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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】漏洩検知装置及び漏洩検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/28 20060101AFI20221108BHJP
   F17D 5/02 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
G01M3/28 A
F17D5/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018132468
(22)【出願日】2018-07-12
(65)【公開番号】P2020008526
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】東 一裕
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-086713(JP,A)
【文献】実開昭61-172269(JP,U)
【文献】特開2012-225474(JP,A)
【文献】特開2005-344903(JP,A)
【文献】特開平04-060290(JP,A)
【文献】実開平05-057557(JP,U)
【文献】特開平08-270900(JP,A)
【文献】特開2017-129241(JP,A)
【文献】特開2005-030439(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0211397(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
F17D 5/02
F16C 29/00
F16K 1/00-1/54、31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを下流側に導くメイン流路上に設けられて燃料ガスの流量が設定流量未満であるときに弁閉状態となり前記設定流量以上であるときに弁開状態となる弁機構と、
前記弁機構の上流側から下流側までをバイパスするバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられて下流側における燃料ガスの微少漏洩を検知するための漏洩検知センサと、を備え、
前記バイパス流路は、前記メイン流路に沿って延在すると共に、当該バイパス流路内の上流部の燃料ガスを略同圧状態のまま下流部まで流すものであり、
前記弁機構は、所定方向の一方側への移動時に弁座に対して接触状態となり前記所定方向の他方側への移動時に前記弁座から離間状態となる弁体と、前記弁体から前記所定方向に延びる弁軸と、前記弁軸を包囲する筒体を形成する弁軸ガイドと、前記弁軸と前記弁軸ガイドとの間に配置された回転体と、を有し、
前記弁軸の側壁には、前記所定方向に離間した複数の収容室と、複数の前記収容室を前記所定方向に接続する接続溝と、を有する溝部が形成され、
前記回転体は、前記収容室に収容された球状体であり、
前記弁軸は、前記所定方向に長尺に形成され、前記溝部に埋設され、前記球状体よりも径が小さい孔部を前記収容室の位置に有し、前記球状体の一部が前記孔部から露出して前記弁軸ガイドに接触するように、前記収容室を塞ぐ蓋部材を有する
ことを特徴とする漏洩検知装置。
【請求項2】
燃料ガスを下流側に導くメイン流路上に設けられて燃料ガスの流量が設定流量未満であるときに弁閉状態となり前記設定流量以上であるときに弁開状態となる弁機構と、
前記弁機構の上流側から下流側までをバイパスするバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられて下流側における燃料ガスの微少漏洩を検知するための漏洩検知センサと、を備え、
前記バイパス流路は、前記メイン流路に沿って延在すると共に、当該バイパス流路内の上流部の燃料ガスを略同圧状態のまま下流部まで流すものであり、
前記弁機構は、所定方向の一方側への移動時に弁座に対して接触状態となり前記所定方向の他方側への移動時に前記弁座から離間状態となる弁体と、前記弁体から前記所定方向に延びる弁軸と、前記弁軸を包囲する筒体を形成する弁軸ガイドと、前記弁軸と前記弁軸ガイドとの間に配置された回転体と、を有し、
前記回転体は、球状体であって、
前記弁軸ガイドの内周側に設けられ、筒体と前記筒体の両端部から内周方向に延びる壁部とを有した周状籠部材と、
前記周状籠部材に前記球状体が収容された状態で、前記周状籠部材の開放側となる内周側を塞ぐと共に、前記球状体よりも径が小さい孔部を有した周状蓋部材と、を有し、
前記球状体は、一部が前記周状蓋部材の前記孔部から露出して前記弁軸に接触す
ことを特徴とする漏洩検知装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項に記載された漏洩検知装置と、前記漏洩検知装置が取り付けられる圧力調整器と、を備えた漏洩検知システムであって、
前記圧力調整器は、燃料ガスが導入される減圧室が前記メイン流路を構成し、
前記弁機構は、前記圧力調整器の出口側に内蔵され、
前記バイパス流路は、上流側が前記減圧室に接続されている
ことを特徴とする漏洩検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩検知装置及び漏洩検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばLPガスボンベからの高圧ガスを元調整器によって一次減圧し、一次減圧された燃料ガスを親調整器及び子調整器によって二次減圧する燃料ガス供給システムが提案されている。このようなシステムにおいて、親調整器はメイン流路に設けられ、子調整器は親調整器をバイパスするバイパス流路に設けられている。また、親調整器と子調整器とは設定圧力が異なっており、設定流量未満の燃料ガスは子調整器のみを介してバイパス流路を流れ、設定流量以上の燃料ガスは親調整器及び子調整器の双方を介して双方の流路を流れるようになっている。さらに、バイパス流路には、漏洩検知センサを搭載したマイコンガスメータ等の装置が設けられている。このような燃料ガス供給システムは、下流側に配管亀裂等が生じて微少な漏洩が発生した場合、微少流量がバイパス流路のみを流れることとなり、漏洩検知センサからの信号に基づいて微少漏洩を検知することができる(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-41300号公報
【文献】特開平5-296873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、本件発明者は、特願2017-105238に係る発明を出願している。この出願に係る発明の1つには、燃料ガスの流量が設定流量未満であるときに弁閉状態となり設定流量以上であるときに弁開状態となる弁機構を圧力調整器の出口側に設けた漏洩検知装置がある。この漏洩検知装置は、弁機構の上流側と下流側とを接続するバイパス流路と、バイパス流路に設けられ下流側における燃料ガスの微少漏洩を検知するための漏洩検知センサとを備えている。バイパス流路は、メイン流路に沿って延在すると共に、子調整器等が設けられることなく当該バイパス流路内の上流部の燃料ガスを略同圧状態のまま下流部まで流すものである。
【0005】
図11は、弁機構の一例を示す断面図である。図11に示す弁機構140は、弁体141を弁座142に押圧するためのバネ145を有する。このバネ145の荷重は調整器性能に影響し難くなる程度に小さくされる必要がある。加えて、弁機構140では弁軸143と弁軸ガイド144との摺動抵抗を小さくすることが好ましいことから、弁軸ガイド144を短く形成している。
【0006】
しかし、弁軸ガイド144を短く形成した場合には、弁軸143が軸振れを起こしやすくなってしまう。バネ145の荷重が大きい場合には軸振れ時においてこれを矯正することができるが、バネ145の荷重が小さい場合には軸振れ時に矯正することができず、弁機構140におけるシール性が不充分となってしまう。
【0007】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、調整器性能に影響を与え難く、軸振れによるシール性の低下を抑えることが可能な漏洩検知装置及び漏洩検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る漏洩検知装置は、弁機構と、バイパス流路と、漏洩検知センサとを備え、バイパス流路は、メイン流路に沿って延在すると共に、当該バイパス流路内の上流部の燃料ガスを略同圧状態のまま下流部まで流すものである。弁機構は、所定方向の一方側への移動時に弁座に対して接触状態となり、所定方向の他方側への移動時に弁座から離間状態となる弁体と、弁体から所定方向に延びる弁軸と、弁軸を包囲する筒体を形成する弁軸ガイドと、弁軸と弁軸ガイドとの間に配置された回転体とを有する。
弁軸の側壁には、所定方向に離間した複数の収容室と、複数の収容室を所定方向に接続する接続溝と、を有する溝部が形成されている。回転体は、収容室に収容された球状体である。弁軸は、所定方向に長尺に形成され、溝部に埋設され、球状体よりも径が小さい孔部を収容室の位置に有し、球状体の一部が孔部から露出して弁軸ガイドに接触するように、収容室を塞ぐ蓋部材を有する。
また、本発明に係る漏洩検知装置は、弁機構と、バイパス流路と、漏洩検知センサとを備え、バイパス流路は、メイン流路に沿って延在すると共に、当該バイパス流路内の上流部の燃料ガスを略同圧状態のまま下流部まで流すものである。弁機構は、所定方向の一方側への移動時に弁座に対して接触状態となり、所定方向の他方側への移動時に弁座から離間状態となる弁体と、弁体から所定方向に延びる弁軸と、弁軸を包囲する筒体を形成する弁軸ガイドと、弁軸と弁軸ガイドとの間に配置された回転体とを有する。
回転体は、球状体である。弁軸ガイドの内周側に設けられ、筒体と筒体の両端部から内周方向に延びる壁部とを有した周状籠部材と、周状籠部材に球状体が収容された状態で、周状籠部材の開放側となる内周側を塞ぐと共に、球状体よりも径が小さい孔部を有した周状蓋部材と、を有する。球状体は、一部が周状蓋部材の孔部から露出して弁軸に接触する。
【0009】
本発明に係る漏洩検知装置によれば、弁軸と弁軸ガイドとの間に配置された回転体を有するため、回転体の回転によって両者の摺動抵抗を小さくすることができ、弁軸ガイドを長く形成することが可能となる。これにより、軸振れの発生を抑えることができると共に、軸振れ時の矯正のためにバネ荷重を大きくする必要もないことから、調整器性能に影響を与え難く、軸振れによるシール性の低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、調整器性能に影響を与え難く、軸振れによるシール性の低下を抑えることが可能な漏洩検知装置及び漏洩検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る漏洩検知装置を含む漏洩検知システムの構成図である。
図2図1に示した漏洩検知システムの断面図である。
図3図2に示した弁機構の拡大断面図である。
図4図3のIV-IV断面図であり、(a)は分解状態を示し、(b)は組み付け状態を示している。
図5図3のV-V断面図であり、(a)は分解状態を示し、(b)は組み付け状態を示している。
図6図2に示した弁機構の動作状態を示す図であり、(a)は弁閉状態を示し、(b)は弁開状態を示している。
図7】第2実施形態に係る弁機構を示す断面図である。
図8図7に示した弁機構の一部構成の分割平面図である。
図9図7及び図8に示した球状体格納ユニットの分解断面図である。
図10図9に示した周状蓋部材のA矢視図である。
図11】比較例に係る弁機構の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る漏洩検知装置を含む漏洩検知システムの構成図であり、図2は、図1に示した漏洩検知システムの断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態に係る漏洩検知システム1は、一次調整器10と、二次調整器(圧力調整器)20と、漏洩検知装置30とから構成されている。
【0014】
一次調整器10は、いわゆる切替機能付きの元調整器であって、左右に接続されるLPガスボンベ(図示せず)のうち、どちらから燃料ガスを導入するかを選択するための操作部となる切替レバー11を正面側に備えている。また、一次調整器10は、内部にダイヤフラム等を備えており、ダイヤフラムの動作に応じて内部の弁体を開閉動作させることによって高圧の燃料ガスを中圧とする一次減圧を行う構成となっている。一次減圧された燃料ガスは、二次調整器20に供給される。
【0015】
二次調整器20は、一次減圧された中圧の燃料ガスを低圧とする二次減圧を行うものである。また、漏洩検知装置30は、二次調整器20に対して取り付けられるものであって、微少漏洩を検出するためのものである。二次調整器20は、一次調整器10と同様に、減圧室DRに面してダイヤフラム(図示せず)等を備えており、ダイヤフラムの動作に応じて内部の減圧弁22を開閉動作させることによって二次減圧を行う。二次減圧された燃料ガスは、下流側に供給される。なお、二次調整器20は、減圧室DRがメイン流路21を構成している。
【0016】
漏洩検知装置30は、弁機構40を備えている。弁機構40は、燃料ガスの流量が設定流量未満である場合に弁閉状態となり、燃料ガスを漏洩検知装置30のバイパス流路31側に導入させるものである。また、弁機構40は、燃料ガスの流量が設定流量以上である場合に弁開状態となり、燃料ガスの一部を漏洩検知装置30側に導入させ、残りの燃料ガスを漏洩検知装置30に導入させることなく出口配管20aから排出する。
【0017】
このような漏洩検知装置30は、二次調整器20の減圧室DRから燃料ガスを導入する導入孔30aと、導入した燃料ガスを二次調整器20の出口配管20a側に戻す排出口30bとを備えている。排出口30bは、二次調整器20のうち弁機構40の下流側に燃料ガスを戻すように二次調整器20に接続されている。このように漏洩検知装置30は、導入孔30aから排出口30bまでのバイパス流路31が弁機構40をバイパスする。また、本実施形態において漏洩検知装置30は、バイパス流路31が二次調整器20のガス流れ方向(すなわち図1及び図2に示す下方向)に沿って延在している。特に、二次調整器20の導入孔30aから二次調整器20の排出口30bまで至るルートは略U状となっており、バイパス流路31はこの略U字状のルートの半分以上の長さを占めるようになっている。すなわち、U字状のルートにおいてガス流れ方向に延在するバイパス流路31以外の部位Lの長さは極力小さくされている。
【0018】
また、漏洩検知装置30は、バイパス流路31に漏洩検知センサ32を備えている。漏洩検知センサ32は、例えば超音波式流量検知ユニットによって構成され、多層ユニット(図示せず)内に超音波信号を送信して受信するための2つの超音波送受信器と、2つの超音波送受信器にて送受信された超音波信号の伝搬時間から流量を計測するための計測基板とを備えている。
【0019】
ここで、二次調整器20よりも下流側において小さな配管亀裂等が発生した場合、微少な漏洩が発生する。微少漏洩時の流量は上記設定流量よりも小さいことから、燃料ガスは漏洩検知装置30のバイパス流路31を通じて流れることとなる。漏洩検知センサ32は、このような微少流量を検知することとなる。
【0020】
なお、図1及び図2からも明らかなように、漏洩検知装置30のバイパス流路31は、特許文献1,2において設けられていた子調整器に相当するものが設けられないようになっている。このため、バイパス流路31は、上流部31aの燃料ガスを略同圧状態のまま下流部31bまで流す構造となっている。ここで、略同圧状態とは、多層ユニットを通過する際の圧力損失については許容する概念であり、従来の子調整器のような積極的な減圧がないことを示す概念である。
【0021】
図3は、図2に示した弁機構40の拡大断面図である。図3に示すように、弁機構40は、弁体41と、弁座42と、弁軸43と、弁軸ガイド44と、コイルバネ45と、球状体(回転体)46とを備えている。
【0022】
弁体41は、弁座42に対して切離可能なものであり、所定方向の一方側への移動時に弁座42に対して接触状態となり、所定方向の他方側への移動時に弁座42から離間状態となるものである。弁体41は、弁座42と接触する部位(所定方向の一方側の部位)にゴムパッキン41aが設けられている。
【0023】
弁座42は、弁体41が接触する部位である。弁座42に対して弁体41が接触状態となることでメイン流路21は遮断状態となる。この弁座42は、所定方向の他方側へ突出する突起部42aを有する。弁体41が弁座42に接触してメイン流路21を遮断する際には、突起部42aがゴムパッキン41aに食い込むこととなり、シール性の向上が図られている。
【0024】
弁軸43は、弁体41から所定方向(他方側)に延びる棒状部材である。弁軸ガイド44は、弁軸43を包囲する筒体を形成するものである。弁軸43は、弁軸ガイド44によって軸振れが防止されるようになっている。特に、本実施形態において弁軸ガイド44は図11に示した比較例のものよりも長めに形成されている。
【0025】
コイルバネ45は、弁軸ガイド44の周囲に設けられ、弁体41を弁座42側に付勢するものである。このコイルバネ45は、他の一般的な弁機構と比較してバネ荷重が小さいものとされている。
【0026】
球状体46は、弁軸43と弁軸ガイド44との間に配置された球体である。この球状体46は、弁軸ガイド44に対して弁軸43が所定方向に移動する際の摺動抵抗を低減させるべく回転するものである。
【0027】
図4は、図3のIV-IV断面図であり、(a)は分解状態を示し、(b)は組み付け状態を示している。図4(a)に示すように、弁軸43には側壁43aを刳り貫くようにして形成された有底の収容室43bが形成されている。球状体46は、この収容室43bに収容される。なお、収容室43bは、球状体46を1つだけ収容可能な大きさとなっており、球状体46が収まるように底面が曲面構造となっている。また、収容室43bは、弁軸43に対して周状に複数個(図4に示す例では周状に3つ)形成されている。さらに、収容室43bは、球状体46が収容された場合に弁軸43の表面(側壁43a)よりも僅かに球状体46が突出するように形成されている。
【0028】
また、弁機構40は蓋部材47を備えている。蓋部材47は、球状体46よりも径(最小部分の径)が小さい孔部H1を有した部材であって、収容室43bを塞ぐ部材である。この蓋部材47は、収容室43bに埋設されるように収容室43bを塞ぐようになっている。このため、弁軸43と蓋部材47との表面は図4(b)に示すように面一となる。
【0029】
また、球状体46は、収容室43bに収容されて蓋部材47によって収容室43bが塞がれることで、一部が孔部H1から露出する。露出部位は弁軸ガイド44に接するようになっている。
【0030】
図5は、図3のV-V断面図であり、(a)は分解状態を示し、(b)は組み付け状態を示している。図5(a)に示すように、収容室43bは弁軸43の長手方向(所定方向)に離間して複数(2個)形成されている。また、弁軸43には、複数の収容室43bを接続するように刳り貫かれた接続溝43cが形成されている。さらに、蓋部材47は弁軸43の長手方向(所定方向)に長尺に形成されており、1部材で複数の収容室43bに跨って複数の収容室43bを塞ぐ構成となっている。塞ぐにあたり蓋部材47は接続溝43cに埋設されるように収まっている。このため、弁軸43と蓋部材47との表面は図5(b)に示す断面においても面一となっている。
【0031】
次に、本実施形態に係る漏洩検知システム1の動作を説明する。図6は、図2に示した弁機構40の動作状態を示す図であり、(a)は弁閉状態を示し、(b)は弁開状態を示している。
【0032】
まず、LPガスボンベからの高圧の燃料ガスは、図1及び図2に示す一次調整器10に導入され、一次調整器10において一次減圧される。そして、一次減圧された燃料ガスは、二次調整器20に流入し、二次調整器20において二次減圧される。二次減圧された燃料ガスは、出口配管20aを通じて需要者側に供給される。
【0033】
ここで、需要者側において比較的小さな流量(設定流量未満)の燃料ガスが使用されたとする。この場合、弁機構40はコイルバネ45の付勢力によって図6(a)に示す弁閉状態を維持する。これにより、減圧室DR内の燃料ガスは漏洩検知装置30を介して出口配管20aから需要者側に供給される。
【0034】
なお、設定流量未満の流量が需要者側での使用でなく、配管亀裂等による微少漏洩である場合も、上記と同様に燃料ガスは漏洩検知装置30を介して流れることとなる。漏洩検知装置30は、このような設定流量未満の流量が所定日数(例えば30日であって、1~30日で変更可)に亘って継続して流れていることを検知した場合、微少漏洩が発生していると判断する。
【0035】
一方、需要者側において比較的大きな流量(設定流量以上)の燃料ガスが使用されたとする。この場合、弁機構40は、図6(b)に示すように、燃料ガスによって弁体41が所定方向の他方側に押し下げられるように移動して弁開状態となる。この際、弁軸43は球状体46を回転させながら弁軸ガイド44内を移動することとなる。弁機構40が弁開状態となると、減圧室DR内の燃料ガスは、漏洩検知装置30を介して出口配管20aから需要者側に供給されると共に、漏洩検知装置30を介することなく弁機構40を通過して需要者側に供給される。その後、燃料ガスの流量が低下して設定流量未満となると弁機構40はコイルバネ45の付勢力によって図6(a)に示す弁閉状態に移行する。弁閉状態に移行する場合においても、弁軸43は球状体46を回転させながら弁軸ガイド44内を移動することとなる。
【0036】
加えて、上記の如く、弁機構40が弁閉状態に移行したり弁開状態に移行する場合において、本実施形態に係る弁機構40は、弁軸ガイド44が比較的長めにされていることから軸振れが発生し難くなる。以後、燃料ガスの流量に応じて弁機構40は弁開状態に移行したり弁閉状態に移行したりする。
【0037】
このようにして、本実施形態に係る漏洩検知装置30によれば、弁軸43と弁軸ガイド44との間に配置された球状体46を有するため、球状体46の回転によって両者の摺動抵抗を小さくすることができ、弁軸ガイド44を長く形成することが可能となる。これにより、軸振れの発生を抑えることができると共に、軸振れ時の矯正のためにバネ荷重を大きくする必要もないことから、調整器性能に影響を与え難く、軸振れによるシール性の低下を抑えることができる。
【0038】
また、収容室43bに球状体46を収容して蓋部材47を利用して球状体46の一部を露出させて弁軸ガイド44に接触させるため、球状体46を配置することによって弁軸ガイド44が径方向に大きくなってしまうことを抑制して、燃料ガスが通過する流路を確保し易くすることができる。
【0039】
また、蓋部材47は、1部材で複数の収容室43bに跨って複数の収容室43bを塞ぐため、球状体46の数と同数だけ蓋部材47を有する場合と比較して組み付け性を向上させることができる。
【0040】
さらに、本実施形態に係る漏洩検知システム1によれば、二次調整器20の減圧室DRがメイン流路21を構成するため、二次調整器20の内部の燃料ガスをバイパス流路31に引き込むことが可能となり、二次調整器20の出口配管20aから流出した燃料ガスをバイパス流路31に引き込む構成と比較して、ガス流れ方向(上下方向)へ長くなってしまう事態を防止することができる。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る漏洩検知装置30及び漏洩検知システム1は、第1実施形態と同様であるが、一部構成が異なっている。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
【0042】
図7は、第2実施形態に係る弁機構40を示す断面図であり、図8は、図7に示した弁機構40の一部構成の分割平面図である。
【0043】
図7及び図8に示すように、第2実施形態に係る弁機構40は、弁体41と、弁座42と、弁軸43と、弁軸ガイド44と、コイルバネ45と、球状体(回転体)46を収納した球状体格納ユニット(周状籠部材)48と、パッキン49と、下蓋50とを備えている。
【0044】
図7及び図8に示す球状体格納ユニット48は、弁軸ガイド44の内周側に設けられる部材であって、球状体46を収容したものである。図9は、図7及び図8に示した球状体格納ユニット48の分解断面図である。球状体格納ユニット48は、図9に示すように、周状籠部材48aと、球状体46と、周状蓋部材48bとを備えている。
【0045】
周状籠部材48aは、筒体48a1と、筒体48a1の両端部から内周方向に延びる壁部48a2とを有しており、内周側が開放された周状の籠形状となっている。周状蓋部材48bは、周状籠部材48aの開放側を塞ぐ部材である。
【0046】
図10は、図9に示した周状蓋部材48bのA矢視図である。図9及び図10に示すように周状蓋部材48bは、筒体によって形成されると共に、球状体46よりも径が小さい孔部H2を有した構造となっている。また、図9に示すように周状籠部材48aには多数の球状体46が収納されることで、球状体46は図10に示す周状蓋部材48bの孔部H2から一部が露出するようになっている。球状体46の露出部分は弁軸43に接するようになっている。
【0047】
また、図7に示すように、弁軸ガイド44の所定方向の一方側には鉤型となっており、この鉤部44aに球状体格納ユニット48の一端が接するようになっている。下蓋50は、断面略U字状となる有底筒部材であり、開放側が所定方向の一方側に向いており、U字端部となる先端が球状体格納ユニット48に接するように配置されている。また、下蓋50の外側面には段部50aが形成されている。段部50aにはパッキン49が設けられており、下蓋50はパッキン49を介して弁軸ガイド44に接することで気密性が高められている。さらに、下蓋50の筒内部には弁軸43が挿脱するようになっている。
【0048】
なお、第2実施形態に係る漏洩検知システム1の動作は第1実施形態と同様である。
【0049】
このようにして、第2実施形態に係る漏洩検知装置30によれば、第1実施形態と同様に、調整器性能に影響を与え難く、軸振れによるシール性の低下を抑えることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る漏洩検知システム1についても第1実施形態と同様に、ガス流れ方向(上下方向)へ長くなってしまう事態を防止することができる。
【0051】
さらに、第2実施形態によれば、周状籠部材48aに球状体46が収容された状態で周状籠部材48aの開放側となる内周側を塞ぐ周状蓋部材48bを有し、球状体46は、一部が周状蓋部材48bの孔部H2から露出して弁軸43に接触するため、弁軸ガイド44側に球状体46を保持させることとなり、弁軸43側という移動部材側に球状体46を保持させることなく、球状体46が脱落してしまう可能性を低減させることに寄与することができる。
【0052】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、実施形態同士の技術を組み合わせてもよいし、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
【0053】
例えば本実施形態に係る漏洩検知装置30は、バイパス流路31内に超音波式の流量センサを備え、これにより微少漏洩を判断しているが、これに限らず、バイパス流路31内には、フローセンサなどの他のタイプの流量センサが設けられていてもよい。また、本実施形態において漏洩検知装置30は、流量式の微少漏洩の判断を行っているが、これに限らず、圧力式の微少漏洩の判断を行うようにしてもよい。
【0054】
さらに、上記実施形態において漏洩検知装置30の排出口30bは二次調整器20の出口配管20aに接続されていてもよいし、出口配管20aよりも更に下流側の配管等に接続されていてもよい。
【0055】
さらに、上記実施形態において、漏洩検知装置30は上下方向の長さが二次調整器20の長さ未満とされており、一層のコンパクト化が図られているが、これに限らず、二次調整器20以上の長さとなっていてもよい。
【0056】
加えて、バイパス流路31と二次調整器20とをつなぐ流路(例えば図2の符号L)の長さ(左右方向の長さ)がバイパス流路31の上下方向の長さよりも小さくされており、漏洩検知装置30が二次調整器20の背面に隠れるように配置されているが、これに限らず、左右方向の長さが比較的長い配管によって接続されて、漏洩検知装置30の大部分が二次調整器20に隠れないようになっていてもよい。
【0057】
また、本実施形態に係る漏洩検知装置30は弁機構40が二次調整器20に内蔵され、二次調整器20の減圧室DRがメイン流路21を構成しているが、これに限らず、二次調整器20の出口配管20aよりも下流側にメイン流路21が設けられ、このメイン流路21に弁機構40が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 :漏洩検知システム
20 :二次調整器(圧力調整器)
20a :出口配管
21 :メイン流路
30 :漏洩検知装置
31 :バイパス流路
31a :上流部
31b :下流部
32 :漏洩検知センサ
40 :弁機構
41 :弁体
42 :弁座
43 :弁軸
43a :側壁
43b :収容室
44 :弁軸ガイド
46 :球状体(回転体)
47 :蓋部材
48 :球状体格納ユニット
48a :周状籠部材
48a1 :筒体
48a2 :壁部
48b :周状蓋部材
DR :減圧室
H1,H2 :孔部
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11