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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】真空ポンプ及びモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/18 20060101AFI20221108BHJP
   F04D 19/04 20060101ALI20221108BHJP
   H02P 29/028 20160101ALI20221108BHJP
【FI】
H02P3/18 101Z
F04D19/04 H
H02P29/028
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017170489
(22)【出願日】2017-09-05
(65)【公開番号】P2019047680
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-105602(JP,A)
【文献】実開平02-075997(JP,U)
【文献】特開2002-147386(JP,A)
【文献】特開2014-207735(JP,A)
【文献】特開2015-022402(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 3/18
F04D 19/04
H02P 29/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停電時にロータの回転に伴って回生電力を発生させるモータを備えた真空ポンプであって、
交流電源から得られる交流電力を直流電力に変換して出力する電源ユニットと、
前記モータを制御するモータ制御装置と、
を備え、
前記モータ制御装置は、
前記モータに供給される前記直流電力又は前記回生電力を制御するインバータ回路を備えているモータ駆動回路と、
前記電源ユニットと前記モータ駆動回路との間に設けられた逆流防止ダイオードと、
前記逆流防止ダイオードの一次側電圧を検出する停電検出回路と、
前記逆流防止ダイオードの二次側電圧を検出する駆動電圧検出回路と、
前記一次側電圧が所定の停電検出閾値まで降下すると、前記一次側電圧と前記二次側電圧との電圧差が前記逆流防止ダイオードの電圧降下と略一致する場合には、前記交流電力の停電である一次側停電と判定し、前記一次側電圧と前記二次側電圧との電圧差が前記逆流防止ダイオードの電圧降下より大きい場合には、前記直流電力の停電である二次側停電判定し、前記回生電力で前記インバータ回路の駆動電力をまかなう回生モードに移行するように前記モータ駆動回路を制御するモータ制御回路と、
を備え、
前記モータ制御回路は、前記一次側停電と判定した場合には、前記回生モードに移行するように前記モータ駆動回路を制御し、前記二次側停電と判定した場合には、前記二次側電圧が所定の回生モード移行閾値まで降下した後、又は、前記二次側電圧の低下開始から所定時間経過後に、前記回生モードに移行するように前記モータ駆動回路を制御することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記モータ制御回路は、前記二次側停電時の回生モードの電流指令値の最大値を前記一次側停電の回生モードの電流指令値の最大値より小さく設定することを特徴とする請求項記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記モータ制御回路は、前記モータの電流指令値の最大値を回生モード移行時の前記ロータの回転速度に応じて調整することを特徴とする請求項1又は2記載の真空ポンプ。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項記載の真空ポンプに用いられることを特徴とするモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ及び該真空ポンプのモータを制御するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置、電子顕微鏡又は質量分析装置等の機器において、真空チャンバ内を高真空にするために真空ポンプが利用されている。
【0003】
このような真空ポンプとして、ターボ分子ポンプが知られている(例えば、特許文献1参照)。ターボ分子ポンプは、ポンプケース内にロータが回転可能に支持されており、ロータの外周に放射状かつ複数段のロータ翼が設けられ、これらロータ翼と対面するポンプケースの内周にロータ翼間に交互に位置決めされた複数段のステータ翼が配置されている。真空チャンバ内をある程度減圧した後に、ロータを高速回転させると、回転するロータ翼及び固定されたステータ翼に衝突したガス分子が運動量を付与されて排気される。このような排気動作により、真空チャンバからポンプ本体内に吸引されたガス分子が圧縮されながら排気されて、真空チャンバ内に所望の高真空度が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-94852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図5、6に示すようなモータ制御装置90を有する真空ポンプ91では、電圧検出回路92が検出する逆流防止ダイオード93の二次側電圧vが停電検出閾値n1まで降下すると、モータ制御回路94は停電が発生したと判定し、モータ95の回生電力で図示しないロータを回転させる回生モードに移行する。回生モードでは、モータ95を駆動するモータ駆動回路96、磁気軸受97及び磁気軸受97を駆動させる磁気軸受制御回路98等の各種機器の駆動に必要な駆動電力をモータ95の回生電力でまかなっている。また、回生モードでは、図6に示すように、電圧v1は、回生モードへの切換時にオーバーシュートした後に回生モード時の目標電圧に一致するように制御される。なお、図5中の目標電圧は、停電検出閾値n1と一致している。
【0006】
しかしながら、電圧v1のオーバーシュートが復電検出閾値n2を上回ると、モータ制御回路94は、復電すなわち停電が復旧したものと判定して回生モードから通常運転モードに移行するため、電圧v1が安定しないという問題があった。
【0007】
そこで、発明者は、モータ制御装置90内の電圧v1ではなく、外部の電源ユニット80を介してモータ制御装置90に供給される電力の電圧に基づいて停電又は復電を判定して、上述したオーバーシュートによる復電の誤検出を回避することに思い至った。
【0008】
しかしながら、図5に示す真空ポンプでは、停電後の電圧v1が停電検出閾値n1まで降下した後に回生モードに移行するため、回生モード移行時にオーバーシュートが発生しても各種機器に悪影響を与え得るオーバーボルテージ(過電圧)に至ることはなかった。ところが、図7に示すように、停電か否かをモータ制御装置90に供給される電力の電圧v2に基づいて判定する場合、モータ制御装置90内の電圧v1が十分に降下する前に回生モードへ移行してオーバーボルテージに至る虞があった。
【0009】
そこで、オーバーボルテージを回避して安全に回生モードに移行するという解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明は、この課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る真空ポンプは、停電時にロータの回転に伴って回生電力を発生させるモータを備えた真空ポンプであって、交流電源から得られる交流電力を直流電力に変換して出力する電源ユニットと、前記モータを制御するモータ制御装置と、を備え、前記モータ制御装置は、前記モータに供給される前記直流電力又は前記回生電力を制御するインバータ回路を備えているモータ駆動回路と、前記電源ユニットと前記モータ駆動回路との間に設けられた逆流防止ダイオードと、前記逆流防止ダイオードの一次側電圧を検出する停電検出回路と、前記逆流防止ダイオードの二次側電圧を検出する駆動電圧検出回路と、前記一次側電圧が所定の停電検出閾値まで降下すると、前記一次側電圧と前記二次側電圧との電圧差が前記逆流防止ダイオードの電圧降下と略一致する場合には、前記交流電力の停電である一次側停電と判定し、前記一次側電圧と前記二次側電圧との電圧差が前記逆流防止ダイオードの電圧降下より大きい場合には、前記直流電力の停電である二次側停電判定し、前記回生電力で前記インバータ回路の駆動電力をまかなう回生モードに移行するように前記モータ駆動回路を制御するモータ制御回路と、を備え、前記モータ制御回路は、前記一次側停電と判定した場合には、前記回生モードに移行するように前記モータ駆動回路を制御し、前記二次側停電と判定した場合には、前記二次側電圧が所定の回生モード移行閾値まで降下した後、又は、前記二次側電圧の低下開始から所定時間経過後に、前記回生モードに移行するように前記モータ駆動回路を制御する。
【0011】
この構成によれば、外部の交流電源の電力で真空ポンプを起動させる通常運転モードから回生モードに切り替える際に、逆流防止ダイオードの一次側電圧及び二次側電圧の電圧差に基づいて、交流電力の停電である一次側停電(AC遮断)又は直流電力の停電である二次側停電(DC遮断)の何れであるかを判定して、回生モードに移行することにより、逆流防止ダイオードの二次側電圧からオーバーボルテージまでのマージンを十分に確保した状態で回生モードに移行可能なため、回生モード移行時の電圧のオーバーシュートに起因したオーバーボルテージを抑制することができる。
【0013】
また、一次側停電時に通常運転モードから回生モードに切り替える場合、逆流防止ダイオードの一次側電圧が停電検出閾値まで降下したときは、逆流防止ダイオードの二次側電圧も同様に停電検出閾値付近まで降下していることから、逆流防止ダイオードの二次側電圧からオーバーボルテージまでのマージンを十分に確保した状態で回生モードに速やかに移行することができる。
【0015】
さらに、二次側停電と判定した場合には、逆流防止ダイオードの二次側電圧が所定の回生モード移行閾値まで降下した後に、又は、逆流防止ダイオードの二次側電圧が降下してから所定時間経過した後に回生モードに移行することにより、逆流防止ダイオードの二次側電圧からオーバーボルテージまでのマージンを十分に確保した状態で回生モードに移行可能なため、回生モード移行時の電圧のオーバーシュートに起因したオーバーボルテージを抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る真空ポンプは、前記モータ駆動回路は、前記二次側停電時の回生モードの電流指令値の最大値を前記一次側停電の回生モードの電流指令値の最大値より小さく設定することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、一次側停電時に比べて、二次側停電時に回生モードに移行するときの電圧のオーバーシュートが小さくなるため、逆流防止ダイオードの二次側電圧からオーバーボルテージまでのマージンが小さくなりがちな二次側遮断であっても、電圧のオーバーシュートに起因したオーバーボルテージを抑制することができる。
【0020】
また、本発明に係る真空ポンプは、前記モータ制御回路は、前記モータの電流指令値の最大値を回生モード移行時の前記ロータの回転速度に応じて調整することが好ましい。
【0021】
この構成によれば、回生電力はモータの回転速度が増すにつれて大きくなるところ、モータの電流指令値の最大値をモータの回転速度に対応させて調整することにより、モータ制御回路の制御パラメータを回生電力の増減に応じて適宜変更する必要がなくなるため、簡便で且つ汎用的な制御を行うことができる。
【0022】
上記課題を解決するために、本発明に係るモータ制御装置は、以上のような真空ポンプに用いられる。
【0023】
この構成によれば、外部の交流電源の電力で真空ポンプを起動させる通常運転モードから回生モードに切り替える際に、逆流防止ダイオードの一次側電圧及び二次側電圧の電圧差に基づいて、交流電力の停電である一次側停電(AC遮断)又は直流電力の停電である二次側停電(DC遮断)の何れであるかを判定して、回生モードに移行することにより、逆流防止ダイオードの二次側電圧からオーバーボルテージまでのマージンを十分に確保した状態で回生モードに移行可能なため、回生モード移行時の電圧のオーバーシュートに起因したオーバーボルテージを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、停電が発生して通常運転モードから回生モードに切り替える際に、逆流防止ダイオードの一次側電圧及び二次側電圧の電圧差に基づいて、一次側停電又は二次側停電の何れであるかを判定して、回生モードに移行することにより、回生モード移行時の電圧のオーバーシュートに起因したオーバーボルテージが抑制されるため、安全に回生モードに移行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るモータ制御装置を備える真空ポンプの構成図。
図2】本実施形態に係るモータ制御装置の作用を示すフローチャート。
図3】AC遮断時の電力降下の様子を示す図。
図4】DC遮断時の電力降下の様子を示す図。
図5】本発明の比較例に係るモータ制御装置を備える真空ポンプの構成図。
図6図5の真空ポンプにおいて、通常運転モードから回生モードに移行した場合の電圧の推移を示す図。
図7】回生モードへの移行時にオーバーボルテージに至った場合の電圧の推移を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0027】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0028】
図1は、本実施形態に係るモータ制御装置10を備えたターボ分子ポンプ1の構成図である。ターボ分子ポンプ1は、図示しないロータが磁気軸受2に非接触で回転可能に支持されており、モータ3がロータを高速回転させると、ロータの外周に設けられた複数段のロータ翼及びロータ翼に対して交互に配置された複数段のステータ翼に衝突したガス分子が運動量を付与されて排気される。
【0029】
磁気軸受2は、ロータを径方向に支持する上側径方向電磁石及び下側径方向電磁石と、ロータを軸方向に支持する軸方向電磁石とで構成されており、ロータを浮上させた状態で5軸制御する。
【0030】
モータ3は、回転子側に設けられた図示しない2極(N極、S極)の永久磁石と、固定子側に設けられた図示しない3相のモータ巻線と、備えている。また、モータ3は、ロータの回転数を検出する図示しない回転数センサを備えている。
【0031】
また、モータ3は、給電が停止されると、ロータの回転に伴って回生電力を発生させる発電機として機能する。モータ3が回生電力を発電することにより、停電時であっても、磁気軸受2が高速回転するロータを浮上支持し続けるため、安全に運転を継続することができる。
【0032】
モータ制御装置10に外付けで接続された電源ユニット4は、商用電源の交流電力(例えば、24V)を直流電力に変換して、モータ制御装置10に供給する。電源ユニット4には、モータ制御装置10に印加される電圧を平滑化する第1の平滑コンデンサ5を備えている。
【0033】
モータ制御装置10は、ターボ分子ポンプ1に一体に組み込まれている。モータ制御装置10は、モータ3の動作を制御する。
【0034】
モータ駆動回路11は、モータ巻線に接続されている。各モータ巻線には対応した3組のインバータ回路が設けられており、モータ駆動回路11は、後述するモータ制御回路16から送られるドライブ信号に基づいて、各巻線に供給される電力を制御する。また、モータ駆動回路11は、モータ巻線に流れる電流を検出する図示しない電流センサを備えている。
【0035】
逆流防止ダイオード12は、電源ユニット4とモータ駆動回路11との間に介挿されている。なお、符号13は、モータ制御装置11内の電圧を平滑化する第2の平滑コンデンサである。
【0036】
停電検出回路14は、逆流防止ダイオード12の一次側電圧を検出する。停電検出回路14は、モータ制御回路16に検出した電圧値を送る。
【0037】
駆動電圧検出回路15は、逆流防止ダイオード12の二次側電圧を検出する。駆動電圧検出回路15は、モータ制御回路16に検出した電圧値を送る。
【0038】
モータ制御回路16は、モータ駆動回路11の動作を制御する。モータ制御回路16は、回転数センサの検出値及び電流センサの検出値と基準回転数及び基準電流値とに基づいてPID制御してドライブ信号を生成する。ドライブ信号は、モータ駆動回路11に送られる。
【0039】
また、モータ制御装置10は、磁気軸受2の動作を制御する磁気軸受制御回路17を備えている。磁気軸受制御回路17は、ロータの径方向への変位を検出する径方向センサの検出値に応じてロータを径方向に支持する上側径方向電磁石及び下側径方向電磁石を励磁制御する。また、ロータの軸方向への変位を検出する軸方向センサの検出値に応じて、ロータを軸方向に支持する軸方向電磁石を励磁制御する。
【0040】
さらに、モータ制御回路16は、停電検出回路14の検出値及び駆動電圧検出回路15の検出値並びに各種設定値に基づいて停電の発生を検出し、さらに、停電発生時には、モータ3の回生電力でターボ分子ポンプ1の各種電力をまかなうようにモータ駆動回路11の動作を制御する。
【0041】
次に、モータ制御装置10の作用について、図面に基づいて説明する。図2は、モータ制御装置10の作用を示すフローチャートである。
【0042】
外部電源から供給される電力で磁気軸受2やモータ3を起動する通常運転モードでターボ分子ポンプ1の運転を開始する(S1)。
【0043】
モータ制御装置10への電力供給が停止すると(S2)、モータ制御回路16は、逆流防止ダイオード12の一次側電圧が停電検出閾値まで降下すると、停電の発生を検出する(S3)。なお、逆流防止ダイオード12の一次側電圧の停電検出閾値は任意に変更可能であり、例えば、商用電源の電圧が24Vである場合には、停電検出値は20Vに設定されることが考えられる。
【0044】
モータ制御回路16は、停電を検出すると、商用電源と電源ユニット4との間の停電(AC遮断)または電源ユニット4とモータ制御装置10との間の停電(DC遮断)のいずれが生じたかを判定する(S4)。
【0045】
具体的には、モータ制御回路16は、逆流防止ダイオード12の一次側電圧が停電検出閾値まで降下したときの停電検出回路14が検出した電圧と駆動電圧検出回路15が検出した電圧との電圧差が、逆流防止ダイオード12における電圧降下(例えば、0.6V)と略一致する場合には、AC遮断と判定し、逆流防止ダイオード12における電圧降下より大きい場合には、DC遮断と判定する。
【0046】
さらに具体的には、停電検出時における停電検出回路14が検出した電圧と駆動電圧検出回路15が検出した電圧との電圧差とは、換言すれば、逆流防止ダイオード12の一次側電圧と二次側電圧との電圧差である。この電圧差が逆流防止ダイオード12における電圧降下と略一致するとは、第1の平滑コンデンサ5と第2の平滑コンデンサ13とが同様に放電していることを意味する。このような場合に、モータ制御回路16は、電源ユニット4とモータ制御装置10との間は電気的に接続されているとして、AC遮断と判定する。
【0047】
一方、逆流防止ダイオード12の一次側電圧と二次側電圧との電圧差が逆流防止ダイオード12における電圧降下より大きい場合とは、第2の平滑コンデンサ13が放電することで、逆流防止ダイオード12の二次側電圧は緩やかに降下するのに対して、第1の平滑コンデンサ5が放電しておらず、逆流防止ダイオード12の一次側電圧が急速に降下したことを意味する。このような場合に、モータ制御回路16は、電源ユニット4とモータ制御装置10との間は電気的に接続されていないとして、DC遮断と判定する。
【0048】
モータ制御回路16がAC遮断と判定した場合には、モータ制御回路16は、通常運転モードからロータの回転に伴う回生電力でモータ制御装置10内の各種機器を駆動させる回生モードに直ちに移行する(S5)。
【0049】
図3に示すように、逆流防止ダイオード12の一次側電圧が停電検出閾値N1まで降下したとき、逆流防止ダイオード12の二次側電圧V2は、逆流防止ダイオード12の電圧降下ΔVの分だけ逆流防止ダイオード12の一次側電圧V1より低い。そのため、逆流防止ダイオード12の二次側電圧V2と各種機器に悪影響を与え得るオーバーボルテージ(例えば、30V)とのマージンが確保されている。したがって、回生モード移行時のオーバーシュート(例えば、2~3V)が生じても、オーバーボルテージにかかることなく、回生モード時の目標電圧に収束する。なお、図3では、目標電圧は、停電検出閾値N1と同じ値に設定しているが、これに限定されるものではない。
【0050】
モータ制御回路16は、回生モードに移行する際に、モータ3の回転速度に基づいて、モータ3の電流指令値の最大値を調整するのが好ましい。これは、モータ3の回転速度が増すにつれて回生電力も大きくなるが、モータ制御回路16の制御パラメータも回生電力に応じて適宜変更する必要があるところ、モータ3の電流指令値の最大値をモータ3の回転速度に対応させて維持することにより、簡便で且つ汎用的な制御を行うことができる。
【0051】
モータ3の電流指令値の最大値の調整方法としては、例えば、モータ3の回転速度に対応するモータ3の電流指令値の最大値を定めたテーブルを予め記憶しておき、回生モード移行時のモータ3の実際の回転速度と上述したテーブルから、モータ3の電流指令値の最大値を呼び出すことが考えられる。この際、モータ3の電流指令値の最大値は、モータ3の回転速度が高くなるほど小さく設定される。
【0052】
一方、モータ制御回路16がDC遮断と判定した場合には、モータ制御回路16は、逆流防止ダイオードの二次側電圧が停電検出閾値まで降下した後に、通常運転モードから回生モードに移行する(S6)。
【0053】
図4に示すように、DC遮断の場合、逆流防止ダイオード12の一次側電圧V1が停電検出閾値N1まで降下しても、逆流防止ダイオード12の二次側電圧V2は、十分に降下していない。そのため、回生モード移行時の逆流防止ダイオード12の二次側電圧V2とオーバーボルテージとのマージンが確保できるように、逆流防止ダイオード12の二次側電圧V2が回生モード移行閾値まで降下した後に、回生モードに移行することで、オーバーシュートに起因してオーバーボルテージにかかることを抑制することができる。なお、本実施形態では、回生モード移行閾値を停電検出閾値N1と同じ値に設定しているが、これに限定されるものではない。また、回生モードの開始は二次側電圧V2が停電検出閾値N1まで低下した場合に限らず、所定時間経過後としても構わない。このような時間としては、例えば、二次側電圧V2の降下具合の実測値に基づいて予め設定された時間が考えられる。
【0054】
DC遮断の場合も、AC遮断と同様に、回生モードに移行する際に、モータ3の回転速度に基づいて、モータ3の電流指令値の最大値を調整するのが好ましい。さらに、DC遮断の場合、回生モード移行時の逆流防止ダイオード12の二次側電圧V2が、AC遮断の場合と比較して逆流防止ダイオード12の電圧降下ΔVの分だけ僅かに高いため、DC遮断の場合には、モータ3の回転速度が同一であっても、AC遮断の場合よりもモータ3の電流指令値の最大値を小さく設定するのが好ましい。これにより、回生モード移行時にオーバーボルテージにかかることをさらに抑制することができる。
【0055】
その後、停電が復旧して(S7)、停電検出回路14が逆流防止ダイオード12の一次側電圧が復電検出閾値(例えば、21V)に達したことを検出すると(S8)、モータ制御回路16は、回生モードを終了して、外部電源から供給される電力でターボ分子ポンプを運転する通常運転モードに移行する。
【0056】
このようにして、本実施形態に係るターボ分子ポンプ1は、停電が発生して通常運転モードから回生モードに切り替える際に、逆流防止ダイオード12の一次側電圧及び二次側電圧の電圧差に基づいて、AC遮断又はDC遮断の何れであるかを判定し、DC遮断と判定した場合には、逆流防止ダイオード12の二次側電圧が所定の回生モード移行閾値まで降下した後に回生モードに移行することにより、回生モード移行時の電圧のオーバーシュートに起因したオーバーボルテージが抑制されるため、安全に回生モードに移行することができる。
【0057】
また、本実施形態に係るモータ制御装置10は、停電が発生して通常運転モードから回生モードに切り替える際に、逆流防止ダイオード12の一次側電圧及び二次側電圧の電圧差に基づいて、AC遮断又はDC遮断の何れであるかを判定し、DC遮断と判定した場合には、逆流防止ダイオード12の二次側電圧が所定の回生モード移行閾値まで降下した後に回生モードに移行することにより、回生モード移行時の電圧のオーバーシュートに起因したオーバーボルテージが抑制されるため、安全に回生モードに移行することができる。
【0058】
また、上述した変形例以外にも本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0059】
1 ・・・ ターボ分子ポンプ
2 ・・・ 磁気軸受
3 ・・・ モータ
4 ・・・ 電源ユニット
5 ・・・ 第1の平滑コンデンサ
10・・・ モータ制御装置
11・・・ モータ駆動回路
12・・・ 逆流防止ダイオード
13・・・ 第2の平滑コンデンサ
14・・・ 停電検出回路
15・・・ 駆動電圧検出回路
16・・・ モータ制御回路
17・・・ 磁気軸受制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7