩室温で攪拌した。その後、アラニンtert-ブチルエステル(109mg、0.750mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、HOBt(67.6mg、0.500mmol)、トリエチルアミン(52.4μL、0.375mmol)、及びDCM(1mL)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(9/1)で単離した結果、表題化合物を無色固体として68%収率(93.9mg)で得た。
【0359】
・実施例II(5)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたテトラペプチドCbz-Lys(Boc)-Ala-Ala-Ala-Ot-Buの合成:
【化67】
【0360】
一般合成手順II(1)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph)2-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、Nα-Cbz-Nε-Boc-リシン(105mg、0.275mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、0.375mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、及びHOBt(67.6mg、0.500mmol)を窒素雰囲気下、一晩室温で攪拌した。その後、アラニンtert-ブチルエステル(109mg、0.750mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、HOBt(67.6mg、0.500mmol)、トリエチルアミン(52.4μL、0.375mmol)、及びDCM(1mL)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(9/1)で単離した結果、表題化合物を無色固体として81%収率(131mg)で得た。
【0361】
・実施例II(6)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたテトラペプチドCbz-Trp(Boc)-Ala-Ala-Ala-Ot-Buの合成:
【化68】
【0362】
一般合成手順II(1)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph)2-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、Nα-Cbz-Nin-Boc-トリプトファン(171mg、0.275mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、0.375mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、及びHOBt(67.6mg、0.500mmol)を窒素雰囲気下、一晩室温で攪拌した。その後、アラニンtert-ブチルエステル(109mg、0.750mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、HOBt(67.6mg、0.500mmol)、トリエチルアミン(52.4μL、0.375mmol)、及びDCM(1mL)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(3/1)で単離した結果、表題化合物を無色固体として68%収率(120mg)で得た。
【0363】
・実施例II(7)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたテトラペプチドCbz-Ala-Ala-Ala-Met-Ot-Buの合成:
【化69】
【0364】
一般合成手順II(1)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph)2-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、Cbz-アラニン(61.4mg、0.275mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、0.375mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、及びHOBt(67.6mg、0.500mmol)を窒素雰囲気下、一晩室温で攪拌した。その後、メチオニンtert-ブチルエステル(154mg、0.750mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、HOBt(67.6mg、0.500mmol)、トリエチルアミン(52.4μL、0.375mmol)、及びDCM(1mL)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(17/3)で単離した結果、表題化合物を無色固体として61%収率(84.2mg)で得た。
【0365】
・実施例II(8)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたテトラペプチドCbz-Ala-Ala-Ala-Glu(t-Bu)-Ot-Buの合成:
【化70】
【0366】
一般合成手順II(1)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph)2-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、Cbz-アラニン(61.4mg、0.275mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、0.375mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、及びHOBt(67.6mg、0.500mmol)を窒素雰囲気下、一晩室温で攪拌した。その後、グルタミン酸ジtert-ブチルエステル(194mg、0.750mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、HOBt(67.6mg、0.500mmol)、トリエチルアミン(52.4μL、0.375mmol)、及びDCM(1mL)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにて酢酸エチル/ヘキサン(9/1)で単離した結果、表題化合物を無色固体として61%収率(92.5mg)で得た。
【0367】
・実施例II(9)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたペンタペプチドCbz-Aib-Gly-Ala-Ala-Ala-Ot-Buの合成:
【化71】
【0368】
一般合成手順II(1)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph)2-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、Cbz-Aib-Gly-OH(80.8mg、0.275mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、0.375mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、及びHOBt(67.6mg、0.500mmol)を窒素雰囲気下、一晩室温で攪拌した。その後、アラニンtert-ブチルエステル(109mg、0.750mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、HOBt(67.6mg、0.500mmol)、トリエチルアミン(52.4μL、0.375mmol)、及びDCM(1mL)を加えて室温で24時間攪拌した。反応後、カラムクロマトグラフィーにてメタノール/クロロホルム(1/10)で単離した結果、表題化合物を無色固体として55%収率(77.5mg)で得た。
【0369】
・実施例II(10)縮合環ジペプチド化合物-Si(Me,Ph)-Ala-Ala-を用いたテトラペプチドFmoc-Ala-Ala-Ala-Ala-O-t-Buの合成:
【化72】
【0370】
一般合成手順II(2)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Me,Ph)-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、TMS-OTf)(THF中1mol/L)(67.8μL、1.5当量)、MABRヘキサン溶液(12.5μL、10mol%)、及びL-Ala-O-tBu(72.6mg、0.500mmol)を入れ、アセトニトリル(MeCN)中、80℃に加熱しながら24時間攪拌した。その後、試験管内にFmoc-L-Ala-CO-Cl(165mg、0.500mmol)及びTBAF(THF中1mol/L)(500μL、2当量)を加えて、室温で一晩攪拌した。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離した結果、表題化合物を無色固体として61%収率(88.5mg)で得た。
【0371】
・実施例II(11)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたテトラペプチドFmoc-Val-Ala-Ala-Ala-O-t-Buの合成:
【化73】
【0372】
一般合成手順II(2)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Me,Ph)-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、TMS-OTf)(THF中1mol/L)(67.8μL、1.5当量)、MABRヘキサン溶液(12.5μL、10mol%)、及びL-Ala-O-tBu(72.6mg、0.500mmol)を入れ、アセトニトリル(MeCN)中、80℃に加熱しながら24時間攪拌した。その後、試験管内にFmoc-L-Val-CO-Cl(179mg、0.500mmol)及びTBAF(THF中1mol/L)(500μL、2当量)を加えて、室温で一晩攪拌した。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離した結果、表題化合物を無色固体として53%収率(80.6mg)で得た。
【0373】
・実施例II(12)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたテトラペプチドFmoc-Met-Ala-Ala-Ala-O-t-Buの合成:
【化74】
【0374】
一般合成手順II(2)に従い、DCM中、縮合環ジペプチド化合物-Si(Me,Ph)-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、TMS-OTf)(THF中1mol/L)(67.8μL、1.5当量)、MABRヘキサン溶液(12.5μL、10mol%)、及びL-Ala-O-tBu(72.6mg、0.500mmol)を入れ、アセトニトリル(MeCN)中、80℃に加熱しながら24時間攪拌した。その後、試験管内にFmoc-L-Met-CO-Cl(195mg、0.500mmol)及びTBAF(THF中1mol/L)(500μL、2当量)を加えて、室温で一晩攪拌した。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離した結果、表題化合物を無色固体として62%収率(99.2mg)で得た。
【0375】
・実施例II(13)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Ala-Ala-を用いたテトラペプチドCbz-Lys(Boc)-Ala-Ala-Ala-O-t-Buの合成:
【化75】
【0376】
20mL試験管に、スターラーバーと、縮合環ジペプチド化合物-Si(Me,Ph)-L-Ala-L-Ala-(85.0mg、0.250mmol)、TMS-OTf)(THF中1mol/L)(67.8μL、1.5当量)、MABRヘキサン溶液(12.5μL、10mol%)、及びL-Ala-O-tBu(72.6mg、0.500mmol)を入れ、アセトニトリル(MeCN)中、80℃に加熱しながら24時間攪拌した。その後、試験管内にCbz-Lys(Boc)-OH(190mg、0.500mmol)、wscHCl(95.9mg.0.500mmol)、HOBt(67.6mg、0.500mmol)、及びTBAF(THF中1mol/L)(500μL、0.500mmol)を加えて、室温で一晩攪拌した。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離した結果、表題化合物を無色固体として59%収率(95.8mg)で得た。
【0377】
・実施例II(14)縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph) 2 -Met-Ala-及び-Si(Ph) 2 -Ser(t-Bu)-Ala-を用いたヘキサペプチドCbz-Ala-Met-Ala-Ser(t-Bu)-Ala-Ala-O-t-Buの合成:
【化76】
【0378】
30mL二口ナスフラスコにスターラーバーと縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph)2-L-Met-L-Ala-(100mg、0.250mmol)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、1.5当量)、wscHCl(95.9mg.2当量)、HOBt(67.6mg、2当量)及びCbz-アラニン(61.4mg、0.275mmol)を添加し、DCM中室温で一晩攪拌する。溶液中に縮合環ジペプチド化合物-Si(Ph)2-L-Ser(t-Bu)-L-Ala-(113mg、1.1当量)、TBAF(THF中1mol/L)(375μL、1.5当量)、wscHCl(95.9mg.2当量)、HOBt(67.6mg、2当量)及びDCM(1.00mL)を加えて窒素雰囲気下、室温で攪拌した。24時間後、フラスコにアラニンtert-ブチルエステル(145mg、4当量)、wscHCl(95.9mg.2当量)、HOBt(67.6mg、2当量)、トリエチルアミン(53μL、1.5当量)及びDCM(1mL)を追加して室温で24時間攪拌した。反応後、クロロホルム(4.50mL)で希釈した後シリカゲルカラムクロマトグラフィーにてメタノール/クロロホルム(1/10)で単離した結果、目的とするヘキサペプチドが32%収率(50.5mg)で得られた。
【要約】
種々のアミノ酸からなるポリペプチドの効率的な合成等に利用可能な新規化合物として、下記式(A)で表されるシラン含有縮合環ジペプチド化合物を提供する。
但し、式(A)中、
11、R12、R13、R21、及びR22は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、若しくは複素環式基を表し、
a1及びRa2は、各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す。