(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】ガスコンロ用マット
(51)【国際特許分類】
F24C 15/14 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
F24C15/14 F
(21)【出願番号】P 2018114160
(22)【出願日】2018-06-15
【審査請求日】2021-06-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000222141
【氏名又は名称】東洋アルミエコープロダクツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101409
【氏名又は名称】葛西 泰二
(74)【代理人】
【識別番号】100175385
【氏名又は名称】葛西 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100175662
【氏名又は名称】山本 英明
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】木村 将俊
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-054569(JP,A)
【文献】特開2013-036644(JP,A)
【文献】特開平06-159693(JP,A)
【文献】特開2012-242052(JP,A)
【文献】特開2003-343842(JP,A)
【文献】実開昭60-144008(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開孔が形成された天板と、この開孔内に配置されるガスバーナーと、このガスバーナーの周囲に配置され前記天板の表面から突出するバーナーリングとを備えるガスコンロに装着され、金属箔の成形体より成るガスコンロ用マットであって、
前記ガスバーナーの周囲の前記天板の表面を覆うことが可能な環状のマット本体を備え、
前記マット本体は、
中央部に前記バーナーリングの外径よりも小径の開口部分が形成された内周部と、
前記バーナーリングの外径の位置又はこの外径よりも外側の位置に段差を有するように形成された環状の段差部と、
前記段差部から外方へ延びる外周部とを備え、
前記内周部が、前記段差部を介して、前記バーナーリングの前記天板からの突出高さに対応する高さで突出して
おり、
前記外周部は、外周縁に起立形成された堤防部を備え、
前記内周部における前記開口部分の突出高さは、前記堤防部の突出高さよりも高く設定されている、ガスコンロ用マット。
【請求項2】
前記マット本体は、前記外周部に形成された、前記マット本体の表面から突出する少なくとも1つの環状の液止め部をさらに備える、請求項
1記載のガスコンロ用マット。
【請求項3】
前記液止め部の突出高さは、前記堤防部の突出高さよりも低く設定されている、請求項2記載のガスコンロ用マット。
【請求項4】
前記マット本体は、前記内周部の内周縁に縁巻加工により形成された第1の縁巻き部をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれかに記載のガスコンロ用マット。
【請求項5】
前記マット本体は、前記外周部の外周縁に縁巻加工により形成された第2の縁巻き部をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれかに記載のガスコンロ用マット。
【請求項6】
前記マット本体は、その表面に、前記バーナーリングに装着される五徳の取付位置を示す標識部をさらに備える、請求項1から請求項5のいずれかに記載のガスコンロ用マット。
【請求項7】
前記内周部は、
前記段差部に隣接し、前記段差部に向かって下降する第1の勾配を有する環状の第1の緩斜面部と、
前記第1の緩斜面部に隣接し、前記段差部に向かって下降し且つ前記第1の勾配より大きい第2の勾配を有する第2の緩斜面部と、
前記第2の緩斜面部に隣接し、前記開口部分を含む平坦なリング覆い部とを備える、請求項1から請求項6のいずれかに記載のガスコンロ用マット。
【請求項8】
開孔が形成された天板と、この開孔内に配置されるガスバーナーと、このガスバーナーの周囲に配置され前記天板の表面から突出するバーナーリングとを備えるガスコンロに装着され、金属箔の成形体より成るガスコンロ用マットであって、
前記ガスバーナーの周囲の前記天板の表面を覆うことが可能な環状のマット本体を備え、
前記マット本体は、
中央部に前記バーナーリングの外径よりも小径の開口部分が形成された内周部と、
前記バーナーリングの外径の位置又はこの外径よりも外側の位置に段差を有するように形成された環状の段差部と、
前記段差部から外方へ延びる外周部とを備え、
前記内周部は、
前記段差部を介して、前記バーナーリングの前記天板からの突出高さに対応する高さで突出しており、
前記段差部に隣接し、前記段差部に向かって下降する第1の勾配を有する環状の第1の緩斜面部と、
前記第1の緩斜面部に隣接し、前記段差部に向かって下降し且つ前記第1の勾配より大きい第2の勾配を有する第2の緩斜面部と、
前記第2の緩斜面部に隣接し、前記開口部分を含む平坦なリング覆い部とを備え、
前記第1の緩斜面部と前記第2の緩斜面部との間に、表面側から見て凹部が形成されている、ガスコンロ用マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロ用マットに関し、特にガスコンロにおけるガスバーナーの周囲に装着して、天板の表面を覆うガスコンロ用マットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロは、天板に形成した開孔内にガスバーナーが設けられ、鍋等をガスバーナー上に支持するための五徳がガスバーナーの周囲に配置される構成が一般的である。又、通常、ガスバーナーの周囲には、天板の開孔を閉塞するバーナーリングが装着される。尚、近年では、手入れが容易なように、表面を平坦に仕上げた天板を採用することも多くなっている。
【0003】
ところでガスコンロで調理を行うと、フライパンから食品屑や油等が飛び散ったり、鍋からゆで汁や煮汁等の液体が吹きこぼれたりして、ガスバーナー周囲の天板の表面を汚すことがしばしばある。そこで、ガスバーナーの周囲を覆って天板に汚れが付着するのを防止するガスコンロ用マットが提供されている。このような従来のガスコンロ用マットは、例えば、特開2016-40513号公報(特許文献1)や特開2015-7513号公報(特許文献2)等に記載されている。
【0004】
図7は、特許文献1に記載された従来のガスコンロ用マットを示すものであって、(A)は使用状態を示す概略斜視図であり、(B)は使用状態を示す断面図である。
図7に示すように、ガスコンロ20は、例えば、天板21に形成した開孔22内にガスバーナー23が配置され、ガスバーナー23の周囲に天板21の開孔を覆うバーナーリング24が配置され、鍋等を載置するための五徳25がバーナーリング24の外周を囲むように着脱自在に取り付けられる。ガスコンロ用マット30は、バーナーリング24よりも外側で天板21の表面を覆うように、天板21と五徳25との間に配置される。従って、従来のガスコンロ用マット30の中央部に形成される開口部分30aの孔径は、バーナーリング24の外径Rよりも大きく設定されている。
【0005】
特許文献2に記載されるガスコンロ用マットは、中央部の開口部分と同心的に1つ以上の開口補助線が形成され、適用するガスコンロのバーナーリングの外径に対応する開口補助線を使用者が切り取ることにより、1種類の製品で、開口部分の孔径を複数種類のバーナーリングの外径に対応できるようにしたものである。特許文献2のガスコンロ用マットもまた、開口部分の孔径が、バーナーリングの外径より大きくなるように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-40513号公報
【文献】特開2015-7513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8は、従来のガスコンロ用マットの問題点を説明するための、
図7の部分拡大図である。特許文献1又は特許文献2に記載されるような従来のガスコンロ用マット30は、天板21から突出するバーナーリング24よりも外側で天板21の表面を覆う設計となっている。すなわち従来は、バーナーリング24とガスコンロ用マット30との間の領域では、天板21の表面が覆われていない。このため、調理時に飛散した食品屑等の固形物や油又は吹きこぼれた煮汁等の液体が、バーナーリング24とガスコンロ用マット30との間の天板21に付着したり、天板21とガスコンロ用マット30との間に侵入したりして、これらが汚損されるという問題がある。
【0008】
又、
図8に示すように、五徳25における鍋等の底部を支持する部分の先端部25aが、バーナーリング24の外周付近又は外周よりも内側に位置している場合、鍋などから吹きこぼれた液体Lが矢印で示すように五徳25を伝わって先端部25aまで達し、ここからバーナーリング24に向かって落下して、バーナーリング24の表面を汚損する。更に、バーナーリング24が天板21に対し着脱可能な構造の場合は、落下した液体Lが、バーナーリング24と天板21との間の隙間Gからバーナーリング24の内側へ侵入する結果、バーナーリング24の内側に汚れが焦げ付いて固着するという問題を発生させている。
【0009】
更に、特許文献1及び特許文献2に記載の従来のガスコンロ用マットは、天板の表面形状に合わせてほぼ全体が平坦な形状に形成されており、調理時に鍋から吹きこぼれた煮汁等の液体を堰き止める機能が高くないので、吹きこぼれた液体をガスコンロ用マットの周囲に流出させる可能性が高いという問題もある。
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、調理時に飛散した食品屑等の固形物や油又は吹きこぼれた煮汁等の液体によって、バーナーリングの周囲の天板やバーナーリングの内側の天板が汚損されるという問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、開孔が形成された天板と、この開孔内に配置されるガスバーナーと、このガスバーナーの周囲に配置され天板の表面から突出するバーナーリングとを備えるガスコンロに装着され、金属箔の成形体より成るガスコンロ用マットであって、ガスバーナーの周囲の天板の表面を覆うことが可能な環状のマット本体を備え、マット本体は、中央部にバーナーリングの外径よりも小径の開口部分が形成された内周部と、バーナーリングの外径の位置又はこの外径よりも外側の位置に段差を有するように形成された環状の段差部と、段差部から外方へ延びる外周部とを備え、内周部が、段差部を介して、バーナーリングの天板からの突出高さに対応する高さで突出しており、外周部は、外周縁に起立形成された堤防部を備え、内周部における開口部分の突出高さは、堤防部の突出高さよりも高く設定されているものである。
【0012】
このように構成すると、ガスコンロに装着したときにマット本体がガスバーナーの周囲の天板の表面を覆うことが可能であると共に、内周部の開口部分がバーナーリングの外径よりも小径であるから、マット本体によってバーナーリングの周縁から天板にわたる領域を覆うことができる。又、マット本体に形成される段差部が、バーナーリングの外径の位置又はその外側の位置であると共に突出高さがバーナーリングの突出高さに対応しているから、ガスコンロに装着したときに、マット本体のバーナーリング及び天板に対する接触状態が適切となる。又、堤防部が、マット本体上に吹きこぼれた液体がマット本体の外側へ流出するのを阻止する。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、マット本体は、外周部に形成された、マット本体の表面から突出する少なくとも1つの環状の液止め部をさらに備えるものである。
【0016】
このように構成すると、液止め部が、調理中に吹きこぼれた液体が液止め部より内方からマット本体の外周縁に向かって流動する際の抵抗となる。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、液止め部の突出高さは、堤防部の突出高さよりも低く設定されているものである。
このように構成すると、液止め部の高さ寸法が、段差部の高さよりも低くなる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の構成において、マット本体は、内周部の内周縁に縁巻加工により形成された第1の縁巻き部をさらに備えるものである。
【0018】
このように構成すると、内周縁に第1の縁巻き部を形成したので、内周縁の見かけの断面積が増大する。
【0019】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の構成において、マット本体は、外周部の外周縁に縁巻加工により形成された第2の縁巻き部をさらに備えるものである。
【0020】
このように構成すると、外周縁に第2の縁巻き部を形成したので、外周縁の見かけの断面積が増大する。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の構成において、マット本体は、その表面に、バーナーリングに装着される五徳の取付位置を示す標識部をさらに備えるものである。
【0022】
このように構成すると、ガスコンロ用マットをガスバーナーの周囲に装着する際に、バーナーリング等に形成される五徳の位置決め用の係止構造の位置と標識部の位置とを合わせることで、五徳の取付位置を把握可能となる。
【0023】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれに記載の発明の構成において、内周部が、段差部に隣接し、段差部に向かって下降する第1の勾配を有する環状の第1の緩斜面部と、第1の緩斜面部に隣接し、段差部に向かって下降し且つ第1の勾配より大きい第2の勾配を有する第2の緩斜面部と、第2の緩斜面部に隣接し、開口部分を含む平坦なリング覆い部とを備えるものである。
【0024】
このように構成すると、第1の緩斜面部と段差部との境界、第1の緩斜面部と第2の緩斜面部との境界、及び、第2の緩斜面部とリング覆い部との境界の3箇所に環状の屈曲部が形成される。又、第1の勾配より第2の勾配が大きいので、第1の緩斜面部と第2の緩斜面部との間に、表面側から見て凹部が形成される。
請求項8記載の発明は、開孔が形成された天板と、この開孔内に配置されるガスバーナーと、このガスバーナーの周囲に配置され天板の表面から突出するバーナーリングとを備えるガスコンロに装着され、金属箔の成形体より成るガスコンロ用マットであって、ガスバーナーの周囲の天板の表面を覆うことが可能な環状のマット本体を備え、マット本体は、中央部にバーナーリングの外径よりも小径の開口部分が形成された内周部と、バーナーリングの外径の位置又はこの外径よりも外側の位置に段差を有するように形成された環状の段差部と、段差部から外方へ延びる外周部とを備え、内周部は、段差部を介して、バーナーリングの天板からの突出高さに対応する高さで突出しており、段差部に隣接し、段差部に向かって下降する第1の勾配を有する環状の第1の緩斜面部と、第1の緩斜面部に隣接し、段差部に向かって下降し且つ第1の勾配より大きい第2の勾配を有する第2の緩斜面部と、第2の緩斜面部に隣接し、開口部分を含む平坦なリング覆い部とを備え、第1の緩斜面部と第2の緩斜面部との間に、表面側から見て凹部が形成されているものである。
このように構成すると、ガスコンロに装着したときにマット本体がガスバーナーの周囲の天板の表面を覆うことが可能であると共に、内周部の開口部分がバーナーリングの外径よりも小径であるから、マット本体によってバーナーリングの周縁から天板にわたる領域を覆うことができる。又、マット本体に形成される段差部が、バーナーリングの外径の位置又はその外側の位置であると共に突出高さがバーナーリングの突出高さに対応しているから、ガスコンロに装着したときに、マット本体のバーナーリング及び天板に対する接触状態が適切となる。更に又、第1の緩斜面部と段差部との境界、第1の緩斜面部と第2の緩斜面部との境界、及び、第2の緩斜面部とリング覆い部との境界の3箇所に環状の屈曲部が形成される。又、第1の勾配より第2の勾配が大きいので、第1の緩斜面部と第2の緩斜面部との間に、表面側から見て凹部が形成される。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明は、マット本体が、バーナーリングの表面からバーナーリングの周囲の天板の表面にわたる領域を覆うことができるので、調理時に吹きこぼれた液体等が、バーナーリングの表面の一部及びバーナーリングの周囲の天板に接触すること、及び、この液体が天板とバーナーリングとの隙間に侵入することが阻止される。その結果、バーナーリングの表面の一部と、天板におけるバーナーリングより内側の表面及びバーナーリングの周囲の表面とが汚損されるのを確実に防止できる。又、堤防部を備えることにより、吹きこぼれてマット本体の上に落下した液体がマット本体の外側に流出するのを抑止して、天板が汚損されるのを防止する。
【0027】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、調理中に液体が吹きこぼれたとき、液止め部よりも内方で落下する液体の量が少ないときは、液止め部によりこの液体を堰き止めて、マット本体の外周部に液体が達するのを阻止する。吹きこぼれた液体の量が多いときは、液止め部が流動に抵抗を与えて液体の流速を低下させる。このように、液体がガスコンロ用マットの外側へ流動するのを阻止するか又は抵抗を与えて、天板の表面が汚れるのを抑止する効果を向上させることができる。
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、液止め部の高さ寸法が段差部の高さよりも低く設定されるので、段差部と液止め部との間に貯まった液体が、段差部を超えて内方のバーナーリング側へ流動する虞を回避することができる。
【0028】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の発明の効果に加えて、第1の縁巻き部により、内周部の内周縁の見かけの断面積が増大するから、内周縁の強度を向上させることができる。
【0029】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の発明の効果に加えて、第2の縁巻き部により、外周部の外周縁の見かけの断面積が増大するから、外周縁の強度を向上させることができる。
【0030】
請求項6記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の発明の効果に加えて、標識部により五徳の係止位置がマット本体の表面から把握可能となるので、ガスコンロ用マットの装着後であっても、五徳を適正位置に取り付けることが容易にできる。
【0031】
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の発明の効果に加えて、ガスコンロがバーナーリングの外周に五徳の基部を取り付ける構造である場合において、マット本体の段差部の直径よりもバーナーリングの直径が小さいとき、つまり、段差部の直径が五徳の下側先端部の内径より大きくなっているときは、五徳を取り付ける際に、五徳の下側先端部で内周部の一部及び段差部を圧潰する必要が生じる。このような状況において、段差部に近接させて第1の緩斜面部及び第2の緩斜面部を設けたことにより、段差部の近傍に3箇所の屈曲部が形成されると共に、第1の緩斜面部と第2の緩斜面部との間が凹部に形成されているので、五徳の下側先端部によって表面側から荷重を加えたときに、内周部の一部及び段差部が変形して圧潰するのが容易になる。又、段差部の直径が五徳の下側先端部の内径より大きくなっているときは、平坦なリング覆い部と第2の緩斜面部とによる屈曲部及び第1の緩斜面部と第2の緩斜面部とによる屈曲部はそれぞれ、五徳を取り付ける際の位置合わせの目安としての機能をも果たす。これらにより、マット本体における段差部に沿った変形を均等化できるから、内周部の中心と外周部の中心との間に位置ずれが生じるのが防止され、ガスコンロ用マットの適切な装着状態を確保できる。
請求項8記載の発明は、マット本体が、バーナーリングの表面からバーナーリングの周囲の天板の表面にわたる領域を覆うことができるので、調理時に吹きこぼれた液体等が、バーナーリングの表面の一部及びバーナーリングの周囲の天板に接触すること、及び、この液体が天板とバーナーリングとの隙間に侵入することが阻止される。その結果、バーナーリングの表面の一部と、天板におけるバーナーリングより内側の表面及びバーナーリングの周囲の表面とが汚損されるのを確実に防止できる。又、ガスコンロがバーナーリングの外周に五徳の基部を取り付ける構造である場合において、マット本体の段差部の直径よりもバーナーリングの直径が小さいとき、つまり、段差部の直径が五徳の下側先端部の内径より大きくなっているときは、五徳を取り付ける際に、五徳の下側先端部で内周部の一部及び段差部を圧潰する必要が生じる。このような状況において、段差部に近接させて第1の緩斜面部及び第2の緩斜面部を設けたことにより、段差部の近傍に3箇所の屈曲部が形成されると共に、第1の緩斜面部と第2の緩斜面部との間が凹部に形成されているので、五徳の下側先端部によって表面側から荷重を加えたときに、内周部の一部及び段差部が変形して圧潰するのが容易になる。又、段差部の直径が五徳の下側先端部の内径より大きくなっているときは、平坦なリング覆い部と第2の緩斜面部とによる屈曲部及び第1の緩斜面部と第2の緩斜面部とによる屈曲部はそれぞれ、五徳を取り付ける際の位置合わせの目安としての機能をも果たす。これらにより、マット本体における段差部に沿った変形を均等化できるから、内周部の中心と外周部の中心との間に位置ずれが生じるのが防止され、ガスコンロ用マットの適切な装着状態を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施の形態によるガスコンロ用マットの一例を示すものであって、(A)は正面図であり、(B)は平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態によるガスコンロ用マットの使用状態を示す断面図である。
【
図4】
図2に示すガスコンロ用マットの内周縁側の拡大図である。
【
図5】本発明の実施の形態によるガスコンロ用マットの他の使用状態を示す断面図であって、(A)は五徳を取り付ける前の状態を示すものであり、(B)は五徳を取り付けた状態を示すものである。
【
図6】
図2に示すガスコンロ用マットの外周縁側の拡大図である。
【
図7】特許文献1に記載された従来のガスコンロ用マットを示すものであって、(A)は使用状態を示す概略斜視図であり、(B)は使用状態を示す断面図である。
【
図8】従来のガスコンロ用マットの問題点を説明するための、
図7の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本発明の実施の形態によるガスコンロ用マットの一例を示すものであって、(A)は正面図であり、(B)は平面図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。
図3は、本発明の実施の形態によるガスコンロ用マットの使用状態を示す断面図である。
【0034】
尚、以下の説明において、ガスコンロに装着した状態において、露出する側の面をガスコンロ用マットの表面と言うものとする。
【0035】
はじめに
図3を参照して、本発明に係るガスコンロ用マット1は、ガスコンロのガスバーナー13の周囲に装着される。装着対象とするガスコンロは、開孔12が形成された天板11と、この開孔12内に配置されるガスバーナー13と、このガスバーナー13の周囲に配置され天板11の表面から突出するバーナーリング14とを備えるものである。本実施の形態のガスコンロは、ガスバーナー13の周囲の天板11の表面が平坦に仕上げられたものである。
【0036】
図1及び
図2に示すように、ガスコンロ用マット1は、金属箔の成形体である環状のマット本体2を備える。このマット本体2は、ガスバーナーの周囲の天板の表面を覆うことが可能な外形寸法を有し、中央部に開口部分3が形成された内周部4と、内周部4の外側の位置に段差を有するように形成された環状の段差部5と、段差部5から外方へ延びる外周部6とを備える。そして内周部4が、段差部5を介して、外周部6よりも表面側へ突出するように形成されている。尚、ガスコンロが複数のガスバーナーを備える場合、ガスコンロ用マットは、通常、ガスバーナーごとに配設される。
【0037】
マット本体2は、例えば厚みが10-100μmのアルミニウム箔で製作され、本例では、環状のマット本体2の開口部分3、内周部4、段差部5、及び、外周部6が互いに同心に形成される。又、内周部4及び外周部6の主要部分は平坦に形成される。
【0038】
内周部4に設けられる開口部分3の孔径d1は、バーナーリングの内径(ガスバーナー13を挿通させる開孔の孔径)よりも大きく、且つ、バーナーリングの外径R(
図7(B)参照)よりも小径に設定される。又、孔径d1は、ガスバーナーの基部に設けられる点火プラグや立ち消え防止用の安全装置と干渉しないように設定される。
【0039】
段差部5は、
図3に示すように、外周部6から起立して、浅い筒状を成すものである。外周部6に対し、垂直に起立させてもよいが、図示するように、内周部4に向かって若干傾斜させてもよい。
図1に示す段差部5の直径d2は、バーナーリング14の外径R(
図7(B)参照)と等しいか又はこれより大きく設定される。
【0040】
外周部6は、段差部5から連続して外方へ延びる部分であり、その外径d3は、ガスバーナーの周囲の天板の表面を覆うことが可能な寸法に設定される。好ましくは、マット本体2の外周縁2bが、ガスバーナーの周囲に取り付けられる五徳が天板の表面に接触し得る位置よりも外側に位置するように、外径d3が設定される(例えば220~245mm)。
【0041】
図2に示す、内周部4の外周部6に対する突出高さhは、バーナーリングが天板の表面から突出する高さに対応するように設定され、通常は、5~10mmの範囲で設定される。
【0042】
マット本体2は更に、外周部6の外周縁2bを起立させて形成した堤防部9を備える。図示の例では、堤防部9は、表面側が凹曲面となるように形成されているが、その形状は特に限定されるものではなく、表面が円錐面や円筒面を構成するように形成してもよい。堤防部9の開始位置は、五徳の外周に干渉しないような位置であり、又、外周部6の高さ寸法は、吹きこぼれた液体が堤防部9を超えることを抑制できる程度の寸法に設定される。
【0043】
外周部6は更に、マット本体2の表面から突出するように形成された少なくとも1つの環状の液止め部7を備える。液止め部7は、五徳15がマット本体2に接する位置とは干渉しない位置に設けられ、断面が三角形状を成すように形成されたものである。又、高さ寸法は、五徳15と干渉しない高さであって、且つ段差部5の高さよりも低く設定される。これは、液止め部7の高さを段差部5より高くすると、段差部5と液止め部7との間に貯まった液体が、段差部5を超えて内方のバーナーリング14側へ流動する可能性が生じるので、この問題を回避するためである。
【0044】
図3に示すように、ガスコンロ用マット1は、使用の際、ガスバーナー13の周囲の天板11上に配置され、更にその上に五徳15が載置される。マット本体2は、ガスバーナー13の周囲の天板11の表面を覆うことが可能な外径を有し、開口部分3の孔径はバーナーリング14の外径よりも小径である。又、段差部5は、その外径がバーナーリング14の外径とほぼ等しく設定されている。更に、内周部4の外周部6に対する突出高さhは、バーナーリング14の突出高さに対応している。他方、五徳15は、天板11上に載置される基部15bと鍋等を支持する腕部15dとを備え、基部15bの内周側に位置する下側先端部15aを、マット本体2の段差部5を介して、バーナーリング14の外周に嵌合させることによって、天板11上に取り付けられる。マット本体2の液止め部7は、五徳15の下側先端部15aよりも外側で、五徳15の基部15bとは干渉しないように配置される。マット本体2の堤防部9は、五徳15の外周側の部分15cより外側に、五徳15とは干渉しないように配置される。
【0045】
このような構成により、ガスコンロ用マット1は、ガスコンロに装着したときに、バーナーリング14の周縁部から天板11に亘る領域を切れ目なく覆うことができると共に、マット本体2が、バーナーリング14及び天板11の表面に適切に接触することができる。調理時に吹きこぼれた液体等は、五徳15の腕部15dの内周側を伝ってバーナーリング14の表面に落下し、あるいは五徳15の腕部15dの外周側を伝って天板11の表面に落下する可能性がある。しかし、上記のように構成されたガスコンロ用マット1を装着することで、落下した液体がバーナーリング14の表面の一部及びバーナーリング14の周囲の天板11に接触することを防止して、この液体が天板11とバーナーリング14との隙間に侵入することを阻止するので、これらの汚損を確実に防止できる。
【0046】
又、マット本体2が堤防部9を備えることにより、マット本体2上に吹きこぼれた液体が外側へ流出するのを確実に抑止できるから、天板の汚損を防止する効果が向上する。
【0047】
更に、段差部5の外側に形成された液止め部7は、調理中に吹きこぼれてマット本体2の内方から外方へ向かって流動する液体に対する堰又は抵抗として機能する。すなわち、鍋等から吹きこぼれた液体が、内周部4の表面上等、液止め部7よりも内方の位置に落下した場合において、この液体の量が少ないときは、液止め部7により液体の流動が堰き止められて、液体が外周部6に達するのを阻止することができる。吹きこぼれた液体の量が多いときは、液止め部7が液体の流動に抵抗を与えて流速を低下させることにより、液体がマット本体2外側まで流出するのを防止して、天板11の表面が汚れるのを抑止することができる。
【0048】
尚、バーナーリング14の表面に、五徳15の位置決めをするための、例えばノッチなどの係止構造が設けられている場合、上記のようにガスコンロ用マット1を装着することによって、マット本体2の内周部4がバーナーリング14の係止構造を覆い隠してしまうことがある。そこで
図1(B)に示すように、マット本体2の表面、例えば内周部4の表面に、バーナーリング1の係止構造の位置を示すための標識部nを設けてもよい。ガスコンロ用マット1をガスバーナーの周囲に装着する際に、マット本体2の表面に表示される標識部nを、バーナーリング14における係止構造の位置に位置合わせしておくと、マット本体2の標識部nによって、五徳15の係止位置を把握することが可能となる。従って、ガスコンロ用マット1の装着後であっても、五徳15を適正位置に取り付けることが容易にできるようになる。
【0049】
本実施の形態のガスコンロ用マットは、更に以下のような構成を備える。
図4は、
図2に示すガスコンロ用マットの内周縁側の拡大図である。
図5は、本発明の実施の形態によるガスコンロ用マットの他の使用状態を示す断面図であって、(A)は五徳を取り付ける前の状態を示すものであり、(B)は五徳を取り付けた状態を示すものである。
図6は、
図2に示すガスコンロ用マットの外周縁側の拡大図である。
【0050】
図4に示すように、マット本体2の内周部4は、開口部分3に沿った内周縁2aに、縁巻加工により形成された第1の縁巻き部8を更に備える。第1の縁巻き部8は、開口部分3の端縁を上から下に巻き込んで形成したものであり、本例では、その下端が、内周部4の下面付近に位置するように設定される。第1の縁巻き部8を形成することにより内周縁2aの見かけの断面積(断面係数)が増大するから、内周部4の内周縁2a(開口部分3の周縁)の強度を向上させることができる。又、第1の縁巻き部8を、巻き込み後の直径(例えば0.5~1mm)に応じた寸法で内周部4から表面側へ突出させることにより、吹きこぼれた液体に対する堤防機能を持たせることが可能である。尚、第1の縁巻き部8の巻き込み方向や巻き込み半径等は、本実施の形態に限定されるものではない。
【0051】
更に内周部4は、段差部5に隣接し、段差部5に向かって下降する第1の勾配θ1を有する環状の第1の緩斜面部S1と、第1の緩斜面部S1に隣接し、段差部5に向かって下降し且つ第1の勾配θ1より大きい第2の勾配θ2を有する第2の緩斜面部S2と、第2の緩斜面部S2に隣接し、開口部分3を含む平坦なリング覆い部S3とを備える。
【0052】
内周部4を上記のように構成すると、第1の緩斜面部S1と段差部5との境界、第1の緩斜面部S1と第2の緩斜面部S2との境界、及び、第2の緩斜面部S2とリング覆い部S3との境界の3箇所に屈曲部が形成される。又、第1の勾配θ1より第2の勾配θ2が大きいので、第1の緩斜面部S1と第2の緩斜面部S2との間は、表面側から見て凹部を形成する。
【0053】
内周部4の上記の構成は、以下のような効果を奏する。
図5(A)に示すように、バーナーリング14の外周に五徳15の基部15bを取り付ける場合において、バーナーリング14の直径よりも段差部5の直径が大きいときは、五徳15を取り付ける際、
図5(B)に示すように、五徳15の下側先端部15aで内周部4の一部及び段差部5を圧潰する必要が生じる。本例では、段差部5に近接させて3箇所の屈曲部が形成されると共に、第1の緩斜面部S1及び第2の緩斜面部S2との間が凹部に形成されるので、表面側に作用する荷重に対して段差部5の近傍領域が変形しやすくなっている。その結果、五徳15の下側先端部15aで内周部4の一部及び段差部5を圧潰するのが容易になる。又、段差部5の直径が五徳15の下側先端部15aの内径より大きくなっているときは、平坦なリング覆い部S3と第2の緩斜面部S2とによる屈曲部及び第1の緩斜面部S1と第2の緩斜面部S2とによる屈曲部はそれぞれ、五徳15を取り付ける際の位置合わせの目安としての機能をも果たす。これらにより、マット本体2における段差部5に沿った変形を均等化できるから、内周部4の中心と外周部6の中心との間に位置ずれが生じるのが防止され、ガスコンロ用マットの適切な装着状態を確保することができる。尚、五徳15を取り付ける際の位置合わせの目安として第1の緩斜面部S1と第2の緩斜面部S2とによる屈曲部を設ける場合は、両者の間を凹部に形成する形態に限定されず、凸部に形成してもよい。但し、段差部5の圧潰のしやすさの観点からは、第1の緩斜面部S1と第2の緩斜面部S2との間が凹部に形成されているのが好ましい。
【0054】
図6に示すように、マット本体2は、外周部6の外周縁2bに縁巻加工により形成された第2の縁巻き部10を更に備える。本例における第2の縁巻き部10は、堤防部9の端縁を上から下に巻き込んで形成したものであり、その下端が、堤防部9上端付近に位置するように設定した。第2の縁巻き部10を形成することにより外周縁2bの見かけの断面積(断面係数)が増大するから、マット本体2の外周縁2bの強度を向上させることができる。又、第2の縁巻き部10を、巻き込み後の直径(例えば1.5~3mm)に応じた寸法で堤防部9から突出させることにより、吹きこぼれた液体に対する堤防機能を向上させることが可能である。尚、第2の縁巻き部10の巻き込み方向や巻き込み半径等は特に限定されるものではない。
【0055】
尚、マット本体は環状であるが、円形に限定されず、矩形、正方形、正六角形などの形態を採用することもできる。又、複数のガスバーナーを有するガスコンロを適用対象とする場合、マット本体が、天板の全面を覆い、且つ、複数ガスバーナーに対応する複数の開口部分を備えるものとすることも可能である。更に、マット本体は、液止め部と堤防部との両方を備える構成とする以外に、いずれか一方だけを設けてもよく、両方を省略することもできる。
【0056】
液止め部は、マット本体に1つだけを設けてもよいが、2つ以上設けることも可能である。液止め部の断面形状は、三角形状に限定されるものではなく、例えば半円形や矩形などの断面形状であってもよい。
【0057】
内周部の開口部分の形状は、上記では円形としたが、楕円形など、バーナーリングの形態に応じて変更することが可能である。又、ガスバーナーの基部付近に点火プラグや立ち消え防止用の安全装置などが設けられている場合、開口部分は、これらを避けるような切欠部を有する形状としてもよい。又、内周部に設ける第1の緩斜面部及び第2の緩斜面部は省略することも可能である。
【0058】
更に、内周部に形成する第1の縁巻き部及び外周部に形成する第2の縁巻き部は、いずれか一方だけ設けてもよく、両方とも省略してもよい。
【0059】
標識部は、内周部以外に、段差部の表面や外周部に設けてもよく、場合により、省略してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…ガスコンロ用マット(本発明)
2…マット本体
2a…内周縁
2b…外周縁
3…開口部分
4…内周部
5…段差部
6…外周部
7…液止め部
8…第1の縁巻き部
9…堤防部
10…第2の縁巻き部
11…天板
12…開孔
13…ガスバーナー
14…バーナーリング
15…五徳
d1…開口部分の孔径
d2…段差部の直径
d3…マット本体(外周部)の外径
S1…第1の緩斜面部
S2…第2の緩斜面部
S3…リング覆い部
θ1…第1の勾配
θ2…第2の勾配
R…バーナーリングの外径
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。