(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】燃焼排ガス処理方法、燃焼排ガス処理装置およびそれのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/86 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
B01D53/86 222
B01D53/86 ZAB
(21)【出願番号】P 2017080471
(22)【出願日】2017-04-14
【審査請求日】2020-02-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】木村 晴佳
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃広
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-222163(JP,A)
【文献】特開平03-258326(JP,A)
【文献】特開平06-343877(JP,A)
【文献】特開2001-041028(JP,A)
【文献】特開平08-141371(JP,A)
【文献】特開平05-269350(JP,A)
【文献】特開平06-023274(JP,A)
【文献】特開2002-143646(JP,A)
【文献】特開2000-037635(JP,A)
【文献】特開2000-037634(JP,A)
【文献】特開2004-330132(JP,A)
【文献】特開平07-047231(JP,A)
【文献】特開2002-079111(JP,A)
【文献】特開2002-136871(JP,A)
【文献】特開2017-032215(JP,A)
【文献】国際公開第2012/004980(WO,A1)
【文献】特開2017-032212(JP,A)
【文献】特開2001-272001(JP,A)
【文献】特開昭54-099772(JP,A)
【文献】特開2008-126148(JP,A)
【文献】特開平02-083017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/86-53/90
B01D 53/94
F23J 13/00-99/00
B01J 8/00- 8/46
F27D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンタリング等によって触媒Bよりも相対的に低い比表面積もしくは低い活性を有し且つ触媒Bよりも触媒毒の付着性が相対的に低い触媒Aの設置された最前段の触媒層と
触媒Aよりも細孔径が広範囲にわたって形成され且つ触媒Aよりも
相対的に高い比表面積もしくは高い活性を有し且つ触媒Aよりも触媒毒の付着性が
相対的に高い触媒Bの設置された最前段より後の段の触媒層と
を近接して有する触媒固定床に、
燃焼排ガスを最前段から順次それより後の段まで通過させて、最前段の触媒層が燃焼排ガスを整流し触媒Bへの触媒毒の付着を抑制しつつ燃焼排ガス中の有害物質を除去することを含む、燃焼排ガス処理方法。
【請求項2】
最前段より後の段の触媒層における有害物質除去への寄与度が、最前段の触媒層における有害物質除去への寄与度よりも多く若しくは等しくなるように設定することを含む、請求項1に記載の燃焼排ガス処理方法。
【請求項3】
前記の触媒固定床が、少なくとも二つ、間隔を開けて、直列に設置されている、請求項1または2に記載の燃焼排ガス処理方法。
【請求項4】
シンタリング等によって触媒Bよりも相対的に低い比表面積もしくは低い活性を有し且つ触媒Bよりも触媒毒の付着性が相対的に低い触媒Aの設置された最前段の触媒層と
触媒Aよりも細孔径が広範囲にわたって形成され且つ触媒Aよりも
相対的に高い比表面積もしくは高い活性を有し且つ触媒Aよりも触媒毒の付着性が
相対的に高い触媒Bの設置された最前段より後の段の触媒層と
を近接して有する触媒固定床、
燃焼排ガスを触媒固定床の最前段に導入するためのダクト、および
触媒固定床を通過した燃焼排ガスを排出するためのダクトを有し、
最前段の触媒層が燃焼排ガスを整流し触媒Bへの触媒毒の付着を抑制しつつ燃焼排ガス中の有害物質を除去する、燃焼排ガス処理装置。
【請求項5】
最前段より後の段の触媒層における有害物質除去への寄与度が、最前段の触媒層における有害物質除去への寄与度よりも多く若しくは等しくなるように設定することを含む、請求項4に記載の燃焼排ガス処理装置。
【請求項6】
前記の触媒固定床が、少なくとも二つ、間隔を開けて、直列に設置されている、請求項4または5に記載の燃焼排ガス処理装置。
【請求項7】
触媒の設置された最前段の触媒層と触媒の設置された最前段より後の段の触媒層とを近接して有する触媒固定床、燃焼排ガスを触媒固定床の最前段に導入するためのダクト、および触媒固定床を通過した燃焼排ガスを排出するためのダクトを有し、最前段の触媒層が燃焼排ガスを整流し、最前段より後の段の触媒層に設置された触媒への触媒毒の付着を抑制しつつ燃焼排ガス中の有害物質を除去する、燃焼排ガス処理装置において、
最前段の触媒層に設置されていた触媒を、その触媒よりも
細孔径が広範囲にわたって形成され且つその触媒よりも活性が
相対的に高く且つ最前段より後の段の触媒層に設置される触媒よりも
シンタリング等によって活性が
相対的に低く且つ最前段より後の段の触媒層に設置される触媒よりも触媒毒の付着性が
相対的に低い触媒Aに置き換えることを含む、燃焼排ガス処理装置のメンテナンス方法。
【請求項8】
最前段より後の少なくともひとつの段の触媒層に設置されていた触媒を、
その触媒よりも細孔径が広範囲にわたって形成され且つその触媒よりも活性が
相対的に高く且つ触媒Aよりも活性が
相対的に高い触媒Bに置き換えることをさらに含む、請求項7に記載の燃焼排ガス処理装置のメンテナンス方法。
【請求項9】
触媒Bが未使用の触媒または別の段で使用していた触媒である、請求項8に記載のメンテナンス方法。
【請求項10】
最前段より後の段の触媒層における有害物質除去への寄与度が、最前段の触媒層における有害物質除去への寄与度よりも多く若しくは等しくなるように設定することを含む、請求項7、8または9に記載のメンテナンス方法。
【請求項11】
触媒の設置された最前段の触媒層と触媒の設置された最前段より後の段の触媒層とを近接して有する触媒固定床、燃焼排ガスを触媒固定床の最前段に導入するためのダクト、および触媒固定床を通過した燃焼排ガスを排出するためのダクトを有し、最前段の触媒層が燃焼排ガスを整流し、最前段より後の段の触媒層に設置された触媒への触媒毒の付着を抑制しつつ燃焼排ガス中の有害物質を除去する、燃焼排ガス処理装置において、
最前段の触媒層に設置されていた触媒を、
その触媒よりも細孔径が広範囲にわたって形成され且つその触媒よりも比表面積が
相対的に高く且つ最前段より後の段の触媒層に設置される触媒よりも
シンタリング等によって比表面積が
相対的に低く且つ最前段より後の段の触媒層に設置される触媒よりも触媒毒の付着性が
相対的に低い触媒Aに置き換えることを含む、燃焼排ガス処理装置のメンテナンス方法。
【請求項12】
最前段より後の少なくともひとつの段の触媒層に設置されていた触媒を、
その触媒よりも細孔径が広範囲にわたって形成され且つその触媒よりも比表面積が
相対的に高く且つ触媒Aよりも比表面積が
相対的に高い触媒Bに置き換えることをさらに含む、請求項11に記載のメンテナンス方法。
【請求項13】
触媒Bが未使用の触媒または別の段で使用していた触媒である、請求項12に記載のメンテナンス方法。
【請求項14】
最前段より後の段の触媒層における有害物質除去への寄与度が、最前段の触媒層における有害物質除去への寄与度よりも多く若しくは等しくなるように設定することを含む、請求項11、12または13に記載のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼排ガス処理方法、燃焼排ガス処理装置およびそれのメンテナンス方法に関する。より詳細に、本発明は、再生触媒などの、新品触媒より若干低い活性または新品触媒より若干低い比表面積を有する触媒を効率的に使用しつつ、排ガス処理能力を長期間維持して、燃焼排ガスの処理に掛かるコストを低減することができる、燃焼排ガス処理方法、燃焼排ガス処理装置およびそれのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等の火炉から排出されるガス中の有害物質、例えば、窒素酸化物、一酸化炭素、水銀、有機ハロゲン化合物(ダイオキシン類など)、アンモニア、VOCなどを触媒の存在下で分解除去することが行われている。触媒は、長期間の使用によって活性が低下する。活性が所定レベル以下に低下した触媒(使用済み触媒)は新品触媒または再生触媒に置き換えられる。再生触媒は、特許文献3、4、5などに記載の方法で使用済み触媒から製造することができる。一般に、再生触媒は、新品触媒に比べて、安価であるので、需要が増えている。しかし、再生触媒は、新品触媒に比べて、初期活性が若干低く、活性の経年的な低下も速い。このような特性のある再生触媒の使い方として、例えば、特許文献1は、排ガス中の窒素酸化物を触媒の作用により分解し、かつ、前記触媒が複数段の反応器中に設置されている脱硝装置において、2段目以後の前記反応器中の触媒が再生触媒と交換配置されることを特徴とする脱硝装置におけるメンテナンス方法を開示している。
【0003】
また、部分的に劣化したハニカム触媒を有効使用するために、例えば、特許文献2は、被処理ガスを送通するガス流路を有すると共に当該ガス流路の側壁で処理を行うハニカム触媒を排ガス流路に設置した排ガス処理装置の性能回復方法であって、前記ハニカム触媒の被処理ガスの流れ方向の上流側から所定範囲を劣化部位とし、当該劣化部位を前記排ガス流路の入口側から離すように、当該ハニカム触媒を再配置することを特徴とする排ガス処理装置の性能回復方法を開示している。
【0004】
さらに、特許文献6は、使用済み触媒に硫酸アルミニウム溶液を含浸させ、次いで乾燥させることによって得られる吸着剤を、排ガス流路の途中に設置して触媒毒を除去することを開示している。しかし、再生処理を行っていない吸着剤に脱硝性能は期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-143646号公報
【文献】WO2005/056165A
【文献】特開2000-475号公報
【文献】特開2011-161373号公報
【文献】特開2017-18919号公報
【文献】特開2014-97439号公報
【文献】特開平1-127029号公報
【文献】特開2002-39524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、再生触媒などの新品触媒より若干低い活性または新品触媒より若干低い比表面積を有する触媒を使用しながらも、排ガス処理能力を長期間維持して、燃焼排ガスの処理に掛かるコストを低減することができる、燃焼排ガス処理方法、燃焼排ガス処理装置およびそれのメンテナンス方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく検討した結果、以下のような態様を包含する本発明を完成するに至った。
【0008】
〔1〕触媒Aの設置された最前段の触媒層と触媒Aよりも高い比表面積もしくは高い活性を有する触媒Bの設置された最前段より後の段の触媒層とを近接して有する触媒固定床に、燃焼排ガスを最前段から順次それより後の段まで通過させて、燃焼排ガス中の有害物質を除去することを含む、燃焼排ガス処理方法。
〔2〕触媒Aが再生触媒である、〔1〕に記載の燃焼排ガス処理方法。
〔3〕前記の触媒固定床が、少なくとも二つ、間隔を開けて、直列に設置されている、〔1〕または〔2〕に記載の燃焼排ガス処理方法。
【0009】
〔4〕触媒Aの設置された最前段の触媒層と触媒Aよりも高い比表面積もしくは高い活性を有する触媒Bの設置された最前段より後の段の触媒層とを近接して有する触媒固定床、燃焼排ガスを触媒固定床の最前段に導入するためのダクト、および触媒固定床を通過した燃焼排ガスを排出するためのダクトを有する燃焼排ガス処理装置。
〔5〕触媒Aが再生触媒である、〔4〕に記載の燃焼排ガス処理装置。
〔6〕前記の触媒固定床が、少なくとも二つ、間隔を開けて、直列に設置されている、〔4〕または〔5〕に記載の燃焼排ガス処理装置。
【0010】
〔7〕触媒の設置された最前段の触媒層と触媒の設置された最前段より後の段の触媒層とを近接して有する触媒固定床、燃焼排ガスを触媒固定床の最前段に導入するためのダクト、および触媒固定床を通過した燃焼排ガスを排出するためのダクトを有する燃焼排ガス処理装置において、
最前段の触媒層に設置されていた触媒を、その触媒よりも活性が高く且つ最前段より後の段の触媒層に設置される触媒よりも活性が低い触媒Aに置き換えることを含む、燃焼排ガス処理装置のメンテナンス方法。
〔8〕最前段より後の少なくともひとつの段の触媒層に設置されていた触媒を、その触媒よりも活性が高く且つ触媒Aよりも活性が高い触媒Bに置き換えることをさらに含む、〔7〕に記載の燃焼排ガス処理装置のメンテナンス方法。
〔9〕触媒Bが未使用の触媒または別の段で使用していた触媒である、〔8〕に記載のメンテナンス方法。
〔10〕触媒Aが再生触媒である、〔7〕、〔8〕または〔9〕に記載のメンテナンス方法。
【0011】
〔11〕触媒の設置された最前段の触媒層と触媒の設置された最前段より後の段の触媒層とを近接して有する触媒固定床、燃焼排ガスを触媒固定床の最前段に導入するためのダクト、および触媒固定床を通過した燃焼排ガスを排出するためのダクトを有する燃焼排ガス処理装置において、
最前段の触媒層に設置されていた触媒を、その触媒よりも比表面積が高く且つ最前段より後の段の触媒層に設置される触媒よりも比表面積が低い触媒Aに置き換えることを含む、燃焼排ガス処理装置のメンテナンス方法。
〔12〕最前段より後の少なくともひとつの段の触媒層に設置されていた触媒を、その触媒よりも比表面積が高く且つ触媒Aよりも比表面積が高い触媒Bに置き換えることをさらに含む、〔11〕に記載のメンテナンス方法。
〔13〕触媒Bが未使用の触媒または別の段で使用していた触媒である、〔12〕に記載のメンテナンス方法。
〔14〕触媒Aが再生触媒である、〔11〕、〔12〕または〔13〕に記載のメンテナンス方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、再生触媒などの新品触媒より若干低い活性または新品触媒より若干低い比表面積を有する触媒を使用しながらも、排ガス処理能力を長期間維持して、燃焼排ガスの処理に掛かるコストを低減することができる。
最前段の触媒層にハニカム状の触媒または板状の触媒を用いると最前段の触媒層において排ガスが整流されるので、最前段より後の段の触媒層に設置されている触媒への触媒毒の付着が抑制される。最前段より後の段の触媒層における有害物質の除去量が高く維持されるので、燃焼排ガス処理装置全体での有害物質除去率を高く維持することができる。
本発明は燃焼排ガスの脱硝において好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の燃焼排ガス処理装置の一例を示す概念図である。
【
図2】触媒モジュールF
aを示す斜視概念図である。
【
図3】触媒モジュールB
aを示す斜視概念図である。
【
図4】触媒モジュールF
bを示す斜視概念図である。
【
図5】触媒モジュールF
cを示す斜視概念図である。
【
図9】本発明の燃焼排ガス処理装置の別の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の燃焼排ガス処理方法は、触媒Aの設置された最前段の触媒層と触媒Aよりも高い比表面積もしくは高い活性を有する触媒Bの設置された最前段より後の段の触媒層とを近接して有する触媒固定床に、燃焼排ガスを最前段から順次それより後の段まで通過させて、燃焼排ガス中の有害物質を除去することを含む。
また、本発明の燃焼排ガス処理装置は、触媒Aの設置された最前段の触媒層と触媒Aよりも高い比表面積もしくは高い活性を有する触媒Bの設置された最前段より後の段の触媒層とを近接して有する触媒固定床、燃焼排ガスを触媒固定床の最前段に導入するためのダクト、および触媒固定床を通過した燃焼排ガスを排出するためのダクトを有する。
【0015】
本発明の実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。なお、以下の実施形態によって本発明の範囲は制限されない。
【0016】
(第一実施形態)
図1は、本発明に係る燃焼排ガス処理装置の一例を示す概念図である。
図1に示される燃焼排ガス処理装置は、水平流路を有する入口ダクト1、触媒固定床4a、4bおよび4cの設けられた垂直流路を有する反応器ダクト6、ならびに水平流路を有する出口ダクト5を具備する。
【0017】
入口ダクト1、反応器ダクト6および出口ダクト5は、ガス流れ方向から見た流路の断面形状が、矩形、台形、円形、楕円形などであることができる。これらのうち、加工し易さの観点から矩形が好ましい。反応器ダクト6の垂直流路の入口に流路断面に亘って複数の整流板(図示せず)を設けてもよい(特許文献7、8など参照)。燃焼排ガスGは、入口ダクト1、反応器ダクト6、および出口ダクト5の順に流れる。
【0018】
図1に示される燃焼排ガス処理装置において、触媒固定床4a、4bおよび4cは、間隔を開けて、直列に設けられている。
【0019】
触媒固定床4aは、排ガス流の入口側に設けられた複数の触媒モジュールFaと排ガス流の出口側に設けられた複数の触媒モジュールBaとを近接して有する。
【0020】
触媒モジュールF
aは、触媒固定床4aにおける最前段の触媒層である。
図2に示すように、触媒モジュールF
aは、8個の触媒ユニット7が2×4で配置されてなるものである。
図6に示すように、触媒ユニット7は、複数の板状触媒8(触媒A:例えば再生触媒)を波形スペーサ10が平板部9に対向するように重畳して矩形枠に収納してなるものである。排ガスGのほぼすべてが触媒モジュールF
aを通過するように、複数の触媒モジュールF
aを反応器ダクトの流路断面に亘って配置することができる。
【0021】
触媒モジュールB
aは、触媒固定床4aにおける最前段より後の段の触媒層である。
図3に示すように、触媒モジュールB
aは、16個の触媒ユニット3が2×2×4で配置されてなるものである。
図7に示すように、触媒ユニット3は、複数の板状触媒2(触媒B)を波形スペーサが平板部に対向するように重畳して矩形枠に収納してなるものである。板状触媒2は、
図8に示すような板状触媒8と同じ形状を成している。板状触媒2は、板状触媒8よりも高い活性または高い比表面積を有する。板状触媒2は、未使用の触媒または他の段で使用していた再使用可能な触媒であってもよい。触媒モジュールB
aの上段の触媒ユニット3に収納されている板状触媒が触媒モジュールB
aの下段の触媒ユニット3に収納されている板状触媒および触媒モジュールF
aの触媒ユニット7に収納されている板状触媒に対して直交するように配置すると圧力損失を低減させることができるので好ましい。排ガスGのほぼすべてが触媒モジュールB
aを通過するように、複数の触媒モジュールB
aを反応器ダクトの流路断面に亘って配置することができる。
【0022】
触媒固定床4aの手前の空間では、通常、排ガスは乱流状態で流れている。乱流状態の排ガスは、その多くが、触媒モジュールFaを構成する板状触媒の主面に対して平行な方向以外の方向で、触媒モジュールFaに流入するので、排ガスに含まれる触媒毒などが板状触媒に衝突しやすい。触媒モジュールFaを構成する板状触媒に用いられる触媒Aは、触媒Bより若干低い比表面積を有するので、衝突した触媒毒の付着性が触媒Bよりも若干低い。その結果、触媒モジュールFaを構成する板状触媒は活性の経年的な低下が比較的に緩やかである。
触媒モジュールFaに流入した排ガスは板状触媒によって整流される。触媒モジュールFaから流出する整流された排ガスは、その多くが、触媒モジュールBaを構成する板状触媒の主面に対して平行な方向で、触媒モジュールBaに流入するので、排ガスに含まれる触媒毒などが板状触媒に衝突し難い。触媒モジュールBaを構成する板状触媒(触媒B)は活性の高い状態が維持される。
すなわち、本発明においては、触媒モジュールFaの活性が触媒毒の付着によって若干低下しても、触媒モジュールBaの活性は高く維持される。さらに、触媒モジュールFaに触媒Bより活性の若干低いまたは比表面積が若干低い触媒A(例えば、再生触媒、活性性能の残っている使用済触媒、比表面積の低い新品触媒など)が使用され、触媒モジュールBaに触媒Aより活性の高いまたは比表面積が高い触媒Bが使用されることを前提に、触媒モジュールBaにおける有害物質除去への寄与度が触媒モジュールFaにおける有害物質除去への寄与度より多くまたは等しくなるように排ガスの空塔速度などを設定することができる。それによって、触媒固定床4a全体での有害物質除去率はより高い値で維持することができる。
【0023】
触媒固定床4bは、排ガス流の入口側に設けられた複数の触媒モジュールFbと排ガス流の出口側に設けられた複数の触媒モジュールBaとを近接して有する。
【0024】
触媒モジュールF
bは、触媒固定床4bにおける最前段の触媒層である。
図4に示すように、触媒モジュールF
bは、16個の触媒ユニット7が2×2×4で配置されてなるものである。排ガスGのほぼすべてが触媒モジュールF
bを通過するように、複数の触媒モジュールF
bを反応器ダクトの流路断面に亘って配置することができる。触媒モジュールF
bの上段の触媒ユニット7に収納されている板状触媒が触媒モジュールF
bの下段の触媒ユニット7に収納されている板状触媒に対して直交するように配置すると圧力損失を低減させることができるので好ましい。
触媒モジュールB
aはすでに述べたとおりのものである。触媒モジュールB
aの上段の触媒ユニット3に収納されている板状触媒が触媒モジュールB
aの下段の触媒ユニット3に収納されている板状触媒および触媒モジュールF
bの下段の触媒ユニット7に収納されている板状触媒に対して直交するように配置すると圧力損失を低減させることができるので好ましい。
【0025】
触媒固定床4bにおいても、触媒固定床4aと同様に、触媒モジュールFbの活性が触媒毒の付着によって若干低下しても、触媒モジュールBaの活性は高く維持されるので、触媒固定床4b全体での有害物質除去率は高い値で維持される。
【0026】
触媒固定床4cは、複数の触媒モジュールF
cを有する。
図5に示すように、触媒モジュールF
cは、排ガス流の入口側(上段)に8個の触媒ユニット7が2×4で配置され、排ガス流の出口側(下段)に触媒ユニット7に近接して8個の触媒ユニット3が2×4で配置されてなるものである。2×4で配置された8個の触媒ユニット7は、触媒固定床4cにおける最前段の触媒層である。触媒モジュールF
cの上段の触媒ユニット7に収納されている板状触媒が触媒モジュールF
cの下段の触媒ユニット3に収納されている板状触媒に対して直交するように配置すると圧力損失を低減させることができるので好ましい。排ガスGのほぼすべてが触媒モジュールF
cを通過するように、複数の触媒モジュールF
cを反応器ダクトの流路断面に亘って配置することができる。
【0027】
触媒固定床4cにおいても、触媒固定床4aと同様に、触媒ユニット7の活性が触媒毒の付着によって若干低下しても、触媒ユニット3の活性は高く維持されるので、触媒固定床4c全体での有害物質除去率は高い値で維持される。
【0028】
(第二実施形態)
図9は、本発明の燃焼排ガス処理装置の別の一例を示す概念図である。
図9に示される燃焼排ガス処理装置は、水平流路を有する入口ダクト1、触媒固定床4aおよび4dの設けられた垂直流路を有する反応器ダクト6、ならびに水平流路を有する出口ダクト5を具備する。触媒固定床4aは第一実施形態の説明においてすでに述べたとおりのものである。
触媒固定床4dは、排ガス流の上流側に設けられた複数の触媒モジュールF
cと排ガス流の下流側に設けられた複数の触媒モジュールB
aとを近接して有する。触媒モジュールF
cおよび触媒モジュールB
aは第一実施形態の説明においてすでに述べたとおりのものである。触媒固定床4dにおいても上記と同様に下段の板状触媒が上段の板状触媒に対して直交するように配置すると圧力損失を低減させることができるので好ましい。
【0029】
触媒固定床4dにおいても、触媒固定床4aと同様に、触媒モジュールFcの活性が触媒毒の付着によって若干低下しても、触媒モジュールBaの活性は高く維持されるので、触媒固定床4d全体での有害物質除去率は高い値で維持される。
【0030】
(他の実施形態)
触媒固定床は、本発明の趣旨に適合する限り、任意の数、任意の組み合わせ、任意の配列順序などにすることができ、第一実施形態および第二実施形態が採用する数、組み合わせ、配列順序に限定されない。また、触媒固定床を構成する触媒モジュールの種類や数なども、本発明の趣旨に適合する限り、第一実施形態および第二実施形態が採用するものに限定されない。さらに、本発明においては、本発明の趣旨に適合する限り、最前段の触媒層から最後段の触媒層までを触媒ユニット3だけで構成してなる触媒モジュールからなる触媒固定床を有してもよいし、最前段の触媒層から最後段の触媒層までを触媒ユニット7だけで構成してなる触媒モジュールからなる触媒固定床を有してもよい。
【0031】
本発明のメンテナンス方法は、触媒の設置された最前段の触媒層と触媒の設置された最前段より後の段の触媒層とを近接して有する触媒固定床、燃焼排ガスを触媒固定床の最前段に導入するためのダクト、および触媒固定床を通過した燃焼排ガスを排出するためのダクトを有する燃焼排ガス処理装置において、最前段の触媒層に設置されていた触媒を、その触媒よりも活性若しくは比表面積が高く且つ最前段より後の段の触媒層に設置される触媒よりも活性若しくは比表面積が低い触媒Aに置き換えることを含む。
本発明のメンテナンス方法は、最前段より後の少なくともひとつの段の触媒層に設置されていた触媒を、その触媒よりも活性若しくは比表面積が高く且つ触媒Aよりも活性若しくは比表面積が高い触媒Bに置き換えることをさらに含むことが好ましい。置き換えられる触媒Bは、新品触媒などの未使用の触媒または別の段で使用していた触媒であってもよい。また、置き換えられる触媒Aは、比表面積若しくは活性の高さが本発明の規定する関係を満たすものであれば、再生触媒、別の段で使用していた触媒、未使用の触媒などであってもよい。なお、再生触媒は、特許文献3、4、5などに記載の方法で使用済み触媒から製造することができる。さらに、本発明のメンテナンス方法はメンテナンスの回数によって制限されるものではない。
【0032】
次に、実施例を示して、本発明をより具体的に説明する。
【0033】
(実施例1)
石炭焚きボイラの脱硝装置にて長期間使用された
図8に示すような150mm×550mmの板状の脱硝触媒エレメントを脱硝装置から取り出した。取り出された脱硝触媒エレメントを60℃、5質量%のシュウ酸水溶液に漬けた。シュウ酸水溶液に漬けた状態で脱硝触媒エレメントを1時間揺り動かして、洗浄した。その後、示性式(NH
4)
3Mo
2V
3O
15で表される化合物を5質量%含有する水溶液を含浸させ、乾燥および熱処理によって賦活させて、再生触媒エレメントを得た。
内寸が151mm×151mm×551mmの矩形筒枠に再生触媒エレメントを重畳させて収納して
図6に示すような触媒ユニットAを得た。
別に、
図8に示すものと同形の150mm×550mmの新品の脱硝触媒エレメントを、内寸が151mm×151mm×551mmの矩形筒枠に重畳させて収納して
図7に示すような触媒ユニットBを得た。新品の脱硝触媒エレメントは、再生触媒エレメントより、活性および比表面積が高い。
【0034】
石炭焚きボイラの脱硝装置に触媒ユニットAと触媒ユニットBを排ガスが触媒ユニットA(前段)に先ず流入し、次いで触媒ユニットB(後段)に流入するように積み重ねて設置した。累積運転時間が4000時間、8000時間および16000時間に達したときに、触媒ユニットAおよびBからそれぞれ触媒エレメントの一部を抜き出し、抜き出した触媒エレメントから20mm×100mmの試験片を切り出した。
切り出した試験片について表1に示す条件にて試験を行って脱硝率を測定した。また、試験片を分析して付着したAsの量を測定した。累積運転時間が4000時間、8000時間および16000時間に達したときの脱硝装置全体における脱硝率を測定した。それらの結果を表2に示す。
【0035】
【0036】
【0037】
(実施例2)
石炭焚きボイラの脱硝装置にて長期間使用された
図8に示すような150mm×550mmの板状の脱硝触媒エレメントを脱硝装置から取り出した。取り出された脱硝触媒エレメントを60℃、5質量%のシュウ酸水溶液に漬けた。シュウ酸水溶液に漬けた状態で脱硝触媒エレメントの表面をブラシ(ブラシ毛:樹脂製、直径200μm/本、毛丈10mm)で20回擦った。その後、示性式(NH
4)
3Mo
2V
3O
15で表される化合物を5質量%含有する水溶液を含浸させ、乾燥および熱処理によって賦活させて、再生触媒エレメントを得た。なお、新品の脱硝触媒エレメントは、再生触媒エレメントより活性および比表面積が高い。
この再生触媒エレメントを用いた以外は実施例1と同じ方法で、脱硝率およびAsの量を測定した。それらの結果を表3に示す。
【0038】
【0039】
(比較例1)
実施例1と同じ方法で、触媒ユニットAおよびBを得た。新品の脱硝触媒エレメントは、再生触媒エレメントより活性および比表面積が高い。石炭焚きボイラの脱硝装置に触媒ユニットBと触媒ユニットAを排ガスが触媒ユニットB(前段)に先ず流入し、次いで触媒ユニットA(後段)に流入するように積み重ねて設置した。累積運転時間が4000時間、8000時間および16000時間に達したときに、触媒ユニットAおよびBからそれぞれ触媒エレメントの一部を抜き出し、抜き出した触媒エレメントから20mm×100mmの試験片を切り出した。
切り出した試験片について表1に示す条件にて試験を行って脱硝率を測定した。また、試験片を分析して付着したAsの量を測定した。それらの結果を表4に示す。
【0040】
【0041】
これらの結果から次のようなことがわかる。前段触媒による整流によって後段触媒への触媒毒付着量を低減できる。前段触媒への触媒毒付着量は後段触媒への触媒毒付着量より多い。新品触媒は再生触媒に比べて細孔径が広範囲にわたって形成され、また、比表面積が相対的に高いため、触媒毒が付着しやすい。シンタリング等を起こしている相対的に比表面積が低い再生触媒は新品触媒に比べて活性が低く且つ触媒毒の付着性が低い。
比較例1のように、前段触媒を新品触媒に取り替え、後段触媒を再生触媒に取り替えた場合、高い活性を有していた前段の新品触媒は触媒毒の付着によって活性が急激に低下する。再生触媒は元々新品触媒よりも活性が低いので、新品触媒の活性の急激な低下を補いきれず、脱硝装置全体としての脱硝率は16000時間で70%を下回る。
これに対して、本願発明に従って、前段触媒を再生触媒に取り替え、後段触媒を新品触媒に取り替えた場合、再生触媒は新品触媒に比べて触媒毒の付着性が低いので活性の低下が緩やかである。前段触媒の再生触媒の活性が触媒毒の付着によって低下しても、後段触媒の新品触媒の活性が高く維持される。その結果、脱硝装置全体としての脱硝率は16000時間でも70%以上を維持できる。
【符号の説明】
【0042】
1:入口ダクト
2:板状触媒(触媒B:例えば、新品触媒)
3:触媒Bの収納された触媒ユニット
4a、4b、4c、4d:触媒固定床
5:出口ダクト
6:反応器ダクト
7:触媒Aの収納された触媒ユニット
8:板状触媒(触媒A:例えば、再生触媒)
9:平板部
10:スペーサ部
Fa、Fb、Fc、Ba:触媒モジュール