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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】計測装置、および計測方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/04 20060101AFI20221108BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
E01D19/04
E01D22/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2016156208
(22)【出願日】2016-08-09
(65)【公開番号】P2018025004
(43)【公開日】2018-02-15
【審査請求日】2019-06-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】506045118
【氏名又は名称】NEXCO西日本コンサルタンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 隆生
(72)【発明者】
【氏名】中野 公太
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 和男
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】佐藤 美紗子
【審判官】居島 一仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-195209(JP,A)
【文献】特開2006-89928(JP,A)
【文献】特許第(JP,B2)2639254
【文献】特開平3-9232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D19/04
E01D22/00
F16F1/40
G01L9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の上部構造に固定される上沓と、
前記橋梁の下部構造に固定される下沓と、
前記上沓と、前記下沓との間に配置され、前記橋梁の前記上部構造側から加わる荷重を支持する荷重支持部材と、
前記上沓と前記下沓とが前記荷重支持部材を挟んで重なっている方向における、前記上沓と前記下沓との距離の変化に応じて変化する対象距離を計測するセンサと、を備え、
前記センサ前記荷重支持部材を挟んだ橋軸直角方向の両側に取り付けられている支承体の前記センサによって計測された前記対象距離が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記対象距離を処理し、前記荷重支持部材に加わっている荷重に応じた力の変化量を演算する演算部と、を備えた計測装置。
【請求項2】
前記センサは、前記上沓、または前記下沓の一方に取り付けている、請求項1に記載の計測装置
【請求項3】
前記センサは、前記上沓、または前記下沓の一方に取り付け、前記上沓、または前記下沓の他方に取り付けている計測対象物までの距離を計測する請求項1に記載の計測装置
【請求項4】
前記演算部は、前記荷重支持部材の反力の変化量を演算する、請求項1~3のいずれかに記載の計測装置。
【請求項5】
橋梁の上部構造と下部構造との間に配置され、前記上部構造側から上沓、荷重支持部材、下沓の順番に重なっている支承について、前記荷重支持部材に加わっている荷重に応じた力を計測する計測方法であって、
前記上沓と前記下沓とが前記荷重支持部材を挟んで重なっている方向における、前記上沓と前記下沓との距離の変化に応じて変化する対象距離を計測するセンサを、前記荷重支持部材を挟んだ橋軸直角方向の両側に取り付け、
演算部が、前記センサによって計測された前記対象距離を処理し、前記荷重支持部材に加わっている荷重に応じた力の大きさを演算する、計測方法。
【請求項6】
前記演算部は、前記荷重支持部材の反力の変化量を演算する、請求項に記載の計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、橋梁やビル等の構造物の上部構造と下部構造との間に配置する支承体、および、この支承体に加わっている荷重に応じた力の変化を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋梁やビル等の構造物は、上部構造と、下部構造との間に支承体(以下、単に支承と言う。)を配置している。例えば、自動車や列車等の移動体が走行する橋梁は、橋桁(上部構造)と、橋脚(下部構造)との間に支承を配置している。支承は、上部構造からの荷重を支持し、下部構造へ伝達する部材である。支承には、橋桁の重さによる死荷重や、橋桁を走行する車両等による活荷重が加わる。
【0003】
最近、構造物の維持管理等のために、支承の反力を計測したいという要望がある。支承の反力は、支承の劣化、下部構造の沈下、下部構造の変動等によって変化する。すなわち、支承の反力を計測し、その変化を得ることで、支承の劣化、下部構造の沈下、下部構造の変動等の不具合が発生しているかどうかの判断が行える。
【0004】
反力を計測することができる支承としては、例えば、特許文献1に示されたものがある。この特許文献1に示された支承は、厚肉の上下部鋼板及び薄肉の複数の中間部鋼板からなる鋼板とゴム層とを交互に積層してなる積層ゴムを、橋桁側から橋脚側に加わる荷重を支持する荷重支持部材としたゴム支承である。積層ゴムは、上下部鋼板のいずれか一方からその厚み方向に貫通して、隣接するゴム層内部に達する複数の測定孔を設け、各測定孔に粘性流体を充填するとともに、各測定孔の鋼板側部分に圧力センサを取り付けて該測定孔を閉鎖した構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4891891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された支承は、圧力センサを取り付けるための複数の測定孔を荷重支持部材である積層ゴムに設ける工程、粘性流体を各測定孔に充填する工程、圧力センサを各測定孔の鋼板側部分に取り付ける工程、および圧力センサを取り付けた各測定孔を閉鎖する工程を行って製造される。すなわち、特許文献1に記載された支承は、荷重支持部材である積層ゴムの製造工程が複雑であった。
【0007】
この発明の目的は、加わっている荷重に応じた反力等の物理量の計測が行え、製造工程が簡単である支承体を提供することにある。
【0008】
また、この発明の目的は、支承体に加わっている荷重に応じた力の変化の計測が行える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の支承体は、上記目的を達するために、以下のように構成している。
【0010】
上沓は、構造物の上部構造に固定され、下沓は、構造物の下部構造に固定される。荷重支持部材は、上沓と下沓との間に配置され、構造物の上部構造側から加わる荷重を支持する。また、センサは、上沓と下沓とが荷重支持部材を挟んで重なっている方向における、上沓と下沓との距離の変化に応じて変化する対象距離を計測する。
【0011】
上沓と下沓との距離の変化に応じて変化する対象距離には、
(1)上部構造と下部構造との距離
(2)下沓と上部構造との距離
(3)上沓と下部構造との距離
(4)上沓と、下沓との距離
等がある。
【0012】
上沓と下沓との距離の変化は、荷重支持部材のひずみの変化である。このため、センサで計測した対象距離と、荷重支持部材のヤング係数Eを用いることで、支承体(荷重支持部材)の反力を算出できる。
【0013】
したがって、センサによる上沓と下沓との距離の変化に応じて変化する対象距離の計測を継続的、または定期的に行うことで、支承体の反力等の変化を取得することができる。そして、取得した支承体の反力等の変化を用いることで、構造物の維持管理等が簡単かつ適正に行える。
【0014】
なお、センサは、上沓と下沓との距離の変化に応じて変化する対象距離を計測することができれば、上沓、下沓、構造物の上部構造、または構造物の下部構造のいずれに取り付けてもよい。
【0015】
特に、センサを上沓、または下沓の一方に取り付け、センサで計測する検知対象物を上沓、または下沓の他方に取り付ければ、支承に荷重が加わっていない状態で、上沓と下沓との距離の変化に応じて変化する対象距離の基準値を計測することができる。この基準値を用いれば、構造物の上部構造と下部構造との間に取り付けたときに、構造物の上部構造による死荷重の大きさを得ることもできる。
【0016】
なお、センサの個数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。センサの個数が複数である場合には、荷重支持部材を挟んだ両側に取り付けるのが好ましい。
【0017】
また、この発明の計測装置は、センサによる上沓と下沓との距離の変化に応じて変化する対象距離の計測値から、支承体の反力等の変化を算出する。
【0018】
また、この発明の計測方法によれば、センサによる上沓と下沓との距離の変化に応じて変化する対象距離の計測が簡単に行える。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、加わっている荷重に応じた反力等にかかる物理量の計測が行える支承体の製造工程を簡単できる。
【0020】
また、支承体に加わっている荷重に応じた反力等にかかる物理量の計測が簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】高架道路橋の橋軸方向の概略断面図である。
図2】高架道路橋の橋軸直角方向の概略断面図である。
図3図3(A)は、橋軸方向に見た支承の概略平面図であり、図3(B)は、図3(A)におけるA-A方向の断面図である。
図4図4(A)は、図3(A)におけるB-B方向の断面図であり、図4(B)は、図3(A)におけるC-C方向の断面図である。
図5】他の例にかかる支承を示す図である。
図6図6(A),(B)は、他の例にかかる支承を示す図である。
図7図7(A),(B)は、他の例にかかる支承を示す図である。
図8】監視システムを示す概略図である。
図9】反力計測装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図10】管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。
図11】反力計測装置の動作を示すフローチャートである。
図12】記憶部に記憶される計測データを示す図である。
図13】計測時刻と、支承の反力Rの変化量ΔRとの関係を示す図である。
図14】支承1の反力Rの変化量ΔRの最大値を示すものである。
図15】支承1の反力Rの変化量ΔRの頻度を示す図である。
図16】反力計測方法の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態について説明する。まず、支承体(以下、単に支承と言う。)の実施形態について説明する。
【0023】
支承は、橋梁やビル等の構造物の上部構造と、下部構造との間に配置し、上部構造の荷重を支持する部材である。支承は、上部構造の振動を減衰して、下部構造に伝達する。
【0024】
図1は、構造物である高架道路橋(橋梁)の橋軸方向(車両の走行方向)の概略断面図である。図2は、高架道路橋の橋軸直角方向(車両の幅方向)の概略断面図である。高架道路橋は、下部構造である橋脚100と、上部構造の主桁101との間に、支承1を配置している。橋脚100は、橋軸方向に適当な間隔で並んでいる。上部構造には、主桁101の上面(橋脚側の反対面)側に設けた床版の上に、自動車が走行する路面や側壁等が形成されている。支承1は、主桁101を含む上部構造の荷重を支持する。支承1は、上部構造の重さによる死荷重や、路面を走行する車両の重量や下部構造に対する上部構造の相対的な変位による振動等による活荷重を支持する。この例では、図2に示すように、橋脚100の上面(主桁101との対向面)には、3つの支承1が橋軸直角方向に並べて固定されている。
【0025】
図3(A)は、橋軸方向に見た支承の概略平面図であり、図3(B)は、図3(A)におけるA-A方向の断面図である。また、図4(A)は、図3(A)におけるB-B方向の断面図であり、図4(B)は、図3(A)におけるC-C方向の断面図である。支承1は、下沓2と、上沓3と、ベースプレート4と、荷重支持部材5と、近接センサ10、11と、取付金具20、21とを備えている。
【0026】
支承1は、主桁101側から、上沓3、荷重支持部材5、下沓2、ベースプレート4の順番に重なっている。
【0027】
上沓3は、主桁101に固定されている。また、ベースプレート4は、図示していないアンカーボルト等で橋脚100に固定されている。下沓2は、ベースプレート4に取り付けられる。すなわち、下沓2は、ベースプレート4を介して橋脚100に固定されている。支承1には、この例のように、下沓2と、ベースプレート4とを別々の部材で構成したものもあれば、下沓2と、ベースプレート4とを1つの部材で構成したものある。支承1は、下沓2と、ベースプレート4とを別々の部材で構成したものであってもよいし、下沓2と、ベースプレート4とを1つの部材で構成したものであってもよい。また、下沓2には、橋脚100の反対面側(主桁101の対向面側)に凹部(窪み)が形成されている。
【0028】
荷重支持部材5は、橋脚100側の端部が下沓2の凹部に嵌挿され、主桁101側の端部が下沓2の凹部から突出している。荷重支持部材5と、上沓3とは、対向する面で接触している。下沓2と、上沓3との間には、荷重支持部材5が位置し、下沓2と、上沓3とは接触していない。荷重支持部材5は、水平方向(橋軸方向や、橋軸直角方向)における上沓3と、下沓2との相対的な変位による水平力(水平荷重)を支持する部材や、鉛直方向における力(鉛直荷重)を支持する部材等で構成される。
【0029】
なお、支承1は、水平方向における上沓3と、下沓2との相対的な変位量を制限するサイドブロック(不図示)を備えるものであってもよい。
【0030】
さらに、この例の支承1は、2つの近接センサ10、11を下沓2に取り付けている。近接センサ10、11は、近接センサ10、11の検知面から検知対象物までの距離(この発明で言う対象距離に相当する。)の計測が非接触で行えるセンサであればどのようなものであってもよい。近接センサ10、11は、例えば、http://www.fa.omron.co.jp/products/family/1457/に記載されているセンサを用いればよい。
【0031】
近接センサ10、11は、荷重支持部材5を挟んで支承1の両側に取り付けている。近接センサ10、11は、橋軸直角方向に並んでいる。近接センサ10、11は、下沓2に設けた取付金具20、21に取り付けている。取付金具20、21は、下沓2に固定している。この近接センサ10、11は、検知面から主桁101の対向面までの距離を計測する。近接センサ10、11の検知面は、主桁101の底面に対向している。この例における近接センサ10、11は、下沓2と上部構造(主桁101)との距離を計測する。
【0032】
支承1は、上部構造側から荷重が加わることによって、荷重支持部材5がひずむ。したがって、支承1に加わっている上部構造側から荷重が変化すると、荷重支持部材5のひずみ量が変化し、その結果、橋脚100と、主桁101との対向面間の距離が変化する。橋脚100と、主桁101との対向面間の距離の変化量と、下沓2と上部構造(主桁101)との距離の変化量と、は同じである。また、橋脚100と、主桁101との対向面間の距離の変化量と、上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量と、は同じである。すなわち、近接センサ10、11によって計測される下沓2と上部構造(主桁101)との距離の変化量は、上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量である。
【0033】
後述する反力計測装置50は、上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量Δxを、
Δx=(Δx1+Δx2)/2
により算出する。Δx1は、近接センサ10の検知面から主桁101の対向面までの距離の変化量であり、
Δx1=近接センサ10の基準距離-近接センサ10の計測距離
により算出する。また、Δx2は、近接センサ11の検知面から主桁101の対向面までの距離の変化量であり、
Δx2=近接センサ11の基準距離-近接センサ11の計測距離
により算出する。近接センサ10、11の基準距離は、支承1の設置時等に、各近接センサ10、11で計測した距離にすればよい。また、上述したように、近接センサ10、11は、荷重支持部材5を挟んで、橋軸直角方向に並べて取り付けている。そして、近接センサ10の検知面から主桁101の対向面までの距離の変化量Δx1と、近接センサ11の検知面から主桁101の対向面までの距離の変化量Δx2との平均を、上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量Δxとして算出する。したがって、上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量Δxにおいて、橋軸直角方向における上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量の差(Δx1と、Δx2との差)をキャンセルできる。
【0034】
このように、この支承1は、上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量Δxを計測することができる。また、上沓3と下沓2との対向面間の距離がΔx短くなったときにおける、荷重支持部材5の反力Rの変化量ΔRは、
ΔR=E×Δx
である。但し、Eは、荷重支持部材5のヤング係数である。すなわち、この支承1は、荷重支持部材5の反力Rの変化についても計測できる。
【0035】
また、近接センサ10、11によって計測する距離は、上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化に応じて変化する距離であれば特に制限されない。例えば、図5に示すように、近接センサ10、11を上沓3に取り付け、近接センサ10、11の検知面と、ベースプレート4の対向面との距離を計測するように構成してもよい。また、図6(A)に示すように、近接センサ10、11を下沓2に取り付けるとともに、近接センサ10、11の検知面に対向する検知対象物30、31を上沓3に取り付け、近接センサ10、11の検知面と、検知対象物30、31の対向面との距離を計測するように構成してもよい。また、図6(B)に示すように、近接センサ10、11を上沓3に取り付けるとともに、近接センサ10、11の検知面に対向する検知対象物30、31を下沓2に取り付け、近接センサ10、11の検知面と、検知対象物30、31の対向面との距離を計測するように構成してもよい。
【0036】
また、支承1に取り付ける近接センサの個数や、その配置も特に制限されない。例えば、支承1は、2つの近接センサ10、11を、図7(A)に示すように取り付ける構成であってもよいし、4つの近接センサ10、11、12、13を図7(B)に示すように取り付ける構成であってもよい。
【0037】
なお、図5、および図6は、図3(A)と同じ方向からみた図であり、図7は、図4(B)に対応する方向の断面図である。
【0038】
次に、反力計測装置(この発明で言う、計測装置に相当する。)の実施形態について説明する。ここでは、図3に示した支承1を例にする。
【0039】
図8は、この例にかかる反力計測装置を用いた、監視システムを示す概略図である。この監視システムは、複数の反力計測装置50と、管理装置60とを備える。各反力計測装置50は、ネットワーク70を介して管理装置60と通信可能に接続されている。この例では、反力計測装置50と、支承1とを1対1で対応付けている。反力計測装置50は、対応付けられている支承1(荷重支持部材5)の反力を演算し、その演算結果をネットワーク70を介して管理装置60に通知する。
【0040】
管理装置60は、橋梁の状態を管理する管理事務所等に設置される。管理者は、この管理装置60において、各支承1の状態の確認等を行う。
【0041】
図9は、反力計測装置の主要部の構成を示すブロック図である。反力計測装置50は、制御部51と、センサ処理部52と、記憶部53と、通信部54と、を備えている。
【0042】
制御部51は、反力計測装置50本体各部の動作を制御する。
【0043】
センサ処理部52は、支承1の近接センサ10、11が接続されている。センサ処理部52は、近接センサ10、11の計測信号(検知面から対向面までの計測距離)が入力される。近接センサ10、11は、上述したように、検知面から主桁101の対向面までの距離を計測する。センサ処理部52は、接続されている近接センサ10、11毎に、その近接センサ10、11から入力された計測信号を処理し、支承1の反力Rの変化量ΔRを演算する処理回路(この例では、2つの処理回路)を備えている。センサ処理部52が、この発明言う入力部、および演算部を備えている。
【0044】
記憶部53は、近接センサ10、11の基準距離や、計測データ等を記憶する。
【0045】
通信部54は、ネットワーク70を介した管理装置60との通信を制御し、記憶部53に記憶している計測データを管理装置60へ送信する。
【0046】
なお、各反力計測装置50には、自装置を識別する識別コードが付与されている。上述したように、反力計測装置50と、支承1とを1対1で対応付けているので、反力計測装置50の識別コードから、対応する支承1を特定することができる。
【0047】
図10は、管理装置の主要部の構成を示すブロック図である。管理装置60は、制御部61と、操作部62と、表示部63と、記憶部64と、通信部65とを備えている。
【0048】
制御部61は、管理装置60本体各部の動作を制御する。
【0049】
操作部62には、マウスやキーボード等の入力デバイスが接続されている。オペレータは、操作部62に接続されている入力デバイスを操作することにより、管理装置60本体に対する入力操作を行う。操作部62は、管理装置60本体に対する入力を受け付ける。
【0050】
表示部63には、液晶ディスプレイ等の表示デバイスが接続されている。表示部63は、接続されている表示デバイスにおける画面表示を制御する。
【0051】
記憶部64は、管理装置60本体の動作制御に用いる各種パラメータ等を記憶する。
【0052】
通信部65は、ネットワーク70を介した反力計測装置50との通信を制御する。
【0053】
以下、反力計測装置50の動作について説明する。
【0054】
図11は、反力計測装置の動作を示すフローチャートである。反力計測装置50は、近接センサ10、11で計測された、検知面から主桁101の対向面までの距離の計測値を、予め定められた計測時間間隔a(例えば、20msec間隔)で繰り返し取得する。反力計測装置50は、近接センサ10、11で計測された、検知面から主桁101の対向面までの距離の計測値を取得すると(s1)、上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量Δxを算出する(s2)。
【0055】
上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量Δxは、上述したように、
Δx=(Δx1+Δx2)/2
である。また、Δx1およびΔx2は、
Δx1=近接センサ10の基準距離-近接センサ10の計測距離
Δx2=近接センサ11の基準距離-近接センサ11の計測距離
である。
【0056】
反力計測装置50は、近接センサ10の基準距離、および近接センサ11の基準距離を記憶部53に記憶している。
【0057】
反力計測装置50は、s2で算出した上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量Δxを用いて支承1の反力Rの変化量ΔRを算出する(s3)。反力Rの変化量ΔRは、
ΔR=E×Δx
である。但し、Eは、荷重支持部材5のヤング係数である。
【0058】
反力計測装置50は、計測時刻、s1で近接センサ10、11が計測した検知面から主桁101の対向面までの距離、s2で算出した上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量Δx、およびs3で算出した荷重支持部材5の反力Rの変化量ΔRを対応付けたレコード(今回の計測結果)を計測データに追加登録し(s4)、s1に戻る。
【0059】
図12は、記憶部に記憶される計測データを示す図である。図12では、計測時間間隔aを20msecとした場合の例である。図12において、Sa#(#=1、2、3・・・)は、近接センサ10による主桁101の対向面までの計測距離であり、Sb#は、近接センサ11による主桁101の対向面までの計測距離である。また、ave#は、s2で算出した上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化量Δxである。また、ΔR#は、s3で算出した支承1の反力Rの変化量ΔRである。
【0060】
また、反力計測装置50は、予め定められた通知タイミングになると、通信部54が記憶部53に記憶している計測データを管理装置60に送信する。この通知タイミングは、1日毎や数時間毎に設定すればよい。
【0061】
管理装置60は、反力計測装置50から送信されてきた計測データを通信部で受信し、記憶部64に記憶する。
【0062】
また、管理装置60は、操作部62におけるオペレータの入力操作に応じて、記憶部64に記憶している計測データ(反力計測装置50から送信されてきた計測データ)を処理し、その処理結果を表示部63に表示する。
【0063】
例えば、管理装置60は、操作部62におけるオペレータの入力操作に応じて、計測時刻と、支承1の反力Rの変化量ΔRと、の関係を表示部63に表示する処理を行う。図13は、計測時刻と、支承の反力Rの変化量ΔRとの関係を示す図である。図13において、横軸は計測時刻であり、縦軸は支承1の反力Rの変化量ΔRの大きさである。図13において、支承1の反力Rの変化量ΔRが大きいところは、走行している車両の軸重が支承1に加わったタイミングである。支承1の反力Rの変化量ΔRは、活荷重の大きさに応じて変化する。
【0064】
また、反力計測装置50は、支承1の反力Rの変化量ΔRにより活荷重(例えば、走行している車両の軸重)の大きさを得ることもできる。活荷重の大きさは、
活荷重=ΔR×A/H
により算出できる。但し、Aは、上沓3によって荷重支持部材5が押圧される面積(上沓3と、荷重支持部材5との接触面積)である。また、Hは、鉛直方向(上沓3と、下沓2との並び方向)における荷重支持部材5の長さ(高さ)である。
【0065】
また、反力計測装置50は、操作部62におけるオペレータの入力操作に応じて、図14や、図15に示すデータを表示部63に表示してもよい。図14は、支承1の反力Rの変化量ΔRの最大値を示すものである。また、図15は、支承1の反力Rの変化量ΔRの頻度を示す図である。図14は、例えば検出時間間隔を5分や10分に設定し、検出時間毎に、その検出時間内における支承1の反力Rの変化量ΔRの最大値をプロットしたグラフである。
【0066】
また、図6に示す構成の支承1であれば、この支承1に荷重が加わっていない状態で、近接センサ10が計測した、検知面と、検知対象物30との距離を近接センサ10の基準距離とし、近接センサ11が計測した、検知面と、検知対象物31との距離を近接センサ11の基準距離とすることで、死荷重(上部構造の荷重)による、支承1の反力Rを得ることができる。
【0067】
また、既設の橋梁に取り付けられている支承1であっても、この支承1について反力Rの変化量ΔRを計測できる。
【0068】
具体的には、図16に示すように、反力Rの変化量ΔRを計測する支承1について、近接センサ10、11を、上沓3と下沓2との対向面間の距離の変化に応じて変化する対象距離の計測が行えるように取り付ける(s11)。また、近接センサ10、11を反力計測装置50に接続する(s12)。そして、反力計測装置50に、図11に示した処理を実行させる。
【0069】
これにより、既設の橋梁に取り付けられている支承1についても、反力Rの変化量ΔRを計測が行える。
【0070】
なお、この場合、近接センサ10、11の基準距離を、支承1に活荷重が加わっていないタイミングにおいて、近接センサ10、11が計測した距離にすればよい。
【0071】
このように、上沓3と、下沓2とが荷重支持部材5を挟んで重なっている方向における、上沓3と下沓2との距離の変化に応じて変化する対象距離を計測する近接センサ10、11を設けるという簡単な方法で、加わっている荷重に応じた反力等にかかる物理量の計測が行える。
【符号の説明】
【0072】
1…支承
2…下沓
3…上沓
4…ベースプレート
5…荷重支持部材
10~13…近接センサ
20、21…取付金具
30、31…検知対象物
50…反力計測装置
51…制御部
52…センサ処理部
53…記憶部
54…通信部
100…橋脚
101…主桁
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