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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】粉砕機及び粉砕機の運用方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 15/04 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
B02C15/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017213883
(22)【出願日】2017-11-06
(65)【公開番号】P2019084487
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤人
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡太朗
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-151450(JP,A)
【文献】実開平03-034838(JP,U)
【文献】特開2000-140662(JP,A)
【文献】特開平08-266922(JP,A)
【文献】特開平10-099702(JP,A)
【文献】特開2008-149281(JP,A)
【文献】特開2017-113701(JP,A)
【文献】特開平07-136534(JP,A)
【文献】特開平06-246179(JP,A)
【文献】米国特許第04489895(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 15/00-16、23/18-40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空形状のハウジングと、
前記ハウジングの内部において回転可能に支持される粉砕テーブルと、
前記粉砕テーブル上に設置され、前記粉砕テーブルとの間の粉砕位置で炭素含有固体燃料を粉砕する粉砕ローラと、
前記ハウジングに設けられ、前記粉砕テーブルの鉛直上側で前記粉砕ローラの前記粉砕位置よりも内周側において前記粉砕テーブルの回転中心を中心として想定される仮想円の接線方向に沿って、前記粉砕テーブルに対してガスを噴出するノズルと、
前記ノズルの吹出口と反対側の一端側において、前記ノズルの軸方向に対してほぼ直交する方向に設けられ、雄ねじ部が形成されるとともに内部を前記ガスが通過する管と、
前記ハウジングには、前記管が貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔を貫通する前記雄ねじ部を前記ハウジングに締め付けて固定する雌ねじ部が形成された固定部と、
前記ノズルと前記ハウジングとの間で、前記管を囲んで設置されるストッパと、
を備える粉砕機。
【請求項2】
前記ノズルの内側は管状であり、吹出口の径は、前記ノズルの吹出口よりも上流側の流路の径より小さい請求項1に記載の粉砕機。
【請求項3】
前記ノズルの流路の径は、吹出口の径よりも2倍~4倍である請求項2に記載の粉砕機。
【請求項4】
前記ノズルの鉛直上側面は、水平方向に対して下方に傾いた傾斜面が形成されている請求項1から3のいずれか1項に記載の粉砕機。
【請求項5】
前記ノズルの下面は、水平方向に対して平行な水平面を有し、及び/又は、前記ノズルの少なくとも一方の側面は、水平方向に対して垂直な鉛直面を有する請求項1から4のいずれか1項に記載の粉砕機。
【請求項6】
前記ノズルは、前記粉砕テーブルよりも鉛直上方に設置され、前記ノズルの先端部は、
前記粉砕テーブルの鉛直上方に位置しており、
前記ノズルの下面及び/又は少なくとも一方の側面には、耐摩耗性材料が設置されている請求項1から5のいずれか1項に記載の粉砕機。
【請求項7】
前記ノズルの前記下面及び少なくとも一つの前記側面には、板状の前記耐摩耗性材料が設置され、前記下面に設置される前記耐摩耗性材料は、前記少なくとも一つの前記側面に設置される前記耐摩耗性材料の下面側の少なくとも一部を覆うように設置される請求項6に記載の粉砕機。
【請求項8】
前記ノズルと前記ハウジングの内面との間に形成される隙間には充填材が設置されている請求項1から7のいずれか1項に記載の粉砕機。
【請求項9】
前記貫通孔の近傍に前記ノズルに沿って設けられ前記ハウジングに支持された偏流板を備え、
前記ノズルと前記ハウジングとの間に挟んで前記偏流板が配設され、前記ノズルの一端側と前記吹出口側の間の中間部において、前記ノズルが前記偏流板によって支持される請求項1に記載の粉砕機。
【請求項10】
中空形状のハウジングと、前記ハウジングの内部において回転可能に支持される粉砕テーブルと、前記粉砕テーブル上に設置され、前記粉砕テーブルとの間の粉砕位置で炭素含有固体燃料を粉砕する粉砕ローラと、前記ハウジングに設けられたノズルとを備える粉砕機の運用方法であって、
前記粉砕機は、
前記ノズルの吹出口と反対側の一端側において、前記ノズルの軸方向に対してほぼ直交する方向に設けられ、雄ねじ部が形成されるとともに内部をガスが通過する管と、
前記ハウジングには、前記管が貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔を貫通する前記雄ねじ部を前記ハウジングに締め付けて固定する雌ねじ部が形成された固定部と、
前記ノズルと前記ハウジングとの間で、前記管を囲んで設置されるストッパと、を有し、
前記ノズルが、前記粉砕テーブルの鉛直上側で前記粉砕ローラの前記粉砕位置よりも内周側において前記粉砕テーブルの回転中心を中心として想定される仮想円の接線方向に沿って、前記粉砕テーブルに対してガスを噴出する粉砕機の運用方法。
【請求項11】
前記ハウジングの内部に対する前記炭素含有固体燃料の供給が停止された後、前記ノズルからの前記粉砕テーブルに対するガスの噴出を開始する請求項10に記載の粉砕機の運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉砕機及び粉砕機の運用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電設備等で使用される石炭やバイオマス等の炭素含有の固体燃料は、ミルと呼ばれる粉砕機で微粉状に粉砕されてボイラ等の燃焼装置へ供給される。粉砕機において、給炭管から粉砕テーブルへ投入された石炭やバイオマス等の炭素含有の固体燃料は、粉砕テーブルと粉砕ローラとの間で噛み砕かれることにより粉砕されて微粉状となり、粉砕テーブルの外周から供給される搬送ガスに搬送されて分級機にて選別され、粒径サイズの小さいものを分級して燃焼装置へと搬送される。
【0003】
粉砕機を停止した場合、粉砕テーブル上には炭素含有の固体燃料が残存する。そのため、例えば、下記特許文献1及び2に示すように、粉砕テーブルに残存した炭素含有の固体燃料を噴出した空気によってパージする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-246179号公報
【文献】実開平5-95651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、バイオマス燃料は化石燃料を使用するボイラなどの二酸化炭素排出量の削減対策の1つとして注目されている。バイオマス燃料は、ペレット状で粉砕機に供給されて粉砕されるが、石炭よりも発火性が高い。そのため、少量の残存燃料であっても、粉砕機内部で自然昇温による発火が生じる虞が高い。したがって、粉砕機を停止させるにあたって、新たな燃料が供給されない運転停止モードにおいては、粉砕テーブル上に残存した燃料をより確実に系外へ排出するために、残存した燃料を粉砕テーブルよりも外側へと吹き飛ばす必要がある。なお、粉砕機によって粉砕される固体燃料がバイオマス燃料ではなく、石炭である場合も、運転停止モードにおいて、粉砕テーブル上に残存した燃料を系外へ確実に排出することが望ましい。一方、上記特許文献1及び2などで開示された技術は、粉砕テーブルに残存した固体燃料を効率的にパージする方法として、十分な手法には至っていない。
【0006】
本開示に係る粉砕機及び粉砕機の運用方法は、粉砕機を停止させるにあたって、新たな燃料が供給されない運転停止モードにおいて、粉砕テーブル上に残存した燃料をより確実に粉砕テーブルよりも外側へ吹き飛ばすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の幾つかの実施形態に係る粉砕機は、中空形状のハウジングと、前記ハウジングの内部において回転可能に支持される粉砕テーブルと、前記粉砕テーブル上に設置され、前記粉砕テーブルとの間の粉砕位置で炭素含有の固体燃料を粉砕する粉砕ローラと、前記ハウジングに設けられ、前記粉砕テーブルの鉛直上側で前記粉砕ローラの前記粉砕位置よりも内周側において前記粉砕テーブルの回転中心を中心として想定される仮想円の接線方向に沿って、前記粉砕テーブルに対してガスを噴出するノズルとを備える。
【0008】
この構成によれば、粉砕テーブルが、ハウジングの内部においてハウジングに対して回転可能に支持される粉砕テーブルと、粉砕テーブル上に設置された粉砕ローラが、粉砕テーブルとローラの間で炭素含有の固体燃料(以下「固体燃料」という。)を粉砕する。また、ノズルが、粉砕テーブルの鉛直上側で粉砕ローラよりも内周側において粉砕テーブルの回転中心を中心として想定される仮想円の接線方向に沿って、粉砕テーブルに対して空気などのガスを噴出することから、噴出されたガスが粉砕ローラに当たることなく、粉砕テーブル上に旋回流を噴き付けて残存した燃料をより確実に粉砕テーブルよりも外側へと吹き飛ばすことができる。ガスの噴出方向が粉砕テーブルの中心ではないため、噴出されたガスが仮想円の接線方向へ旋回する旋回流となるため、また粉砕テーブルが回転している場合、粉砕テーブルによる遠心力もさらに作用して、残存した燃料が噴出されたガスと共に粉砕テーブルの外側へと搬出されやすい。
【0009】
上記実施形態において、前記ノズルの内側は管状であり、吹出口の径は、前記ノズルの吹出口よりも上流側の流路の径より小さいと望ましい。
【0010】
この構成によれば、ノズルから噴出されるガスの流速を高めることができ、粉砕テーブル上に残存した燃料を粉砕テーブルの外側へと吹き飛ばしやすくなる。特に、バイオマス燃料の場合、粉砕後の粒子径が石炭よりも大きく重量もあるため、噴出ガスによって吹き飛ばされにくい場合があるが、噴出するガスの流速を高めることで、より確実に粉砕テーブルの外側へと吹き飛ばされるようになる。
【0011】
上記実施形態において、前記ノズルの流路の径は、前記吹出口の径よりも2倍~4倍であると望ましい。
【0012】
この構成によれば、ノズルの先端に形成された吹出口の径を絞ることによって、ノズルから噴出される空気の流速を高めることができ、粉砕テーブル上に残存した固体燃料を粉砕テーブルの外側へと吹き飛ばして、より吹き出しやすくなる。
【0013】
上記実施形態において、前記ノズルの鉛直上側面は、水平方向に対して下方に傾いた傾斜面が形成されてもよい。
【0014】
この構成によれば、ノズルの鉛直上側面が水平方向に対して傾斜していることから、ノズルの上面において微粉燃料や微粉砕物が堆積しづらくなり、残存した微粉燃料や微粉砕物による発火の可能性を低減できる。
【0015】
上記実施形態において、前記ノズルの鉛直下側面は、水平方向に対して平行な水平面を有し、及び/又は、前記ノズルの少なくとも一方の側面は、水平方向に対して垂直な鉛直面を有してもよい。
【0016】
この構成によれば、ノズルの鉛直下側面が水平面に対して平行であり、及び/又は、ノズルの少なくとも一方の側面が水平面に対して鉛直であるから、ノズルのハウジングに対する取り付けが容易になり、ノズルが安定して固定される。
【0017】
上記実施形態において、前記ノズルは、前記粉砕テーブルよりも鉛直上方に設置され、前記ノズルの先端部は、前記粉砕テーブルの鉛直上方に位置しており、前記ノズルの下面及び/又は少なくとも一方の側面には、耐摩耗性材料が設置されてもよい。
【0018】
この構成によれば、ノズルは、前記粉砕テーブルよりも鉛直上方に設置され、前記ノズルの先端部は、前記粉砕テーブルの鉛直上方に位置していることから、粉砕機の運転時に、粉砕テーブルの鉛直下方側から鉛直上方側へ向かって、粉砕テーブルよりも外周を吹き上げる搬送ガスとこれに随伴される粉砕された固体燃料がノズルの下面や側面に衝突する。これに対し、ノズルの下面及び/又は少なくとも一方の側面には、耐摩耗性材料が設置されているため、ノズル表面の摩耗を低減できる。
【0019】
上記実施形態において、前記ノズルの前記下面及び少なくとも一つの前記側面には、板状の前記耐摩耗性材料が設置され、前記下面に設置される前記耐摩耗性材料は、前記少なくとも一つの前記側面に設置される前記耐摩耗性材料の下面側の少なくとも一部を覆うように設置されてもよい。
【0020】
この構成によれば、ノズルの下面に設置される耐摩耗性材料は、ノズルの側面に設置される耐摩耗性材料の下面側の少なくとも一部を重なって覆う。下面に設置される耐摩耗性材料と側面に設置される耐摩耗性材料によって形成される継ぎ目は、ノズルの側面に位置し、ノズルの下面には位置しない。そのため、粉粉砕テーブルよりも外周を吹き上げる粉砕された固体燃料が、継ぎ目に衝突しにくくなり、この衝突によって、継ぎ目が広がりにくく、耐摩耗性が向上する。
【0021】
上記実施形態において、前記ノズルと前記ハウジングの内面との間に形成される隙間には充填材が設置されてもよい。
【0022】
この構成によれば、ノズルとハウジングの内面との間に形成される隙間に充填材が設置されているため、微粉燃料や微粉砕物が溜まりにくくなり、残存した微粉燃料や微粉砕物による発火の可能性を低減できる。
【0023】
上記実施形態において、前記ノズルの吹出口と反対側の一端側において、前記ノズルの軸方向に対してほぼ直交する方向に設けられ、雄ねじ部が形成されるとともに内部を前記ガスが通過する管と、前記ハウジングには、前記管が貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔を貫通する前記雄ねじ部を前記ハウジングに締め付けて固定する雌ねじ部が形成された固定部と、前記ノズルと前記ハウジングとの間で、前記管を囲んで設置されるストッパとを更に備え
【0024】
この構成によれば、ノズルと前記ハウジングとの間で、管を囲んでストッパが設置されており、ハウジングの内面形状や粉砕機内の構成部材が存在する場合により、雄ねじ部が雌ねじ部によって締め付けられたとき、ストッパが設置されない場合に比べて、締め付けが不均一になりづらい。そのため、ノズルが粉砕機構成部材に対して安定的に固定され、粉砕機で発生する振動に対してねじ締め付けが緩むことを抑制できる。
【0025】
上記実施形態において、前記貫通孔の近傍に前記ノズルに沿って設けられ前記ハウジングに支持された粉砕機構成部材を備え、前記ノズルと前記ハウジングとの間に挟んで前記粉砕機構成部材が配設され、前記ノズルの一端側と前記吹出口側の間の中間部において、前記ノズルが前記粉砕機構成部材によって支持されてもよい。
【0026】
この構成によれば、ノズルの一端側と吹出口側の間の中間部において、ノズルが粉砕機構成部材によって支持されるため、ノズルがハウジングにより安定して固定され、粉砕機で発生する振動に対してねじ締め付けが緩むことをより一層に抑制できる。
【0027】
本開示の他の実施形態に係る粉砕機の運用方法は、中空形状のハウジングと、前記ハウジングの内部において回転可能に支持される粉砕テーブルと、前記粉砕テーブル上に設置され、前記粉砕テーブルとの間の粉砕位置で炭素含有固体燃料を粉砕する粉砕ローラと、前記ハウジングに設けられたノズルとを備える粉砕機の運用方法であって、前記粉砕機は、前記ノズルの吹出口と反対側の一端側において、前記ノズルの軸方向に対してほぼ直交する方向に設けられ、雄ねじ部が形成されるとともに内部をガスが通過する管と、前記ハウジングには、前記管が貫通する貫通孔が形成され、前記貫通孔を貫通する前記雄ねじ部を前記ハウジングに締め付けて固定する雌ねじ部が形成された固定部と、前記ノズルと前記ハウジングとの間で、前記管を囲んで設置されるストッパと、を有し、前記ノズルが、前記粉砕テーブルの鉛直上側で前記粉砕ローラの前記粉砕位置よりも内周側において前記粉砕テーブルの回転中心を中心として想定される仮想円の接線方向に沿って、前記粉砕テーブルに対してガスを噴出する。
【0028】
上記実施形態において、前記ハウジングの内部に対する前記炭素含有固体燃料の供給が停止された後、前記ノズルからの前記粉砕テーブルに対するガスの噴出を開始してもよい。
【0029】
この構成によれば、粉砕機を停止させるにあたり、新たな炭素含有固体燃料が供給されない運転停止モードにおいて、粉砕テーブル上に残存した燃料が粉砕テーブルよりも外側へ吹き飛ばされることで、最終的には系外へ排出される。なお、ハウジングの内部に供給され、粉砕した炭素含有固体燃料をハウジングの外部に搬送する搬送用ガス(1次空気)ではなく、ノズル専用の空気などのガスをノズルへ供給することによって、より高い圧力のガスをノズルへ供給でき、運転停止モードにおいても粉砕テーブル上に残存した燃料が効果的に吹き飛ばされやすくなる。
【発明の効果】
【0030】
本開示に係る粉砕機及び粉砕機の運用方法によれば、粉砕機を停止させるにあたって、新たな燃料が供給されない運転停止モードにおいて、粉砕テーブル上に残存した燃料をより確実に粉砕テーブルよりも外側へ吹き飛ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本開示の一実施形態に係る竪型ミルを示す縦断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る竪型ミルを示す横断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る竪型ミルの粉砕テーブル、粉砕ローラ及びノズルを示す斜視図である。
図4】本開示の一実施形態に係る竪型ミルの粉砕テーブル、粉砕ローラ及びノズルを示す縦断面図である。
図5】本開示の一実施形態に係る竪型ミルのノズルを示す斜視図である。
図6】本開示の一実施形態に係る竪型ミルのノズルの吹出口を示す縦断面図である。
図7】本開示の一実施形態に係る竪型ミルのノズルを示す横断面図である。
図8】本開示の一実施形態に係る竪型ミルのノズルを示す平面図である。
図9】本開示の一実施形態に係る竪型ミルの動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示の一実施形態に係る竪型粉砕機(以下「ミル」という。)1は、粉砕機の一例であり、炭素含有の固体燃料としてバイオマス燃料のみ又は石炭のみを粉砕する形式であってもよいし、石炭と共にバイオマス燃料を粉砕する形式であってもよい。ここで、バイオマス燃料とは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類等の木質系バイオマス燃料、廃棄物、脱水汚泥、タイヤ等の非木質系バイオマス燃料などである。また、バイオマス燃料は、これらを原料としたペレット状やチップ状のリサイクル燃料などを含み、ここに提示したものに限定されない。
なお、本実施形態では上方とは鉛直上側方向を、下方とは鉛直下側方向を示している。
【0033】
図1に示すように、本実施形態に係るミル1は、ミル1の外殻をなす円筒中空形状のハウジング2と、ハウジング2の下部側面に連通してハウジング2の内部に搬送用ガス(本実施形態では空気)を供給する空気供給ダクト3とを備える。ハウジング2の内部には、ハウジング2の上下軸方向に沿う回転軸を中心として回転可能にハウジング2に対して支持される粉砕テーブル4と、粉砕テーブル4の上でバイオマス燃料及び/又は石炭(以下「固体燃料」という。)を粉砕する粉砕ローラ5と、粉砕テーブル4の鉛直下方に配置されてハウジング2の底面に堆積した粉砕された固体燃料(以下、粉砕された固体燃料のことを「微粉砕物」という。)をハウジング2の外部のスピレージホッパ46に排出するスクレーパ(掃出し装置)6と、が収容されている。
【0034】
ハウジング2は、円筒形状であってハウジング2の側面を規定する側面部2aと、ハウジング2の鉛直方向上端を規定する天井面部2bと、ハウジング2の下端を規定する底面部2cとを有する。ハウジング2の上部中央部にはハウジング2の天井面部2bを貫通するように、筒形状の固体燃料供給管7が設けられる。固体燃料供給管7は、図示しない固体燃料供給装置からハウジング2内の粉砕テーブル4上に固体燃料を供給するものであり、ハウジング2の中心位置に鉛直上下方向に沿って延在する。ハウジング2内で、固体燃料供給管7の長手方向に直交する方向の外周側には、ロータリセパレータ8が設けられている。ハウジング2の天井面部2bには、ロータリセパレータ8で粒径サイズを分級した微粉燃料をハウジング2の外部へ排出する出口ポート9が設けられている。また、ハウジング2の底面部2cには、スクレーパ6から掃き出された微粉砕物をハウジング2の外部へ連通するスピレージシュート(排出孔)10が設けられている。
【0035】
粉砕テーブル4は、ハウジング2の底面部2cの略中心に回転可能に支持される回転支持部15と、回転支持部15の上端に固定される略円形板状のテーブル部16とを有する。回転支持部15は、図示しない駆動装置により回転駆動する。テーブル部16は、固体燃料供給管7の鉛直下側の下端部に対向して配置され、回転支持部15とともに回転する。また、粉砕テーブル4の上面は、水平方向に延在し、中心部が外側よりも鉛直上方向に高く、中心部から外側に向けて高さが少し低くなるような傾斜形状をなし、外周部が再び上方に湾曲している。テーブル部16の外端部と、ハウジング2の側面部2aの内面とは接触しておらず、テーブル部16とハウジング2の側面部2aとの間には、隙間が空いている。
【0036】
粉砕ローラ5は、テーブル部16の外周部分の上方に、テーブル部16の上面と対向するように配置される。粉砕ローラ5は、複数が配置され、本実施形態では周方向に沿ってほぼ等間隔(120°間隔)で3つ設置される。粉砕ローラ5は、第1支持軸17、支持アーム18及び第2支持軸19を介してハウジング2に固定されている。第1支持軸17は、ハウジング2の側面部2aから中心部側へ鉛直下方に傾斜するように延在し、先端部に軸受(図示略)を介して粉砕ローラ5が回転自在に支持されている。すなわち、粉砕ローラ5は、粉砕テーブル4の鉛直上方で、上部側が下部側よりもハウジング2の中心部側に向くように位置する傾斜した状態で、回転可能に支持されている。
【0037】
支持アーム18は、中間部が水平方向に沿った第2支持軸19によって、ハウジング2の側面部2aに鉛直上下方向に揺動可能に支持されている。そして、支持アーム18は、先端部に粉砕ローラ5が回転可能に装着された第1支持軸17の基端部を支持している。即ち、粉砕ローラ5は、支持アーム18が第2支持軸19を支点として上下に揺動することで、粉砕テーブル4の上面に対して離接可能に支持される。粉砕ローラ5は、外周面が粉砕テーブル4の上面に接触した状態でこの粉砕テーブル4が回転すると、粉砕テーブル4から回転力を受けて連れ回り可能となっている。
【0038】
支持アーム18の鉛直上側にある上端部には、押圧装置20が設けられ、支持アーム18の下端部にはストッパ21が設けられている。押圧装置20は、ハウジング2に固定され、粉砕ローラ5を粉砕テーブル4に押し付けるように、支持アーム18等を介して粉砕ローラ5に荷重を付与する。ストッパ21は、ハウジング2に固定され、粉砕ローラ5が鉛直下方側に回動できる量を規制し、粉砕ローラ5が粉砕テーブル4に押し付ける付与荷重を制限する。ストッパ21は、粉砕テーブル4上に固体燃料が無い場合に、粉砕ローラ5と粉砕テーブル4の間に隙間を確保する。これにより、粉砕テーブル4に固体燃料が無い状態で、粉砕テーブル4が回転しても、粉砕テーブル4と粉砕ローラ5が接触(メタルタッチ)しないため、それぞれが破損しない。
【0039】
空気供給ダクト3は、横断面が略矩形状とされた角筒形状をしている。また、空気供給ダクト3の一端には、ハウジング2内に開口するダクト出口41が設けられ、他端には、ハウジング2の外に開口するダクト入口42が設けられている。空気供給ダクト3は、水平面に対して所定の角度θを有するように傾斜しながら、ハウジング2の側面部2aに連通している。空気供給ダクト3は、図示しない空気供給装置から供給される搬送用ガス(空気)をダクト入口42から押入して、ダクト出口41から排出することでハウジング2内に搬送用ガスを供給する。
【0040】
空気供給ダクト3から供給された搬送用ガスは、粉砕テーブル4とハウジング2の側面部2aとの隙間から吹出して、粉砕ローラ5と粉砕テーブル4の間で粉砕された微粉砕物をロータリセパレータ8へと気流搬送する。さらにロータリセパレータ8で、所定の粒径より小さい細粒粉と所定の粒径より大きい粗粒粉とに分級して、細粒粉を搬送用ガスの流れに乗ってハウジング2の外部へ出口ポート9から搬出する。その際、粗粒粉はロータリセパレータ8に阻害され、下方へ落下して再び粉砕テーブル4の上に戻されて再粉砕が行われる。なお、ここでいう細粒粉とは、微粉砕物のうちロータリセパレータ8を通過する粒径のものを意味し、粗粒粉とは、微粉砕物のうちロータリセパレータ8を通過しない粒径のものを意味する。なお、水平面と空気供給ダクト3とがなす所定の角度θは、30度以上80度以下(30°≦θ≦80°)の範囲内が好適である。これは、θ>80°では、ダクト出口41での気流圧損が増加し、θ<30°では、ダクト出口41の近傍で微粉砕物が堆積し易くなるためである。
【0041】
スクレーパ6は、図1に示すように、粉砕テーブル4のテーブル部16よりも下方に配置される。また、ハウジング2の底面部2cであって、スクレーパ6のブラシの回転軌道上に、スピレージシュート10が形成されて開口している。スピレージシュート10は、排出管45を介して、ハウジング2の外部に配置されるスピレージホッパ46に連通している。スクレーパ6により掃出されたハウジング2の底面部2cの微粉砕物が、スピレージシュート10の開口から排出管45へ搬出され、微粉砕物は排出管45の途中に設けた仕切弁(図番省略)を開放した際にスピレージホッパ46に搬出される。
【0042】
次に、固体燃料供給管7から粉砕テーブル4上に供給された固体燃料の主な流れについて説明する。
【0043】
固体燃料が固体燃料供給管7からハウジング2内に供給されると、この固体燃料は、粉砕テーブル4上の中心部付近に供給される。このとき、粉砕テーブル4は、所定の速度で回転していることから、粉砕テーブル4上の中心部に供給された固体燃料は、遠心力により外周側に分散するように移動し、粉砕テーブル4の全面に一定の固体燃料層が形成される。その後、固体燃料が粉砕ローラ5と粉砕テーブル4との間に入り込む。
【0044】
粉砕ローラ5と粉砕テーブル4との間の粉砕位置に固体燃料が入り込むと、粉砕テーブル4の回転力が固体燃料を介して粉砕ローラ5に伝達され、粉砕テーブル4の回転に伴って粉砕ローラ5が回転する。このとき、粉砕ローラ5は、固体燃料により上昇しようとするが、押圧装置20により、上昇動作が抑制されて固体燃料に押圧荷重を与える。そのため、粉砕ローラ5は、粉砕テーブル4上の固体燃料を押圧して粉砕する。
【0045】
粉砕ローラ5により粉砕された固体燃料は微粉砕物となり、空気供給ダクト3からハウジング2内に送り込まれた搬送用ガスにより、乾燥されつつハウジング2内を上昇する。この上昇した微粉砕物は、ロータリセパレータ8により粒径で分級され、粗粒粉は下方へ落下して再び粉砕テーブル4上に戻されて再粉砕が行われる。一方、細粒粉は、ロータリセパレータ8を通過し、搬送用ガスの気流に乗って出口ポート9から排出される。また、固体燃料に混在した礫や金属片などの異物、及び、微粉砕物であっても搬送用ガスによって上昇しないほど質量の大きいものなどは、遠心力により粉砕テーブル4の外周部から外方に落下して、ハウジング2の底面部2cに堆積する。
【0046】
また、ミル1を停止させる場合には、搬送用ガスの供給が徐々に低減されつつ、粉砕テーブル4は回転し続ける。この間、粉砕テーブル4上の一部の微粉砕物は、慣性力と搬送用ガスによる吹き上げによって粉砕テーブル4の外周部から外方側に飛散し、そのままハウジング2の底面部2cへ落下する。一方、微粉砕物は粉砕テーブル4から完全に除去されず、残存するため、後述するノズル11からのガスの噴出によって、粉砕テーブル4よりも外周側へと吹き飛ばされて最終的には系外へ排出される。
【0047】
粉砕テーブル4からハウジング2の底面部2cに直接落下した微粉砕物や異物は、通常運転時には、すぐにスクレーパ6によってスピレージシュート10に案内されてハウジング2の外部に排出される。また、ミル1の異常停止時には、ミル1が再起動した後にスクレーパ6によってハウジング2の外部に排出される。
【0048】
以下、本実施形態に係るノズル11について説明する。
ノズル11は、一方向に長い部材であって、内側が管状であり、図2図4に示すように、周方向に設置された粉砕ローラ5のそれぞれに近接して、ハウジング2に固定されて設置される。ノズル11は、周方向にほぼ等間隔(120°間隔)で3本設置される。ノズル11からのガスは、粉砕テーブル4の回転中心を中心として想定される仮想円の接線方向に沿って、粉砕テーブル4に対して噴出される。粉砕テーブル4の中心に対してノズル11からのガスを噴出するのではなく、粉砕ローラ5の粉砕位置よりも内周側において粉砕テーブル4上に想定される仮想円の接線方向に沿うように、粉砕テーブル4に対してガスを噴出することで、噴出されたガスが旋回流となる。なお、本実施形態では、ノズル11から噴出するガスは、例えば空気を用いたものを説明する。不活性ガス(窒素、二酸化炭素など)や燃焼排ガスなどの低酸素空気、水蒸気でもよい。
【0049】
これにより、噴出された空気が粉砕ローラ5に当たることなく、粉砕テーブル4上に残存した固体燃料をより確実に粉砕テーブル4よりも外側へ吹き飛ばすことができる。空気の噴出方向が粉砕テーブル4の中心ではないため、粉砕テーブル4が回転している場合、粉砕テーブル4による遠心力も作用して、残存した固体燃料が噴出空気と共に粉砕テーブル4の外側へと搬出されやすい。
【0050】
上述した仮想円の直径rは、粉砕テーブル4の粉砕ローラ5との粉砕位置より小さく、また旋回流を発生させることに適したサイズであり、粉砕テーブル4の直径Rの10%~60%程度となる。粉砕テーブル4の直径Rが例えば1000mm~2000mmである場合、仮想円の直径rは例えば200mm~500mm程度である。
【0051】
図5及び図6に示すように、ノズル11の内部流路は、先端に設けられた吹出口12に向かって流路断面積が絞られており、ノズル11の吹出口12の径は、ノズル11の吹出口12よりも上流側の流路13の径より小さい。例えば、ノズル11の流路13の径は、吹出口12の径よりも2倍~4倍である。本実施形態では例えば、流路13の直径が28mmであり、途中に絞り部14で直径を12mmとした後に最終的には、吹出口12の直径が10mmである。流路13と吹出口12の間には絞り部14が形成され、絞り部14の内壁面は、中心線に対して約15°の傾斜を有する。
【0052】
ノズル11の先端に形成された吹出口12の径を絞ることによって、ノズル11から噴出される空気の流速を高める(例えば5倍~10倍へ高める)ことができる。その結果、粉砕テーブル4上に残存した固体燃料が粉砕テーブル4の外側へと吹き飛ばされやすくなる。
【0053】
本実施形態では3本のノズル11において、吹出口12からの空気の噴出速度は、設置される3本のノズル11において、ほぼ等しくなるように設定される。3本のノズル11の流速が等しくなるような流速の設定は、ノズル11内もしくはノズル11への空気分配流路において、圧力損失を適宜設けることで調整可能である。
【0054】
噴出速度は、音速を有するチョーク状態とさせてもよい。例えば、上述した直径10mmの吹出口12の場合、ノズル11から噴出させようとする空気流量を2m/minとすることで、下記の式のとおり、噴出速度が音速に達してチョークする。3本のノズル11から噴出する空気は、最大流速で均一に噴出する。
2m3/min×(1/{(π/4)×(10-2})×(1/60)=424m/s>360m/s
特に、バイオマス燃料の場合、粉砕後の径が石炭よりも大きいため、噴出空気によって吹き出されにくいが、流速を高めることで、より確実に粉砕テーブル4の外側へ吹き出されるようになる。
【0055】
図5及び図7に示すように、ノズル11の上面は、水平方向に対して下方に傾いた傾斜面が形成されている。図5の例では、鉛直方向に対してθ°傾斜している。これにより、ノズル11の上面が水平方向に対して下方に傾斜していることから、ノズル11の上面において微粉燃料や微粉砕物が堆積しづらくなり、残存した微粉燃料や微粉砕物による発火の可能性を低減できる。
【0056】
図5及び図7に示すように、ノズル11の下面は、水平方向に対して平行な面を有し、ノズル11の側面の少なくとも一方は、水平方向に対し鉛直な面を有する。これにより、ノズル11のハウジング2の壁面等に対する取り付けが容易になり、ノズル11が安定して固定される。なお、本実施形態では図5の例では、ノズル11の下面は例えば30mm~50mmの幅を有し、ノズル11の側面は30mm~50mmの高さを有する。また、流路13の径は例えば20mm~40mmであり、吹出口12の径は10mmである。
【0057】
ノズル11は、粉砕テーブル4よりも上方に設置され、ノズル11の吹出口12側の先端部は、粉砕テーブル4の上方に位置している。また、ノズル11の下面及び側面には、耐摩耗性材料が設置されている。本実施形態では、耐摩耗性材料は、例えばセラミックス製の板状のライニング材22である。ノズル11の表面において、複数の板状のライニング材22が隙間なく敷設されることで、ノズル11の表面の摩耗を低減できる。ライニング材22は、例えばSiO製やAl製であり、サイズは例えば厚さt3mm~6mm、(20mm~40mm)×(20mm~40mm)の長方形形状である。
【0058】
上述したとおり、ノズル11は、粉砕テーブル4よりも上方に設置され、ノズル11の先端部が粉砕テーブル4の上方に位置している。この場合、ミル1の運転時に、粉砕テーブル4の下方から上方へ向かって、粉砕テーブル4よりも外周を吹き上げる搬送用ガスと、これに随伴される粉砕された固体燃料である微粉燃料が、ノズル11の下面や側面に衝突する。これに対し、ノズル11の下面及び側面に耐摩耗性材料であるライニング材22が設置されることによって、ノズル11の表面に生じる摩耗が低減される。
【0059】
ノズル11は、例えば金属製であり、上述したライニング材22は、ノズル11に対してスタッド溶接によって固定される。ノズル11は、100℃を超える高温の搬送用ガスにさらされるため、接着剤による固定は、ライニング材22の剥離を生じさせるが、スタッド溶接による固定によれば、剥離を防止できる。スタッド溶接は、ライニング材22の中心に穴を形成し、穴内に金属製のピンを配置して、ノズル11とピンを溶接するものである。
【0060】
図7に示すように、ノズル11の側面に設置されるライニング材22と下面に設置されるライニング材22とは設置方向が異なるので、この部分に隙間が発生しやすい。ノズル11の下面及び側面には、板状のライニング材22が設置され、下面に設置されるライニング材22は、側面に設置されるライニング材22の下面側の少なくとも一部を重なって覆うように設置される。これにより、ノズル11の下面に設置されるライニング材22は、ノズル11の側面に設置されるライニング材22の下面側を覆う。その結果、下面に設置されるライニング材22と側面に設置されるライニング材22によって形成される継ぎ目は、ノズル11の側面に位置し、ノズル11の下面には位置しない。そのため、粉砕テーブル4の外周を吹き上げる粉砕された固体燃料である微粉燃料の衝突によって、ライニング材22間の継ぎ目が広がりにくく、耐摩耗性が向上する。
【0061】
図7に示すように、ノズル11とハウジング2の内面との間に形成される隙間には充填材23が設置される。これにより、ノズル11とハウジング2の内面の間に形成される隙間に微粉燃料や微粉砕物が溜まりにくくなり、残存した微粉燃料や微粉砕物による発火の可能性を低減できる。充填材23は、例えばセラミック製のパテ材である。充填材23は、上面が傾斜面を有するように設けられる。充填材23は、ノズル11とハウジング2の内面との間に形成される隙間だけでなく、ハウジング2内において水平面が形成されている部分にも傾斜面を有するように設けられるとよい。これにより、水平面に微粉燃料や微粉砕物が溜まりにくくなる。
【0062】
図8に示すように、ノズル11の吹出口12と反対側となる空気供給源側の一端側において、ノズル11は屈曲部を有し、屈曲部を介してノズル11の軸方向に対してほぼ直交する方向に接続管26が設けられる。その接続管26の外周面には設けられた雄ねじ部26aが形成される。接続管26の内部は、ノズル11へ供給される空気が流通する。ハウジング2には、接続管26が貫通する貫通孔2Aが形成される。貫通孔2Aが形成されたハウジング2の部位は、ノズル11の一側面に沿って配置されている。
【0063】
取付リング27は、ノズル11に対してハウジング2を間に挟んでハウジング2の外側に設けられる。取付リング27には、接続管26の雄ねじ部26aを締め付ける雌ねじ部27aが形成される。
【0064】
ストッパ28は、ノズル11とハウジング2との間で、接続管26を囲んで設置される。ストッパ28は、例えばリング形状の板状部材である。
【0065】
これにより、ノズル11とハウジング2との間で、接続管26を囲んでストッパ28が設置されている。ハウジング2を間に挟んで、雄ねじ部26aが雌ねじ部27aによって締め付けられたとき、ハウジング2の内面形状が平面でない場合や、ミル1内の構成部材が存在する場合があっても、ストッパ28が設置されない場合に比べて、締め付けが不均一になりづらい。そのため、ノズル11がハウジング2に対して安定的に固定され、ミル1で発生する振動に対してねじ締め付けが緩むことを抑制できる。なお、このノズル11の固定部分において、ハウジング2は粉砕機(ミル1)構成部材の一例であり、ノズル11が固定される部材は、ハウジング2に限定されず、他の粉砕機構成部材でもよい。
【0066】
ノズル11の接続管26側と吹出口12の間の中間部において、ノズル11は、ハウジング2の内側に設けられた部材、例えば偏流板(粉砕機構成部材)29によって支持される。偏流板29は図示しない部分でハウジング2に支持固定されている。これにより、接続管26側だけでなく、ノズル11の中間部においてもノズル11が支持されるため、ノズル11がより安定して固定され、ミル1で発生する振動に対してねじ締め付けが緩むことを抑制できる。なお、ハウジング2の内側に設けられた部材、例えば偏流板29は第2の粉砕機(ミル1)構成部材の一例であり、ノズル11が中間部において固定される部材は、ハウジング2でもよいし、他の粉砕機構成部材でもよい。
【0067】
図8に示す本実施形態での例では、ノズル11の中間部の側面にはコの字座30が設置されており、コの字座30の内部にボルト31のヘッド部が収容され、ボルト31のねじ部が偏流板29を貫通して設置され、ナット32によって締め付けられて固定される。コの字座30により、粉砕テーブル4の外周を吹き上げる微粉燃料の衝突によって、ボルト31のヘッド部が摩耗することが抑制され、メンテナンス性が向上する。上述したとおり、ノズル11は、既設のミル1の構成部材を活用して固定することが可能である。
【0068】
上述した実施形態において、ノズル11から粉砕テーブル4に対する空気の噴出は、ハウジング2の内部に対する固体燃料の供給が停止された後に開始される。
【0069】
図9に示すように、ノズル11からの空気の噴出による微粉砕物のクリアリング期間は、ミル1の通常運転期間の終了後に行われる。ミル1の通常運転期間では、ハウジング2の内部に供給され、粉砕した固体燃料をハウジング2の外部に搬送する一次空気(搬送用ガス)が所定の流量(本実施形態では例えば、300m3/min~500m3/min)で供給されている。運転停止へ移行する場合、負荷下げが開始されて、一次空気は最低負荷として通常運転である一次空気の所定流量の20%~30%まで低減される。そして、クリアリング期間が開始されると、固体燃料の供給が停止される。また、一次空気が更に低減され一次空気の所定流量の10%以下となるが、これに追加してノズル11からの空気が所定流量の1%~3%相当で供給される。
【0070】
すなわち、ミル1の運転を停止させるため、新たな固体燃料が供給されない運転停止モードにおいて、ノズル11からの空気が噴出されて粉砕テーブル4上に残存した固体燃料、微粉燃料や微粉砕物が粉砕テーブル4よりも外側へ吹き飛ばされて系外へ排出される。なお、一次空気ではなく、ノズル11専用の空気をノズル11へ供給することによって、より高い圧力の空気をノズル11へ供給でき、運転停止モードにおいても粉砕テーブル4上に残存した固体燃料を吹き出しやすくなる。
【0071】
以上、本実施形態によれば、ノズル11は、粉砕テーブル4の中心に対して噴出するのではなく、粉砕ローラ5よりも内側において粉砕テーブル4上に想定される仮想円の接線方向に沿うように、粉砕テーブル4に対して空気を噴出して旋回流とすることができる。
【0072】
これにより、噴出された空気が粉砕ローラ5に当たることなく、粉砕テーブル4上に残存した固体燃料、微粉燃料や微粉砕物をより確実に粉砕テーブル4よりも外側へ吹き飛ばすことができる。空気の噴出方向が粉砕テーブル4の中心ではないため、粉砕テーブル4が回転している場合、粉砕テーブル4による遠心力も作用して、残存した固体燃料が噴出空気と共に粉砕テーブル4の外側へと搬出されやすい。
【0073】
また、ノズル11の形状や充填材23によって、ノズル11の上面に微粉燃料や微粉砕物が溜まりにくくなり、残存した微粉燃料や微粉砕物による発火の可能性を低減できる。さらに、ノズル11の表面にライニング材22を設置することで、耐摩耗性が向上し、微粉燃料が流通するノズル11の設置環境に関わらず、耐久性を維持できる。
【0074】
またさらに、ストッパ28が、ノズル11とハウジング2との間で、接続管26を囲んで設置されることで、ストッパ28が設置されない場合に比べて、締め付けが不均一になりづらい。その結果、ノズル11がハウジング2に対して安定的に固定され、ミル1の振動に対しても固定が緩むことが抑制される。また、接続管26側だけでなく、ノズル11の中間部においてもノズル11が支持されることによって、ノズル11がより安定して固定されミル1の振動に対して固定が緩むことがより抑制される。
【符号の説明】
【0075】
1 :ミル(粉砕機)
2 :ハウジング
2A :貫通孔
2a :側面部
2b :天井面部
2c :底面部
3 :空気供給ダクト
4 :粉砕テーブル
5 :粉砕ローラ
6 :スクレーパ
7 :固体燃料供給管
8 :ロータリセパレータ
9 :出口ポート
10 :スピレージシュート(排出孔)
11 :ノズル
12 :吹出口
13 :流路
14 :絞り部
15 :回転支持部
16 :テーブル部
17 :第1支持軸
18 :支持アーム
19 :第2支持軸
20 :押圧装置
21 :ストッパ
22 :ライニング材(耐摩耗性材料)
23 :充填材
26 :接続管(管)
26a :雄ねじ部
27 :取付リング(固定部)
27a :雌ねじ部
28 :ストッパ
29 :偏流板(粉砕機構成部材)
30 :コの字座
31 :ボルト
32 :ナット
41 :ダクト出口
42 :ダクト入口
45 :排出管
46 :スピレージホッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9