(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】圧潰可能な縫合糸ループのための指掛け部
(51)【国際特許分類】
A61B 17/062 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
A61B17/062
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018112594
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-06-11
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514046806
【氏名又は名称】メドス・インターナショナル・エスエイアールエル
【氏名又は名称原語表記】Medos International SARL
【住所又は居所原語表記】Chemin-Blanc 38, CH-2400 Le Locle, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】メフメット・ゼット・センガン
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ビー・スペンシナー
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・エム・ラン
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-543509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0128063(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351815(US,A1)
【文献】特開2011-025035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の埋め込み型アンカーと、
第2の埋め込み型アンカーと、
前記第1及び第2の
埋め込み型アンカーと連結された縫合糸であって、前記縫合糸は、前記第1の
埋め込み型アンカーから前記第2の
埋め込み型アンカーに向かって延びる第1の長さと、前記第2の
埋め込み型アンカーから前記第1の
埋め込み型アンカーに向かって延びる第2の長さとを有し、前記第1の長さは、その中に形成された結び目を有し、前記第2の長さは、前記第1の長さ内に形成された圧潰可能な内部通路を通過した後、前記結び目を通過し、前記縫合糸の尾部が前記結び目から延びている、縫合糸と、を含む、外科用装置。
【請求項2】
前記結び目が止め結びである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記縫合糸の前記尾部が、前記縫合糸に張力をかけるために前記第1の
埋め込み型アンカーに向かって第1の方向に引っ張られるように構成されており、かつ、前記縫合糸に張力をかけるために
前記第1の方向と異なる第2の方向に引っ張られるように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記縫合糸の前記尾部を前記第1の方向に引っ張ることにより、前記第1の
埋め込み型アンカーと前記第2の
埋め込み型アンカーとの間の距離が減少するように構成されており、前記縫合糸の前記尾部を前記第2の方向に引っ張ることにより、前記第1の
埋め込み型アンカーと前記第2の
埋め込み型アンカーとの間の距離が減少するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記縫合糸の前記尾部を前記第1の方向に引っ張ることにより、前記縫合糸が前記内部通路内及び前記結び目を通ってスライドするように構成されており、前記縫合糸の前記尾部を前記第2の方向に引っ張ることにより、前記縫合糸が前記内部通路内及び前記結び目を通ってスライドするように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記縫合糸が、前記内部通路を通って前記第1の方向にだけスライド可能である、請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の長さが、前記結び目を通過する前に前記内部通路を出る、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の
埋め込み型アンカーが第1の孔を有し、前記縫合糸が前記第1の孔を通って延在し、前記第2の
埋め込み型アンカーが第2の孔を有し、前記縫合糸が前記第2の孔を通って延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の
埋め込み型アンカーと連結された第2の縫合糸を更に
含み、前記縫合糸を前記第2の
埋め込み型アンカーに連結するために前記第2の縫合糸を通して
前記縫合糸を輪状にする、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記縫合糸が、複数の糸から編まれている、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
第1の埋め込み型アンカーと、
第2の埋め込み型アンカーと、
前記第1及び第2の
埋め込み型アンカーとスライド可能に連結された縫合糸であって、前記縫合糸は圧潰可能な中空部分を有し、前記縫合糸の別の部分が前記中空部分を通過しており、前記縫合糸は、前記中空部分に隣接
して形成された結び目を有し、これにより、前記縫合糸の尾部が前記中空部分を通過した後前記結び目を通過するようになっており、前記尾部は、前記縫合糸を前記中空部分を通しかつ前記結び目を通してスライドさせるために引っ張られるように構成されている、縫合糸と、を含む外科用装置。
【請求項12】
前記結び目が止め結びである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記尾部が、前記縫合糸を前記中空部分を通しかつ前記結び目を通してスライドさせるために、任意の方向に引っ張られるように構成されている、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記中空部分及び前記結び目が、前記第1の
埋め込み型アンカーと前記第2の
埋め込み型アンカーとの間に延在する縫合糸の長さに沿って配置されている、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記縫合糸を前記中空部分を通しかつ前記結び目を通してスライドさせるために前記尾部を引っ張ることが、前記第1の
埋め込み型アンカーと前記第2の
埋め込み型アンカーとの間の距離を減少させる、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、圧潰可能な縫合糸ループのための指掛け部に関する。
【背景技術】
【0002】
多様な傷害及び状態により、軟組織の損傷の修復、又は骨及び/若しくは周囲組織への軟組織の再付着が必要となる。例えば、肩回旋筋腱板が上腕骨から部分的に又は完全に断裂する(回旋筋腱板断裂)など、それ以外の点では健康な組織が骨から断裂した場合、組織を骨に再付着させ、治癒及び自然な再付着を生じさせるために、しばしば手術が必要となる。これらの外科的修復を実施するための多数の装置及び方法が開発されてきた。より良い結果をもたらす方法のいくつかは、縫合糸アンカーなどの縫合固定部材の使用を含むものであり、この縫合糸固定部材は通常、1つ又は2つ以上の縫合糸取り付け機構を有するアンカー本体と、縫合糸アンカーを組織若しくは骨の中に、又は組織若しくは骨に隣接して保持するための、組織又は骨係合機構とを有している。特定の傷害に応じて、縫合糸の1つ又は2つ以上のセグメントと連結された、あるいは縫合糸の1つ又は2つ以上のセグメントで相互に連結された1つ又は2つ以上の縫合糸アンカーが、修復を実施するために使用され得る。
【0003】
単一の種類の組織の実体において、例えば膝の半月板において断裂が生じる場合(半月板断裂)にもまた、外科手術が必要となることがある。そのような断裂を修復する1つの方法は、ある長さの縫合糸を組織に通し、縫合糸を結束することによって、断裂を縫合して閉鎖することである。縫合糸はまた、そのような組織の断裂を修復するために、1つ又は2つ以上の縫合糸アンカーと共に使用され得る。縫合糸は、修復手技の間に外科医によって結ばれた結び目を用いて、あるいは、外科医が外科手術の間に結び目を結ぶことを必要とせずに1つ又は2つ以上のアンカーと1本又は2本以上の縫合糸が連結され張力をかけられ得る「ノットレス(knotless)」装置及び方法を用いて、縫合糸アンカー及び組織に締結されることができる。ノットレス式の固定は、内視鏡又は関節鏡による修復など、低侵襲外科手術に特に有用なものであり、低侵襲外科手術において、外科医は、小径のカニューレ又は内視鏡チューブに通して挿入された器具を使用して、手術部位にて縫合糸を遠隔式で操作しなければならず、これにより、結ぶプロセスは困難でかつ時間を要するものとなり得る。
【0004】
加えて、アンカーに取り付けられた縫合糸が手術中に結ばれる、引っ張られる、及び/又は張力をかけられることによりアンカーは意図する位置及び角度方向から移動するので、アンカーを組織に対して所望の位置及び角度に送達して位置付けるのは困難であり得る。アンカーが所望通りに角度付け及び位置付けされないと、アンカーは、より望ましい角度及び位置ではなく、妥協した角度及び位置に位置付けられることになり得る、並びに/又は所望の角度及び位置が達成される前にアンカー送達の試みが1回又は2回以上失敗することになり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、組織修復装置、システム、及び方法の向上が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
広くは、圧潰可能な縫合糸ループのための指掛け部が提供される。
【0007】
一態様では、一実施形態において、第1の埋め込み型アンカーと、第2の埋め込み型アンカーと、第1及び第2のアンカーと連結された縫合糸とを含む外科用装置が提供される。縫合糸は、第1のアンカーから第2のアンカーに向かって延びる第1の長さと、第2のアンカーから第1のアンカーに向かって延びる第2の長さとを有し、第1の長さは、その中に形成された結び目を有し、第2の長さは、第1の長さ内に形成された圧潰可能な内部通路を通過した後、結び目を通過し、縫合糸の尾部が結び目から延びている。
【0008】
外科用装置は、任意の数の変形例を有し得る。例えば、結び目は止め結びであり得る。
【0009】
例えば、縫合糸の尾部は、縫合糸に張力をかけるために第1のアンカーに向かって第1の方向に引っ張られるように構成されることができ、かつ、縫合糸に張力をかけるために第2の異なる方向に引っ張られるように構成されることができる。少なくともいくつかの実施形態では、縫合糸の尾部を第1の方向に引っ張ることにより、第1のアンカーと第2のアンカーとの間の距離が減少するように構成されてもよく、縫合糸の尾部を第2の方向に引っ張ることにより、第1のアンカーと第2のアンカーとの間の距離が減少するように構成されてもよい。少なくともいくつかの実施形態では、縫合糸の尾部を第1の方向に引っ張ることにより、縫合糸が内部通路内及び結び目を通ってスライドするように構成されることができ、縫合糸の尾部を第2の方向に引っ張ることにより、縫合糸が内部通路内及び記結び目を通ってスライドするように構成されることができる。少なくともいくつかの実施形態では、縫合糸は、内部通路を通って第1の方向にだけスライド可能であり得る。
【0010】
更に別の実施例では、第2の長さは、内部通路を出た後に結び目を通過し得る。更に別の実施例では、第1のアンカーは第1の孔を有することができ、縫合糸が第1の孔を通って延在し、第2のアンカーは第2の孔を有することができ、縫合糸が第2の孔を通って延在する。別の実施例では、外科用装置は、第2のアンカーと連結された第2の縫合糸を更に含むことができ、第2の縫合糸は、縫合糸を第2のアンカーに連結するために第2の縫合糸を通して第1の縫合糸を輪状にする。更に別の実施例では、縫合糸は、複数の糸から編まれていてもよい。
【0011】
別の実施例では、外科用装置は、第1の埋め込み型アンカーと、第2の埋め込み型アンカーと、第1及び第2のアンカーとスライド可能に連結された縫合糸とを含む。縫合糸は圧潰可能な中空部分を有し、縫合糸の別の部分がその中空部分を通過しており、縫合糸は、中空部分に隣接してその中に形成された結び目を有し、これにより、縫合糸の尾部が中空部分を通過した後結び目を通過するようになっており、尾部は、縫合糸を中空部分を通しかつ結び目を通してスライドさせるために引っ張られるように構成されている。
【0012】
外科用装置は、様々な形で異なり得る。例えば、結び目は止め結びであり得る。別の実施例では、尾部は、縫合糸を中空部分を通しかつ結び目を通してスライドさせるために、任意の方向に引っ張られるように構成され得る。更に別の実施例では、中空部分及び結び目は、第1のアンカーと第2のアンカーとの間に延在する縫合糸の長さに沿って配置され得る。更に別の実施例では、縫合糸を中空部分を通しかつ結び目を通してスライドさせるために尾部を引っ張ることは、第1のアンカーと第2のアンカーとの間の距離を減少させ得る。
【0013】
別の態様において、縫合糸が、第1のアンカーと第2のアンカーとの間に延在し、縫合糸内に形成された結び目を有し、結び目に隣接して中空部分を有し、かつ、縫合糸の別の部分が中空部分を通って延在している状態で、縫合糸、第1のアンカー、及び第2のアンカーを患者の身体内に進めることを含む、外科的方法が提供される。外科的方法はまた、第1及び第2のアンカーを組織に隣接して位置決めした後、縫合糸に張力をかけて、縫合糸を結び目を通しかつ中空部分を通してスライドさせ、かつ、第1及び第2のアンカーを組織に対して移動させることを含む。
【0014】
外科的方法は、様々な形で異なり得る。例えば、縫合糸は、中空部分を通って一方向にスライド可能であり得、縫合糸に張力をかけることが、結び目から第1の方向に延びている縫合糸の尾部を引っ張ることを含み得る。別の実施例では、縫合糸は、中空部分を通って第1の方向に一方向にスライド可能であり得、縫合糸に張力をかけることが、結び目から第2の異なる方向に延びている縫合糸の尾部を引っ張ることを含み得る。更に別の例を挙げると、組織は、患者の膝、股関節、及び肩のうち1つにあることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明は、以下の詳細な説明を添付図面と併せ読むことで、より完全に理解されるであろう。
【
図1】縫合糸が連結されているインプラントの一実施形態の側断面概略図である。
【
図2】縫合糸が連結されているインプラントの別の実施形態の側断面概略図である。
【
図3】縫合糸が連結されているインプラントの更に別の実施形態の側断面概略図である。
【
図4】縫合糸が連結されているインプラントの更に別の実施形態の側断面概略図である。
【
図5】縫合糸が第1及び第2のアンカーと連結されており、かつ第1の方向に引っ張られている、指掛け部を有する縫合糸の一実施形態の概略図である。
【
図6】縫合糸が第2の反対方向に引っ張られている、
図5の縫合糸並びに第1及び第2のアンカーの概略図である。
【
図7】縫合糸が第1及び第2のアンカーと連結されている、指掛け部を有する縫合糸の別の実施形態の概略図である。
【
図9】2つのインプラントがシャフトに配置されている送達システムの一実施形態の部分透視側面概略図である。
【
図10】
図9の送達システムが隣接して位置付けられている状態の組織の概略図である。
【
図11】インプラントのうちの1つが組織を通して進められ、かつ送達システムの針が組織を通して進められた状態の、
図10の組織の側面概略図である。
【
図12】針が引き抜かれた状態の
図11の組織の側面概略図である。
【
図13】インプラントの他方がシャフト内に進められた状態の
図12の組織の側面概略図である。
【
図14】組織に対する送達システムの位置が変更された状態の
図13の組織の側面概略図である。
【
図15】針及びインプラントの他方が組織を通して進められた状態の
図14の組織の側面概略図である。
【
図16】針が引き抜かれた状態の
図15の組織の側面概略図である。
【
図17】送達システムが取り除かれた状態の
図16の組織の側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本明細書で開示する装置及び方法の構造、機能、製造、及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ又は2つ以上の実施例が、添付の図面に示されている。当業者であれば、本明細書で具体的に説明され、かつ添付の図面に例示される装置及び方法が、非限定的な例示的実施形態であること、並びに本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの例示的な実施形態に関連して例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような修正及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0017】
更に、本開示においては、実施形態の同様の参照符合を付した構成要素は概して同様の特徴を有するものであり、したがって、特定の実施形態において、同様の参照符合を付した各構成要素の各特徴について必ずしも完全に詳しく述べることはしない。加えて、開示されるシステム、装置及び方法の説明で直線寸法又は円寸法が使用される範囲において、かかる寸法は、かかるシステム、装置及び方法と組み合わせて使用することができる形状の種類を限定しようとするものではない。当業者には、任意の幾何学的形状についてかかる直線寸法及び円寸法に相当する寸法を容易に決定することができる点が認識されるであろう。システム及び装置並びにその構成要素のサイズ及び形状は、少なくともシステム及び装置が用いられる被験者の解剖学的構造、システム及び装置がそれらと共に用いられる構成要素のサイズ及び形状、並びにシステム及び装置が用いられる方法及び処置によって決まり得る。
【0018】
圧潰可能な縫合糸ループのための指掛け部が提供される。広くは、インプラントを患者の身体内の組織に対して所望通りに位置付けるのを容易にするために、インプラントに連結された縫合糸に張力をかけることができる。縫合糸は、指掛け部及び結び目を含み得る。広くは、指掛け部は、縫合糸自体がその中を通過する縫合糸の中空領域であり、縫合糸は、張力を受けたときに単一方向にスライドするように構成されている。例示的な実施形態では、結び目は、縫合糸に張力をかけるために引っ張られる縫合糸の尾部に対して、指掛け部よりも近い位置に、縫合糸の長さに沿って配置される。このように、結び目は、縫合糸尾部が引っ張られている方向にかかわらず、縫合糸が指掛け部を通って自由にスライドするように構成されている単一方向に縫合糸が指掛け部を通ってスライドするように、縫合糸を案内するのに役立ち得る。したがって、縫合糸が指掛け部を通って単一方向以外の方向にスライドするのが防止されるため、縫合糸が損傷する可能性が低くなり得、及び/又は縫合糸を指掛け部を通して適切にスライドさせるために縫合糸を引っ張るべき単一方向を外科医又は他のユーザーが最初に決定することなく、縫合糸を任意の方向に引っ張って縫合糸に張力をかけることができるため、張力印加をより速く及び/又はより容易に達成することができる。
【0019】
広くは、本明細書に述べるインプラントは、本明細書ではアンカーとも称され、患者の体内に埋め込まれるように構成されている。インプラントは、縫合糸に連結し、組織修復処置、例えば、股関節、膝、又は肩などの関節の関節形成術、膝の半月板断裂を修復するための半月板修復処置、肩の腱板断裂を修復するための回旋腱板修復処置等において使用されるように構成されている。
【0020】
インプラントは、吸収性又は非吸収性のものであることができる。インプラントは、任意の様々な材料、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸又はポリラクチド(PLA)、BIOCRYL(登録商標)RAPIDE(登録商標)、ステンレス鋼等により作製することができる。インプラントは、種々の技術、例えば、オーバーモールド成形などの射出成形プロセスによって、又は二次成形加工などの二次成形プロセスによって形成することができる。インプラントは、例えば、特定の解剖学的場所での使用に適した、及び特定の患者で用いるのに適した、任意の様々な寸法を有することができる。
【0021】
図1は、患者の身体に埋め込まれて組織修復を容易にするように構成されたインプラント10の一実施形態を示す。インプラント10は、図示したこの実施形態では細長い矩形形状を有しているが、インプラント10は他の形状を有することができる。インプラント10は、貫通して形成された少なくとも1つの通路12を有し、通路12は、縫合糸14を貫通させて受容するように構成されている。この例示の実施形態では、インプラント10は2つの通路12を有している。複数の通路12を有することにより、縫合糸14を図のようにインプラント10に通して輪状にすることができる。例えば、
図1において、縫合糸14は通路12の一方を一方向に通過し、他方の通路12を反対方向に通過しており、縫合糸14の長さ16がインプラント10の片側の通路12の間に延在し、縫合糸14の第1及び第2の尾部18、20がインプラント10の反対側から延びている。この例示の実施形態の縫合糸14は単一の縫合糸14であるが、本明細書に述べるインプラント10及び他のインプラントは、例えば、複数の縫合糸をインプラントの少なくとも1つの通路に通過させることによって、複数の縫合糸と連結され得る。
【0022】
縫合糸14は、任意の種類の縫合糸とすることができ、天然材料及び合成材料を含む任意の様々な材料から作製され得る。縫合糸14の材料の例としては、例えばポリグリコリド、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリジオキサノンなどのポリマー、並びに絹及びナイロンなどの布地が挙げられる。縫合糸14は、生体吸収性、部分的に生体吸収性、又は非吸収性であってもよく、円形の断面又は別形状の断面を有することができる。一実施形態では、縫合糸14は部分的に生体吸収性であり、非吸収性成分としてのポリエチレンと、生体吸収性成分としてのポリジオキサノンとを含む。
【0023】
縫合糸14は、単一の糸又は複数の糸から形成され得る。編組してまとめるといった任意の様々な方法で複数の糸を一体に結合させることによって、縫合糸ストランドを形成することができる。例示的な実施形態では、図示した実施形態のように縫合糸14を可撓性とすることができるように、縫合糸14を形成する糸は可撓性である。縫合糸14を形成する糸は、異なる材料から作製されてもよく(例えば、第1のいくつかの糸はナイロンであり、第2のいくつかの糸はPETである)、又は同じ材料から作製されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の糸から形成された縫合糸14はコアを有することができ、その周囲に編組等によって糸が配置される。コアは、縫合糸14の破断、切断等を防止するのを支援するために、縫合糸14に強度を与えることができる。縫合糸14は、およそのサイズ#5から#5-0までの範囲内のサイズなど、様々なサイズのいずれかを有し得る。
【0024】
図2は、この図の実施形態では単一の通路22である少なくとも1つの貫通通路22を有するインプラント21の別の実施形態を示す。
図2はまた、縫合糸24をインプラント21に連結するために縫合糸24が通路22を通って輪状にされることによって、縫合糸24が通路22を通って延在しているところを示している。
【0025】
図3は、この図の実施形態では単一の通路28である少なくとも1つの貫通通路28を有するインプラント26の別の実施形態を示す。
図3はまた、縫合糸30が通路28を通って延在しているところを示している。縫合糸30は、通路28の直径よりも大きい直径を有する結び目32をその中に有しており、このため、結び目32は通路28を通って引っ張られる、ないしは別の方法で移動することができないので、縫合糸30をインプラント26と連結したままとするのに役立つ。インプラントが複数の通路を有する一実施形態では、通路のそれぞれは、通路を貫通して延在しかつその中に結び目を有する関連縫合糸を有し得る。
【0026】
図4は、単一の縫合糸36が連結されているインプラント34の別の実施形態を示す。この例示の実施形態の縫合糸36は、縫合糸36の端部(又は他の部分)を、圧着、接着剤による接着、インプラント34の周りに結び付けるなどによってインプラント34に取り付けることによって、インプラント34と連結されている。インプラント34が複数の縫合糸と連結される場合、縫合糸のそれぞれは、同じ方法で(例えば、それぞれを接着剤でインプラント34に取り付ける、それぞれをインプラントの周りに結び付けるなど)、又は異なる方法で(例えば、一方の縫合糸を接着剤でインプラント34に取り付け、別の縫合糸をインプラントの周りに結び付けるなど)インプラント36に取り付けられてもよい。
【0027】
インプラントの例示的実施形態は、2016年10月19日出願の米国特許仮出願第15/297,696号、発明の名称「Meniscal Repair Devices,Systems,and Methods」に更に記載されており、当該出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
患者の身体内にインプラントを送達した後、インプラントを標的(例えば、修復される標的組織)に対して適所に固定するために、インプラントに取り付けられた縫合糸(複数可)に張力がかけられる。患者の身体内へのインプラントの送達後にインプラントに対してスライドすることができる縫合糸は、縫合糸への張力付与を容易にし、したがって、患者の身体内のインプラントの確実な位置決めを容易にして、適切な治癒を支援する。
【0029】
図5及び
図6は、指掛け部44を使用して縫合糸38を第1及び第2のインプラント40、42に取り付けるための1つの手法を示す。指掛け部44は、縫合糸38がそれ自体の中を通過する、縫合糸38の中空状領域であり、縫合糸38は、張力を受けたときに、第1の方向D1に一方向にスライド可能であり、かつ他の反対方向D2にスライドしないようにロックされる。第1のインプラント40は縫合糸38に直接連結され、第2のインプラント42は、縫合糸38を通って輪状になっている第2の縫合糸46によって縫合糸38と間接的に連結されている。インプラント40、42が患者の身体内の標的組織に対して位置付けられた後、
図5に示すように縫合糸38の尾部38tを第1の方向D1に引っ張ることによって、縫合糸38に張力をかけることができ、こうすることによって縫合糸38は指掛け部44を通ってスライドする。場合によっては、手術部位のスペース上の制約、手術部位の不明瞭な可視性、外科医が手術部位にアプローチする角度などのいくつもの要因に起因して、指掛け部44の上で縫合糸を第2の方向D2及び/又は第1の方向D1以外の別の方向に引っ張ることによって、縫合糸尾部38tに張力を加えてもよい。しかしながら、縫合糸38に張力をかけるために縫合糸尾部38tを第2の方向D2及び/又は第1の方向D1以外の他の方向に引っ張る場合、縫合糸38は応力を受け、それにより1つ又は2つ以上の問題のいずれかが生じる可能性がある。例えば、縫合糸38が完全に破断する場合があり、これにより、縫合糸38はインプラント40、42を標的組織に固定できなくなる。別の例では、縫合糸全体38が破断することなく、縫合糸38を形成する個々の糸が破断する場合があり、その結果、いずれかの時期に縫合糸38が完全に破断する可能性がある、及び/又は縫合糸38の部分的破損によってインプラント40、42の一方又は両方が適切に位置付けられなくなる可能性がある。更に別の例では、縫合糸38を形成する編組糸の編組みが強固でなくなる場合があり、その結果、指掛け部44の機能的長さが減少し、続いてそれにより、縫合糸38が緩むことによりインプラント40、42の一方又は両方が適切に位置付けられなくなる場合がある。更に別の実施形態において、第1の方向D1以外の方向に引っ張ることにより、指掛け部44の中空縫合糸領域の直径が拡大する可能性があり、それにより指掛け部44における又は指掛け部44近傍の縫合糸38が脆化して、縫合糸38が将来的に破断する危険性が増大し得る。
【0030】
図7は、指掛け部54を使用して縫合糸48を第1及び第2のインプラント50、52に取り付けるための別の技法を示す。第1のインプラント50は、例えば
図1~
図4の技法のいずれかなどによって、縫合糸48に直接連結され、第2のインプラント52は、縫合糸48を通って輪状になっている第2の縫合糸56によって縫合糸48と間接的に連結されている。他の実施形態では、第1及び第2のインプラント50、52は、例えば、インプラント50、52の両方が縫合糸48と直接連結される、インプラント50、52の両方が縫合糸48と間接的に連結される、又は第1のインプラント50が縫合糸48と間接的に連結され、第2のインプラント52が縫合糸48と直接連結されるといった他の方法で、縫合糸48と連結されてもよい。また、この例示の実施形態では、1本の縫合糸48がインプラント50、52と連結されているが、前述のように、複数の縫合糸を使用することが可能である。
【0031】
指掛け部54は、縫合糸48がそれ自体の中を通過する、縫合糸48の中空状領域である。この例示の実施形態の縫合糸48は、張力を受けたときに、指掛け部54を通って第3の方向D3に一方向にスライド可能であり、かつ、張力により指掛け部44が、指掛け部44の内部を通過する縫合糸48部分に対して圧潰するため、指掛け部54を通って他の反対方向D4にスライドしないようにロックされる。縫合糸48は、指掛け部54から延びる自由端、つまり尾部48tを有している。
【0032】
この例示の実施形態の縫合糸48は、その中に形成された結び目58を有している。結び目58は、
図7に示されるように、指掛け部54に隣接して位置しており、指掛け部54の、縫合糸尾部48tが延びている側に位置している。結び目58は、指掛け部54に隣接しているときには指掛け部54に実質的に当接する。当業者であれば、結び目58が指掛け部54と直接接触するように指掛け部54と当接しないように、結び目58と指掛け部54との間に短い距離が存在し得るが、結び目58は、それでもなお、製造公差などのいくつもの要因に起因して、指掛け部54と実質的に当接していると考えることができることを理解するであろう。
図7に示されるように、縫合糸48は、第1のインプラント50から第2のアンカー52に向かって延びる第1の長さを有している。縫合糸48の第1の長さは、その中に形成された結び目58及び指掛け部54を有し、結び目58は縫合糸48の第1の長さに沿って指掛け部54よりも第1のアンカー50の近くにあり、指掛け部54は第1の長さに沿って結び目58よりも第2のアンカー52の近くにある。縫合糸48はまた、第2のインプラント52から第1のアンカー50に向かって延びる第2の長さを有し、この長さは指掛け部54を通過し(例えば、縫合糸48の中空領域を通過し)、次に結び目58を通過し、結び目58からは縫合糸尾部48tが延びている。また、縫合糸48は、縫合糸の第1及び第2の長さのそれぞれの一部分を含む調節可能なループ60を画定する。
【0033】
縫合糸48の第1の長さの一部分は、結び目58と第1のアンカー50との間に延びている。更に後述するように、縫合糸48のこの部分的長さにより、縫合糸48は、組織の片側に第1のインプラント50を有する組織を貫通して延在することができ、結び目58は、組織の他方の側又はその近くに位置することができる。
【0034】
縫合糸尾部48tを引っ張り、縫合糸48を指掛け部54を通してスライドさせることによって、縫合糸48に張力をかけることができる。指掛け部54を通ってスライドする縫合糸48は、調節可能なループ60を圧潰させて、第1のアンカー50と第2のアンカー52との間の距離を減少させる。この張力印加は、本明細書に記載のように、インプラント50、52を患者の身体内の標的組織に対して所望通りに位置付けるために、インプラント50、52がその組織に対して位置付けられた後に生じ得る。場合によっては、縫合糸尾部48tは第1の方向D3に引っ張られてもよく、第1に、その場合には、縫合糸48は、指掛け部54を通って双方向にスライドするように構成される。縫合糸48をその一方向へのスライドのうちの方向D3に引っ張ることにより、縫合糸48に損傷を与えることなく、縫合糸48の望ましい動き及び張力印加がもたらされる。場合によっては、上述したように、いくつもの要因により縫合糸尾部48tを第2の方向D4及び/又は第1の方向D3以外の別の方向に引っ張ることによって、縫合糸48に張力をかけてもよい。縫合糸48の結び目58は、縫合糸48が指掛け部54を通って第1の方向D3以外の方向に引っ張られたときに、縫合糸48及び指掛け部54に加わる応力を低減し、それによって、縫合糸尾部48tを引っ張っている間に縫合糸48及びその指掛け部54が損傷を受ける危険性を低減するように構成されている。このため、
図7の縫合糸48及び指掛け部54は、結び目がその中に形成されていない
図5及び
図6の縫合糸38及び指掛け部44よりも損傷を受ける可能性が低く、
図7の縫合糸48は、縫合糸48が指掛け部54を通ってスライドする際に縫合糸48及び指掛け部54が損傷を受けるリスクが、もしあるとしても最小の状態で、あらゆる方向に引っ張られることができるので、
図5及び
図6の縫合糸38よりも使いやすい。広くは、結び目58は、滑車のように作用することによって、縫合糸48が指掛け部54を通して引っ張られたときに縫合糸48に加わる応力を低減するように構成されている。縫合糸48は、縫合糸尾部48tが引っ張られたことに応じて、まず最初に結び目58において引っ張られ、次に指掛け部54において引っ張られる。このようにして、縫合糸尾部48tが引っ張られる方向にかかわらず、縫合糸48を指掛け部54を通して第1の方向D3に指向させることができる。換言すれば、結び目58は、指掛け部54を通る縫合糸48の移動を、第1の方向D3(例えば、縫合糸が一方向にスライドする方向)に指向させるように構成されている。縫合糸の自由端48tと指掛け部54との間の縫合糸48に沿った結び目の位置は、指掛け部54を通る縫合糸48の移動のこの指向を促進する。また、結び目58は、指掛け部(finger trip)54によって既に与えられている締付け力に加えて、締付け力を縫合糸48に与えるように構成されており、これは、張力印加後に縫合糸48を適所に保持するのに役立ち得る。
【0035】
図8は、
図7に示される縫合糸48の構造体を形成する一実施形態を示す。この例示の実施形態では、結び目58は止め結びであり、縫合糸尾部48tが結び目58を通過している。広くは、止め結びは、縫合糸48の自由端48tが縫合糸48自体に結び付けられている結び目である。このため、縫合糸48は、指掛け部54と第1のアンカー50との間の位置において、それ自体に結び付けられる。止め結びは、目立たないことから外科手技において有利であるが、結び目58は、止め結び以外の形態、例えば、ヒッチ結び(hitch knot)、いかり結び(bend knot)などを有することができる。結び目58は、静的(例えば、止め半結び)、スライド可能(例えば、ダンカンループ)、圧潰可能(例えば、ひばり結び)等であり得る。
【0036】
図7及び
図8の例示の実施形態の縫合糸48は、一つ結び58を有する。他の実施形態では、縫合糸48は、多数の結び目又は連なった結び目を形成する複数の結び目58を有することができ、指掛け部54に隣接する第1の結び目58は
図7の結び目58と類似であり、1つ又は2つ以上の更なる結び目58のそれぞれは、縫合糸の長さに沿って結び目の両側で結び目に隣接する。
【0037】
図7及び
図8の例示の実施形態の結び目58は、縫合糸48自体によって形成される。他の実施形態では、別の縫合糸を縫合糸48に取り付けて結び目58を形成してもよい(例えば、縫合糸48に結び付けて縫合糸48上に結び目58を形成する)。
【0038】
本明細書に記載されるように少なくとも1つの縫合糸と連結されたインプラントを、様々な方法のいずれかで組織を通して進めることができる。例えば、1つ又は2つ以上の針を使用してインプラント及び縫合糸を手術部位に送達することができる。インプラントは、組織を切断するように構成されない場合があるので、1つ又は2つ以上の針は、組織(例えば、関節半月)を切断して、関連するインプラント(複数可)の通過を容易にするように構成され得る。組織を切断するように構成されていないインプラント(例えば、インプラントが切断面を欠いているなど)は、手術後に患者の身体内で不用意にインプラントが組織及び/又は他の物質を損傷する可能性を低減する助けとなり得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、複数の針を使用して、組織を通してインプラントを進めるように、1つ又は2つ以上の縫合糸と一体に連結された複数のインプラントのそれぞれは、組織(例えば、半月板修復処置における半月板、回旋腱板修復処置における回旋腱板等)を通して関連するインプラントを進めるように構成されたそれ自体の針と連結され得る。複数の針の使用は、患者に複数の切開部、つまり各針について1つの切開部を作製する必要があり得、針で組織を縫うように通した縫合糸を束ねることを容易にするために追加の切開部が必要になり得る。関節半月修復処置では、例えば、膝の後側にある静脈及び神経を含む体内の重要な構造物への損傷の可能性を回避するために、針は、膝の後側を通すのではなく膝の側部を通して挿入され得る。関節半月修復において、複数の針の使用は、一般にインサイドアウト手術手技と称される。インプラント及び縫合糸を送達するための針及び針の使用の例示的な実施形態は、既に述べた2016年10月19日出願の米国特許出願第15/297,696号、発明の名称「Meniscal Repair Devices,Systems,and Methods」に更に記載されている。
【0040】
他の実施形態では、複数のインプラントを送達するために複数の針を使用する代わりに、1本の針だけを使用して、組織を通してインプラントを進めるように、1つ又は2つ以上の縫合糸と一体に連結された複数のインプラントのそれぞれは、組織(例えば、半月板修復処置における半月板、回旋腱板修復処置における回旋腱板等)を通してインプラントのそれぞれを連続的に進めるように構成された、単一の針と連結され得る。単一の針の使用は、患者にただ1つの切開部を作製する必要があり得、これは、複数の針の使用より優れて、改善された美容術及び少ない組織外傷などの効果をいくらでも提供することができる。関節半月修復において、単一の針の使用は、一般にオールインサイド手術手技と称される。インプラント及び縫合糸を送達するために使用することができる単一の針の例示的な実施形態は、既に述べた2016年10月19日出願の米国特許出願第15/297,696号、発明の名称「Meniscal Repair Devices,Systems,and Methods」に更に記載されている。
【0041】
複数のインプラントを送達するように構成された針は、様々な寸法、形状、及び構造を有することができる。針は、任意の様々な材料、例えば、ステンレス鋼、ニチノール等から作製されることができる。例示的な実施形態において、針は中実部材であり、かつ可撓性である。中実である針は、針に構造安定性をもたらす助けとなり得る。可撓性である針は、中を通して進められることが望ましい組織に対する針の所望の位置決めを容易にし得る、かつ/又はその可撓性のために針を別の角度で組織に向けることができるので所望の組織に対する理想的ではない進入角度を補完し得る。針は、針の屈曲を可能にするような可撓性がありながら、中実であることから及び/又は針を作製する材料に起因して、その長手方向長さに沿って十分な構造安定性を有しており、このことが、組織を通して針を長手方向に進めて、組織を通してインプラント(複数可)を送達することを可能にしている。針は、様々な大きさを有し得る。例示的な実施形態において、針は、約0.038cm~0.020cm、例えば、約0.089cm(0.015インチ~0.080インチ、例えば約0.035インチ)の範囲内の最大外径を有する。針の遠位先端は、様々な構成を有することができる。例示的な実施形態において、針の遠位先端は、傾斜を付けられる又はトロカールの先端に類似した鋭利な三角形の先端を有することによってなどで、鋭利かつ組織を貫通するように構成され得る。鋭利な遠位先端を有する針は、組織(例えば、関節半月、回旋腱板)への針の穿通を容易にし得る。
【0042】
図9は、
図7の縫合糸48のような、その中に形成された指掛け部124と結び目126とを有する縫合糸122(
図9では分かりにくい)と連結された複数のインプラント102、104を送達するように構成された針100の一実施形態を示している。上述のように、インプラント102、104及び縫合糸122は、それぞれ様々な構成のいずれかを有することができる。また、上述のように、インプラント102、104はそれぞれ、様々な方法で縫合糸122と連結されることができる。ここの例示した実施形態における針100は、可撓性であり、かつ鋭利な遠位先端を有している。
図9は、針100を、インプラント102、104を送達するように構成された送達システムの一部として示す。送達システムは、可動ハンドル106、静止ハンドル108、可動ハンドル106が近位及び遠位に選択的にスライドするように構成されるスペーサ110、可動ハンドル106内に形成されたスロット114で近位及び遠位に選択的にスライド可能なノブの形態のアクチュエータ112、可動ハンドル106から遠位に延び、アクチュエータ112のスライド移動に応じてスライドするように構成された可撓性管116、及び静止ハンドル108から遠位に延びる細長いシャフト118を備える。
【0043】
図9はまた、針100と連結された第1及び第2のインプラント102、104も示している。第1のインプラント102は、第2のインプラント104から遠位に針100に装着され、そこから第2のインプラント104が配備される前に、針100から配備されるように構成される。第1及び第2のインプラント102、104はそれぞれ、針100が内部を通過できるようにカニューレ状である。第2のインプラント104の近位端面は、管116の遠位端面に当接する。
【0044】
図10~
図17は、そこに装着されたインプラント102、104を送達するための
図9の送達システムの使用の実施形態を例示する。
図10は、その遠位端(例えば、細長いシャフト118の遠位端)が組織120に近接して位置付けられた状態の送達システムを示す。針100の遠位端は、
図9及び
図10に示されるようにシャフト118の遠位端を越えて遠位に延びることができる、又は針100の遠位端を、針100がスライド可能に配置される細長いシャフト118の内側ルーメン内に収容することができる。
【0045】
図11は、針100の遠位先端が関節半月120の向こう側にあり、第1のインプラント102もまた組織120の向こう側にあり、第2のインプラント104が組織120の手前側にあり、更に細長いシャフト118の内側ルーメン内に収容されて、第1のインプラント102までの距離を保つために前方に押されている状態で、組織120を通して進められた針100を示す。針100及び第1のインプラント102は、静止ハンドル108に向かって遠位に、かつ静止ハンドル108に対して遠位に可動ハンドル106を移動させることによって組織120を通して進められている。
【0046】
図12は、第1のインプラント102を組織120の向こう側に残したまま、組織120の向こう側から組織120の手前側まで後退した針100を示す。針100は、静止ハンドル108から離れて近位に、かつ静止ハンドル108に対して近位に可動ハンドル106を移動させることによって組織120を通して後退した。
【0047】
図13は、ノブ112をスロット114内で遠位にスライドさせて、管116を遠位にスライドさせ、それによって第2のインプラント104を遠位に押すことによって、第2のインプラント104が針100に沿って遠位に進められたところを示す。管116は、ここで可動ハンドル106(戻り止めなどによって)にロックされ、第2のインプラント104を、第1のインプラント102の初期位置である針100上の適所に保持する。
【0048】
図14は、組織120に対して別の位置に移動した送達システムを示し、送達システムの遠位端(例えば、細長いシャフト118の遠位端)は組織120に近接して位置付けられる。
図15は、針100の遠位先端が組織120の向こう側にあり、第2のインプラント104もまた組織120の向こう側にある状態で、組織120における断裂の反対側で組織120を通して進められた針100を示す。係合された管116は、針100と共に組織120を通る第2のインプラント104の前進を容易にする。針100、管116、及び第2のインプラント104は、静止ハンドル108に向かって遠位に、かつ静止ハンドル108に対して遠位に可動ハンドル106を移動させることによって組織120を通して進められた。針100、第2のインプラント104、及び縫合糸122の図示を明確にするために、
図15において管116は、その遠位端を第2のインプラント104の近位端と当接した実際の前進した位置ではなく遠位の前進していない位置で示される。
【0049】
図16は、第2のインプラント104を組織120の向こう側に残したまま、かつ縫合糸122が第1及び第2のインプラント102と104との間に延びた状態で組織120の向こう側から組織120の手前側まで後退した針100を示す。針100は、静止ハンドル108から離れて近位に、かつ静止ハンドル108に対して近位に可動ハンドル106を移動させることによって関節半月120を通して後退した。第1及び第2のインプラントを挿入及び配備するための他の方法としては、DePuy Mitek(Raynham,MA)から入手可能なOmniSpan(登録商標)及びTrueSpan(商標)装置の使用が挙げられる。
【0050】
図17は、例えば、縫合糸122を指掛け部124及び結び目126を通してスライドさせて、縫合糸122の調節可能なループを圧潰させるために、例えば、縫合糸尾部122tを引っ張ってことによって縫合糸122に張力をかけることによって、組織120に対して適所にトグル留めされた第1及び第2のインプラント102、104を示す。
図14~
図17において、縫合糸の指掛け部124及び結び目126は、張力印加の際に使用するためにアクセス可能であるように縫合糸尾部122tが結び目126から延出した状態で、組織120の外側の組織120の手前側に位置しているが、指掛け部124及び/又は結び目126は、張力印加の前後に縫合糸尾部122tが組織120の外に延出した状態で、部分的に又は完全に組織120内にあってもよい。患者の身体から余分な材料を取り除くために、望ましい張力を印加した後、縫合糸尾部122tを切り取ることができる。患者の身体内に残留する縫合糸尾部122tの量を少なくするために、尾部122tを結び目126のできるだけ近くで切り取ることができ、そうすることにより、尾部122tは、存在するとしても最小になるので、患者が手術後に動いている間に縫合糸尾部122tにこすり付けられることによって生じる、縫合糸尾部122tに隣接する軟骨及び/又は他の物質の損傷を最小限に抑えることができる。
【0051】
当業者には、上述の実施形態に基づいた本発明の更なる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明される内容により限定されるものではない。本明細書に引用されるすべての刊行物及び参照文献はそれらの全容を参照によって本明細書に明示的に援用するものである。
【0052】
〔実施の態様〕
(1) 第1の埋め込み型アンカーと、
第2の埋め込み型アンカーと、
前記第1及び第2のアンカーと連結された縫合糸であって、前記縫合糸は、前記第1のアンカーから前記第2のアンカーに向かって延びる第1の長さと、前記第2のアンカーから前記第1のアンカーに向かって延びる第2の長さとを有し、前記第1の長さは、その中に形成された結び目を有し、前記第2の長さは、前記第1の長さ内に形成された圧潰可能な内部通路を通過した後、前記結び目を通過し、前記縫合糸の尾部が前記結び目から延びている、縫合糸と、を含む、外科用装置。
(2) 前記結び目が止め結びである、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記縫合糸の前記尾部が、前記縫合糸に張力をかけるために前記第1のアンカーに向かって第1の方向に引っ張られるように構成されており、かつ、前記縫合糸に張力をかけるために第2の異なる方向に引っ張られるように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(4) 前記縫合糸の前記尾部を前記第1の方向に引っ張ることにより、前記第1のアンカーと前記第2のアンカーとの間の距離が減少するように構成されており、前記縫合糸の前記尾部を前記第2の方向に引っ張ることにより、前記第1のアンカーと前記第2のアンカーとの間の距離が減少するように構成されている、実施態様3に記載の装置。
(5) 前記縫合糸の前記尾部を前記第1の方向に引っ張ることにより、前記縫合糸が前記内部通路内及び前記結び目を通ってスライドするように構成されており、前記縫合糸の前記尾部を前記第2の方向に引っ張ることにより、前記縫合糸が前記内部通路内及び前記結び目を通ってスライドするように構成されている、実施態様3に記載の装置。
【0053】
(6) 前記縫合糸が、前記内部通路を通って前記第1の方向にだけスライド可能である、実施態様3に記載の装置。
(7) 前記第2の長さが、前記結び目を通過する前に前記内部通路を出る、実施態様1に記載の装置。
(8) 前記第1のアンカーが第1の孔を有し、前記縫合糸が前記第1の孔を通って延在し、前記第2のアンカーが第2の孔を有し、前記縫合糸が前記第2の孔を通って延在する、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記第2のアンカーと連結された第2の縫合糸を更に含み、前記第2の縫合糸は、前記縫合糸を前記第2のアンカーに連結するために前記第2の縫合糸を通して前記第1の縫合糸を輪状にする、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記縫合糸が、複数の糸から編まれている、実施態様1に記載の装置。
【0054】
(11) 第1の埋め込み型アンカーと、
第2の埋め込み型アンカーと、
前記第1及び第2のアンカーとスライド可能に連結された縫合糸であって、前記縫合糸は圧潰可能な中空部分を有し、前記縫合糸の別の部分が前記中空部分を通過しており、前記縫合糸は、前記中空部分に隣接してその中に形成された結び目を有し、これにより、前記縫合糸の尾部が前記中空部分を通過した後前記結び目を通過するようになっており、前記尾部は、前記縫合糸を前記中空部分を通しかつ前記結び目を通してスライドさせるために引っ張られるように構成されている、縫合糸と、を含む外科用装置。
(12) 前記結び目が止め結びである、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記尾部が、前記縫合糸を前記中空部分を通しかつ前記結び目を通してスライドさせるために、任意の方向に引っ張られるように構成されている、実施態様11に記載の装置。
(14) 前記中空部分及び前記結び目が、前記第1のアンカーと前記第2のアンカーとの間に延在する縫合糸の長さに沿って配置されている、実施態様11に記載の装置。
(15) 前記縫合糸を前記中空部分を通しかつ前記結び目を通してスライドさせるために前記尾部を引っ張ることが、前記第1のアンカーと前記第2のアンカーとの間の距離を減少させる、実施態様11に記載の装置。
【0055】
(16) 縫合糸が、第1のアンカーと第2のアンカーとの間に延在し、前記縫合糸内に形成された結び目を有し、前記結び目に隣接して中空部分を有し、かつ、前記縫合糸の別の部分が前記中空部分を通って延在している状態で、前記縫合糸、前記第1のアンカー、及び前記第2のアンカーを患者の身体内に進めることと、
前記第1及び第2のアンカーを組織に隣接して位置決めした後、前記縫合糸に張力をかけて、前記縫合糸を前記結び目を通しかつ前記中空部分を通してスライドさせ、かつ、前記第1及び第2のアンカーを前記組織に対して移動させることと、を含む、外科的方法。
(17) 前記縫合糸が前記中空部分を通って第1の方向に一方向にスライド可能であり、前記縫合糸に張力をかけることが、前記結び目から前記第1の方向に延びている前記縫合糸の尾部を引っ張ることを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記縫合糸が前記中空部分を通って第1の方向に一方向にスライド可能であり、前記縫合糸に張力をかけることが、前記結び目から第2の異なる方向に延びている前記縫合糸の尾部を引っ張ることを含む、実施態様16に記載の方法。
(19) 前記組織が、患者の膝、股関節、及び肩のうち1つにある、実施態様16に記載の方法。