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  • 特許-クラッチ機構 図1
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  • 特許-クラッチ機構 図3A
  • 特許-クラッチ機構 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】クラッチ機構
(51)【国際特許分類】
   F16D 23/14 20060101AFI20221108BHJP
   F16D 13/44 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
F16D23/14 J
F16D13/44
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018168893
(22)【出願日】2018-09-10
(65)【公開番号】P2020041592
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】向井 崇貴
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014218664(DE,A1)
【文献】実開昭63-91732(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00-23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の出力軸が連結されるフライホイールと、
前記フライホイールに固定されるクラッチカバーと、
前記クラッチカバーに外周部の支点で支持されるダイヤフラムスプリングと、
前記フライホイールと前記ダイヤフラムスプリングとの間に配置され、前記ダイヤフラムスプリングが前記支点よりも外周側の作用点で当接するプレッシャプレートと、
前記フライホイールと前記プレッシャプレートとの間に配置され、前記作用点で前記ダイヤフラムスプリングから前記プレッシャプレートに入力される押付力により前記フライホイールに押し付けられるクラッチディスクと、
前記ダイヤフラムスプリングに対して前記プレッシャプレート側と反対側で回転軸線方向に移動可能に設けられ、前記ダイヤフラムスプリングの内周部に力点で当接して、前記プレッシャプレート側への移動による押圧力を前記力点に入力するレリーズベアリングと、
前記レリーズベアリングを前記プレッシャプレート側に移動させるために操作されるクラッチ操作部材とを含み、
前記ダイヤフラムスプリングの内周部は、前記レリーズベアリング側に膨出するよう湾曲した単一の湾曲面に形成され、前記レリーズベアリングの前記プレッシャプレート側への移動に伴って前記力点が前記支点に近づくように、前記湾曲面の曲率がクラッチペダルの操作されていない状態における前記レリーズベアリングとの当接点で最も大きく、前記曲率が前記ダイヤフラムスプリングの外周側ほど小さくなるように変化している、クラッチ機構。
【請求項2】
前記クラッチ操作部材は、前記レリーズベアリングを前記プレッシャプレート側に移動させるために操作されるレリーズフォークであり
前記レリーズフォークは、一端部をフォーク支点とし、他端部をフォーク力点とし、長手方向の中央より前記一端部寄りの部分に前記レリーズベアリングに前記フライホイール側と反対側から当接する押圧部を有し、前記押圧部と前記レリーズベアリングとの当接点をフォーク作用点とし、
前記押圧部は、前記フライホイール側に弧状に膨出し、その曲率がクラッチペダルの操作されていない状態における前記フォーク作用点で最も大きく、前記曲率が前記他端部側ほど小さくなるように変化している、請求項1に記載のクラッチ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニュアルトランスミッション(MT:Manual Transmission)を搭載した車両、いわゆるMT車に搭載されるクラッチ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
MT車では、エンジンとマニュアルトランスミッションとの間に、クラッチが介装されている。運転席の前方に配置されたクラッチペダルが踏まれていないときには、クラッチが繋がっており、クラッチペダルが踏み込まれると、クラッチが切れる。クラッチが繋がっているときには、エンジンの動力がマニュアルトランスミッションで変速されて駆動輪に伝達される。クラッチが切れた状態で、変速段を切り替えることができ、また、エンジンストールを発生させずに車両を停止させることができる。
【0003】
クラッチには、乾式単板クラッチが広く用いられている。乾式単板クラッチは、エンジンの出力軸に保持されるフライホイールと、フライホイールに固定されたクラッチカバーと、クラッチカバーに外周部が支持されるダイヤフラムスプリングと、フライホイールとダイヤフラムスプリングとの間に配置されるプレッシャプレートと、フライホイールとプレッシャプレートとの間に配置されるクラッチディスクとを備えている。
【0004】
クラッチペダルが踏まれていない状態では、ダイヤフラムスプリングのばね力による押付力がダイヤフラムスプリングの外周部からプレッシャプレートに入力され、プレッシャプレートによりクラッチディスクがフライホイールに押し付けられる。この状態がクラッチの繋がった状態であり、エンジンの動力がクラッチを介してマニュアルトランスミッションに伝達される。
【0005】
ダイヤフラムスプリングに対してプレッシャプレート側と反対側には、レリーズベアリングがダイヤフラムスプリングの内周部に対向して配置されている。クラッチペダルが踏まれると、たとえば、クラッチペダルにレリーズケーブルを介して接続されたレリーズフォークが回動し、レリーズフォークがレリーズベアリングをダイヤフラムスプリング側に押圧する。この押圧力がレリーズベアリングを介してダイヤフラムスプリングの内周部に入力され、ダイヤフラムスプリングが傾動および弾性変形し、ダイヤフラムスプリングの外周部からプレッシャプレートへの押付力の入力が解除される。その結果、クラッチディスクがフライホイールから離れた状態となる。この状態がクラッチの切れた状態であり、エンジンの動力がマニュアルトランスミッションに伝達されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-232363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クラッチが繋がった状態で、クラッチの滑りが発生することなく、エンジンの動力がマニュアルトランスミッションに伝達されるには、ダイヤフラムスプリングに大きな押付力が要求される。しかしながら、ダイヤフラムスプリングの押付力が大きくされると、クラッチを切る際に、ダイヤフラムスプリングの押付力を解除するためにレリーズベアリングをダイヤフラムスプリングに押し込む荷重が大きくなり、クラッチペダルの操作荷重が増す。
【0008】
ダイヤフラムスプリングの大きな押付力を確保しながら、クラッチペダルの操作力の増大を抑制すべく、たとえば、レリーズフォークの支点と作用点(レリーズベアリングとの当接点)との距離に対するレリーズフォークの支点と力点(レリーズケーブルの接続点)との距離の割合を大きくすることが考えられる。しかし、レリーズフォークのサイズが大きくなり、クラッチの車両への搭載性が損なわれるおそれがある。また、クラッチが切れるまでのクラッチペダルのストロークが増大するため、クラッチの切れが不良な状態(クラッチが完全に切れていない状態)で変速段を切り替えるための操作が行われたり、その状態で車両が停止することによるエンジンストールが発生したりするおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、ダイヤフラムスプリングの押付力の増大とクラッチペダルなどのクラッチ操作部材の操作荷重の増大の抑制との両立を図りながら、サイズの増大およびクラッチ切れ不良による不都合の発生を抑制できる、クラッチ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明に係るクラッチ機構は、駆動源の出力軸が連結されるフライホイールと、フライホイールに固定されるクラッチカバーと、クラッチカバーに外周部の支点で支持されるダイヤフラムスプリングと、フライホイールとダイヤフラムスプリングとの間に配置され、ダイヤフラムスプリングが支点よりも外周側の作用点で当接するプレッシャプレートと、フライホイールとプレッシャプレートとの間に配置され、作用点でダイヤフラムスプリングからプレッシャプレートに入力される押付力によりフライホイールに押し付けられるクラッチディスクと、ダイヤフラムスプリングに対してプレッシャプレート側と反対側で回転軸線方向に移動可能に設けられ、ダイヤフラムスプリングの内周部に力点で当接して、プレッシャプレート側への移動による押圧力を力点に入力するレリーズベアリングと、レリーズベアリングをプレッシャプレート側に移動させるために操作されるクラッチ操作部材とを含み、ダイヤフラムスプリングの内周部は、レリーズベアリング側に膨出するよう湾曲し、レリーズベアリングのプレッシャプレート側への移動に伴って力点が支点に近づくように曲率が変化している。
【0011】
この構成によれば、クラッチ操作部材が操作されていない状態では、ダイヤフラムスプリングからプレッシャプレートに作用点で入力される押付力により、クラッチディスクがフライホイールに押し付けられる。これにより、クラッチが繋がった状態となる。
【0012】
クラッチ操作部材が操作されると、レリーズベアリングがプレッシャプレート側に移動して、その移動による押圧力がダイヤフラムスプリングの内周部に力点で入力される。これにより、ダイヤフラムスプリングが傾動および弾性変形し、ダイヤフラムスプリングの外周部からプレッシャプレートへの押付力の入力が解除される。その結果、クラッチディスクがフライホイールから離れ、クラッチが切れた状態となる。
【0013】
ダイヤフラムスプリングの内周部がレリーズベアリング側に膨出するよう湾曲し、かつ、その曲率が変化しているので、クラッチが切れた状態になる途中、レリーズベアリングのプレッシャプレート側への移動に伴って力点が支点に近づく。そのため、クラッチ操作部材の操作開始当初は、支点と作用点との間の距離に対する支点と力点との間の距離の割合であるレバー比が大きく、レリーズベアリングから力点に加えられる押圧力が小さくても、ダイヤフラムスプリングをその弾性力に抗して変形させることができる。そして、クラッチ操作部材の操作が進むと、レバー比が小さくなるので、レリーズベアリングの移動量に対するダイヤフラムスプリングの支点よりも外周側の部分の移動量が大きくなる。これにより、クラッチの良好な切れを確保することができる。
【0014】
よって、ダイヤフラムスプリングの押付力が増大されても、クラッチ操作部材の操作荷重の増大を抑制することができながら、クラッチ機構のサイズの増大およびクラッチ切れ不良による不都合の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ダイヤフラムスプリングの押付力の増大とクラッチペダルなどのクラッチ操作部材の操作荷重の増大の抑制との両立を図りながら、サイズの増大およびクラッチ切れ不良による不都合の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るクラッチ機構1の断面図である。
図2A】クラッチが繋がった状態におけるダイヤフラムスプリングとレリーズベアリングとの当接点の近傍を示す断面図である。
図2B】クラッチが切れた状態におけるダイヤフラムスプリングとレリーズベアリングとの当接点の近傍を示す断面図である。
図3A】クラッチが繋がった状態におけるレリーズベアリングとレリーズフォークとの当接点の近傍を示す断面図である。
図3B】クラッチが切れた状態におけるレリーズベアリングとレリーズフォークとの当接点の近傍を示す断面図である。
図4】クラッチペダルのストロークに対するクラッチペダルを操作する荷重の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
<クラッチ機構>
図1は、本発明の一実施形態に係るクラッチ機構1の断面図である。なお、図1図2A図2B図3Aおよび図3Bの各図において、断面を示すハッチングの付与が省略されている。
【0019】
クラッチ機構1は、MT車に搭載されて、駆動源であるエンジンとマニュアルトランスミッションとの間に介装され、エンジンの動力をマニュアルトランスミッションに伝達/遮断する。なお、以下において、クラッチ機構1がエンジンの動力をマニュアルトランスミッションに伝達する状態を「クラッチが繋がった状態」といい、クラッチ機構1がエンジンからマニュアルトランスミッションへの動力の伝達を遮断する状態を「クラッチが切れた状態」という。
【0020】
クラッチ機構1は、乾式単板クラッチの構成を有しており、フライホイール11、クラッチカバー12、ダイヤフラムスプリング13、プレッシャプレート14、クラッチディスク15、レリーズベアリング16およびレリーズフォーク17を備えている。
【0021】
フライホイール11は、略円板状に形成されており、ボルト21によりエンジンの出力軸に固定される。以下、フライホイール11の回転軸線と平行な方向を「回転軸線方向」という。
【0022】
クラッチカバー12は、環状に形成されており、フライホイール11の外周部に対向配置されて、ボルト22によりフライホイール11に固定される。クラッチカバー12の内周部は、回転径方向および回転周方向に延びる略円環板状をなしている。また、その内周部には、フライホイール11側に屈曲して回転径方向の外側にさらに折り返された断面略コ字状の保持部23が形成されている。
【0023】
ダイヤフラムスプリング13は、円環状の金属板を円錐状に加工した皿ばねである。ダイヤフラムスプリング13は、その外周部がピボットリング24を介してクラッチカバー12の保持部23に保持されており、ピボットリング24を支点SFとして揺動可能に設けられている。
【0024】
プレッシャプレート14は、円環状に形成されており、フライホイール11とダイヤフラムスプリング13の外周部との間に介在されている。プレッシャプレート14は、複数のストラッププレート25を介して、クラッチカバー12に一体回転可能かつ回転軸線方向に移動可能に保持されている。プレッシャプレート14は、フライホイール11側に平面からなる押圧面26を有している。また、プレッシャプレート14は、ダイヤフラムスプリング13側にそれぞれ突出する複数の突出部27がプレッシャプレート14の回転軸線を中心とする等角度間隔で設けられている。各突出部27には、ダイヤフラムスプリング13の支点SFよりも外側の部分が当接する。
【0025】
マニュアルトランスミッションには、エンジンの出力軸と同一軸線上を延びるインプット軸28が設けられている。インプット軸28は、ダイヤフラムスプリング13の中心の孔にフライホイール11側と反対側から挿通されて、クラッチディスク15の中心部に相対回転不能に接続されている。クラッチディスク15の外周部は、フライホイール11とプレッシャプレート14の押圧面26との間に介在されている。
【0026】
レリーズベアリング16は、ダイヤフラムスプリング13に対してフライホイール11側と反対側において、インプット軸28に外嵌され、回転軸線方向に移動可能に設けられている。ダイヤフラムスプリング13の内周部は、レリーズベアリング16に当接している。レリーズベアリング16には、回転軸線方向と直交する平面を少なくともフライホイール11側と反対側の面に有する平面部29が設けられている。
【0027】
レリーズフォーク17は、レバー状をなし、回転軸線方向と交差する方向に延びている。レリーズフォーク17の一端部は、レリーズベアリング16に対して回転軸線方向と交差する方向の一方側に配置され、その他端部は、レリーズベアリング16に対して回転軸線方向と交差する方向の他方側に配置されている。レリーズフォーク17の一端部には、フライホイール11側に凹む断面半円形状の凹部31が形成されている。凹部31に対してフライホイール11側と反対側には、レリーズフォークサポート32が設けられている。レリーズフォークサポート32は、回転軸線方向に延び、その先端部が凹部31と略同一の曲率を有する断面半円形状に形成されている。レリーズフォークサポート32の先端部がレリーズフォーク17の凹部31に嵌まることにより、レリーズフォーク17は、レリーズフォークサポート32の先端部を支点FFとして、他端部が回転軸線方向に移動するように揺動可能に設けられている。MT車の運転席の前方には、運転者の足で操作されるクラッチペダルが配置されており、レリーズフォーク17の他端部には、クラッチペダルの操作を伝達するレリーズケーブル33が接続されている。
【0028】
また、レリーズフォーク17の中間部分、具体的には、レリーズフォーク17の長手方向の中央より一端部寄りの部分には、フライホイール11側に弧状に膨出する押圧部34が形成されている。押圧部34は、レリーズベアリング16の平面部29にフライホイール11側と反対側から当接している。
【0029】
<クラッチ動作>
クラッチペダルが操作されていない状態では、ダイヤフラムスプリング13がプレッシャプレート14の各突出部27に当接し、その当接点である作用点SAでダイヤフラムスプリング13の弾性による押付力がプレッシャプレート14に入力される。そして、そのプレッシャプレート14に入力される押付力により、プレッシャプレート14の押圧面26がクラッチディスク15をフライホイール11側に押圧し、クラッチディスク15がフライホイール11に押し付けられる。その結果、クラッチが繋がった状態となり、クラッチディスク15がフライホイール11と一体に回転して、エンジンの動力がマニュアルトランスミッションのインプット軸28に伝達される。
【0030】
クラッチペダルが操作されると、そのクラッチペダルの操作がレリーズケーブル33を介してレリーズフォーク17に伝達される。具体的には、クラッチペダルが踏まれると、レリーズケーブル33が引っ張られて、レリーズフォーク17の他端部がフライホイール11側に引き寄せられる。これにより、レリーズフォーク17におけるレリーズケーブル33の接続点が力点FEとなって、レリーズフォーク17が支点FFを中心に回動する。このレリーズフォーク17の回動に伴い、レリーズベアリング16の平面部29とレリーズフォーク17の押圧部34との当接点が作用点FAとなって、押圧部34が作用点FAで平面部29を押圧する。そして、その押圧より、レリーズベアリング16がフライホイール11側に移動し、ダイヤフラムスプリング13の内周部とレリーズベアリング16との当接点が力点SEとなって、レリーズベアリング16が力点SEでダイヤフラムスプリング13の内周部を押圧する。その結果、ダイヤフラムスプリング13がピボットリング24を支点SFとして傾動および弾性変形し、作用点SAにおけるダイヤフラムスプリング13からプレッシャプレート14への押付力の入力が解除されて、クラッチディスク15がフライホイール11から離れ、クラッチが切れた状態となる。クラッチが切れた状態では、フライホイール11が回転してもクラッチディスク15が回転しないので、エンジンの動力がマニュアルトランスミッションのインプット軸28に伝達されない。
【0031】
<レバー比可変>
図2Aは、クラッチが繋がった状態におけるダイヤフラムスプリング13の内周部とレリーズベアリング16との当接点の近傍を示す断面図である。図2Bは、クラッチが切れた状態におけるダイヤフラムスプリング13の内周部とレリーズベアリング16との当接点の近傍を示す断面図である。
【0032】
ダイヤフラムスプリング13の内周部は、フライホイール11側と反対側、つまりレリーズベアリング16側に膨出するよう湾曲している。そして、その湾曲面の曲率は、クラッチが繋がった状態におけるダイヤフラムスプリング13の内周部とレリーズベアリング16との当接点で最も大きく、ダイヤフラムスプリング13の外周側ほど小さくなるように変化している。
【0033】
これにより、クラッチが繋がった状態から切れた状態に移行する際に、レリーズベアリング16の移動に伴って、ダイヤフラムスプリング13の内周部とレリーズベアリング16との当接点である力点SEが支点SFに近づく。
【0034】
そのため、クラッチペダルの操作開始当初は、支点SFと作用点SAとの間の距離に対する支点SFと力点SEとの間の距離の割合であるレバー比が大きく、レリーズベアリング16から力点SEに加えられる押圧力が小さくても、ダイヤフラムスプリング13をその弾性力に抗して変形させることができる。そして、支点SFと作用点SAとの間の距離が一定であるから、クラッチペダル(レリーズフォーク17)の操作が進むにつれて、レバー比が小さくなり、レリーズベアリング16の移動量に対するダイヤフラムスプリング13の外周部の移動量が大きくなる。これにより、クラッチの良好な切れを確保することができる。
【0035】
図3Aは、クラッチが繋がった状態におけるレリーズベアリング16の平面部29とレリーズフォーク17の押圧部34との当接点の近傍を示す断面図である。図3Bは、クラッチが切れた状態におけるレリーズベアリング16の平面部29とレリーズフォーク17の押圧部34との当接点の近傍を示す断面図である。
【0036】
レリーズフォーク17の押圧部34の曲率は、クラッチが繋がった状態におけるレリーズベアリング16の平面部29と当接点で最も大きく、レリーズフォーク17の他端部側(レリーズケーブル33が接続されている側)ほど小さくなるように変化している。
【0037】
これにより、クラッチが繋がった状態から切れた状態に移行する際に、レリーズフォーク17の回動に伴って、レリーズベアリング16の平面部29とレリーズフォーク17の押圧部34との当接点である作用点FAが支点FFから遠ざかる。
【0038】
そのため、クラッチペダルの操作開始当初は、支点FFと作用点FAとの間の距離に対する支点FFと力点FEとの間の距離の割合であるレバー比が大きく、クラッチペダル(レリーズフォーク17)に加えられる操作力が小さくても、作用点FAでレリーズフォーク17からレリーズベアリング16に加えられる押圧力を大きく確保でき、ダイヤフラムスプリング13をその弾性力に抗して変形させることができる。そして、支点FFと力点FEとの間の距離が一定であるから、クラッチペダルの操作が進むにつれて、レバー比が小さくなり、レリーズフォーク17の移動量に対するレリーズベアリング16の移動量が大きくなり、レリーズベアリング16の移動量に対するダイヤフラムスプリング13の外周部の移動量が大きくなる。これにより、クラッチの良好な切れを確保することができる。
【0039】
<作用効果>
以上のように、クラッチが繋がった状態から切れた状態に移行する際に、クラッチペダルの操作開始当初は、ダイヤフラムスプリング13に関するレバー比が大きく、クラッチペダルの操作が進むにつれて、ダイヤフラムスプリング13に関するレバー比が小さくなる。これにより、図4に示される実線と破線とを比較して理解されるように、そのレバー比が可変である構造では、レバー比が一定である従来構造と比較して、クラッチペダルを操作する荷重のピークを下げることができながら、クラッチが切れた状態になる前からクラッチペダルの操作がストッパにより規制されるまでの間は、クラッチペダルを操作する荷重が増大する反面、クラッチペダルの操作量(ストローク)に対するダイヤフラムスプリング13の外周部の移動量を大きく確保できる。よって、ダイヤフラムスプリング13の押付力が増大されても、クラッチペダル(レリーズフォーク17)の操作荷重の増大を抑制することができながら、クラッチ機構1のサイズの増大およびクラッチ切れ不良による不都合の発生を抑制することができる。
【0040】
また、クラッチが繋がった状態から切れた状態に移行する際に、クラッチペダルの操作開始当初は、レリーズフォーク17に関するレバー比が大きく、クラッチペダルの操作が進むにつれて、レリーズフォーク17に関するレバー比が小さくなる。これにより、ダイヤフラムスプリング13に関するレバー比が可変であることによる効果が増強される。よって、ダイヤフラムスプリング13の押付力が増大されても、クラッチペダル(レリーズフォーク17)の操作荷重の増大を一層抑制することができながら、クラッチ機構1のサイズの増大およびクラッチ切れ不良による不都合の発生をより抑制することができる。
【0041】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもでき、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1:クラッチ機構
11:フライホイール
12:クラッチカバー
13:ダイヤフラムスプリング
14:プレッシャプレート
15:クラッチディスク
16:レリーズベアリング
17:レリーズフォーク(クラッチ操作部材)
SA:作用点
SE:力点
SF:支点
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4