(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】放射線治療支援装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
A61N5/10 M
A61N5/10 P
(21)【出願番号】P 2018136452
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】市橋 正英
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-160307(JP,A)
【文献】特表2014-528767(JP,A)
【文献】特開2006-075411(JP,A)
【文献】特開2011-000301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に関し放射線治療計画のための第1の医用画像と、前記放射線治療計画から放射線照射までの間における前記患者に関する第2の医用画像との画像照合に基づいて前記患者の位置ずれを評価する位置ずれ指標を算出する算出部と、
前記算出された位置ずれ指標に基づいて、ユーザが行う放射線治療に係る作業をガイドするためのガイド情報を生成するガイド情報生成部と、
前記ガイド情報を表示する表示部と、
を具備し、
前記算出部は、前記患者の病変部位及び他の解剖学的部位のうちの複数の照合対象について複数の位置ずれ指標を算出し、
前記ガイド情報生成部は、前記複数の位置ずれ指標から推定される位置ずれの原因に応じたセットアップ作業を前記作業として特定し、前記セットアップ作業をガイドするための前記ガイド情報を生成し、
前記セットアップ作業は、前記患者のセットアップに使用するアクセサリと当該アクセサリに対する術者の行動との組合せにより規定される、
放射線治療支援装置。
【請求項2】
前記ガイド情報生成部は、前記
複数の照合対象毎に算出された
前記複数の位置ずれ指標の一覧を前記ガイド情報として生成する、請求項
1記載の放射線治療支援装置。
【請求項3】
位置ずれ指標と
当該位置ずれ指標に対応する作業の候補とを関連付けて記憶する記憶部を更に備え、
前記ガイド情報生成部は、前記算出された
複数の位置ずれ指標に関連付けられ
た候補を決定し、前記決定され
た候補に応じた
前記ガイド情報を生成する、
請求項1ないし
2の何れか1項記載の放射線治療支援装置。
【請求項4】
前記作業は、前記放射線照射のための患者のセットアップ
作業と放射線治療作業の次工程
とを含む、請求項1ないし
3の何れか1項記載の放射線治療支援装置。
【請求項5】
前記算出された
複数の位置ずれ指標とユーザが実行した作業とを関連付けて記憶する記憶部を更に備える、請求項1ないし
4の何れか1項記載の放射線治療支援装置。
【請求項6】
前記
複数の位置ずれ指標は、前記第1の医用画像と前記第2の医用画像との間における前記患者の輝度値、輝度値のヒストグラム若しくは形状の一致度又は一致度の分散である、請求項1ないし
5の何れか1項記載の放射線治療支援装置。
【請求項7】
コンピュータに、
患者に関し放射線治療計画のための第1の医用画像と、前記放射線治療計画から放射線照射までの間における前記患者に関する第2の医用画像との画像照合に基づいて前記患者の位置ずれを評価する位置ずれ指標を算出する機能、
前記算出された位置ずれ指標に基づいて、ユーザが行う放射線治療に係る作業をガイドするためのガイド情報を生成する機能、及び
前記ガイド情報をディスプレイに表示する機能、
を実現させるためのプログラムであって、
前記算出する機能は、前記患者の病変部位及び他の解剖学的部位のうちの複数の照合対象について複数の位置ずれ指標を算出し、
前記ガイド情報を生成する機能は、前記複数の位置ずれ指標から推定される位置ずれの原因に応じたセットアップ作業を前記作業として特定し、前記セットアップ作業をガイドするための前記ガイド情報を生成し、
前記セットアップ作業は、前記患者のセットアップに使用するアクセサリと当該アクセサリに対する術者の行動との組合せにより規定される、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、放射線治療支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
放射線治療において、放射線照射直前に治療部位が正しい位置に配置されているか否かを確認するために画像照合が行われている。例えば、患者の腫瘍付近に関する治療計画用のCT画像と放射線照射直前におけるCT画像との画像照合結果を参照して、術者が患者のセットアップ作業を行っている。
【0003】
しかしながら、画像照合結果を受けてどのようにセットアップ作業を行うかの判断は術者に委ねられており、同様の画像照合結果であっても、実施されるセットアップ作業は術者によって異なる場合がある。また、位置ずれが大きい場合、患者の位置補正をして治療をするか、放射線照射直前におけるCT画像を撮影するか、あるいは、再計画からやり直すかの判断が必要になる。この判断は、患者の被曝量に大きな影響を与えることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-92号公報
【文献】特開2016-39878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明が解決しようとする課題は、術者等のユーザによる放射線治療に係る作業のばらつきを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る放射線治療支援装置は、患者に関し放射線治療計画のための第1の医用画像と、前記放射線治療計画から放射線照射までの間における前記患者に関する第2の医用画像との画像照合に基づいて前記患者の位置ずれを評価する位置ずれ指標を算出する算出部と、前記算出された位置ずれ指標に基づいて、ユーザが行う放射線治療に係る作業をガイドするためのガイド情報を生成するガイド情報生成部と、前記ガイド情報を表示する表示部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る放射線治療システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の放射線治療支援装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2のメモリに記憶されているガイドテーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図2の処理回路により行われる放射線治療支援の典型的な流れを示す図である。
【
図5】
図5は、
図4のステップS4において表示されるガイド情報の表示画面の一例である。
【
図6】
図6は、
図3に示すガイドテーブルの応用例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図3に示すガイドテーブルの他の応用例を示す図である。
【
図8】
図8は、複数の照合対象に関する複数の位置ずれ指標の一覧を含む表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る放射線治療支援装置及びプログラムを説明する。
【0009】
放射線治療支援装置は、放射線治療を支援するために用いられるコンピュータである。放射線治療支援装置は、放射線治療に係る複数の装置により構成される放射線治療システムに含まれる。
【0010】
図1に示すように、放射線治療システム100は、放射線治療支援装置1、治療計画用画像撮影装置2、治療計画装置3、放射線治療情報管理システム(OIS: Oncology Information System)4、治療当日画像撮影装置5及び放射線治療装置6を有する。放射線治療支援装置1、治療計画用画像撮影装置2、治療計画装置3、放射線治療情報管理システム4、治療当日画像撮影装置5及び放射線治療装置6は、互いにネットワークを介して通信可能に接続されている。
【0011】
治療計画画像撮影装置2は、治療対象の患者に医用撮像を施して、治療計画に使用する医用画像を生成する。以下、治療計画に使用するための医用画像を治療計画画像と呼ぶ。治療計画画像は、2次元状に配列されたピクセルにより構成される2次元画像でもよいし、3次元状に配列されたボクセルにより構成される3次元画像でもよい。治療計画画像撮影装置2は、治療計画画像を生成可能な如何なるモダリティ装置であってもよい。モダリティ装置としては、例えば、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、コーンビームCT装置、核医学診断装置等が挙げられる。治療計画画像のデータは、例えば、治療計画装置3に送信される。
【0012】
治療計画装置3は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、ディスプレイ、入力インタフェース、通信インタフェースを含むコンピュータを有する。治療計画装置3は、治療計画画像を利用して治療対象の患者の治療計画を作成する。治療計画に含まれるパラメータとしては、放射線治療の照射方向数や各照射角度、各照射の放射線強度、各照射のコリメータ開度等が含まれる。治療計画装置3は、治療計画画像に基づいて腫瘍や臓器の位置及び形状を特定し、各種の治療計画パラメータを決定する。この際、腫瘍に照射する線量はできる限り多く、正常組織への線量はできる限り小さくなるような治療計画が作成される。治療計画のデータは、放射線治療情報管理システム4に供給される。
【0013】
放射線治療情報管理システム4は、治療計画装置3や放射線治療装置6等と連携して放射線治療に関する情報を管理するコンピュータシステムである。放射線治療情報管理システム4は、汎用のコンピュータ又はワークステーションが備えるプロセッサ、メモリ、入力機器、ディスプレイ、通信機器及び記憶装置を備える。例えば、放射線治療情報管理システム4は、治療計画画像撮影装置2により生成された治療計画画像や治療計画装置3により作成された治療計画等を管理する。
【0014】
治療当日画像撮影装置5は、治療対象の患者に医用撮像を施して、患者の位置決めのための医用画像を生成する。治療当日画像撮影装置5は、例えば、放射線治療装置6による放射線照射の当日であって放射線照射直前において、放射線治療装置6の治療用寝台に載置された患者に医用撮像を施す。以下、治療当日画像撮影装置5により生成される医用画像を治療当日画像と呼ぶ。治療当日画像は、2次元状に配列されたピクセルにより構成される2次元画像でもよいし、3次元状に配列されたボクセルにより構成される3次元画像でもよい。治療当日画像撮影装置5は、治療当日画像を生成可能な如何なるモダリティ装置であってもよい。モダリティ装置としては、例えば、X線コンピュータ断層撮影装置、磁気共鳴イメージング装置、コーンビームCT装置、核医学診断装置等が挙げられる。典型的には、治療当日画像撮影装置5と治療計画画像撮影装置2とは同種のモダリティ装置が用いられる。治療当日画像のデータは、例えば、放射線治療支援装置1に送信される。
【0015】
放射線治療装置6は、治療計画装置3により作成された治療計画に従い患者に放射線を照射して患者を治療する。放射線治療装置6は、治療室に設けられた治療架台と治療寝台とを有する。治療寝台は、患者の治療部位がアイソ・センタに略一致するように天板を移動する。治療架台は、回転軸回りに回転可能に照射ヘッド部を支持する。照射ヘッド部は、放射線治療情報管理システム4から供給された治療計画に従い放射線を照射する。具体的には、照射ヘッド部は、多分割絞り(マルチリーフコリメータ)により照射野を形成し、当該照射野により正常組織への照射を抑える。治療部位に放射線が照射されることにより当該治療部位が消滅又は縮小する。
【0016】
放射線治療支援装置1は、放射線治療装置6が設置される治療室又は治療室に隣接する制御室に設置される。放射線治療支援装置1は、治療計画画像と治療当日画像との画像照合結果に応じた、放射線治療に係る作業をガイドするためのガイド情報を出力するコンピュータである。
【0017】
図2に示すように、放射線治療支援装置1は、処理回路11、メモリ13、入力インタフェース15、通信インタフェース17及びディスプレイ19を有する。
【0018】
処理回路11は、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサを有する。当該プロセッサがメモリ13等にインストールされた放射線治療支援プログラムを起動することにより、当該プロセッサは、画像照合機能111、ガイド情報生成機能112、テーブル更新機能113及び表示制御機能114を実現する。なお、各機能111-114は単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能111-114を実現するものとしても構わない。
【0019】
画像照合機能111において処理回路11は、治療対象の患者に関する治療計画画像と治療当日画像との画像照合に基づいて当該患者の位置ずれを評価する位置ずれ指標を算出する。位置ずれ指標は、患者領域全体及び患者領域の部分領域等の照合対象毎に算出される。部分領域としては、患者の解剖学的部位、治療対象である腫瘍等の病変部位の何れでもよく、その両方でもよい。照合対象は、少なくとも1つ設定される。位置ずれ指標は、治療計画画像と治療当日画像との間における照合対象間の位置ずれを評価可能な如何なる指標にも適用可能である。具体的には、位置ずれ指標としては、照合対象に関する治療計画画像と治療当日画像との特徴量の一致度又は一致度の分散(散らばり度合い)に設定される。特徴量としては、例えば、照合対象の輝度値、照合対象の輝度値のヒストグラム、照合対象の形状である。一致度は、例えば、照合対象に関する治療計画画像と治療当日画像との特徴量の差分や比率等に規定される。
【0020】
ガイド情報生成機能112において処理回路11は、画像照合機能111により算出された位置ずれ指標に基づいて、術者等のユーザが行う放射線治療に係る作業(以下、放射線治療作業と呼ぶ)をガイドするためのガイド情報を生成する。放射線治療作業は、治療計画画像撮影装置2による治療計画画像の撮影、治療計画装置3による治療計画の作成、治療当日画像撮影装置5による治療当日画像の撮影及び放射線治療装置6による放射線照射に係る作業を包含する。具体的には、処理回路11は、画像照合機能111により算出された位置ずれ指標を、メモリ13に記憶されたガイドテーブル131に適用してガイド情報を生成する。ガイドテーブル131は、少なくとも位置ずれ指標と当該位置ずれ指標に対応する放射線治療作業の識別子とを関連付けたLUT(Look Up Table)又はデータベースである。
【0021】
図3に示すように、ガイドテーブル131は、入力項目と出力項目とを有する。入力項目としては、位置ずれ指標の条件が含まれる。位置ずれ指標の条件としては、出力項目に該当する放射線治療作業に対応する位置ずれ指標の条件が登録される。当該条件は、具体的には、複数の照合対象の一致度及び一致度の分散に関する条件の組合せである。出力項目としては、入力項目に登録された位置ずれ指標の条件を満たしたときに実行が推奨されるセットアップ作業の識別子と放射線治療作業の次工程の識別子とが含まれる。セットアップ作業は、セットアップに使用する対象物(アクセサリ)と術者の行動との組合せにより規定される。放射線治療作業の工程は、例えば、位置ずれがない場合に次に行われる放射線照射を実行する否かの判断と、放射線照射を実行しない場合に推奨される放射線作業(再撮影等)とを含む。識別子は、セットアップ作業や工程を示す文字でもよいしコードでもよい。出力項目には、過去に実際に行われた事柄が入力されてもよいし、ユーザが考案した事柄が入力されてもよい。
【0022】
例えば、脳腫瘍の患者に対してヘッドレストが装着される場合を想定する。治療当日画像の撮影時においてヘッドレストの装着に不具合がある場合、頭部に関連する腫瘍領域、脳領域及び頭蓋骨については一致度が低く、頭部に関連しない肺野及び脊髄等の体幹部については一致度が高いと考えられる。従って、
図3に示すように、腫瘍領域の一致度が70%以下、肺野の一致度が70%以上、脊髄の一致度が70%以上、脳領域の一致度が70%以下、且つ頭蓋骨の一致度が70%以下の条件に対して、セットアップ作業の対象物として「ヘッドレスト」、セットアップ作業の行動として「交換」、放射線治療の工程として「照射不可」及び「再撮影」が関連付けられる。
【0023】
また、例えば、脳腫瘍の患者が普段入れ歯を装着している場合を想定する。治療当日画像の撮影時において入れ歯を外し忘れた場合、頭蓋骨の一致度が高く且つ一致度の分散が大きいと考えられる。ある部分領域の一部分の一致度が高く他の部分の一致度が低い場合、当該部分領域全体の一致度は平均化されるが分散が大きくなるためである。従って、例えば、
図3に示すように、腫瘍領域の一致度が70%以上で分散が40以下、肺野の一致度が70%以上で分散が40以下、且つ頭蓋骨の一致度が70%以下で分散が80以上の条件に対して、セットアップ作業の対象物として「入れ歯」、セットアップ作業の行動として「取り外し」、放射線治療の工程として「照射不可」及び「再撮影」が関連付けられる。
【0024】
テーブル更新機能113において処理回路11は、ガイドテーブル131に対して内容の追加、削除及び変更等の更新を行う。例えば、処理回路11は、入力インタフェース15を介してユーザの指示に従い更新を行う。
【0025】
表示制御機能114において処理回路11は、種々の情報をディスプレイ19に表示する。例えば、処理回路11は、ガイド情報生成機能112により生成されたガイド情報をディスプレイ19に表示する。
【0026】
メモリ13は、種々の情報を記憶するROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。メモリ13は、上記記憶装置以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬型記憶媒体や、半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、メモリ13は、放射線治療支援装置1にネットワークを介して接続された他のコンピュータ内にあってもよい。例えば、メモリ13は、プログラムやガイドテーブル131を記憶する。
【0027】
入力インタフェース15は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路11に出力する。具体的には、入力インタフェース15は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の入力機器に接続されている。入力インタフェース15は、当該入力機器への入力操作に応じた電気信号を処理回路11へ出力する。また、入力インタフェース15に接続される入力機器は、ネットワーク等を介して接続された他のコンピュータに設けられた入力機器でもよい。
【0028】
通信インタフェース17は、放射線治療システム100に含まれる他の装置との間でデータ通信するためのインタフェースである。例えば、通信インタフェース17は、PACSからネットワークを介して、治療計画装置3又は治療計画画像撮影装置2から治療計画画像を受信し、治療当日画像撮影装置5から治療当日画像を受信する。
【0029】
ディスプレイ19は、処理回路11の表示制御機能114に従い種々の情報を表示する。例えば、ディスプレイ19は、ガイド情報生成機能112により生成されたガイド情報を表示する。ディスプレイ19としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが適宜使用可能である。
【0030】
以下、放射線治療支援装置1の動作例について説明する。
【0031】
図4は、プログラムに従い処理回路11により行われる放射線治療支援の典型的な流れを示す図である。
図4に示すように、まず、処理回路11は、通信インタフェース17を介して、治療対象の患者に関する治療計画画像を治療計画画像撮影装置2又は治療計画装置3から取得し、当該患者に関する治療当日画像を治療当日画像撮影装置5から取得する(ステップS1)。
【0032】
ステップS1が行われると処理回路11は、画像照合機能111を実行し、治療計画画像と治療当日画像との画像照合に基づいて位置ずれ指標を算出する(ステップS2)。ステップS2において処理回路11は、照合対象毎に位置ずれ指標を算出する。照合対象は、ユーザにより入力インタフェース15を介して任意に設定されてもよいし、自動的に設定されてもよいし、画像処理により自動的に分類されてもよい。
【0033】
具体的には、処理回路11は、照合対象に関する治療計画画像と治療当日画像との特徴量を算出する。上記の通り、特徴量としては、例えば、照合対象の輝度値が設定される。この場合、処理回路11は、特徴量として、治療計画画像と治療当日画像との各々について、照合対象を構成する画素の輝度値の平均値や最頻値等の任意の統計値を算出する。照合対象の輝度値のヒストグラムが特徴量に設定された場合、処理回路11は、治療計画画像と治療当日画像との各々について、照合対象の輝度値のヒストグラムを生成する。ヒストグラムは、例えば、横軸が輝度値、縦軸が頻度に規定された輝度値の分布図である。照合対象の形状が特徴量に設定された場合、処理回路11は、まず、治療計画画像と治療当日画像との各々について照合対象を抽出する。抽出は、閾値処理や画像認識処理、機械学習等の任意の手法により行われればよい。次に処理回路11は、抽出された照合対象のエッジ領域を検出する。検出されたエッジ領域が照合対象の形状として用いられる。
【0034】
特徴量が算出されると処理回路11は、照合対象各々について治療計画画像の特徴量と治療当日画像の特徴量との一致度を算出する。一致度は、特徴量の差分や比率に規定される。
【0035】
ステップS2が行われると処理回路11は、ガイド情報生成機能112を実行し、ステップS2において算出された位置ずれ指標に基づいてガイド情報を生成する(ステップS3)。
【0036】
ステップS3が行われると処理回路11は、表示制御機能114を実行し、ステップS3において生成されたガイド情報をディスプレイ19に表示する(ステップS4)。
【0037】
以下、ステップS3及びS4について具体的に説明する。ガイド情報としては、例えば、放射線治療作業に関するメッセージ(以下、ガイドメッセージと呼ぶ)が挙げられる。
【0038】
ステップS3において処理回路11は、治療計画画像と治療当日画像との画像照合に基づいて複数の照合対象各々について位置ずれ指標を算出する。具体的には、処理回路11は、治療計画画像と治療当日画像との各々に画像処理を施して複数の照合対象を抽出する。そして治療計画画像に由来する照合対象と治療当日画像に由来する同種の照合対象との特徴量の一致度及び一致度の分散が算出される。例えば、照合対象として、腫瘍領域、肺野、脊髄、脳及び頭蓋骨が設定された場合、腫瘍領域、肺野、脊髄、脳領域及び頭蓋骨の各々について一致度及び一致度の分散が算出される。
【0039】
ステップS4において処理回路11は、ガイドテーブル131を利用して、照合対象毎に算出された複数の位置ずれ指標から推定される位置ずれの原因に応じた放射線治療作業の候補を特定する。例えば、一致度が腫瘍領域について45%、肺野について82%、脊髄について87%、脳領域について56%、頭蓋骨について61%である場合、
図3のガイドテーブル131を利用して、セットアップ作業の対象物として「ヘッドレスト」、セットアップ作業の行動として「交換」、放射線治療の工程として「照射不可」及び「再撮影」が放射線治療作業の候補として特定される。そして処理回路11は、特定された候補に基づいてガイドメッセージを作成する。ガイドメッセージは、出力項目であるセットアップ作業の対象物及び行動と放射線治療の次工程との組合せに関連付けて予めテーブル等に用意されてもよいし、セットアップ作業の対象物及び行動と放射線治療の工程との組合せに基づいて自動的に生成されてもよい。処理回路11は、作成したガイドメッセージを、ガイド情報としてディスプレイ19に表示する。
【0040】
図5は、ガイド情報の表示画面IS1の一例である。
図5に示すように、表示画面IS1は画像表示領域R1とメッセージ表示領域R2とを有する。画像表示領域R1には、例えば、治療当日画像と治療計画画像との合成画像が表示される。メッセージ表示領域R2には、ステップS3において特定された放射線治療作業の候補に関するガイドメッセージが表示される。例えば、上記例の場合、「ヘッドレスト間違いの可能性がありますので確認して下さい。ヘッドレストを交換した場合は、再撮影を推奨します。」等のガイドメッセージが表示される。ユーザは、ガイドメッセージを確認することにより、位置ずれの原因を特定し、適切なセットアップ作業に取りかかることができる。また、合成画像を観察することにより、ガイドメッセージの信頼性を推し量ることもできる。なお、合成画像において照合対象が強調されてもよい。また、画像表示領域R1には、治療当日画像又は治療計画画像のみが表示されてもよい。なお、合成画像は、治療当日画像と治療計画画像とに基づき任意の手法により生成されればよい。例えば、処理回路11は、治療当日画像と治療計画画像とを位置合わせし、αブレンド等により各画素の合成後の輝度値を算出し、各画素に各合成後の輝度値を割り当てることにより合成画像を生成する。
【0041】
上記の通り、ステップS3において複数の照合対象の一致度及び分散が算出される。処理回路11は、複数の照合対象の一致度及び分散の大小関係を比較することにより、位置ずれが生じている部分を検出することが可能である。例えば、一致度が腫瘍領域について45%、肺野について82%、脊髄について87%、脳領域について56%、頭蓋骨について61%である場合、頭部の一致度は他の部分に比して低いので、頭部に位置ずれが生じていることを検出することができる。例えば、他のガイドテーブルとして、位置ずれが生じている部位と放射線治療作業の識別子とが関連付けられても良い。処理回路11は、検出された位置ずれ部位を検索キーとして当該他のガイドテーブルを検索し、当該位置ずれ部位に関連付けられた放射線治療作業を特定しても良い。処理回路11は、特定された放射線治療作業をガイド情報としてディスプレイ19に表示すると良い。例えば、位置ずれ部位として頭部が検出された場合、「ヘッドレスト間違いの可能性がありますので確認して下さい。ヘッドレストを交換した場合は、再撮影を推奨します。」等のガイドメッセージが表示される。
【0042】
他の例として、画像照合により頭部部分のみが傾いていることが検出された場合、処理回路11は、「患者の頭部部分をレーザーに合わせて下さい。過去の同様のケースでは、再撮影は実施しませんでした。」のガイドメッセージをディスプレイ19に表示する。画像照合により体位が全体的に傾いていることが検出された場合、処理回路11は、「セットアップを最初からやりなおしてください。再撮影を推奨します。」のガイドメッセージをディスプレイ19に表示する。また、全体的な一致度は高くないが、腫瘍近辺の一致度が高い場合、処理回路11は、「腫瘍近辺の一致度は87%です。過去のケースでは、そのまま治療を実施しました。」のガイドメッセージをディスプレイ19に表示する。
【0043】
なお上記例において処理回路11は、照合対象毎の位置ずれ指標から放射線治療作業の候補を推測するとした。しかしながら、より正確に放射線治療作業の候補を推測するため、位置ずれ指標に加え、他の追加要素が考慮されてもよい。追加要素としては、例えば、患者基本情報、患者のパフォーマンス情報、過去に記録したセットアップ作業、過去に使用した固定具情報、治療時の患者の体位が挙げられる。患者基本情報としては、年齢や伸長、体重、性別等が含まれる。患者パフォーマンス情報としては、自立歩行の可否、車椅子の使用の有無、杖の使用の有無、寝たきりか否か、入れ歯の有無等が含まれる。過去に記録したセットアップ作業としては、入れ歯の取り外し、顔の傾きの調整、腕の角度の調整、患者全体の位置のシフト等が含まれる。過去に使用した固定具情報としては、バイトブロック、ヘッドレスト、頭部シェル、胸部シェル、骨盤シェル、フットレスト、バックロック等が含まれる。治療時の患者の体位としては、伸身、両腕上げ、片腕上げ、足曲げ等が含まれる。これらの追加要素と位置ずれ指標の条件とを入力項目として、放射線治療作業を出力項目とするガイドテーブル131が生成されてもよい。
【0044】
図6は、
図3に示したガイドテーブル131の応用例を示す図である。
図6に示すように、ガイドテーブル131は、入力項目として、使用固定具、治療時体位、位置ずれ指標の条件を含む。入力項目として使用固定具と治療時体位とを更に考慮することにより、より適切なセットアップ作業を推定することが可能になる。例えば、頭部領域の一致度のみが低い場合であっても、使用固定具が不明であるとき、位置ずれの原因がヘッドレストにあるのか、頭部シェルにあるのか、あるいは他の要素にあるのか不明である。使用固定具が「ヘッドレスト」であり治療時体位が「伸身」であるときに位置ずれ指標条件を満たす場合、セットアップ作業の対象物が「ヘッドレスト」であることを高い確信度で推測することができる。
【0045】
図7は、
図3に示したガイドテーブル131の他の応用例を示す図である。
図7に示すように、ガイドテーブル131は、入力項目として、患者パフォーマンス情報、治療時体位、位置ずれ指標の条件を含む。入力項目として患者パフォーマンス情報と治療時体位とを更に考慮することにより、より適切なセットアップ作業を推定することが可能になる。例えば、患者パフォーマンス情報が「入れ歯」であり治療時体位が「伸身」であるときに位置ずれ指標条件を満たす場合、セットアップ作業の対象物が「入れ歯」であることを高い確信度で推測することができる。
【0046】
上記例においてガイド情報は、放射線治療作業の候補に関するガイドメッセージであるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。処理回路11は、ガイド情報として、ステップS2において算出された、複数の照合対象に関する複数の位置ずれ指標を一覧で表示してもよい。
【0047】
図8は、複数の照合対象に関する複数の位置ずれ指標の一覧を含む表示画面IS2の一例を示す図である。
図8に示すように、表示画面IS2は、画像表示領域R1と一覧表示領域R3とを含む。画像表示領域R1には、例えば、治療計画画像と治療当日画像との合成画像が表示される。一覧表示領域R3には、ステップS2において算出された、複数の照合対象に関する複数の位置ずれ指標の一覧が表示される。例えば、腫瘍領域、肺野、脊髄、脳領域及び頭蓋骨の一致度が算出された場合、
図8に示すように、照合対象毎の一致度の数値が表示される。一致度の分散が算出された場合、同様の分散の数値が表示されればよい。なお、一致度や分散を数値ではなく、グラフ等で表示してもよい。このように、照合対象毎の位置ずれ指標の一覧が表示されることにより、術者等のユーザは、一致度が高い照合対象と一致度が低い照合対象を知ることができる。
【0048】
出力項目としては、セットアップ作業の識別子と放射線治療作業における工程の識別子との両方が記録されるのみならず、セットアップ作業の識別子と放射線治療作業における工程の識別子との何れか一方が記録されてもよい。なお、ガイドテーブル131において、全ての照射対象の一致度が所定値(例えば、90%)より高い位置ずれ指標条件に対して、放射線治療作業の次工程として放射線照射の識別子が関連付けられてもよい。これにより、全ての照射対象の一致度が所定値より高い場合、セットアップ作業の必要無し、ということを伝えるガイドメッセージを提供することができる。
【0049】
ステップS4が行われると放射線治療支援が終了する。
【0050】
その後、術者等のユーザは、ガイド情報を参考にして放射線治療作業を実施する。このように本実施形態に係る処理回路11は、ガイドテーブル131による画像照合結果から放射線治療作業を推測することにより、術者が単独で画像照合結果から放射線治療作業を推定する場合に比して、提供する放射線治療作業のばらつきを抑制することができる。これにより、再撮影による不要な被曝を低減したり、本来は治療に移行すべきでないようなケースで不用意な治療が行われることを抑制できる。
【0051】
なお、ユーザは、ステップS2において算出された位置ずれ指標と、実際に実行する又は実行した放射線治療作業の識別子とを入力インタフェース15を介して入力してもよい。処理回路11は、入力された位置ずれ指標と放射線治療作業の識別子とをガイドテーブル131に登録する。このように、ステップS2において算出された位置ずれ指標と、実際に実行する又は実行した放射線治療作業の識別子とは、経験的知識データとして保存される。これにより、次回以降に同様な画像照合結果が得られた場合に放射線治療の候補の一つとして表示することが可能になる。
【0052】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、術者による放射線治療に係る作業のばらつきを低減することができる。
【0053】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、プログラムを実行するのではなく、論理回路の組合せにより当該プログラムに対応する機能を実現してもよい。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1及び
図2における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 放射線治療支援装置
2 治療計画画像撮影装置
3 治療計画装置
4 放射線治療情報管理システム
5 治療当日画像撮影装置
6 放射線治療装置
11 処理回路
13 メモリ
15 入力インタフェース
17 通信インタフェース
19 ディスプレイ
100 放射線治療システム
111 画像照合機能
112 ガイド情報生成機能
113 テーブル更新機能
114 表示制御機能