(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】硬質ウレタンフォーム断熱ボードの製造方法および硬質ウレタンフォーム断熱ボード
(51)【国際特許分類】
B32B 5/20 20060101AFI20221108BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20221108BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20221108BHJP
B29C 39/20 20060101ALI20221108BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20221108BHJP
B29C 44/24 20060101ALI20221108BHJP
C08J 9/36 20060101ALI20221108BHJP
B29C 69/02 20060101ALI20221108BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20221108BHJP
E04B 1/80 20060101ALI20221108BHJP
B29K 75/00 20060101ALN20221108BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20221108BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
B32B5/20
B32B27/40
B05D7/24 302T
B05D7/24 301L
B29C39/20
B29C44/00 A
B29C44/24
C08J9/36 CFF
B29C69/02
F16L59/02
E04B1/80 100K
E04B1/80 100Q
E04B1/80 100J
B29K75:00
B29K105:04
B29L9:00
(21)【出願番号】P 2018036584
(22)【出願日】2018-03-01
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】594162663
【氏名又は名称】アイシーケイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】小松 令治
(72)【発明者】
【氏名】青山 直親
(72)【発明者】
【氏名】谷澤 尚人
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-313799(JP,A)
【文献】特開2005-169699(JP,A)
【文献】特開昭61-272138(JP,A)
【文献】特開2004-249515(JP,A)
【文献】特開2016-164342(JP,A)
【文献】特開2001-220839(JP,A)
【文献】特開平06-031844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04B 1/62- 1/99
B33Y 10/00-99/00
B05D 1/00- 7/26
B29C 39/00-39/44、44/00-44/60
B29C 67/00-69/02
C08J 9/00- 9/42
F16L 59/00-59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ウレタンフォーム層の一方の面に第一の透湿性面材および第一の非透湿性面材が積層され、硬質ウレタンフォーム層の他方の面に第二の透湿性面材および第二の非透湿性面材が積層されてなる硬質ウレタンフォーム断熱ボードの製造方法であって、
第一の透湿性面材および第二の透湿性面材の透湿度が250g/m
2
/24h以上であり、第一の非透湿性面材および第二の非透湿性面材の透湿度が100g/m
2
/24h以下であり、前記方法は、第一の透湿性面材と第二の透湿性面材の間でウレタン原料組成物を発泡させて、第一の透湿性面材と硬質ウレタンフォーム層と第二の透湿性面材とからなる積層成形体を作製する工程、および前記積層成形体の第一の透湿性面材の面に
アフターキュアオーブン内で移送ラインに沿って連続的に移動する第一の非透湿性面材を積層し、前記積層成形体の第二の透湿性面材の面に
アフターキュアオーブン内で移送ラインに沿って連続的に移動する第二の非透湿性面材を積層する工程を含む
、方法。
【請求項2】
前記積層成形体を作製する工程が、移送ラインに沿って連続的に移動する第一の透湿性面材の上にウレタン原料組成物を塗布し、塗布されたウレタン原料組成物の上に第二の透湿性面材を移送ラインに沿って連続的に供給し、ウレタン原料組成物を発泡させながら第一の透湿性面材と第二の透湿性面材でサンドイッチ状に挟み込み、その後、ダブルコンベア内に送り込んで一定の厚みに加熱積層成形させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非透湿性面材を積層する工程に続いて、非透湿性面材を積層した積層成形体を所定の大きさに裁断する工程をさらに含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項4】
硬質ウレタンフォーム層の一方の面に第一の透湿性面材および第一の非透湿性面材が硬質ウレタンフォーム層側から第一の透湿性面材、第一の非透湿性面材の順で積層され、硬質ウレタンフォーム層の他方の面に第二の透湿性面材および第二の非透湿性面材が硬質ウレタンフォーム層側から第二の透湿性面材、第二の非透湿性面材の順で積層されてなる硬質ウレタンフォーム断熱ボードであって、第一の透湿性面材および第二の透湿性面材の透湿度が250g/m
2/24h以上であり、第一の非透湿性面材および第二の非透湿性面材の透湿度が100g/m
2/24h以下であ
り、第一の透湿性面材および第二の透湿性面材が無機繊維からなる不織布に厚み10~50μmの合成樹脂層を積層したものであり、硬質ウレタンフォーム断熱ボードが、硬質ウレタンフォーム層と第一の透湿性面材の間に非透湿性面材を有さず、硬質ウレタンフォーム層と第二の透湿性面材の間に非透湿性面材を有しない、断熱ボード。
【請求項5】
第一の非透湿性面材および第二の非透湿性面材が金属箔状物または合成樹脂フィルムを含む、請求項
4に記載の断熱ボード。
【請求項6】
第一の非透湿性面材および第二の非透湿性面材がポリエステルフィルムにエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる接着層を積層したものである、請求項
4または5に記載の断熱ボード。
【請求項7】
硬質ウレタンフォーム断熱ボードが、硬質ウレタンフォーム層と第一の透湿性面材の間に非透湿性面材を有さず、硬質ウレタンフォーム層と第二の透湿性面材の間に非透湿性面材を有しない、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材などの断熱材として用いられる硬質ウレタンフォーム断熱ボードの製造方法および硬質ウレタンフォーム断熱ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
硬質ウレタンフォーム断熱ボードとしては、ガラス繊維やバインダー樹脂等を含んだ比較的透湿性が大きくガスバリア性が小さい面材(以下、「透湿性面材」と称す。)を硬質ウレタンフォームの両面に積層した断熱ボードが知られている。その断熱ボードのライン成形による製造法では、一定の速度で連続的に供給される上下面材の、下面材に炭化水素系、フロン類、ハイドロフルオロオレフィン、水等の発泡剤を含んだウレタン原料組成物を塗布し、その後、加熱式スラット板がついた、所定の製品厚みにクリアランスが調整されたダブルコンベアの中でウレタン原料組成物を発泡硬化させて、上下面材にサンドイッチされた形の断熱ボードを成形している。ダブルコンベアの出口からは所定の製品厚みに発泡硬化した板状の断熱ボードが連続して排出される。その後、成形された断熱ボードはカッティング工程ラインに送られ、所定の製品サイズに裁断される。これまでの工程は一貫して連続して一つのライン上で行われている。(特許文献1)。
【0003】
一方、比較的透湿度の低い面材やガスバリア性が大きい面材(以下、「非透湿性面材」と称す。)を使用した断熱ボードも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-169699号公報
【文献】特開2016-164342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような透湿性面材を使用した成形では、成形時に発生する余剰ガスを面材表面から容易に逃がすことができるため、比較的綺麗な成形性をもった断熱ボードが製造できる。また、面材とウレタンフォーム層の接着性も要求性能を満たすことは容易である。しかし、透湿性面材を使用した断熱ボードは、成形後に、面材表面からのガス(水蒸気、空気)の置換が起こりやすく、そのため断熱性能が経時的に低下してしまうという問題点がある。
【0006】
特許文献2に記載されているような非透湿性面材を使用した場合、面材表面からのガスの置換が起こりにくいため長期に亘り初期の断熱性能を維持することができる。しかし、非透湿性面材を使用した硬質ウレタンフォーム断熱ボードのライン成形においては、成形時に発生するガスを面材表面から逃すことができないため、ガスだまり(以下、「ボイド」と称す。)がフォーム内に残り、成形性が損なわれやすく、外観だけでなく断熱性能にも悪影響を及ぼす。また、面材とフォーム層の界面にもガスが残りやすいため、面材とフォーム層の界面付近に強度の弱いウレタンフォーム層が形成されやすく、面材とウレタンフォーム層の接着性も要求性能を満たすのは困難である。
【0007】
本発明はこれらの問題点を解消して、成形時のガス抜き性および硬質ウレタンフォーム層と面材との接着性に優れ、更に高い断熱性能を長期に亘って保持することが可能な断熱ボードの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはこれらの問題点を鑑み鋭意検討を重ねた結果、一対の透湿性面材の間でウレタン原料組成物を発泡させて、硬質ウレタンフォームの両面に透湿性面材が積層された成形体を作製した後、その成形体の両面に非透湿性面材を積層することにより、成形性や接着性を損なうことなく、長期に亘って初期の断熱性能を維持し得る高性能の断熱ボードを得ることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
本件第一発明は、硬質ウレタンフォーム層の一方の面に第一の透湿性面材および第一の非透湿性面材が積層され、硬質ウレタンフォーム層の他方の面に第二の透湿性面材および第二の非透湿性面材が積層されてなる硬質ウレタンフォーム断熱ボードの製造方法であって、第一の透湿性面材と第二の透湿性面材の間でウレタン原料組成物を発泡させて、第一の透湿性面材と硬質ウレタンフォーム層と第二の透湿性面材とからなる積層成形体を作製する工程、および前記積層成形体の第一の透湿性面材の面に第一の非透湿性面材を積層し、前記積層成形体の第二の透湿性面材の面に第二の非透湿性面材を積層する工程を含むことを特徴とする。
【0010】
本件第二発明は、硬質ウレタンフォーム層の一方の面に第一の透湿性面材および第一の非透湿性面材が硬質ウレタンフォーム層側から第一の透湿性面材、第一の非透湿性面材の順で積層され、硬質ウレタンフォーム層の他方の面に第二の透湿性面材および第二の非透湿性面材が硬質ウレタンフォーム層側から第二の透湿性面材、第二の非透湿性面材の順で積層されてなる硬質ウレタンフォーム断熱ボードであって、第一の透湿性面材および第二の透湿性面材の透湿度が250g/m2/24h以上であり、第一の非透湿性面材および第二の非透湿性面材の透湿度が100g/m2/24h以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]硬質ウレタンフォーム層の一方の面に第一の透湿性面材および第一の非透湿性面材が積層され、硬質ウレタンフォーム層の他方の面に第二の透湿性面材および第二の非透湿性面材が積層されてなる硬質ウレタンフォーム断熱ボードの製造方法であって、第一の透湿性面材と第二の透湿性面材の間でウレタン原料組成物を発泡させて、第一の透湿性面材と硬質ウレタンフォーム層と第二の透湿性面材とからなる積層成形体を作製する工程、および前記積層成形体の第一の透湿性面材の面に第一の非透湿性面材を積層し、前記積層成形体の第二の透湿性面材の面に第二の非透湿性面材を積層する工程を含む方法。
[2]前記積層成形体を作製する工程が、移送ラインに沿って連続的に移動する第一の透湿性面材の上にウレタン原料組成物を塗布し、塗布されたウレタン原料組成物の上に第二の透湿性面材を移送ラインに沿って連続的に供給し、ウレタン原料組成物を発泡させながら第一の透湿性面材と第二の透湿性面材でサンドイッチ状に挟み込み、その後、ダブルコンベア内に送り込んで一定の厚みに加熱積層成形させることを含む、[1]に記載の方法。
[3]前記非透湿性面材を積層する工程が、アフターキュアオーブン内で移送ラインに沿って連続的に移動する非透湿性面材を積層することを含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4]非透湿性面材を積層した積層成形体を所定の大きさに裁断する工程をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]透湿性面材の透湿度が250g/m2/24h以上であり、非透湿性面材の透湿度が100g/m2/24h以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]硬質ウレタンフォーム層の一方の面に第一の透湿性面材および第一の非透湿性面材が硬質ウレタンフォーム層側から第一の透湿性面材、第一の非透湿性面材の順で積層され、硬質ウレタンフォーム層の他方の面に第二の透湿性面材および第二の非透湿性面材が硬質ウレタンフォーム層側から第二の透湿性面材、第二の非透湿性面材の順で積層されてなる硬質ウレタンフォーム断熱ボードであって、第一の透湿性面材および第二の透湿性面材の透湿度が250g/m2/24h以上であり、第一の非透湿性面材および第二の非透湿性面材の透湿度が100g/m2/24h以下である、断熱ボード。
[7]第一の透湿性面材および第二の透湿性面材が合成繊維もしくは無機繊維からなる不織布、織物もしくは編物または混抄紙を含む、[6]に記載の断熱ボード。
[8]第一の非透湿性面材および第二の非透湿性面材が金属箔状物または合成樹脂フィルムを含む、[6]または[7]に記載の断熱ボード。
[9]第一の透湿性面材および第二の透湿性面材が無機繊維からなる不織布に合成樹脂層を積層したものである、[6]~[8]のいずれかに記載の断熱ボード。
[10]第一の非透湿性面材および第二の非透湿性面材がポリエステルフィルムにエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる接着層を積層したものである、[6]~[9]のいずれかに記載の断熱ボード。
【発明の効果】
【0012】
本発明の硬質ウレタンフォーム断熱ボードの製造方法は、成形性に優れ、ボイドがなく、面材とウレタンフォーム層の接着性に優れ、かつ長期に亘って初期の断熱性能を維持することができる硬質ウレタンフォーム断熱ボードを製造することができる。本発明の硬質ウレタンフォーム断熱ボードは、ボイドがなく、面材とウレタンフォーム層の接着性に優れ、かつ長期に亘って初期の断熱性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の硬質ウレタンフォーム断熱ボードの製造方法を実施するための製造装置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の硬質ウレタンフォーム断熱ボードの断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1で製造した硬質ウレタンフォーム断熱ボードの断面図である。
【
図4】
図4は、実施例2で製造した硬質ウレタンフォーム断熱ボードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を、図面を参照して詳しく説明するが、本発明は図面に記載されたものに限定されるものではない。
【0015】
(硬質ウレタンフォーム断熱ボードの製造方法)
図1は、本発明の硬質ウレタンフォーム断熱ボードの製造方法を実施するための製造装置の一例を示す模式図である。
図2は、本発明の硬質ウレタンフォーム断熱ボードの断面図である。
本発明の硬質ウレタンフォーム断熱ボードの製造方法は、硬質ウレタンフォーム層9の一方の面に第一の透湿性面材3および第一の非透湿性面材13が積層され、硬質ウレタンフォーム層9の他方の面に第二の透湿性面材4および第二の非透湿性面材14が積層されてなる硬質ウレタンフォーム断熱ボード17の製造方法であって、第一の透湿性面材3と第二の透湿性面材4の間でウレタン原料組成物6を発泡させて、第一の透湿性面材3と硬質ウレタンフォーム層9と第二の透湿性面材4とからなる積層成形体10を作製する工程、および前記積層成形体10の第一の透湿性面材の面に第一の非透湿性面材13を積層し、前記積層成形体10の第二の透湿性面材の面に第二の非透湿性面材14を積層する工程を含む。
【0016】
より具体的には、第一の透湿性面材の原反ロール1から第一の透湿性面材3を移送ラインに沿って連続的に供給し、第二の透湿性面材の原反ロール2から第二の透湿性面材4を移送ラインに沿って連続的に供給する。移送ラインに沿って連続的に移動する第一の透湿性面材3の上にミキサーノズル5からウレタン原料組成物6を塗布する。塗布されたウレタン原料組成物6の上に第二の透湿性面材4を移送ラインに沿って連続的に供給する。ウレタン原料組成物6を発泡させながら第一の透湿性面材3と第二の透湿性面材4でサンドイッチ状に挟み込み、その後、加熱オーブン7内に送り込み、ダブルコンベア8,8で一定の厚みに加熱積層成形させ、第一の透湿性面材3と硬質ウレタンフォーム層9と第二の透湿性面材4とからなる積層成形体10を作製する。加熱成形は好ましくは40~80℃で実施する。その後、積層成形体10をアフターキュアオーブン15に送る。アフターキュアオーブン15の温度は好ましくは外気温~90℃である。アフターキュアオーブン15内で、第一の非透湿性面材の原反ロール11から移送ラインに沿って連続的に供給された第一の非透湿性面材13および第二の非透湿性面材の原反ロール12から移送ラインに沿って連続的に供給された第二の非透湿性面材14を積層成形体10の両面に積層する。最後に、カッター16で所定の大きさに裁断し、硬質ウレタンフォーム断熱ボード17を得る。この方法によれば、成形性や接着性を損なうことなく、長期に亘って初期の断熱性能を維持することができる、高性能の硬質ウレタンフォーム断熱ボードを工業的に高い生産性で得ることができる。
【0017】
(硬質ウレタンフォーム断熱ボード)
本発明の硬質ウレタンフォーム断熱ボードの断面図を
図2に示す。
本発明の硬質ウレタンフォーム断熱ボード17は、硬質ウレタンフォーム層9の一方の面に第一の透湿性面材3および第一の非透湿性面材13が硬質ウレタンフォーム層9側から第一の透湿性面材3、第一の非透湿性面材13の順で積層され、硬質ウレタンフォーム層9の他方の面に第二の透湿性面材4および第二の非透湿性面材14が硬質ウレタンフォーム層9側から第二の透湿性面材4、第二の非透湿性面材14の順で積層されたものである。
【0018】
(硬質ウレタンフォーム層)
本発明における硬質ウレタンフォーム層は、例えばポリエーテル系ポリオールやポリエステル系ポリオールからなるポリオール化合物と、ポリイソシアネート化合物と、発泡剤とを混合反応させることにより得られる発泡体の層である。硬質ウレタンフォーム層を形成するための原料として用いるポリオール化合物とポリイソシアネート化合物と発泡剤とを含む組成物を、「ウレタン原料組成物」と称す。ポリオール化合物としては、公知の硬質ウレタンフォーム用ポリオール化合物を使用できる。ポリオール化合物と混合、反応させて硬質ウレタンフォームを形成するポリイソシアネート化合物としては、公知の硬質ウレタンフォーム用ポリイソシアネート化合物を使用できるが、取扱の容易性、反応の速さ、得られる硬質ウレタンフォームの物理特性が優れていること、低コストであることなどから液状ジフェニルメタンジイソシアナート(以下、「MDI」と称す。)を使用することが好ましい。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよい。かかるポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において周知のジないしポリイソシアネート化合物が使用可能である。硬質ウレタンフォームの発泡剤としては、シクロペンタン、n-ペンタン等のペンタン類、含フッ素ハロゲン化炭化水素または含フッ素炭化水素、ハイドロフルオロオレフィン、水等の公知の発泡剤を使用することができる。
ウレタン原料組成物には、必要に応じて、触媒、整泡剤、難燃剤、可塑剤、着色剤、充填剤、防虫剤、防カビ剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0019】
本発明の硬質ウレタンフォーム層は、好ましくは成形密度が25~80kg/m3 である。これより成形密度が低くなると、フォーム強度が低いため、本発明のボード材として不適である。逆に、フォーム層の成形密度を80kg/m3より大きくすると、本発明のボード材の質量が重くなるだけでなく、価格の観点からも好ましくない。フォーム層の成形密度はより好ましくは35~60kg/m3 である。
硬質ウレタンフォーム層の厚さは、特に限定されず、用途に応じて、適宜選択することができるが、例えば10~200mmであり、好ましくは20~150mmである。
【0020】
(透湿性面材)
本発明における透湿性面材は、通気性を有する合成繊維もしくは無機繊維からなる不織布、織物もしくは編物または混抄紙を含む。これらの透湿性面材としては、例えばガラス繊維、炭素繊維等の無機系繊維、アラミド、パルプ等の有機系繊維、あるいはそれらの混合物の不織布、織物または編物が使用できる。不織布、織物または編物単独では成形時にウレタン原料組成物の漏出等が発生することがあるため、必要に応じてこれらの不織布、織物または編物に透湿性の合成樹脂層等を積層したものや、アスファルト等を含浸させたものが使用できる。なかでも、硬質ウレタンフォームと接触しない面にポリプロピレン(以下、「PP」と称す。)樹脂を積層したガラス繊維や、アスファルトを含浸させたガラス繊維が好ましく用いられる。ガラス繊維の目付量は10~150g/m2が好ましく、20~120g/m2がより好ましい。ガラス繊維の目付量が小さすぎると寸法安定性が悪化し、ガラス繊維の目付量が大きすぎるとコストが嵩み好ましくない。積層する合成樹脂層の厚みは、10μm以上50μm未満であることが好ましく、15μm以上40μm未満であることがより好ましい。合成樹脂層の厚みが厚すぎると透湿度が下がり、断熱ボードの成形性が悪化し、合成樹脂層の厚みが薄すぎると成形時にウレタン原料組成物の漏出等が発生する恐れがある。ガラス繊維にアスファルトを含浸させる場合、アスファルトの含浸量は30~100g/m2が好ましく、35~70g/m2がより好ましく、40~60g/m2がより好ましい。アスファルトの含浸量が多すぎると過剰のアスファルトが面材表面でブロッキングしてしまい、アスファルトの含浸量が少なすぎると成形時にウレタン原料組成物の漏出等が発生する恐れがある。
【0021】
透湿性面材の透湿度は250g/m2/24h以上であることが好ましく、300g/m2/24h以上であることがより好ましい。透湿性面材の透湿度が250g/m2/24h未満では硬質ウレタンフォーム成形時に発生するガスを面材表面から十分に逃すことができないため、成形性、接着性、断熱性能等に悪影響を及ぼす。使用する透湿性面材の透湿度の範囲の上限は、限定されないが、通常、700g/m2/24h程度である。
【0022】
第一の透湿性面材3と第二の透湿性面材4は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、第一の透湿性面材3として、ガラス繊維不織布に黒色以外の有色の顔料を含むポリプロピレン樹脂を積層したものを使用し、第二の透湿性面材4として、ガラス繊維不織布にカーボンブラックを含むポリプロピレン樹脂を積層したものを使用してもよい。
【0023】
(非透湿性面材)
本発明における非透湿性面材は、金属箔状物または合成樹脂フィルムを含む。
金属箔状物としては、例えばアルミニウム箔、銅箔、鉄箔、鉛箔等が挙げられ、軽量であるアルミニウム箔が好ましく使用できる。断熱ボードの最外層が金属箔状物単独となる場合、箔自身が切れたりしわが寄ったりするので、金属箔状物の外側に合成樹脂層等の保護層を積層しても構わない。金属箔状物に積層される合成樹脂層としては、例えば塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と称す。)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と称す。)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等が用いられ、これら1種の単独樹脂あるいは2種以上を積層した複層樹脂が使用できる。なかでも、PET樹脂やPBT樹脂などのポリエステル系樹脂からなる樹脂が好ましく用いられる。
合成樹脂フィルムとしては、例えば塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と称す。)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」と称す。)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等のフィルムを挙げることができる。前記樹脂の2種以上を積層した複層フィルムを用いてもよい。なかでも、PETフィルムやPBTフィルムなどのポリエステルフィルムが好ましく用いられる。合成樹脂フィルムにアルミニウム等の金属を蒸着してなる金属蒸着フィルムを用いてもよい。
これらの非透湿性面材には透湿性面材との接合のために接着層を含むことができる。接着層としては、例えばポリエチレン系接着剤等が使用できる。具体的には、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」と称す。)樹脂などの熱溶融性接着樹脂の使用が好ましい。
非透湿性面材の厚みは、0.02~0.20mmであることが好ましい。
【0024】
非透湿性面材の透湿度は100g/m2/24h以下であることが好ましく、50g/m2/24h以下であることがより好ましい。非透湿性面材の透湿度が100g/m2/24hを超えると、成形後に面材表面からのガスの置換が起こりやすく、そのため断熱性能が経時的に低下してしまう。使用する非透湿性面材の透湿度の範囲の下限は、限定されないが、通常、10g/m2/24h程度である。
【0025】
第一の非透湿性面材13と第二の非透湿性面材14は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【実施例】
【0026】
実施例1
硬質ウレタンフォーム断熱ボードを製造するために、
図1に示す製造装置を用いた。
第一の透湿性面材および第二の透湿性面材として、目付量40g/m
2のガラス繊維不織布に厚さ30μmのポリプロピレン樹脂を積層したものを用い、第一の透湿性面材3を、原反ロール1からガラス繊維不織布層が上側になるように、連続的に供給した。
第一の透湿性面材3の上に、下記配合のポリオール成分とポリイソシアネート成分からなるウレタン原料組成物6をミキサーノズル5から撒布、供給した。
(ポリオール成分)
ポリエーテル系ポリオール ・・・ 100.0質量部
発泡剤(シクロペンタン) ・・・ 15.0質量部
水 ・・・・・・・・・・・・・・ 2.5質量部
触媒(三級アミン) ・・・・・・ 1.5質量部
整泡剤(シリコーン系) ・・・・ 1.5質量部
(ポリイソシアネート成分)
液状MDI ・・・・・・・・・・ 200.0質量部
ウレタン原料組成物6を供給した第一の透湿性面材3の上に、第二の透湿性面材4を原反ロール2からガラス繊維不織布層が下側になるようにガイドロールを通じて供給した。ウレタン原料組成物をサンドイッチした状態で第一の透湿性面材3および第二の透湿性面材4を、65℃の加熱オーブン7内に設置された上下1対のダブルコンベア8,8の間に送り、厚さが20mmとなるように規制を受けつつ発泡硬化を完了し、第一の透湿性面材3と硬質ウレタンフォーム層9と第二の透湿性面材4とからなる積層成形体10を作製した。加熱オーブン7を出た積層成形体10を、アフターキュアオーブン15に移送した。
第一の非透湿性面材13および第二の非透湿性面材14として、厚さ19μmのPET樹脂フィルムに厚さ19μmのEVA樹脂からなる接着層を設けた積層フィルムを用いた。第一の非透湿性面材13を原反ロール11から、第二の非透湿性面材14を原反ロール12から移送ラインに供給し、70℃のアフターキュアオーブン15内で、接着層が積層成形体側になるように、第一の非透湿性面材13および第二の非透湿性面材14を積層成形体10の両面に加熱ラミネートした。最後にカッター16で所定長さに裁断し、
図3に示す硬質ウレタンフォーム断熱ボード17を製造した。
図3中、9は硬質ウレタンフォーム層、3は第一の透湿性面材、4は第二の透湿性面材、13は第一の非透湿性面材、14は第二の非透湿性面材、21はガラス繊維不織布層、22はポリプロピレン樹脂層、23はEVA樹脂接着層、24はPET樹脂フィルムである。
使用した透湿性面材の透湿度は353g/m
2/24h、非透湿性面材の透湿度は39g/m
2/24hであり、面材全体の透湿度は17g/m
2/24hであった。
得られた硬質ウレタンフォーム断熱ボードについて、成形性の評価としてボイドの発生状況を観察するとともに、加湿試験を行なった。結果を表1に示す。得られた断熱ボードはボイドの発生は観察されず、きれいな成形体であった。また、加湿試験において熱伝導率および質量の増加はほとんど観察されなかった。
【0027】
比較例1
非透湿性面材を積層しなかったこと以外は、実施例1と同様に行い、硬質ウレタンフォーム断熱ボードを製造した。
得られた断熱ボードはボイドの発生は観察されず、きれいな成形体であった。しかし、加湿試験において熱伝導率は0.0289W/mKから0.0304W/mKと大きく悪化し、断熱ボードの質量も29.5%増加していた。
【0028】
実施例2
透湿性面材を、目付量100g/m
2のガラス繊維不織布にストレートアスファルト50g/m
2を含浸させたものに変更した以外は、実施例1と同様に行い、
図4に示す硬質ウレタンフォーム断熱ボードを製造した。
図4中、9は硬質ウレタンフォーム層、3は第一の透湿性面材、4は第二の透湿性面材、13は第一の非透湿性面材、14は第二の非透湿性面材、23はEVA樹脂接着層、24はPET樹脂フィルム、25はアスファルト含浸ガラス繊維不織布である。
使用した透湿性面材の透湿度は500g/m
2/24h以上、非透湿性面材の透湿度は39g/m
2/24hであり、面材全体の透湿度は20g/m
2/24hであった。得られた断熱ボードはボイドの発生は観察されず、きれいな成形体であった。また、加湿試験において熱伝導率および質量の増加はほとんど観察されなかった。
【0029】
比較例2
非透湿性面材を積層しないこと以外は、実施例2と同様に行い、硬質ウレタンフォーム断熱ボードを製造した。
得られた断熱ボードはボイドの発生は観察されず、きれいな成形体であった。しかし、加湿試験において熱伝導率は0.0297W/mKから0.0486W/mKと大きく悪化し、断熱ボードの質量も208.6%増加していた。
【0030】
比較例3
目付量40g/m2のガラス繊維不織布に厚さ30μmのポリプロピレン樹脂を積層した透湿性面材に代えて、目付量40g/m2のガラス繊維不織布シートに厚さ40μmのポリプロピレン樹脂を積層した透湿性面材を使用した以外は、比較例1と同様に行い、硬質ウレタンフォーム断熱ボードを製造した。
使用した透湿性面材の透湿度は290g/m2/24hであった。得られた断熱ボードには1m2あたりに1.5cm未満の小さなボイドが1個あったものの、使用上問題のない範囲の成形体であった。
【0031】
比較例4
目付量40g/m2のガラス繊維不織布に厚さ30μmのポリプロピレン樹脂を積層した透湿性面材に代えて、目付量40g/m2のガラス繊維不織布に厚さ50μmのポリプロピレン樹脂を積層した透湿性面材を使用した以外は、比較例1と同様に行い、硬質ウレタンフォーム断熱ボードを得た。
使用した面材の透湿度は146g/m2/24hであった。得られた断熱ボードには1m2あたりに1.5cm未満の小さなボイドが2個および1.5cm以上のボイドが1個発生していた。
【0032】
比較例5
実施例1において、透湿性面材に代えて、2軸ガラスメッシュ(メッシュUB:田島ルーフィング株式会社製)の両面に、厚さ19μmのPET樹脂フィルムに厚さ19μmのEVA樹脂からなる接着層を設けた積層フィルムを熱ラミネートした積層体からなる非透湿性面材を使用し、アフターキュアオーブンにおける非透湿性面材の積層を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様に行い、非透湿性面材/硬質ウレタンフォーム層/非透湿性面材の層構成を有する硬質ウレタンフォーム断熱ボードを製造した。
使用した非透湿性面材の透湿度は22g/m2/24hであった。得られた断熱ボードには1m2あたりに1.5cm未満の小さなボイドが10個以上および1.5cm以上のボイドが10個以上発生していた。
【0033】
【0034】
なお、各評価項目の測定方法は次のとおりである。
【0035】
[透湿度(g/m2/24h)]
JIS Z 0208「防湿包装材料の透過湿度試験方法」(カップ法)に基づいて測定を行った。
【0036】
[加湿試験]
50℃に調整した恒温水槽の上部に190mm×190mmの開口部を持った蓋を作成し、該開口部を200mm×200mmに裁断した断熱ボードで塞ぎ、2週間放置した。処理前後の質量変化および熱伝導率の変化を測定した。
【0037】
[熱伝導率(W/mK)]
JIS A 1412-2「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第2部:熱流計法(HFM法)」に基づいて測定を行った。
【0038】
[ボイドの発生状況(成形性の評価)]
得られた断熱ボードの表面(1m2)を観察し、ボイドの発生状況をチェックした。
○:ボイドなし
△:最も長い部分が1.5cm未満のボイドが1個以上ある
×:最も長い部分が1.5cm以上のボイドが1個以上ある
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の断熱ボードは、高い断熱性能を長期に亘って保持することが可能であり、建材等の断熱材として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 第一の透湿性面材の原反ロール
2 第二の透湿性面材の原反ロール
3 第一の透湿性面材
4 第二の透湿性面材
5 ミキサーノズル
6 ウレタン原料組成物
7 加熱オーブン
8 ダブルコンベア
9 硬質ウレタンフォーム層
10 積層成形体
11 第一の非透湿性面材の原反ロール
12 第二の非透湿性面材の原反ロール
13 第一の非透湿性面材
14 第二の非透湿性面材
15 アフターキュアオーブン
16 カッター
17 硬質ウレタンフォーム断熱ボード
21 ガラス繊維不織布層
22 ポリプロピレン樹脂層
23 EVA樹脂接着層
24 PET樹脂フィルム
25 アスファルト含浸ガラス繊維不織布