IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両のカウルブレース構造 図1
  • 特許-車両のカウルブレース構造 図2
  • 特許-車両のカウルブレース構造 図3
  • 特許-車両のカウルブレース構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】車両のカウルブレース構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
B62D25/08 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018241576
(22)【出願日】2018-12-25
(65)【公開番号】P2020100365
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100146064
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】守分 志朗
(72)【発明者】
【氏名】平井 伸一
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-320465(JP,A)
【文献】特開2007-331710(JP,A)
【文献】特開2006-056329(JP,A)
【文献】特開2006-219111(JP,A)
【文献】特開2015-182747(JP,A)
【文献】特開平02-246879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カウル内に左右離間して2ヶ所にワイパ取付け部が形成され、その間にワイパモータ取付け部が形成された構造において、
前記2か所のワイパ取付け部のうち車幅方向内側のワイパ取付け部と前記ワイパモータ取付け部との間の領域に、カウル前後壁を橋渡しするブレースを配設したことを特徴とする、車両のカウルブレース構造。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のカウルブレース構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフロントウインド下部のカウル部分には、エアボックス等が設けられるとともに、カウル内にワイパ取付け部が設けられている(例えば、特許文献1参照)。前記エアボックスにおいては、断面を変形させる荷重に対する補強のために、カウルの前壁と後壁とを橋渡しするレインフォース(ブレース)が配置されており、さらに、前記レインフォース(ブレース)の中央部とダッシュパネルの前縦壁を形成している部分との間に、ワイパ取付け用のワイパレインフォース(ブレース)を架設することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-278655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のブレース取付け位置は、W0位置のカウルインナの上部をダッシュパネルと結合することで、ワイパ雪溜まりや悪路等によってワイパに負荷がかかった場合のワイパモータトルク入力によるカウルの変形を抑制可能なものであった。近年、歩行者保護の観点からは、歩行者が接触した際に、歩行者の傷害値を低く抑えるため、カウルインナが座屈することが求められる場合がある。しかし、上記のような構造では、カウルインナの前壁は変形しにくいため、歩行者保護が十分であるとはいえない場合があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するものであり、背反していた性能である、ワイパ雪溜まり耐久性能、悪路耐久性能および歩行者保護性能を満足する、車両のカウルブレース構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の車両のカウルブレース構造は、カウル内に左右離間して2ヶ所にワイパ取付け部が形成され、その間にワイパモータ取付け部が形成された構造において、前記2か所のワイパ取付け部のうち車幅方向内側のワイパ取付け部と前記ワイパモータ取付け部との間の領域に、カウル前後壁を橋渡しするブレースを配設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、背反していた性能である、ワイパ雪溜まり耐久性能、悪路耐久性能および歩行者保護性能を満足する、車両のカウルブレース構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、車両外側からフロントガラスに向かって、ワイパ部分を正面視した図である。
図2図2は、カウル付近の上面図である。
図3図3は、図2におけるA-A断面図である。
図4図4は、ワイパが動かなくなった状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下の例に限定および制限されない。なお、以下で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。
【0010】
図1は、車両外側からフロントガラスに向かって、ワイパ部分を正面視した図である。図1は、右ハンドルの車両のワイパユニット1を例示した図であり、図中左側が運転席(DR席)側ワイパ3D、図中右側が助手席(P席)側ワイパ3Pである。運転席(DR席)側ワイパ3Dおよび助手席(P席)側ワイパ3Pは、各々ワイパ取付け部材5Dおよび5Pで、ダッシュパネル側に取り付けられている。ワイパユニット1は、各ワイパ取付け部材(5D、5P)の略中央部分にワイパモータ7を有している。ワイパモータ7は、ワイパモータ取付け部材9で、カウルインナ前壁に取り付けられている。ワイパモータ7とワイパ3Dおよびワイパ3Pとは、平行リンク機構11で回動可能に連結されており、ワイパモーター7を作動させると、ワイパモータ7のモータトルク入力により、平行リンク機構11が動きワイパ3Dおよび3Pが動く。
【0011】
図2は、カウル付近の上面図、図3は、図2におけるA-A断面図である。図2では、右側が運転席側である。ワイパ取付け部材5Dはワイパ取付け部13Dで、ワイパ取付け部材5Pはワイパ取付け部13Pで、各々車両に取り付けられている。ワイパモータ取付け部材9は、ワイパモータ取付け部15で車両に取り付けられている。本実施形態においては、ワイパ取付け部13Dおよびワイパ取付け部13Pは、ダッシュパネル17に設けられており、ワイパモータ取付け部15は、カウルインナ19前壁に設けられている。
【0012】
図4は、P席側のフロントガラス上に雪Sが溜まり、ワイパが動かなくなった状態の説明図である。このとき、ワイパ3Dおよびワイパ3Pは最後まで回動できなくなった状態になり動かないものの、ワイパモータ7のモータトルク入力は発生し続けるため、ワイパ取付け部材5D、ワイパ取付け部材5P、ワイパモータ取付け部材9には回転方向の入力が入る。図4の状態でワイパが動かなくなった場合、図中の矢印の方向に入力が入る。この入力によって、カウルインナ19側のワイパモータ取付け部15には、カウルインナ19を押す力がかかり、カウルインナ19前壁が口が開く方向に変形する。
【0013】
本発明においては、カウルインナの前後壁を橋渡しするブレース21を、2か所のワイパ取付け部13D、13Pのうち車幅方向内側のワイパ取付け部13Pとワイパモータ取付け部15との間に配設している。これにより、カウルインナ19の変形を抑制することができる。ブレース21は、カウルインナ19の底部近傍位置において、前後壁を橋渡しする構造となっていることが好ましい。
【0014】
従来、車両の幅方向中央付近(W0位置)において、カウルインナの上端部付近のできるだけ高い位置にブレースを設けて、カウルインナの前後方向への変形抑制が行われてきた。この位置にブレースを設けると、カウルインナの変形抑制には効果が高いことがわかっている。しかし、上述のとおり、近年、歩行者保護性能の優先度が高くなり、外部からの衝撃(歩行者の接触等)に対し、カウルインナの前壁を変形させることが求められてきている。
【0015】
カウルインナ19の変形抑制を行いつつ歩行者保護性能も兼ね備えるためには、車両の幅方向中央付近(W0位置)にはブレースを設けずに、車幅方向内側のワイパ取付け部13Pとワイパモータ取付け部15との間にブレース21を配設することが有効であることを、発明者らは見出した。さらに、カウルインナ19の低い位置(底部近傍位置)にブレース21を設定することで、カウルインナ19の底部近傍は変形が抑制されつつ前壁の上部は変形可能となり、衝突時の衝撃吸収が可能となる。
【0016】
ブレース21は、車幅方向内側のワイパ取付け部13Pとワイパモータ取付け部15との間に配設されるが、モータ入力からの変形を抑えるため、ワイパモータ取付け部15付近にブレース21の取付け位置を設定することが好ましい。ブレース21の取付け位置は、モータ入力の変形の影響が及ぶ範囲であれば所望の効果が得られるので、車幅方向外側においては、ワイパモータ取付け部15を多少越えた車幅方向外側「付近」であってもよい。
【0017】
上記の位置にブレースを設定することで、歩行者保護への背反を極力抑えたうえで、ワイパ雪溜まり耐久および悪路耐久における入力によるカウルインナ前壁の変形を抑制する対策が可能となる。
【0018】
上記の実施形態においては、ワイパ取付け部13Dおよびワイパ取付け部13Pは、ダッシュパネル17に設けられており、ワイパモータ取付け部15は、カウルインナ19前壁に設けられている態様について説明したが、本発明はこの態様に限定されるものではない。また、ブレース21を一箇所に設けた例を説明したが、規定の領域内であれば、ブレース21を複数設けてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 …ワイパユニット
3D …運転席(DR席)側ワイパ
3P …助手席(P席)側ワイパ
5D、5P …ワイパ取付け部材
7 …ワイパモータ
9 …ワイパモータ取付け部材
11 …平行リンク機構
13D、13P …ワイパ取付け部
15 …ワイパモータ取付け部
17 …ダッシュパネル
19 …カウルインナ
21 …ブレース
図1
図2
図3
図4