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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】線量低減方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 19/32 20060101AFI20221108BHJP
   G21F 9/36 20060101ALI20221108BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20221108BHJP
   G21F 5/12 20060101ALI20221108BHJP
   G21F 5/015 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
G21C19/32
G21F9/36 501C
G21F9/36 501F
G21F9/36 501H
G21F3/00 E
G21F5/12 D
G21F5/015
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018133738
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020012686
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水磨 裕之
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-072591(JP,A)
【文献】特表2013-520663(JP,A)
【文献】特開2015-215288(JP,A)
【文献】特開2006-284302(JP,A)
【文献】特開昭57-151896(JP,A)
【文献】特開2014-228355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 19/32
G21F 9/36
G21F 3/00
G21F 5/12
G21F 5/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水容器に水と共に収容されている放射性物質または放射性物質が付着した物質を前記貯水容器の周辺の作業領域から遠ざけて前記貯水容器の水中で保持する保持工程と、
前記作業領域での作業中に前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質を保持した状態を維持する作業中工程と、
前記作業領域での作業終了後に前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質の保持を開放し、前記物質を前記貯水容器の水中に戻す開放工程と、
を含み、
前記保持工程は、あらかじめ設定した所定の線量以下になるように前記貯水容器内で距離を開ける位置に収納容器を配置して、前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質を前記貯水容器から前記収納容器に移動し、
前記開放工程は、前記収納容器の底部を閉塞する底蓋を開けて前記収納容器に保持した前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質を前記貯水容器の水中に開放する、 線量低減方法。
【請求項2】
貯水容器に水と共に収容されている放射性物質または放射性物質が付着した物質を前記貯水容器の周辺の作業領域から遠ざけて前記貯水容器の水中で保持する保持工程と、
前記作業領域での作業中に前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質を保持した状態を維持する作業中工程と、
前記作業領域での作業終了後に前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質の保持を開放し、前記物質を前記貯水容器の水中に戻す開放工程と、
を含み、
前記保持工程は、あらかじめ設定した所定の線量以下になるように前記貯水容器内で距離を開ける位置に収納容器を配置して、前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質を前記貯水容器から前記収納容器に移動し、
前記収納容器は、前記物質を収納可能に設けられかつ底部を開閉する底蓋を有した容器本体と、前記容器本体を支持するフレームと、を備え、
前記容器本体は、前記貯水容器に形成された上部開口から挿入され、前記フレームは、前記容器本体が前記貯水容器の内部に挿入された状態で所定の位置に配置される、
線量低減方法。
【請求項3】
前記収納容器は、前記貯水容器の外側から前記底蓋の開操作を行う蓋操作部を有する請求項に記載の線量低減方法。
【請求項4】
前記容器本体は、上方に漸次窄まる蓋部材と、前記蓋部材の窄まった上端に形成された開口部とが形成されている請求項またはに記載の線量低減方法。
【請求項5】
前記フレームは、前記容器本体が固定されたフレーム本体部と、前記フレーム本体部に連結または分離が可能に設けられたフレーム延長部と、を有し、前記フレーム本体部に前記フレーム延長部を連結することで上下方向に延長して構成される請求項のいずれか1つに記載の線量低減方法。
【請求項6】
前記貯水容器は、前記上部開口の外周に設けられてボルトを介して蓋が固定されるフランジが設けられており、前記フレームは、前記フランジにボルトを介して固定される固定部を有する請求項のいずれか1つに記載の線量低減方法。
【請求項7】
前記物質を前記貯水容器の水中から吸引し前記収納容器における前記容器本体に吐出する吸引吐出装置を用いる、請求項のいずれか1つに記載の線量低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線量低減方法、線量低減用収納容器および線量低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所にあるタンクやピットなどの貯水容器は、放射性物質が含まれる場合、貯水容器周辺で作業する際、作業者の被ばく低減のため遮へいする必要がある。ところが、遮へいする事で作業が困難になったり、貯水容器の形状によって遮へいが困難な場合がある。そうした場合、多くの作業員が必要であり、工事期間も長くなり、工事コストが増大する。一方、貯水容器内の放射性物質を除去すれば遮へいしなくても作業はできるが、放射性物質の除去には放射性物質を移動させる手続きや放射性物質の付着による二次廃棄物が発生するため、廃棄物の処理の問題がある。
【0003】
ここで、例えば、特許文献1には、放射性物質の破砕片(燃料デブリ)の回収容器、回収方法および回収装置として、水の中から燃料デブリを回収して一箇所に集める場合に燃料デブリと燃料デブリとの間の距離が短くなり過ぎると再臨界が発生するリスクを避ける工夫が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6008793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の発明は、水の中から燃料デブリを回収する際に再臨界が発生するリスクを避けるための工夫であり、作業領域における線量低減を行うものではない。従って、遮蔽を行わずに作業領域における線量低減を図る工夫が望まれている。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、貯水容器に放射性物質が収容されている場合、当該貯水容器周辺の作業領域における線量を低減することのできる線量低減方法、線量低減用収納容器および線量低減装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係る線量低減方法は、貯水容器に水と共に収容されている放射性物質または放射性物質が付着した物質を前記貯水容器の周辺の作業領域から遠ざけて前記貯水容器の水中で保持する保持工程と、前記作業領域での作業中に前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質を保持した状態を維持する作業中工程と、前記作業領域での作業終了後に前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質の保持を開放する開放工程と、を含む。
【0008】
本発明の一態様に係る線量低減方法では、前記保持工程は、あらかじめ設定した所定の線量以下になるように前記貯水容器内で距離を開ける位置に収納容器を配置して、前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質を前記貯水容器から前記収納容器に移動することが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る線量低減方法では、前記開放工程は、前記収納容器の底部を閉塞する底蓋を開けて前記収納容器に保持した前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質を前記貯水容器の水中に開放することが好ましい。
【0010】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係る線量低減用収納容器は、貯水容器に水と共に収容された放射性物質または放射性物質が付着した前記物質を収納可能に設けられかつ底部を開閉する底蓋を有した容器本体と、前記容器本体を支持するフレームと、を備え、前記容器本体は、前記貯水容器に形成された上部開口から挿入され、前記フレームは、前記容器本体が前記貯水容器の内部に挿入された状態で所定の位置に配置される。
【0011】
本発明の一態様に係る線量低減用収納容器では、前記貯水容器の外側から前記底蓋の開操作を行う蓋操作部を有することが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る線量低減用収納容器では、前記容器本体は、上方に漸次窄まる蓋部材と、前記蓋部材の窄まった上端に形成された開口部とが形成されていることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る線量低減用収納容器では、前記フレームは、前記容器本体が固定されたフレーム本体部と、前記フレーム本体部に連結または分離が可能に設けられたフレーム延長部と、を有し、前記フレーム本体部に前記フレーム延長部を連結することで上下方向に延長して構成されることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る線量低減用収納容器では、前記貯水容器は、前記上部開口の外周に設けられてボルトを介して蓋が固定されるフランジが設けられており、前記フレームは、前記フランジにボルトを介して固定される固定部を有することが好ましい。
【0015】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係る線量低減装置は、上述したいずれか1つに記載の線量低減用収納容器と、貯水容器に水と共に収容されている放射性物質または放射性物質が付着した物質を前記貯水容器の水中から吸引し前記線量低減用収納容器における前記容器本体に吐出する吸引吐出装置と、を備える。
【0016】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係る線量低減方法は、上述したいずれか1つに記載の線量低減用収納容器と、貯水容器に水と共に収容されている放射性物質または放射性物質が付着した物質を前記貯水容器の水中から吸引し前記線量低減用収納容器における前記容器本体に吐出する吸引吐出装置と、を備える線量低減装置を用い、前記貯水容器に水と共に収容されている前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質を前記貯水容器の周辺の作業領域から遠ざけて前記貯水容器の水中で保持する保持工程と、前記作業領域での作業中に前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質を保持した状態を維持する作業中工程と、前記作業領域での作業終了後に前記放射性物質または放射性物質が付着した前記物質の保持を開放する開放工程と、を含む。
【0017】
本発明の一態様に係る線量低減方法では、前記線量低減用収納容器を複数用い、前記保持工程は、あらかじめ設定した所定の線量以下になるように前記貯水容器内で距離を開ける位置に各前記線量低減用収納容器の前記容器本体を配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、放射性物質を貯水容器の周辺の作業領域から遠ざけて貯水容器の水中で保持することで、放射性物質を貯水容器の水中から取り出すことなく作業領域から遠ざけることができ、作業領域の線量を低減することができる。また、作業領域での作業中に放射性物質を保持した状態を維持することで、作業領域の線量を低減した状態を作業中に維持することができる。また、作業領域での作業終了後に放射性物質の保持を開放することで、放射性物質を貯水容器の水中に戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施形態に係る線量低減方法の対象となる貯水容器の一例の概略図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る線量低減方法の説明図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る線量低減方法の説明図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る線量低減方法の説明図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の側面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の正面図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大斜視図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大斜視図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大斜視図である。
図12図12は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の設置概念図である。
図13図13は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の設置概念図である。
図14図14は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の設置概念図である。
図15図15は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大斜視図である。
図16図16は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の設置概念図である。
図17図17は、本発明の実施形態に係る線量低減用収納容器の設置概念図である。
図18図18は、本発明の実施形態に係る線量低減装置の系統図である。
図19図19は、本発明の実施形態に係る線量低減装置の系統図である。
図20図20は、本発明の実施形態に係る線量低減装置の系統図である。
図21図21は、本発明の実施形態に係る線量低減装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0021】
図1は、本実施形態に係る線量低減方法の対象となる貯水容器の一例の概略図である。
【0022】
図1に示すように、貯水容器100は、所謂タンクであり、底部100aおよび周側部100bが閉塞されて上端に上部開口101が形成されている。上部開口101は、円形状に開口し、その外周に環状のフランジ102が設けられている。フランジ102は、周方向に沿って複数の取付穴102a(図14参照)が貫通して設けられ、この取付穴102aに通されたボルトを介して蓋103が固定される。上部開口101は、蓋103が固定されることで閉塞される。また、図1に示す貯水容器100は、脚104が設けられて設置される床面105と底部100aとの距離を空けるように構成されている。また、貯水容器100の上方には、本設または仮設で作業者が乗れる足場106が設けられている。足場106は、上部開口101およびフランジ102を臨めるように、上部開口101およびフランジ102の位置が開放して形成されている。
【0023】
このような貯水容器100は、例えば、原子力発電設備に設置され、原子力発電設備の運転において運転、点検、保守に伴って発生する放射性物質110を水中Wにて貯蔵することに用いられる。放射性物質110は、例えば、放射性フィルタスラッジや放射性廃棄イオン交換樹脂などの放射性固体廃棄物である。このような、水中Wにて貯蔵される放射性固体廃棄物は、高レベル固体廃棄物に分類される。このため、貯水容器100の周囲は、放射線を遮蔽するコンクリート壁にて全周囲が覆われる。
【0024】
ところで、上述した貯水容器100に係り、周囲のコンクリート壁や、貯水容器100自体の耐震補強工事を行う場合、耐震補強工事を行っている間は、貯水容器100の周辺の作業領域の線量を低減する必要がある。しかし、貯水容器100の水中Wに放射性物質110を収容したままで貯水容器100の周囲を遮蔽材で覆うことが考えられるが、例えば、貯水容器100の底部100aの近傍が作業領域となる場合は、貯水容器100の底部100aを覆う遮蔽材を下から支えて底部100aに設置するため、工事コストが増大する。また、放射性物質110を貯水容器100から取り出すには、除染のために高線量廃棄物、二次廃棄物が発生するため、廃棄物の問題が発生し、これによるコスト増の問題がある。なお、図1に示すような貯水容器100以外でも、様々な放射性物質110を水中Wで収容する貯水容器があり、同様に周辺で工事を行うにあたり線量を低減する必要がある。
【0025】
図2図4は、本実施形態に係る線量低減方法の説明図である。
【0026】
本実施形態の線量低減方法においては、図2に示すように貯水容器100の水中Wに収容されている放射性物質110を貯水容器100の周辺の作業領域Sから遠ざけて貯水容器100の水中Wで保持する保持工程と、図3に示すように作業領域Sでの作業中に放射性物質110を保持した状態を維持する作業中工程と、図4に示すように作業領域での作業終了後に放射性物質110の保持を開放する開放工程と、を含む。
【0027】
図2に示すように、保持工程において、本実施形態では線量低減装置1が用いられる。線量低減装置1は、詳細を後述するが、線量低減用収納容器2と、貯水容器100に収容されている放射性物質110を貯水容器100の水中Wから吸引しにおける線量低減用収納容器2に吐出する吸引吐出装置3と、を備える。
【0028】
本実施形態では、作業領域Sを貯水容器100の底部100aの近傍としている。従って、保持工程では、貯水容器100の水中Wに収容されている放射性物質110を貯水容器100の周辺の作業領域Sであって貯水容器100の底部100aから遠ざけるように貯水容器100内の中央の上方において貯水容器100の水中Wで保持する。また、保持工程では、作業領域Sから遠ざかる貯水容器100の水中W、即ち、あらかじめ設定した所定の線量以下になるように貯水容器100内で距離を開ける位置に線量低減用収納容器2を配置して、吸引吐出装置3により貯水容器100の水中Wから放射性物質110を吸引して線量低減用収納容器2に吐出する。線量低減用収納容器2は、貯水容器100の上部開口101から貯水容器100内に挿入され、本実施形態では、貯水容器100内の中央の上方に配置される。この保持工程により、作業領域Sにおける線量が低減される。
【0029】
図3に示すように、作業中工程では、放射性物質110が収納された線量低減用収納容器2をそのまま貯水容器100内に配置した状態で、作業領域Sで作業を行う。つまり、作業中工程では、作業領域Sでの作業中に放射性物質110を保持した状態を維持する。この作業中工程により、作業領域Sでの作業の際に、作業領域Sが低線量に維持される。なお、本実施形態では、作業中工程は、貯水容器100の上部開口101を仮蓋4により閉塞する。仮蓋4は、上部開口101から貯水容器100内への人や物の落下を防ぐことを主な目的としているが、上部開口101から貯水容器100外への放射線の漏洩を防ぐ遮へいも目的としてもよい。
【0030】
図4に示すように、開放工程では、作業領域Sでの作業が終了した場合、線量低減用収納容器2に収納された放射性物質110を貯水容器100の水中Wに開放する。例えば、線量低減用収納容器2の底部を開閉する底蓋21Aを開けることで線量低減用収納容器2に保持している放射性物質110を貯水容器100の水中Wに開放する。つまり、開放工程では、作業領域Sでの作業終了後に放射性物質110の保持を開放し、放射性物質110を作業前に収容していた元の状態に戻す。
【0031】
このように、本実施形態の線量低減方法は、貯水容器100に水と共に収容されている放射性物質110を貯水容器100の周辺の作業領域Sから遠ざけて貯水容器100の水中Wで保持する保持工程と、作業領域Sでの作業中に放射性物質110を保持した状態を維持する作業中工程と、作業領域Sでの作業終了後に放射性物質110の保持を開放する開放工程と、を含む。
【0032】
この線量低減方法によれば、放射性物質110を貯水容器100の周辺の作業領域Sから遠ざけて貯水容器100の水中Wで保持することで、放射性物質110を貯水容器100の水中Wから取り出すことなく作業領域Sから遠ざけることができ、作業領域Sの線量を低減することができる。また、作業領域Sでの作業中に放射性物質110を保持した状態を維持することで、作業領域Sの線量を低減した状態を作業中に維持することができる。また、作業領域Sでの作業終了後に放射性物質110の保持を開放することで、放射性物質110を貯水容器100の水中Wに戻すことができる。この結果、線量低減方法は、工事コストの増大を抑えつつ貯水容器100の周辺の作業領域Sにおける線量を低減することができる。
【0033】
また、本実施形態の線量低減方法では、保持工程は、あらかじめ設定した所定の線量以下になるように貯水容器100内で距離を開ける位置に線量低減用収納容器2を配置して、貯水容器100の水中Wから放射性物質110を吸引して線量低減用収納容器2に吐出する。
【0034】
この線量低減方法によれば、放射性物質110を貯水容器100の周辺の作業領域Sから容易かつ確実に遠ざけることができる。
【0035】
また、本実施形態の線量低減方法では、開放工程は、線量低減用収納容器2の底部を閉塞する底蓋21Aを開けて線量低減用収納容器2に保持した放射性物質110を貯水容器100の水中Wに開放する。
【0036】
この線量低減方法によれば、作業終了後に放射性物質110を貯水容器100の水中Wに容易に戻すことができる。
【0037】
なお、本実施形態では、放射性物質110として放射性固体廃棄物を貯水容器100の水中Wにて貯蔵する設備における線量低減方法について説明したが、この限りではない。例えば、図には明示しないが、燃料ピットの水中で使用済燃料である燃料集合体が貯蔵される設備において適用することもできる。この場合、例えば、燃料ピット内や周辺で作業を行う場合に、ピット内に沈殿した放射性物質を含む堆積物(例えば水垢等)等を線量低減用収納容器を用いて水中で回収、移動させ、作業領域から遠ざけたりする。放射性物質を含む堆積物は、例えば、crud(Chalk River unidentified deposit)であり、crudは、軽水炉一次(原子炉)冷却水中において、配管系の金属材料の腐食によって生ずる腐食生成物のうち、水に溶けないので分散している金属酸化物の総称である。
【0038】
以下、本実施形態の線量低減用収納容器2および線量低減装置1の詳細について説明する。図5は、本実施形態に係る線量低減用収納容器の側面図である。図6は、本実施形態に係る線量低減用収納容器の正面図である。図7は、本実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大断面図である。図8は、本実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大断面図である。図9は、本実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大斜視図である。図10は、本実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大斜視図である。図11は、本実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大斜視図である。図12図14は、本実施形態に係る線量低減用収納容器の設置概念図である。図15は、本実施形態に係る線量低減用収納容器の一部拡大斜視図である。図16および図17は、本実施形態に係る線量低減用収納容器の設置概念図である。図18図21は、本実施形態に係る線量低減装置の系統図である。
【0039】
線量低減用収納容器2は、図5および図6に示すように、容器本体21と、フレーム22と、を備える。
【0040】
容器本体21は、上述した線量低減方法において、作業領域Sから遠ざかる貯水容器100の水中Wに配置されるもので、放射性物質110が収納され、この放射性物質110を作業領域Sから遠ざかる貯水容器100の水中Wで保持するものである。
【0041】
容器本体21は、本実施形態では、網やパンチングメタルなどにより矩形の筒状に形成されており、下端の底部を開閉する底蓋21Aが設けられ、上端に開口部21Bが設けられている。
【0042】
底蓋21Aは、図7および図8に示すように、容器本体21の筒状部分とは別体で構成されている。底蓋21Aは、容器本体21の底部の一側に水平方向に沿って設けられた軸211を介して揺動可能に設けられている。底蓋21Aは、図7に示すように容器本体21の底部を閉塞した水平状態が維持されるように爪部212により係止される。爪部212は、軸211とは相反する側である容器本体21の底部の他側に配置された板片であり、水平方向に沿って設けられた軸213を介して揺動可能に設けられている。この爪部212は、図7に示すように、水平状態に揺動した場合に底蓋21Aの揺動端を下から支えるように水平状態の底蓋21Aに係止される。一方、爪部212は、図8に示すように、斜め下方に揺動した場合に底蓋21Aの揺動端との係合が外れて底蓋21Aを自重で下向きに揺動できるようにする。底蓋21Aが自重で下向きに揺動した状態で、容器本体21の底部が開放される。
【0043】
開口部21Bは、図7および図8に示すように、容器本体21の筒状部分から上方に漸次窄まるように形成された蓋部材21Cにおいて、最も窄まった上端が上方に開口して形成されている。開口部21Bは、容器本体21が貯水容器100の内部に配置された状態で、貯水容器100の上部開口101に向くように形成され、本実施形態では斜め上方に向けて形成されている。
【0044】
フレーム22は、容器本体21が取り付けられて容器本体21を支持するものである。フレーム22は、図5および図6に示すように、容器本体21の他側に配置されている。フレーム22は、左右一対の支柱部22Aと、各支柱部22Aを繋ぐ複数の補強部22Bと、底蓋21Aの開操作を行う蓋操作部22Cと、容器本体21側に固定される固定部22Dと、を有している。
【0045】
支柱部22Aは、容器本体21の下端から上方に延在して容器本体21よりも長く形成されて平行に配置されている。
【0046】
補強部22Bは、各支柱部22Aの間で各支柱部22Aの長さ方向の複数箇所に水平に設けられて、各支柱部22Aを連結する補強材として設けられている。
【0047】
蓋操作部22Cは、操作竿221と、竿止機構222と、を有している。
【0048】
操作竿221は、支柱部22Aと同等の長さに形成され、各支柱部22Aの間で各支柱部22Aと平行に配置され、かつ左右一対有して互いに平行に配置されている。各操作竿221は、各補強部22Bを貫通して設けられ、各補強部22Bに対して上下方向に移動可能で、かつ上下方向の軸の廻りに回転可能に設けられている。各操作竿221は、図7および図8に示すように、その下端に外径が大きく形成された円板状の係止部221aが取り付けられている。各操作竿221は、その下端部が上述した爪部212に設けられた切欠溝214に挿入され、係止部221aが爪部212の下側に位置して切欠溝214から抜け止めされる。従って、図7に示すように、各操作竿221が上方に移動した場合は、係止部221aが爪部212を押し上げて水平状態とし、この爪部212が水平状態の底蓋21Aの揺動端に係止する。これにより、底蓋21Aが容器本体21の底部を閉塞する水平状態で支持される。一方、図8に示すように、各操作竿221が下方に移動した場合は、係止部221aが爪部212を支えなくなり爪部212が斜め下方に揺動するため、底蓋21Aを自重で下向きに揺動できるようにする。これにより、底蓋21Aが自重で下向きに揺動し、容器本体21の底部が開放される。
【0049】
竿止機構222は、各操作竿221が上方に移動した状態において、各操作竿221の下方への移動を阻止したり、各操作竿221の下方への移動を許容したりするものである。竿止機構222は、図9および図10に示すように、それぞれの操作竿221に設けられており、支柱部22Aにおける下端以外の補強部22Bに設けられた鍵穴222aと、鍵穴222aに挿入または抜け止めされる鍵部222bと、鍵部222bが鍵穴222aに挿入した場合に操作竿221の下方への脱落を阻止する脱落防止部222cと、を有している。鍵部222bは、操作竿221の途中に固定されている。脱落防止部222cは、鍵部222bの上端部に設けられて鍵部222bと共に操作竿221の途中に固定されている。鍵部222bは、鍵穴222aの開口形状と同じ外形を有して鍵穴222aに挿入できるが、上下方向の軸の廻りの回転位置により鍵穴222aに挿入できなくなる。このため、鍵部222bは、図9に示すように、操作竿221の上下方向の軸の廻りの回転により鍵穴222aに対して抜け止めされて挿入できない。この形態で、操作竿221が下方に移動できず、図7に示すように、操作竿221の係止部221aが爪部212を押し上げて水平状態とし、底蓋21Aが容器本体21の底部を閉塞する水平状態で支持される。一方。鍵部222bは、図10に示すように、操作竿221の上下方向の軸の廻りの回転により鍵穴222aに挿入される。このとき、脱落防止部222cが鍵穴222aには挿入されず操作竿221の下方への脱落を阻止する。この形態で、操作竿221が所定範囲で下方に移動でき、図8に示すように、爪部212が斜め下方に揺動した状態とし、底蓋21Aが自重で下向きに揺動し、容器本体21の底部が開放される。
【0050】
固定部22Dは、支柱部22Aにおける上端の補強部22Bと共に支柱部22Aの上端に固定されている。固定部22Dは、図11に示すように、容器本体21の上方に位置するように水平方向に延在する板材であり、取付穴223が複数(本実施形態では2個)形成されている。各取付穴223は、貯水容器100における上部開口101のフランジ102に形成された取付穴102a(図14参照)に一致するように設けられている。従って、固定部22Dは、各取付穴223を取付穴102aに一致させ、ボルトを介してフランジ102に固定される。固定部22Dがフランジ102に固定されることで、フレーム22と共に容器本体21が貯水容器100に固定される。なお、上端の補強部22Bには、各操作竿221が貫通して設けられており、各操作竿221の上端において係合部221bが形成されている。係合部221bは、例えば、ボルト頭部と同様な6角柱にて形成され、レンチなどの工具により回転させることができ、これにより操作竿221が回転し、底蓋21Aの開放操作が行われる。従って、本実施形態での線量低減用収納容器2において、蓋操作部22Cは、貯水容器100の外側であって上部開口101のフランジ102に固定される固定部22Dの位置で底蓋21Aの開放操作を行うことができる。なお、固定部22Dは、図11に示すように、例えばアイボルト224が取り付けられてクレーンで吊ってもよい。
【0051】
このような構成の線量低減用収納容器2を貯水容器100に配置する工程について説明する。線量低減用収納容器2は、図には明示しないが、例えば、フレーム22の上端の補強部22Bにワイヤを結びつけ、このワイヤを介してクレーンで吊られる。そして、図12に示すように、容器本体21は、フレーム22に固定されている状態で貯水容器100の上部開口101から貯水容器100の内部に挿入される。容器本体21の全体が貯水容器100の内部に挿入されたら、その状態でフレーム22を上部開口101の開口範囲内で横方向に移動させる。移動させる方向は、図13および図14に示すように、固定部22Dのフレーム22からの延在方向であり、固定部22Dがフランジ102に重なる方向であって、固定部22Dの下方に配置される容器本体21が上部開口101の開口範囲の外側に至る方向である。このように移動した位置において、図13および図14に示すように固定部22Dをフランジ102に固定する。従って、容器本体21は、貯水容器100の内部に挿入されつつ、貯水容器100の上部開口101の開口範囲からほぼ外れた位置で固定される。この状態で、容器本体21は、その上端の開口部21Bが貯水容器100の上部開口101に向いて配置される。
【0052】
なお、図には明示しないが、上部開口101から貯水容器100の内部を確認するために貯水容器100の内部にカメラを配置してもよい。また、容器本体21の内部を確認するために容器本体21の内部にカメラを配置してもよい。
【0053】
ところで、貯水容器100の上方の天井が低くかったり、容器本体21の長さが長かったりすることで、上述したように線量低減用収納容器2を設置する際に、上部開口101の上に容器本体21を立てた形態で挿入することができない場合がある。このような場合を想定し、本実施形態の線量低減用収納容器2は、フレーム22を長さ方向(上下方向)で分割できるように構成している。
【0054】
図15に示すように、フレーム22は、その上下方向の途中において一対の支柱部22Aがそれぞれ上支柱部22Aaと下支柱部22Abとに上下に分割して形成されている。上支柱部22Aa側をフレーム延長部といい、下支柱部22Abをフレーム本体部という。フレーム延長部において、一対の上支柱部22Aaの下端は、補強部22Bが設けられている。各上支柱部22Aaの上端は、上述したフレーム22の上端と同一の構成である。上支柱部22Aaの下端の補強部22Bは、複数(ここでは3個)の取付穴22Baが形成されている。一方、フレーム本体部において、一対の下支柱部22Abの上端は、補強部22Bが設けられている。各下支柱部22Abは、容器本体21が固定され、各下支柱部22Abの下端は、上述したフレーム22の下端と同一の構成である。下支柱部22Abの上端の補強部22Bは、複数(ここでは3個)の取付穴22Baが形成されている。従って、分割されたフレーム22において、上支柱部22Aaの下端の補強部22Bと、下支柱部22Abの上端の補強部22Bとは、互いの取付穴22Baを重ね合わせてボルトを介して連結される。
【0055】
また、フレーム22の分割に伴い、蓋操作部22Cも操作竿221が上下に分割して形成されている。上支柱部22Aaと共に分割された操作竿221は、上支柱部22Aaの下端の補強部22Bの貫通穴22Bbを貫通するように形成されて、その下端に連結部材221cが設けられている。一方、下支柱部22Abと共に分割された操作竿221は、上支柱部22Aaの下端の補強部22Bの貫通穴22Bbを貫通するように形成されて、その上端に連結部221dが形成されている。連結部221dは、連結部材221cと互いに連結する。具体的に、連結部221dは、キー溝として形成され、これが連結部材221cに係合して連結する。連結部材221cと連結部221dとにより分割された操作竿221が連結されると、上支柱部22Aaの上端側で回転操作された上側の操作竿221の回転が下側の操作竿221に伝達される。また、下支柱部22Abの上端の補強部22Bにおいて竿止機構222が設けられている。従って、下側の操作竿221に回転が伝達されることで竿止機構222を作動させることができる。
【0056】
このように、フレーム22を分割した線量低減用収納容器2は、図16に示すように、下支柱部22Abの上端の補強部22Bの取付穴22Baに、例えばアイボルト22Eを取り付け、このアイボルト22Eを用いてクレーンで吊ってもよい。そして、図17に示すように、容器本体21は、フレーム22に固定されている状態で貯水容器100の上部開口101から貯水容器100の内部に挿入される。容器本体21が貯水容器100の内部に挿入されたら、その状態で図16に示すように下支柱部22Abの上端の補強部22Bの下側に仮受棒22Fを挿入し、この仮受棒22Fの両端を貯水容器100における上部開口101のフランジ102に掛ける。これにより、分割したフレーム22の下側が貯水容器100の内部に挿入された容器本体21を伴って仮止めされる。その後、アイボルト22Eを取り除き、分割したフレーム22の下側にフレーム22の上側を上記の如く連結させる。その後は、例えば上側のフレーム22の上端の補強部22Bをクレーンで吊ってもよく、図12図14に示して説明したように、同様に容器本体21の全体を貯水容器100の内部に挿入させ、その状態でフレーム22を上部開口101の開口範囲内で横方向に移動させ、固定部22Dをフランジ102に固定する。
【0057】
線量低減装置1について、図18図21に示すように、上述した線量低減用収納容器2と、吸引吐出装置3と、を有している。
【0058】
吸引吐出装置3は、貯水容器100に収容されている放射性物質110を貯水容器100の水中Wから吸引し貯水容器100の内部に配置された線量低減用収納容器2における容器本体21に吐出するものであり、図18に示すように、ポンプ31と、吸引管32と、吐出管33と、を含む。
【0059】
ポンプ31は、気中ポンプ方式、水中ポンプ方式、エゼクター方式などを適用することができる。図18図21では、気中ポンプ方式のポンプ31を示す。
【0060】
吸引管32は、一端がポンプ31に接続され、他端が貯水容器100の水中Wに挿入される。吸引管32は、ポンプ31との間に開閉弁32aが設けられている。
【0061】
吐出管33は、一端がポンプ31に接続され、他端が線量低減用収納容器2における容器本体21に挿入される。吐出管33は、ポンプ31との間に開閉弁33aが設けられている。
【0062】
従って、本実施形態の吸引吐出装置3は、貯水容器100の水中Wから吸引管32、ポンプ31、吐出管33を経て貯水容器100の内部の容器本体21に至る吸引吐出系統34が形成されている。
【0063】
また、本実施形態の吸引吐出装置3は、吸引吐出系統34を呼び水で満たすためや、吸引吐出系統34の洗浄を行うため、給水系統35を含んでいる。給水系統35は、給水管35Aと、外部給水管35Bと、を有する。給水管35Aは、一端が吸引管32における開閉弁32aとポンプ31との間に接続され、他端が吐出管33における開閉弁33aとポンプ31との間に接続されている。給水管35Aは、一端側および他端側にそれぞれ開閉弁35Aa,35Abが設けられている。外部給水管35Bは、給水管35Aの開閉弁35Aa,35Abの間に接続されている。外部給水管35Bは、二次系純水が供給される管である。外部給水管35Bは、開閉弁35Baが設けられている。また、外部給水管35Bは、二次系純水の水圧を吸引吐出系統34で許容される水圧に減圧するための減圧機構35Bbが設けられている。
【0064】
この吸引吐出装置3は、吸引吐出系統34を稼働する準備として、吸引吐出系統34を呼び水で満たす。この場合、図19に示すように、外部給水管35Bの開閉弁35Ba、給水管35Aの吐出管33側の開閉弁35Ab、および吐出管33の開閉弁33aを開状態とし、他を閉状態とする。これにより、外部給水管35Bから二次系純水が供給され給水管35A全体および吐出管33が二次系純水で満たされる。さらに、図20に示すように、外部給水管35Bの開閉弁35Ba、給水管35Aの吸引管32側の開閉弁35Aa、および吸引管32の開閉弁32aを開状態とし、他を閉状態とする。これにより、外部給水管35Bから二次系純水が供給され給水管35A全体および吸引管32が二次系純水で満たされる。図19および図20では、それぞれ吐出管33側と吸引管32側とに個別に呼び水を供給しているが、全ての開閉弁32a,33a,35Aa,35Ab,35Baを開状態としてまとめて吐出管33側および吸引管32側に呼び水を供給してもよい。吐出管33側および吸引管32側に呼び水を供給した後は、図21に示すように、開閉弁32a,33aのみを開状態として吸引吐出系統34を機能させ、給水系統35の機能を停止させる。その後、吸引吐出装置3を稼働させ、図2に示すように線量低減装置1によって貯水容器100の水中Wから放射性物質110を吸引して線量低減用収納容器2の容器本体21に吐出する。この場合、放射性物質110を吸引しやすいように、貯水容器100の水中Wに挿入される吸引管32の他端側を硬質の管で構成することが好ましい。
【0065】
また、線量低減用収納容器2の容器本体21に貯水容器100の水中Wの放射性物質110を移動させた後は、図19および図20に示す操作を行い、吸引吐出系統34を逆洗浄する。
【0066】
このように、本実施形態の線量低減用収納容器2は、貯水容器100に水と共に収容された放射性物質110を収納可能に設けられかつ底部を開閉する底蓋21Aを有した容器本体21と、容器本体21を支持するフレーム22と、を備えている。そして、容器本体21は、貯水容器100に形成された上部開口101から挿入され、フレーム22は、容器本体21が貯水容器100の内部に挿入された状態で所定の位置(上部開口101の開口範囲内で横方向に移動した位置)に配置される。
【0067】
この線量低減用収納容器2によれば、容器本体21が貯水容器100の内部に挿入されつつ、貯水容器100の上部開口101の開口範囲からほぼ外れた位置で固定される。このため、上部開口101から貯水容器100の内部を確認したり、吸引吐出装置3を上部開口101から貯水容器100の内部に設置したりする作業において容器本体21が妨げになることがない。しかも、同構成の他の線量低減用収納容器2を貯水容器100の内部に挿入する場合において先に挿入した容器本体21が妨げになることがない。さらに、作業領域Sが貯水容器100の周側部100b寄りである場合に、この作業領域Sから容器本体21を横方向により遠ざけるように配置することができる。この結果、貯水容器100周辺の作業領域Sにおける線量を低減することができる。
【0068】
また、本実施形態の線量低減用収納容器2では、貯水容器100の外側から底蓋21Aの開操作を行う蓋操作部22Cを有することが好ましい。
【0069】
この線量低減用収納容器2によれば、底蓋21Aの開操作を貯水容器100の外側から行うことで、線量低減用収納容器2の容器本体21から放射性物質110を排出する操作を遠隔で行うことができる。この結果、放射性物質110の排出を安全かつ容易に行うことができる。
【0070】
また、本実施形態の線量低減用収納容器2では、容器本体21は、上方に漸次窄まる蓋部材22Cと、蓋部材22Cの窄まった上端に形成された開口部21Bとが形成されていることが好ましい。
【0071】
この線量低減用収納容器2によれば、吸引吐出装置3を開口部21Bから容器本体21の内部に設置したりする作業を容易に行うことができる。また、開口部21Bから容器本体21の内部に移動された放射性物質110が上方に漸次窄まる蓋部材22Cで上方に跳ね返ったり飛び散ったりすることを防止できる。なお、開口部21Bが貯水容器100の上部開口101に向いて配置されることで、容器本体21の内部を容易に確認することができる。
【0072】
また、本実施形態の線量低減用収納容器2では、フレーム22は、容器本体21が固定された下支柱部22Ab側のフレーム本体部と、フレーム本体部に連結または分離が可能に設けられた上支柱部22Aa側のフレーム延長部と、を有し、フレーム本体部にフレーム延長部を連結することで上下方向に延長して構成されることが好ましい。
【0073】
この線量低減用収納容器2によれば、貯水容器100の上方の天井が低くかったり、容器本体21の長さが長かったりしても、上部開口101の上に容器本体21を立てた形態で容器本体21を挿入することができる。
【0074】
また、本実施形態の線量低減用収納容器2では、貯水容器100は、上部開口101の外周に設けられてボルトを介して蓋103が固定されるフランジ102が設けられており、フレーム22は、フランジ102にボルトを介して固定される固定部22Dを有することが好ましい。
【0075】
この線量低減用収納容器2によれば、貯水容器100に予めあるフランジ102を利用してフレーム22を固定し、容器本体21を設置することができる。このため、別途フレーム22を固定するための固定部材を用意する必要がなく、作業における物量が増大せず作業コストの増大を抑制することができる。
【0076】
本実施形態の線量低減装置1は、上述した線量低減用収納容器2と、貯水容器100に収容されている放射性物質110を貯水容器100の水中Wから吸引し線量低減用収納容器2における容器本体21に吐出する吸引吐出装置3と、を備える。
【0077】
この線量低減装置1によれば、貯水容器100の水中Wにおいて放射性物質110の移動を容易かつ確実に行う。この結果、貯水容器100周辺の作業領域Sにおける線量を低減することができる。
【0078】
また、本実施形態の線量低減方法は、上述した線量低減装置1を用いて上述した線量低減方法を実施することで、貯水容器100の水中Wにおいて放射性物質110の移動、および排出を容易かつ確実に行う。この結果、貯水容器100周辺の作業領域Sにおける線量を低減することができ、作業領域Sでの作業を安全に行うことができる。
【0079】
また、本実施形態の線量低減方法は、上述した線量低減装置1の線量低減用収納容器2を複数用い、保持工程は、作業領域Sから遠ざかる貯水容器100の水中Wに各線量低減用収納容器2の容器本体21を配置することが好ましい。
【0080】
具体的には、上述した線量低減用収納容器2において、容器本体21が貯水容器100の内部に挿入されつつ、貯水容器100の上部開口101の開口範囲からほぼ外れた位置で固定されるため、同構成の他の線量低減用収納容器2を貯水容器100の内部に挿入する場合において先に挿入した容器本体21が妨げになることがない。そして、保持工程において、作業領域Sから遠ざかる貯水容器100の水中Wに各線量低減用収納容器2の容器本体21を配置することで、各線量低減用収納容器2の容器本体21に放射性物質110を分けて収納することで、各容器本体21を小型化し、例えば、貯水容器100の底部100a付近の作業領域Sからより遠ざけることができる。また、複数の線量低減用収納容器2の容器本体21により多くの放射性物質110を収納することができる。この結果、貯水容器100周辺の作業領域Sにおける線量をより低減することができる。なお、容器本体21は、上記構成に限らず、網状袋で構成された簡易的なものを含み、この網状袋を用いることで細かい放射性物質110を収納することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 線量低減装置
2 線量低減用収納容器
3 吸引吐出装置
4 仮蓋
21 容器本体
21A 底蓋
211 軸
212 爪部
213 軸
214 切欠溝
21B 開口部
21C 蓋部材
22 フレーム
22A 支柱部
22Aa 上支柱部(フレーム延長部)
22Ab 下支柱部(フレーム本体部)
22B 補強部
22Ba 取付穴
22Bb 貫通穴
22C 蓋操作部
221 操作竿
221a 係止部
221b 係合部
221c 連結部材
221d 連結部
222 竿止機構
222a 鍵穴
222b 鍵部
222c 脱落防止部
22D 固定部
223 取付穴
224 アイボルト
22E アイボルト
22F 仮受棒
31 ポンプ
32 吸引管
32a 開閉弁
33 吐出管
33a 開閉弁
34 吸引吐出系統
35 給水系統
35A 給水管
35Aa,35Ab 開閉弁
35B 外部給水管
35Ba 開閉弁
35Bb 減圧機構
100 貯水容器
100a 底部
100b 周側部
101 上部開口
102 フランジ
102a 取付穴
103 蓋
104 脚
105 床面
106 足場
110 放射性物質
S 作業領域
W 水中
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21