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特許7171259タングステンのための化学的機械的研磨法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】タングステンのための化学的機械的研磨法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20221108BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20221108BHJP
   B24B 37/11 20120101ALI20221108BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20221108BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20221108BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
B24B37/11
B24B37/24 C
C09G1/02
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
H01L21/304 622F
H01L21/304 622X
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018115479
(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2019036714
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】62/543,416
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ジア-デ・ペン
(72)【発明者】
【氏名】リン-チェン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】シン・スー
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-167580(JP,A)
【文献】特開2006-060205(JP,A)
【文献】特開2016-043479(JP,A)
【文献】特開2016-048777(JP,A)
【文献】特開2005-118982(JP,A)
【文献】特開2008-124222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0376462(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09K 3/14
C09G 1/02
B24B 37/00
B24B 37/24
B24B 37/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステンの化学的機械的研磨の方法であって、
タングステン及び絶縁体を含む基板を提供するステップであって、タングステンフィーチャーは100μm以下の寸法を有するステップ;
初期成分として
水;
酸化剤;
10~500ppmの量の、L-アルギニンHCl、アルギニンリンゴ酸塩、N-メチル-L-アルギニン酢酸塩及びその混合物からなる群より選択されるアルギニン塩
コロイダルシリカ砥粒;
ジカルボン酸;
鉄(III)イオン源;及び
任意選択的にpH調整剤;
任意選択的に界面活性剤;
任意選択的に殺生物剤
を含む、化学的機械的研磨組成物を提供するステップ;
研磨面を有する化学的機械的研磨パッドを提供するステップ;
化学的機械的研磨パッドと基板との界面に動的接触を作り出すステップ;並びに
化学的機械的研磨組成物を化学的機械的研磨パッドの研磨面上の化学的機械的研磨パッドと基板との界面又はその近傍に供給することによって、少なくともタングステンの一部を除去し、そしてタングステンフィーチャーのディッシングを低減するステップ
を含む方法。
【請求項2】
提供される化学的機械的研磨組成物が、200mm研磨機でプラテン速度80回転/分、キャリア速度81回転/分、化学的機械的研磨組成物流量125mL/分、公称ダウンフォース21.4kPaで、タングステン除去速度≧1500Å/分を有しており;そして化学的機械的研磨パッドが、高分子中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
提供される化学的機械的研磨組成物が、初期成分として
水;
0.01~10重量%の酸化剤(ここで、酸化剤は過酸化水素である);
30~500ppmの、L-アルギニンHCl、アルギニンリンゴ酸塩、N-メチル-L-アルギニン酢酸塩及びその混合物からなる群より選択されるアルギニン塩
0.01~15重量%のコロイダルシリカ砥粒;
1~2,600ppmのジカルボン酸;
100~1,100ppmの鉄(III)イオン源(ここで、鉄(III)イオン源は硝酸第二鉄である);及び
任意選択的にpH調整剤;
任意選択的に界面活性剤;
任意選択的に殺生物剤
を含み;そして
化学的機械的研磨組成物が、pH1~7を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
提供される化学的機械的研磨組成物が、200mm研磨機でプラテン速度80回転/分、キャリア速度81回転/分、化学的機械的研磨組成物流量125mL/分、公称ダウンフォース21.4kPaで、タングステン除去速度≧1500Å/分を有しており;そして化学的機械的研磨パッドが、高分子中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
提供される化学的機械的研磨組成物が、初期成分として
水;
0.1~5重量%の酸化剤(ここで、酸化剤は過酸化水素である);
30~250ppmの、L-アルギニンHCl、アルギニンリンゴ酸塩、N-メチル-L-アルギニン酢酸塩及びその混合物からなる群より選択されるアルギニン塩
0.05~10重量%のコロイダルシリカ砥粒;
100~1,400ppmのジカルボン酸;
150~1000ppmの鉄(III)イオン源(ここで、鉄(III)イオン源は硝酸第二鉄である);及び
任意選択的にpH調整剤;
任意選択的にアニオン性エーテル硫酸塩界面活性剤
を含み;そして
化学的機械的研磨組成物が、pH1.5~4.5を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
提供される化学的機械的研磨組成物が、200mm研磨機でプラテン速度80回転/分、キャリア速度81回転/分、化学的機械的研磨組成物流量125mL/分、公称ダウンフォース21.4kPaで、タングステン除去速度≧1500Å/分を有しており;そして化学的機械的研磨パッドが、高分子中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
提供される化学的機械的研磨組成物が、初期成分として
水;
0.1~3重量%の酸化剤(ここで、酸化剤は過酸化水素である);
30~250ppmの、L-アルギニンHCl、アルギニンリンゴ酸塩、N-メチル-L-アルギニン酢酸塩及びその混合物からなる群より選択されるアルギニン塩
0.1~5重量%のコロイダルシリカ砥粒;
120~1,350ppmのジカルボン酸(ここで、ジカルボン酸は、マロン酸である);
150~850ppmの鉄(III)イオン源(ここで、鉄(III)イオン源は硝酸第二鉄である);及び
任意選択的にpH調整剤;
任意選択的にアニオン性エーテル硫酸塩界面活性剤
を含み;そして
化学的機械的研磨組成物が、pH1.5~3.5を有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
提供される化学的機械的研磨組成物が、200mm研磨機でプラテン速度80回転/分、キャリア速度81回転/分、化学的機械的研磨組成物流量125mL/分、公称ダウンフォース21.4kPaで、タングステン除去速度≧1500Å/分を有しており;そして化学的機械的研磨パッドが、高分子中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
コロイダルシリカ砥粒が、大平均粒径のものと小平均粒径のものとを併せ含む混合コロイダルシリカ砥粒である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
混合コロイダルシリカ砥粒が、40~50nmの小平均径粒子及び70~100nmの大平均径粒子を含む、請求項9記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タングステンのディッシングを少なくとも抑制するためのタングステンの化学的機械的研磨の分野に関する。より具体的には、本発明は、タングステンを含む基板を提供するステップであって、タングステンフィーチャーは100μm以下の寸法を有するステップ;初期成分として水、酸化剤、タングステンフィーチャーのディッシングを少なくとも抑制するのに充分な量のアルギニン又はその塩、ジカルボン酸、鉄イオン源、コロイダルシリカ砥粒、及び任意選択的にpH調整剤、及び任意選択的に界面活性剤、及び任意選択的に殺生物剤を含む、研磨組成物を提供するステップ;研磨面を有する化学的機械的研磨パッドを提供するステップ;研磨パッドと基板との界面に動的接触を作り出すステップ;並びに、研磨組成物を研磨面上の研磨パッドと基板との界面又はその近傍に供給するステップであって、タングステンの一部が基板から研磨されて除かれ、少なくともタングステンフィーチャーのディッシングが抑制されるステップによる、タングステンのディッシングを少なくとも抑制するためのタングステンの化学的機械的研磨のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路及び他の電子デバイスの製造において、導電性材料、半導体材料及び絶縁材料の複数の層が半導体ウェーハの表面上に堆積されるか、又はそこから除去される。導電性材料、半導体材料、及び絶縁材料の薄層は、数多くの堆積技術によって堆積させることができる。現代の加工において一般的な堆積技術には、スパッタリングとしても知られる物理気相成長法(PVD)、化学気相成長法(CVD)、プラズマ化学気相成長法(PECVD)、及び電気化学めっき(ECP)が含まれる。
【0003】
材料の層が順次堆積され除去されるにつれ、ウェーハの最上面は平坦でなくなる。後続の半導体加工(例えば、メタライゼーション)はウェーハが平らな表面を有することを要求するため、ウェーハを平坦化する必要がある。平坦化は、粗い表面、凝集した材料、結晶格子損傷、傷、及び汚染された層又は材料のような、望ましくない表面トポグラフィー及び表面欠陥を除去するのに有用である。
【0004】
化学的機械的平坦化、又は化学的機械的研磨(CMP)は、半導体ウェーハなどの基板を平坦化するために使用される一般的な技術である。従来のCMPでは、ウェーハがキャリアアセンブリに取り付けられ、CMP装置内の研磨パッドと接触して配置される。キャリアアセンブリは、ウェーハに調節可能な圧力を提供し、ウェーハを研磨パッドに押し付ける。パッドは、外部駆動力によってウェーハに対して移動(例えば、回転)させる。それと同時に、研磨組成物(「スラリー」)又は他の研磨溶液がウェーハと研磨パッドとの間に提供される。よって、パッド表面及びスラリーの化学的及び機械的作用によって、ウェーハ表面が研磨されて、平坦化される。しかしながら、CMPには多大な複雑さが伴う。各タイプの材料は、独自の研磨組成物、適切に設計された研磨パッド、研磨及びCMP後の清浄化の両方のために最適化されたプロセス設定、並びに具体的な材料を研磨する用途に個別に合わせなければならないその他の因子を要する。
【0005】
化学的機械的研磨は、集積回路設計におけるタングステン配線及びコンタクトプラグの形成中にタングステンを研磨するための好ましい方法となっている。タングステンは、コンタクト/ビアプラグ用の集積回路設計において頻繁に使用されている。典型的には、コンタクト又はビアホールは、基板上の絶縁層を貫通して形成され、下層の構成要素の領域、例えば、第1レベルのメタライゼーション又は配線を露出させる。タングステンは硬質金属であり、タングステンCMPは比較的苛酷な設定で動作し、それがタングステンCMPに特有の課題を提示する。残念ながら、その苛酷性ゆえに、タングステンを研磨するために使用される多くのCMPスラリーは過剰研磨及びディッシングの問題を引き起こし、その結果、不均一か又は平坦でない表面となる。「ディッシング」という用語は、CMP中の半導体上の金属配線前駆体及び他のフィーチャーからの、タングステンのような金属の過剰な(望ましくない)除去のことをいい、それによってタングステンに望ましくない窪みを生じる。ディッシングは、平坦でない表面をもたらすことに加えて、半導体の電気的性能に悪影響を与えるため、望ましくない。ディッシングの深刻度は様々であるが、典型的には、二酸化シリコン(TEOS)のような下層の絶縁材料の浸食を引き起こすほどに深刻である。半導体の最適な電気的性能を持続させるためには、絶縁層は理想的には完全であり、窪みがあってはならないので、浸食は望ましくない。
【0006】
このようなディッシング及び浸食から生じ得るポグラフィー欠陥は、更に、導電性材料又は絶縁材料の下に配置されたバリア層材料のような、追加の材料を基板表面から不均一に除去し、所望の品質に達しない基板表面を生成し、そのため半導体の集積回路の性能に悪影響を与える可能性がある。更に、半導体の表面上のフィーチャーがますます小型化されるにつれて、半導体の表面をうまく研磨することが次第に困難になっている。
【0007】
タングステンの研磨に伴う別の問題は腐蝕である。タングステンの腐蝕は、CMPの一般的な副作用である。CMPプロセス中に、基板の表面上に残留する金属研磨スラリーは、CMPの効果を超えて基板を腐食し続ける。時には腐蝕が望まれるが、大部分の半導体プロセスでは、腐蝕は低減又は抑制すべきものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、タングステンのディッシングを少なくとも抑制する、タングステンのためのCMP研磨方法及び組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、タングステンの化学的機械的研磨の方法であって、タングステン及び絶縁体を含む基板を提供するステップであって、タングステンフィーチャーは100μm以下の寸法を有するステップ;初期成分として水、酸化剤、10~500ppmの量のアルギニン又はその塩、コロイダルシリカ砥粒、ジカルボン酸又はその塩、鉄(III)イオン源、及び任意選択的にpH調整剤、及び任意選択的に界面活性剤、及び任意選択的に殺生物剤を含む、化学的機械的研磨組成物を提供するステップ;研磨面を有する化学的機械的研磨パッドを提供するステップ;化学的機械的研磨パッドと基板との界面に動的接触を作り出すステップ;並びに、化学的機械的研磨組成物を化学的機械的研磨パッドの研磨面上の化学的機械的研磨パッドと基板との界面又はその近傍に供給するステップを含み、タングステンの一部が研磨されて基板から除かれ、100μm以下の寸法を有するタングステンフィーチャーのディッシングが少なくとも低減される、方法を提供する。
【0010】
本発明は、タングステンの化学的機械的研磨の方法であって、タングステン及び絶縁体を含む基板を提供するステップであって、タングステンフィーチャーは100μm以下の寸法を有するステップ;初期成分として水、酸化剤、30~500ppmの量のアルギニン又はその塩、負のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒、ジカルボン酸又はその塩、鉄(III)イオン源、及び任意選択的にpH調整剤、及び任意選択的に界面活性剤、及び任意選択的に殺生物剤を含む、化学的機械的研磨組成物を提供するステップ;研磨面を有する化学的機械的研磨パッドを提供するステップ;化学的機械的研磨パッドと基板との界面に動的接触を作り出すステップ;並びに、化学的機械的研磨組成物を化学的機械的研磨パッドの研磨面上の化学的機械的研磨パッドと基板との界面又はその近傍に供給するステップを含み、タングステンの一部が研磨されて基板から除かれ、100μm以下の寸法を有するタングステンフィーチャーのディッシングが少なくとも低減され;提供される化学的機械的研磨組成物が、200mm研磨機でプラテン速度80回転/分、キャリア速度81回転/分、化学的機械的研磨組成物流量125mL/分、公称ダウンフォース21.4kPaで、タングステン除去速度≧1000Å/分を有しており;そして化学的機械的研磨パッドが、高分子中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む、方法を提供する。
【0011】
本発明は、タングステンの化学的機械的研磨の方法であって、タングステン及び絶縁体を含む基板を提供するステップであって、タングステンフィーチャーは100μm以下の寸法を有するステップ;初期成分として水、酸化剤、30~500ppmの量のアルギニン又はその塩、負のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒、マロン酸又はその塩、鉄(III)イオン源、及び任意選択的にpH調整剤、及び任意選択的に界面活性剤、任意選択的に殺生物剤を含む、化学的機械的研磨組成物を提供するステップ;研磨面を有する化学的機械的研磨パッドを提供するステップ;化学的機械的研磨パッドと基板との界面に動的接触を作り出すステップ;並びに、化学的機械的研磨組成物を化学的機械的研磨パッドの研磨面上の化学的機械的研磨パッドと基板との界面又はその近傍に供給するステップを含み、タングステンの一部が研磨されて基板から除かれ、100μm以下の寸法を有するタングステンフィーチャーのディッシングが少なくとも低減され;提供される化学的機械的研磨組成物が、200mm研磨機でプラテン速度80回転/分、キャリア速度81回転/分、化学的機械的研磨組成物流量125mL/分、公称ダウンフォース21.4kPaで、タングステン除去速度≧1000Å/分を有しており;そして化学的機械的研磨パッドが、高分子中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む、方法を提供する。
【0012】
本発明は、タングステンの化学的機械的研磨の方法であって、タングステン及び絶縁体を含む基板を提供するステップであって、タングステンフィーチャーは100μm以下の寸法を有するステップ;初期成分として水、0.01~15重量%の酸化剤(ここで、酸化剤は過酸化水素である)、30~500ppmのアルギニン又はその塩、0.01~10重量%の負のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒、100~1,400ppmのマロン酸又はその塩、100~1,100ppmの鉄(III)イオン源(ここで、鉄(III)イオン源は硝酸第二鉄である)、及び任意選択的にpH調整剤、任意選択的に界面活性剤、任意選択的に殺生物剤を含む、化学的機械的研磨組成物(ここで、化学的機械的研磨組成物は、pH1~7を有する)を提供するステップ;研磨面を有する化学的機械的研磨パッドを提供するステップ;化学的機械的研磨パッドと基板との界面に動的接触を作り出すステップ;並びに、化学的機械的研磨組成物を化学的機械的研磨パッドの研磨面上の化学的機械的研磨パッドと基板との界面又はその近傍に供給するステップを含み、タングステンの一部が研磨されて基板から除かれ、タングステンフィーチャーのディッシングが少なくとも低減される、方法を提供する。
【0013】
本発明は、タングステンの化学的機械的研磨の方法であって、タングステン及び絶縁体を含む基板を提供するステップであって、タングステンフィーチャーは100μm以下の寸法を有するステップ;初期成分として水、1~3重量%の酸化剤(ここで、酸化剤は過酸化水素である)、30~500ppmのアルギニン又はその塩、0.2~5重量%の負の表面電荷を有するコロイダルシリカ砥粒、120~1,350ppmのマロン酸、150~700ppmの鉄(III)イオン源(ここで、鉄(III)イオン源は硝酸第二鉄である)、及び任意選択的にpH調整剤、及び任意選択的にアニオン性エーテル硫酸塩界面活性剤、及び任意選択的に殺生物剤を含む、化学的機械的研磨組成物(ここで、化学的機械的研磨組成物は、pH2~3を有する)を提供するステップ;研磨面を有する化学的機械的研磨パッドを提供するステップ;化学的機械的研磨パッドと基板との界面に動的接触を作り出すステップ;並びに、化学的機械的研磨組成物を化学的機械的研磨パッドの研磨面上の化学的機械的研磨パッドと基板との界面又はその近傍に供給するステップを含み、タングステンの一部が研磨されて基板から除かれ、タングステンフィーチャーのディッシングが少なくとも低減される、方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
前記本発明の方法は、10~500ppmの量のアルギニン又はその塩;酸化剤;コロイダルシリカ砥粒;ジカルボン酸又はその塩;鉄(III)イオン源;水;及び任意選択的にpH調整剤;及び任意選択的に界面活性剤;及び任意選択的に殺生物剤を含む化学的機械的研磨組成物を用いて、タングステンを研磨し、同時にタングステンのディッシングを少なくとも抑制して、実質的に平坦なタングステン表面を提供する。ディッシングを抑制することに加えて、本発明の化学的機械的研磨組成物は、タングステンの腐蝕を抑制することができる。本発明の化学的機械的研磨組成物はまた、良好なタングステン対二酸化ケイ素選択性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本明細書の全体で使用されるとき、以下の略語は、特に断りない限り、以下の意味を有する:℃=摂氏度;g=グラム;L=リットル;mL=ミリリットル;μ=μm=ミクロン;kPa=キロパスカル;Å=オングストローム;mV=ミリボルト;DI=脱イオン;ppm=百万分率=mg/L;mm=ミリメートル;cm=センチメートル;min=分;rpm=毎分回転数;lbs=ポンド;kg=キログラム;W=タングステン;PO=プロピレンオキシド;EO=エチレンオキシド;ICP-OES=誘導結合プラズマ発光分析法;DLS=動的光散乱;重量%=重量パーセント;及びRR=除去速度。
【0016】
「化学的機械的研磨」又は「CMP」という用語は、基板が化学的及び機械的な力のみによって研磨されるプロセスのことをいい、電気的バイアスを基板にかける電気化学的機械的研磨(ECMP)とは区別される。「アルギニン」という用語は、α-アミノ酸のアルギニンを意味し、L-アルギニン(最も一般的な天然型)を含む。「TEOS」という用語は、オルトケイ酸テトラエチル(Si(OC)の分解から形成される二酸化ケイ素を意味する。「平坦」という用語は、長さと幅の2つの寸法を有する、実質的に平らな表面又は平らなトポグラフィーを意味する。「寸法」という用語は、線幅のことをいう。「a」及び「an」という用語は、単数形及び複数形の両方のことをいう。特に断りない限り、百分率は全て重量基準である。そのような数値範囲が合計100%になるよう制約されることが論理的であるような場合を除いて、全ての数値範囲は上下限値を包含し、任意の順序で組合せ可能である。
【0017】
本発明の基板を研磨する方法は、酸化剤;10ppm~500ppmの量のアルギニン又はその塩;コロイダルシリカ砥粒;ジカルボン酸又はその塩;鉄(III)イオン源;水;及び任意選択的にpH調整剤;及び任意選択的に界面活性剤;及び任意選択的に殺生物剤を含有する化学的機械的研磨組成物を用いて、タングステンのディッシングを少なくとも抑制しながら、基板表面からのタングステンの除去を提供する。
【0018】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法は、タングステン及び絶縁体を含む基板を提供するステップ(ここで、タングステンフィーチャーは100μm以下、好ましくは100μm~0.25μm、更に好ましくは50μm~0.25μm、更になお好ましくは10μm~0.25μm、そして更により好ましくは9μm~0.25μm、又は代わりに更により好ましくは7μm~0.25μmの寸法を有する);初期成分として水、酸化剤(好ましくは少なくとも0.01重量%~10重量%の量の、更に好ましくは0.1重量%~5重量%の量の、最も好ましくは1重量%~3重量%の量の酸化剤)、アルギニン又はその塩(10ppm~500ppm、好ましくは30ppm~500ppmの量のアルギニン又はその塩)、コロイダルシリカ砥粒(好ましくは0.01重量%~15重量%、更に好ましくは0.05重量%~10重量%、更になお好ましくは0.1重量%~7.5重量%、更により好ましくは0.2重量%~5重量%の量のコロイダルシリカ砥粒)、ジカルボン酸、その塩又はその混合物(好ましくは100ppm~1400ppm、更に好ましくは120ppm~1350ppmの量のジカルボン酸、その塩又はその混合物)、鉄(III)イオン源(好ましくは、硝酸第二鉄である、鉄(III)イオン源)、及び任意選択的にpH調整剤(ここで、化学的機械的研磨組成物は、pH1~7、好ましくは1.5~4.5、更に好ましくは1.5~3.5、更になお好ましくは2~3を有する)、及び任意選択的に界面活性剤、及び任意選択的に殺生物剤を含む(好ましくは、これらからなる)化学的機械的研磨組成物を提供するステップ;研磨面を有する化学的機械的研磨パッドを提供するステップ;化学的機械的研磨パッドと基板との界面に動的接触を作り出すステップ;並びに、化学的機械的研磨組成物を化学的機械的研磨パッドの研磨面上の化学的機械的研磨パッドと基板との界面又はその近傍に供給するステップを含み、少なくともタングステンの一部が研磨されて基板から除かれ、タングステンフィーチャーのディッシングが少なくとも低減され、そして好ましくは、タングステンフィーチャーのディッシングが低減され、タングステンの腐蝕が抑制される。
【0019】
好ましくは、提供される基板は、タングステンとTEOSのような絶縁体とを含む半導体基板である。
【0020】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物に初期成分として含まれる水は、偶発的な不純物を制限するために脱イオン水及び蒸留水の少なくとも一方である。
【0021】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として酸化剤を含むが、ここで、酸化剤は、過酸化水素(H)、一過硫酸塩、ヨウ素酸塩、過フタル酸マグネシウム、過酢酸及び他の過酸、過硫酸塩、臭素酸塩、過臭素酸塩、過硫酸塩、過酢酸、過ヨウ素酸塩、硝酸塩、鉄塩、セリウム塩、Mn(III)、Mn(IV)及びMn(VI)塩、銀塩、銅塩、クロム塩、コバルト塩、ハロゲン、次亜塩素酸塩及びその混合物からなる群より選択される。更に好ましくは、酸化剤は、過酸化水素、過塩素酸塩、過臭素酸塩、過ヨウ素酸塩、過硫酸塩及び過酢酸からなる群より選択される。最も好ましくは、酸化剤は過酸化水素である。
【0022】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、0.01~10重量%、更に好ましくは0.1~5重量%、最も好ましくは1~3重量%の酸化剤を含有する。
【0023】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、鉄(III)イオン源を含有する。更に好ましくは、本発明の方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、鉄(III)イオン源であって、鉄(III)塩からなる群より選択される、鉄(III)イオン源を含有する。最も好ましくは、本発明の方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、鉄(III)イオン源であって、硝酸第二鉄(Fe(NO)である鉄(III)イオン源を含有する。
【0024】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、1~250ppm、好ましくは5~200ppm、更に好ましくは7.5~150ppm、最も好ましくは10~100ppmの鉄(III)イオンを化学的機械的研磨組成物に導入するのに充分な鉄(III)イオン源を含有する。
【0025】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、鉄(III)イオン源を含有する。更に好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、100~1,100ppm、好ましくは125~1000ppm、更に好ましくは150~850ppm、そして最も好ましくは175~700ppmの鉄(III)イオン源を含有する。最も好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、100~1,100ppm、好ましくは150~1000ppm、更に好ましくは150~850ppm、そして最も好ましくは175~700ppmの鉄(III)イオン源であって、硝酸第二鉄(Fe(NO)である鉄(III)イオン源を含有する。
【0026】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、アルギニン(L-アルギニン)、アルギニン塩、又はその混合物を含有する。アルギニン塩は、L-アルギニンHCl、アルギニンリンゴ酸塩及びN-メチル-L-アルギニン酢酸塩を含むが、これらに限定されない。好ましくは、アルギニン塩は、L-アルギニンHCl及びN-メチル-L-アルギニン酢酸塩から選択され、最も好ましくは、アルギニン塩は、L-アルギニンHClである。好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、アルギニン(L-アルギニン)が、その塩及びその混合物の代わりに、本発明の化学的機械的研磨組成物に含まれる。本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、10ppm~500ppm、好ましくは30ppm~500ppm、更に好ましくは50ppm~500ppm、更になお好ましくは30ppm~350ppm、更により好ましくは30ppm~250ppm、最も好ましくは30ppm~150ppm(例えば、30~50ppm、50~100ppm又は50~150ppm)の1種以上のアルギニン(L-アルギニン)及びその塩を含有する。
【0027】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、負のゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒を含有する。更に好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、負の永久ゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒を含有し、そしてここで、化学的機械的研磨組成物は、pH1~7、好ましくは1.5~4.5、更に好ましくは1.5~3.5、更になお好ましくは2~3、最も好ましくは2~2.5を有する。更になお好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、負の永久ゼータ電位を有するコロイダルシリカ砥粒を含有し、そしてここで、化学的機械的研磨組成物は、-0.1mV~-20mVのゼータ電位により示される、pH1~7、好ましくは1.5~4.5、更に好ましくは1.5~3.5、更になお好ましくは2~3、最も好ましくは2~2.5を有する。
【0028】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、コロイダルシリカ砥粒であって、動的光散乱法により測定されたとき、平均粒径≦100nm、好ましくは5~100nm、更に好ましくは10~90nm、最も好ましくは20~80nmを有するコロイダルシリカ砥粒を含有する。
【0029】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、0.01~15重量%、好ましくは0.05~10重量%、更に好ましくは0.1~7.5重量%、更になお好ましくは0.2~5重量%、最も好ましくは0.2~2重量%のコロイダルシリカ砥粒を含有する。好ましくは、コロイダルシリカ砥粒は、負のゼータ電位を有する。
【0030】
本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、混合コロイダルシリカ砥粒であって、40~50nm、好ましくは42~45nm、更に好ましくは44~45nmの平均粒径(DLSにより測定)を含む小粒子コロイダルシリカ砥粒を0.01~7.5重量%、好ましくは0.05~5重量%、更に好ましくは0.5~2重量%、更になお好ましくは0.5~1.5重量%、最も好ましくは0.5~1重量%の量で含み、そして70~100nm、好ましくは75~80nm、更に好ましくは75~76nmの平均粒径を含む大粒子砥粒を0.01~7.5重量%、更になお好ましくは0.05~5重量%、更により好ましくは0.5~2重量%、更になお好ましくは0.5~1.5重量%、最も好ましくは0.5~1重量%の量で含む混合コロイダルシリカ砥粒を含有することができる。好ましくは、コロイダルシリカ砥粒は、負のゼータ電位を有する。
【0031】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、ジカルボン酸であって、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルタル酸、酒石酸、その塩又はその混合物を含むが、これらに限定されないジカルボン酸を含有する。更に好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、ジカルボン酸であって、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、その塩及びその混合物からなる群より選択されるジカルボン酸を含有する。更になお好ましくは、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、ジカルボン酸であって、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、その塩及びその混合物からなる群より選択されるジカルボン酸を含有する。最も好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、ジカルボン酸のマロン酸又はその塩を含有する。
【0032】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、1~2,600ppm、好ましくは100~1,400ppm、更に好ましくは120~1,350ppm、更になお好ましくは130~1,100ppmのジカルボン酸であって、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルタル酸、酒石酸、その塩又はその混合物を含むが、これらに限定されないジカルボン酸を含有する。好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、1~2,600ppmのマロン酸、その塩又はその混合物を含有する。更に好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、100~1,400ppm、更により好ましくは120~1,350ppm、更になお好ましくは130~1,350ppmのジカルボン酸のマロン酸又はその塩を含有する。
【0033】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、pH1~7を有する。更に好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、pH1.5~4.5を有する。更になお好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、pH1.5~3.5を有する。更により好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、pH2~3を、そして最も好ましくはpH2~2.5を有する。
【0034】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、任意選択的に、pH調整剤を含有する。好ましくは、pH調整剤は、無機及び有機pH調整剤からなる群より選択される。好ましくは、pH調整剤は、無機酸及び無機塩基からなる群より選択される。更に好ましくは、pH調整剤は、硝酸及び水酸化カリウムからなる群より選択される。最も好ましくは、pH調整剤は水酸化カリウムである。
【0035】
任意選択的に、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、界面活性剤を含有する。好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、界面活性剤は、PO又はEO又はPO/EO含有界面活性剤である。更に好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、界面活性剤は、アニオン性官能基を含有するPO又はEO又はPO/EO界面活性剤である。更になお好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、界面活性剤は、式(I):
2n+1O-PO-EO-SO
[式中、nは、12、15、18、20、22、25、28、30、35、38、40、42又は44とすることができ;xは、0、2、5、8、10、12、14、16、18、20、30、40又は50とすることができ;そしてyは、0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、80、90又は100とすることができるが、ただし、x及びyは、同時に0とすることはできず、そして対イオンは、好ましくはナトリウムカチオン若しくはカリウムカチオンのようなアルカリ金属イオン;又はアンモニウムカチオンとすることができる]を有するアニオン性エーテル硫酸塩である。好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、アニオン性エーテル硫酸塩は、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)である。
【0036】
本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、50ppm~1000ppm、好ましくは100ppm~900ppm、更に好ましくは120ppm~600ppm、更になお好ましくは140ppm~250ppmのアニオン性エーテル硫酸塩を含有することができる。更に好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、50ppm~1000ppm、更に好ましくは100ppm~900ppm、更になお好ましくは120ppm~600ppm、更により好ましくは140ppm~250ppmのアニオン性エーテル硫酸のアルカリ金属塩界面活性剤を含有する。更になお好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、初期成分として、50ppm~1000ppm、好ましくは100ppm~900ppm、更に好ましくは120ppm~600ppm、更になお好ましくは140ppm~250ppmのラウリルエーテル硫酸ナトリウムを含有する。
【0037】
任意選択的に、研磨組成物は、それぞれThe Dow Chemical Companyにより製造されている、KORDEX(商標)MLX(9.5~9.9%のメチル-4-イソチアゾリン-3-オン、89.1~89.5%の水及び≦1.0%の関連反応生成物)又は2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンである活性成分を含有するKATHON(商標)ICP IIIのような、殺生物剤を含有することができる(KATHON及びKORDEXはThe Dow Chemical Companyの商標である)。このような殺生物剤は、当業者には公知のとおり、本発明の化学的機械的研磨組成物に慣用の量で含めることができる。
【0038】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨パッドは、当該分野において既知の任意の適切な研磨パッドとすることができる。当業者は、本発明の方法において使用するのに適切な化学的機械的研磨パッドを選択することができる。更に好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨パッドは、織物及び不織布研磨パッドから選択される。更になお好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨パッドは、ポリウレタン研磨層を含む。最も好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨パッドは、高分子中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む。好ましくは、提供される化学的機械的研磨パッドは、研磨表面上に少なくとも1つの溝を有する。
【0039】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、提供される化学的機械的研磨パッドの研磨表面上の化学的機械的研磨パッドと基板との界面又はその近傍に供給される。
【0040】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、動的接触は、提供される化学的機械的研磨パッドと基板との界面に、研磨される基板の表面に垂直なダウンフォース0.69~34.5kPaで作り出される。
【0041】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、タングステン除去速度≧1,000Å/分;好ましくは≧1,500Å/分;更に好ましくは≧1,700Å/分を有する。更に好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、タングステン除去速度≧1,000Å/分;好ましくは≧1,500Å/分;更に好ましくは≧1,700Å/分を有し;そしてW/TEOS選択性≧2を有する。更になお好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、タングステンは、除去速度≧1,000Å/分;好ましくは≧1,500Å/分;更に好ましくは≧1,700Å/分で、そしてW/TEOS選択性2.5~15で基板から除去される。最も好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、タングステンは、除去速度≧1,500Å/分;好ましくは≧1,700Å/分で、そしてW/TEOS選択性7~8で、そして200mm研磨機でプラテン速度80回転/分、キャリア速度81回転/分、化学的機械的研磨組成物流量125mL/分、公称ダウンフォース21.4kPaで基板から除去され;そして化学的機械的研磨パッドは、高分子中空コア微粒子を含有するポリウレタン研磨層及びポリウレタン含浸不織布サブパッドを含む。
【0042】
好ましくは、本発明の基板を研磨する方法において、提供される化学的機械的研磨組成物は、大平均粒径のものと小平均粒径のものとの混合コロイダル砥粒を含み、本発明の基板を研磨する方法は、タングステン除去速度≧1,900Å/分;好ましくは≧2,000Å/分;更に好ましくは≧2,040Å/分;そしてW/TEOS選択性≧11を有する。
【実施例
【0043】
以下の例は、本発明の1つ以上の実施態様の、タングステンに対する本発明の化学的機械的研磨組成物のディッシング抑制性能、タングステンに対する本発明の化学的機械的研磨組成物の腐蝕抑制性能、及びW/TEOS選択性を説明することを意図するものであるが、その範囲を限定する意図はない。
【0044】
[例1]
スラリー配合物
本例の化学的機械的研磨組成物は、表1に列挙される量の成分を残量のDI水と合わせ、組成物のpHを45重量%水酸化カリウムで表1に列挙される最終pHに調整することにより調製された。
【0045】
【表1】
【0046】
[例2]
アルギニンCMPスラリーの化学的機械的研磨ディッシング性能
研磨実験は、Applied Materialsの200mm MIRRA(登録商標)研磨機に取り付けられた200mmブランケットウェーハ上で実施された。研磨除去速度実験は、Novellus製の200mmブランケット15kÅ厚のTEOSシートウェーハ、並びにWaferNet Inc.、Silicon Valley Microelectronics又はSKW Associates, Inc.から入手可能なW、Ti、及びTiNブランケットウェーハ上で実施された。全ての研磨実験は、特に断りない限り、典型的な下降圧力21.4kPa(3.1psi)、化学的機械的研磨組成物流量125mL/分、テーブル回転速度80rpm、キャリア回転速度81rpmにより、SP2310サブパッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP Inc.から市販されている)と対にされたIC1010(商標)ポリウレタン研磨パッドを用いて実施された。研磨パッドをドレッシングするために、Kinik PDA33A-3ダイヤモンドパッドコンディショナー(Kinik Companyから市販されている)を使用した。研磨パッドをコンディショナーにより9.0ポンド(4.1kg)のダウンフォースを15分間、及び7.0ポンド(3.2kg)を15分間、80rpm(プラテン)/36rpm(コンディショナー)で用いて慣らし運転した。研磨パッドを装着外で更にコンディショニングした後、7ポンド(3.2kg)のダウンフォースを24秒間用いて研磨した。Wディッシング速度は、KLA-Tencor RS100C計測ツールを用いて求めた。ウェーハは、表2に示されるように、様々な標準線幅のフィーチャーを有していた。
【0047】
【表2】
【0048】
研磨結果に示されるとおり、本発明の2つのスラリーは、アルギニンを除外した対照スラリーに比較して、全ての場合においてWフィーチャーのディッシングが低下していた。
【0049】
[例3]
W、TEOS除去速度及びW、TEOS最高研磨温度
W及びTEOS除去速度に関する研磨実験は、同一装置及びパラメーターを用いて、実質的に例2に記載されたとおりに実施された。TEOS除去速度は、KLA-Tencor FX200計測ツールを用いて研磨の前後に膜厚を測定することによって求めた。W除去速度は、KLA-Tencor RS100C計測ツールを用いて求めた。ウェーハは、WaferNet Inc.製、又はSilicon Valley Microelectronics製であった。結果は表3にある。
【0050】
【表3】
【0051】
本発明のアルギニン化学的機械的研磨組成物は、1500Å/分を超える良好なW RR、200Å/分を超えるTEOS RR及び7と9の間の良好なW/TEOS選択性を示した。
【0052】
[例4]
スラリー配合物
本例の化学的機械的研磨組成物は、表4~6に列挙される量の成分を残量のDI水と合わせ、組成物のpHを45重量%水酸化カリウムで表4~6に列挙される最終pHに調整することにより調製された。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
[例5]
アルギニンCMPスラリーの腐蝕速度抑制性能
腐蝕試験は、Wブランケットウェーハ(1cm×4cm)をスラリー試料15gに浸漬することにより行われた。Wウェーハは、10分後に試験スラリーから取り出された。次に溶液を、9,000rpmで20分間遠心分離して、スラリー粒子を除去した。上澄みをICP-OESにより分析して、タングステンの重量を求めた。腐蝕速度(Å/分)は、W質量から、エッチングウェーハ表面積を4cmと想定して変換された。腐蝕試験の結果は表7にある。
【0057】
【表7】
【0058】
腐蝕速度試験の結果は、L-アルギニン、L-アルギニン塩酸塩及びN-メチル-L-アルギニン酢酸塩を含有する化学的機械的研磨スラリーが、アルギニン及びその塩を除外した対照と比較して、ウェーハ上のWの腐蝕を有意に低減させたことを示した。
【0059】
[例6]
混合及び非混合砥粒を含むスラリー配合物
本例の化学的機械的研磨組成物は、以下の表に列挙される量の成分を残量のDI水と合わせ、組成物のpHを45重量%水酸化カリウム、硝酸、又はその混合物で最終pH=2.5に調整することにより調製された。
【0060】
【表8】
【0061】
【表9】
【0062】
[例7]
混合対非混合砥粒のW/TEOS選択性
研磨実験は、Applied Materials 200mm Mirra(登録商標)研磨機に取り付けられた200mmブランケットウェーハで実施された。研磨除去速度実験は、Novellus製の200mmブランケット15kÅ厚のオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)シートウェーハと、全てWafernetから入手可能なタングステン(W)ブランケットウェーハとで実施された。全ての研磨実験は、SP2310サブパッドと対にされたIC1010(商標)ポリウレタン研磨パッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP Inc.から市販されている)を用いて、特に断りない限り、典型的な下降圧力21.4kPa(3.1psi)、化学的機械的研磨組成物流量125mL/分、テーブル回転速度80rpm及びキャリア回転速度81rpmで実施された。Kinik PDA33A-3 ダイヤモンドパッドコンディショナー(Kinikから市販されている)を使用して、研磨パッドをドレッシングした。研磨パッドをコンディショナーにより、ダウンフォース9.0ポンド(4.1kg)を15分間、及び7.0ポンド(3.2kg)を15分間、80rpm(プラテン)/36rpm(コンディショナー)で用いて慣らし運転した。研磨パッドを装着外で更にコンディショニングした後、7ポンド(3.2kg)のダウンフォースを24秒間用いて研磨した。TEOS除去速度は、KLA-Tencor FX200計測ツールを用いて研磨の前後に膜厚を測定することによって求めた。タングステン(W)除去速度は、KLA-Tencor RS100C計測ツールを用いて求めた。
【0063】
【表10】
【0064】
混合砥粒(平均粒径=それぞれ61nm、68nm及び73nm)を含む本発明のアルギニン化学的機械的研磨組成物は、小平均粒径砥粒(45nm)又は大平均粒径砥粒(76nm)を含むアルギニン系化学的機械的研磨組成物と比較して、1900Å/分を超える良好なW RR、及び11を超えるW/TEOS選択性の向上を示した。