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特許7171220骨組織への近接に基づく解剖学的画像の位置追跡座標系との位置合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】骨組織への近接に基づく解剖学的画像の位置追跡座標系との位置合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
A61B6/03 377
A61B6/03 360N
A61B6/03 360J
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018081192
(22)【出願日】2018-04-20
(65)【公開番号】P2018183581
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-20
(31)【優先権主張番号】15/493,703
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-268259(JP,A)
【文献】特開2012-213557(JP,A)
【文献】米国特許第06560354(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0193053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055、6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
患者器官の三次元(3D)解剖学的画像において、前記患者器官の皮膚のそれぞれの事前定義された部位に対応する複数の解剖学的ポイントを第1の座標系で識別することと、
第2の座標系において、前記患者器官の前記皮膚の前記それぞれの事前定義された部位で位置追跡システムの位置センサにより測定された複数の位置を受信することと、
各事前定義された部位で、前記患者器官のそれぞれの解剖学的ポイントと最も近接する骨組織との間の距離を計算することと、
前記解剖学的ポイントと前記最も近接する骨組織との間のそれぞれの距離に基づき、前記事前定義された部位に重みを割り当てることと、
前記割り当てられた重みを用いて前記位置と前記それぞれの解剖学的ポイントとの間を相関させることにより、前記第1の座標系と前記第2の座標系とを位置合わせすることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記重みを割り当てることは、前記最も近接する骨組織へ第1の距離を有する第1の事前定義された部位に第1の重みを割り当てることと、前記最も近接する骨組織へ前記第1の距離よりも小さい第2の距離を有する第2の事前定義された部位に、前記第1の重みよりも大きい第2の重みを割り当てることとを含み、
前記第1の座標系と前記第2の座標系とを位置合わせすることは、前記第1の座標系と前記第2の座標系との間の変換を計算することを含、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記3D解剖学的画像はコンピュータ断層撮影(CT)解剖学的画像を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記患者器官は患者頭部を含み、前記複数の位置を受信することは、前記患者頭部の前記事前定義された部位に置かれた位置を受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の位置を受信することは、前記位置センサを含む位置合わせツールから前記位置を受信することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記距離を計算することは、複数のコンポーネントを有するユークリッド距離ベクトルを計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記重みを割り当てることは、前記ユークリッド距離ベクトルの各それぞれのコンポーネントに重みを割り当てることを含み、前記第1の座標系と前記第2の座標系とを位置合わせすることは、各事前定義された部位で、前記それぞれのコンポーネントの各々に前記割り当てられた重みを用いることを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
装置であって、
位置追跡システムの位置センサを含む位置合わせツールであって、第2の座標系において、患者器官の皮膚のそれぞれの事前定義された部位に前記位置合わせツールを配置することによって複数の位置を取得するように構成されている、位置合わせツールと、
プロセッサであって、
前記患者器官の三次元(3D)解剖学的画像において、前記それぞれの事前定義された部位に対応する複数の解剖学的ポイントを第1の座標系で識別し、
前記第2の座標系に、測定された前記複数の位置を受信し、
各事前定義された部位で、前記患者器官のそれぞれの解剖学的ポイントと最も近接する骨組織との間の距離を計算し、
前記解剖学的ポイントと前記最も近接する骨組織との間のそれぞれの距離に基づき、前記事前定義された部位に重みを割り当て、
前記割り当てられた重みを用いて前記位置と前記それぞれの解剖学的ポイントとの間を相関させることにより、前記第1の座標系と前記第2の座標系とを位置合わせするように構成されているプロセッサと、
を備える、装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記最も近接する骨組織へ第1の距離を有する第1の事前定義された部位に第1の重みを割り当て、前記最も近接する骨組織へ前記第1の距離よりも小さい第2の距離を有する第2の事前定義された部位に、前記第1の重みよりも大きい第2の重みを割り当て、
前記第1の座標系と前記第2の座標系との間の変換を計算するように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記3D解剖学的画像はコンピュータ断層撮影(CT)解剖学的画像を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記患者器官は患者頭部を含み、前記プロセッサは、前記患者頭部の前記事前定義された部位に置かれた位置を受信するように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、複数のコンポーネントを有するユークリッド距離ベクトルを計算することによって前記距離を計算するように構成されている、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、前記ユークリッド距離ベクトルの各それぞれのコンポーネントに重みを割り当て、各事前定義された部位で、前記それぞれのコンポーネントの各々に前記割り当てられた重みを用いるように構成されている、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に座標系の位置合わせに関し、特に静止器官への近接に基づき座標系を位置合わせするための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ断層撮影イメージングシステム及び位置追跡システムは、画像誘導手技などの様々な医療用途で使用される場合がある。
【0003】
例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,560,354号では、ポイントと表面との重み付け組み合わせを用いて画像を物理的空間に位置合わせするための装置及び方法が記載される。X線コンピュータ断層撮影を介して得られる患者の画像は、患者身体で得られる物理的測定値に位置合わせされる。患者身体の異なる部分には、異なる数値の重みが与えられており、例えば、骨の測定値が皮膚の測定値よりも正確であると考えられる場合には、骨には皮膚よりも高い重みを与えることができる。重みは、剛体変換係数を決定する反復位置合わせプロセスで用いられる。
【0004】
その開示が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第8,271,068号では、カテーテル先端の三次元(3D)位置を決定する方法が記載され、方法には呼吸運動のためのカテーテルの先端の二次元(2D)位置を補正して、補正された2Dカテーテル位置を生成することと、補正された2Dカテーテル位置の周りに重み付けされたサンプルポイントを生成することと、重み付けされたサンプルポイントの対応ポイントを3D画像に決定することと、各対応ポイントの重み付け平均及び重み付け共分散を計算することと、重み付け平均及び重み付け共分散の融合から3D画像のカテーテル先端の3D位置を決定することとを含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載される本発明の一実施形態は、患者器官の三次元(3D)解剖学的画像において、患者器官の皮膚のそれぞれの事前定義された部位に対応する複数の解剖学的ポイントを第1の座標系で識別することを含む方法を提供する。第2の座標系において、患者器官の皮膚のそれぞれの事前定義された部位で位置追跡システムの位置センサにより測定された複数の位置が受信される。各事前定義された部位で、患者器官のそれぞれの解剖学的ポイントと最も近接する骨組織との間の距離が計算される。解剖学的ポイントと最も近接する骨組織との間のそれぞれの距離に基づき、事前定義された部位に重みが割り当てられる。第1の座標系と第2の座標系とは、割り当てられた重みを用いて位置とそれぞれの解剖学的ポイントとの間を相関させることにより位置合わせされる。
【0006】
いくつかの実施形態では、重みを割り当てることは、最も近接する骨組織へ第1の距離を有する第1の事前定義された部位に第1の重みを割り当てることと、最も近接する骨組織へ第1の距離よりも小さい第2の距離を有する第2の事前定義された部位に、第1の重みよりも大きい第2の重みを割り当てることとを含み、第1の座標系と第2の座標系とを位置合わせすることは、第1の座標系と第2の座標系との間の変換を計算することを含み、第2の事前定義された部位は第1の事前定義された部位よりも高いインパクトを有する。別の実施形態では、3D解剖学的画像はコンピュータ断層撮影(CT)解剖学的画像を含む。更に別の実施形態では、患者器官は患者頭部を含み、複数の位置を受信することは、患者頭部の事前定義された部位に置かれた位置を受信することを含む。
【0007】
一実施形態では、複数の位置を受信することは、位置センサを含む位置合わせツールから位置を受信することを含む。他の実施形態では、距離を計算することは、複数のコンポーネントを有するユークリッド距離ベクトルを計算することを含む。更に他の実施形態では、重みを割り当てることは、ユークリッド距離ベクトルの各それぞれのコンポーネントに重みを割り当てることを含み、第1の座標系と第2の座標系とを位置合わせすることは、各事前定義された部位で、それぞれのコンポーネントの各々に割り当てられた重みを用いることを含む。
【0008】
本発明の実施形態によれば、位置合わせツール及びプロセッサを含む装置が、更に提供される。位置合わせツールは、第2の座標系において、患者器官の皮膚のそれぞれの事前定義された部位に位置合わせツールを配置することによって複数の位置を取得するように構成されている、位置追跡システムの位置センサを含む。プロセッサは、患者器官の三次元(3D)解剖学的画像において、それぞれの事前定義された部位に対応する複数の解剖学的ポイントを第1の座標系で識別し、第2の座標系に、測定された複数の位置を受信し、各事前定義された部位で、患者器官のそれぞれの解剖学的ポイントと最も近接する骨組織との間の距離を計算し、解剖学的ポイントと最も近接する骨組織との間のそれぞれの距離に基づき、事前定義された部位に重みを割り当て、割り当てられた重みを用いて位置とそれぞれの解剖学的ポイントとの間を相関させることにより、第1の座標系と第2の座標系とを位置合わせするように構成されている。
【0009】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による、サイナプラスティ外科用システムの概略的な絵画図である。
図2】本発明の一実施形態による、患者顔面の解剖学的画像にオーバーレイされる測定ポイントの概略的な絵画図である。
図3】本発明の一実施形態による、磁気位置追跡システムの座標系と事前取得されたコンピュータ断層撮影(CT)画像の座標系を位置合わせする方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概要
サイナプラスティなどのいくつかの医療手技は、関連器官の解剖学的画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせすることを含む場合がある。位置合わせを使用して、位置センサが嵌着された外科用ツールは、治療される器官へ進められ、解剖学的画像にオーバーレイされて視覚化され得る。原理では、術前位置合わせは、位置追跡システムの位置センサが嵌着された外部の位置合わせツールを使用して行われてもよい。そのようなツールを、患者の顔面上のあらかじめ選定された部位(例えば、額、及び2つの頬の中心)に付けることができる。解剖学的画像は次に、あらかじめ選定された部位における組織の測定された位置に基づいて、位置追跡システムの座標系に位置合わせすることができる。
【0012】
しかしながら、この可能な解決策は、1mmよりも良好な精度レベルで解剖学的画像の位置合わせを得ることが一般には重要であるサイナプラスティ手技に対しては不正確であり不適切である可能性が高い。一部の顔面要素には自然に変形する軟組織が含まれ、位置合わせツールにより組織に制御されない圧力が加えられるため、この仮説的解決法の精度は許容不可となる場合がある。
【0013】
以下で説明する本発明の実施形態は、解剖学的イメージングシステムの座標系と位置追跡システムの座標系との間の位置合わせをするための改善された技法を提供する。開示された実施形態では、患者頭部の三次元(3D)解剖学的画像はコンピュータ断層撮影(CT)システムを用いて取得される。解剖学的画像は、CTの座標系で測定される解剖学的ポイントを含み、位置追跡システムの座標系にマッピングされるべきである。
【0014】
いくつかの実施形態では、2つの座標系の間のマッピングは、位置追跡システムの位置センサを含む位置合わせツールを用いて実行される。位置合わせを実行するために、医師は位置合わせツールの遠位端を、患者顔面の皮膚の複数の事前定義された部位に付ける。事前定義された部位の各々で、位置追跡システムはそれ自体の座標系で位置センサの位置(及び事前定義された部位の位置)を測定する。
【0015】
いくつかの実施形態では、解剖学的画像はプロセッサに供給され、プロセッサは解剖学的画像で事前定義された部位を識別し、各事前定義された部位に対して、事前定義された部位に対応する解剖学的ポイントと患者顔面の骨組織の最も近接するポイントとの間の距離を(CT座標系において)計算する。
【0016】
皮膚から骨までの距離は、頭部表面をわたって変化する場合がある。例えば、額では、解剖学的ポイントと骨組織との間の最小距離は、頬での最小距離よりも実質的に短い。額で事前定義された部位の位置測定値は、したがって、頬での位置測定値よりも正確であると予測される。
【0017】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、解剖学的ポイントと最も近接する骨組織との間のそれぞれの距離に基づき、事前定義された部位に重みを割り当てるように構成される。額と頬の例では、プロセッサは、頬よりも額の事前定義された部位により高い重み値を割り当てる。
【0018】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、位置合わせツールにより取得された位置とCTにより取得された画像のそれぞれの解剖学的ポイントとの間を相関させることにより、CTの座標系を位置追跡システムの座標系に位置合わせするように構成される。一実施形態では、プロセッサは、反復最近接点(iterative closest point)(ICP)法などの、適切な位置合わせ方法を適用することにより、それぞれの重みを用いて位置合わせを実行する。位置合わせプロセスは、典型的に2つの座標系の間の変換を推定し、それは、最も近接する骨組織までの距離が小さい部位の測定値に高い重みが所与され、その逆の場合もある。
【0019】
その高い精度のために、開示された技法は、例えば、患者の頭部に挿入され、かつ位置追跡システムの別の位置センサを備えるサイナプラスティ外科用ツールの、改善されたナビゲーションを可能にする。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、サイナプラスティ外科用システム20の概略的な絵画図である。システム20は、磁気位置追跡システムを備え、本システムは、患者22の頭部の1つ又は複数の位置センサの位置を追跡するように構成されている。磁気位置追跡システムは、磁場発生器及び1つ又は複数の位置センサを備える。位置センサは、磁場発生器から検知された外部磁場に応答して位置信号を生成し、それによって、プロセッサ34が、以下に説明するように、位置追跡システムの座標系内での各センサの位置をマッピングすることを可能にする。
【0021】
この位置検知方法は、例えば、Biosense Webster Inc.(Diamond Bar,Calif.)が製造するCARTO(商標)システムなどの様々な医療用途において実施されており、その詳細は、米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号、及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに、米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号、及び同第2004/0068178(A1)号に説明されており、これらの開示内容をいずれも参照によって本明細書に援用するものである。
【0022】
本実施例では、システム20は、ロケーションパッド40を備え、ロケーションパッドは、フレーム46上に固定された複数の磁場発生器44を備える。図1に示す例示的な構成では、パッド40は5つの磁場発生器44を備えるが、任意の他の好適な数の発生器44を使用することができる。パッド40は、発生器44が患者の外部の固定された既知の位置に位置するように、患者22の頭部41の下に配置された枕42を更に備える。システム20は、コンソール33を更に備え、コンソールは、頭部41のまわりに事前定義された作業体積の磁場を発生するように、磁場発生器44を適した信号で駆動するように構成されたドライバ回路(図示せず)を備える。
【0023】
いくつかの実施形態では、システム20は、手持ち式ワンド30等の位置合わせツールを備え、位置合わせツールは、磁気位置追跡システムの座標系を事前取得コンピュータ断層撮影(CT)画像の座標系と位置合わせするためにシステム20によって使用される。位置合わせツールは、位置測定値を取得するように構成され、以下の図2に詳細に示される。
【0024】
一実施形態では、プロセッサ34は典型的には、外部源からのデータ、並びにケーブル32を経由してワンド30の位置センサからの測定値を受信するため、並びにシステム20の他のコンポーネントを制御するために、適したフロントエンド回路及びインターフェース回路を備える汎用コンピュータである。コンソール33は、入力装置39、及びデータを表示するように構成されるユーザーディスプレイ36を更に備える。
【0025】
典型的には、医師24は、患者の頭部41の外面上の複数の事前定義された部位へ順次にワンド30を付ける。事前定義された各部位は典型的には、頭部41、額、鼻柱26(患者22の眼と眼の間に位置する)、頬、又は任意の他の適切な識別可能な特徴であることが容易に識別可能な特徴であるように選択される。事前定義された部位は、以下の図2に詳細に示される。
【0026】
一実施形態では、プロセッサ34は、外部CTシステム(図示せず)を使用して得たコンピュータ断層撮影(CT)画像35を受信する。プロセッサ34は、画像35を使用して、患者の頭部41の少なくとも部分の表面の画像を形成する。いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、ハウンスフィールド単位(HU)のような、任意の適切な基準又は技法を用いて、CT画像内の異なるタイプの組織を区別し、特に皮膚と骨組織を識別し得る。
【0027】
一実施形態では、患者の頭部上の事前定義された部位に置かれたとき、ワンド30は、この事前定義された部位の位置を示す位置信号を磁気位置追跡システムの座標系内で生成するように構成される。ワンド30による骨組織の測定値の取得は、以下の図2に詳細に説明される。
【0028】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、患者頭部の各事前定義された部位に対する2つの座標、つまりCTシステムの座標系の「解剖学的ポイント」と、位置追跡システムの座標系の「位置」を計算するように構成される。位置は、この事前定義された部位におけるワンド30の位置測定値から導出され、この部位における皮膚の座標を磁気位置追跡システムの座標系で示す。解剖学的ポイントは、CT画像において識別されるように、この部位における皮膚の座標を示す。
【0029】
一実施形態では、プロセッサ34は、画像35の中で解剖学的ポイントと事前定義された部位の位置との間で相関させることにより、CT画像を位置追跡システムの座標系と位置合わせするように構成される。
【0030】
位置合わせプロセスは典型的には、実際のサイナプラスティ手技の前に行われる。サイナプラスティ手技中に、医師24は、頭部41の中へと、サイナプラスティカテーテル、又は追加的な位置追跡システムの位置センサを備える他の外科用ツール等の医療機器(図示せず)を挿入してもよい。CT画像が位置追跡システムと既に位置合わせされているので、医師24は、その遠位端がCT画像上に表示されている医療機器を、頭部41の中の標的部位へ進めることができる。
【0031】
代替的な実施形態では、CT画像35の代わりに、プロセッサ34は、蛍光透視又は磁気共鳴撮像(MRI)等の別の適した解剖学的撮像技法を使用して取得した1つ又は複数の画像を受信し、これらの解剖学的画像を上述の座標系と位置合わせするように構成される。
【0032】
簡単かつ明瞭なものとするため、図1は、開示されている技法に関連する要素のみを示す。システム20は典型的には、開示されている技法に直接には関連せず、したがって図1及び対応する説明から意図的に省略されている付加的なモジュール及び要素を備える。
【0033】
プロセッサ34は、システムによって使用される機能を実行し、処理又はその他の方法でソフトウェアにより使用されるデータをメモリ(不図示)に記憶させるようにプログラムされ得る。このソフトウェアは、例えばネットワークを介して電子的形態でプロセッサにダウンロードするか、又は光学的、磁気的若しくは電子的記録媒体など、持続性の有形媒体上に提供されてもよい。又は、プロセッサ34の機能の一部又は全ては、専用又はプログラム可能なデジタルハードウェア要素によって行われてもよい。
【0034】
解剖学的画像を位置追跡システムと位置合わせする
図2は、本発明の一実施形態による、患者顔面の三次元(3D)解剖学的画像50の概略的側面図である。画像50は、例えば、上記図1の画像35と置換し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、外部CTシステムにより取得された3D解剖学的画像を用いて、又は上記図1に記載されるような任意の他の好適な解剖学的イメージングシステムを用いて画像50を表示するように構成される。
【0036】
いくつかの実施形態では、画像50は、患者22の皮膚52(破線で示される)と、患者22のそれぞれの額、鼻柱及び頬の骨54A、54B及び54Cなどの骨組織を示す。
【0037】
図2は、画像50内に、額の部位56、鼻柱の部位58及び頬の部位60などの、皮膚52の複数の事前定義された部位を示す。
【0038】
ここで、事前定義された部位56で取得された解剖学的構造及び測定値を示す挿入図51を参照する。一実施形態では、医師24は、患者22の額の皮膚にワンド30を適用し、ワンド30の位置センサを用いて、位置追跡システムの座標系内の部位56の位置を得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、CTポイント62Aと呼ばれる、CTシステムにより取得された、複数の解剖学的ポイントを含む基準のフレームを表示するように構成される。以下の説明において、明瞭なものとするために、用語「解剖学的ポイント」及び「CTポイント」は互換的に用いられる。CTポイント62Aは、部位56に近接して、患者22の額の皮膚52に位置付けられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、画像50内の事前定義された部位56を識別し、部位56に最も近接するCTポイント62Aを選定するように構成される。プロセッサ34は更に、選定されたCTポイント62Aと骨54Aとの間の最小距離64A、すなわち患者顔面の骨組織の上の識別された部位56に最も近接する骨組織である、骨54Aのポイントへの距離を計算するように構成される。
【0041】
以下の説明において、明瞭なものとするために、用語「距離」及び「距離ベクトル」は互換的に用いられる。
【0042】
ここで、事前定義された部位60で実行された解剖学的構造及び測定値を示す挿入図53を参照する。いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、皮膚52に位置するCTポイント62C、骨54C、及びワンド30の表示66を表示するように構成される。プロセッサ34は更に、事前定義された部位60に近接して位置するCTポイント62Cを識別し、識別されたCTポイント62Cと事前定義された部位60に最も近接する骨組織である骨54Cとの間の距離64Cを計算するように構成される。
【0043】
図2の例に示すように、距離64Cは、患者22の頬の皮膚52と軟組織の厚みを含み、したがって、主として皮膚52のみの厚みを含む距離64Aよりも実質的に長く見える。
【0044】
患者22の顔面は、骨54A、54B及び54Cなどの硬組織と、皮膚52及び皮膚とそれぞれの骨との間にある肉などの軟組織とを含む。医師22が事前定義された部位で皮膚52にワンド30を順次に付ける場合、ワンド30の遠位先端により加えられる制御されない圧力が皮膚52を変形する場合があることが理解されよう。結果として、位置センサを用いて事前定義された部位に対して獲得される位置は、意図した事前定義された部位から逸脱する場合があり、それによって、不正確な位置合わせをもたらす場合がある。
【0045】
発明者らは、皮膚52の事前定義された部位とそれぞれの最も近接する骨組織との間の距離が短いほど、ワンド30の位置センサにより取得される位置の精度が高くなることを発見した。いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、解剖学的ポイントと最も近接する骨組織との間のそれぞれの距離に基づき事前定義された部位の各々に重みを割り当てるように構成される。重みは、距離の値に反比例して割り当てることができる。
【0046】
例えば、部位56での距離64Aは、部位60での距離64Cよりも実質的に小さい。一実施形態では、プロセッサ34は、部位60で割り当てられた重みと比較して、部位56でより大きい重みを割り当てるように構成される。
【0047】
同様に、皮膚52と骨54Bとの間の最小距離は、最小距離64Aよりも長く、距離64Cよりも短い。一実施形態では、プロセッサ34は、事前定義された部位58に重みを割り当てるように構成され、その重みは部位60に割り当てられる重みよりも大きく、部位56に割り当てられる重みよりも小さい。
【0048】
いくつかの実施形態では、距離(例えば、64A)は、3D座標系においてユークリッド距離ベクトルとして計算される。一実施形態では、距離ベクトルは、デカルト座標系で計算することができ、したがって、それぞれのx、y及びz軸の3つのコンポーネントを含み得る。この実施形態では、(例えば、以下の式(2)において)インデックスiでマークされた部位では、プロセッサ34は、x、y及びz軸の距離ベクトルコンポーネントそれぞれに対して、重みa、b及びcを割り当てるように構成される。
【0049】
事前定義された部位に近接する骨に基づく座標系の位置合わせ
いくつかの実施形態では、例えば、事前定義された部位56、58及び60の皮膚52で取得された解剖学的ポイントは、CTシステムの座標系内で「CT基準系(CFOR)」と呼ばれる。同様に、位置追跡システムの座標系内で、同じ部位(例えば、部位56、58及び60)で取得された位置は、「位置基準系(PFOR)」と呼ばれる。
【0050】
いくつかの実施形態では、CFOR系とPFOR系との間の位置合わせは、反復最近接点(ICP)などの、任意の適切な方法を用いて実行され得る。
【0051】
ICP法は、座標系間の最適なマッピングを見つけるための変換(並進及び/又は回転)を反復して適用する。
【0052】
各事前定義された部位で、解剖学的ポイントと対応する位置ポイントとの間の距離ベクトルは、式(1)により与えられる。
【0053】
【数1】
式中、dpositionは、各事前定義された部位での解剖学的ポイントと対応する位置との間の距離ベクトルであり、
positionは、CFOR系における解剖学的ポイントの位置(例えば、ポイント62A)であり、
positionは、PFOR系において位置センサにより取得された位置(例えば、部位56)である。
【0054】
いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、例えば、加重最小自乗最小化手順を用いて、位置とそれぞれの解剖学的ポイントとの間を相関させることにより、CTと位置追跡システムとの座標系を位置合わせするように構成される。一実施形態では、プロセッサ34は更に、式(2)により所与されるように、事前定義された部位毎に距離ベクトルの各コンポーネント(例えば、x、y及びz)に割り当てられた重みを加えるように構成される。
【0055】
【数2】
式中、a、b及びcは、x、y及びz座標それぞれに対してインデックスiでマークされた事前定義された部位で割り当てられた重みである。
xi、pyi及びpziは、x、y及びz座標それぞれでの解剖学的ポイントの位置のコンポーネントである。
xi、qyi及びqziは、x、y及びz座標それぞれで位置センサにより取得された位置のコンポーネントである。
【0056】
、b及びcの値は、事前定義された部位での解剖学的ポイント(例えば、部位56のCTポイント62A)と、最も近接する骨組織(例えば、骨54A)と、の間の距離ベクトルのコンポーネント(例えば、距離64A)に基づき計算されることに留意する。
【0057】
図3は、本発明の一実施形態による、磁気位置追跡システムの座標系をCTイメージングシステムの座標系と位置合わせする方法を概略的に示すフローチャートである。
【0058】
方法は、画像取得ステップ100で開始しており、オペレータ(例えば、医師24)がCTシステム又は任意の他の好適なイメージングシステムを用いて患者22の顔面の3D解剖学的画像50を取得する。いくつかの実施形態では、プロセッサ34は、画像50のそれぞれの事前定義された部位(例えば、部位56及び60)で、顔面の骨組織と、ポイント62A及び62Cなどの複数のCTポイントとを表示するように構成される。位置取得ステップ102では、医師24は、位置センサを含むワンド30を事前定義された部位の各々に付け、位置追跡システムの座標系のそれぞれの位置を取得する。
【0059】
距離計算ステップ104では、プロセッサ34は画像50内の事前定義された部位を識別し、各事前定義された部位で、それぞれのCTポイントと最も近接する骨組織との間の距離を上述のように計算する。
【0060】
重み割り当てステップ106では、プロセッサ34は、CTポイントと最も近接する骨組織との間のそれぞれの距離に基づき事前定義された部位の各々に重みを割り当てる。例えば、距離64Aの値は、距離64Cの値よりも小さく、したがって事前定義された部位56(額)での重みの値は、事前定義された部位60(頬)での重みの値よりも高い。
【0061】
位置合わせステップ108では、プロセッサ34は、事前定義された部位で位置センサにより取得された位置とそれぞれのCTポイントとの間を、各事前定義された部位に割り当てられたそれぞれの重みを用いて相関させることによって、CTと位置追跡システムとの座標系の間を位置合わせする。
【0062】
額での重みの値は頬での重みの値よりも大きく、したがって、事前定義された部位56での重みは、事前定義された部位60での重みよりも位置合わせに対するインパクトが高いことに留意する。
【0063】
一実施形態では、プロセッサ34は、反復最近接点(ICP)法などの、CFOR系とPFOR系のポイント対の間の距離の合計を反復的に最小化する適切な方法を適用することにより位置合わせを実行する。ICP法の更なる詳細は、例えば、Rusinkiewiczらにより、3Dデジタルイメージング及びモデリングに関する第3回国際会議の議事録、「Efficient Variants of the ICP Algorithm」、145~152ページ(2005年)、及び、Chen etらにより、ロボット工学及び自動化に関するIEEE会議の議事録、「Object Modeling by Registration of Multiple Range Images」、2724~2729ページ、第3巻(1991年)において提供され、それらは共に参照により本明細書に組み込まれる。要約すると、ICP法は典型的に以下の6つの段階を含む。1.一方又は両方のメッシュにおけるポイントのいくつかのセットを選定する。2.これらのポイントを他方のメッシュのサンプルに一致させる。3.対応する対を適切に重み付けする。4.各対を個別に見ること、又は対のセットの全体を考慮することに基づき特定の対を拒否する。5.ポイント対に基づきエラーメトリックを割り当てる。6.エラーメトリックを最小化する。
【0064】
本明細書に記載された実施形態は、主としてサイナプラスティ用途に関するが、本明細書に記載される方法及びシステムは、他の耳鼻咽喉(ENT)用途及び整形外科用途などの、他の用途にも用いられ得る。
【0065】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に詳細に示し説明したものに限定されないことが認識されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、従来技術において開示されていない変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0066】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
患者器官の三次元(3D)解剖学的画像において、前記患者器官の皮膚のそれぞれの事前定義された部位に対応する複数の解剖学的ポイントを第1の座標系で識別することと、
第2の座標系において、前記患者器官の前記皮膚の前記それぞれの事前定義された部位で位置追跡システムの位置センサにより測定された複数の位置を受信することと、
各事前定義された部位で、前記患者器官のそれぞれの解剖学的ポイントと最も近接する骨組織との間の距離を計算することと、
前記解剖学的ポイントと前記最も近接する骨組織との間のそれぞれの距離に基づき、前記事前定義された部位に重みを割り当てることと、
前記割り当てられた重みを用いて前記位置と前記それぞれの解剖学的ポイントとの間を相関させることにより、前記第1の座標系と前記第2の座標系とを位置合わせすることと、
を含む、方法。
(2) 前記重みを割り当てることは、前記最も近接する骨組織へ第1の距離を有する第1の事前定義された部位に第1の重みを割り当てることと、前記最も近接する骨組織へ前記第1の距離よりも小さい第2の距離を有する第2の事前定義された部位に、前記第1の重みよりも大きい第2の重みを割り当てることとを含み、
前記第1の座標系と前記第2の座標系とを位置合わせすることは、前記第1の座標系と前記第2の座標系との間の変換を計算することを含み、前記第2の事前定義された部位は前記第1の事前定義された部位よりも高いインパクトを有する、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記3D解剖学的画像はコンピュータ断層撮影(CT)解剖学的画像を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記患者器官は患者頭部を含み、前記複数の位置を受信することは、前記患者頭部の前記事前定義された部位に置かれた位置を受信することを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記複数の位置を受信することは、前記位置センサを含む位置合わせツールから前記位置を受信することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0067】
(6) 前記距離を計算することは、複数のコンポーネントを有するユークリッド距離ベクトルを計算することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記重みを割り当てることは、前記ユークリッド距離ベクトルの各それぞれのコンポーネントに重みを割り当てることを含み、前記第1の座標系と前記第2の座標系とを位置合わせすることは、各事前定義された部位で、前記それぞれのコンポーネントの各々に前記割り当てられた重みを用いることを含む、実施態様6に記載の方法。
(8) 装置であって、
位置追跡システムの位置センサを含む位置合わせツールであって、第2の座標系において、患者器官の皮膚のそれぞれの事前定義された部位に前記位置合わせツールを配置することによって複数の位置を取得するように構成されている、位置合わせツールと、
プロセッサであって、
前記患者器官の三次元(3D)解剖学的画像において、前記それぞれの事前定義された部位に対応する複数の解剖学的ポイントを第1の座標系で識別し、
前記第2の座標系に、測定された前記複数の位置を受信し、
各事前定義された部位で、前記患者器官のそれぞれの解剖学的ポイントと最も近接する骨組織との間の距離を計算し、
前記解剖学的ポイントと前記最も近接する骨組織との間のそれぞれの距離に基づき、前記事前定義された部位に重みを割り当て、
前記割り当てられた重みを用いて前記位置と前記それぞれの解剖学的ポイントとの間を相関させることにより、前記第1の座標系と前記第2の座標系とを位置合わせするように構成されているプロセッサと、
を備える、装置。
(9) 前記プロセッサは、
前記最も近接する骨組織へ第1の距離を有する第1の事前定義された部位に第1の重みを割り当て、前記最も近接する骨組織へ前記第1の距離よりも小さい第2の距離を有する第2の事前定義された部位に、前記第1の重みよりも大きい第2の重みを割り当て、
前記第1の座標系と前記第2の座標系との間の変換を計算するように構成され、前記第2の事前定義された部位は前記第1の事前定義された部位よりも高いインパクトを有する、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記3D解剖学的画像はコンピュータ断層撮影(CT)解剖学的画像を含む、実施態様8に記載の装置。
【0068】
(11) 前記患者器官は患者頭部を含み、前記プロセッサは、前記患者頭部の前記事前定義された部位に置かれた位置を受信するように構成されている、実施態様8に記載の装置。
(12) 前記プロセッサは、複数のコンポーネントを有するユークリッド距離ベクトルを計算することによって前記距離を計算するように構成されている、実施態様8に記載の装置。
(13) 前記プロセッサは、前記ユークリッド距離ベクトルの各それぞれのコンポーネントに重みを割り当て、各事前定義された部位で、前記それぞれのコンポーネントの各々に前記割り当てられた重みを用いるように構成されている、実施態様12に記載の装置。
図1
図2
図3