(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】X線保護を有する拡張現実ゴーグル
(51)【国際特許分類】
A61B 6/10 20060101AFI20221108BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A61B6/10 302
A61B6/00 300Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018106710
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-03-22
(32)【優先日】2017-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-213709(JP,A)
【文献】特開2014-155207(JP,A)
【文献】米国特許第05140710(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人用ディスプレイ装置であって、
フレームと、
前記フレームに取り付けられた、二重用途プレートであって、
ユーザーが場面を見ている間に前記ユーザーによって着用されることと、
X線照射が前記
二重用途プレートを通過して前記ユーザーの眼に達するのを少なくとも部分的に遮断することと、
前記場面に重ね合わせて前記ユーザーから見える情報を表示することと、
を行うように構成されている、二重用途プレートと、
前記フレームにおいて前記ユーザーに曝露される前記X線照射による曝露量を測定するための、前記フレームに取り付けられた検出器であって
、前記X線照射のレベルを測定するように構成されている、検出器と、
電子回路であって、前記
二重用途プレート及び前記検出器に接続されており、表示信号を前記
二重用途プレートとやりとりし、これにより前記情報を表示し、かつ前記検出器により測定された前記X線照射の前記レベルを示す制御信号を送信するように構成されている、電子回路と、
を備
え、
前記電子回路がトランシーバを備え、該トランシーバは、前記表示信号及び前記制御信号を外部システムとやりとりするように構成されており、
前記外部システムが蛍光透視撮像システム含み、
前記場面は、前記蛍光透視撮像システムにより取得された、前記ユーザーが医療処置を実施している患者の臓器を提示し、
前記外部システムは、前記フレームにおける前記ユーザーに曝露される前記X線照射により前記曝露量が閾値を超えたかどうかを判定するように構成されている、個人用ディスプレイ装置。
【請求項2】
前記蛍光透視撮像システムのX線検出器により測定されたX線照射のレベルに基づいて、前記患者の前記臓器の解剖構造及び医療用ツールを表す画像信号が生成される、請求項1に記載の個人用ディスプレイ装置。
【請求項3】
前記医療用ツールはカテーテルである、請求項2に記載の個人用ディスプレイ装置。
【請求項4】
前記臓器は心臓である、請求項3に記載の個人用ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記二重用途プレートがナノ粒子を含み、該ナノ粒子は、前記X線照射の少なくとも一部分を遮断するように構成されている、請求項1に記載の
個人用ディスプレイ装置。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、鉛又はセリウムを含む、請求項
5に記載の
個人用ディスプレイ装置。
【請求項7】
前記二重用途プレートが少なくとも材料フィルムを含み、該材料フィルムは、前記X線照射の少なくとも一部分を遮断するように構成されている、請求項1に記載の
個人用ディスプレイ装置。
【請求項8】
前記電子回路は、前記検出器により測定された
、前記フレームにおける前記X線照射の前記レベルが所定の閾値を超えた場合にアラートを発するように構成されている、請求項1に記載の
個人用ディスプレイ装置。
【請求項9】
前記情報が、少なくとも、前記臓器に適用される医療装置のマーカーを含む、請求項
1に記載の
個人用ディスプレイ装置。
【請求項10】
前記情報が、少なくとも、前記臓器の少なくとも一部分の解剖学的画像を含む、請求項
1に記載の
個人用ディスプレイ装置。
【請求項11】
個人用ディスプレイ装置を製造するための方法であって、
フレームを提供することと、
前記フレームに取り付けられた、二重用途プレートを提供することであって、該二重用途プレートは、ユーザーが場面を見ている間に前記ユーザーによって着用されるものであり、前記
二重用途プレートは、(i)X線照射が前記
二重用途プレートを通過して前記ユーザーの眼に達するのを少なくとも部分的に遮断することと、(ii)前記場面に重ね合わせて前記ユーザーから見える情報を表示することと、が可能である、提供することと、
前記
フレームに、
前記フレームにおいて前記ユーザーに曝露される前記X線照射による曝露量を測定するために、前記X線照射のレベルを測定する検出器を
取り付けることと、
表示信号を前記
二重用途プレートとやりとりし、かつ前記検出器により測定された前記X線照射の前記レベルを示す制御信号を送信するために、電子回路を、前記
二重用途プレート及び前記検出器に接続することと、
を含
み、
前記電子回路が、前記表示信号及び前記制御信号を外部システムとやりとりするためのトランシーバを備え、
前記外部システムが蛍光透視撮像システムを含み、
前記場面は、前記蛍光透視撮像システムにより取得された、前記ユーザーが医療処置を実施している患者の臓器を提示し、
前記外部システムは、前記フレームにおける前記ユーザーに曝露される前記X線照射により前記曝露量が閾値を超えたかどうかを判定するように構成されている、方法。
【請求項12】
前記蛍光透視撮像システムのX線検出器により測定されたX線照射のレベルに基づいて、前記患者の前記臓器の解剖構造及び医療用ツールを表す画像信号が生成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記トランシーバが無線トランシーバを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
前記二重用途プレートが、前記X線照射の少なくとも一部分を遮断するためのナノ粒子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子が、鉛又はセリウムを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記二重用途プレートが、少なくとも、前記X線照射の少なくとも一部分を遮断するための材料フィルムを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用視覚補助品に関するものであり、特に、X線保護を有する拡張現実ゴーグルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線照射に対する保護となる眼鏡が、様々な医学的用途において医師によって使用され得る。
【0003】
例えば、米国特許第5,140,710号(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、2層のX線保護材料を有する眼保護具について記述している。この保護具は、付随する可視光の実質的な透過を可能にする、メタライズされた薄層を含む。このメタライズされた薄層の下には鉛の層があり、これは、限定的な量の可視光の通過を可能にしながら、X線照射を効果的に吸収する機能をもつ。
【0004】
中国登録実用新案CN202060967U号(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、多機能視覚保護の医療用アイシェードについて記述しており、これはアイシェード本体を含む。このアイシェード本体の2つの端はひもで繋がれており、アイシェード本体は、内側が凹状になった空洞と、その空洞を覆うカバー本体とを備えて提供される。
【0005】
米国特許第5,422,684号(この開示は参照により本明細書に組み込まれる)は、格納可能な眼保護具を有する保護眼鏡の一形態について記述しており、この眼保護具は、着用者の眼を、機械的、化学的、又は放射線の危険から守る。この眼保護具は、延長位置と格納位置とを有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記述される本発明の一実施形態は、二重用途プレート、検出器、及び電子回路を含む個人用ディスプレイ装置を提供する。この二重用途プレートは、ユーザーが場面を見ている間にユーザーによって着用されることと、X線照射がこのプレートを通過してユーザーの眼に達するのを少なくとも部分的に遮断することと、場面に重ね合わせてユーザーから見える情報を表示することと、を行うように構成されている。検出器は、このプレートに接続され、かつX線照射のレベルを測定するように構成されている。電子回路は、このプレート及び検出器に接続されており、表示信号をプレートとやりとりし、これにより情報を表示し、かつ検出器により測定されたX線照射のレベルを示す制御信号を送信するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態において、この電子回路はトランシーバを含み、このトランシーバは、表示信号及び制御信号を外部システムとやりとりするように構成されている。他の実施形態において、この外部システムは撮像システムを含む。更に他の実施形態において、この二重用途プレートはナノ粒子を含み、このナノ粒子は、X線照射の少なくとも一部分を遮断するように構成されている。
【0008】
一実施形態において、このナノ粒子は鉛又はセリウムを含む。別の実施形態において、この二重用途プレートは少なくとも材料フィルムを含み、この材料フィルムは、X線照射の少なくとも一部分を遮断するように構成されている。更に別の実施形態において、この電子回路は、検出器により測定されたX線照射のレベルが所定の閾値を超えた場合にアラートを発するように構成されている。
【0009】
いくつかの実施形態において、場面は、ユーザーが医療処置を実施している患者の臓器を提示する。他の実施形態において、情報は、少なくとも、臓器に適用されている医療装置のマーカーを含む。更に他の実施形態において、情報は、少なくとも、臓器の少なくとも一部分の解剖学的画像を含む。
【0010】
加えて、本発明の一実施形態により、個人用ディスプレイ装置を製造するための方法が提供され、この方法は、二重用途プレートを提供することであって、この二重用途プレートは、ユーザーが場面を見ている間にユーザーによって着用されるものであり、このプレートは、(i)X線照射がこのプレートを通過してユーザーの眼に達するのを少なくとも部分的に遮断することと、(ii)場面に重ね合わせてユーザーから見える情報を表示することと、が可能である、提供すること、を含む。X線照射のレベルを測定する検出器が、このプレートに接続されている。表示信号をこのプレートとやりとりし、かつ検出器により測定されたX線照射のレベルを示す制御信号を送信するために、電子回路がこのプレート及び検出器に接続されている。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による、手術用システムの概略的絵画図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による、医療処置に使用されるゴーグルの概略的な絵画図である。
【
図2B】本発明の一実施形態による、医療処置に使用されるゴーグルを概略的に例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概要
蛍光透視装置などのX線システムは、様々な医療診断及び外科的処置において患者の臓器を撮像するために使用される。そのような処置を行う医師は、日常的に過量のX線照射に曝露される可能性があり、よって、放射線不透過性エプロン、環状の首防護、又は眼組織を放射線から保護するためのX線用眼保護具などの、放射線に対する保護手段を使用することがある。
【0014】
本明細書で以下に記述される本発明の実施形態は、X線照射に対する眼の保護と、処置の実施に使用するディスプレイとを組み合わせた、方法及び装置を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態において、ゴーグルなどの個人用ディスプレイ装置が、X線照射に曝露され得る医師により着用される。このゴーグルは、(i)拡張現実技法を用いて情報を表示し、かつ(ii)X線照射がプレートを通過して医師の眼組織に達するのを少なくとも部分的に遮断するように構成されている、二重用途プレートを含む。
【0016】
一実施形態において、このゴーグルは、X線照射の少なくとも一部分を遮断する材料を含む。この材料は、例えば、粒子の形態でゴーグル内に封入されてよく、又は、ゴーグル表面にフィルムとして適用されてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態において、この医師は、ゴーグルの二重用途プレート状に関連情報が表示されている間に場面(例えば患者の臓器)に重ね合わせてその場面を見る。この表示される情報には、目的の臓器の断面画像、医療装置のマーカー、又は処置中に医師にとって適切な任意のその他の情報が含まれ得る。
【0018】
いくつかの実施形態において、このゴーグルは、X線検出器を含み、これはゴーグル近くのX線照射のレベルを測定するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態において、このゴーグルは電子回路を含み、これはプレート及び検出器に電気的に接続されている。この回路は、表示信号をこのプレートとやりとりすることにより医師に対して情報を表示し、かつ検出器により測定されたX線照射のレベルを示す制御信号を送信するように構成されている。
【0020】
本開示の技法は、医師が処置中全体にわたって患者に対する注視と注意を集中させることができるようにしながら、医師の眼をX線照射から保護し、同時に、処置を成功裏に実施するのに必要な情報を表示する。
【0021】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、外科用システム20の概略的絵画図である。いくつかの実施形態において、システム20は、
図1に示すように、低侵襲処置に適用することができ、ここにおいて医師40は、好適なカテーテル22と、患者26のディスプレイ46上に表示されている心臓(又は目的とする任意のその他の臓器)の画像44とを使用して、処置を実施する。
【0022】
他の実施形態において、システム20は、例えば開心術などの任意の他の医療処置に適用することができ、開心術の場合、医師40は患者の心臓を直接視認する。これらの実施形態において、医師40は、カテーテル22の代わりに、又はこれに加えて、様々な好適な外科用ツールを使用することがある。
【0023】
いくつかの実施形態において、システム20は蛍光透視撮像システム36を含み、これは、患者26の目的の臓器(例えば心臓)のX線画像を生成するように構成されている。システム36は、X線源52及びX線検出器54を含み、これらはC字形アーム62に取り付けられている。X線源52は、可動式テーブル28に横たわっている患者26にX線70を照射するように構成されている。検出器54は、テーブル28の下に位置付けられ、患者26を通過したX線70を撮像するように構成されている。
【0024】
いくつかの実施形態において、システム20は、医師40が着用する、ゴーグル30などの個人用ディスプレイを含む。ゴーグル30は、X線70が医師40の眼に達するのを部分的又は完全に遮断し、かつ、医師40が見る場面に重ねて情報を表示するために、システム20の操作コンソール24と表示信号をやりとりするように構成されている。ゴーグル30については、以下で
図2A及び2Bに更に詳しく説明する。
【0025】
本開示において用語「ゴーグル」及び「眼鏡」は、互換可能に使用され、
図1に示すゴーグル30を指す。この図では、医師40が使用する保護眼鏡である。
【0026】
いくつかの実施形態において、コンソール24はトランシーバ50を含み、これはゴーグル30と無線信号60をやりとりするように構成されている。一実施形態において、信号60は、ゴーグル30の電子回路(
図2A及び2Bに図示)とやりとりされる表示信号を含む。別の実施形態において、信号60は、ゴーグル30に取り付けられた検出器(
図2Aに図示)により測定されたX線照射レベルを示し、かつゴーグル30の電子回路からトランシーバ50に送信される、通信信号を含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、コンソール24は駆動回路34を含み、これはケーブル56を介して蛍光透視撮像システム36を駆動し、システム36の検出器54により測定されたX線照射信号を受信するように更に構成されている。
【0028】
いくつかの実施形態において、コンソール24はプロセッサ42(典型的には汎用コンピュータ)を含み、これは、例えば回路34、トランシーバ50及びカテーテル22などの複数のソースから信号を受け取るための好適なフロントエンド及びインターフェース回路を備える。
【0029】
いくつかの実施形態において、プロセッサ42は、システム36の検出器54により測定されたX線照射のレベルに基づいて、患者の心臓の解剖構造並びに適用される医療用ツールを表わす画像信号を生成するように構成されている。この医療用ツールは、低侵襲処置の場合はカテーテル22を含み得、及び/又は、例えば開心術に使用される任意の好適なツールを含み得る。
【0030】
プロセッサ42は、システムが使用する機能を実行するためにソフトウェアでプログラムされてもよく、プロセッサはソフトウェアのためのデータをメモリ(図示なし)に保存する。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードされるか、又は光学的、磁気的又は電子的記憶媒体など、一時的でない有形の媒体上に提供されてもよい。あるいは、プロセッサ42の機能の一部又は全ては、専用又はプログラム可能なデジタルハードウェア要素によって行われてもよい。
【0031】
外科的処置におけるX線保護を有する拡張現実ゴーグルの使用
図2Aは、本発明の一実施形態によるゴーグル30の概略的な絵画図である。いくつかの実施形態において、ゴーグル30は、プラスチック又は任意の他の好適な材料から作製される透明プレート64を含む。このプレートは、任意の他の好適な材料から作製されるフレーム68に取り付けられている。
【0032】
いくつかの実施形態において、ゴーグル30は材料72を含み、これはプレート64の全面積にわたって適用され、かつ、X線70の放射の少なくとも一部分の通過が医師40の眼組織に達するのを防ぐように構成されている。
【0033】
一実施形態において、材料72は、ゴーグル30のプレート64内に均一に(又は別の好適な様相で)分配かつ封入された、酸化セリウム(CeO2)、及び/又は酸化鉛(PbO)、及び/又は任意の他の好適な材料のナノ粒子を含み得る。
【0034】
代替的に又は付加的に、材料72は、ゴーグル30の外側表面の1層又は2層以上のフィルムとして、及び/又はプレート64内に埋め込まれた層として、適用され得る。
【0035】
適用される材料72は、プレート64の透明性に顕著な影響をもたらさないことに注意されたい。
【0036】
いくつかの実施形態において、ゴーグル30は2つのディスプレイ74を含み、医師40の両眼のそれぞれに対して1つずつ配置される。他の実施形態において、ゴーグル30は任意の他の好適な数のディスプレイ74を含んでよく、例えば、選択された一方の眼の前に配置された単一のディスプレイを含み得る。
【0037】
医療処置中に、医師40の注視は、例えば低侵襲処置における画像44(
図1に示す)などの離れた場面に向けられるか、又は、開心術においては患者の心臓に直接向けられる。いくつかの実施形態において、ディスプレイ74は、この場面に重ね合わせて医師40から見える情報を表示するように構成されている。
【0038】
図2Aの例において、患者の心臓の選択された断面の断面画像が、両方のディスプレイ74に表示されている。いくつかの実施形態において、この選択された断面は撮像システム36により取得され、患者の心臓内のカテーテル22の表示を含み得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、ゴーグル30は検出器66及び電子回路76を含み、これらは、フレーム68上に取り付けられ、又は別法としてプレート64に任意の他の好適な様相で接続される。
【0040】
一実施形態において、検出器66は、ゴーグル30に当たっているX線70の照射レベルを測定するように構成されている。一実施形態において、電子回路76は検出器66の近傍に取り付けられ、検出器66により測定されたX線照射のレベルを受信するように構成されている。回路76については、以下で
図2Bに詳しく説明する。
【0041】
図2Bは、本発明の一実施形態による、ゴーグル30の回路76を概略的に図示したブロック図である。いくつかの実施形態において、回路76は、プロセッサ80とトランシーバ82とを含む。いくつかの実施形態において、トランシーバ82はアンテナ78に接続され、無線信号60を(アンテナ78を介して)コンソール24のトランシーバ50とやりとりするように構成されている。一実施形態において、信号60は、コンソール24のプロセッサ42とゴーグル30のプロセッサ80との間でやりとりされた表示信号を含み得る。
【0042】
例えば、プロセッサ80は、システム36により取得された患者の心臓の断面図を含む表示信号を受信し、かつ、この表示信号に基づいて、
図2Aに示すように、ゴーグル30のディスプレイ74にこの断面図を表示するように構成されている。この実施形態において、医師40は、例えば画像44(低侵襲処置の場合)などの選択された場面に重ね合わせて、又は開心術中に患者26の心臓に直接、断面図を見ることができる。
【0043】
別の実施形態において、プロセッサ80は検出器66により測定されたX線照射の測定値(例えば、X線照射のレベル)を受信し、かつその照射測定値に基づいて制御信号を生成するように構成されている。この実施形態において、制御信号はトランシーバ82及び50を介してプロセッサ42へと送信され、照射の測定レベルが所定の限度を超えたときに、蛍光透視撮像システム36の操作を停止するよう医師40に促すことができる。代替的な実施形態において、プロセッサ80はX線照射のレベルの所定閾値を保持することができる。この実施形態において、プロセッサ80は、検出器66により検出されたX線照射レベルが所定閾値を超えた場合に、医師40にアラート(例えば、聴覚的アラーム)を発するように構成されている。
【0044】
代替的な実施形態において、ゴーグル30は、アンテナ78の代わりに、又はこれに加えて、通信ケーブル(図示なし)を使用してコンソール24に接続される。これらの実施形態において、情報及び制御信号は、ゴーグル30とコンソール24との間で、例えば、無線の代わりに通信ケーブルを介してやりとりされる。
【0045】
プロセッサ80は通常、本明細書に記載される機能を実行するようにソフトウェアでプログラムされている汎用プロセッサを含む。そのソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサにダウンロードされてもよく、あるいは、代替的に又は付加的に、磁気的、光学的、又は電子的メモリなどの非一時的な有形媒体上に提供及び/又は記憶されてもよい。
【0046】
本明細書に記載される実施形態は主に心臓処置に対処するが、本明細書に記載される方法及びシステムはまた、X線撮像を適用する任意の医療処置などの他の用途にも用いられ得る。更に、本明細書に記載される方法及びシステムは、例えば、整形外科手術、肝臓のアブレーション処置、又は肺の腫瘍のアブレーションなどを含むがこれらに限定されない医療処置中に、患者の体内でツールを操作するときにX線照射に曝露され得る任意の医療機器においても使用することができる。
【0047】
したがって、上記に述べた実施形態は、例として引用したものであり、また本発明は、上記に詳細に示し説明したものに限定されないことが認識されよう。むしろ本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、従来技術において開示されていない変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 個人用ディスプレイ装置であって、
二重用途プレートであって、
ユーザーが場面を見ている間に前記ユーザーによって着用されることと、
X線照射が前記プレートを通過して前記ユーザーの眼に達するのを少なくとも部分的に遮断することと、
前記場面に重ね合わせて前記ユーザーから見える情報を表示することと、
を行うように構成されている、二重用途プレートと、
検出器であって、前記プレートに接続され、かつ前記X線照射のレベルを測定するように構成されている、検出器と、
電子回路であって、前記プレート及び前記検出器に接続されており、表示信号を前記プレートとやりとりし、これにより前記情報を表示し、かつ前記検出器により測定された前記X線照射の前記レベルを示す制御信号を送信するように構成されている、電子回路と、
を備える、個人用ディスプレイ装置。
(2) 前記電子回路がトランシーバを備え、該トランシーバは、前記表示信号及び前記制御信号を外部システムとやりとりするように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記外部システムが撮像システムを含む、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記二重用途プレートがナノ粒子を含み、該ナノ粒子は、前記X線照射の少なくとも一部分を遮断するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(5) 前記ナノ粒子が、鉛又はセリウムを含む、実施態様4に記載の装置。
【0049】
(6) 前記二重用途プレートが少なくとも材料フィルムを含み、該材料フィルムは、前記X線照射の少なくとも一部分を遮断するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記電子回路は、前記検出器により測定された前記X線照射の前記レベルが所定の閾値を超えた場合にアラートを発するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記場面は、前記ユーザーが医療処置を実施している患者の臓器を提示する、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記情報が、少なくとも、前記臓器に適用される医療装置のマーカーを含む、実施態様8に記載の装置。
(10) 前記情報が、少なくとも、前記臓器の少なくとも一部分の解剖学的画像を含む、実施態様8に記載の装置。
【0050】
(11) 個人用ディスプレイ装置を製造するための方法であって、
二重用途プレートを提供することであって、該二重用途プレートは、ユーザーが場面を見ている間に前記ユーザーによって着用されるものであり、前記プレートは、(i)X線照射が前記プレートを通過して前記ユーザーの眼に達するのを少なくとも部分的に遮断することと、(ii)前記場面に重ね合わせて前記ユーザーから見える情報を表示することと、が可能である、提供することと、
前記プレートに、前記X線照射のレベルを測定する検出器を接続することと、
表示信号を前記プレートとやりとりし、かつ前記検出器により測定された前記X線照射の前記レベルを示す制御信号を送信するために、電子回路を、前記プレート及び前記検出器に接続することと、
を含む、方法。
(12) 前記電子回路が、前記表示信号及び前記制御信号を外部システムとやりとりするためのトランシーバを備える、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記トランシーバが無線トランシーバを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記二重用途プレートが、前記X線照射の少なくとも一部分を遮断するためのナノ粒子を含む、実施態様11に記載の方法。
(15) 前記ナノ粒子が、鉛又はセリウムを含む、実施態様14に記載の方法。
【0051】
(16) 前記二重用途プレートが、少なくとも、前記X線照射の少なくとも一部分を遮断するための材料フィルムを含む、実施態様11に記載の方法。