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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】デッキボード
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20221108BHJP
   B60R 13/08 20060101ALI20221108BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
B60R5/04 T
B60R13/08
B32B5/24 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018140704
(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公開番号】P2020015455
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-04-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭一郎
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-046846(JP,A)
【文献】特開2017-105325(JP,A)
【文献】特開2012-016979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0235378(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
B60R 13/08
B32B 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室に配設されるデッキボードであって、
複数のシートが積層された積層板が成形されてなり、
前記積層板には、
連続気泡構造を有する発泡シートと、
前記発泡シートを挟む1対の繊維シートと、
前記1対の繊維シートのうち上側に配置される前記繊維シートを、前記発泡シートとの間に挟む非通気性の第1面材と、が含まれている、デッキボード。
【請求項2】
板状のボード本体部と、
前記ボード本体部の下面から突出した支持突部と、を有し、
前記ボード本体部のうち、厚み方向で前記支持突部と重なる部分は、厚み方向で前記支持突部と重ならない部分に比べて、前記発泡シートの見掛け密度が低くなっている、請求項1に記載のデッキボード。
【請求項3】
前記積層板には、前記1対の繊維シートのうち下側に配置される前記繊維シートを前記発泡シートとの間に挟んで、前記積層板の最外面を構成する第2面材が設けられ、
前記第2面材は、通気性を有している、請求項1又は2に記載のデッキボード。
【請求項4】
前記積層板に上側から貼り合わされている表皮材を有する、請求項1乃至3のうち何れか1の請求項に記載のデッキボード。
【請求項5】
前記表皮材は、前記積層板からはみ出す大きさに形成され、そのはみ出した部分が、前記積層板の下面側に巻き付けられている、請求項4に記載のデッキボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デッキボードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の荷室に配設されるデッキボードとして、木質ハードボードに表皮材が積層されたボード本体を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、車両のうちデッキボードが載置されるボード載置部には、例えば、上側に開口した収納凹部が設けられ、その収容凹部にはスペアタイヤが収容される。そのため、ボード載置部には、凹凸が設けられることとなり、ボード本体には嵩上げ材が組み付けられていた。また、ボード本体には、サイレンサ等も組み付けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5440851号公報(段落[0019]、[0027]、[0028]及び図1,2,4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のデッキボードに対して、嵩上げ材やサイレンサ等の部材を削減又は無くすことによる組み付け工数の低減が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、車両の荷室に配設されるデッキボードであって、複数のシートが積層された積層板が成形されてなり、前記積層板には、連続気泡構造を有する発泡シートと、前記発泡シートを挟む1対の繊維シートと、前記1対の繊維シートのうち上側に配置される前記繊維シートを、前記発泡シートとの間に挟む非通気性の第1面材と、が含まれている、デッキボードである。
【0006】
発明の第2態様は、板状のボード本体部と、前記ボード本体部の下面から突出した支持突部と、を有し、前記ボード本体部のうち、厚み方向で前記支持突部と重なる部分は、厚み方向で前記支持突部と重ならない部分に比べて、前記発泡シートの見掛け密度が低くなっている、第1態様に記載のデッキボードである。
【0007】
発明の第3態様は、前記積層板には、前記1対の繊維シートのうち下側に配置される前記繊維シートを前記発泡シートとの間に挟んで、前記積層板の最外面を構成する第2面材が設けられ、前記第2面材は、通気性を有している、第1態様又は第2態様に記載のデッキボードである。
【0008】
発明の第4態様は、前記積層板に上側から貼り合わされている表皮材を有する、第1態様乃至第3態様のうち何れか1の態様に記載のデッキボードである。
【0009】
発明の第5態様は、前記表皮材は、前記積層板からはみ出す大きさに形成され、そのはみ出した部分が、前記積層板の下面側に巻き付けられている、第1態様乃至第4態様のうち何れか1の態様に記載のデッキボードである。
【発明の効果】
【0010】
発明の第1態様によれば、以下のようにして、嵩上げ材とサイレンサのうち少なくとも一方を削減又は無くすことにより部材の組み付け工数の低減を図ることが可能となる。即ち、発明の第1態様では、積層板が連続気泡構造の発泡シートを含むので、発泡シートを圧縮して積層板を賦形することが可能となる。これにより、積層板を賦形することで、デッキボードの下面に嵩上げ材としての役割を果たす突部を形成すれば、積層板に組み付けられる嵩上げ材を削減又は無くすことが可能となり、嵩上げ材の組み付け工数の低減を図ることができる。また、本発明では、発泡シートの有する吸音性によりデッキボード全体に吸音性を付与することが可能となるため、積層板に組み付けるサイレンサを削減又は無くすことが可能となり、サイレンサの組み付け工数の低減を図ることができる。しかも、本発明では、第1面材が非通気性であるので、デッキボードの下側で発生し、デッキボード内を透過してきた音を第1面材で遮音することが可能となる。
【0011】
発明の第2態様では、板状のボード本体部の下面から支持突部が突出している。ここで、ボード本体部のうち、厚み方向で支持突部と重なる部分は、厚み方向で支持突部と重ならない部分に比べて、発泡シートの見掛け密度が低くなっている。即ち、本発明では、発泡シートのうち厚み方向で支持突部と重ならない部分を厚み方向に圧縮することで、支持突部を形成することができる。そして、この支持突部を、嵩上げ材の代わりとして用いることにより、嵩上げ材を削減又は無くすことが可能となり、部材の組み付け工数を低減することが可能となる。
【0012】
発明の第3態様では、デッキボードの下面を構成する第2面材が通気性を有するので、デッキボードの下側で発生した音がデッキボード内に進入し易くなって吸音性を付与し易くなると共に、デッキボード全体で吸音することが可能となる。
【0013】
デッキボードは、積層板に上側から貼り合わされた表皮材を備えていてもよいし(発明の第4態様)、このような表皮材を備えていなくてもよい。発明の5態様では、表皮材をデッキボードの下面側に巻き付けることにより、積層板の端部が覆われて、デッキボードの端部の見栄えを良くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態に係るデッキボードが取り付けられた車両の背面斜視図
図2】デッキボードの正断面図
図3】デッキボードの端部周辺の拡大正断面図
図4】成形金型でプレスされる前の積層板の正断面図
図5】成形金型でプレスされた後の積層板の正断面図
図6】(A)表皮材が貼り合わされる前の積層板の正断面図、(B)表皮材が貼り合された後の積層板の正断面図
図7】積層板に端部が巻き付けられる表皮材の正断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示されるように、本実施形態のデッキボード10は、車両90の荷室90Rに配設される。図2に示されるように、車両90の荷室90Rの底部には、上方に開口する収容凹部92が設けられ、その収容凹部92にはスペアタイヤ93が収容される。本実施形態では、収容凹部92の開口縁94とスペアタイヤ93とは、デッキボード10が載置されるボード載置部91となっている。なお、本実施形態の例では、収容凹部92の開口縁94は、スペアタイヤ93の上面よりも、高くなっている。
【0016】
図3に示されるように、デッキボード10は、複数のシートが貼り合わされた積層板20が成形されてなる。同図に示されるように、積層板20は、基材としての発泡シート21と、発泡シート21の両面にバインダを介して貼り合わされる1対の繊維シート22,22と、を有している。そして、発泡シート21が1対の繊維シート22,22によって補強されている。
【0017】
また、積層板20は、発泡シート21との間に繊維シート22,22を挟む第1面材23及び第2面材24を有している。第1面材23は、上側に配され、第2面材24は、下側に配される。なお、第1面材23及び第2面材24は、繊維シート22に含浸したバインダによって繊維シート22,22に接着されている。
【0018】
積層板20には、第1面材23の上側から表皮材25が貼り合わされている。表皮材25は、積層板20からはみ出す大きさになっていて、そのはみ出し部25E(本実施形態では、表皮材25の外端部全体)が、積層板20の下面側(即ち、第2面材24側)に巻き付けられて接着されている。
【0019】
また、図2に示されるように、デッキボード10は、板状のボード本体部11と、ボード本体部11の下面から突出した複数の支持突部12と、からなる。支持突部12は、上述のボード載置部91のうち、例えば、スペアタイヤ93上に載置され、ボード本体部11をスペアタイヤ93から浮かせた状態に支持する。また、ボード本体部11の外縁部は、収容凹部92の開口縁94に支持される。このように、本実施形態では、支持突部12がボード本体部11を嵩上げする嵩上げ材の役割を果たしている。なお、デッキボード10の上面は、平坦になっている。
【0020】
図3に示されるように、ボード本体部11のうち、厚み方向で支持突部12と重なる重なり部11Aは、厚み方向で支持突部12と重ならない非重なり部11Bに比べて、発泡シート21の見掛け密度が低くなっている。なお、ボード本体部11(非重なり部11B)の厚みは、3~20mmが好ましく、5~15mmがさらに好ましい。また、支持突部12の突出長さは、2~30mmが好ましく、5~20mmがさらに好ましい。
【0021】
積層板20を構成する各シート、即ち、発泡シート21、繊維シート22、第1面材23及び第2面材24の詳細については、以下のようになっている。
【0022】
発泡シート21は、連続気泡構造の発泡体で構成されている。具体的には、本実施形態では、発泡シート21は、硬質ポリウレタン発泡体である。発泡シート21の厚みは、5~50mmが好ましく、10~40mmがさらに好ましい。ボード本体部11の重なり部11Aは、発泡シート21がプレス成形により圧縮されることで、元厚みよりも薄くなっていてもよいし、発泡シート21が繊維シート22,22と接着していれば圧縮されていなくてもよい(元厚みと同じ厚みでもよい)。ボード本体部11の非重なり部11Bは、発泡シート21がプレス成形により圧縮されることで、元厚みよりも薄くなっている。また、発泡シート21のうち非重なり部11Bを構成する部分の厚みT1(図3参照)は、発泡シート21のうち支持突部12及び重なり部11Aを構成する部分の厚みT2に対して、0.1~0.95倍であることが好ましく、0.2~0.5倍であることがさらに好ましい。
【0023】
発泡シート21は、デッキボード10の補強効果の観点から、スプリング硬さ試験タイプC(JIS K7312:1996 附属書2準拠。)が30以上のものが好ましく、35以上のものがさらに好ましい。また、発泡シート21は、通気性を有することが好ましい。これにより、発泡シート21に吸音性を付与することが可能となる。発泡シート21の通気量は、デッキボード10を構成する発泡シート21の厚みが10mm以上の場合、JIS K6400-7 B法:2012に準拠し、10mm未満の場合、JIS K6400-7 B法:2012に基づき測定する。発泡シート21の厚み10mmにおけるJIS K6400-7 B法:2012に準拠した通気量は、好ましくは、1~10ml/cm/sであり、より好ましくは、1~8ml/cm/sである。発泡シート21の通気量が1ml/cm/sより低いと、高周波の吸音性が低下する。発泡シート21の通気量が10ml/cm/sより高いと低周波の吸音性が低下する。なお、発泡シート21の厚みが10mm未満の場合、通気量の値は、厚みが10mmとなるように換算した換算値とする。詳細には、厚みをX(mm)、通気量の測定値をY(ml/cm/s)とすると、換算値(ml/cm/s)を、換算値=Y*X/10、として算出する。
【0024】
発泡シート21としては、ポリウレタン発泡体に代表される公知の連続気泡構造の発泡体で構成されたシートを用いることができる。ポリウレタン発泡体としては、硬質ポリウレタン発泡体や半硬質ポリウレタン発泡体であっても軟質ポリウレタン発泡体であってもよいが、デッキボード10への補強性能の観点から、軽量性と剛性に優れる硬質ポリウレタン発泡体であることが好ましい。また、発泡シート21を連続気泡構造の発泡体で構成することにより、発泡シート21に吸音性を付与することが可能となる。なお、デッキボード10の断熱性能の観点から、発泡シート21がポリウレタン発泡体で構成されていることが好ましい。
【0025】
繊維シート22としては、例えば、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、炭素繊維、天然繊維(例えば、セルロースナノファイバー)、ザイロン(登録商標)等の繊維によって構成されたものを用いることができる。(これらの繊維においても、種々の繊維長のものを特に限定せずに用いることができる。)なお、デッキボードへの補強効果の観点から、繊維シート22を構成する繊維は、ガラス繊維であることが好ましい。また、このような繊維シートは、例えば、織物、編み物、不織布等の形態であってもよい。
【0026】
繊維シート22が、ガラス繊維シートである場合、ガラス繊維がフェルト状に加工されたガラスマットであってもよいし、ガラス繊維が格子状に織られてなるガラスクロスであってもよい。積層板20の成形性の観点からは、このようなガラス繊維シートは、ガラスマットであることが好ましく、チョップストランドマットであることがより好ましい。
【0027】
上述のバインダとしては、例えば、熱硬化性樹脂からなるものが挙げられる。このようなバインダの例としては、安価で且つ接着性が良好な液状イソシアネートが挙げられる。液状イソシアネートは、熱及び触媒の存在下で水との反応により硬化して、接着材として機能するものである。液状イソシアネートの例としては、例えば、芳香族系のTDI(トルエンジイソシアネート)、ポリメリックMDI(4,4'ジフェニルメタンジイソシアネート)、NDI(1,5-ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、PPDI(パラフェニレンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、TMXDI(テトラメチルキシレンジイソシアネート)、及びそれらの変性体(具体的には、ウレタン変性、アロファネート変性、ビューレット変性、カルボジイミド/ウレトニミン変性等種々の変性がなされたもの)が挙げられるが、好ましくは、ポリメリックMDI、TDI変性体、MDI変性体、又はそれらの混合物である。また、これらの液状イソシアネートとしては、粘度3~300cPのものが、浸透性や塗布性等に優れるので、より好ましい。また、これらのうち特にポリメリックMDIは蒸気圧が低くガラス繊維との親和性が良好で、反応性・接着性、作業性の面で適している。これら液状イソシアネートの種類は、接着性・反応性・積層板20の強度・作業性等に応じて適宜選択される。
【0028】
第1面材23は、通気性を有しない樹脂フィルムで構成されている。これにより、デッキボード10の下側からの音に対する遮音性をデッキボード10に付与することが可能となる。第1面材23は、表皮材25との接着性やバインダとの接着性の観点から、表面が平滑な樹脂フィルムが好ましい。樹脂フィルムを構成する樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ナイロン等の樹脂が挙げられる。
【0029】
第2面材24は、不織布シートで構成されている。具体的には、第2面材24は、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布等で構成される。第2面材24の通気量(JIS L1096 A法(フラジール形法):2010に準拠。)は、10~200cm/cm・sであることが好ましい。第2面材24の通気性が10cm/cm・sより低いと、デッキボード10の吸音性が低下し、200cm/cm・sより高いと、第2面材24からのバインダの染み出しが生じ易くなる可能性がある。積層板20への賦形を容易にするために、第2面材24の引張破断伸び(JIS L1913 一般不織布試験方法 6.3引張強さ及び伸び率に準拠。)は、20%以上が好ましい。なお、本実施形態では、第2面材24が通気性を有することから、デッキボード10の下側で発生した音がデッキボード10内に進入し易くなり、デッキボード10全体で吸音し易くなっている。不織布を構成する繊維の例としては、羊毛、コットン等の天然繊維やポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維等が挙げられ、目付量の例としては、10~300g/mが挙げられる。
【0030】
表皮材25としては、フェルト等の繊維シートで構成されたものを用いてもよいし、合成皮革や本革、樹脂フィルム等で構成されたものを用いてもよい。
【0031】
デッキボード10は、以下のようにして製造される。デッキボード10を製造するには、まず、積層板20を構成する複数のシートを用意する。具体的には、本実施形態の例では、硬質ポリウレタン発泡体からなる発泡シート21,ガラス繊維からなる1対の繊維シート22,22、樹脂フィルムからなる第1面材23及び不織布シートからなる第2面材24を用意する。なお、発泡シート21及び/又は各繊維シート22には、バインダを塗布しておく。また、硬質ポリウレタン発泡体からなる発泡シート21としては、見掛けコア密度(JIS K7222:2012準拠。)が、20~90kg/mのものが好ましく、30~80kg/mのものがさらに好ましい。
【0032】
そして、発泡シート21,1対の繊維シート22,22、第1面材23及び第2面材24が積層される。具体的には、各繊維シート22が、発泡シート21に外側から重ね合わせられる。さらに、各繊維シート22の外側から、第1面材23と第2面材24が重ねられる。
【0033】
次いで、発泡シート21,1対の繊維シート22,22、第1面材23及び第2面材24が重ね合わされたシート群26Gが、荷室90Rに応じた長さにカットされ、図4に示す成形金型30にて加熱プレス成形される。成形金型30は、成形面が平坦となった下型31と、成形面に支持突部12を形成するための複数の成形凹部32Uが形成された上型32とで構成される。なお、下型31の成形面のうち成形凹部32Uが形成された部分以外は、平坦部32Hとなっている。
【0034】
シート群26Gの加熱プレス成形では、まず、加熱された成形金型30を型開き状態にして、シート群26Gを下型31と上型32の間にセットし、次いで、成形金型30を型閉じしてシート群26Gを加熱プレスする。すると、シート群26Gから積層板20が形成されると共に、その積層板20が賦形されて、ボード本体部11と支持突部12が形成される(図5参照)。このとき、積層板20のうち、厚み方向で上型32の平坦部32Hと重なる部分は、厚み方向で上型32の成形凹部32Uと重なる部分に比べて大きく圧縮されることとなり、発泡シート21の見掛け密度が高くなる。
【0035】
なお、発泡シート21及び/又は各繊維シート22に塗布されたバインダは、加熱プレス成形が行われるまでに繊維シート22に染み込み、その染み込んだバインダの熱硬化によって、一方の繊維シート22と第1面材23とが接着されると共に、他方の繊維シート22と第2面材24とが接着される。なお、このとき、第1面材23と第2面材24とによって、バインダが積層板20の外側に漏れ出ることが抑えられ、成形金型30の成形面にバインダが付着することが抑えられる。
【0036】
加熱プレス成形が終了すると、積層板20が成形金型30から外され、積層板20に、適宜、トリミングが施される。
【0037】
次に、図6(A)に示されるように、表皮材25が用意される。具体的には、表皮材25としては、積層板20の外縁部全体からはみ出す大きさになっているものを用意する。そして、図6(B)に示されるように、表皮材25が、積層板20の第1面材23に対して、表皮材25の外縁部全体がはみ出すように、例えば接着剤等により貼り合わされる。次いで、図7に示されるように、積層板20からはみ出した表皮材25のはみ出し部25Eが、積層板20のうち第2面材24側に巻き付けられる。なお、はみ出し部25Eは、第2面材24に、例えば接着剤等により貼り合わされる。以上により、図2に示したデッキボード10が完成する。
【0038】
本実施形態に係るデッキボード10の構成及びデッキボード10の製造方法に関する説明は以上である。次に、デッキボード10及びその製造方法の作用効果について説明する。本実施形態のデッキボード10によれば、以下のようにして、嵩上げ材とサイレンサのうち少なくとも一方を削減又は無くすことにより部材の組み付け工数の低減を図ることが可能となる。即ち、デッキボード10では、積層板20が連続気泡構造の発泡シート21を含むので、発泡シート21を圧縮して積層板20を賦形することが可能となる。これにより、積層板20を賦形することで、デッキボードの下面に嵩上げ材としての役割を果たす支持突部12を形成すれば、積層板20に組み付けられる嵩上げ材を削減又は無くすことが可能となり、嵩上げ材の組み付け工数の低減を図ることができる。また、本実施形態では、発泡シート21によってデッキボード10に吸音性を付与することが可能となるので、積層板20に組み付けるサイレンサを削減又は無くすことが可能となり、サイレンサの組み付け工数の低減を図ることができる。しかも、本実施形態では、第1面材23が非通気性であるので、デッキボードの下側からの音に対する遮音性を付与することが可能となる。
【0039】
本実施形態では、板状のボード本体部11の下面から支持突部12が突出している。ここで、ボード本体部11のうち、厚み方向で支持突部12と重なる部分は、厚み方向で支持突部12と重ならない部分に比べて、発泡シート21の見掛け密度が低くなっている。即ち、本実施形態では、発泡シート21のうち厚み方向で支持突部12と重ならない部分を厚み方向に圧縮することで、支持突部12を形成することができる。そして、この支持突部12を、嵩上げ材の代わりとして用いることにより、嵩上げ材を削減又は無くすことが可能となり、部材の組み付け工数を低減することが可能となる。しかも、支持突部12が、デッキボード10に一体に備えられているので、嵩上げ材の取り付け間違いによって生産性が低下することを防ぐことができる。
【0040】
本実施形態では、デッキボード10の下面を構成する第2面材24が通気性を有するので、デッキボード10の下側からの音に対する吸音性をデッキボード10に付与することが可能となる。ボード本体部11の重なり部11Aと支持突部12とを、加熱プレス成形によって発泡シート21をほとんど圧縮しないようにして形成すれば、発泡シート21を構成する硬質ポリウレタン発泡体のセルがほぼ潰されずに存在することとなるため、吸音性をより高めることができる。また、従来のデッキボード10では、サイレンサが点在していたため、吸音性を有する部分と吸音性を有さない部分のばらつきが大きかったが、本実施形態のデッキボード10では、デッキボード10全体に吸音性を付与することが可能となるので、吸音性のばらつきを低減することが可能となる。
【0041】
さらに、本実施形態では、表皮材25をデッキボード10の下面側に巻き付けることにより、積層板20の端部が覆われて、デッキボードの端部の見栄えを良くすることが可能となる。また、表皮材25をデッキボード10の下面側に巻き付けることにより、表皮材25を積層板20から剥がれ難くすることが可能となる。
【0042】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態において、デッキボード10は、第1面材23と第2面材24のうち第1面材23のみを備えた構成であってもよい。
【0043】
(2)上記実施形態において、デッキボード10では、第2面材24が非通気性であってもよい。この場合の例として、第2面材24が樹脂フィルムからなる構成が挙げられる。
【0044】
(3)上記実施形態では、表皮材25のうち、積層板20の第2面材24側に巻き付けられる部分が、表皮材25の外端部の全体であったが、一部のみであってもよい。また、表皮材25の外端部が、積層板20の第2面材24側に巻き付けられていなくてもよい。この場合、表皮材25を、デッキボード10の厚み方向から見て、積層板20と略同じ大きさとすればよい。
【0045】
(4)上記実施形態において、発泡シート21を複数枚積層してもよい。その際、発泡シート21同士の樹脂の種類や特性(密度、硬さ、通気性、厚み等)が同じでもよいし、異なっていてもよい。また、複数の発泡シート21の間に繊維シート22が挟まれていてもよい。
【0046】
(5)上記実施形態では、発泡シート21を挟む繊維シート22が、1対配置されていたが、2対以上配置されていてもよいし、発泡シート21に対して厚み方向で一方又は他方にのみ複数枚配置されていてもよい。繊維シート22を複数枚設ける場合、繊維シート22同士の種類(繊維の種類、繊維長等)や特性(目付量、厚み等)が同じでもよいし、異なっていてもよい。また、繊維シート22を、支持突部12の形成部分にのみ複数枚配置してもよい。
【0047】
(6)上記実施形態では、デッキボード10の上面が平坦に形成されていたが、デッキボード10の上面の一部又は全部に湾曲部や凹凸部等を設けてもよい。
【0048】
(7)デッキボード10を、表皮材25を備えない構成としてもよい。この場合、表皮材25自体が不要となるので、積層板20へ表皮材25を貼り合せる必要が無くなり、デッキボード10を容易に形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
10 デッキボード
11 ボード本体部
12 支持突部
20 積層板
21 発泡シート
22 繊維シート
23 第1面材
24 第2面材
25 表皮材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7