(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】コンクリート充填装置及びコンクリート充填方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20221108BHJP
E04G 21/00 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E04G21/00 ESW
(21)【出願番号】P 2018139543
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148346
【氏名又は名称】株式会社錢高組
(73)【特許権者】
【識別番号】518264918
【氏名又は名称】株式会社クォリティー
(74)【代理人】
【識別番号】100095452
【氏名又は名称】石井 博樹
(72)【発明者】
【氏名】薗井 孫文
(72)【発明者】
【氏名】越智 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】國廣 秀行
(72)【発明者】
【氏名】山崎 真哉
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-184625(JP,A)
【文献】特開2011-196019(JP,A)
【文献】特開2010-150831(JP,A)
【文献】特開2008-163786(JP,A)
【文献】特開2002-206344(JP,A)
【文献】特開昭63-226462(JP,A)
【文献】特開平11-324326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00-21/04
F04B 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管の内部に圧入工法によりコンクリートを下方から圧入して充填するコンクリート充填装置であって、
移動部を有し、該移動部を移動させて前記鋼管にコンクリートを送る送り手段と、
前記移動部の移動を検出する検出手段と、
前記検出手段の検出結果に基づいて前記送り手段によるコンクリートの送り量を演算する演算手段と、
を備え
、
前記演算手段は、前記鋼管が内部に孔部を有するダイアフラムを備えている場合に、前記鋼管の内部に送られるコンクリートの送り量から前記鋼管の内部における前記ダイアフラムと前記鋼管の内部で充填されている前記コンクリートとの距離を演算可能に構成されていることを特徴とするコンクリート充填装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリート充填装置において、
前記送り手段は、
コンクリートを導入するシリンダと、ピストンと、前記ピストンと連動して移動する前記移動部とを有し、
前記シリンダ内に導入されたコンクリートを、前記ピストンを移動することにより前記鋼管に送る構成であることを特徴とするコンクリート充填装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコンクリート充填装置において、
前記検出手段は、前記移動部に対して非接触で該移動部の移動を検出することを特徴とするコンクリート充填装置。
【請求項4】
請求項3に記載のコンクリート充填装置において、
前記検出手段は、前記移動部に対してレーザーを照射して該移動部の移動を検出することを特徴とするコンクリート充填装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のコンクリート充填装置において、
前記検出手段は、取り外し可能に構成されていることを特徴とするコンクリート充填装置。
【請求項6】
請求項
1から5のいずれか1項に記載のコンクリート充填装置において、
前記送り手段は、前記演算手段による前記ダイアフラムと前記コンクリートとの距離の演算結果が所定値以下になったら、コンクリートを送る速度を低下させることを特徴とするコンクリート充填装置。
【請求項7】
鋼管の内部に圧入工法によりコンクリートを下方から圧入して充填するコンクリート充填方法であって、
移動部を移動させて前記鋼管にコンクリートを送る送り工程と、
前記移動部の移動を検出する検出工程と、
前記検出工程での検出結果に基づいて前記送り工程によるコンクリートの送り量を演算する演算工程と、
を有
し、
前記演算工程では、前記鋼管が内部に孔部を有するダイアフラムを備えている場合に、前記鋼管の内部に送られるコンクリートの送り量から前記鋼管の内部における前記ダイアフラムと前記鋼管の内部で充填されている前記コンクリートとの距離を演算することを特徴とするコンクリート充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート充填装置及びコンクリート充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼管の内部にコンクリートを下方から圧入して充填することが行われている。鋼管の内部にコンクリートを下方から圧入する際、鋼管の上方からコンクリートを検出し、その検出結果に基づいてコンクリートの圧入量を把握することが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、鋼管の内部にコンクリートを下方から圧入する際、上方から鋼管の内部にコンクリートの検出部としての撮像カメラを挿入し、該撮像カメラの検出結果に基づいてコンクリートの圧入量を把握することが記載されている。
また、特許文献2および3にも、鋼管の内部にコンクリートを下方から圧入する際、鋼管の上方からコンクリートを検出し、その検出結果に基づいてコンクリートの圧入量を把握することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-196019号公報
【文献】特開2008-75333号公報
【文献】特開2000-213167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、鋼管の内部への1回あたりのコンクリートの圧入高さが例えば15m以上と高い場合や、鋼管が真っ直ぐに延設される形状でない場合や、鋼管が内部に孔部(打設孔)を有するダイアフラムを備えていた場合において該孔部が小さくコンクリートセンサーを通すのが困難な場合などにおいては、鋼管の上方からコンクリートを検出し、その検出結果に基づいてコンクリートの圧入量を把握するのは困難な場合がある。すなわち、鋼管の内部にコンクリートを下方から圧入する際、従来のコンクリート充填装置においては、鋼管の形状等によっては、正確に圧入量を把握できない場合があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、鋼管の内部にコンクリートを下方から圧入する際、鋼管の形状等にかかわらず、正確に圧入量を把握することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様に係るコンクリート充填装置は、鋼管の内部に圧入工法によりコンクリートを下方から圧入して充填するコンクリート充填装置であって、移動部を有し、該移動部を移動させて前記鋼管にコンクリートを送る送り手段と、前記移動部の移動を検出する検出手段と、前記検出手段の検出結果に基づいて前記送り手段によるコンクリートの送り量を演算する演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、移動部の移動の検出結果に基づいてコンクリートの送り量を演算する。すなわち、鋼管の上方からコンクリートを検出することなく、鋼管の下方側の情報に基づきコンクリートの圧入量を把握する。このため、鋼管の形状等にかかわらず、正確に圧入量を把握することができる。
【0009】
本発明の第2の態様に係るコンクリート充填装置は、前記第1の態様において、前記送り手段は、コンクリートを導入するシリンダと、ピストンと、前記ピストンと連動して移動する前記移動部とを有し、前記シリンダ内に導入されたコンクリートを、前記ピストンを移動することにより前記鋼管に送る構成であることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、コンクリートを導入するシリンダと、ピストンと、を有する送り手段を備えている。このような構成の送り手段は、コンクリートを送る力が強いので、コンクリートを効果的に鋼管に送ることができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係るコンクリート充填装置は、前記第1または第2の態様において、前記検出手段は、前記移動部に対して非接触で該移動部の移動を検出することを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、検出手段は移動部に対して非接触で該移動部の移動を検出するので、検出手段が移動部の移動を妨げることを抑制できる。
【0013】
本発明の第4の態様に係るコンクリート充填装置は、前記第3の態様において、前記検出手段は、前記移動部に対してレーザーを照射して該移動部の移動を検出することを特徴とする。
【0014】
レーザー照射式の検出手段は、音波を利用する検出手段などのその他の構成の非接触式の検出手段よりも検出精度が高い。本態様によれば、レーザーを照射して移動部の移動を検出する検出手段を有するので、移動部の移動を精度よく検出することができる。
【0015】
本発明の第5の態様に係るコンクリート充填装置は、前記第1から第4の態様のいずれか1つの態様において、前記検出手段は、取り外し可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、検出手段は取り外し可能に構成されているので、検出手段の交換や修理などを簡単に実行できる。
【0017】
本発明の第6の態様に係るコンクリート充填装置は、前記第1から第5の態様のいずれか1つの態様において、前記演算手段は、前記鋼管が内部に孔部を有するダイアフラムを備えている場合に、前記鋼管の内部に送られるコンクリートの送り量から前記鋼管の内部における前記ダイアフラムと前記鋼管の内部で充填されている前記コンクリートとの距離を演算可能に構成されていることを特徴とする。
【0018】
鋼管が内部に孔部を有するダイアフラムを備えている場合、ダイアフラム近傍においてコンクリートが圧入される速度が速すぎると、該ダイアフラム近傍においてコンクリートの充填性が低下する場合がある。本態様によれば、鋼管の内部に送られるコンクリートの送り量から鋼管の内部におけるダイアフラムと鋼管の内部で充填されているコンクリートとの距離を演算可能に構成されている。このため、該距離に基づいて、ダイアフラム近傍におけるコンクリートの圧入速度を適正な速度に変更することで、ダイアフラム近傍におけるコンクリートの充填性の低下を抑制できる。
【0019】
本発明の第7の態様に係るコンクリート充填装置は、前記第6の態様において、前記送り手段は、前記演算手段による前記ダイアフラムと前記コンクリートとの距離の演算結果が所定値以下になったら、コンクリートを送る速度を低下させることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、送り手段は、演算手段によるダイアフラムとコンクリートとの距離の演算結果が所定値以下になったら、コンクリートを送る速度を低下させる。すなわち、ダイアフラム近傍においてコンクリートの圧入速度を低下する。このため、ダイアフラム近傍におけるコンクリートの充填性の低下を抑制できる。
【0021】
本発明の第8の態様に係るコンクリート充填方法は、鋼管の内部に圧入工法によりコンクリートを下方から圧入して充填するコンクリート充填方法であって、移動部を移動させて前記鋼管にコンクリートを送る送り工程と、前記移動部の移動を検出する検出工程と、前記検出工程での検出結果に基づいて前記送り工程によるコンクリートの送り量を演算する演算工程と、を有することを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、移動部の移動の検出結果に基づいてコンクリートの送り量を演算する。すなわち、鋼管の上方からコンクリートを検出することなく、鋼管の下方側の情報に基づきコンクリートの圧入量を把握する。このため、鋼管の形状等にかかわらず、正確に圧入量を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例1に係るコンクリート充填装置を用いてコンクリート充填を行う際の一例を示す概略図である。
【
図2】内部に孔部を有するダイアフラムを備えている鋼管の一例を示す概略斜視図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るコンクリート充填装置における送り手段を示す概略斜視図である。
【
図4】本発明の実施例1に係るコンクリート充填装置における送り手段及び検出手段を示す概略斜視図であり、移動部が検出手段の検出位置にある状態を示す図である。
【
図5】本発明の実施例1に係るコンクリート充填装置における送り手段及び検出手段を示す概略斜視図であり、移動部が検出手段の検出位置にない状態を示す図である。
【
図6】本発明の実施例1に係るコンクリート充填装置における移動部の挙動の計測結果を示す図である。
【
図7】本発明の実施例1に係るコンクリート充填装置におけるコンクリートの圧入速度の把握精度を示す図である。
【
図8】本発明の実施例2に係るコンクリート充填装置における送り手段及び検出手段を示す概略斜視図であり、移動部が検出手段の検出位置にある状態を示す図である。
【
図9】本発明の実施例2に係るコンクリート充填装置における送り手段及び検出手段を示す概略斜視図であり、移動部が検出手段の検出位置にない状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[実施例1](
図1~
図7)
最初に、本発明の実施例1に係るコンクリート充填装置1を用いてコンクリート充填を行う際の概要の一例について、
図1を参照して説明する。なお、
図1、並びに、後述する
図2および
図3においては、構造を分かり易くするために一部透視図となっている。
【0025】
本実施例のコンクリート充填装置1は、ポンプ車3に設けられている。ここで、ポンプ車3には、ミキサー車4からコンクリート10が供給される。ミキサー車4からポンプ車3に供給されたコンクリート10は、コンクリート充填装置1により、供給管5を介して鋼管2の内部2aに供給される。
【0026】
本例においては、鋼管2は、ポンプ車3及びミキサー車4が位置する1階F1から4階F4まで直線状に延設される角型の鋼管である。ただし、このような構成に限定されず、鋼管として、直線状ではないもの、本実施例の鋼管2よりも短いものや長いもの、角型でないものなどを使用することもできる。
【0027】
また、鋼管2は、2階F2の床を構成するH型鋼9との接続領域、3階F3の床を構成するH型鋼9との接続領域及び4階F4の床を構成するH型鋼9との接続領域において、内部に孔部7a(
図2参照)を有するダイアフラム7が形成されている。該ダイアフラム7の詳細な構造は後述する。
【0028】
ここで、供給管5から鋼管2にコンクリート10を供給する供給口8は、1階F1である。そして、鋼管2は4階F4まで上方に延びている。したがって、本実施例のコンクリート充填装置1は、鋼管2の内部2aに圧入工法によりコンクリート10を下方から圧入して充填する装置である。ただし、供給口8は、1階F1に形成されることに限定されない。
【0029】
詳細は後述するが、本実施例のコンクリート充填装置1は、下方から圧入するコンクリート10の圧入量を把握することで、鋼管2の内部2aにコンクリート10がどの位置まで充填されたかを把握可能な構成となっている。しかしながら、
図1の鋼管2で表されるような直線状の鋼管などを使用する場合には、上方から鋼管2の内部2aにコンクリート10がどの位置まで充填されたかを把握することも、併せて実行してもよい。
図1においては、3階F3から鋼管2の内部2aの下方に向けてコンクリートセンサーとしてのCCDカメラ6を導入し、鋼管2の内部2aをCCDカメラ6で撮影することで、上方から鋼管2の内部2aにコンクリート10がどの位置まで充填されたかを把握する一例を表している。
【0030】
下方から圧入するコンクリート10の圧入量を把握することと、上方から鋼管2の内部2aにコンクリート10がどの位置まで充填されたかを把握することと、を組み合わせることで、例えば、下方から圧入するコンクリート10の圧入量を補正することなどができ、特に正確にコンクリート10の圧入量を把握することができる。
【0031】
次に、
図2を参照して、
図1の鋼管2に設けられたダイアフラム7の構成例について説明する。なお、
図1の鋼管2における、2階F2の床を構成するH型鋼9との接続領域、3階F3の床を構成するH型鋼9との接続領域及び4階F4の床を構成するH型鋼9との接続領域に設けられる各々のダイアフラム7は、何れも、同様の構成をしている。
【0032】
図2で表されるように、ダイアフラム7は、鋼管2の内部2aの位置に孔部7aを有している。ここで、孔部7aの直径は、鋼管2の内部2aの幅よりも狭くなっている。なお、孔部7aの面積は、鋼管2の断面積の15%以上であることが好ましい。また、
図2で表されるダイアフラム7は、内ダイアフラムであるが、内ダイアフラム以外の構成である外ダイアフラムや通しダイアフラムであってもよい。
【0033】
図2で表されるように、孔部7aは、鋼管2の内部2aに位置する板状部7bに形成されているが、板状部7bには、コンクリート10を鋼管2の内部2aに圧入することに伴って空気を逃がすための空気抜き孔7cが4箇所形成されている。空気抜き孔7cの直径は、空気を効果的に逃がすため、板状部7bの板厚以上であって、20mm以上であることが好ましい。ただし、ダイアフラム7は、空気抜き孔7cを有さない構成としてもよい。
【0034】
また、鋼管2におけるH型鋼9との接続領域の近傍には、蒸気抜き孔2bが設けられている。蒸気抜き孔2bは、ダイアフラム7を挟んで上下に1カ所ずつ、鋼管2の対向する面に設けられている。蒸気抜き孔2bの直径は、20mm以上であることが好ましい。ただし、鋼管2は、蒸気抜き孔2bを有さない構成としてもよい。
【0035】
以下に、本実施例のコンクリート充填装置1について詳細に説明する。
最初に、本実施例のコンクリート充填装置1の概要について
図3を用いて説明する。
なお、本実施例のコンクリート充填装置1は、上記のように、ポンプ車3に設けられており、ミキサー車4からコンクリート10を供給される。
【0036】
図3で表されるように、本実施例のコンクリート充填装置1は、ミキサー車4から供給されるコンクリート10を受け入れるホッパ11を備えている。ホッパ11には、コンクリート10を撹拌する撹拌羽根12が設けられている。また、ホッパ11に孔部13で繋がる2本のコンクリートシリンダ14を備えており、コンクリートシリンダ14の内部には、油圧切り替え装置16及び油圧シリンダ17により押しだし方向A1及び吸引方向A2に移動可能な油圧ピストン15が設けられている。さらに、ホッパ11には、供給管5を接続する供給口5aが形成されている。
【0037】
ここで、
図3で表されるように、コンクリートシリンダ14として、押しだし方向A1及び吸引方向A2に沿ってコンクリートシリンダ14a及びコンクリートシリンダ14bが平行して並べられている。コンクリートシリンダ14aは孔部13のうちの孔部13aでホッパ11に繋がっており、コンクリートシリンダ14bは孔部13のうちの孔部13bでホッパ11に繋がっている。そして、コンクリートシリンダ14a内の油圧ピストン15aと、コンクリートシリンダ14a内の油圧ピストン15bとは、油圧切り替え装置16及び油圧シリンダ17により、押しだし方向A1及び吸引方向A2に交互に移動することが可能な構成となっている。
【0038】
また、ホッパ11の内部には、一方側18aが供給口5aに繋がれ、他方側18bが孔部13a及び孔部13bと対向する位置に移動可能な揺動管18が設けられている。なお、
図3は、揺動管18の他方側18bが孔部13bと対向する位置にある状態を表している。揺動管18は、油圧ピストン15a及び油圧ピストン15bの移動に合せて移動する弁駆動シリンダ19と接続されている。別の表現をすると、油圧ピストン15a及び油圧ピストン15bの移動に合せて弁駆動シリンダ19が移動することに伴って、揺動管18の他方側18bは、孔部13aと対向する位置から孔部13bと対向する位置までの間で移動する。具体的には、揺動管18の他方側18bは、油圧ピストン15aが吸引方向A2側に移動する際に孔部13aがホッパ11に対して開放する位置となり、油圧ピストン15bが吸引方向A2側に移動する際に孔部13bがホッパ11に対して開放する位置となる。別の表現をすると、揺動管18の他方側18bは、油圧ピストン15aが押しだし方向A1側に移動する際に孔部13aと対向する位置となり、油圧ピストン15bが押しだし方向A1側に移動する際に孔部13bと対向する位置となる。
【0039】
本実施例のコンクリート充填装置1は、上記のような構成をしていることで、油圧ピストン15aを吸引方向A2側に移動させることに伴ってホッパ11内のコンクリート10をコンクリートシリンダ14aの内部に導入し、その後、油圧ピストン15aを押しだし方向A1側に移動させることでコンクリートシリンダ14aの内部に導入されていたコンクリート10を供給管5に向けて押し出すことができる。同様に、本実施例のコンクリート充填装置1は、油圧ピストン15bを吸引方向A2側に移動させることに伴ってホッパ11内のコンクリート10をコンクリートシリンダ14bの内部に導入し、その後、油圧ピストン15bを押しだし方向A1側に移動させることでコンクリートシリンダ14bの内部に導入されていたコンクリート10を供給管5に向けて押し出すことができる。このように、油圧ピストン15a及び油圧ピストン15bを移動させ、これら油圧ピストン15の移動に伴って弁駆動シリンダ19及び揺動管18を移動させることで、本実施例のコンクリート充填装置1は、供給管5を介してコンクリート10を鋼管2に送ることができる。
【0040】
本実施例のコンクリート充填装置1においては、孔部13、コンクリートシリンダ14、油圧ピストン15、油圧切り替え装置16、油圧シリンダ17及び揺動管18で、鋼管2にコンクリート10を送る送り手段22を形成している。なお、本実施例の送り手段22は、コンクリート10を送る方向における上流側からコンクリート10を鋼管2に圧送する構成であるが、このような構成に限定されない。例えば、コンクリート10を送る方向における下流側からコンクリート10を吸引することで、コンクリート10を鋼管2に送る構成であってもよい。
【0041】
また、本実施例のコンクリート充填装置1は、弁駆動シリンダ19の移動を検出し、該検出結果をPC21に検出結果を送信可能な、センサー20を備えている。次に、
図4から
図6を用いてセンサー20について説明する。
【0042】
図4及び
図5で表されるように、本実施例のコンクリート充填装置1は、レーザー23を照射して距離を計測可能なレーザー距離計であるセンサー20がホッパ11に取り付けられている。なお、センサー20は、PC21に検出結果を送信可能な構成になっている。
図4で表される状態は、揺動管18の他方側18bが孔部13aと対向する位置にある状態であって弁駆動シリンダ19がコンクリートシリンダ14b側に位置する状態であり、弁駆動シリンダ19がセンサー20の検出位置にある状態を表している。また、
図5で表される状態は、揺動管18の他方側18bが孔部13bと対向する位置にある状態であって弁駆動シリンダ19がコンクリートシリンダ14a側に位置する状態であり、弁駆動シリンダ19がセンサー20の検出位置にない状態を表している。
【0043】
ここで、
図4で表される状態から
図5で表される状態となることで、コンクリートシリンダ14b側の油圧ピストン15bの1回の往復移動分である1ストローク分のコンクリート10が供給管5を介して鋼管2に送られる。また、
図5で表される状態から
図4で表される状態となることで、コンクリートシリンダ14a側の油圧ピストン15aの1ストローク分のコンクリート10が供給管5を介して鋼管2に送られる。なお、本実施例のコンクリート充填装置1においては、油圧ピストン15aの1ストローク分のコンクリート10の供給量と、油圧ピストン15bの1ストローク分のコンクリート10の供給量とは、同じ量である。
【0044】
なお、
図6の移動部である弁駆動シリンダ19の挙動の計測結果を示す図で表されるように、センサー20は、弁駆動シリンダ19の挙動をはっきり認識できている。ここで、
図6において、レーザー距離計であるセンサー20の測定値がマイナスの値の領域は
図4で表される状態に対応し、レーザー距離計であるセンサー20の測定値がプラスの値の領域は
図5で表される状態に対応している。
【0045】
油圧ピストン15aの1ストローク分のコンクリート10の供給量及び油圧ピストン15bの1ストローク分のコンクリート10の供給量は、予め測定してあり、分かっているので、油圧ピストン15を何ストローク分移動させたかで鋼管2に送られるコンクリート10の供給量は把握できる。また、鋼管2の内部2aの断面積も把握できるので、鋼管2の内部2aにおけるコンクリート10の圧入速度をPC21において演算できる。
【0046】
図7は、このように演算して求めたコンクリート10の圧入速度を、
図1で表されるような直線状の鋼管2の上方からCCDカメラ6などを用いてコンクリート10の位置を検出してコンクリート10の圧入速度を演算した結果に対して比較させた図である。
図7から明らかなように、このように演算して求めたコンクリート10の圧入速度は、直線状の鋼管2の上方からコンクリート10の位置を検出してコンクリート10の圧入速度を演算した場合と同等の精度となる。
【0047】
ここで、一旦まとめると、本実施例のコンクリート充填装置1は、鋼管2の内部2aに圧入工法によりコンクリート10を下方から圧入して充填するコンクリート充填装置である。そして、
図3で表されるように、移動部としての弁駆動シリンダ19を有し、該弁駆動シリンダ19を移動させて鋼管2にコンクリート10を送る送り手段22を備えている。上記のように、本実施例の送り手段22は、孔部13、コンクリートシリンダ14、油圧ピストン15、油圧切り替え装置16、油圧シリンダ17及び揺動管18で構成されている。また、
図4及び
図5で表されるように、弁駆動シリンダ19の移動を検出する検出手段としてのセンサー20と、センサー20の検出結果に基づいて送り手段22によるコンクリート10の送り量を演算する演算手段としてのPC21と、を備えている。
【0048】
このように、本実施例のコンクリート充填装置1は、弁駆動シリンダ19の移動の検出結果に基づいてコンクリート10の送り量を演算する。すなわち、鋼管2の上方からコンクリート10を検出することなく、鋼管2の下方側の情報に基づきコンクリート10の圧入量を把握する。このため、鋼管2の形状等にかかわらず、正確に圧入量を把握することができる。
【0049】
別の表現をすると、鋼管2の内部2aに圧入工法によりコンクリート10を下方から圧入して充填する本実施例のコンクリート充填装置1を用い、弁駆動シリンダ19を移動させて鋼管2にコンクリート10を送る送り工程と、弁駆動シリンダ19の移動を検出する検出工程と、検出工程での検出結果に基づいて送り工程によるコンクリート10の送り量を演算する演算工程と、を有するコンクリート充填方法を実行できる。このように、弁駆動シリンダ19の移動の検出結果に基づいてコンクリート10の送り量を演算するコンクリート充填方法を実行することで、鋼管2の上方からコンクリート10を検出することなく、鋼管2の下方側の情報に基づきコンクリート10の圧入量を把握する。このため、鋼管2の形状等にかかわらず、正確に圧入量を把握することができる。
【0050】
また、本実施例のコンクリート充填装置1においては、送り手段22は、コンクリート10を導入するシリンダであるコンクリートシリンダ14と、ピストンである油圧ピストン15と、油圧ピストン15と連動して移動する弁駆動シリンダ19を有している。そして、コンクリートシリンダ14内に導入されたコンクリート10を、油圧ピストン15を移動することにより鋼管2に送る。このようなピストン式の構成の送り手段22は、コンクリート10を送る力が強いので、コンクリート10を効果的に鋼管2に送ることができる。
【0051】
ただし、送り手段22の構成はこのようなピストン式の構成に限定されず、ポンピングチューブと呼ばれる円筒形の筒を、油圧モーターで駆動する回転式のローラーで絞るスクイーズ式の構成などであってもよい。スクイーズ式の構成の場合、例えば、回転式のローラーを移動部として考えることができる。
【0052】
また、上記のように、本実施例のセンサー20は、レーザー距離計である。すなわち、弁駆動シリンダ19に対して非接触で該弁駆動シリンダ19の移動を検出する。このため、センサー20が弁駆動シリンダ19の移動を妨げることを抑制できる。
ただし、センサー20は非接触式のセンサーに限定されず、接触式のセンサーを用いてもよい。
【0053】
また、レーザー照射式のセンサー20は、音波を利用するセンサーなどのその他の構成の非接触式のセンサーよりも検出精度が高い。本実施例のセンサー20は、レーザー23を照射して弁駆動シリンダ19の移動を検出するので、弁駆動シリンダ19の移動を精度よく検出することができる。
ただし、音波を利用するセンサーなどを使用することも可能である。
【0054】
ここで、本実施例のセンサー20は、取り外し可能に構成されている。このため、センサー20の交換や修理などを簡単に実行できる。
【0055】
また、本実施例のコンクリート充填装置1において使用されるPC21は、鋼管2が内部2aに
図2で表されるような孔部7aを有するダイアフラム7を備えている場合に、鋼管2の内部2aに送られるコンクリート10の送り量から鋼管2の内部2aにおけるダイアフラム7と鋼管2の内部2aで充填されているコンクリート10との距離L(
図1参照)を演算可能に構成されている。
【0056】
鋼管2が内部2aに孔部7aを有するダイアフラム7を備えている場合、ダイアフラム7近傍においてコンクリート10が圧入される速度が速すぎると、該ダイアフラム7近傍においてコンクリート10の充填性が低下する場合がある。本実施例のコンクリート充填装置1は、鋼管2の内部2aに送られるコンクリート10の送り量から鋼管2の内部2aにおけるダイアフラム7と鋼管2の内部2aで充填されているコンクリート10との距離Lを演算可能に構成されている。このため、該距離Lに基づいて、ダイアフラム7近傍におけるコンクリート10の圧入速度を適正な速度に変更することで、ダイアフラム7近傍におけるコンクリート10の充填性の低下を抑制できる。
【0057】
詳細には、本実施例のコンクリート充填装置1においては、送り手段22は、PC21によるダイアフラム7とコンクリート10との距離Lの演算結果が所定値以下になったら、コンクリート10を送る速度を低下させる。すなわち、本実施例のコンクリート充填装置1は、ダイアフラム7近傍において10の圧入速度を低下する。このため、本実施例のコンクリート充填装置1は、ダイアフラム7近傍におけるコンクリート10の充填性の低下を抑制できる。
【0058】
[実施例2](
図8及び
図9)
なお、センサー20の取り付け位置には特に限定はない。
次に、センサー20の取り付け位置が実施例1のコンクリート充填装置1とは異なる実施例2のコンクリート充填装置1について、
図8及び
図9を用いて説明する。
ここで、
図8は、実施例1のコンクリート充填装置1を説明する
図4に対応する図であり、弁駆動シリンダ19がセンサー20の検出位置にある状態を表している。また、
図9は、実施例1のコンクリート充填装置1を説明する
図5に対応する図であり、弁駆動シリンダ19がセンサー20の検出位置にない状態を表している。なお、上記実施例1と共通する構成部材は同じ符号で示しており、詳細な説明は省略する。
なお、本実施例のコンクリート充填装置1は、センサー20の取り付け位置以外は、実施例1のコンクリート充填装置1と同様の構成である。
【0059】
図4及び
図5で表されるように、実施例1のコンクリート充填装置1においては、センサー20の取り付け位置は、移動部である弁駆動シリンダ19の上方であった。一方、
図8及び
図9で表されるように、本実施例のコンクリート充填装置1においては、センサー20の取り付け位置は、移動部である弁駆動シリンダ19の斜め下方である。本実施例のコンクリート充填装置1においても、実施例1のコンクリート充填装置1と同様、センサー20は弁駆動シリンダ19の移動を正確に検出できる。
ただし、センサー20の取り付け位置は、実施例1のコンクリート充填装置1及び実施例2のコンクリート充填装置1におけるセンサー20の取り付け位置に限定されない。
【0060】
本発明は、上述の実施例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。
また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…コンクリート充填装置、2…鋼管、2a…鋼管2の内部、2b…蒸気抜き孔、
3…ポンプ車、4…ミキサー車、5…供給管、5a…供給口、6…CCDカメラ、
7…ダイアフラム、7a…孔部、7b…板状部、7c…空気抜き孔、8…供給口、
9…H型鋼、10…コンクリート、11…ホッパ、12…撹拌羽根、13…孔部、
13a…孔部、13b…孔部、14…コンクリートシリンダ、
14a…コンクリートシリンダ、14b…コンクリートシリンダ、
15…油圧ピストン、15a…油圧ピストン、15b…油圧ピストン、
16…油圧切り替え装置、17…油圧シリンダ、18…揺動管、
19…弁駆動シリンダ(移動部)、20…センサー(検出手段)、
21…PC(演算手段)、22…送り手段、23…レーザー、F1…1階、
F2…2階、F3…3階、F4…4階、
L…ダイアフラム7とコンクリート10との距離