IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グンゼ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ポリアミド系多層延伸フィルム 図1
  • 特許-ポリアミド系多層延伸フィルム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】ポリアミド系多層延伸フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20221108BHJP
   B29C 55/02 20060101ALI20221108BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221108BHJP
   B29K 77/00 20060101ALN20221108BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20221108BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20221108BHJP
【FI】
B32B27/34
B29C55/02
B65D65/40 D
B29K77:00
B29L9:00
B29L7:00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018056432
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019166725
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉崎 博幸
(72)【発明者】
【氏名】小松 孝禎
【審査官】静野 朋季
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-002114(JP,A)
【文献】特開2015-134465(JP,A)
【文献】特開2011-161682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C55/00-55/30
61/00-61/10
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系多層延伸フィルムであって、
少なくともA層/B層/C層/B層/A層の5層で積層されてなる層構成であり、
前記A層は、ポリアミド系樹脂を含み、ポリアミド系樹脂以外の成分が3重量%以下であり、
前記B層は、ポリアミド系樹脂85~99重量%及びポリエステル系エラストマー1~15重量%を含み、当該B層のポリアミド系樹脂は、ナイロン-6及びナイロン-6/6,6を含み、並びに
前記C層は、バリア性樹脂を含み、
ヘイズ値は、7%以下である、
ポリアミド系多層延伸フィルム。
【請求項2】
前記A層が、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドを含む請求項1記載のポリアミド系多層延伸フィルム。
【請求項3】
前記バリア性樹脂が、エチレン-ビニルアルコール共重合体又は芳香族ポリアミドである請求項1又は2記載のポリアミド系多層延伸フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系多層延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナイロン樹脂を含むフィルムは、ガスバリア性、強靭性等を有するフィルムとして各方面で多用されている。例えば、ポリアミド層/バリア層/ポリアミド層の3層からなるフィルムは包装用として広く利用されている。
【0003】
このフィルムは、例えば市場に流通する食品等の包装フィルムとして用いられるが、その搬送、運搬等においてピンホールを生じる場合がある。このピンホールのためにフィルムの優れたガスバリア性が阻害される結果となっていた。そのため、市場からは更なる強靭性の向上、特に耐ピンホール性の向上が望まれている。
【0004】
フィルムのピンホールは、屈曲により発生するものと、繰り返し接触による摩耗が原因で発生するものとがある。
【0005】
一般に、ナイロン樹脂層が硬いと、繰り返し接触の摩耗によるピンホールはできにくくなるが、屈曲によるピンホールが発生し易くなる。一方、ナイロン樹脂層が柔らかいと、屈曲によるピンホールが発生し難いが、繰り返し接触による摩耗でピンホールができやすくなる。
【0006】
そのため、屈曲又は繰り返し接触のいずれに対しても、耐ピンホール性に優れたフィルムが強く望まれている。
【0007】
この問題を解決するべく、本出願人は、既にポリアミド及び耐屈曲剤を含有するポリアミド層を少なくとも有するポリアミド系フィルムを開発した(特許文献1)。
【0008】
しかしながら、更なる改善要望があり、屈曲及び繰り返し接触による耐ピンホール性に、より優れたポリアミド系多層延伸フィルムの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2017-2114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、屈曲及び繰り返し接触による耐ピンホール性に優れたポリアミド系多層延伸フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ポリアミド系多層延伸フィルムにおいて、ポリアミド系樹脂を含むA層、ポリアミド系樹脂及びポリエステル系エラストマーを含むB層、並びにバリア性樹脂を含むC層を少なくとも有することで、このポリアミド系多層延伸フィルムは屈曲及び繰り返し接触による耐ピンホール性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は下記のポリアミド系多層延伸フィルムを提供する。
【0013】
項1.
ポリアミド系樹脂を含み、ポリアミド系樹脂以外の成分が3重量%以下であるA層、ポリアミド系樹脂85~99重量%及びポリエステル系エラストマー1~15重量%を含むB層、並びにバリア性樹脂を含むC層を少なくとも有するポリアミド系多層延伸フィルム。
【0014】
項2.
前記A層が、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドを含む前記項1記載のポリアミド系多層延伸フィルム。
【0015】
項3.
前記バリア性樹脂が、エチレン-ビニルアルコール共重合体又は芳香族ポリアミドである前記項1又は2記載のポリアミド系多層延伸フィルム。
【発明の効果】
【0016】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、屈曲及び繰り返し接触による耐ピンホール性に優れる。
【0017】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、透明性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】繰り返し接触により発生するピンホールの評価に用いた測定装置の模式図を示す。
図2】錐状のアルミ製治具の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(1)ポリアミド系多層延伸フィルム
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、ポリアミド系樹脂を含み、ポリアミド系樹脂以外の成分が3重量%以下であるA層、ポリアミド系樹脂85~99重量%及びポリエステル系エラストマー1~15重量%を含むB層、並びにバリア性樹脂を含むC層を少なくとも有する。
【0020】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、屈曲及び繰り返し接触による耐ピンホール性に優れている。
【0021】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、更に透明性に優れる。
【0022】
以下、本発明のポリアミド系フィルムについて詳細に説明する。
【0023】
(1-1)ポリアミド系多層延伸フィルムのA層(PA層1)
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムのA層は、ポリアミド系樹脂を含み、ポリアミド系樹脂以外の成分が3重量%以下である。
【0024】
ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては特に限定されず、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド等を好ましく用いることができる。
【0025】
A層は、屈曲及び繰り返し接触による耐ピンホール性により優れる点で、脂肪族ポリアミドを含むことが好ましい。
【0026】
脂肪族ポリアミド
脂肪族ポリアミドとして、脂肪族ナイロン及びその共重合体が挙げられる。
【0027】
ポリカプラミド(ナイロン-6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン-7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン-9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン-11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン-12)等を用いることがこのましい。
【0028】
ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン-2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン-4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン-6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン-6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン-6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン-8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン-10,8)等を用いることがこのましい。
【0029】
カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン-6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン-6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-12/6,6)等を用いることがこのましい。
【0030】
エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6/6,6/6,10)等を用いることがこのましい。
【0031】
上記1種の脂肪族ポリアミドを使用しても良く、上記2種以上の脂肪族ポリアミドを混合して用いても良い。
【0032】
好ましい脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6/6,6(ナイロン6とナイロン6,6の共重合体)が挙げられる。より好ましくはナイロン-6、ナイロン-6/6,6であり、特に好ましくはナイロン-6である。
【0033】
2種以上の脂肪族ポリアミドとしてはナイロン-6とナイロン-6/6,6の組み合わせが好ましい。ナイロン-6を重量比で50~95程度含み、ナイロン-6/6,6を重量比で50~5程度含むことが好ましい。
【0034】
芳香族ポリアミド
ポリアミド系樹脂は芳香族ポリアミドをさらに含んでもよい。
【0035】
芳香族ポリアミドとして、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0036】
芳香族ポリアミドとして、好ましくはポリメタキシリレンアジパミド(MX-ナイロン)等の結晶性芳香族ポリアミドである。結晶性芳香族ポリアミドの具体例として、例えば、S-6001、S-6007、S-6121(いずれも三菱ガス化学株式会社製)が例示される。
【0037】
芳香族ポリアミドとしては、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる、非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)が挙げられる。
【0038】
非晶性芳香族ポリアミドとしては、好ましくはヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体等である。非晶性芳香族ポリアミドの具体例としては、シーラーPA(三井・デュポンポリケミカル株式会社製)が例示される。
【0039】
ポリアミド系樹脂の好ましい組成
ポリアミド系樹脂中の脂肪族ポリアミド(ナイロン6等)の含有量は、好ましくはポリアミドの量を100重量%として80~100重量%程度であり、より好ましくは80~99重量%程度である。ポリアミド中の脂肪族ポリアミドの含有量を上記範囲とすることにより、ポリアミド系フィルムの耐ピンホール性を向上させることができる。
【0040】
ポリアミド系樹脂が、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドを含有する場合、本発明のポリアミド系フィルムがより優れた延伸製膜性を示すことができる。
【0041】
脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとの好ましい組み合わせとしては、ナイロン-6と結晶性芳香族ポリアミド(MX-ナイロン等)との組み合わせ、ナイロン-6と非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)との組み合わせが挙げられる。
【0042】
ポリアミド系樹脂中の芳香族ポリアミド(MX-ナイロン又はアモルファスナイロン等)の含有量は、好ましくはポリアミドの量を100重量%として0~20重量%程度であり、より好ましくは1~20重量%程度である。
【0043】
ポリアミド系樹脂の好ましい相対粘度
ポリアミド系樹脂として、JIS K6920に準拠した測定方法により、96%H2SO4、1.0g/100ml、温度25℃の条件で測定した相対粘度が2.0~4.5のものを用いることが好ましく、2.5~4.5のものを用いることがより好ましい。ポリアミド系樹脂の相対粘度(JIS K6920)は、より好ましくは3.0~4.2である。ポリアミドの相対粘度がこの範囲を満たすことで、ポリアミド系多層延伸フィルムの屈曲による耐ピンホール性が良好である。
【0044】
2種以上のポリアミド系樹脂を混合して用いる場合、ポリアミド系樹脂の相対粘度は、混合される夫々のポリアミドの相対粘度を測定し、加重平均して得られた値を混合されたポリアミドの相対粘度とする。
【0045】
ポリアミド系樹脂以外の成分
A層は、繰り返し接触による耐ピンホール性の観点から、ポリアミド系樹脂以外の成分は3重量%以下であることが好ましい。ポリアミド系樹脂以外の成分が3重量%を超えると、繰り返し接触により耐ピンホール性が悪化するため好ましくない。
【0046】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムでは、前記「ポリアミド系樹脂を含み、ポリアミド系樹脂以外の成分が3重量%以下であるA層」は、言い換えると、A層はポリアミド系樹脂を97重量%以上含むことである。よって、本発明のポリアミド系多層延伸フィルムでは、「ポリアミド系樹脂を97重量%以上含むA層」と表しても良い。
【0047】
A層は、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、酸化防止剤等を好ましく用いることができる。
【0048】
(1-2)ポリアミド系多層延伸フィルムのB層(PA層2)
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムのB層は、ポリアミド系樹脂85~99重量%及びポリエステル系エラストマー1~15重量%を含む。本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、特にB層により、屈曲による耐ピンホール性(耐屈曲性)に優れる。
【0049】
ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては特に限定されず、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド等を好ましく用いることができる。耐ピンホール性により優れる点で、脂肪族ポリアミドが好ましい。
【0050】
脂肪族ポリアミド
脂肪族ポリアミドとして、脂肪族ナイロン及びその共重合体が挙げられる。
【0051】
ポリカプラミド(ナイロン-6)、ポリ-ω-アミノヘプタン酸(ナイロン-7)、ポリ-ω-アミノノナン酸(ナイロン-9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン-11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン-12)等を用いることがこのましい。
【0052】
ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン-2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン-4,6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン-6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン-6,10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン-6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン-8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン-10,8)等を用いることがこのましい。
【0053】
カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ナイロン-6/12)、カプロラクタム/ω-アミノノナン酸共重合体(ナイロン-6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-6/6,6)、ラウリルラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-12/6,6)等を用いることがこのましい。
【0054】
エチレンジアミンアジパミド/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン-2,6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6,6/6,10)、エチレンアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体(ナイロン-6/6,6/6,10)等を用いることがこのましい。
【0055】
上記1種の脂肪族ポリアミドを使用しても良く、上記2種以上の脂肪族ポリアミドを混合して用いても良い。
【0056】
好ましい脂肪族ポリアミドとしては、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6/6,6(ナイロン6とナイロン6,6の共重合体)が挙げられる。より好ましくはナイロン-6、ナイロン-6/6,6であり、特に好ましくはナイロン-6である。
【0057】
B層はポリアミド系樹脂85~99重量を含み、そのポリアミド系樹脂として、2種以上の脂肪族ポリアミドを組み合わせて使用することもできる。
【0058】
B層の2種以上の脂肪族ポリアミドとして、脂肪族ポリアミド樹脂(ナイロン-6等)とポリアミド系共重合体(ナイロン-6/6,6等)の組み合わせが好ましい。例えば、B層中に、脂肪族ポリアミド樹脂(ナイロン-6等)を重量比(重量%)で50~94程度含み、ポリアミド系共重合体(ナイロン-6/6,6等)を重量比で5~40程度含むことが好ましい。
【0059】
芳香族ポリアミド
ポリアミド系樹脂は、上記脂肪族ポリアミドと、芳香族ポリアミドとを混合して用いても良い。ポリアミド系樹脂は芳香族ポリアミドを任意成分として含んでも良い。
【0060】
ポリアミド系樹脂が、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドを含有する場合、本発明のポリアミド系多層延伸フィルムがより優れた延伸製膜性を示すことができる。
【0061】
芳香族ポリアミドとして、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミン等の芳香族ジアミンと、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる結晶性芳香族ポリアミドが挙げられる。
【0062】
芳香族ポリアミドとして、好ましくはポリメタキシリレンアジパミド等の結晶性芳香族ポリアミドである。結晶性芳香族ポリアミドの具体例として、例えば、S-6001、S-6007、S-6121(いずれも三菱ガス化学株式会社製)が例示される。
【0063】
また、上記芳香族ポリアミドとしては、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンとテレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸又はその誘導体との重縮合反応で得られる、非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)が挙げられる。
【0064】
芳香族ポリアミドとしては、好ましくはヘキサメチレンジアミン-テレフタル酸-ヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸の共重合体等である。非晶性芳香族ポリアミドの具体例としては、シーラーPA(三井・デュポンポリケミカル株式会社製)が例示される。
【0065】
脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドとの好ましい組み合わせとしては、ナイロン-6と結晶性芳香族ポリアミドとの組み合わせ、ナイロン-6と非晶性芳香族ポリアミド(アモルファスナイロン)との組み合わせが挙げられる。
【0066】
B層のポリアミド系樹脂中の脂肪族ポリアミドの含有量は、好ましくはポリアミドの量を100重量%として80~100重量%、より好ましくは90~100重量%程度である。ポリアミド中の脂肪族ポリアミドの含有量を上記範囲とすることにより、ポリアミド系フィルムの耐ピンホール性を向上させることができる。
【0067】
B層のポリアミド系樹脂が、脂肪族ポリアミド及び芳香族ポリアミドを含有する場合、ポリアミド中の芳香族ポリアミドの含有量は、任意成分として、ポリアミドの量を100重量%として0~20重量%が好ましく、0~10重量%がより好ましい。
【0068】
ポリアミド系樹脂の好ましい相対粘度
ポリアミド系樹脂として、JIS K6920に準拠した測定方法により、96%H2SO4、1.0g/100ml、温度25℃の条件で測定した相対粘度が2.5~4.5のものを用いることが好ましい。ポリアミド系樹脂の相対粘度(JIS K6920)は、より好ましくは3.0~4.5、更に好ましくは3.2~4.2である。ポリアミドの相対粘度がこの範囲を満たすことで、ポリアミド系多層延伸フィルムの屈曲による耐ピンホール性が良好である。
【0069】
2種以上のポリアミド系樹脂を混合して用いる場合、ポリアミド系樹脂の相対粘度は、混合される夫々のポリアミドの相対粘度を測定し、加重平均して得られた値を混合されたポリアミドの相対粘度とする。
【0070】
ポリエステル系エラストマー
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムのB層はポリエステル系エラストマーを1~15重量%を含み、これは耐屈曲剤として機能し、屈曲による耐ピンホール性を付与することができる。
【0071】
ポリエステル系エラストマーは、熱可塑性エラストマーであり、ゴム状弾性を有する物質としての熱可塑性材料である。
【0072】
ポリエステル系エラストマーの他にも、任意にポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、アイオノマー重合体等を併用することができる。
【0073】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムの屈曲による耐ピンホール性をより向上させることができることからポリエステル系エラストマーを使用し、任意に、好ましくはポリアミド系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマーを用いることができる。より好ましくはポリアミド系エラストマーを併用する。
【0074】
ポリエステル系エラストマーに加えて、他の熱可塑性エラストマーを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
ポリエステル系エラストマーは、本発明のポリアミド系多層延伸フィルムの屈曲による耐ピンホール性を低下させない範囲において改質が行われてもよい。ポリエステル系エラストマーの変性体であってもよい。
【0076】
ポリエステル系エラストマーにおける改質として、例えば、共重合やグラフト変性による改質、極性基の付与による改質等が挙げられる。
【0077】
極性基の付与は、グラフト変性により行われてもよい。このような極性基としては、例えば、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、ヒドロキシル基、アミノ基、オキソ基等が挙げられる。極性基は1種類で、又は複数の種類を組み合わせて付与することができる。従って、極性基が付与された変性体には、例えばポリエステル系エラストマーのエポキシ変性体、カルボキシ変性体、酸無水物変性体、ヒドロキシ変性体、アミノ変性体等が含まれる。
【0078】
ポリエステル系エラストマーとして、変性ポリエステル系エラストマーが挙げられる。変性ポリエステル系エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有する飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーが、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性されたものである。
【0079】
具体的には、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有率が58~73重量%である飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーを、ラジカル発生剤の存在下、不飽和カルボン酸又はその誘導体により変性処理して得られる変性ポリエステル系エラストマーである。不飽和カルボン酸又はその誘導体のグラフト反応及び末端付加反応により反応性基が導入されるため、多種の樹脂との化学結合性、水素結合性が向上する。
【0080】
飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントを含有するソフトセグメントと、ポリエステルを含有するハードセグメントとからなるブロック共重合体であり、ポリアルキレンエーテルグリコールセグメントの含有量が、該ポリエステル系エラストマー中の58~73重量%程度である。
【0081】
ソフトセグメントを構成するポリアルキレンエーテルグリコールとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2及び1,3-プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等を好ましく用いることができる。ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量は、400~6000程度が好ましい。
【0082】
不飽和カルボン酸又はその誘導体として、例えば、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸、その酸無水物、そのエステル又はその金属塩等が挙げられる。
【0083】
ラジカル発生剤として、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の過酸化物、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ化合物が挙げられる。
【0084】
飽和ポリエステル系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、不飽和カルボン酸又はその誘導体が0.01~30重量部、ラジカル発生剤が0.001~3重量部を含むことが好ましい。
【0085】
変性ポリエステル系エラストマーの調製方法は特に限定されない。例えば、特開2002-155135号公報等に記載されている方法により調製することができる。
【0086】
得られる変性ポリエステル系エラストマーのメルトフローレート(MFR)は、好ましくは40~300g/10分であることが好ましい。MFRは、JIS K7210に準拠した測定方法により、230℃、2.16kgの条件により測定される値とする。
【0087】
ポリエステル系エラストマーとして、特に無水マレイン酸変性ポリエステルエラストマーが好ましい。変性ポリエステル系エラストマーの市販品として、具体的には、テファブロック-GQ131(三菱ケミカル株式会社製)が挙げられる。
【0088】
任意成分の熱可塑性エラストマーとして好ましいポリアミド系エラストマーは、ポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントとからなるポリアミド系ブロック共重合体が挙げられる。
【0089】
ハードセグメントのポリアミド成分は、(1)ラクタム、(2)ω-アミノ脂肪族カルボン酸、(3)脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸、又は(4)脂肪族ジアミンと芳香族ジカルボン酸からなる群から選択される。ハードセグメントのポリアミド成分は、具体的には、ε-カプロラクタム等のラクタム、アミノヘプタン酸等の脂肪族ジアミン、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸を例示することができる。
【0090】
ポリアミド系ブロック共重合体のソフトセグメントを構成するポリオキシアルキレングリコールは、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシ-1,2-プロピレングリコール等が挙げられる。
【0091】
ポリアミド系ブロック共重合体の融点は、ポリアミド成分によって構成されるハードセグメントとポリオキシアルキレングリコール成分によって構成されるソフトセグメントの種類と比率によって決定される。通常、120~180℃の範囲のものが好ましい。
【0092】
ポリアミド系ブロック共重合体を積層2軸延伸ポリアミド系フィルムの構成成分にすることにより、積層2軸延伸ポリアミド系フィルムの耐屈曲疲労性、特に、低温環境下における耐屈曲疲労性の改善に効果がある。
【0093】
ポリオレフィン系エラストマーとしては、ポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト変性あるいは共重合変性することによって得られる樹脂が挙げられる。
【0094】
ポリオレフィン系エラストマーのベースポリマーとして使用可能なポリオレフィン樹脂としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンの単独重合体、これら2種以上のランダム共重合体、これら2種以上のブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと(メタ)アクリル酸エチルとの共重合体等のエチレン・極性モノマー共重合体等から選ばれる重合体が挙げられる。
【0095】
上記ベースポリマーとして使用可能なポリオレフィン樹脂として、より具体的には、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン(エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの共重合体)、ポリプロピレン(単独重合体、ランダム重合体、ブロック共重合体等)、ポリ-1-ブテン、ポリ-4-メチル-1-ペンテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等を挙げることができる。
【0096】
これらは如何なる触媒系で製造されたものであっても良い。例えば上記直鎖低密度ポリエチレンにおいては、メタロセン系触媒あるいはマルチサイト触媒で製造されたものが使用できる。
【0097】
ポリオレフィン系エラストマーは、ベースポリマーであるポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸をグラフトすることにより得ることができ、また、オレフィンと少量の不飽和カルボン酸を共重合変性することによって得ることができる。
【0098】
グラフト或いは共重合変性に使用される不飽和カルボン酸又はその無水物として、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、ノルボルネン-2、3-ジカルボン酸無水物等を挙げることができる。
【0099】
特に酸無水物が好ましく、取り分け無水マレイン酸が好ましい。
【0100】
ポリオレフィン系エラストマーは、無水マレイン酸変性エチレン共重合体であることが好ましい。無水マレイン酸変性エチレン共重合体としては、無水マレイン酸グラフト変性エチレン共重合体、無水マレイン酸-エチレン共重合体が挙げられ、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物を無水マレイン酸変性したものを好適に用いることができる。
【0101】
ポリアミド系樹脂及びポリエステル系エラストマーの含有量
B層中のポリアミド系樹脂の含有量は、B層全体の重量を100重量%として、85~99重量%である。B層中のポリアミド系樹脂が、この含有量の範囲を満たすことで、屈曲による耐ピンホール性が良好である。B層中のポリアミド系樹脂の含有量は、90~98重量%が好ましい。
【0102】
B層中のポリエステル系エラストマーの含有量は、B層全体の重量を100重量%として、1~15重量%である。B層中のポリエステル系エラストマーが、この含有量の範囲を満たすことで、屈曲による耐ピンホール性が良好である。B層中のポリエステル系エラストマーの含有量は、2~10重量%が好ましい。
【0103】
B層は、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じて他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、酸化防止剤等を好ましく用いることができる。
【0104】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、特にB層により、屈曲による耐ピンホール性(耐屈曲性)に優れる。
【0105】
(1-3)ポリアミド系多層延伸フィルムのC層(バリア層)
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムのC層は、バリア性樹脂を含む。
【0106】
前記バリア性樹脂は、好ましくはエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)及び/又は芳香族ポリアミドである。前記バリア性樹脂は、好ましくはEVOH及び/又はポリメタキシリレンアジパミド(MX-ナイロン)であり、より好ましくはEVOHである。
【0107】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、C層を含むことで、ポリアミド系多層延伸フィルムのガスバリア性が優れている。C層は、EVOHとポリメタキシリレンアジパミドとを、単独で用いても良く、混合して用いてもよい。
【0108】
エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)として、特に限定されない。EVOHは、エチレン含量が、好ましくは55モル%以下であり、より好ましくは20~50モル%、更に好ましくは25~44モル%である。
【0109】
EVOHは、酢酸ビニル成分のケン化度が、好ましくは90モル%以上であり、より好ましくは95モル%以上である。
【0110】
EVOHには、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、更に少量のプロピレン、イソブテン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のα-オレフィン;不飽和カルボン酸又はその誘導体(例えば、塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、ニトリル、アミド、無水物);不飽和スルホン酸又はその塩等のコモノマーを含んでもよい。
【0111】
EVOHのメルトインデックス(MI)は、好ましくは0.5~50g/10分(210℃、2,160g荷重)であり、より好ましくは1~35g/10分(210℃、2,160g荷重)である。MIがこの範囲を満たすことで、溶融押出しに支障がない粘度となり、製膜性が良好である。
【0112】
EVOHの市販品としては、例えば、DC3203FB、DT2904RB(いずれも日本合成化学(株)製)等が挙げられる。
【0113】
ポリメタキシリレンアジパミド(MX-ナイロン)等の芳香族ポリアミドを好ましく用いることができる。
【0114】
芳香族ポリアミドとしてはS-6001、S-6007、S-6121(いずれも三菱ガス化学(株)製)等が例示される。
【0115】
C層は、バリア層として、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、更に変性エチレン酢酸ビニル共重合体、メタクリル酸共重合体アイオノマー等の他の成分を含有していてもよい。C層に他の成分を含有する場合、この成分の含有量は、通常、EVOH及び/又はMX-ナイロンの合計100重量部に対して、好ましくは15重量部以下、より好ましくは7.5重量部以下である。
【0116】
(1-4)ポリアミド系多層延伸フィルムの層構成
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、ポリアミド系樹脂を含むA層、ポリアミド系樹脂85~99重量%及びポリエステル系エラストマー1~15重量%を含むB層、並びにバリア性樹脂を含むC層を少なくとも有する。
【0117】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムの態様は、好ましくはA層/B層/C層の順で積層されてなる層構成である。本発明のポリアミド系多層延伸フィルムの態様は、A層(PA層1)/B層(PA層2)/C層(バリア層)/B層(PA層2)/A層(PA層1)等、5層以上で積層されてなる層構成も可能である。
【0118】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムの総厚みは、好ましくは10~50μm程度であり、より好ましくは10~30μm程度である。
【0119】
A層(PA層1)の厚みは、好ましくは0.5~30μm程度、より好ましくは0.5~20μm程度である。A層の厚みは、両側の層の合計厚みとして考えても良い。
【0120】
B層(PA層2)の厚みは、好ましくは0.5~30μm程度、より好ましくは0.5~20μm程度である。B層の厚みは、両側の層の合計厚みとして考えても良い。
【0121】
C層(バリア層)の厚みは、好ましくは0.5~20μm程度、より好ましくは0.5~15μm程度である。
【0122】
5層(A層/B層/C層/B層/A層)の場合、各層の厚みは、A層(PA層1)は0.5~29.5μm程度が好ましく、B層(PA層2)は0.5~29.5μm程度が好ましく、C層(バリア層)は0.5~20μm程度が好ましい。A層はより好ましくは0.5~19.5μm程度の厚みであり、B層はより好ましくは0.5~19.5μm程度の厚みであり、C層はより好ましくは0.5~15μm程度の厚みである。A層及びB層の各厚みは、両側の層の合計厚みとして考えても良い。
【0123】
(2)ポリアミド系多層延伸フィルムの製造方法
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムを製造する方法としては特に限定されない。従来公知の積層体を形成する製造方法を好ましく採用することができる。
【0124】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムを製造するには、A層(PA層1)、B層(PA層2)及びC層(バリア層)を形成するための樹脂組成物を、例えばA層/B層/C層/B層/A層等の順序になるように、Tダイスより冷却水が循環するチルロール上に共押出する。これにより、フラット状のポリアミド系多層延伸フィルムを作製することができる。
【0125】
得られたポリアミド系多層延伸フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)してもよい。延伸倍率は、好ましくは縦延伸(MD)2.5~4.5倍程度、好ましくは横延伸(TD)2.5~5.0倍程度である。
【0126】
逐次二軸延伸の場合、ポリアミド系多層延伸フィルムを50~80℃のロール延伸機により、2.5~4.5倍に縦延伸し、80~140℃の雰囲気のテンター延伸機により2.5~5.0倍に横延伸せしめ、引き続いて同テンターにより180~220℃雰囲気中で熱処理するとよい。
【0127】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、一軸延伸又は二軸延伸(同時二軸延伸、逐次二軸延伸)してもよく、得られたポリアミド系多層延伸フィルムは、必要ならばその両表面又は片表面にコロナ放電処理を施すこともできる。
【0128】
(3)ポリアミド系多層延伸フィルムの性能及び用途
屈曲による耐ピンホール性
「屈曲による耐ピンホール性」は、後述の実施例に記載のように、フィルムに対して、ゲルボフレックステスターを用いて評価する。本発明のポリアミド系多層延伸フィルムでは、5℃の条件下において1000回屈曲の耐ピンホール性の評価で発生するピンホール数は、好ましくは5個以下である。
【0129】
摩耗による耐ピンホール性
「摩耗による耐ピンホール性」は、後述の実施例に記載の方法により評価する。ピンホールができるまでの摺動回数は250回以上が好ましい。
【0130】
ヘイズ値
「ヘイズ値」は、後述の実施例に記載のように、フィルムに対して、JIS K7136(2000)に準拠して測定する。ヘイズ値は、全光線透過率に対する拡散透過率の比(割合)として定義される。本発明のポリアミド系多層延伸フィルムでは、ヘイズ値(%)は、好ましくは7%以下である。
【0131】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、屈曲及び摩耗による耐ピンホール性に優れ、透明性も優れることから、重量物の包装に好適である。本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、取り分け、餅、ウィンナー等の食品の包装等に好適である。
【0132】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、また、低温の状態で輸送される冷凍食品の包装にも好適に用いることができる。
【実施例
【0133】
以下に、本発明を、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。
【0134】
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0135】
(1)実施例で使用した原料
表1に、実施例及び比較例で用いた原料を示す。
【0136】
【表1】
【0137】
(2)実施例1,2及び比較例1~3
上記表1に示した原料を用い、表2に示した配合により、A層(PA層1)、B層(PA層2)、及びC層(バリア層)を形成するための樹脂組成物を調製した。
【0138】
A層を形成するための樹脂組成物には、更に、アンチブロッキング剤として平均粒子径3μmのシリカを900ppm、滑剤としてエチレンビスステアリン酸アミドを300ppm添加した。
【0139】
実施例及び比較例の樹脂組成物を、夫々250℃の押出機に供給し、A層/B層/C層/B層/A層の順序となるようにフィードブロックにて重ね合わせ250℃のTダイスから、冷却水が循環するチルロール上にシート状に押出し、A層/B層/C層/B層/A層の層構成の5層のフィルムを作製した。
【0140】
次いで、得られたフィルムを65℃のロール延伸機により3.0倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸した。
【0141】
更に同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して、厚さ15μmの表2に示す厚み比のA層/B層/A層の層構成の3層のポリアミド系多層延伸フィルムを作製した。
【0142】
実施例及び比較例のポリアミド系多層延伸フィルムの性能を評価した。
【0143】
(3)フィルムの屈曲による耐ピンホール性(耐屈曲性試験)
ポリアミド系多層延伸フィルムの屈曲による耐ピンホール性を、理化学工業(株)製のゲルボフレックステスターを用いて測定した。
【0144】
折り径150mm、長さ300mmの筒状に製袋したポリアミド系多層延伸フィルムを、ゲルボフレックステスターに装着した。これについて、最初の88.9cmで440°の捻りを与え、その後63.5cmは直線水平運動となる繰り返しの屈曲直線運動を5℃の条件下で試験速度40回/分にて1000回繰り返した後、浸透液を用いてピンホールの数を調べた。
【0145】
ピンホール数の測定は、サンプルの中央部における300cm2の箇所で行った。3枚のサンプルについてピンホールの数を測定し、平均値を測定結果とした。
【0146】
サンプルフィルムにおいて、ピンホールの個数が5個以下であることを合格とした。
【0147】
(4)フィルムの摩耗による耐ピンホール性(耐摩耗性試験)
形が錐状のアルミ製の治具に、テープ等を用いてフィルムを装着し、錐状の治具の頂点を、フィルムを介してボール紙(コクヨCampus 板目 美膿判用 430g/m2)に接触させた。頂点のRは摺動方向R=0.1~1.0mm、摺動方向と直角の方向R=0.1~1.0mmとした。次に、治具に63gの荷重を乗せた。湿度65%の条件下で、治具を2700mm/分の速度で、かつ移動距離45mmの範囲でボール紙に対して平行に摺動させ、摺動回数50回単位で測定し、ピンホールが開いた時点での回数を測定した。例えば、300回で開いて250回で開かない場合は300回とした。
【0148】
ピンホールの発生は、フィルムに治具の頂点が当たっていたところに浸透液を滴下して、白色紙の上で浸透するか否かにより判定した。
【0149】
サンプルフィルムにおいて、250回以上を合格とした。
【0150】
図1に測定装置の模式図を示し、図2に錐状のアルミ製治具の一例を示す。
【0151】
(5)フィルムのヘイズ値(透明性試験)
ポリアミド系多層延伸フィルムのヘイズ値を、ヘイズ値をJIS K7136(2000)に準拠して測定した。測定機器として、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製のNDH-5000)を用いた。
【0152】
ヘイズ値は、全光線透過率に対する拡散透過率の比(割合)として定義され、次式の通り、求めることができる。各サンプルについて3回ずつ測定し、平均値を算出した。
【0153】
ヘイズ値(%)=(拡散透過率)/(全光線透過率)×100
サンプルフィルムにおいて、ヘイズ値が7%以下であることを合格とした。
【0154】
(6)ポリアミド系多層延伸フィルムの評価結果
耐屈曲性試験及び透明性試験の結果を表2に示す。
【0155】
【表2】
【0156】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、実施例1及び2に例示され、A層はポリアミド系樹脂(PA-1及びMXD6)を含み、ポリアミド系樹脂以外の成分が3重量%以下であり、B層はポリアミド系樹脂(PA-1及びPA-2)85~99重量%及びポリエステル系エラストマー(PEE)1~15重量%を含み、C層はバリア性樹脂(EVOH)を含む。
【0157】
本発明のポリアミド系多層延伸フィルムは、これらの特徴により、屈曲による耐ピンホール性、繰り返し接触による耐ピンホール性及び透明性に優れる。
【0158】
一方、比較例1及び2は、B層のポリアミド系樹脂が85重量未満である場合、B層のポリアミド系樹脂が99重量%を超える場合である。言い換えると、比較例1及び2は、B層のポリエステル系エラストマーが1重量%未満である場合、B層のポリエステル系エラストマーが15重量%を超える場合である。比較例1及び2のフィルムは、屈曲による耐ピンホール性や透明性が良好でなかった。
【0159】
また、比較例3のフィルムは、A層にポリエステル系エラストマー(PEE)を4重量%含んでいるため、繰り返し接触によるピンホール性が十分ではなかった。
図1
図2