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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】圧延接合体及び圧延接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 1/22 20060101AFI20221108BHJP
   C23F 4/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B21B1/22 B
C23F4/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018075678
(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2019181514
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390003193
【氏名又は名称】東洋鋼鈑株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畠田 貴文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕介
(72)【発明者】
【氏名】黒川 哲平
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-194571(JP,A)
【文献】特許第5410646(JP,B1)
【文献】特許第6237950(JP,B1)
【文献】国際公開第2017/057698(WO,A1)
【文献】特開昭62-003806(JP,A)
【文献】特開2004-306098(JP,A)
【文献】特開平05-146881(JP,A)
【文献】特開平01-317692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属板と第2金属板を圧延接合することにより、第1金属層と第2金属層の2層構造を有する圧延接合体を製造する方法であって、
前記第1金属板の表面硬度Hvが前記第2金属板の表面硬度Hvより低く、
前記圧延接合体の総厚みが0.1mm~0.5mmであり、
前記第1金属層の前記第1金属板に対する伸び量をΔL(mm)とし、前記第2金属層の前記第2金属板に対する伸び量をΔL(mm)とし、前記圧延接合体の総厚みをT(mm)としたとき、下記式(1)を満たすように圧延接合することを特徴とし、熱処理工程を有さない、圧延接合体の製造方法。
0<(ΔL/ΔL)/T≦38 (1)
【請求項2】
前記第1金属層が、銅、銅合金、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、前記第2金属層が、ステンレス、チタン又はチタン合金からなる、請求項1に記載の圧延接合体の製造方法。
【請求項3】
前記第1金属層が銅からなり、前記第2金属層がステンレスからなる、請求項1又は2に記載の圧延接合体の製造方法。
【請求項4】
前記第2金属板の表面硬度Hvと前記第1金属板の表面硬度Hvとの硬度差が35~305である、請求項1~3のいずれか1項に記載の圧延接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延接合体及び圧延接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2種以上の金属板を圧延接合した圧延接合体(金属積層材、クラッド材)は、単一材料では得ることができない複合特性を持つため、様々な分野で利用されている。このような圧延接合体として、例えば、銅(Cu)やアルミニウム(Al)等の軟質層と、ステンレス(SUS)やチタン(Ti)等の硬質層とからなる圧延接合体が知られている。
【0003】
SUSとCuのクラッド材は、SUSの機械的強度及び成形加工性と、Cuの放熱性及び電気伝導性の両方の特性を備える点で好ましく、例えば、モバイル電子機器等の電子機器用の内部の放熱部材として用いられている。SUSとCuのクラッド材として、例えば、特許文献1~2のものが知られている。
【0004】
特許文献1には、オーステナイト系ステンレスにより形成される第1層と、Cu又はCu合金により形成され、前記第1層に積層される第2層と、オーステナイト系ステンレスにより形成され、前記第2層の前記第1層とは反対側に積層される第3層とが圧延接合されたクラッド材からなり、前記第2層の厚みは、前記クラッド材の厚みの15%以上であるシャーシが開示されている。
【0005】
特許文献2には、ステンレス鋼により構成される第1層と、Cu又はCu合金により構成され、前記第1層に圧延接合された第2層とを備え、JIS H 0501の比較法により測定される前記第2層の結晶粒度が、0.150mm以下であるクラッド材が開示されており、実施例において、SUS/Cu/SUSのクラッド材が開示されている。
【0006】
しかしながら、例えば特許文献1や2の実施例に記載されているSUS/Cu/SUSのような3層材は、接合後の圧延接合体に反りが生じにくいのに対し、SUS/Cuのように硬質層と軟質層からなる2層材においては大きな反りが生じやすい。接合後の圧延接合体において大きな反りが生じた場合、その後形状修正を施したとしても反りが残るため、2層材の実用化は困難であった。3層材で反りが生じにくい理由は、表裏が対称な構造であり、圧延時に表裏の伸び量が変わらないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5410646号公報
【文献】特許第6237950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のように、軟質層と硬質層のように、硬度差のある2種の金属層からなる2層構造を有する圧延接合体においては、接合後の圧延接合体に反りが生じやすいという問題があった。そして、接合後の圧延接合体において大きな反りが生じた場合、その後形状修正を施したとしても反りが残るため、特に、圧延接合体を平坦性が要求される用途に用いる場合、好ましくないが、硬度差のある2種の金属層からなる2層構造を有する圧延接合体においては反りを制御することは難しく、具体的解決方法が求められていた。そこで本発明は、反りを制御した圧延接合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、圧延接合において、各金属層の伸び量の比率を特定の範囲に制御することで反りを制御できることを見出し、発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)第1金属板と第2金属板を圧延接合することにより、第1金属層と第2金属層の2層構造を有する圧延接合体を製造する方法であって、
前記第1金属板の表面硬度Hvが前記第2金属板の表面硬度Hvより低く、
前記第1金属層の前記第1金属板に対する伸び量をΔL(mm)とし、前記第2金属層の前記第2金属板に対する伸び量をΔL(mm)とし、前記圧延接合体の総厚みをT(mm)としたとき、下記式(1)を満たすように圧延接合することを特徴とする、圧延接合体の製造方法。
0<(ΔL/ΔL)/T≦38 (1)
(2)前記圧延接合体の総厚みが0.1mm~0.5mmである、前記(1)に記載の圧延接合体の製造方法。
(3)前記第1金属層が、銅、アルミニウム又はその合金からなり、前記第2金属層が、ステンレス、チタン、チタン合金又はニッケル合金からなる、前記(1)又は(2)に記載の圧延接合体の製造方法。
(4)前記第1金属層が銅からなり、前記第2金属層がステンレスからなる、前記(1)~(3)のいずれかに記載の圧延接合体の製造方法。
(5)前記第2金属板の表面硬度Hvと前記第1金属板の表面硬度Hvとの硬度差が35~305である、前記(1)~(4)のいずれかに記載の圧延接合体の製造方法。
(6)第1金属層と第2金属層の2層構造を有する圧延接合体であって、
前記第1金属層の表面硬度Hvが前記第2金属層の表面硬度Hvより低く、
下記反り試験により測定される反り半径が43.8mm以上である、圧延接合体。
反り試験:圧延接合体を切り出したサンプルを第1金属層が上面に位置するように水平面に置き、水平面からのサンプルの高さが最大となる点の高さを反り量とし、該反り量と、円弧長に相当するサンプルの長さから、該円弧の半径に相当する反り半径rを求める。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反りを制御した圧延接合体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】反り試験の側面模式図である。
図2】反り半径の算出方法の参考図である。
図3】実施例1~17及び比較例1の圧延接合体について、伸び比率/総厚みと、反り半径の関係を示すグラフである。
図4】参考例における、放熱性の評価方法を示す図である。
図5】参考例における、Cu/SUSの2層材及びSUS/Cu/SUSの3層材の放熱性の評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、第1金属板と第2金属板を圧延接合することにより、第1金属層と第2金属層の2層構造を有する圧延接合体を製造する方法に関する。
【0013】
圧延接合体は、第1金属層と第2金属層の2層からなる。第1金属層の表面硬度Hvは、第2金属層の表面硬度Hvより低い。
【0014】
圧延接合体の第1金属層は、軟質層であり、表面硬度Hvが第2金属層の表面硬度Hvより低い。第1金属層に用いられる第1金属材としては、特に限定されずに、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)及びこれらの合金等が挙げられるが、高い放熱性を示す銅、アルミニウム及びこれらの合金が好ましい。
【0015】
第1金属材として銅又はアルミニウムを用いる場合、放熱性をより高めるという観点からは、純度が高い純銅又は純アルミニウムが好ましい。具体的には、銅又はアルミニウムの純度は、好ましくは99.0質量%以上であり、より好ましくは99.5質量%以上である。純銅としては、例えば、JISに規定のJIS-H3510(C1011)、JIS-H3100(C1020)に規格される無酸素銅、及びJIS-H3100(C1100)に規格されるタフピッチ銅を用いることができる。純銅中の、銅以外の添加金属元素の合計含有量は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、特に好ましくは0.15質量%以下である。また、純アルミニウムとしては、例えば、JISに規定の1000系の純アルミニウムを用いることができる。純アルミニウム中の、アルミニウム以外の添加金属元素の合計含有量は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、特に好ましくは0.15質量%以下である。
【0016】
銅合金としては、例えば、銅以外の金属元素として、Sn、Mn、Cr、Zn、Zr、Ni、Si、Mg及びAgから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を、添加金属元素の合計含有量1質量%超で含有する銅合金を用いることができる。
【0017】
アルミニウム合金としては、アルミニウム以外の金属元素として、Mg、Mn、Si及びCuから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を、添加金属元素の合計含有量1質量%超で含有するアルミニウム合金を用いることができる。アルミニウム合金としては、例えば、JISに規定のAl-Cu系合金(2000系)、Al-Mn系合金(3000系)、Al-Si系合金(4000系)、Al-Mg系合金(5000系)、Al-Mg-Si系合金(6000系)及びAl-Zn-Mg系合金(7000系)を用いることができる。
【0018】
圧延接合体の第2金属層は、硬質層であり、表面硬度Hvが第1金属層の表面硬度Hvより高い。第2金属層に用いられる第2金属材としては、特に限定されずに、例えば、薄型化と高強度化の観点からステンレス(SUS)、チタン(Ti)(純チタン)又はチタン合金、ニッケル合金等が好ましい。また、放熱性の観点から銅合金等、軽量性の観点からアルミニウム合金、マグネシウム合金等を用いても良い。
【0019】
ステンレスとしては、SUS304、SUS201、SUS316、SUS316L及びSUS430等を用いることができる。ステンレスとしては、所望の表面硬度Hvに応じて、特に限定されずにBA材、1/2H材、3/4H材等を用いることができる。
【0020】
第2金属材としてチタンを用いる場合、圧延接合体における反りの制御という観点から、接合時の伸び量が大きく、第1金属材との伸び比率を小さくできる、純度が高い純チタンが好ましい。具体的には、チタンの純度は、好ましくは99.0質量%以上であり、より好ましくは99.5質量%以上である。純チタンとしては、チタン以外の添加金属元素の合計含有量が1質量%以下である純チタンが好ましい。純チタン中の、チタン以外の添加金属元素の合計含有量は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、特に好ましくは0.15質量%以下である。純チタンとしては、例えばJIS H 4600に規定の1~4種の純チタンを用いることができる。
【0021】
チタン合金としては、チタン以外の金属元素として、V、Cr、Sn、Al、Mo、Zr、Pdから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を、添加金属元素の合計含有量1質量%超で含有するチタン合金を用いることができる。チタン合金としては、例えばα型やβ型、α+β型等を用いることができ、強度の観点からβ型やα+β型、加工性の観点からα型やα+β型が好ましい。
【0022】
ニッケル合金としては、ニッケル以外の金属元素として、V、Cr、Si、Al、Ti、Mo、Mn、Zn、Sn、Cu、Co、Feから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を、添加金属元素の合計含有量1質量%超で含有するニッケル合金を用いることができる。ニッケル合金としては、例えばハステロイ等を用いることができる。
【0023】
銅合金としては、例えば、銅以外の金属元素として、Sn、Mn、Cr、Zn、Zr、Ni、Si、Mg及びAgから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を、添加金属元素の合計含有量1質量%超で含有する銅合金を用いることができる。
【0024】
アルミニウム合金としては、アルミニウム以外の金属元素として、Mg、Mn、Si及びCuから選ばれる少なくとも1種の添加金属元素を、添加金属元素の合計含有量1質量%超で含有するアルミニウム合金を用いることができる。アルミニウム合金としては、例えば、JISに規定のAl-Cu系合金(2000系)、Al-Mn系合金(3000系)、Al-Si系合金(4000系)、Al-Mg系合金(5000系)、Al-Mg-Si系合金(6000系)及びAl-Zn-Mg系合金(7000系)を用いることができる。
【0025】
圧延接合体の第1金属層と第2金属層の組み合わせとしては、第1金属層が、銅、アルミニウム又はその合金からなり、第2金属層が、ステンレス、チタン、チタン合金又はニッケル合金からなる組み合わせ(Cu/SUS、Cu/Ti、Cu/Ni、Al/SUS、Al/Ti、Al/Ni)が好ましく、第1金属層が銅からなり、第2金属層がステンレスからなる組み合わせがより好ましい。
【0026】
本発明の圧延接合体の製造方法では、第1金属板と第2金属板を用意し、これらを圧延接合することにより、第1金属層と第2金属層の2層構造を有する圧延接合体を製造する。
【0027】
本発明の圧延接合体の製造方法において用いられる第1金属板(原板)は、圧延接合体の第1金属層について前記の第1金属材の板材である。
【0028】
第1金属板の厚みは、特に限定されずに、通常0.01mm~0.8mmであり、下限は好ましくは0.025mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、特に放熱部材用としては0.075mm以上が好ましい。上限はより好ましくは0.5mm以下であり、さらに好ましくは0.45mm以下、特に好ましくは0.4mm以下である。第1金属板の厚みは、マイクロメータなどによって測定可能であり、第1金属板の表面上からランダムに選択した10点において測定した厚みの平均値をいう。
【0029】
第1金属板の表面硬度Hvは、第2金属板の表面硬度Hvより低ければ特に限定されずに、例えば下限は19以上であり、反りの抑制の観点から、30以上が好ましい。成形加工性及び接合強度の観点から、上限は200以下、好ましくは170以下である。表面硬度Hvは、例えばマイクロビッカース硬度計を用い、JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験-試験方法)に準じて測定することができる。
【0030】
本発明の圧延接合体の製造方法において用いられる第2金属板(原板)は、圧延接合体の第2金属層について前記の第2金属材の板材である。
【0031】
第2金属板の厚みは、特に限定されずに、通常0.01mm~0.5mmであり、下限は好ましくは0.025mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、上限は好ましくは0.45mm以下、より好ましくは0.4mm以下である。第2金属板の厚みは、前記の第1金属板と同様にして測定できる。
【0032】
第2金属板の表面硬度Hvは、第1金属板の表面硬度より高いこと以外は特に限定されずに、例えば機械強度の観点から、下限は50以上であり、好ましくは60以上である。成形加工性及び接合強度の観点から、上限は400以下、好ましくは370以下である。例えばステンレスのとき、表面硬度Hvは180~400が好ましく、チタン又はチタン合金のとき、表面硬度Hvは110~380が好ましい。第2金属板の表面硬度Hvは、前記の第1金属板と同様にして測定できる。
【0033】
第2金属板の表面硬度Hvと第1金属板の表面硬度Hvとの硬度差は、好ましくは35~305であり、より好ましくは35~260である。圧延接合体における反りの制御という観点からは、硬度差は低い方が好ましい。硬度差がこの範囲内であると、圧延接合体において反りを十分に制御することができ、良好な平坦性を確保できる。なお、接合後の圧延接合体の第1金属層及び第2金属層のそれぞれの表面硬度Hvは、原板の第1金属板及び第2金属板の調質が硬質(例えばH材)のときはそれぞれの原板とほぼ同等となり、調質が軟質(例えばO材、焼鈍材)のときはそれぞれの原板より高くなる傾向がある。
【0034】
本発明の方法において、圧延接合体は、第1金属板及び第2金属板を冷間圧延接合、熱間圧延接合、表面活性化接合等の各種の方法により互いに接合して製造することができる。
【0035】
本発明の方法は、圧延接合体の第1金属層の第1金属板に対する伸び量をΔL(mm)とし、圧延接合体の第2金属層の第2金属板に対する伸び量をΔL(mm)とし、圧延接合体の総厚みをT(mm)としたとき、下記式(1)を満たすように、第1金属板及び第2金属板を圧延接合することを特徴とする。なお、下記式(1)において、ΔL/ΔL)/Tの下限は、特に限定されないが、0より大きい。(ΔL/ΔL)/Tは好ましくは35以下であり、より好ましくは33以下、さらに好ましくは28以下である。
0<(ΔL/ΔL)/T≦38 (1)
【0036】
圧延接合体の第1金属層の伸び量ΔL(mm)と、第2金属層の伸び量ΔL(mm)の伸び比率(ΔL/ΔL)は、好ましくは1.1~38であり、より好ましくは1.1~19であり、特に好ましくは1.1~13である。
【0037】
本発明の方法では、式(1)を満たすように第1金属板と第2金属板を圧延接合することにより、得られる圧延接合体において反りを制御することができる。
【0038】
圧延接合体の第1金属層の伸び量ΔL(mm)は、圧延接合による、原板の第1金属板からの伸び量をいう。伸び量ΔL(mm)は、例えば標点間距離150mmのとき、0.11mm~25.0mmであり、好ましくは0.11mm~15.0mmである。伸び量ΔLは、例えば、第1金属板に所定の標点間距離(例えば150mm)及び所定の間隔(例えば10mm間隔)でケガキし、圧延接合後の第1金属層について、第1金属板からの伸び量(mm)を測定することで決定できる。標点間距離が100~250mmの間においては伸び量は標点間距離にほぼ比例する。
【0039】
圧延接合体の第2金属層の伸び量ΔL(mm)は、圧延接合による、原板の第2金属板からの伸び量をいう。伸び量ΔL(mm)は、例えば標点間距離150mmのとき、0.1mm~20.0mmであり、好ましくは0.1mm~10.0mmである。伸び量ΔLは、前記の伸び量ΔLと同様にして測定できる。伸び量ΔLは、通常、伸び量ΔLより小さい。
【0040】
圧延接合体の総厚みT(mm)は、特に限定されずに、通常0.05mm~1.0mmであり、好ましくは0.1mm~0.5mmである。総厚みTの下限は、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.15mm以上であり、上限は、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.45mm以下である。圧延接合体の総厚みTは、圧延接合体上の任意の30点における厚みをマイクロメータ等で測定し、得られた測定値の平均値をいう。特に放熱部材用途として、高強度化及び軽量化、薄肉化の観点から上記範囲が好ましい。
【0041】
前記のように、接合方法としては、冷間圧延接合、熱間圧延接合、表面活性化接合等を用いることができる。
【0042】
冷間圧延接合法の場合、第1金属板と第2金属板の接合面にブラシ研磨などを施した後、両者を重ねあわせて冷間圧延しながら接合して、圧延接合体を製造することができる。冷間圧延の工程は多段階で行ってもよい。この方法では、最終的な圧下率(接合前原板と圧延接合体の厚みより算出される圧下率)として20%~90%の範囲で圧延接合される。冷間圧延接合の場合、接合後に安定化熱処理を施すことが好ましい。
【0043】
温間圧延接合法の場合、冷間圧延接合法と同様に接合面にブラシ研磨などを施した後、両者あるいは片方を200℃~500℃に加熱して重ねあわせて温間圧延し接合することで、圧延接合体を製造することができる。この方法では、最終的な圧下率は15%~40%程度となる。
【0044】
表面活性化接合法(真空表面活性化接合法も同義)の場合、接合面をスパッタエッチングし、スパッタエッチングした表面同士を圧延接合することによって、圧延接合体を製造することができる。
【0045】
以上のように、圧延接合体を得る接合方法は限られないが、圧延荷重が比較的低い表面活性化接合では、反りがないか、又は反りが小さい圧延接合体の製造が可能であるため、接合方法としては表面活性化接合が好ましい。したがって、本発明の圧延接合体の製造方法は、好ましくは、第1金属板及び第2金属板の接合面をスパッタエッチングする工程と、スパッタエッチングした表面同士を、式(1)を満たすように圧延接合する工程を含む。以下、表面活性化接合法について説明する。
【0046】
スパッタエッチング処理では、第1金属板の接合面と第2金属板の接合面をそれぞれスパッタエッチングする。
【0047】
スパッタエッチング処理は、具体的には、第1金属板と第2金属板を、幅100mm~600mmの長尺コイルとして用意し、接合面を有する第1金属板と第2金属板をそれぞれアース接地した一方の電極とし、絶縁支持された他の電極との間に1MHz~50MHzの交流を印加してグロー放電を発生させ、且つグロー放電によって生じたプラズマ中に露出される電極の面積を前記の他の電極の面積の1/3以下として行う。スパッタエッチング処理中は、アース接地した電極が冷却ロールの形をとっており、各搬送材料の温度上昇を防いでいる。
【0048】
スパッタエッチング処理では、真空中で第1金属板と第2金属板の接合する面を不活性ガスによりスパッタすることにより、表面の吸着物を完全に除去し、且つ表面の酸化膜の一部又は全部を除去する。酸化膜は必ずしも完全に除去する必要はなく、一部残存した状態であっても十分な接合力を得ることができる。酸化膜を一部残存させることにより、完全に除去する場合に比べてスパッタエッチング処理時間を大幅に減少させ、圧延接合体の生産性を向上させることができる。不活性ガスとしては、アルゴン、ネオン、キセノン、クリプトンなどや、これらを少なくとも1種類含む混合気体を適用することができる。第1金属板と第2金属板のいずれについても、表面の吸着物は、エッチング量約1nm程度(SiO換算)で完全に除去することができる。
【0049】
第1金属板についてのスパッタエッチング処理は、例えば単板の場合、真空下で、例えば100W~1KWのプラズマ出力で1~50分間行うことができ、また、例えばライン材のような長尺の材料の場合、真空下で、例えば100W~10KWのプラズマ出力、ライン速度1m/分~30m/分で行うことができる。この時の真空度は、表面への再吸着物を防止するため高い方が好ましいが、例えば1×10-5Pa~10Paであればよい。スパッタエッチング処理において、第1金属板の温度は、好ましくは常温~150℃に保たれる。
【0050】
表面に酸化膜が一部残存する第1金属板は、第1金属板のエッチング量を、例えば1nm~10nmにすることによって得られる。必要に応じて、10nmを超えるエッチング量としてもよい。なお、第1金属板がCuの場合は、酸化膜の残存量が多すぎると接合力が不十分となる恐れがあり、また、特に強度を求める用途において、銅の軟化を防ぐために後の拡散焼鈍工程を施さない場合は酸化膜がない状態とすることで接合力を高めてもよいため、2~30nm程度のエッチングが好ましい。
【0051】
第2金属板についてのスパッタエッチング処理は、例えば単板の場合、真空下で、例えば100W~1KWのプラズマ出力で1~50分間行うことができ、また、例えばライン材のような長尺の材料の場合、100W~10KWのプラズマ出力、ライン速度1m/分~30m/分で行うことができる。この時の真空度は、表面への再吸着物を防止するため高い方が好ましいが、1×10-5Pa~10Paであればよい。スパッタエッチング処理において、第2金属板の温度は、好ましくは常温~150℃に保たれる。
【0052】
表面の酸化膜が一部残存する第2金属板は、第2金属板のエッチング量を、例えば1nm~10nmにすることによって得られる。必要に応じて、10nmを超えるエッチング量としてもよい。
【0053】
以上のようにしてスパッタエッチングした第1金属板及び第2金属板の接合面を、式(1)を満たすように、例えばロール圧接により圧延接合して、第1金属板と第2金属板を接合し、第1金属層と第2金属層の2層構造を有する圧延接合体を得る。
【0054】
圧延接合において、圧延接合体の圧下率は、15%以下が好ましく、より好ましくは
10%以下、さらに好ましくは5%未満である。第1金属層の圧下率は20%以下が好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。第2金属層の圧下率は14%以下が好ましく、より好ましくは9%以下、さらに好ましくは5%未満である。なお、下限は、特に制限はなく、圧下率が小さい方が反りを抑制しやすいため、好ましくは0%以上である。Cu/SUSの場合、圧下率は第1金属層(Cu)が10%以下、第2金属層(SUS)が5%以下、全体で10%以下が好ましい。圧延接合体の圧下率は、接合前の材料の第1金属板及び第2金属板の総厚みと、最終的な圧延接合体の厚みから求める。
【0055】
ロール圧接による圧延接合において、ロール圧接の圧延線荷重は、特に限定されずに、式(1)を満たすように設定する。ロール圧接の圧延線荷重を調整することにより、第1金属層と第2金属層の伸び量の比率(ΔL/ΔL)(本明細書において、伸び比率とも記載する。)を調整することができる。ロール圧接の圧延線荷重は、例えば、0.2tf/cm~10.0tf/cmの範囲に設定することができる。例えば圧接ロールのロール直径が100mm~250mmのとき、ロール圧接の圧延線荷重は、好ましくは0.5tf/cm~5.0tf/cmであり、より好ましくは0.8tf/cm~4.0tf/cmである。ただし、ロール直径が大きくなった場合や接合前の第1金属板や第2金属板の厚みが厚い場合などには、所定の圧下率を達成するための圧力確保のために圧延線荷重を高くすることが必要になる場合があり、この数値範囲に限定されるものではない。
【0056】
接合時の温度は、特に限定されずに常温~150℃である。
【0057】
接合は、第1金属板と第2金属板表面への酸素の再吸着によって両者間の接合強度が低下するのを防止するため、非酸化雰囲気中、例えばArなどの不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0058】
以上のようにして第1金属板と第2金属板を接合して得た圧延接合体について、必要に応じて熱処理を行うことができる。熱処理によって、各層の間の密着性を高めて十分な接合力とすることができる。この熱処理は、高温で長時間行うと、界面に金属間化合物を生成し、密着性(ピール強度)が低下する傾向があるため、適切な条件下で行う必要がある。例えば、銅層とステンレス層の圧延接合体では500℃~1000℃で5分~10時間、アルミニウム層とステンレス層の圧延接合体では200℃~600℃で5分~10時間、銅層とチタン層の圧延接合体では500℃~1000℃で5分~10時間、アルミニウム層とチタン層の圧延接合体では200℃~600℃で5分~10時間の熱処理を行うことが好ましい。
【0059】
接合後、また、場合によって熱処理後の圧延接合体について、1~2%程度の伸び率になるようにテンションレベラーによる形状修正を実施してもよい。この形状修正により、圧延接合体の反りを矯正することができる。本発明の方法によって製造された圧延接合体は、反りがないか、又は十分に小さいため、テンションレベラーによる形状修正を実施することで、十分な平坦性を確保できる。
【0060】
本発明は、前記のようにして製造した圧延接合体にも関する。
【0061】
具体的には、本発明の圧延接合体は、第1金属層と第2金属層の2層構造を有し、第1金属層の表面硬度Hvは第2金属層の表面硬度Hvより低い。
【0062】
圧延接合体の総厚み、第1金属層の種類及び表面硬度、並びに第2金属層の種類及び表面硬度については、圧延接合体の製造方法において前記の通りである。
【0063】
圧延接合体の第1金属層の厚みは、特に限定されずに、通常0.01mm~0.5mmであり、下限は好ましくは0.025mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、上限は好ましくは0.45mm以下、より好ましくは0.4mm以下である。圧延接合体の第1金属層の厚みは、圧延接合体の断面の光学顕微鏡写真を取得し、その光学顕微鏡写真において任意の10点における第1金属層の厚みを計測し、得られた値の平均値をいう。
【0064】
圧延接合体の第2金属層の厚みは、特に限定されずに、通常0.01mm~0.5mmであり、下限は好ましくは0.025mm以上、さらに好ましくは0.05mm以上であり、上限は好ましくは0.45mm以下、より好ましくは0.4mm以下である。圧延接合体の第2金属層の厚みは、第1金属層と同様にして測定できる。
【0065】
第2金属層の厚みの圧延接合体の総厚みに対する比率の上限は、好ましくは74%以下であり、より好ましくは65%以下であり、さらに好ましくは50%であり、下限は好ましくは15%以上である。第2金属層の厚みの比率は、好ましくは15%~74%、より好ましくは30%~70%であり、さらに好ましくは35%~65%であり、特に好ましくは35%~50%である。
【0066】
第1金属層の表面硬度Hvは、第2金属層の表面硬度Hvより低い。第1金属層の表面硬度Hvは、特に限定されずに、例えば下限は19以上であり、反りの抑制の観点から、30以上が好ましい。成形加工性及び接合強度の観点から、上限は200以下、好ましくは170以下である。表面硬度Hvは、原板と同様にして測定することができる。
【0067】
第2金属層の表面硬度Hvは、第1金属層の表面硬度Hvより高いこと以外は特に限定されずに、例えば機械強度の観点から、下限は50以上であり、好ましくは60以上である。成形加工性及び接合強度の観点から、上限は400以下、好ましくは375以下である。例えば第2金属層がステンレスのとき、表面硬度Hvは180~400が好ましく、チタン又はチタン合金のとき、表面硬度Hvは110~380が好ましい。第2金属層の表面硬度Hvは、原板と同様にして測定することができる。
【0068】
第2金属層の表面硬度Hvと第1金属層の表面硬度Hvとの硬度差は、好ましくは35~305であり、より好ましくは35~260である。圧延接合体における反りの制御という観点からは、硬度差は低い方が好ましい。硬度差がこの範囲内であると、圧延接合体において反りを十分に制御することができ、良好な平坦性を確保できる。
【0069】
本発明の圧延接合体は、反りが制御されており、反りがないか、あったとしても非常に小さい。具体的には、本発明の圧延接合体は、反り試験により測定される反り半径が43.8mm以上である。
【0070】
圧延接合体の反り半径の求め方を図1、2を参照して説明する。圧延接合体の反り半径は、以下の反り試験:すなわち、図1に示すように、圧延接合体を特定のサイズ(例えば幅100mm×長さ100mm)に切り出したサンプルを第1金属層が上面に位置する様に定盤の水平面に置き、定盤の水平面からのサンプルの高さが最大となる点の高さを反り量とする。該反り量(図2中、矢高hに相当する)と、サンプル長(図2中、円弧長Lに相当する)から、該円弧の半径に相当する反り半径rを求める。反り半径rは、式:L=rθ、d=2r sin(θ/2)、h=r(1-cos(θ/2))を用い、ニュートン・ラフソン法で計算できる。前記円弧の中心角が180°を超える場合、サンプル長を短くして測定する。なお、反り半径は、値が小さい程、反りが大きい。反り半径43.8mmは、圧延工程後の形状修正工程による反り矯正実績のある最小値である。つまり、反り半径43.8mm以上のものは製造経験上、反り矯正工程により十分な平坦性が得られた実績があり、反り半径43.8mm以下のものは反り矯正工程を経ても十分な平坦性が得られなかった。
【0071】
したがって、反り半径43.8mm以上である本発明の圧延接合体は、形状修正なしで、又は、形状修正により反りを矯正することができ、高い平坦性を有する圧延接合体を提供することができる。
【0072】
本発明の圧延接合体は、反りが制御されており、反りがないか、あったとしても非常に小さく、形状修正により反りを矯正できるため、平坦性を要求される用途に特に適する。このような用途としては、例えば電子機器用の内部部材(例えば内部補強部材)として、特にモバイル電子機器(モバイル端末)用の内部部材として利用することができる。
【0073】
また、2層構造を有する本発明の圧延接合体は、例えばSUS/Cu/SUSのような3層材と比較して放熱性に優れるため、放熱材用途にも適する。これは、例えばCu/SUSの2層材の場合、SUSよりも熱伝導率が大きいCu層が圧延接合体の表層に存在することにより熱拡散速度が大きくなるためであると考えられる。ここで、近年、モバイル電子機器においては、ICチップの高機能化や通信の高速化に伴い、機器内部での発熱量の増大が問題となっており、例えば、特許第5410646号公報及び特許第6237950号公報では、SUS/Cu/SUSの3層材を電子機器内部のシャーシへ適用することで、シャーシに放熱性を持たせている。しかし、近年、次世代通信規格の導入や、さらなる小型化・薄型化等により、発熱量はさらに増大傾向にあるところ、3層材と比較して放熱性に優れる本発明の2層材(特にSUS/Cu)は、放熱性の向上という3層材についての課題を解決できるものである。
【0074】
さらに、本発明の圧延接合体は、優れた平坦性及び放熱性を有することから、機器内部の放熱部材(例えば放熱補強部材)として好適に用いることができる。
【実施例
【0075】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
(実施例1)
第1金属板として、表面硬度Hvが108.2であるC1020-H(厚み0.248mm)を用い、第2金属板として、表面硬度Hvが184であるSUS304 BA(厚み0.098mm)を用いて、以下のようにして、表面活性化接合法によりCuとSUSからなる圧延接合体を製造した。
【0077】
C1020-H及びSUS304 BAの接合する各々の面に対してスパッタエッチング処理を実施した。C1020-Hについてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.3Pa下で、プラズマ出力700W、11分間の条件にて実施し、
SUS304 BAについてのスパッタエッチングは、スパッタガスとしてArを流入し、0.3Pa下で、プラズマ出力700W、11分間の条件にて実施した。
【0078】
スパッタエッチング処理後のC1020-HとSUS304 BAを、常温で、圧延ロール径100mm~250mm、圧延線荷重0.5tf/cm~5.0tf/cmの加圧力で、ロール圧接により接合し、総厚み0.339mmの圧延接合体を得た。
【0079】
(実施例2)
第2金属板として、表面硬度Hvが365.5であるSUS304 3/4H(厚み0.098mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.345mmの圧延接合体を製造した。
【0080】
(実施例3)
第1金属板として、表面硬度Hvが64.2であるC1020-O(厚み0.248mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.332mmの圧延接合体を製造した。
【0081】
(実施例4)
第1金属板として、表面硬度Hvが64.2であるC1020-O(厚み0.248mm)を用い、第2金属板として、表面硬度Hvが365.5であるSUS304 3/4H(厚み0.098mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.336mmの圧延接合体を製造した。
【0082】
(実施例5)
接合時の圧延線荷重を1.0tf/cm~5.0tf/cmとした以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.332mmの圧延接合体を製造した。
【0083】
(実施例6)
接合時の圧延線荷重を1.0tf/cm~5.0tf/cmとした以外は、前記実施例2と同様にして総厚み0.341mmの圧延接合体を製造した。
【0084】
(実施例7)
接合時の圧延線荷重を1.0tf/cm~5.0tf/cmとした以外は、前記実施例3と同様にして総厚み0.331mmの圧延接合体を製造した。
【0085】
(実施例8)
接合時の圧延線荷重を1.0tf/cm~5.0tf/cmとした以外は、前記実施例4と同様にして総厚み0.339mmの圧延接合体を製造した。
【0086】
(実施例9)
第1金属板として、表面硬度Hvが106.3であるC1020-H(厚み0.122mm)を用い、第2金属板として、表面硬度Hvが195.8であるSUS304 BA(厚み0.05mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.169mmの圧延接合体を製造した。
【0087】
(実施例10)
第1金属板として、表面硬度Hvが58.2であるC1020-O(厚み0.122mm)を用い、第2金属板として、表面硬度Hvが258であるSUS316L 1/2H(厚み0.05mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.168mmの圧延接合体を製造した。
【0088】
(実施例11)
第2金属板として、表面硬度Hvが195.8であるSUS304 BA(厚み0.05mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.29mmの圧延接合体を製造した。
【0089】
(実施例12)
第2金属板として、表面硬度Hvが258であるSUS304 1/2H(厚み0.05mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.297mmの圧延接合体を製造した。
【0090】
(実施例13)
第1金属板として、表面硬度Hvが64.2であるC1020-O(厚み0.248mm)を用い、第2金属板として、表面硬度Hvが258であるSUS304 1/2H(厚み0.05mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.287mmの圧延接合体を製造した。
【0091】
(実施例14)
第1金属板として、表面硬度Hvが105.3であるC1020-H(厚み0.1mm)を用い、第2金属板として、表面硬度Hvが196であるSUS304 BA(厚み0.1mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.192mmの圧延接合体を製造した。
【0092】
(実施例15)
第1金属板として、表面硬度Hvが55.7であるA1050-H18(厚み0.25mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.33mmのAlとSUSからなる圧延接合体を製造した。
【0093】
(実施例16)
第2金属板として、表面硬度Hvが150.4である純Ti(2種)(厚み0.098mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.336mmのCuとTiからなる圧延接合体を製造した。
【0094】
(実施例17)
第1金属板として、表面硬度Hvが55.7であるA1050-H18(厚み0.245mm)を用い、第2金属板として、表面硬度Hvが150.4である純Ti(2種)(厚み0.098mm)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.329mmのAlとTiからなる圧延接合体を製造した。
【0095】
(比較例1)
第1金属板として、表面硬度Hvが64.2であるC1020-O(厚み0.248mm)を用い、第2金属板として、表面硬度Hvが365.5であるSUS304 3/4H(厚み0.098mm)を用い、接合時の圧延線荷重を2.0tf/cm~5.0tf/cmとした以外は、前記実施例1と同様にして総厚み0.331mmの圧延接合体を製造した。
【0096】
実施例1~17及び比較例1の圧延接合体について、以下の特性を測定した。
【0097】
[圧延接合体の総厚みT]
圧延接合体上の任意の30点における厚みをマイクロメータなどで測定し、得られた測定値の平均値を算出した。
【0098】
[圧延接合体の第1・第2金属層の厚み]
圧延接合体の断面の光学顕微鏡写真を取得し、その光学顕微鏡写真において任意の10点における厚みを計測し、得られた値の平均値を求めた。
【0099】
[硬度]
第1・第2金属板及び圧延接合体の第1・第2金属層の硬度をマイクロビッカース硬度計を用い、JIS Z 2244(ビッカース硬さ試験-試験方法)に準じて測定した。
【0100】
[圧下率]
第1金属層、第2金属層及び圧延接合体(全体)について、接合前の原板の厚みと、最終的な圧延接合体における厚みから求めた。
【0101】
[伸び量]
第1金属板(原板)及び第2金属板(原板)のそれぞれに、標点間距離150mm及び10mm間隔でケガキし、接合後の圧延接合体の第1金属層及び第2金属層について、原板からの伸び量(mm)をそれぞれ測定した。
【0102】
[反り量及び反り半径]
反り試験を行い、圧延接合体の反り量を測定した。図1に反り試験の側面模式図を示す。図1に示すように、圧延接合体を幅100mm×長さ100mmに切り出したサンプルを第1金属層が上面に位置する様に定盤の水平面に置き、定盤の水平面からのサンプルの高さが最大となる点の高さを測定し、これを反り量とした。
【0103】
次に、反り量から反り半径を算出した。具体的には、反り量(mm)(図2中、矢高hに相当する)と、サンプル長100mm(図2中、円弧長Lに相当する)を用い、該円弧の半径に相当する反り半径rを、式:L=rθ、d=2r sin(θ/2)、h=r(1-cos(θ/2))を用い、ニュートン・ラフソン法で計算した。反り半径rは、値が小さい程反りが大きい。
【0104】
表1に、実施例1~17及び比較例1の圧延接合体の構成、各層の特性及び評価結果を示し、表2に、実施例1~17及び比較例1で製造した圧延接合体の第1・第2金属層の硬度、厚み及び圧下率を示す。また、図3に、実施例1~17及び比較例1の圧延接合体について、伸び比率/総厚み((ΔL/ΔL)/T)と、反り半径の関係を示す。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
表1及び図3より、伸び比率/総厚みが38以下(すなわち、0<(ΔL/ΔL)/T≦38)である実施例1~17の圧延接合体は、Cu/SUS、Al/SUS、Cu/Ti及びAl/Tiのいずれの構成の場合であっても、反り半径が、反り矯正実績のある最小値である43.8mm以上であり、反りが十分に制御されていた。一方、伸び比率/総厚みが38超である比較例1の圧延接合体では、反り半径は43.8mm未満であり、形状修正を実施しても矯正できない大きな反りが生じていた。
【0108】
(参考例)
放熱性の評価
Cu/SUSの2層材と、SUS/Cu/SUSの3層材の放熱性を評価した。
【0109】
Cu/SUSの2層材として、C1020-H(厚み0.1mm)とSUS304BA(厚み0.1mm)からなる2層材(実施例14)を用いた。さらに、C1020-H(厚み0.125mm)とSUS304H(厚み0.072mm)を用い(2層材1)、また、C1020-H(厚み0.1mm)とSUS304H(厚み0.072mm)を用い(2層材2)、実施例1と同様にして、SUSと銅の厚み比率の異なる2層材を製造した。各2層材の厚みは、実施例14の厚みは0.192mm、2層材1の厚みは0.195mm、2層材2は0.171mmであり、2層材1および2層材2におけるSUSの圧下率はいずれも1%未満であった。
【0110】
SUS/Cu/SUSの3層材は、C1020-H(厚み0.10mm)とSUS304(3/4H)(厚み0.05mm)を用い、実施例1と同様にして2層材を製造し、この2層材とSUSの接合を2層材の製造と同様に行い、製造した。3層材の総厚みは0.200mmであった。3層材におけるSUSの圧下率はいずれも1%未満であった。
【0111】
Cu/SUSの2層材及びSUS/Cu/SUSの3層材の放熱性は、図4に示すように、60mm×140mmの大きさに切り出したサンプル板を、2層材についてはCu面をヒーター側にしてヒーターの下におき、ヒーターの温度を上昇させ、ヒーター(発熱部)の温度の経時変化を測定することにより評価した。図5に、Cu/SUSの2層材及びSUS/Cu/SUSの3層材の放熱性の評価結果を示す。
【0112】
図5に示すように、600秒後のヒーターの温度は、実施例14のCu/SUSの2層材では48.0℃であり、2層材1では47.1℃であり、2層材2では47.5℃であり、3層材では52.0℃であった。なお、2層材又は3層材なしでヒーターを加熱した場合、600秒後のヒーターの温度は95℃前後まで上昇した。よって、Cu/SUSの2層材は、SUS/Cu/SUSの3層材と比較して、ヒーターの経時的な温度上昇が小さく、放熱性がより高いことが示された。これは、Cuの熱伝導率(391W/m・K)は、SUSの熱伝導率(16.3W/m・K)と比較して非常に高く、Cu/SUSの2層材では、熱伝導率の高いCuを発熱源であるヒーターと接触させることができるので、高い放熱性が得られたと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5