(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】信号制御機
(51)【国際特許分類】
G08G 1/07 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
G08G1/07 A
(21)【出願番号】P 2018149601
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(72)【発明者】
【氏名】五十住 力
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-127663(JP,A)
【文献】特開2017-016432(JP,A)
【文献】特開平05-266395(JP,A)
【文献】特開昭56-168300(JP,A)
【文献】特開2009-9610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号制御中央装置とネットワーク
により接続され、処理部及び記憶部を有し、該記憶部に記憶する現示テーブル及び各階梯の点灯を保持する保持秒数から成る時限表に基づいて、信号灯器に対して点灯制御を行う信号制御機であって、
前記時限表は
、前記ネットワークを介して前記信号制御中央装置から送信され、遠隔制御に用いられるオンライン用時限表と、
予め前記記憶部に記憶され、装置単独で用いられるオフライン用時限表とから成り、
前記処理部では、前記オンライン用時限表及び前記オフライン用時限表に対して、ソフトウェア上で計時と共に前記階梯を進行する現示制御を並列に処理し、
前記信号灯器に対して、
前記信号制御中央装置と前記ネットワークを介して遠隔制御により点灯制御を行うオンライン点灯制御中の前記オンライン用時限表の現階梯の進行に合わせて、前記オフライン用時限表の現階梯を前記オンライン用時限表の現階梯に同期させることを特徴とする信号制御機。
【請求項2】
前記信号灯器に対して前記オンライン点灯制御中の前記オンライン用時限表の現階梯の経過秒数が、前記オフライン用時限表の現階梯の保持秒数より大きい場合には、前記オフライン用時限表の現階梯の保持秒数を延長する現示制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の信号制御機。
【請求項3】
前記オンライン点灯制御中に、前記信号制御中央装置からのオフライン切替指令を受信した場合に、オフライン点灯制御に即時に切替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の信号制御機。
【請求項4】
前記信号灯器に対してオフライン点灯制御中の前記オフライン用時限表の現階梯の進行に合わせて、前記オンライン用時限表の現階梯を前記オフライン用時限表の現階梯に同期させることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の信号制御機。
【請求項5】
前記信号灯器に対して前記オフライン点灯制御中の前記オフライン用時限表の現階梯の経過秒数が、前記オンライン用時限表の現階梯の保持秒数より大きい場合には、前記オンライン用時限表の現階梯の保持秒数を延長する現示制御を行うことを特徴とする請求項4に記載の信号制御機。
【請求項6】
前記信号灯器に対してオフライン点灯制御中に、前記信号制御中央装置からオンライン切替指令を受信した場合に、オンライン点灯制御に即時に切替えることを特徴とする請求項4又は5に記載の信号制御機。
【請求項7】
前記オンライン点灯制御出力を行う前に、前記オンライン用時限表の異常の有無の判定を行うことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の信号制御機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号制御中央装置と接続し、信号灯器の点灯制御を行う信号制御機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、交通管制センターの信号制御中央装置と電気通信回線を介して遠隔制御によりオンライン点灯制御可能であり、各交差点に設けられた信号制御機が開示されている。これらのオンライン点灯制御を行う信号制御機は、信号制御中央装置とオフラインにし、装置単独で動作する機能も備えている。
【0003】
また、特許文献2には、UD形伝送方式と呼ばれるIP技術を取り入れたデジタル伝送方式によって、信号制御中央装置及び信号制御機間の通信がなされている方式が開示されている。
【0004】
そして、これらのUD形伝送方式を利用して、特許文献3に開示された中央装置から各信号制御機に対して、信号制御に用いられる各階梯時間を含む時限表情報を送信し、この時限表情報に従って信号制御機は繋がっている信号灯器の点灯制御を行うテーブル制御方式が広く普及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-031907号公報
【文献】特開2006-004403号公報
【文献】特開2015-111349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
信号制御機は通常では、信号制御中央装置とオンライン点灯制御により遠隔制御されているが、信号制御中央装置のメンテナンスやソフトウェア上に不具合が発生した場合等に、管理下の信号制御機をオフライン動作に移行させることがある。
【0007】
このようなオフライン動作に切替える際に、オフライン切替指令情報を信号制御中央装置から信号制御機に送信することになるが、上述のテーブル制御方式を採用している場合には、点灯制御しているオンライン用時限表の現サイクルを経過させて次のサイクルの開始のタイミングでないと、オフライン用時限表に切替えることができないという問題がある。
【0008】
従って、例えば誤った時限表でオンライン点灯制御を行っている場合や信号制御中央装置から送信した時限表に従ってオンライン点灯制御を行っていない場合等において、即時にオンライン点灯制御からオフライン点灯制御に切替えたい場合に切替えることができない。同様に、オフライン点灯制御からオンライン点灯制御への切替えも即時に切替えることができない。
【0009】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、処理部においてオンライン用時限表及びオフライン用時限表に基づく現示制御を並列に処理させることで、信号制御中央装置からの切替指令に対して、即時にオンライン用時限表又はオフライン用時限表に基づく点灯制御に切替えることが可能な信号制御機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る信号制御機は、信号制御中央装置とネットワークにより接続され、処理部及び記憶部を有し、該記憶部に記憶する現示テーブル及び各階梯の点灯を保持する保持秒数から成る時限表に基づいて、信号灯器に対して点灯制御を行う信号制御機であって、前記時限表は、前記ネットワークを介して前記信号制御中央装置から送信され、遠隔制御に用いられるオンライン用時限表と、予め前記記憶部に記憶され、装置単独で用いられるオフライン用時限表とから成り、前記処理部では、前記オンライン用時限表及び前記オフライン用時限表に対して、ソフトウェア上で計時と共に前記階梯を進行する現示制御を並列に処理し、前記信号灯器に対して、前記信号制御中央装置と前記ネットワークを介して遠隔制御により点灯制御を行うオンライン点灯制御中の前記オンライン用時限表の現階梯の進行に合わせて、前記オフライン用時限表の現階梯を前記オンライン用時限表の現階梯に同期させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る信号制御機によれば、処理部においてオフライン用時限表の現示制御、及びオンライン用時限表の現示制御を並列に処理することで、信号制御中央装置からのオフライン切替指令又はオンライン切替指令に基づいて、交差点の各信号灯器に対する点灯制御を、並列処理しているオフライン用時限表の現示制御又はオンライン用時限表の現示制御に即時に切替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】オフライン用時限表の採用処理のフローチャート図である。
【
図4】オンライン用時限表とオフライン用時限表との現階梯を同期させる処理のフローチャート図である。
【
図5】オンライン、オフラインの切替指令に基づく切替え処理のフローチャート図である。
【
図6】時間軸に対してオンライン用時限表とオフライン用時限表を並列に配置した説明図である。
【
図7】時間軸に対してオンライン用時限表とオフライン用時限表を並列に配置した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は交通管制システムのシステム構成図であり、この交通管制システムは、交通管制センターCに設置された信号制御中央装置1と、この信号制御中央装置1に接続した回線集約装置2と、信号制御中央装置1と回線集約装置2を介してネットワーク接続した信号制御機3とから構成されている。
【0014】
信号制御中央装置1には、図示しない端末入力部及びモニタ部が接続されており、後述する時限表Gの設定情報や、オンライン、オフライン切替指令情報を信号制御機3に対して送信する制御部を備えている。また、信号制御中央装置1は、信号制御機3から履歴情報や、図示しない交差点に設置された車両感知器等から車両感知情報を、回線集約装置2を介して受信している。
【0015】
回線集約装置2は支柱等に取り付けられた筐体Bに収容される装置であり、
図1のシステム構成図の筐体B以外に、信号制御機3の筐体内等の適宜の場所に設けるようにしてもよい。
【0016】
回線集約装置2は、ルータ機能を備えており、上位ネットワークN1及び下位ネットワークN2間のルーティング処理等を行っている。上位ネットワークN1は、信号制御中央装置1と電話回線等により接続され、下位ネットワークN2は1つ又は複数の信号制御機3とローカルネットワークにより接続されている。
【0017】
通常では、信号制御機3は1交差点Iに1機設けられており、1機の信号制御機3に対して複数の自動車用、歩行者用の信号灯器Lが接続されている。そして、所定のエリア内の交差点毎に配置された複数の信号制御機3は、1つの回線集約装置2に集約されて信号制御中央装置1に接続されることになる。更に、信号制御中央装置1は複数の回線集約装置2と接続されており、多数の信号制御機3に対して信号制御の各種指令や各種端末の情報の収集を行うことができる。
【0018】
信号制御機3は処理部3aと記憶部3bとを有し、記憶部3bに信号灯器Lの点灯を制御する現示テーブルTと、この現示テーブルTの各階梯の保持秒数である時限表Gを記憶している。
【0019】
図2は記憶部3bに記憶されている現示テーブルTの一例である。交差点に設置されている信号灯器Lは、例えば主道路の歩行者用の信号灯器L11、車両用の信号灯器L12及び従道路の歩行者用の信号灯器L21、車両用の信号灯器L22とから構成されているものとする。
【0020】
現示テーブルTは複数の階梯Kから構成されており、階梯K1では、例えば主道路の歩行者用の信号灯器L11及び自動車用の信号灯器L12が青点灯、従道路の歩行者用の信号灯器L21及び自動車用の信号灯器L22が赤点灯を行う点灯制御が設定されている。階梯K2では、歩行者用の信号灯器L11が青点滅、自動車用の信号灯器L12が青点灯、歩行者用の信号灯器L21及び自動車用の信号灯器L22が赤点灯を行う点灯制御が設定されている。
【0021】
なお、
図2の現示テーブルTで示す直線は青点灯、点線は青点滅、波線は黄点灯、二重線は赤点灯を示しており、最終の階梯Knである階梯K10では、全ての信号灯器Lが赤点灯を行う点灯制御が設定されている。
【0022】
それぞれの階梯K1~Knには、各点灯を保持する保持秒数Sが設定されており、これらの保持秒数Sから成る時限表Gが設定されている。階梯K1~Knまでの保持秒数Sの合計秒数を1サイクルとして、階梯K1~Knから成るサイクルを繰り返して、現示テーブルTに基づく各信号灯器Lの現示制御を行っている。
【0023】
記憶部3bは、時限表Gとして
図2に示すようにオンライン用時限表G1及びオフライン用時限表G2を有している。例えば、オンライン用時限表G1の階梯K1の保持秒数は30秒であり、オフライン用時限表G2の階梯K1の保持秒数は25秒となっている。
【0024】
また、オフライン用時限表G2は、予め記憶部3bに記憶されており、通常オフライン用時限表G21と保安オフライン用時限表G22とから構成されている。
【0025】
通常オフライン用時限表G21とは時刻、時間帯や日付等と関連付けた時限表Gであり、例えば朝7時から9時までの時間帯に、主道路の信号灯器Lの青点灯の保持秒数Sの長い階梯K1とした通常オフライン用時限表G21を設定するようにする。
【0026】
このように記憶部3bには時間帯、曜日、日付等に応じて設定された通常オフライン用時限表G21を記憶しており、これに加えて、標準的な各階梯Kの保持秒数Sを設定した保安オフライン用時限表G22を記憶している。
【0027】
更に、信号制御機3は階梯Kに基づく点灯制御と関係がなく、信号灯器Lに対して閃光を開始する閃光制御モードも備えている。現示テーブルTの点灯制御処理に不具合が発生した場合に、フェールセーフ機能として閃光制御モードで運用することもある。
【0028】
図3は信号制御機3におけるオフライン用時限表G2の設定処理のフローチャート図であり、起動後にステップST11において、分単位で現在時刻が更新されたか否かを判定する。更新されていない場合には、ステップST11の処理を繰り返し、更新した場合にはステップST12に移行する。
【0029】
ステップST12では、更新した時刻に対応する通常オフライン用時限表G21が存在するか否かを判定する。現在時刻に対応する通常オフライン用時限表G21が存在する場合は、ステップST13に移行し、ステップST13において対応する通常オフライン用時限表G21を、現在のオフライン用時限表G2としてセットする。
【0030】
ステップST12において、現在時刻に対応する通常オフライン用時限表G21が存在しない場合には、ステップST14に移行し、保安オフライン用時限表G22を現在のオフライン用時限表G2としてセットする。
【0031】
これらの設定処理により、現在進行しているオフライン用時限表G2の現サイクルの最終の階梯Knの次に開始するサイクルから、セットした通常オフライン用時限表G21又は保安オフライン用時限表G22を適用して、現示制御を行う。
【0032】
オンライン用時限表G1データとして送信するタイミングの一例として、後述する信号制御中央装置1からのオンライン切替指令に併せて、オンライン用時限表G1データが送信され、記憶部3bに記憶するようにしてもよい。または、オンライン用時限表G1を新たにセットする場合にのみ信号制御中央装置1からオンライン用時限表G1データとして送信するようにしてもよい。
【0033】
このように、信号制御機3の記憶部3bには、階梯K1~Knに対するオフライン用時限表G2とオンライン用時限表G1を記憶し、処理部3aでは、オンライン用時限表G1の現示制御及びオフライン用時限表G2の現示制御を並列に処理している。
【0034】
なお、この現示制御とは各信号灯器Lに点灯制御出力を行わず、ソフトウェア上で計時と共に各階梯Kを進行してゆく処理のことである。また、並列に現示制御を処理しているオンライン用時限表G1の現示制御又はオフライン用時限表G2の現示制御に従って処理部3aは、交差点の各信号灯器Lに対して点灯制御出力を行っている。
【0035】
図4はオンライン点灯制御中のときのオンライン用時限表G1の現階梯KNにオフライン用時限表G2の現階梯KMを強制的に同期させる同期処理のフローチャート図である。
【0036】
信号制御機3の処理部3aにより処理する
図4のフローチャートのプログラムは、
図2における階梯K1の現示制御開始時に起動する。
図2の階梯K1ではオンライン用時限表G1の現示制御及びオフライン用時限表G2の現示制御を並列して処理している。
【0037】
時間と共に進行するオンライン用時限表G1の現在保持している階梯Kを現階梯KNとし、プログラム上で記憶しているオンライン用時限表G1の階梯Kを階梯Knとする。同様に時間と共に進行するオフライン用時限表G2の現在保持している階梯Kを現階梯KMとし、プログラム上で記憶しているオフライン用時限表G2の階梯Kを階梯Kmとして説明する。
【0038】
プログラムを起動すると、先ずステップST21において、オンライン用時限表G1の現階梯K1、記憶するオンライン用時限表G1の階梯K1、オフライン用時限表G2の現階梯K1、記憶するオフライン用時限表G2の階梯K1としてセットし、ステップST22に移行する。
【0039】
ステップST22は、オンライン用時限表G1の現階梯KNが進行したか否かを判定する判定処理であり、例えばオンライン用時限表G1の現階梯KNがK1からK2に進行したとする。この場合は、現階梯K2は記憶しているオンライン用時限表G1の階梯K1と異なるので、KN≠Kn(K2≠K1)が成立し、ステップST23に移行することになる。
【0040】
ステップST23では、進行したオンライン用時限表G1の現階梯KNが最初の階梯K1であるか否かの判定を行う。オンライン用時限表G1の現階梯KNが現階梯K1である場合には、ステップST24に移行し、記憶しているオンライン用時限表G1の階梯Knを階梯K1に更新する。同時に記憶しているオフライン用時限表G2の階梯Kmを階梯K1に更新する。
【0041】
また、ステップST23において、現階梯KNが階梯K1でない場合には、ステップST25に移行し、記憶しているオンライン用時限表G1の階梯Knを階梯Kn+1に更新する。
【0042】
例えば、上述のようにオンライン用時限表G1の現階梯K2に進行した場合には、ステップST23からステップST25に移行し、記憶しているオンライン用時限表G1の階梯K2、オフライン用時限表G2の階梯K2を更新する。
【0043】
ステップST24、ST25においてオンライン用時限表G1の階梯Kn、オフライン用時限表G2の階梯Kmを更新した後に、それぞれステップST26に移行する。
【0044】
ステップST26は、オフライン用時限表G2の現階梯KMを進行させる処理であり、オフライン用時限表G2の現階梯KMを記憶しているオフライン用時限表G2の階梯Kmに強制的に進行させる。
【0045】
このように、オンライン用時限表G1の現階梯KNが進行することに合わせて、オフライン用時限表G2の現階梯KMも進行した後に、ステップST22に戻る。
【0046】
また、ステップST22のオンライン用時限表G1の現階梯KNが進行したか否かを判定する判定処理において、オンライン用時限表G1の現階梯KNと記憶しているオンライン用時限表G1の階梯Knが同じ値の場合は、現階梯Knが次の現階梯Knに進行していないことを意味し、ステップST27に移行する。
【0047】
ステップST27では、オンライン用時限表G1の現階梯KNの経過秒数が、オフライン用時限表G2の現階梯KMの保持秒数Sを越えているか否かを判定する。オンライン用時限表G1の現階梯KNとオフライン用時限表G2の現階梯KMとは同期するため、例えば
図2に示すオンライン用時限表G1の現階梯K1、オフライン用時限表G2の現階梯K1であって、オンライン用時限表G1の現階梯K1の経過秒数がオフライン用時限表G2の現階梯K1の保持秒数Sである25秒を越えた場合には、ステップST28に移行することになる。
【0048】
ステップST28ではオンライン用時限表G1の現階梯K1の経過秒数に合わせて、オフライン用時限表G2の現階梯K1の保持秒数Sを延長することになる。延長後に、ステップST22に戻る。同様にステップST27において、オンライン用時限表G1の現階梯KNの経過秒数がオフライン用時限表G2の現階梯KMの保持秒数Sを越えていない場合も、ステップST22に戻ることになる。
【0049】
このようにステップST22においてオンライン用時限表G1の現階梯KNが進行せず維持している場合には、ステップST27、ST28を繰り返すことになる。なお、ステップST27、ST28を繰り返し処理及びステップST22~ST26の繰り返し処理は、何れも数百msec程度の間隔で行われる。
【0050】
図4のステップST22~ST26の処理により、
オンライン点灯制御中のオンライン用時限表G1の現階梯KNの進行に合わせて、オフライン用時限表G2の現階梯KMも強制的に現階梯KNに同期して進行する。
【0051】
図4はオンライン点灯制御中のオンライン用時限表G1の現階梯KNの進行に合わせて、オフライン用時限表G2の現階梯KMを強制的に現階梯KNに同期させる処理であるが、オフライン点灯制御中のオフライン用時限表G2の現階梯KMの進行に合わせて、オンライン用時限表G1の現階梯KNを強制的に現階梯KMに同期させることもできる。この場合は、
図4の現階梯KNを現階梯KMに、階梯Knを階梯Kmにそれぞれ入れ替えることで可能となる。
【0052】
これら2種類の同期処理は、処理部3aによる現在の各信号灯器Lの点灯制御出力がオンライン点灯制御中かオフライン点灯制御中かによって、切替えられる。
【0053】
また、処理部3aは信号制御中央装置1からのオフライン切替指令又はオンライン切替指令に基づいて、交差点の各信号灯器Lに対して点灯制御出力を行う時限表Gを、オフライン用時限表G2又はオンライン用時限表G1に即時に切替える処理を行う。
【0054】
図5は信号制御中央装置1からのオフライン、オンライン切替指令に基づく信号制御機3の時限表Gの切替え処理のフローチャート図である。オフライン切替指令とは、点灯制御出力をオフライン用時限表G2に切替える指令であり、オンライン切替指令とは、点灯制御出力をオンライン用時限表G1に切替える指令である。
【0055】
処理部3aの時限表Gの切替えプログラムが起動後に、ステップST31では信号制御中央装置1からオフライン、オンライン切替指令を受信したか否かを判定する。切替指令を受信していない場合には、ステップST31のループ処理を繰り返す。ステップST31で信号制御中央装置1からの切替指令を受信した場合は、ステップST32に移行し、交差点の各信号灯器Lに対してオンライン用時限表G1に基づくオンライン点灯制御中か、オフライン用時限表G2に基づくオフライン点灯制御中かを判定する。
【0056】
ステップST32において、信号制御機3がオンライン用時限表G1に基づくオンライン点灯制御中である場合は、ステップST33に移行する。オフライン用時限表G2に基づくオフライン点灯制御中である場合は、ステップST34に移行する。
【0057】
ステップST33及びステップST34は同一の処理であり、信号制御中央装置1からの切替指令がオンライン切替指令か、或いはオフライン切替指令かを判定する。ステップST33において、信号制御中央装置1からの切替指令がオンライン切替指令である場合は、ステップST35に移行する。
【0058】
なお、信号制御中央装置1からの切替指令がオンライン切替指令の場合には、オンライン切替指令に併せて、送信された新たなオンライン用時限表G1データを、一旦記憶部3bに記憶して新たなオンライン用時限表G1データを採用できるか確認することになる。
【0059】
ステップST35では、新たなオンライン用時限表G1の異常の有無のチェックを行う。例えば、各階梯Kの秒数に対して、最低保持秒数以下の秒数が設定されていないか、また1サイクル秒数が最大設定可能サイクル秒数を超過していないか等のチェックを行う。
【0060】
このチェック処理により、新たなオンライン用時限表G1に異常がないと判定した場合はステップST36に移行し、記憶部3bに記憶されている現示テーブルTは新たなオンライン用時限表G1に置き換え、信号制御機3は現在点灯制御の途中から直ちに新たなオンライン用時限表G1に切替えてオンライン点灯制御を開始することになる。
【0061】
ステップST35において、新たなオンライン用時限表G1に異常があると判定した場合には、ステップST37に移行する。ステップST37ではオンライン用時限表G1の連続異常回数をカウントしており、例えば2回連続して新たなオンライン用時限表G1の異常を検出したか否かの判定を行う。連続して異常を検出した場合は、オフライン用時限表G2を採用した点灯制御に切替わることになる。
【0062】
ステップST37において、新たなオンライン用時限表G1の異常を検出が1回目の場合には、ステップST38に移行し、現在点灯制御中のオンライン用時限表G1を用いて、継続して点灯制御を行うことになる。
【0063】
また、ステップST34において、信号制御中央装置1からの切替指令がオフライン切替指令である場合にはステップST41に移行し、信号制御機3は現在点灯制御中のオフライン用時限表G2を継続して点灯制御を行うことになる。
【0064】
ステップST33において、信号制御中央装置1からの切替指令がオフライン切替指令である場合、又はステップST37において、新たなオンライン用時限表G1が2回目の連続して異常であると判定した場合にはステップST39に移行する。
【0065】
移行したステップST39において、信号制御機3はオフライン用時限表G2に切替えて、オフライン点灯制御を開始する。なお、前述のように並列処理するオンライン用時限表G1の現示制御及びオフライン用時限表G2の現示制御は、各階梯Kで同期しているため、即時にオンライン用時限表G1からオフライン用時限表G2に切り替えが可能である。
【0066】
ステップST34において、信号制御中央装置1からの切替指令がオンライン切替指令である場合は、ステップST40に移行し、ステップST35の処理と同じ新たなオンライン用時限表G1のチェック処理を行う。
【0067】
なお、ステップST35及びステップST40の新たなオンライン用時限表G1のチェック処理は、信号制御中央装置1でのオンライン用時限表G1を作成時に、ソフトウェアがチェックすることで省略することも可能である。このステップST35の処理の省略に伴い、ステップST37、ST38の処理も省略することになる。
【0068】
ステップST40において、点灯制御を開始する新たなオンライン用時限表G1に異常があると判定した場合には、ステップST41に移行して、現在点灯制御中のオフライン用時限表G2を継続して点灯制御を行うことになる。
【0069】
ステップST40において、点灯制御を開始する新たなオンライン用時限表G1に異常がないと判定した場合には、ステップST36に移行する。ステップST36において、記憶部3bに記憶されている現示テーブルTは新たなオンライン用時限表G1に置き換え、信号制御機3は新たなオンライン用時限表G1に即時に切替えて、オンライン点灯制御を開始する。
【0070】
図6及び
図7は、
図2の現示テーブルTの時間軸tに対してオンライン用時限表G1とオフライン用時限表G2とを並列に配置した説明図であり、分かり易くするために信号灯器L11のみの各階梯Kを表している。
【0071】
図2の現示テーブルTの運用中でオンライン点灯制御中であって、
図6に示す、階梯K1から15秒経過時の時間t1に信号制御中央装置1からオフライン切替指令を受信した場合には、
図5のフローチャート図のステップST33、ST39の処理により、時間t1から即時にオフライン用時限表G2の階梯K1の15秒経過からオフライン用時限表G2に切替わり、このオフライン用時限表G2に基づくオフライン点灯制御を開始することになる。
【0072】
また、
図2の現示テーブルTの運用中でオンライン点灯制御中であって、
図7に示す、階梯K1から27秒経過時の時間t2に信号制御中央装置1からオフライン切替指令を受信した場合には、
図4のフローチャート図のステップST27、ST28によりオフライン用時限表G2の階梯K1の保持秒数Sに延長時間Pを加える延長処理を行っている。
【0073】
そして、信号制御中央装置1からオフライン切替指令を受信したことによる
図5のフローチャート図のステップST33、ST39の処理により、時間t2から即時にオフライン用時限表G2に切替わり、このオフライン用時限表G2に基づくオフライン点灯制御を開始することになる。この場合は、
図7に示すようにオフライン用時限表G2の切替えと同時に、階梯K2に進行して、交差点の各信号灯器Lに対してオフライン用時限表G2に基づくオフライン点灯制御を開始することになる。
【0074】
以上のように、本発明に係る信号制御機3によれば、処理部3aにおいてオンライン用時限表G1の現示制御、及びオフライン用時限表G2の現示制御を並列に処理し、オンライン用時限表G1の階梯K及びオフライン用時限表G2の階梯Kは同期しながら進行する。このように処理することで、信号制御中央装置1からのオフライン切替指令又はオンライン切替指令を受信した際に、交差点の各信号灯器Lに対する点灯制御出力を、並列処理しているオフライン用時限表G2の現示制御又はオンライン用時限表G1の現示制御に即時に切替えることができる。
【0075】
従って、例えば誤った時限表でオンライン点灯制御を行った場合であっても、オンライン点灯制御出力をオフライン点灯制御出力に即時に切替えることが可能である。同様に、オフライン点灯制御出力を、オンライン点灯制御出力に即時に切替えることもできる。
【符号の説明】
【0076】
1 信号制御中央装置
2 回線集約装置
3 信号制御機
3a 処理部
3b 記憶部
G 時限表
G1 オンライン用時限表
G2 オフライン用時限表
K 階梯
L 信号灯器
S 保持秒数
T 現示テーブル