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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】高所作業車の安全装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20221108BHJP
   B66F 9/22 20060101ALI20221108BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B66F9/24 K
B66F9/22 U
B66F11/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018110049
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019210130
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充
(72)【発明者】
【氏名】田野 稔
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 耕
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-156082(JP,A)
【文献】特開2000-229798(JP,A)
【文献】実開平06-010295(JP,U)
【文献】実開平01-106500(JP,U)
【文献】特開2004-060821(JP,A)
【文献】米国特許第06405633(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B66F 9/22
B66F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行体と、前記走行体上に設けられた昇降装置と、前記昇降装置に支持された作業台とを備え、前記昇降装置を構成する昇降油圧シリンダを伸縮作動させることにより前記作業台を昇降移動させることが可能に構成された高所作業車の安全装置であって、
前記昇降油圧シリンダに供給する作動油を吐出する油圧ポンプと、
前記昇降油圧シリンダのボトム側油室を前記油圧ポンプおよび作動油タンクのいずれに接続するかを切り換える第1切換バルブと、
前記第1切換バルブから前記昇降油圧シリンダのボトム側油室に繋がる油路に設けられ、前記第1切換バルブ側から前記ボトム側油室側への作動油の流れを許容するとともに反対方向の流れを阻止する第1状態と、前記両方の流れを許容する第2状態とを切り換える第2切換バルブと、
前記油圧ポンプから前記第1切換バルブに繋がる油路に設けられ、前記油圧ポンプ側から前記第1切換バルブ側への作動油の流れを許容するとともに反対方向の流れを阻止するチェックバルブと、
昇降操作手段からの操作指令に応じて前記第1切換バルブおよび前記第2切換バルブを切り換えて前記昇降油圧シリンダを伸縮作動させる昇降制御手段と、
前記作業台の昇降位置を検出する昇降位置検出手段とを備え、
前記昇降制御手段は、前記昇降操作手段から操作指令を受けていないときに、前記昇降位置検出手段の検出結果に基づいて前記作業台が下降していることを検出していない場合には、前記第1切換バルブを前記ボトム側油室と前記作動油タンクとを接続するように切り換えるとともに、前記第2切換バルブを前記第1状態に切り換え、前記第2切換バルブにより前記ボトム側油室内の油圧を保持させ、
前記昇降制御手段は、前記昇降操作手段から前記作業台を下降させる操作指令を受けていないときに、前記昇降位置検出手段の検出結果に基づいて前記作業台が下降していることを検出すると、前記第1切換バルブを前記ボトム側油室と前記油圧ポンプとを接続するように切り換え、前記第2切換バルブおよび前記チェックバルブにより前記ボトム側油室内の油圧を保持させて前記昇降油圧シリンダの縮小作動を停止させることを特徴とする高所作業車の安全装置。
【請求項2】
前記昇降制御手段は、前記昇降操作手段から前記作業台を上昇させる操作指令を受けると、前記第1切換バルブを前記ボトム側油室と前記油圧ポンプとを接続するように切り換えるとともに、前記第2切換バルブを前記第1状態に切り換え、前記油圧ポンプからの作動油を前記ボトム側油室に供給させて前記昇降油圧シリンダを伸長作動させることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の安全装置。
【請求項3】
前記昇降制御手段は、前記昇降操作手段から前記作業台を下降させる操作指令を受けると、前記第1切換バルブを前記ボトム側油室と前記作動油タンクとを接続するように切り換えるとともに、前記第2切換バルブを前記第2状態に切り換え、前記作業台の自重により前記ボトム側油室内の油圧を低下させて前記昇降油圧シリンダを縮小作動させることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の高所作業車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇降装置により昇降移動可能な作業台を備えた高所作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は、走行可能な走行体と、その走行体上に設けられた昇降装置と、その昇降装置に支持された作業台とを備えて構成されている。このような高所作業車には、走行体の形態として、トラック車両をベースに構成されたものや、車輪もしくはクローラ機構を備えた自走式のものがある。また、昇降装置の形態としても、旋回、起伏および伸縮可能なブーム式のものや、シザースリンク機構もしくは伸縮ポストを備えた垂直昇降式のものがあり、これらの走行体および昇降装置の形態を組み合わせた種々の高所作業車が知られている。このような昇降装置はいずれも、油圧シリンダを備えた構成のものが多く、油圧シリンダを伸縮作動させることにより作業台を昇降移動させるように構成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平1‐106500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような高所作業車では、昇降装置の油圧シリンダへの作動油の供給制御を行う制御バルブの不具合等が生じた場合に、作業台が自重により自然降下するという問題がある。そのため、特許文献1に記載の高所作業車では、作業台の自然降下を検出したときに電磁シャットオフバルブを切り換えて自然降下を停止させるように構成されている。しかしながら、この電磁シャットオフバルブにも何らかの不具合が生じた場合を想定すると、作業台の自然降下を停止させる安全機能の2重化が必要である。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、コストアップを抑えつつ、作業台の自然降下を停止させる安全機能の2重化を図ることができる高所作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、走行可能な走行体と、前記走行体上に設けられた昇降装置と、前記昇降装置に支持された作業台とを備え、前記昇降装置を構成する昇降油圧シリンダ(例えば、実施形態における昇降シリンダ21)を伸縮作動させることにより前記作業台を昇降移動させることが可能に構成された高所作業車の安全装置である。その上で、前記昇降油圧シリンダに供給する作動油を吐出する油圧ポンプと、前記昇降油圧シリンダのボトム側油室を前記油圧ポンプおよび作動油タンクのいずれに接続するかを切り換える第1切換バルブ(例えば、実施形態における昇降制御バルブ72)と、前記第1切換バルブから前記昇降油圧シリンダのボトム側油室に繋がる油路に設けられ、前記第1切換バルブ側から前記ボトム側油室側への作動油の流れを許容するとともに反対方向の流れを阻止する第1状態と、前記両方の流れを許容する第2状態とを切り換える第2切換バルブ(例えば、実施形態における昇降切換バルブ76)と、前記油圧ポンプから前記第1切換バルブに繋がる油路に設けられ、前記油圧ポンプ側から前記第1切換バルブ側への作動油の流れを許容するとともに反対方向の流れを阻止するチェックバルブ(例えば、実施形態における第1チェックバルブ73)と、昇降操作手段(例えば、実施形態における昇降操作レバー43)からの操作指令に応じて前記第1切換バルブおよび前記第2切換バルブを切り換えて前記昇降油圧シリンダを伸縮作動させる昇降制御手段(例えば、実施形態におけるコントローラ50の昇降制御部53)と、前記作業台の昇降位置を検出する昇降位置検出手段(例えば、実施形態における昇降位置検出器61)とを備える。そして、前記昇降制御手段は、前記昇降操作手段から操作指令を受けていないときに、前記昇降位置検出手段の検出結果に基づいて前記作業台が下降していることを検出していない場合には、前記第1切換バルブを前記ボトム側油室と前記作動油タンクとを接続するように切り換えるとともに、前記第2切換バルブを前記第1状態に切り換え、前記第2切換バルブにより前記ボトム側油室内の油圧を保持させる一方で、前記昇降操作手段から前記作業台を下降させる操作指令を受けていないときに、前記昇降位置検出手段の検出結果に基づいて前記作業台が下降していることを検出すると、前記第1切換バルブを前記ボトム側油室と前記油圧ポンプとを接続するように切り換え、前記第2切換バルブおよび前記チェックバルブにより前記ボトム側油室内の油圧を保持させて前記昇降油圧シリンダの縮小作動を停止させるように構成される。
【0007】
上記構成の安全装置において、前記昇降制御手段は、前記昇降操作手段から前記作業台を上昇させる操作指令を受けると、前記第1切換バルブを前記ボトム側油室と前記油圧ポンプとを接続するように切り換えるとともに、前記第2切換バルブを前記第1状態に切り換え、前記油圧ポンプからの作動油を前記ボトム側油室に供給させて前記昇降油圧シリンダを伸長作動させるように構成してもよい。
【0008】
上記構成の安全装置において、前記昇降制御手段は、前記昇降操作手段から前記作業台を下降させる操作指令を受けると、前記第1切換バルブを前記ボトム側油室と前記作動油タンクとを接続するように切り換えるとともに、前記第2切換バルブを前記第2状態に切り換え、前記作業台の自重により前記ボトム側油室内の油圧を低下させて前記昇降油圧シリンダを縮小作動させるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る高所作業車の安全装置によれば、作業台の自然降下を検出したときに、第1切換バルブを昇降油圧シリンダのボトム側油室と油圧ポンプとを接続するように切り換えるとともに、第2切換バルブをボトム側油室側から第1切換バルブ側への作動油の流れを阻止する第1状態に切り換え、その第2切換バルブ、および第1切換バルブの上流側(1次側)に設けられたチェックバルブにより前記ボトム側油室内の油圧を保持させて昇降油圧シリンダの縮小作動を停止させるように構成される。このように、作業台の自然降下を検出したときには、昇降油圧シリンダ側に設けられた第1切換バルブ(切換式チェックバルブ)だけではなく、油圧ポンプ側に設けられたチェックバルブも用いて、2個のチェックバルブによって作業台の自然降下を停止させることができる。油圧ポンプ側に設けられたチェックバルブは、油圧ポンプへの逆流を防止するために従来から設けられていたものであるため、コストアップを抑えつつ、作業台の自然降下を停止させる安全機能の2重化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る安全装置を備えた高所作業車の斜視図である。
図2】上記高所作業車の作動制御構成を示すブロック図である。
図3】上記高所作業車に設けられた昇降シリンダを油圧駆動する回路構成を示す油圧回路図である。
図4】上記高所作業車の作業台を昇降移動させるときの各バルブの切換制御を示す表である。
図5】第2実施形態に係る昇降シリンダの油圧回路構成を示す油圧回路図である。
図6】第2実施形態における各バルブの切換制御を示す表である。
図7図3に示す昇降シリンダの油圧回路構成の変形例を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る安全装置を備えた高所作業車の一例を図1に示している。この高所作業車1は、前後左右に設けられた4個のタイヤ車輪11を有する走行体10と、走行体10上に設けられた昇降装置20と、この昇降装置20に支持された作業台30とを備えて構成されている。
【0013】
走行体10は、タイヤ車輪11のうち左右一対の前輪11a,11bをそれぞれ回転駆動する左右の走行モータ12a,12b(図2を参照)と、左右の前輪11a,11bを繋ぐ転舵機構(不図示)と、この転舵機構を駆動して左右の前輪11a,11bの舵角(走行体10の前後中心軸に対する偏向角)を変化させる操舵シリンダ17(図2を参照)とを有している。タイヤ車輪11のうち左右一対の後輪11c,11dは、車軸により連結された非駆動輪である。走行体10は、左右の走行モータ12a,12bにより左右の前輪11a,11bを回転駆動するとともに、操舵シリンダ17により左右の前輪11a,11bの舵角を変化させることによって、所望の方向へ走行移動可能に構成されている。
【0014】
昇降装置20は、X字形状の2本のリンク部材20aを走行体10の左右方向に並設するとともに、2本のリンク部材20aの中央部を第1枢結棒20bにより連結し、さらにそれらを上下方向に3段並設してそれぞれ第2枢結棒20cにより枢結した構成のシザースリンク機構と、このシザースリンク機構と走行体10の間に跨設された昇降シリンダ21とを有して構成される。
【0015】
シザースリンク機構を構成する最下方のリンク部材20aは、走行体10の前方に位置する側の下端部が走行体10の上部に枢結され、走行体10の後方に位置する側の下端部には走行体10の上部に設けられたレール上を転動するローラ20eが設けられている。シザースリンク機構を構成する最上方のリンク部材20aは、走行体10の前方に位置する側の上端部が作業台30の下部に枢結され、走行体10の後方に位置する側の上端部には作業台30の下部に設けられたレールを転動するローラ20fが設けられている。昇降装置20は、昇降シリンダ21を伸縮作動させることによりシザースリンク機構を上下方向に伸縮させて作業台30を上下方向に昇降移動させることができるように構成されている。
【0016】
作業台30は、作業者が搭乗可能な作業床31と、その作業床31上の前後左右の端部に立設された手摺り32と、前方側の手摺り32の上部に設けられた操作装置40とを有している。操作装置40は、図2に示すように、走行体10の発進停止および前進後進の走行操作を行う走行操作レバー41と、走行体10の舵取り操作(操舵輪である左右の前輪11a,11bの操舵)を行う操舵ダイヤル42と、作業台30の昇降操作を行う昇降操作レバー43とを有している。高所作業車1は、作業台30に搭乗した作業者が走行操作レバー41、操舵ダイヤル42および昇降操作レバー43を操作することにより、走行体10の走行移動および作業台30の昇降移動を行わせて所望の作業位置に移動できるように構成されている。
【0017】
走行操作レバー41は、非操作状態において垂直姿勢となる中立位置に位置し、この中立位置を基準に前方および後方へ傾倒操作可能に構成されている。走行操作レバー41の操作状態(中立位置を基準とした操作方向および操作量)は、操作装置40内に設けられたポテンショメータ等からなる走行操作検出器41aによって検出され、その検出信号がコントローラ50に入力される。走行操作レバー41の前方への傾倒操作は、走行体10
の前進走行指令に相当し、その傾倒操作量が大きい程、コントローラ50において前進走行時の目標速度が大きい値に設定される。走行操作レバー41の後方への傾倒操作は、走行体10の後進走行指令に相当し、その傾倒操作量が大きい程、コントローラ50において後進走行時の目標速度が大きい値に設定される。走行操作レバー41の中立位置への復帰操作は、走行体10の停止指令に相当する。
【0018】
操舵ダイヤル42は、非操作状態において中立位置(図2に示すように、操舵ダイヤル42に記されたマークと操作装置40の表面に記されたマークとが一致する位置)に位置し、この中立位置を基準に右回り(時計回り)および左回り(反時計回り)に捻り操作可能に構成されている。操舵ダイヤル42の操作状態(中立位置を基準とした操作方向および操作量)は、操作装置40内に設けられたポテンショメータ等からなる操舵操作検出器42aによって検出され、その検出信号がコントローラ50に入力される。操舵ダイヤル42の右回り方向への捻り操作は、前輪11a,11bの右方向への操舵指令に相当し、その捻り操作量が大きい程、コントローラ50において右方向への目標舵角が大きい値に設定される。操舵ダイヤル42の左回り方向への捻り操作は、前輪11a,11bの左方向への操舵指令に相当し、その捻り操作量が大きい程、コントローラ50において左方向への目標舵角が大きい値に設定される。また、操舵ダイヤル42の中立位置への復帰操作は、前輪11a,11bの舵角を零の状態にする指令(走行体10の直進走行指令)に相当する。
【0019】
昇降操作レバー43は、非操作状態において垂直姿勢となる中立位置に位置し、この中立位置を基準に前方および後方へ傾倒操作可能に構成されている。昇降操作レバー43の操作状態(中立位置を基準とした操作方向と操作量)は、操作装置40内に設けられたポテンショメータ等からなる昇降操作検出器43aによって検出され、その検出信号がコントローラ50に入力される。昇降操作レバー43の中立位置よりも前方への傾倒操作は作業台30の下降指令に相当し、中立位置よりも後方への傾倒操作は作業台30の上昇指令に相当する。また、昇降操作レバー43の中立位置への復帰操作は、作業台30の停止指令に相当する。
【0020】
走行体10には、バッテリBと、バッテリBからの直流電力を交流電力に変換して左右の走行モータ12a,12bに供給するインバータIVとが設けられている。コントローラ50のインバータ制御部51は、走行操作レバー41の操作状態に応じた回転方向および回転速度で左右の走行モータ12a,12bが回転駆動するようにインバータIVを介して左右の走行モータ12a,12bに電力を供給し、左右の走行モータ12a,12bを回転駆動させる制御を行うようになっている。
【0021】
さらに、走行体10には、バッテリBからの電力によって回転駆動するポンプ駆動用モータMTと、ポンプ駆動用モータMTによって駆動される油圧ポンプPと、作動油タンクTと、操舵シリンダ17への作動油の供給方向を切り換える操舵制御バルブ71と、昇降シリンダ21への作動油の供給方向(供給するか否かを含む)を切り換える昇降制御バルブ72とを備えている。ポンプ駆動用モータMTは、昇降操作レバー43による作業台30の上昇操作、および操舵ダイヤル42による操舵操作を行った場合のみに回転駆動される。油圧ポンプPから吐出された作動油は、操舵制御バルブ71を介して操舵シリンダ17に供給され、昇降制御バルブ72を介して昇降シリンダ21に供給される。
【0022】
コントローラ50の操舵制御部52は、操舵ダイヤル42の操作に応じて操舵制御バルブ71のスプールを電磁駆動して操舵シリンダ17への作動油の供給方向を切り換え、操舵シリンダ17を伸縮作動させて左右の前輪11a,11bの舵角を変化させる制御を行うようになっている。コントローラ50の昇降制御部53は、昇降操作レバー43の操作に応じて昇降制御バルブ72のスプールを電磁駆動して昇降シリンダ21への作動油の供
給方向を切り換え、昇降シリンダ21を伸縮作動させて昇降装置20により作業台30を昇降移動させる制御を行うようになっている。
【0023】
昇降装置20は、昇降シリンダ21の伸長量から作業台30の昇降位置(高さ位置)を検出する昇降位置検出器61を備えている。昇降位置検出器61により検出された作業台30の昇降位置情報は、コントローラ50の昇降制御部53に入力されるようになっている。なお、昇降位置検出器61は、昇降シリンダ21の伸長量から作業台30の昇降位置を検出する構成の他に、光学式や超音波式の反射型距離センサにより構成して作業台30の昇降位置を検出するようにしてもよい。
【0024】
このように構成される高所作業車1では、昇降操作レバー43が操作されていないにもかかわらず、作業台30等の自重により作業台30が下降移動するといった不具合が生じたときに、そのような作業台30の自然降下を停止させる安全装置を備えている。この安全装置ついて、図3に示す昇降シリンダ21および操舵シリンダ17を伸縮作動させる油圧回路図を用いて説明する。
【0025】
この油圧回路は、図3に示すように、油圧ポンプPと昇降制御バルブ72とを繋ぐポンプ油路81と、昇降制御バルブ72と昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aとを繋ぐ昇降ボトム側油路82と、昇降シリンダ21の昇降ロッド側油室21bと作動油タンクTとを繋ぐ昇降ロッド側油路83とを有している。ポンプ油路81には、油圧ポンプP側から昇降制御バルブ72側への作動油の流れを許容するとともに、反対方向(昇降制御バルブ72側から油圧ポンプP側へ)の作動油の流れを阻止する第1チェックバルブ73が設けられている。ポンプ油路81には、第1チェックバルブ73よりも上流側(油圧ポンプP側)の位置から分岐して作動油タンクTに繋がる分岐油路84が設けられ、その分岐油路84にリリーフバルブ74が設けられている。
【0026】
昇降制御バルブ72は、4ポート2位置の電磁切換バルブであり、Pポートにポンプ油路81が接続され、Tポートに作動油タンクTに繋がる第1タンク油路86が接続され、Aポートに操舵制御バルブ71に繋がる操舵供給油路85が接続され、Bポートに昇降ボトム側油路82が接続されている。昇降制御バルブ72は、ソレノイド72aが非励磁(OFF状態)のときには、バネ72bによりスプールが押圧されて図3に示すOFF位置に切り換えられ、PポートをAポートに繋げるとともにBポートをTポートに繋げて油圧ポンプPからの作動油を操舵供給油路85を介して操舵制御バルブ71に供給する。また、コントローラ50の昇降制御部53からの制御信号によってソレノイド72aが励磁されたとき(ON状態のとき)には、当該ソレノイド72aがバネ72bの押圧力に抗してスプールを押圧してON位置に切り換えられ、PポートをBポートに繋げるとともにAポートをTポートに繋げて、油圧ポンプPからの作動油を昇降ボトム側油路82を介して昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aに供給し、昇降シリンダ21を伸長作動させるように構成されている。
【0027】
第1タンク油路86は、昇降ロッド側油路83と合流して作動油タンクTに繋がっている。昇降ロッド側油路83には、第1タンク油路86との合流部よりも下流側(作動油タンクT側)の位置に、昇降シリンダ21の昇降ロッド側油室21b内において所定油圧に確保するための第1絞りバルブ75が設けられている。
【0028】
昇降ボトム側油路82には、昇降切換バルブ76が設けられている。昇降切換バルブ76は、2ポート2位置の電磁切換チェックバルブであり、ソレノイド76aが非励磁(OFF状態)のときには、バネ76bによりスプールが押圧されて図3に示すOFF位置に切り換えられ、昇降制御バルブ72側から昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21a側への作動油の流れを許容するとともに、反対方向(昇降ボトム側油室21a側から昇降制
御バルブ72側へ)の作動油の流れを阻止する。また、コントローラ50の昇降制御部53からの制御信号によってソレノイド76aが励磁されたとき(ON状態のとき)には、当該ソレノイド76aがバネ76bの押圧力に抗してスプールを押圧してON位置に切り換えられ、昇降ボトム側油路82における両方向の作動油の流れを許容するように構成されている。
【0029】
昇降ボトム側油路82には、昇降切換バルブ76よりも下流側(昇降ボトム側油室21a側)の位置に、第2絞りバルブ77と、第2チェックバルブ78とが設けられている。第2絞りバルブ77は、昇降ボトム側油室21aから排出される油量を制限して作業台30の下降速度(昇降シリンダ21の縮小速度)を制御するものである。第2チェックバルブ78は、昇降切換バルブ76側から昇降ボトム側油室21a側への作動油の流れを許容するとともに、反対方向(昇降ボトム側油室21a側から昇降切換バルブ76側へ)の作動油の流れを阻止するように構成されている。
【0030】
操舵制御バルブ71は、4ポート3位置の電磁切換バルブであり、Pポートに操舵供給油路85が接続され、Tポートに作動油タンクTに繋がる第2タンク油路90が接続され、Aポートに操舵シリンダ17の操舵ボトム側油室17aに繋がる操舵ボトム側油路88が接続され、Bポートに操舵シリンダ17の操舵ロッド側油室17bに繋がる操舵ロッド側油路89が接続されている。第2タンク油路90は、昇降ロッド側油路83における第1タンク油路86との合流部と同じ位置で昇降ロッド側油路83に合流して作動油タンクTに繋がっている。操舵制御バルブ71は、左右のソレノイド71a,71bが非励磁のときには、左右のバネ71c,71dによりスプールが押圧されて図3に示すOFF位置に切り換えられ、P、T、AおよびBポート全てをブロックする。
【0031】
また、操舵制御バルブ71は、コントローラ50の操舵制御部52からの制御信号によって左ソレノイド71aが励磁されたときには、当該ソレノイド71aが右バネ71dの押圧力に抗してスプールを押圧して左方位置に切り換えられ、PポートをAポートに繋げるとともにBポートをTポートに繋げて、油圧ポンプPからの作動油を操舵ボトム側油路88を介して操舵シリンダ17の操舵ボトム側油室17aに供給し、操舵シリンダ17を伸長作動させる。また、右ソレノイド71bが励磁されたときには、当該ソレノイド71bが左バネ71cの押圧力に抗してスプールを押圧して右方位置に切り換えられ、PポートをBポートに繋げるとともにAポートをTポートに繋げて、油圧ポンプPからの作動油を操舵ロッド側油路89を介して操舵シリンダ17の操舵ロッド側油室17bに供給し、操舵シリンダ17を縮小作動させるように構成されている。
【0032】
上記構成の油圧回路において、昇降シリンダ21を伸縮作動させて昇降装置20により作業台30を昇降移動させる場合の各バルブの作動について、図2図4を参照して説明する。昇降操作レバー43を後方側に傾倒操作して作業台30を上昇移動させる操作が行われると、コントローラ50の昇降制御部53は、昇降制御バルブ72に制御信号を送出する。そして、昇降制御バルブ72のソレノイド72aを励磁して昇降制御バルブ72をON位置に切り換え、油圧ポンプPからの作動油を昇降ボトム側油路82に供給させる。このとき、昇降制御部53は、昇降切換バルブ76には制御信号を送出しない。そのため、昇降切換バルブ76のソレノイド76aは非励磁状態となり、昇降切換バルブ76は、昇降制御バルブ72側から昇降ボトム側油室21a側への作動油の流れを許容するOFF位置の状態となる。従って、油圧ポンプPからの作動油が昇降ボトム側油路82および昇降切換バルブ76を通って昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aに供給され、昇降シリンダ21が伸長作動して昇降装置20により作業台30が上昇移動する。なお、ポンプ駆動用モータMTは、昇降操作レバー43による作業台30の上昇操作、および操舵ダイヤル42による操舵操作を行った場合のみに回転駆動され、油圧ポンプPを駆動するようになっている。
【0033】
次に、昇降操作レバー43を中立位置に戻すと、コントローラ50の昇降制御部53は、昇降制御バルブ72への制御信号の送出を停止する。当該制御信号の送出が停止されると、昇降制御バルブ72のソレノイド72aが非励磁状態となり、昇降制御バルブ72は、ポンプ油路81を操舵供給油路85に接続するOFF位置の状態となる。このとき、昇降切換バルブ76にも制御信号は送出されず、昇降切換バルブ76はOFF位置の状態のままである。従って、昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aへの作動油の供給が停止され、昇降シリンダ21の伸長作動が停止して昇降装置20による作業台30の上昇移動が停止する。また、昇降切換バルブ76がOFF位置の状態のままであるため、昇降切換バルブ76により昇降ボトム側油室21aからの排出方向の作動油の流れが阻止される。従って、昇降ボトム側油室21a内の油圧が保持されるため、昇降シリンダ21が作業台30等の自重により縮小作動することを阻止して作業台30の高さ位置を保持する。
【0034】
昇降操作レバー43を前方側に傾倒操作して作業台30を下降移動させる操作が行われると、コントローラ50の昇降制御部53は、昇降切換バルブ76に制御信号を送出する。そして、昇降切換バルブ76のソレノイド76aを励磁して昇降切換バルブ76をON位置に切り換え、昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aからの排出方向の作動油の流れを許容させる。このとき、昇降制御部53は、昇降制御バルブ72には制御信号を送出しない。そのため、昇降制御バルブ72のソレノイド72aは非励磁状態となり、昇降制御バルブ72は、昇降ボトム側油路82を第1タンク油路86に接続させるOFF位置の状態となる。従って、昇降シリンダ21は作業台30の自重等により縮小作動方向の力を受けているため、昇降ボトム側油室21a内の作動油が、昇降ボトム側油路82、昇降切換バルブ76、昇降制御バルブ72および第1タンク油路86を通って作動油タンクTに排出され、昇降シリンダ21が縮小作動して昇降装置20により作業台30が下降移動する。
【0035】
上記のように、昇降操作レバー43が中立位置に位置するとき(昇降操作レバー43が操作されていないとき)に、通常は、昇降制御バルブ72および昇降切換バルブ76がともにOFF位置の状態となり、昇降シリンダ21の伸縮作動が停止されて昇降装置20により作業台30の高さ位置が保持される。しかしながら、バルブの不具合等が生じた場合に、作業台30等の自重により昇降シリンダ21が縮小作動して作業台30が自然降下することが考えられる。
【0036】
そこで、昇降操作レバー43が中立位置に位置するとき(昇降操作レバー43が操作されていないとき)に、昇降位置検出器61により作業台30が下降移動していることが検出されると、コントローラ50の昇降制御部53は、昇降制御バルブ72に制御信号を送信する。そして、昇降制御バルブ72のソレノイド72aを励磁して昇降制御バルブ72をON位置に切り換え、昇降ボトム側油路82をポンプ油路81に接続させる。このとき、昇降制御部53は、昇降切換バルブ76には制御信号を送出しない。そのため、昇降切換バルブ76のソレノイド76aは非励磁状態となり、昇降切換バルブ76は、昇降ボトム側油室21aからの排出方向の作動油の流れを阻止するOFF位置の状態となる。従って、昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aから排出される作動油の流れが、昇降切換バルブ76により阻止され、さらにポンプ油路81に設けられた第1チェックバルブ73によっても阻止される。よって、昇降切換バルブ76および第1チェックバルブ73により昇降ボトム側油室21a内の油圧が保持され、作業台30等の自重による昇降シリンダ21の縮小作動が停止されて作業台30の自然降下が停止される。このとき、昇降操作レバー43が中立位置に位置しているので、ポンプ駆動用モータMTは回転駆動されておらず、油圧ポンプPも駆動されていない。
【0037】
このように、作業台30の自然降下を検出したときには、昇降シリンダ21側に設けら
れた昇降切換バルブ76(切換式チェックバルブ)だけではなく、油圧ポンプP側に設けられた第1チェックバルブ73も用いて、2個のチェックバルブによって作業台30の自然降下を停止させることができる。油圧ポンプP側に設けられた第1チェックバルブ73は、油圧ポンプPへの逆流を防止するために従来から設けられていたものであるため、コストアップを抑えつつ、作業台30の自然降下を停止させる安全機能の2重化を図ることができる。
【0038】
次に、作業台30の自然降下を停止させる安全機能の第2実施形態について、図5を参照して説明する。なお、上述の実施形態と同じ構成については、同じ符番を付してその説明を省略する。
【0039】
この油圧回路は、図5に示すように、油圧ポンプPと昇降制御バルブ172とを繋ぐポンプ油路81と、昇降制御バルブ172と昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aとを繋ぐ昇降ボトム側油路82とを有している。昇降シリンダ21の昇降ロッド側油室21bから延びる昇降ロッド側油路183は、昇降ボトム側油路82の上流側(昇降制御バルブ172側)の位置に接続されている。
【0040】
昇降ボトム側油路82には、昇降ロッド側油路183との接続部よりも上流側の位置に、昇降シリンダ21の昇降ロッド側油室21b内において所定油圧に確保するための第1絞りバルブ175が設けられている。また、第1絞りバルブ175よりも上流側の位置には、昇降シリンダ21側から昇降制御バルブ172側への作動油の流れを許容するとともに、反対方向(昇降制御バルブ172側から昇降シリンダ21側へ)の作動油の流れを阻止する第2チェックバルブ179が設けられている。さらに、昇降ボトム側油路82には、第2チェックバルブ179よりも上流側の位置から分岐して操舵制御バルブ71に繋がる操舵供給油路185が設けられている。
【0041】
昇降制御バルブ172は、4ポート2位置の電磁切換バルブであり、Pポートにポンプ油路81が接続され、Tポートに作動油タンクTに繋がる第1タンク油路186が接続され、Aポートに昇降ボトム側油路82の下流側(昇降シリンダ21側)の位置に接続される昇降供給油路191が接続され、Bポートに昇降ボトム側油路82が接続されている。昇降制御バルブ172は、ソレノイド172aが非励磁(OFF状態)のときには、バネ172bによりスプールが押圧されて図5に示すOFF位置に切り換えられ、PポートをBポートに繋げるとともにAポートをTポートに繋げて、油圧ポンプPからの作動油を操舵供給油路185を介して操舵制御バルブ71に供給する。また、コントローラ50の昇降制御部53からの制御信号によってソレノイド172aが励磁されたとき(ON状態のとき)には、当該ソレノイド172aがバネ172bの押圧力に抗してスプールを押圧してON位置に切り換えられ、PポートをAポートに繋げるとともにBポートをTポートに繋げて、油圧ポンプPからの作動油を昇降供給油路191および昇降ボトム側油路82を介して昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aに供給し、昇降シリンダ21を伸長作動させるように構成されている。
【0042】
昇降供給油路191には、昇降制御バルブ172側から昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21a側への作動油の流れを許容するとともに、反対方向(昇降ボトム側油室21a側から昇降制御バルブ172側へ)の作動油の流れを阻止する第3チェックバルブ180が設けられている。
【0043】
昇降ボトム側油路82には、昇降供給油路191との接続部と昇降ロッド側油路183との接続部との間の位置に、第2絞りバルブ177と、昇降切換バルブ176とが設けられている。第2絞りバルブ177は、昇降ボトム側油室21aから排出される油量を制限して作業台30の下降速度(昇降シリンダ21の縮小速度)を制御するものである。昇降
切換バルブ176は、2ポート2位置の電磁比例切換チェックバルブであり、ソレノイド176aが非励磁(OFF状態)のときには、バネ176bによりスプールが押圧されて図5に示すOFF位置に切り換えられ、昇降ボトム側油路82における両方向の作動油の流れを阻止する。また、コントローラ50の昇降制御部53からの制御信号によってソレノイド176aが励磁されたとき(ON状態のとき)には、当該ソレノイド176aがバネ176bの押圧力に抗してスプールを押圧してON位置に切り換えられ、昇降ボトム側油路82における両方向の作動油の流れを許容する(流量を比例制御しつつ許容する)ように構成されている。
【0044】
操舵制御バルブ71は、Pポートに操舵供給油路185が接続され、Tポートに作動油タンクTに繋がる第2タンク油路190が接続されている。
【0045】
上記構成の油圧回路において、昇降シリンダ21を伸縮作動させて昇降装置20により作業台30を昇降移動させる場合の各バルブの作動について、図5および図6を参照して説明する。昇降操作レバー43を後方側に傾倒操作して作業台30を上昇移動させる操作が行われると、コントローラ50の昇降制御部53は、昇降制御バルブ172に制御信号を送出する。そして、昇降制御バルブ172のソレノイド172aを励磁して昇降制御バルブ172をON位置に切り換え、油圧ポンプPからの作動油を昇降供給油路191に供給させる。このとき、昇降制御部53は、昇降切換バルブ176には制御信号を送出しない。そのため、昇降切換バルブ176のソレノイド176aは非励磁状態となり、昇降切換バルブ176は、昇降供給油路191から昇降ボトム側油路82に流入した作動油が昇降制御バルブ172側へ流れることを阻止するOFF位置の状態となる。従って、油圧ポンプPからの作動油が昇降供給油路191を通って昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aに供給され、昇降シリンダ21が伸長作動して昇降装置20により作業台30が上昇移動する。なお、ポンプ駆動用モータMTは、昇降操作レバー43による作業台30の上昇操作、および操舵ダイヤル42による操舵操作を行った場合のみに回転駆動され、油圧ポンプPを駆動するようになっている。
【0046】
次に、昇降操作レバー43を中立位置に戻すと、コントローラ50の昇降制御部53は、昇降制御バルブ172への制御信号の送出を停止する。当該制御信号の送出が停止されると、昇降制御バルブ172のソレノイド172aが非励磁状態となり、昇降制御バルブ172は、ポンプ油路81を操舵供給油路185に接続させるOFF位置の状態となる。このとき、昇降切換バルブ176にも制御信号は送出されず、昇降切換バルブ176はOFF位置の状態のままである。従って、昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aへの作動油の供給が停止され、昇降シリンダ21の伸長作動が停止して昇降装置20による作業台30の上昇移動が停止する。また、昇降切換バルブ176がOFF位置の状態のままであるため、昇降切換バルブ176および昇降供給油路191の第3チェックバルブ180により昇降ボトム側油室21aからの排出方向の作動油の流れが阻止される。従って、昇降ボトム側油室21a内の油圧が保持されるため、昇降シリンダ21が作業台30等の自重により縮小作動することを阻止して作業台30の高さ位置を保持する。
【0047】
昇降操作レバー43を前方側に傾倒操作して作業台30を下降移動させる操作が行われると、コントローラ50の昇降制御部53は、昇降制御バルブ172および昇降切換バルブ176に制御信号を送出する。そして、昇降制御バルブ172のソレノイド172aを励磁して昇降制御バルブ172をON位置に切り換え、昇降ボトム側油路82を第1タンク油路186に接続させる。また、昇降切換バルブ176のソレノイド176aを励磁して昇降切換バルブ176をON位置に切り換え、昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aからの排出方向の作動油の流れを許容させる。従って、昇降シリンダ21は作業台30の自重等により縮小作動方向の力を受けているため、昇降ボトム側油室21a内の作動油が、昇降ボトム側油路82、昇降切換バルブ176、昇降制御バルブ172および第1
タンク油路186を通って作動油タンクTに排出され、昇降シリンダ21が縮小作動して昇降装置20により作業台30が下降移動する。このとき、昇降操作レバー43により作業台30の下降操作が行われているので、ポンプ駆動用モータMTは回転駆動されておらず、油圧ポンプPも駆動されていない。
【0048】
上記のように、昇降操作レバー43が中立位置に位置するとき(昇降操作レバー43が操作されていないとき)には、昇降制御バルブ172および昇降切換バルブ176がともにOFF位置の状態となり、昇降シリンダ21の伸縮作動が停止されて昇降装置20により作業台30の高さ位置が保持される。ここで、バルブの不具合等により作業台30の自然降下が発生したときには、以下のように各バルブの作動制御が行われる。
【0049】
昇降操作レバー43が中立位置に位置するとき(昇降操作レバー43が操作されていないとき)に、昇降位置検出器61により作業台30が下降移動していることが検出されると、コントローラ50の昇降制御部53は、昇降制御バルブ172および昇降切換バルブ176に制御信号を送出せず、昇降制御バルブ172および昇降切換バルブ176をともにOFF位置の状態に保持する。そのため、昇降制御バルブ172のソレノイド172aは非励磁状態となり、昇降制御バルブ172は、昇降ボトム側油路82をポンプ油路81に接続させる。また、昇降切換バルブ176のソレノイド176aは非励磁状態となり、昇降切換バルブ176は、昇降ボトム側油室21aからの排出方向の作動油の流れを阻止する。従って、昇降シリンダ21の昇降ボトム側油室21aから排出される作動油の流れが、昇降切換バルブ176により阻止され、さらにポンプ油路81に設けられた第1チェックバルブ73によっても阻止される。また、昇降ボトム側油室21aから排出されて昇降供給油路191に流入する作動油の流れは、第3チェックバルブ180により阻止される。よって、昇降切換バルブ176、第1チェックバルブ73および第3チェックバルブ180により昇降ボトム側油室21a内の油圧が保持され、作業台30等の自重による昇降シリンダ21の縮小作動が停止されて作業台30の自然降下が停止される。このとき、昇降操作レバー43が中立位置に位置しているので、ポンプ駆動用モータMTは回転駆動されておらず、油圧ポンプPも駆動されていない。
【0050】
このように、作業台30の自然降下を検出したときには、昇降シリンダ21側に設けられた昇降切換バルブ176(切換式チェックバルブ)および第3チェックバルブ180だけではなく、油圧ポンプP側に設けられた第1チェックバルブ73も用いて、作業台30の自然降下を停止させることができる。また、第3チェックバルブ180の不具合により、昇降位置検出器61によって作業台30の下降の検出が続く場合は、コントローラ50の昇降制御部53が、昇降制御バルブ172に制御信号を送出して昇降制御バルブ172をON位置に切り換え、昇降供給油路191とポンプ油路81を接続することにより、第1チェックバルブ73を用いて作業台30の自然降下を停止させることができる。油圧ポンプP側に設けられた第1チェックバルブ73は、油圧ポンプPへの逆流を防止するために従来から設けられていたものであるため、コストアップを抑えつつ、作業台30の自然降下を停止させる安全機能の2重化を図ることができる。
【0051】
これまで本発明に係る実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、昇降制御バルブ72が4ポート2位置の電磁切換バルブであるが、昇降制御バルブ72は、図7に示すように、4ポート3位置の電磁切換バルブである昇降制御バルブ72′に変更してもよい。また、上述の実施形態では、シザースリンク機構式の昇降装置を備える自走式高所作業車に、本発明に係る安全装置を適用した例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば垂直マスト式やブーム式等の昇降装置を備えた種々の高所作業車に適用して同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 高所作業車
10 走行体
20 昇降装置
21 昇降シリンダ(昇降油圧シリンダ)
30 作業台
40 操作装置
43 昇降操作レバー(昇降操作手段)
50 コントローラ
53 昇降制御部(昇降制御手段)
61 昇降位置検出器(昇降位置検出手段)
72 昇降制御バルブ(第1切換バルブ)
73 第1チェックバルブ(チェックバルブ)
76 昇降切換バルブ(第2切換バルブ)
P 油圧ポンプ
T 作動油タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7