(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】路面映像投射装置
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20221108BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20221108BHJP
F21S 43/237 20180101ALI20221108BHJP
F21V 29/503 20150101ALI20221108BHJP
F21V 29/83 20150101ALI20221108BHJP
F21S 43/19 20180101ALI20221108BHJP
F21S 43/27 20180101ALI20221108BHJP
B60Q 1/26 20060101ALI20221108BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20221108BHJP
F21W 103/60 20180101ALN20221108BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221108BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/14
F21S43/237
F21V29/503
F21V29/83
F21S43/19
F21S43/27
B60Q1/26 Z
F21W103:20
F21W103:60
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2018080244
(22)【出願日】2018-04-18
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寿紀
(72)【発明者】
【氏名】國井 康彦
(72)【発明者】
【氏名】岸上 勝博
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】槌谷 裕志
(72)【発明者】
【氏名】清水 豪
(72)【発明者】
【氏名】田古里 眞嘉
(72)【発明者】
【氏名】川路 龍也
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-152057(JP,A)
【文献】特開2019-192350(JP,A)
【文献】特表2006-521667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0075875(US,A1)
【文献】国際公開第2017/164328(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/20
F21S 43/14
F21S 43/237
F21V 29/503
F21V 29/83
F21S 43/19
F21S 43/27
B60Q 1/26
F21W 103/20
F21W 103/60
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の複数の領域に映像を表示する路面映像投射装置であって、
映像投射光を前記領域ごとの前記映像に対応する
開口形状を有するシェードと、
複数の映像投射レンズと、
複数の前記映像投射レンズに対応して設けられ、前記映像投射光を照射する固体光源と、
それぞれの前記固体光源に対応して設けられ、前記映像投射光を前記シェードへ導光する導光部材と、を備え、
前記シェードは、中央部から周縁部へ向けて、対応する前記映像投射レンズ側へ湾曲しており、
前記導光部材は、複数であり、
前記導光部材の出射端が凸面であり、
個々の前記映像投射レンズは、複数の前記固体光源により照明されることを特徴とする、
路面映像投射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の路面映像投射装置において、
複数の前記映像投射レンズは、焦点距離及び軸傾きの少なくとも一方が異なる、
路面映像投射装置。
【請求項3】
請求項1に記載の路面映像投射装置において、
複数の前記導光部材が連接されている、
路面映像投射装置。
【請求項4】
請求項1に記載の路面映像投射装置において、
前記固体光源と、対応する前記導光部材との間の空隙に耐熱性透明部材が充填されている、
路面映像投射装置。
【請求項5】
請求項4に記載の路面映像投射装置において、
前記耐熱性透明部材は、シリコーンである、
路面映像投射装置。
【請求項6】
請求項2に記載の路面映像投射装置において、
少なくとも1個の前記映像投射レンズは、切り欠き部を有する、
路面映像投射装置。
【請求項7】
請求項1に記載の路面映像投射装置において、
それぞれの前記固体光源に対応して設けられ、前記導光部材の位置決めを行う導光部材固定具を備えている、
路面映像投射装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の路面映像投射装置において、
前記導光部材固定具は、対応する前記固体光源と嵌合している、
路面映像投射装置。
【請求項9】
請求項
7に記載の路面映像投射装置において、
前記導光部材固定具は、耐熱性樹脂である、
路面映像投射装置。
【請求項10】
請求項
7に記載の路面映像投射装置において、
前記導光部材固定具は、空気流入孔を備えている、
路面映像投射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面映像投射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタに代表される映像投射装置は、所望の映像を拡大して投射するための装置として、既に広い分野で利用されている。また、近年では、パーソナルコンピュータや携帯電話の画面を拡大表示するための表示装置としても広く利用されている。さらに、映像投射装置は、車両にも搭載され、路面に映像を投射する路面映像投射装置としても使用されている。
【0003】
このような、路面映像投射装置として、例えば次の特許文献1~2が知られている。特許文献1には、車両のヘッドライトを外部光源として路面に映像を投射する投射表示装置が開示されている。特許文献1によれば、この投射表示装置は、低消費電力であり携帯性に優れている。
【0004】
特許文献2に記載のプロジェクタは、車両の中に組み込まれ、ヘッドライトの前に配置されている。ヘッドライト機能時、プロジェクタは、ヘッドライトから光取り出し口に至る光路を遮らないように配置される。そして、プロジェクタ機能時、プロジェクタは、ヘッドライトから光取り出し口に至る光路中に配置され、ヘッドライトを光源として、光学像を外部に投射する。プロジェクタは、例えば、自動車の現在位置に関する情報や進行方向に関する情報等を光学像として道路上に表示する。
【0005】
特許文献2によれば、映像を表示可能な状態にするに要する作業量を極めて少なくでき、また、この作業が極めて簡単で、セッティング作業の自動化も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-43781号公報
【文献】特開2004-136838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、自動車の使用想定環境である0℃以下や60℃以上の温度条件下や、車両からの振動環境下では、自動車に搭載されたプロジェクタの動作は困難である。また、プロジェクタの消費電力が大きいため、これに対応する電源が専用で必要となる。また、特許文献2では、一つの光学系で路面の広い領域に映像を投射するため、収差により周縁部における映像の画質低下が発生する。このような画質低下を防ぐためには、高価な硝材を複数枚備えた光学系が必要となるが、そうすると、路面映像投射装置が高価になってしまう。さらに、ヘッドライトは他の構造部品が多く、装置の小型化も求められる。
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、自動車の使用想定温度、振動環境においても動作し、消費電力及び装置コストを低減し、装置サイズも小型化した路面映像投射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、以下のとおりである。
【0010】
本発明の代表的な実施の形態による路面映像投射装置は、路面の複数の領域に映像を表示する。路面映像投射装置は、映像投射光を領域ごとの映像に対応する所定の形状に成形するシェードと、それぞれの領域に対応する投射光学系と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0012】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態によれば、自動車の使用想定温度において動作し、消費電力及び装置コストを低減した路面映像投射装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る路面映像投射装置の設置状況の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る路面映像投射装置の使用状況を説明する図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る路面映像投射装置の外観を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る路面映像投射装置の内部構成の一例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る投射光学系の構成の一例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係る投射光学系における映像投射光の光路の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態1に係る固体光源付近を拡大して示す図である。
【
図8】ライトガイドの形状と、出射される映像投射光とを対応させて示す図である。
【
図9】投射光学系と表示される映像とを比較して示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態1に係る投射光学系における映像投射光の光路の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態の例を、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって、適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。また、後述する各実施形態の一部を適宜組み合わせて構成されてもよい。
【0015】
(実施の形態1)
<路面映像投射装置の設置状況>
図1は、本発明の実施の形態1に係る路面映像投射装置の設置状況の一例を示す図である。
図1(a)は、路面投射装置が設置された自動車の外観を示す斜視図、
図1(b)は、自動車の照明部付近の拡大図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る路面映像投射装置10は、例えば自動車1に設置される。
【0016】
具体的には、路面映像投射装置10は、自動車1の前部両端の照明部5(5a,5b)にそれぞれ設けられる。なお、
図1(b)には照明部5bの拡大図が示されていないが、照明部5bは、自動車1の進行方向に対して照明部5aと対称である。このため、以下では、主に照明部5aについて説明する。その際、照明部5bの路面映像投射装置10bと混乱を来さない範囲で、照明部5aの路面映像投射装置10aを路面映像投射装置10と表記する場合がある。
【0017】
照明部5は、
図1(b)に示すように、車体中央から周辺に向けて前照灯3a,2a、路面映像投射装置10aが設けられている。前照灯3aはいわゆるハイビームを照射し、前照灯2aはいわゆるロービームを照射する。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態1に係る路面映像投射装置の使用状況を説明する図である。路面映像投射装置10は、
図2に示すように、路面の複数の領域に映像31~34を表示する。具体的には、路面映像投射装置10は、進行方向の右手前方の領域に、自動車1の進行方向を示す矢印を映像31~34として表示する。
図2では、矢印の映像32が実線で表示されているが、路面映像投射装置10は、矢印の映像31~34を順次切り替えながら路面に表示する。また、路面映像投射装置10は、映像34を表示した後、映像31~34の矢印を繰り返し表示する。
【0019】
<路面映像投射装置の構成>
図3は、本発明の実施の形態1に係る路面映像投射装置の外観を示す斜視図である。
図4は、本発明の実施の形態1に係る路面映像投射装置の内部構成の一例を示す斜視図である。
図5は、本発明の実施の形態1に係る投射光学系の構成の一例を示す斜視図である。
図5(a)は、固体光源、シェード、及び投射レンズの対応関係を示し、
図5(b)は、シェードと、映像投射レンズとの対応関係をより詳細に示している。
図6は、本発明の実施の形態1に係る投射光学系における映像投射光の光路の一例を示す図である。なお、
図6では、映像投射レンズ23を含む投射光学系の光路の例が示されている。
【0020】
図3に示すように、路面映像投射装置10は、ケース11、投影レンズ板20を備えている。投影レンズ板20は、ケース11の前面に固定されている。投影レンズ板20は、
図3~
図5に示すように、映像投射レンズ21~24を備え、これらの映像投射レンズ21~24と一体で形成されている。例えば、投影レンズ板20及び映像投射レンズ21~24は、射出成型により一体で形成される。したがって、映像投射レンズ21~24は、それぞれ1枚のレンズのみで構成される。投影レンズ板20及び映像投射レンズ21~24の材料として、例えば、アクリル、ポリカーボネイト、ポリオレフィル等の樹脂が最適である。映像投射レンズ21~24の構成については、後で詳しく述べる。
【0021】
ケース11は、
図4,
図5に示す各部材を内部に収容する。具体的に述べると、ケース11は、映像投射レンズ21と対応する、固体光源41a,41b、ライトガイド(導光部材)61a,61b、シェード71等を収容する。同様に、ケース11は、映像投射レンズ22と対応する、固体光源42a,42b、ライトガイド62a,62b、シェード72等を収容する。同様に、ケース11は、映像投射レンズ23と対応する、固体光源43a,43b,43c、ライトガイド63a,63b,63c、シェード73等を収容する。同様に、ケース11は、映像投射レンズ24と対応する、固体光源44a,44b,44c,44d、ライトガイド64a,64b,64c,64d、シェード74等を収容する。
【0022】
これらのうち、映像投射レンズ21、固体光源41a,41b、ライトガイド61a,61b、及びシェード71は、映像31を表示する領域に対応する投射光学系を構成する。同様に、映像投射レンズ22、固体光源42a,42b、ライトガイド62a,62b、及びシェード72は、映像32を表示する領域に対応する投射光学系を構成する。同様に、映像投射レンズ23、固体光源43a,43b,43c、ライトガイド63a,63b,63c、及びシェード73は、映像33を表示する領域に対応する投射光学系を構成する。同様に、映像投射レンズ24、固体光源44a,44b,44c,44d、ライトガイド64a,64b,64c,64d、及びシェード74は、映像34を表示する領域に対応する投射光学系を構成する。
【0023】
それぞれの投射光学系は、
図6に示すように、固体光源から出射された映像投射光がライトガイドによりシェードへ導光される。そして、シェードにより成形された映像投射光は、映像投射レンズにより対応する領域へ向けて屈折する。
【0024】
図7は、本発明の実施の形態1に係る固体光源付近を拡大して示す図である。
図7(a)は、固体光源付近の斜視図であり、
図7(b),
図7(c)は、
図7(a)のA-A’断面図である。なお、
図7は、固体光源43bが一例として挙げられているが、これ以外の固体光源とその周辺も同様の構成である。
【0025】
固体光源は、例えば、LED等であり、映像を表示するための映像投射光を照射する。
図4~
図5に示す例では、それぞれの光学系に対応する固体光源が設けられている。ただし、このような構成に限定されることはなく、固体光源が複数の光学系に対応しても構わない。また、固体光源は、光学系ごとに1個のみ設けられてもよいし、
図4~
図5に示すように、複数個設けられてもよい。
図4~
図5に示す例では、自動車1から近い、映像31~32を表示する領域に対応する光学系には、2個の固体光源がそれぞれ設けられている。一方、自動車1から遠い、映像33~34を表示する領域に対応する光学系には、3個~4個の固体光源がそれぞれ設けられている。
【0026】
固体光源は、
図7(b),(c)に示すように、ハンダ層12gを介して基板12に実装されている。これにより、固体光源から発生する熱は、基板12を介して放熱される。
【0027】
ライトガイドは、それぞれの固体光源に対応して設けられ、固体光源から照射される映像投射光を、対応するシェードへ導光する部材である。ライトガイドは、対応する固体光源付近に入射端が配置され、対応するシェード付近に出射端が配置されるように設置される。入射端に入射された映像投射光は、出射端からシェードへ向けて出射される。
【0028】
ライトガイドは、固体光源(LED)に近接して配置されるので、透明性及び120℃以上の耐熱性を有する材料で構成される。したがって、ライトガイドには、例えば、ポリカーボネイト、ポリオレフィル、シリコーン等の樹脂が好適である。ライトガイドは、例えば、金型を用いた射出形成により形成される。
【0029】
図8は、ライトガイドの形状と、出射される映像投射光とを対応させて示す図である。
図8(a)は、本実施の形態の場合を示し、
図8(b)は、比較例の場合を示している。
図8では、映像投射レンズ23を含む投射光学系が一例として示されているが、他の映像投射レンズ21,22,24においても同様である。
【0030】
図8(a)に示すように、本実施の形態では、ライトガイド63a~63cの出射端は、凸面となっている。これにより、ライトガイド63a~63cから出射される映像投射光の発散角が小さくなっている。このため、固体光源43a~43cから出射され、シェード73を通過した映像投射光は、ほぼ映像投射レンズ23へ到達している。このように、ライトガイドの出射端が凸面となっていることにより、映像投射光を効率的に利用することが可能となる。
【0031】
これに対し、
図8(b)の比較例では、ライトガイド630a~630cの出射端は平面になっている。そうすると、ライトガイド630a~630cから出射される映像投射光の発散角が大きくなり、投射映像光が広がってしまうので、映像投射光を効率的に利用することができない。そうすると、光量不足により投射される映像が暗くなってしまう。
【0032】
また、本実施の形態では、複数のライトガイドが連接されている。例えば、
図5(a)に示す例では、同一の投射光学系に設けられたライトガイドが連接されている。具体的には、固体光源41a,41bに対応するライトガイド51a,51bが連接されている。また、固体光源42a,42bに対応するライトガイド52a,52bが連接されている。また、固体光源43a,43b,43cに対応するライトガイド53a,53b,53cが連接されている。そして、固体光源44a,44b,44c,44dに対応するライトガイド54a,54b,54c,54dが連接されている。
【0033】
また、これら以外にも、隣り合う投射光学のライトガイドが連接されても構わない。複数個連接されたライトガイドも、金型を用いた射出形成により一体で形成される。
【0034】
ライトガイドには、例えば、
図5に示すライトガイド固定部64fや、
図6に示すライトガイド固定部63f等のライトガイド固定部が設けられている。ライトガイドの下方には、ライトガイドを支持するライトガイド支持部材13が配置されている。それぞれのライトガイド固定部は、ライトガイド支持部材13に設けられた溝と嵌合し、ライトガイドは、ライトガイド支持部材13に固定される。ライトガイド固定部も、射出形成により、対応するライトガイドとともに一体で形成される。
【0035】
ライトガイドの入射端は、
図7(b),(c)に示すように、固定具(導光部材固定具)53bと接している。それぞれのライトガイドは、対応する固定具により位置決めされている。
【0036】
固定具は、それぞれの固体光源に対応して設けられ、ライトガイドの位置決めを行う部材である。
図7に示すように、固定具(例えば53b)は、対応する固体光源43bと嵌合している。また、固定具53bは、テーパー部53jを有している。テーパー部53jは、対応するライトガイド63bの入射端と線接触で嵌合している。これにより、ライトガイド63bと、固体光源43bとの相対的な位置決めがなされている。
【0037】
また、
図7(b),(c)に示すように、固定具53bは凸部53fを備えており、凸部53fが基板12に設けられた位置決め穴12hと嵌合している。これにより、固定具53bは、基板12の所定の位置に固定されるようになっている。
【0038】
また、それぞれの固定具は、
図7に示すように、空気流入孔(例えば53h)を備えている。
図7に示す固定具53bの空気流入孔53hは複数個であるが、これに限らず1個のみでも構わない。空気流入孔53hは、対応するライトガイド63b側の空間と連通しており、対応する固体光源43bの熱を、対流によりライトガイド63b側の空間へ放熱する。したがって、固体光源43bで発生する熱は、基板12及びライトガイド63b側の空間へ放熱される。
【0039】
それぞれの固定具は、対応する固体光源と直に接しているため、150℃以上の耐熱性を有する耐熱性樹脂で構成される。固定具の材料として、例えばシリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂は、耐熱性を有するとともに、量産に適した成形性を有している。
【0040】
また、それぞれの固定具付近には、例えば
図7(b),(c)に示すように、固体光源43bと、対応するライトガイド63bとの間に空隙が形成されている。この空隙は、例えば0.1~0.2mm程度であるが、固定具53bの形状により任意の値に調整可能である。なお、この空隙には、
図7(c)に示すように、例えばシリコーン樹脂からなる耐熱性透明部材53iが充填されてもよい。これにより、固体光源から出射される映像投射光を効率よくライトガイドへ導光することが可能となる。
【0041】
シェード71~74は、固体光源から照射された映像投射光を、領域ごとの映像31~34に対応する所定の形状に成形する部材である。シェード71~74には、
図5(b)に示すように、開口部71m~74mがそれぞれ形成されている。開口部71m~74mの形状は、すでに述べた自動車の進行方向を示す矢印に対応している。具体的には、開口部71m~74mの形状は、対応する映像投射レンズ21~24の特性を考慮して規定される。ライトガイドから出射された映像投射光は、対応するシェード71~74の開口部71m~74mにより矢印の形状に遮光され、映像投射レンズ21~24に達する。
【0042】
それぞれのシェード71~74は、中央部から周縁部へ向けて、対応する映像投射レンズ21~24側へ湾曲している。
図8(a)を例に挙げると、シェード73は、ライトガイド63b付近の中心部と比較して、ライトガイド63a,63c付近の周縁部が映像投射レンズ23側へ湾曲している。
【0043】
後述するように、映像投射レンズ21~24は、樹脂製のレンズ1枚で構成されている。このため、映像投射レンズの像面湾曲が大きく、シェードが平面で構成されていると、周辺部で映像がデフォーカスし、鮮明な映像を表示することができない場合がある。そこで、
図8(a)に示すように、シェードの周縁部を映像投射レンズ側へ湾曲させることにより、像面湾曲に相当する曲率をシェードに与えている。これにより、鮮明な映像を表示させることが可能となる。
【0044】
図4~
図5に示すシェード71~74は、映像31~34が表示されるそれぞれの領域に対応して設けられており、互いに独立している。ただし、開口部71m~74mが形成されていれば、このような構成に限定されることはなく、シェード71~74が一体で構成されていても構わない。
【0045】
図9は、投射光学系と表示される映像とを比較して示す図である。
図9(a)は、湾曲したシェードで構成された投射光学系と表示される映像とを示し、
図9(b)は、シェードが平面で構成された投射光学系と表示される映像とを示している。
【0046】
図9(a)に示すように、シェードが湾曲している場合、鮮明な映像が表示される。一方、
図9(b)に示すように、シェードが平面である場合、
図9(a)と比較すると、周辺がやや不鮮明な映像が表示される。ただし、
図9(b)の場合であっても、映像の視認性に与える影響はわずかである。
【0047】
映像投射レンズ21~24は、映像が表示されるそれぞれの領域と対応しており、対応する領域に映像を投射する。例えば、映像投射レンズ21は、映像31を表示する領域と対応し、映像31を投射する。同様に、映像投射レンズ22~24は、映像32~34を表示する領域とそれぞれ対応し、映像32~34をそれぞれ投射する。言い換えれば、映像投射レンズ21は、自動車1から最も近い領域と対応し、映像投射レンズ22~24は、自動車1から順次離れた領域とそれぞれ対応している。
【0048】
それぞれの映像投射レンズ21~24は、焦点距離及び軸傾きの少なくとも一方が異なっている。例えば、映像投射レンズ21は、自動車1から近い領域に映像31を投射するため、焦点距離が最も短い。そして、自動車1から遠くなるごとに、対応する映像投射レンズの焦点距離が長くなっている。このように、映像が投影される位置が異なるので、映像投射レンズ21~24の焦点距離は異なっている。同時に、路面に対する映像の入射角が異なるので、それに対応して映像投射レンズ21~24の軸傾きはそれぞれ異なる。
【0049】
図4~
図5では、いずれの投射光学系においても映像投射光が概ね同じ方向に照射される場合が示されているが、例えば、投射光学系ごとに映像投射光の照射方向が異なっていてもよい。この場合、複数の映像投射レンズの軸傾をそれに対応させる。ただし路面に投影される映像品質が許容出来れば、レンズ傾きが同一であっても構わない。また、
図4~
図5では、映像投射レンズ21~24は、横一線に並んで配置されているが、このような構成に限定されるものではない。したがって、映像投射レンズの配置によっては、複数の映像投射レンズの焦点距離が同じであっても構わない。
【0050】
図10は、本発明の実施の形態1に係る投射光学系における映像投射光の光路の他の一例を示す図である。
図10は、例えば映像投射レンズ21を含む投射光学系の光路の例を示している。
【0051】
映像投射レンズ22~24を含む投射光学系は、例えば
図6に示すような構成となっている。一方、映像投射レンズ21を含む投射光学系は、自動車1に最も近い領域に映像を表示するため、出射した映像投射光を自動車1の右前方の直下に屈曲させる必要がある。そこで、映像投射レンズ21は、
図10に示すように、映像投射光の入射範囲をレンズの中心軸21cに対して上側へオフセットさせている。また、映像投射レンズ21は、ケース11の基準軸(例えば、映像投射レンズ22~24の中心軸)に対して下方へ傾斜している。この構成により、映像投射レンズ21における屈曲角が大きくなっている。
【0052】
ただし、この構成では、映像投射レンズ21が他の映像投射レンズ22~24と比較して大きくなってしまうことや、映像投射レンズ21が下方へ傾斜していることから、映像投射レンズ21をケース11内に収めることができない。そこで、本実施の形態では、映像投射レンズ21は、切り欠き部21a,21bを設け、ケース11に収まらない部分が取り除かれている。
【0053】
具体的には、映像投射レンズ21の前面の上側が取り除かれ、切り欠き部21aが形成されている。また、映像投射レンズ21の下側が取り除かれ、切り欠き部21bが形成されている。なお、切り欠き部21a,21bは、
図10に示すように、映像投射光が透過しない部分である。
【0054】
なお、
図5(b)で示した様に、映像投射レンズ21で投影する矢印形状に相当するシェードの開口部71mは、他の開口部である72m、73m、74mに比べ、縦サイズが大きくなっている。その理由は、映像投射レンズ21を用いた路面に投影する映像光の入射角が他の投影レンズを用いた映像光の入射角より小さくなり、路面に投影する映像光の縦方向拡大率が小さくなるためである。
【0055】
前記縦サイズが大きくなっているため、映像投射レンズに対する画角が大きくなり、投影画像全体での明るさを均一に保つのが困難となる。その対策として、この光学系のみ投影画像の均一性を改善するため、導光体61aとシェード71間に拡散板71dを備える。
【0056】
なお、ここでは、映像投射レンズ21にのみ切り欠き部が形成された例を取り上げたが、必要に応じてこれ以外の映像投射レンズ22~24にも切り欠き部が形成されても構わない。このように、本実施の形態では、少なくとも1個の映像投射レンズは、切り欠き部を有する。
【0057】
<本実施の形態による主な効果>
本実施の形態によれば、路面映像投射装置10は、それぞれの領域に対応するシェード及び映像投射レンズを備えている。この構成によれば、シェードにより映像が形成されるのでプロジェクタが不要となる。これにより、自動車の使用想定温度においても動作することが可能となり、消費電力及び装置コストを低減させることが可能となる。
【0058】
また、領域ごとの各映像を、対応する専用の映像投射レンズで投影するので、それぞれの映像投射レンズ21~24の収差設計を最適化することができる。これにより、それぞれの映像投射レンズ21~24を1枚のレンズで構成することができるので、装置コストを低減させることが可能となる。
【0059】
また、本実施の形態によれば、それぞれの映像投射レンズ21~24は、焦点距離及び軸傾きの少なくとも一方が異なる。この構成によれば、投射光学系ごとに映像投射光を屈曲させる方向を異ならせることができるので、映像を表示させる領域を自在に設定することが可能となる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、ライトガイドの出射端は、凸面である。この構成によれば、ライトガイドから出射される映像投射光の発散角が小さくなるので、映像投射光を効率的に利用することが可能となる。これにより、映像投射光の光量を抑えつつ、同等の明るさの映像を表示することが可能となる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、複数のライトガイドが連接されている。この構成によれば、ライトガイドの取り扱いが容易となるとともに、複数のライトガイドを一度に形成することができるので、ライトガイドの生産性が向上する。
【0062】
また、本実施の形態によれば、固体光源と、対応するライトガイドとの間の空隙に耐熱性透明部材が充填されている。この構成によれば、固体光源から出射される映像投射光を効率よくライトガイドへ導光することが可能となる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、少なくとも1個の前記映像投射レンズは、切り欠き部を有する。この構成によれば、大きなレンズを用いても、映像投射光が透過しない部分を取り除くことができるので、映像を表示できる領域をより拡大させることが可能となる。また、これにより、ケース11に入らない部分が取り除かれるので、ケース11のサイズの増大が抑えられる。これにより、路面映像投射装置10の増大が抑えられ、設置場所の選択肢を広げることが可能となる。
【0064】
また、本実施の形態によれば、それぞれの領域に対応するシェードが設けられている。この構成によれば、シェードを小型化することができるので、投射光学系の設計自由度を向上させることが可能となる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、シェードは、中央部から周縁部へ向けて、対応する映像投射レンズ側へ湾曲している。この構成によれば、映像投射レンズの像面湾曲に相当する曲率をシェードに与え、鮮明な映像を表示させることが可能となる。
【0066】
また、本実施の形態によれば、それぞれの固定具は、空気流入孔を備えている。この構成によれば、空気流入孔とライトガイドとが連通されるので、対流により固体光源の熱を放熱させることが可能となる。これにより、放熱能力が向上するので、固体光源の劣化が抑えられ、装置寿命を延ばすことが可能となる。
【0067】
なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ここで述べた路面映像投射装置10は、4個の投射光学系を備え、4つの領域に対し、それぞれ異なる投射光学系を用いて映像を表示しているが、5個以上の投射光学系を備えていてもよいし、2~3個の投射光学系を備えていてもよい。
【0068】
また、ここで述べた映像投射レンズ21~24は、1枚のレンズで構成されているが、コストの上昇が抑えられる範囲内で複数枚のレンズで構成されても構わない。また、ここで述べた路面映像投射装置10には、投射光学系ごとに、対応する固体光源が設けられているが、このような構成に限定されず、例えば、前照灯2a,3aから出射される光を取り込んで映像投射光として使用しても構わない。
【0069】
また、路面映像投射装置10は、自動車1だけでなく、さまざまな場所に設置することができる。例えば、自動車1のような移動可能なものに設置されてもよいし、移動しない所定の場所に固定されても構わない。また、ここでは、矢印の映像を表示する場合が例として挙げられているが、その他の文字、記号、模様等が映像として表示されても構わない。
【0070】
また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。なお、図面に記載した各部材や相対的なサイズは、本発明を分かりやすく説明するため簡素化・理想化しており、実装上はより複雑な形状となる場合がある。
【符号の説明】
【0071】
10…路面映像投射装置、21~24…映像投射レンズ、21a,21b…切り欠き部、31~34…映像、41a~41b,42a~42b,43a~43c,44a~44d…固体光源、51a~51b,52a~52b,53a~53c,54a~54d…固定具、53h…空気流入孔、61a~61b,62a~62b,63a~63c,64a~64d…ライトガイド、71~74…シェード