(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】線源-検出器装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20221108BHJP
A61B 6/06 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A61B6/03 320M
A61B6/03 310Z
A61B6/06 331
(21)【出願番号】P 2017523461
(86)(22)【出願日】2015-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2015076213
(87)【国際公開番号】W WO2016075140
(87)【国際公開日】2016-05-19
【審査請求日】2018-11-06
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-14
(32)【優先日】2014-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】コエラー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ロースル エワルド
(72)【発明者】
【氏名】ベーリング ロルフ カール オットー
(72)【発明者】
【氏名】ノエル ピーター ベンジャミン テオドール
(72)【発明者】
【氏名】ファイファー フランツ
【合議体】
【審判長】石井 哲
【審判官】福島 浩司
【審判官】伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-206075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0080341(US,A1)
【文献】特開2009-133823(JP,A)
【文献】特表2013-513417(JP,A)
【文献】特表2012-511235(JP,A)
【文献】国際公開第2014/125389(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A61B6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用のX線装置の線源-検出器装置であって、
対象に対して回転軸を中心に回転移動されるように適応され、コヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線のX線ビームをラインパターンで放出する
アノードを有するX線源と、
前記対象に対して前記回転軸を中心に回転移動されるように適応され、第1のグレーティング素子及び第2のグレーティング素子並びに検出器素子を有するX線検出システムと、
を有し、
前記放出されるX線ビームの扇角度は、前記X線源と前記X線検出システムの回転の回転面内にあり、前記X線ビームのコーン角度は、前記扇角度に直交し、前記扇角度は前記コーン角度より大きく、
前記放射線の前記放出されるラインパターンが前記回転軸と直交
するように配され、投影される前記ラインパターンが、前記コーン角度に沿って変化する有効ピッチを有し、前記第1及び前記第2のグレーティング素子のグレーティング方向が前記回転軸と直交するように配され、
前記第1のグレーティング素子が、前記X線ビームのコーン角度
に沿って変えられるグレーティングピッチを有し、及び/又は前記第2のグレーティング素子が、前記X線ビームのコーン角度
に沿って変えられるグレーティングピッチを有し、
前記第1又は前記第2のグレーティング素子の前記グレーティングピッチは、
前記コーン角度に沿って変化する前記有効ピッチに対応する
よう前記コーン角度に沿って変えられている、線源-検出器装置。
【請求項2】
前記X線源は、前記回転軸と直交するグレーティング方向を有する線源グレーティング素子を有する、請求項1に記載の線源-検出器装置。
【請求項3】
前記X線源は、前記コヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線をラインパターンで放出するアノードを有し、前記アノードは、前記第1及び/又は前記第2のグレーティング素子のグレーティングラインと平行に配される、異なる放射線放出のためのストリップを有する、請求項1に記載の線源-検出器装置。
【請求項4】
前記第1のグレーティング素子の前記グレーティングピッチ及び/又は前記第2のグレーティング素子の前記グレーティングピッチが、前記X線ビームの前記コーン角度に沿って一様に及び/又は徐々に変えられている、請求項1に記載の線源-検出器装置。
【請求項5】
前記第1のグレーティング素子の前記グレーティングピッチ及び/又は前記第2のグレーティング素子の前記グレーティングピッチが、前記X線ビームの前記コーン角度に沿って、より小さいグレーティングピッチからより大きいグレーティングピッチへと変えられている、請求項1に記載の線源-検出器装置。
【請求項6】
前記第1のグレーティング素子及び/又は前記第2のグレーティング素子が、位相ステッピングを提供するために互いに対し移動可能であるように構成される、請求項1に記載の線源-検出器装置。
【請求項7】
前記X線源が、
回転アノード、及び前記回転アノードのターゲット領域上の電子ビームの焦点スポットの所望の位置からの実際の位置の再現性のある偏差を検出する位置センサと、
一体型のコントローラを有し、前記位置センサから得られる測定結果に基づいて前記電子ビームを偏向するビーム偏向ユニットと、
を有する、請求項1に記載の線源-検出器装置。
【請求項8】
前記X線源は、前記コヒーレントな又はほぼコヒーレントなX線ビームをラインパターンで放出するようにアノードへ方向付けられる構造化された電子ビームを含む、請求項1に記載の線源-検出器装置。
【請求項9】
前記構造化された電子ビームは、位相ステッピングを提供するために電磁的に移動可能であるように適応される、請求項8に記載の線源-検出器装置。
【請求項10】
前記X線源が、複数の焦点ラインを提供する複数の液体金属ジェットを含む、請求項1に記載の線源-検出器装置。
【請求項11】
請求項1に記載の線源-検出器装置を有する、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置。
【請求項12】
グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用のX線装置の線源-検出器装置によりX線ビームを生成し検出する方法であって、
コヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線をラインパターンで放出する
アノードを有するX線源を、回転軸を中心に対象に対して回転させるステップと、
第1のグレーティング素子及び第2のグレーティング素子並びに検出器素子を有するX線検出システム
であって、前記回転軸を中心に前記対象に対して回転される該X線検出システムによって放射線を検出するステップと、
を含み、
前記生成されるX線ビームの扇角度は、前記X線源と前記X線検出システムの回転の回転面内にあり、前記X線ビームのコーン角度は、前記扇角度に直交し、前記扇角度は前記コーン角度より大きく、
前記放射線の前記放出されるラインパターンが前記回転軸と直交
するように配され、投影される前記ラインパターンが、前記コーン角度に沿って変化する有効ピッチを有し、前記第1及び前記第2のグレーティング素子のグレーティング方向が前記回転軸と直交するように配され、
前記第1のグレーティング素子が、前記X線ビームのコーン角度
に沿って変えられるグレーティングピッチを有し、及び/又は前記第2のグレーティング素子が、前記X線ビームのコーン角度
に沿って変えられるグレーティングピッチを有し、
前記第1又は前記第2のグレーティング素子の前記グレーティングピッチは、
前記コーン角度に沿って変化する前記有効ピッチに対応する
よう前記コーン角度に沿って変えられている、方法。
【請求項13】
グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置により対象の画像を生成する方法であって、前記方法は、請求項12に記載の方法を含み、位相ステッピングの方向が、前記回転軸に対し平行である、方法。
【請求項14】
対象の画像を生成するX線装置を制御するためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、請求項11に記載のX線装置を制御するコンピュータ上でランされるとき、請求項11に記載のX線装置に、請求項13に記載の方法の各ステップを実施させるためのプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗視野イメージングを含む微分位相コントラストイメージングに関する。特に、本発明は、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置の線源-検出器装置、及び線源-検出器装置を有するグレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置に関する。更に、本発明は、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置の線源-検出器装置によりX線ビームを生成し検出する方法、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置により対象の画像を生成する方法、及び対象の画像を生成するX線装置を制御するコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像を取得する際、例えば患者のような被検査対象が、X線源又はX線管のようなX線生成装置と、X線検出システムとの間に配置される。X線源から放出する放射線は、被検査対象を通過し、その後、X線検出システムに達する。従来のコンピュータトモグラフィ(CT)は、対象の線減弱係数を測定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
位相コントラストイメージング又は位相コントラストコンピュータトモグラフィにおいて、ラインパターンの少なくとも部分的に空間的にコヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線が用いられる。対象を通過するコヒーレントな又はほぼコヒーレントなX線は、位相情報のその後の取り出しを可能にすることができる。X線位相コントラストイメージングは、例えば、Weitkamp T., Diaz A., David C. et al.: "X-ray phase imaging with a grating interferometer"; Optics Express 6296, 8. August 2005, Vol. 13, No. 16に記述されている。グレーティングベースの位相コントラストイメージングシステムは、更に、サンプルの小角散乱能を示す暗視野画像を提供する。この見地は、M. Bech, O. Bunk, T. Donath et al.: "Quantitative x-ray dark-field computed tomography"; Phys. Med. Biol. 55 (2010) 5529-5539に詳述されている。
【0004】
X線ビームの扇角度の増加は、低減される構造可視性につながりうる。特に対象サイズのためX線ビームの大きい扇角度を必要とする医療アプリケーションでは、これは、構造可視性の大きな損失を生じさせることがある。
【0005】
本発明の目的は、少なくとも1つの上述の欠点を解決する、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置の線源-検出器装置を提供することである。本発明の他の目的は、扇角度の影響を低減する、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置の線源-検出器装置を提供することである。本発明の他の目的は、線源-検出器装置を有するグレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置を提供することである。更に、本発明の目的は、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置の線源-検出器装置によりX線ビームを生成し検出する方法、及びグレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置により対象の画像を生成する方法を提供するとともに、対象の画像を生成するX線装置を制御するコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の見地において、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置の線源-検出器装置であって、対象に対し回転軸を中心に回転運動するように適応され、コヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線のX線ビームをラインパターンで放出するように適応されるX線源と、第1のグレーティング素子及び第2のグレーティング素子並びに検出器素子を有するX線検出システムと、を有し、放射線のラインパターン及びグレーティング素子のグレーティング方向は、回転軸と直交するように配置され、第1のグレーティング素子は、X線ビームのコーン角度に依存して変えられる第1のグレーティングピッチを有し、及び/又は第2のグレーティング素子は、X線ビームのコーン角度に依存して変えられる第2のグレーティングピッチを有する。
【0007】
ここで、位相コントラストイメージングは、サンプルのサブピクセル微細構造による超小角散乱に起因する暗視野信号に基づく暗視野散乱イメージングを含むことが理解される。位相コントラストイメージング又は位相コントラストコンピュータトモグラフィにおいて、ラインパターンの少なくとも部分的に空間的にコヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線が用いられる。対象を通過するこのようなコヒーレントな又はほぼコヒーレントなX線は、位相情報のその後の取り出しを可能にしうる。放射線という語は、ここでは、X線又はX線ビームとして理解されることができる。
【0008】
この情報を取り出すために、位相シフトが、例えばインターフェロメトリによって輝度変調に変換される。干渉パターンを呼応的に生成するために、被検査対象とX線検出器素子との間に配置される第1のグレーティング素子又は第1のグレーティング、いわゆる位相グレーティングが用いられる。この位相グレーティングは、ビームの更に下流に干渉パターンを生成する。第2のグレーティング素子又は第2のグレーティング、いわゆるアナライザグレーティングが、第1のグレーティング素子とX線検出器素子との間に配置され、第2のグレーティングのピッチは、第1のグレーティング素子によって生成される干渉パターンの周期に合致する。この設計は、X線ビームの小さい偏りを検出するために非常に高い感受性能力を提供し、なぜなら、これが、干渉パターンの小さい変位に変わるからである。
【0009】
適当な画像情報を得るために、いわゆる位相ステッピングが実施されることができる。位相ステッピングにおいて、位相グレーティング素子、アナライザグレーティング素子及びX線源のラインパターンのうちの1つが、他のものに対して横方向に変位される。
【0010】
本発明は、とりわけ、グレーティング素子及び線源ラインパターンを、知られている構成に対して90°回転させることによって、対象サイズのため、すなわち傾けられた又はカーブされた検出器及び/又は構造可視性の大きな損失のため医療アプリケーションにおいて必要とされる大きい扇角度に関連する欠点が、回避され又は低減されることができるという発見に基づく。グレーティングベースの位相差コントラストCTのための知られている装置において、グレーティング素子は、一般に回転軸にアラインされる。ステッピング方向(すなわち波面の勾配が測定される方向)は、回転面内にある。このような知られている装置において、複素屈折率の実数部分の絶対値が、簡潔なフィルタード逆投影によって再構成されることができ、この場合、フィルタはヒルベルトフィルタである。しかしながら、この知られている装置の欠点は、システムが相対的に小さい扇角度に制限されることである。シミュレーションスタディは、フラット検出システムを用いる場合、構造の可視性が、10°と同じくらい小さい扇角度でも急速に低下することを示した。これは、より大きい扇角度が対象サイズのため必須である医療アプリケーションの場合、製造するのが一層困難であるカーブした検出システムが使用されなければならないことを示す。
【0011】
知られている装置に対してグレーティング素子及び線源ラインパターンを90°回転させることによって、X線ビームの投影されたラインは、扇角度全体で平行であり、こうして、カーブした又は傾けられた検出器はもはや必要でない。
【0012】
ここで、直交という語は、更に実質的に直交する構成を含み、具体的には、特に正確に直交する構成から±5°の逸脱を含むことが理解される。X線ビームの扇角度は、回転面内のX線ビームの角度として理解され、X線ビームのコーン角度は、扇角度と直交するX線ビームの角度として理解される。定義上、コーン角度は、アノードからのX線ビームの出発角度が0°のコーン角度の出発角度より小さい場合にその方向では負である。扇角度は、一般に、コーン角度より大きいことが多い。
【0013】
アノード角は、X線ビームの中心光線(中心軸)に対するアノードターゲット表面の角度として理解される。対象に対する回転軸を中心とした回転運動は、例えば、静止した対象に対し線源-検出器装置を回転させることによって、又は、静止した線源-検出器装置に対し対象を回転させることによって、又はそれら両方の組み合わせによって、実現されることができることに留意すべきである。ここで記述を簡略化するために、対象を有する中心領域が静止している一方で、線源-検出器装置が環境に対して回転することが、一般性を失うことなく、以下において通常仮定される。
【0014】
この記述のコンテクストにおいて、コヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線という語は、第1及び第2のグレーティング素子の所与のジオメトリ及び所与の距離の下で、干渉パターンの形成をもたらす放射線として理解される。
【0015】
本発明は更に、検出器素子から見たグレーティング素子のピッチがX線ビームのコーン角度に依存する場合、ラインパターン及びグレーティング素子を90°回転させることから生じる効果は、第1及び/又は第2のグレーティング素子のグレーティングピッチのコーン角度依存のバリエーションによって補償されることができるという発見に基づく。
【0016】
これは、X線ビームのコーン角度に対して、均一でない又は変化するピッチ構造を有する位相グレーティング素子(第1のグレーティング素子)及び/又はアナライザグレーティング素子(第2のグレーティング素子)を用いることと理解されることができる。第1のグレーティング素子のグレーティングピッチ及び/又は第2のグレーティング素子のグレーティングピッチは、X線ビームのコーン角度に沿って変わり、すなわち、グレーティング方向と直交する方向において、特にグレーティングラインの長手方向に直交する方向において、変わる。
【0017】
手短に言ってグレーティングと呼ばれる各々のグレーティング素子のグレーティング構造は、個別のバリア素子を有するものとして理解されることができ、各バリア素子は、互いに間隔をおいて配置されるバリア領域を有し、こうして、バリア素子の間に溝領域を形成する。好適には、溝領域及びバリア領域は、両方とも同じ幅を有し、こうして、溝領域、及びバリア領域又はバリア素子は、実質的に同じディメンションである。
【0018】
互いに隣り合って配される2つのバリア素子又はグレーティングラインの間の距離は、グレーティング素子のピッチと呼ばれることができる。こうして、グレーティング素子のピッチは、溝領域の幅にバリア領域の幅を足した長さであり、又は、バリア領域及び溝領域は好適には同じ幅を有するので、グレーティング素子のピッチは、溝領域又はバリア領域の幅の2倍にも等しい。グレーティング素子のピッチは、グレーティング素子の周期数とも呼ばれることができる。
【0019】
コーン角度に沿った第1及び第2のグレーティング素子の変化するピッチは、好適には、アノードによって放出される放射線のラインパターンの有効ピッチに合致する。
【0020】
バイナリグレーティング素子の場合、第1及び第2のグレーティング素子の間の所与の距離dに関して、量、
が奇数の整数である場合、干渉パターンの最も良好な可視性が得られうる。この整数は、干渉計のTalbot次数と呼ばれている。所与のTalbot次数、所与の距離d及び第1のグレーティング素子の所与のピッチp
1について、(波長がエネルギーに対応するので、)結果として得られるX線波長λは設計エネルギーと呼ばれる。π又はπ/2の位相シフトが望ましいので(及び位相シフトがkエッジの非存在下で硬X線レジメのエネルギーによって二次曲線的に低下するので)、第1のグレーティング素子の高さ(又は溝の深さ)は、好適には、設計エネルギーに対応するべきであることに留意されたい。また、非バイナリグレーティングの場合、第1及び第2のグレーティング素子の間の距離と、グレーティング素子のピッチと、X線波長との間には、一般性の関係があり、それに基づいて、可視性が最適化されることができる。この関係は、コーン角度に沿ってグレーティング素子のピッチの変調を補償するために使用されることができる。非バイナリグレーティングに関して、この関係は、例えばA. Yaroshenko et al.: "Non-binary phase gratings for x-ray imaging with a compact Talbot interferometer", Optics Express. Vol. 22(1), January 2014, pp. 547-556に詳しく説明されており、その内容は、参照によってここに盛り込まれるものとする。
【0021】
この装置は、とりわけ、大きい扇角度を使用すると共に、高いX線束を生じさせる浅いアノード角が用いられることができるという利点を有する。
【0022】
一実施形態において、X線源は、回転軸と直交するように配されるグレーティング方向をもつ線源グレーティング素子を有する。線源グレーティング素子を使用することによって、所望の方向又は向きのラインパターンのコヒーレントな又はほぼコヒーレントなX線ビームは、Xビームの線源、一般にはアノードを変更する必要なく、生成されることができる。X線源において、好適には、線源グレーティング素子のみが、回転軸と直交する所望の方向又は向きのラインパターンのコヒーレント又はほとんどコヒーレントX線ビームを形成するように適応されなければならない。更に、線源グレーティング素子が使用される場合、X線検出システムの第1及び/又は第2のグレーティング素子のピッチのコーン角度への依存は後述するように十分に小さく、特に±5°より小さいコーン角度の場合、特に±1.5°と±3.5°の間のコーン角度の場合、特に±2.5°のコーン角度の場合、第1及び/又は第2のグレーティング素子のピッチの変化はなお必要でないことが分かった。
【0023】
他の実施形態において、X線源は、コヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線をラインパターンで放出するアノードを有し、アノードは、第1及び/又は第2のグレーティング素子のグレーティングラインと平行して配置される異なる放射線放出のストリップを有する。このようなアノードは、構造化されたアノードとも呼ばれうる。好適には、アノードは、浅いアノード角、好適には15°より小さいアノード角を有する回転アノードである。X線源は、国際公開第2007/074029A1号公報及び/又は米国特許第7,945,018B2号公報に記述されるように更に詳述されることができ、それらの内容はともに、参照によってここに盛り込まれるものとする。
【0024】
所望の方向又は向きのラインパターンのコヒーレントな又はほぼコヒーレントなX線ビームを放出するように適応されるアノードを使用することによって、付加の線源グレーティング素子が必要でなくなる。
【0025】
一実施形態において、第1のグレーティングピッチ及び/又は第2のグレーティングピッチは、X線ビームのコーン角度に沿って、一様に変えられる。グレーティングピッチの一様なバリエーションは、扇角度から独立したバリエーションとして理解されることができる。
【0026】
他の実施形態において、第1のグレーティングピッチ及び/又は第2のグレーティングピッチは、X線ビームのコーン角度に沿って、徐々に変えられる。グレーティングピッチの徐々に変わるバリエーションは、段階的なバリエーションとして理解されることができ、1つのグレーティングピッチセクション内に同じグレーティングピッチを有するが、異なるグレーティングピッチセクション内に異なるグレーティンピッチを有する、2又はそれより多くの異なるグレーティングピッチセクションによって実現されることができる。
【0027】
別の実施形態において、第1のグレーティングピッチ及び/又は第2のグレーティングピッチは、X線ビームのコーン角度に沿って、より小さいグレーティングピッチからより大きいグレーティングピッチへと変えられる。
【0028】
他の実施形態において、第1のグレーティング素子及び/又は第2のグレーティング素子及び/又は検出器素子は、互いに平行に延在する平面内に配置される。
【0029】
知られている装置に対してグレーティング素子及び線源ラインパターンを90°回転させることは、更に、カーブした又は傾けられたグレーティング素子及び/又はカーブした又は傾けられた検出器素子の代わりに平坦な素子を使用する可能性を提供するための利点を有する。好適には、第1のグレーティング素子及び第2のグレーティング素子並びに検出器素子は、互いに平行に配置される。
【0030】
別の実施形態において、第1のグレーティング素子及び/又は第2のグレーティング素子は、位相ステッピングを提供するように互いに対し移動可能であるように適応される。特に、第1及び/又は第2のグレーティング素子は、回転軸に平行な方向、すなわちグレーティング方向と直交する方向において、互いに対し移動可能であるように適応される。例えば、放射線と直交する及びグレーティングラインの方向と直交する方向において、第1のグレーティング素子に対し第2のグレーティング素子を変位させる装置が提供されることができる。
【0031】
X線源が線源グレーティング素子を有する場合、線源グレーティング素子は、位相ステッピングを提供するために第1及び第2のグレーティング素子に対し移動可能であるように適応されることが好適である。更に、X線源が、線源グレーティングのないライン線源、特に構造化されたアノード、及び/又は構造化された電子ビームを有する場合、X線源のラインパターンをステッピングすることが好ましく、すなわち、X線源のラインパターンは、位相ステッピングを提供するために、第1及び/又は第2のグレーティング素子に対し移動可能であるように適応されることが好ましい。
【0032】
別の実施形態によれば、X線源は、回転アノード、及び回転アノードのターゲット領域上の電子ビームの焦点スポットの所望の位置からの実際位置の再現性のある偏りを検出するための位置センサと、位置センサから得られる測定結果に基づいて前記ビームを偏向させるための、一体型のコントローラを有するビーム偏向ユニットと、を有する。この実施形態は、回転するアノードは、機械的な許容誤差及び製造プロセス中の不正確さによりアノードシャフト上にまっすぐには載置されないという事実から生じるいわゆるウォブル効果を克服するという利点を有する。ウォブル効果は、アノードターゲット上の焦点スポットの周期的な位置の変化につながる。X線源は、国際公開第2010/067260A1号明細書に記載されるように更に詳述されることができ、その内容は、参照によってここに盛り込まれるものとする。好適には、回転アノードは、上述したように構造化されたアノードである。
【0033】
他の実施形態において、X線源は、ラインパターンのコヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線を放出するようにアノードへ方向付けられる構造化された電子ビームを含む。構造化された電子ビームを有するX線源は、国際公開第2010/067260A1号公報に記述されるように更に詳述されることができ、その内容は、参照によってここに盛り込まれるものとする。好適な実施形態において、構造化された電子ビームは、位相ステッピングを提供するために、特に第1及び/又は第2のグレーティング素子に対し移動可能であるように適応される。特に、構造化された電子ビームは、例えば電磁ビーム移動ユニットによって、電磁的に移動可能であることが好ましい。
【0034】
別の実施形態により、X線源は、複数の焦点ラインを提供する複数の液体金属ジェットを含む。好適には、X線源は、各々の液体金属ジェットにサブ電子ビームを提供する電子ビーム構造を更に有し、液体金属ジェットは、電子が当たる部分又は焦点ラインに沿ってサブ電子ビームによって各々ヒットされる。X線源は、国際公開第2014/125389A1号公報に記載されるように更に詳述されることができ、その内容は、参照によってここに盛り込まれるものとする。
【0035】
本発明の他の見地において、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用のX線装置であって、請求項1に記載の線源-検出器装置を有するX線装置が提示される。
【0036】
本発明の他の見地において、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置の線源-検出器装置によりX線ビームを生成し検出する方法であって、コヒーレントな又はほとんどコヒーレントな放射線を放出するX線源を、回転軸を中心に対象に対し回転するステップと、第1のグレーティング素子及び第2のグレーティング素子並びに検出器素子を有するX線検出システムによって放射線を検出するステップと、を有し、放射線のラインパターン及びグレーティング素子のグレーティング方向が、回転軸と直交するように配置され、第1のグレーティング素子が、X線ビームのコーン角度に依存して変えられる第1のグレーティングピッチを有し、及び/又は、第2のグレーティング素子が、X線ビームのコーン角度に依存して変えられる第2のグレーティングピッチを有する、方法が提示される。
【0037】
本発明の他の見地において、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用のX線装置により対象の画像を生成する方法であって、請求項12に記載のX線ビームを生成し検出する方法を含み、位相ステッピングの方向が回転軸に平行である、方法が提示される。
【0038】
好適には、既存のフィルタード後方投影アルゴリズムが、検出システムによる回転軸方向における位相面の勾配の測定から、回転軸方向における対象の屈折率の実数部分の勾配の投影を再構成するために使用される。フィルタード後方投影アルゴリズムは、L. A. Feldkamp et al.: "Practical cone-beam algorithm", J. Opt. Soc. Am. A/Vol. 1, No. 6/June 1984, p. 612-619に記述されており、その内容は、参照によってここに盛り込まれるものとする。フィルタード後方投影アルゴリズムの使用は、特に、回転軸の方向における電子密度の一次導関数を再構成することは十分である。
【0039】
別の実施形態において、反復的な再構成アルゴリズムが使用されることができる。反復的な再構成アルゴリズムは、T. Koehler et al.: "Iterative reconstruction for differential phase contrast imaging using spherically symmetric basis functions", Med. Phys. 38 (8), August 2011, p. 4542-4545に記述されており、その内容は、参照によってここに盛り込まれるものとする。
【0040】
上述したように、サンプルの小角散乱能を示す暗視野信号は更に、グレーティングベースのセットアップによって検出されることができる。散乱が等方性である限り、グレーティング方向の変化は、再構成アルゴリズムの変化にはつながらず、すなわち、U. van Stevendaal et al.:"Reconstruction method for object-position dependent visibility loss in dark-field imaging", Proc. SPIE 8668, Medical Imaging 2013: Physics of Medical Imaging, 86680Z (2013); doi: 10.1117/12.2006711に記述されるような方法が、なお使用されることができる。
【0041】
本発明の他の見地において、対象の画像を生成するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータプログラムがX線装置を制御するコンピュータ上でランされる際、請求項13に記載の画像を生成する方法の各ステップを、請求項11に記載のX線装置に実施させるプログラムコード手段を有する、コンピュータプログラムが提示される。
【0042】
請求項1に記載のグレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置の線源-検出器装置、請求項11に記載のグレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置、請求項12に記載のグレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置の線源-検出器装置によりX線ビームを生成し検出する方法、請求項13に記載のグレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置により対象の画像を生成する方法、及び請求項14に記載の対象の画像を生成するX線装置を制御するためのコンピュータプログラムは、特に従属請求項に記載されるような同様の及び/又は同一の好適な実施形態を有することが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置の一実施形態を概略的及び例示的に示す図。
【
図2】グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用X線装置の線源-検出器装置の一実施形態を概略的及び例示的に示す図。
【
図3】グレーティングベースの位相差コントラストCTのための従来のセットアップを概略的及び例示的に示す図。
【
図4】従来のX線ラインパターンを有するX線源のアノードを概略的及び例示的に示す図。
【
図5】本発明による、グレーティング向きを有する位相コントラストCTセットアップの一実施形態を概略的及び例示的に示す図。
【
図6】ラインパターンでX線を放出するX線源のアノードの一実施形態を概略的及び例示的に示す上面図。
【
図8】いわゆるウォブル効果の補償を伴う回転アノードの一実施形態を概略的及び例示的に示す図。
【
図9】複数の液体金属ジェットを有するX線源の一実施形態を概略的に及び例示的に示す図。
【
図10】システムカバレッジへの依存性に変えられるコーン角度からのエネルギー依存性を概略的及び例示的に示す図。
【
図11】X線放射線を生成し検出する方法の一実施形態を例示的に示すフローチャート。
【
図12】X線検出システムのグレーティング素子の第1の実施形態を概略的及び例示的に示す図。
【
図13】X線検出システムのグレーティング素子の第2の実施形態を概略的及び例示的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用のX線装置10の一実施形態を概略的及び例示的に示す。X線装置10は、ラインパターンでコヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線のX線ビームを放出するX線源12を有する線源-検出器装置11を有し、X線源は更に、テーブル14に配置される対象に対し回転軸を中心に回転移動されるように構成される。更に、X線検出システム16は、X線源12の反対側に位置し、テーブル14に配置される対象は、放射線プロシージャの最中、X線源12とX線検出システム16の間の空間17に対象を位置付けるために、回転軸に平行な方向zに沿って移動されることができる。概して、軸方向取得(患者移動なし)、及びらせんタイプの取得、すなわち、線源-検出器装置11が回転される間に患者が方向zに沿って移動される取得、を使用することが可能である。X線検出システム16は、データ処理ユニット又はコンピューティングシステム18にデータを送信するように適応され、コンピューティングシステム18は、好適には、X線検出システム16及びX線源12を接続される。コンピューティングシステム18は、X線装置10の近くに位置しうる。当然ながら、コンピューティングシステム18は、異なる場所に、例えば異なる検査室に位置することもできる。X線源12及びX線検出システム16は、ガントリ13上に配置される。ガントリ13は、空間17に配置される対象に対し、回転軸を中心に回転移動されるように適応される。
【0045】
更に、ディスプレイ装置又はコンソール20は、X線装置10を操作する人に情報を表示するために、テーブル14の近くに配置される。好適には、ディスプレイ装置20は、検査状況に依存して個別の調整を行うことを可能にするように可動に取り付けられる。ディスプレイ装置20は、ユーザによって情報を入力するためのインタフェースユニットを更に有することができる。ディスプレイ装置20は、コンピュータシステム18に結合され、コンピュータシステム18は再構成プロセッサ18aを有する。コンピューティングシステム18は、データリポジトリ19に結合され、コンピューティングシステム18及びデータリポジトリ19は、X線装置10に結合される。
【0046】
基本的に、X線検出システム16は、X線源12によって放出されるX線ビームに、テーブル14に配置された対象を曝すことによって、画像データを生成し、前記画像データは、X線装置10及び再構成プロセッサ18aにおいて更に処理される。
【0047】
図2は、線源-検出器装置11のX線検出システム16の一実施形態を概略的及び例示的に示す。この装置において、X線源15は、コヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線のX線ビーム20を放出するために、アノード12及び線源グレーティング素子22(G0とも呼ばれる)を有する。対象140は、X線源12とX線検出システム16との間のX線ビーム20の経路に配置される。X線検出システム16は、第1のグレーティング素子又は位相グレーティング素子24、及び第2のグレーティング素子又はアナライザグレーティング素子26を有する。第1のグレーティング素子24は、G1とも呼ばれることができ、第2のグレーティング素子26は、G2とも呼ばれることができる。第1のグレーティング素子24は、線源グレーティング素子22を有するX線源12から距離lのところに配置され、第2のグレーティング素子26は、第1のグレーティング素子から距離dのところに配置される。一様な位相を有する波面28aが、対象140に到達することが図示され、他方で、対象140を通過する間に波面に与えられる位相シフトに対する変化位相関係を有する他の位相面28bが図示されている。
【0048】
その後、波面は、第1のグレーティング素子24に到達する。第2のグレーティング素子26は、位相コントラスト画像の取得のために第1のグレーティング素子24に対し移動可能32である。しかしながら、アナライザグレーティング素子26又はG2の代わりに、第1のグレーティング素子24を移動させることも考えられる。
【0049】
X線ビーム20は、第1のグレーティング素子24を通過して、干渉パターンを生成し、干渉パターンは、検出器ピクセル素子8と組み合わされる第2のグレーティング素子26によって解析される。
【0050】
図2の明確さのために、第1のグレーティング素子24は、一様なピッチpを有するものとして図示され、第2のグレーティング素子26は、一様なピッチqを有するものとして図示される。しかしながら、第1及び第2の両方のグレーティング素子のピッチ構成の例示的な実施形態に関する詳細な図示は、
図12又は
図13から得ることができる。
【0051】
図3は、X線源12'及び検出システム16'を有するグレーティングベースの位相差コントラストCTの用の従来のセットアップを概略的及び例示的に示す。第1及び第2のグレーティング素子(説明を簡単にするため、
図3は、1つのグレーティングG'のみを示す)が、回転軸Rとアラインされ、位相ステッピング方向S'は、回転面内にある。
【0052】
図3に示されるこのような従来のセットアップは、
図4に示すように、ラインパターン21'の放射線を放出するためにラインパターン121'を有するX線源のアノード120'と共に、通常使用されることができる。アノード120'のラインパターン121'は、装置の光軸に沿って見て垂直のグレーティングのように見える(
図4の右側の中央のパターン)。しかしながら、かなり小さい扇角度α'(
図4のこの図示において15°)の場合でも、検出システムの上へのラインパターン121'の投影は、パターン21'の歪曲につながり、これは、検出システムの第1及び第2のグレーティング素子の対応する傾斜を必要とする。
図4に示されるアノード120'は、8°のアノード角を有するとみなされる。
【0053】
図5は、X線源12と、回転軸Rと直交する向きに配置される第1及び第2のグレーティング素子(説明を簡単にするため、
図5において1つのグレーティングGのみが示される)と、を有する検出システム16によって、グレーティングベースの位相差コントラストCT用のセットアップの一実施形態を概略的及び例示的に示す。位相ステッピングは、回転軸Rに平行な位相ステッピング方向Sにおいて実施される。
【0054】
既存のフィルタード後方投影アルゴリズムは、検出システムによる回転軸方向における位相面の勾配の測定から、回転軸方向における対象の屈折率の実数部分の勾配の投影を再構成するために使用されることができる。特に回転軸方向における電子密度の一次導関数を再構成することが十分である場合のフィルタード後方投影アルゴリズムの使用が図示される。代替的に又は追加的に、反復的な再構成アルゴリズムが使用されることができる。
【0055】
図6及び
図7は、
図5に記載のX線源12において使用されるアノード120の一実施形態を概略的及び例示的に示す上部図(
図6)及び側面図(
図7)を示す。アノード120は、回転タイプであり、回転シャフト122に配置される。アノード角γは、ここでも8°とされているが、
図7では明確さのために大幅に拡大されて図示されている。回転アノード120は、ラインパターン21のコヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線のX線ビーム20を放出するように適応された構造化されたアノードである。構造化された回転アノード120は、異なる放射線放出のストリップ121を有し、ストリップ121は、
図5にGによって示される第1及び/又は第2のグレーティングのグレーティングラインに対し平行に配される。アノードをアノードシャフト122に取り付ける製造プロセスの間の不正確さ及び機械的許容誤差を補償するために、X線源12は、好適には、
図8に関して以下に更に詳しく説明されるように、一体型のコントローラをもつ位置センサ及びビーム偏向ユニットを具備する。
【0056】
回転アノード120は構造化されていなくてもよく、ラインパターンが、アノードにラインパターンで当たる電子ビームを直接電磁的に形成することによって生成される。
【0057】
図6から分かるように、
図4に示される従来の向きと比較してアノード120のラインパターン121を90°回転させることによって、投影されたラインパターン21の向きは、扇角度αを有してもはや変化しない。しかしながら、この構成では、投影されるラインパターン21の有効ピッチは、
図7から分かるように、コーン角度βによって変わる。これは、
図12及び
図13に概略的及び例示的に示されるように、第1及び第2のグレーティング素子のピッチの対応するバリエーションによって、検出システムによって補償される。
【0058】
図8は、例えば
図6及び
図7のアノード120と共に使用されるための、アノードの傾斜角度の周期的なウォブリングを測定し補償するシステムを有するX線源の素子の一実施形態を概略的及び例示的に示す。
図8には、回転するアノードシャフト122上に傾斜して取り付けられた回転アノード120の断面概略図が示される。これは、通常、アノード120のターゲット表面上の焦点スポット123の周期的な位置変化を生じさせ、それにより、焦点スポットがぼやけるようになる。
図8には、回転するアノードシャフト122に傾斜して搭載されている回転アノード120の2つの個別の回転フェーズが、概略断面図に示されている。これらの回転フェーズは、互いに対し180°の回転角度シフトされており、回転アノードの回転プレーンに対し、回転アノード120の異なる傾斜角度を示す。回転プレーンは、回転シャフト122の回転軸に対し垂直に方向付けられる。位置センサ40は、歪曲するウォブル効果に対する影響を有しうるさまざまな条件(例えば熱条件によるアノードディスクの曲り)について、アノードの位相分解される焦点スポット位置を測定するために提供される。この測定に基づいて、位置センサ40の測定結果から導き出される制御データは、一体型のビーム偏向ユニット51に供給され、X線源のカソードによって放出される電子ビーム50を呼応的にステアリングするために使用される。回転アノード120が+φ方向又は-φ方向に180°回転される場合、焦点スポット123の位置は、アノードシャフトの回転軸の方向において逸脱振幅Δzだけ偏る。ビーム偏向ユニット51を通じて、焦点スポット123の位置が、中心放射線ファンビームのプレーンPの範囲内にあるように、電子ビーム50がステアリングされる。電子ビーム50の方向のこのような補正なしで、Δzが、投影される焦点スポット直径Δlの大きな割合に達する場合であって、X線パルス幅が、アノード回転期間の半分のオーダーであり又はそれより長い場合、X線画像がぼやけることがある。
【0059】
図9は、例えば
図5のセットアップにおいて使用されるX線源の液体金属ジェットの供給の一実施形態を概略的及び例示的に示す。電子ビーム構造52は、サブ電子ビームとして出力される個別の電子ビーム54の複数53を有する。パターン46は、生成された放射線を示す。個別の電子ビーム54は、複数の液体金属ジェット124に供給される。これらの液体金属ジェット124は、複数の焦点ライン125を提供し、X線源として使用される複数のX線ビーム46をもたらすアノード構造を形成する。
【0060】
図10は、コーン角度のエネルギー依存性を垂直軸にkeVで示しており、コーン角度のエネルギー依存性は、水平軸上にmmで示される中心プレーンからの距離に対する依存性に、すなわちシステムカバレッジに対する依存性に変えられる。
図10に示される例では、アノード角が8°(左)又は12°(右)であり、X線源と回転軸との間の距離が570mmであり、0°のコーン角度での設計エネルギーが70keVである、例示のシステムジオメトリーが検討された。
図10から分かるように、グレーティングピッチのバリエーションは、20mmのカバレッジ及び8°のアノード角を有するシステムにおいて55乃至91keVの設計エネルギーのバリエーションをもたらす。更に、このバリエーションは、
図10の右側及び左側の比較から分かるように、アノード角に強く依存し、バリエーションは、アノード角を12°まで増大することによって60乃至83keVのレンジに低減される。
【0061】
図11は、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用のX線装置の線源-検出器装置によりX線ビームを生成し検出する方法の一実施形態を概略的及び例示的に示し、方法は、コヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線のX線ビームを放出するX線源を、対象に対し回転軸を中心に回転させるステップ1001と、第1のグレーティング素子及び第2のグレーティング素子並びに検出器素子を有するX線検出システムによって放射線を検出するステップ1002と、を含み、放射線のラインパターン及び第1及び第2のグレーティング素子のグレーティング方向は、回転軸と直交するように配置され、第1のグレーティング素子は、X線ビームのコーン角度に依存して変えられる第1のグレーティングピッチを有し、第2のグレーティング素子は、X線ビームのコーン角度に依存して変えられる第2のグレーティングピッチを有する。
【0062】
図12は、第1及び/又は第2のグレーティング素子として用いられることができるX線検出システムのグレーティング素子2000の第1の実施形態を概略的及び例示的に示し、グレーティング素子は、X線ビームのコーン角度に沿って徐々に又は段階的に変えられるグレーティングピッチをもつ。
図12に示されるグレーティング素子2000は、3つの異なるグレーティングピッチセクション2100、2200、2300を有し、セクションの各々の中では同じグレーティングピッチであるが、異なるグレーティングピッチセクションでは、異なるグレーティングピッチである。言い換えると、グレーティングピッチセクション2100のグレーティングピッチp
1aは、グレーティングピッチセクション2100内では同じであり、グレーティングピッチセクション2200のグレーティングピッチp
1bは、グレーティングピッチセクション2200内で同じであり、グレーティングピッチセクション2300のグレーティングピッチp
1cは、グレーティングピッチセクション230内で同じである。しかしながら、3つのグレーティングピッチセクション2100、2200、2300のグレーティングピッチp
1a、p
1b、p
1cは、互いに異なり、特に、グレーティングピッチセクション2300のグレーティングピッチp
1cは、グレーティングピッチセクション2200のグレーティングピッチp
1bより大きく、グレーティングピッチセクション2200のグレーティングピッチp
1bは、グレーティングピッチセクション2100のグレーティングピッチp
1aより大きい。
【0063】
図13は、第1及び/又は第2のグレーティング素子として用いられることができるX線検出システムのグレーティング素子3000の第2の実施形態を概略的及び例示的に示し、グレーティング素子3000は、X線ビームのコーン角度に沿って一様に又は単調に変えられるグレーティングピッチをもつ。
図13に示されるグレーティング素子3000の各々のグレーティングラインは、隣接するグレーティングラインp
y1、p
y2と比べて異なるグレーティングピッチp
xを有する。
図13に示される実施形態において、グレーティングピッチp
xは、
図13に示される矢印で示される方向において、各グレーティングラインごとに増大する。
【0064】
更に、この記述に示される医療コンピュータトモグラフィシステムは、単に、本発明の代替アプリケーションの例示の表現であることが意図されることに注意されたい。本発明の少なくとも一実施形態は、このアプリケーションの範囲を逸脱することなく、生物学的又は無機サンプルを検査するシステムと連動して使用されることができる。特に、本発明の少なくとも一実施形態は、材料解析のためのシステムにも適用可能でありうる。
【0065】
開示された実施形態に対する他の変更例は、図面、開示及び添付の請求項の検討から、請求項に記載の本発明を実施する際に当業者によって理解され達成されることができる。
【0066】
請求項において、「含む、有する(comprising)」という語は、他の構成素子を除外せず、又は不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を除外しない。単一のユニット又は装置は、請求項に列挙されるいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。
【0067】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。
【0068】
1又は複数のユニット又は装置によって実施される、X線ビームを生成し検出する方法又は対象の画像を生成する方法、その他に従う線源-検出器装置又はX線装置の制御のような動作は、他の任意の数のユニット又は装置によって実施されることができる。X線ビームを生成し検出する方法又は対象の画像を生成する方法による線源-検出器装置又はX線装置の制御は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として及び/又は専用のハードウェアとして実現されることができる。
【0069】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される、光学記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に記憶され/配布されることができるが、他の形態で、例えばインターネット又は他のワイヤード若しくはワイヤレス通信システムを通じて、配布されることもできる。
【0070】
請求項における任意の参照符号は、請求項の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。
【0071】
本発明は、グレーティングベースの位相コントラストコンピュータトモグラフィ用のX線装置の線源-検出器装置に関する。線源-検出器装置は、対象に対して回転軸を中心に回転移動されるように適応され、ラインパターンでコヒーレントな又はほぼコヒーレントな放射線のX線ビームを放出するように適応されたX線源と、第1のグレーティング素子及び第2のグレーティング素子並びに検出器素子を有するX線検出システムと、を有し、前記放射線の前記ラインパターン及び前記第1及び第2のグレーティング素子のグレーティング方向は、前記回転軸と直交するように配され、前記第1のグレーティング素子が、前記X線ビームのコーン角度に依存して変えられる第1のグレーティングピッチを有し、及び/又は前記第2のグレーティング素子が、前記X線ビームのコーン角度に依存して変えられる第2のグレーティングピッチを有する。