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特許71713013-グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシランの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】3-グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシランの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
C07F7/18 S
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018150011
(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公開番号】P2019031492
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】17185524.0
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マークス ルーデク
(72)【発明者】
【氏名】ズーザン ヴィッチェ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン バーデ
(72)【発明者】
【氏名】クラウディア ドレッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ブアクハート ヨーン
(72)【発明者】
【氏名】トアステン ペーターレ
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01035126(EP,A2)
【文献】特表2010-518031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
(R’)O-(CH-Si(OR) (I)
[式中、
基Rは、独立して、メチル基またはエチル基を表し、かつ
R’は、基HC(O)CHCH-を表す]
の3-グリシジルオキシプロピルアルコキシシランの製造方法であって、
(i) 一般式(II)
(R’)O-C (II)
[式中、
R’は、基HC(O)CHCH-を表す]
の官能化アルケンと、
(ii) 一般式(III)
HSi(OR) (III)
[式中、
基Rは、独立して、メチル基またはエチル基を表す]
の少なくとも1つのハイドロジェンアルコキシシランとを、
(iii) 均一系触媒としてのKarstedt触媒またはヘキサクロロ白金酸系触媒と、
(iv) 2-エチルヘキサン酸および/またはイソノナン酸と
の存在下、かつ酢酸の不存在下で反応させてヒドロシリル化の生成物を得ることによる方法。
【請求項2】
前記(i)による官能化アルケンと、前記(ii)によるハイドロジェンアルコキシシランとを、0.8~1.3:1のモル比で使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記(iii)によるKarstedt触媒(白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体;O[Si(CHCH=CHPt)を単独で使用するか、またはヘキサクロロ白金酸(H[PtCl]、Speier触媒とも称される)を使用し、追加の溶媒を添加または使用しないことを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記(iii)による触媒を、そのPt含有量に関して、前記(i)による官能化アルケンに対して、1:2000000~1:50000のモル比で使用することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記(iii)による触媒のPt分と、前記(iv)による助触媒としての2-エチルヘキサン酸および/またはイソノナン酸とを、1:250~1:25000のモル比で使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
- 方法変形例Aによれば、前記成分(i)、(ii)、(iii)および(iv)を予備混合し、これを、前記反応を実施するための反応器もしくは反応システムに供給して、混合しながら反応温度に加熱するか、または
- 方法変形例Bによれば、前記成分(i)、(iii)および(iv)を反応器もしくは反応システムに装入もしくは供給して、混合しながら反応温度に加熱し、そして混合しながら前記成分(ii)を供給するか、または
- 方法変形例Cによれば、前記成分(i)および(ii)を反応器もしくは反応システムに装入もしくは供給して、混合しながら反応温度に加熱し、そして混合しながら前記成分(iii)および(iv)を単独でもしくは混合物として供給するか、または
- 方法変形例Dによれば、前記成分(ii)、(iii)および(iv)を反応器もしくは反応システムに装入もしくは供給して、混合しながら反応温度に加熱し、そして混合しながら前記成分(i)を供給する
ことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記反応を、反応器内で、80~230℃の反応温度で、0.5~20バール(絶対圧)の圧力で行うことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記反応の生成物を後処理し、その際、前記反応後に得られた生成物混合物を分留して目的生成物を得ることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記反応および前記後処理を、バッチ式または連続式で行うことを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランを、酢酸またはアセトキシを含まない形態で得ることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランを取得し、その際、前記得られた生成物は、3.5~5.5のpH値を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランを取得し、その際、前記得られた生成物は、≦10μS/cmの導電率値を有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Pt系均一系触媒と助触媒としての2-エチルヘキサン酸および/またはイソノナン酸との存在下でのアリルグリシジルエーテルのヒドロシリル化による3-グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシランの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グリシジル官能性シランは、オルガノシラン化学における重要な工業用中間体または最終生成物である。該シランは、複合材料における接着促進剤として、例えば塗料産業およびガラス繊維産業において、注型技術および接着剤産業において使用されており、また光学ガラスのコーティングにおいても該化合物は重要な役割を果たしている。
【0003】
3-グリシジルオキシプロピルアルコキシシランの製造は、例えばヒドロシリル化触媒の存在下で水素原子含有トリアルコキシシランをアリルグリシジルエーテルと反応させることによって行うことができ、これを以下の一般反応式で記述することができる:
【化1】
ここで、Rは、アルキルであり、例えばメチル、エチル、プロピルである。例えば、Rがメチルの場合には3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランの製造が記述され、Rがエチルの場合には3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランの製造が記述される。この場合、副生成物として、異性体CH(O)CHCHOCHCH(Si(OR))CH、相応する8員複素環、さらにはグリシジルオキシトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、プロペニルグリシジルエーテルおよびテトラアルコキシシランならびに高沸点成分が生じる。特に、蒸留による分離除去が困難な化合物であるグリシジルオキシプロピルトリアルコキシシラン異性体および8員複素環には、蒸留塔での分離性能を高くし、かつ蒸留時間を長くすることが必要とされる。相応するプロペニルグリシジルエーテルが形成されることや、テトラアルコキシシランが形成されることは、選択率が非常に低下することを意味する。
【0004】
H-シランによるC=C二重結合含有化合物のヒドロシリル化反応は、バッチ式または連続式のいずれかで行われ、このヒドロシリル化反応は、通常は貴金属によって触媒される。3-グリシジルオキシプロピルトリアルコキシシランの製造は、通常は、Speier触媒、HPtClまたはKarstedt触媒、ジビニルテトラメチルジシロキサン-Ptを用いた均一系触媒反応により行われるが(特に欧州特許出願公開第0277023号明細書(EP 0 277 023)、欧州特許出願公開第0288286号明細書(EP 0 288 286)、特許第128763号明細書(JP 128763)および独国特許出願公開第2159991号明細書(DE 2 159 991))、貴金属を用いた不均一系触媒反応により行われる場合もある(欧州特許出願公開第0548974号明細書(EP 0 548 974)、米国特許第4736049号明細書(US 4 736 049))。
【0005】
トリメトキシシランによるアリルグリシジルエーテルのヒドロシリル化を均一系Pt触媒の存在下で行った場合には、使用するアリルグリシジルエーテルのうち無視できない割合が異性化され、したがってもはやこれをヒドロシリル化に利用することができなくなることが認められる。これによって、通常は選択率がかなり低下する。
【0006】
従来の均一系触媒のもう1つの欠点は、コロイド状Ptが形成される点にある。このコロイド状Ptによっても同様に副生成物の形成が増大する。このコロイド状Ptの形成は、特にKarstedt型均一系触媒の場合に認められる。目的生成物の選択率の低下に加え、使用したオレフィンの異性化が生じ、異性化後に該オレフィンをヒドロシリル化に利用することはもはや不可能である。
【0007】
欧州特許出願公開第1694687号明細書(EP 1 694 687)から、Pt触媒の存在下でのフルオロオレフィンのヒドロシリル化によるフルオロアルキル基含有ケイ素化合物の製造方法を得ることができるが、この方法では、特に使用するオレフィンの純度に留意しなければならない。
【0008】
ソ連国特許出願公開第415268号明細書(SU 415268)は、アリルアミンのヒドロシリル化によるアミノアルキルシランの製造を教示しているが、この反応も、触媒の存在下で、助触媒としての酸、特に酢酸を添加して行われる。
【0009】
さらに、欧州特許出願公開第0985675号明細書(EP 0 985 675)には、アルキルシランの製造のために、炭化水素オレフィンのヒドロシリル化において助触媒として酸を使用することが開示されている。欧州特許出願公開第0985675号明細書(EP 0 985 675)には、好ましい酸として酢酸が記載されている(米国特許第5986124号明細書(US 5,986,124)も参照のこと)。
【0010】
オキシラン環(エポキシ官能基およびグリシジルオキシ官能基におけるオキシラン環も参照のこと)は通常は酸の影響下で開環し、したがって非常に反応性の高い種であることは周知である。オキシラン環の開環は、この場合、酸触媒によっても任意の他の求核性試薬によっても生じる(S. Hauptmann, ”Organische Chemie”, 1. Aufl. 1985, VEB Verlag fuer Grundstoffindustrie, Leipzig, p.558ff)。
【0011】
欧州特許出願公開第2114963号明細書(EP 2 114 963)には、Pt触媒、適切な溶媒または希釈剤の存在下で、酢酸を添加して、オキシラン環の選択率および保持に関して十分に規定された条件下でオレフィングリシドエーテルをヒドロシリル化することによりグリシジルオキシアルキルアルコキシシランを有利に製造できることが示されている。しかし工業的規模では、酢酸または相応するアセトキシ化合物が、何らかの様式でかつ何らかの理由で最終生成物においても少なくともある割合で認められ、これによって生成物における酸性度が高まり、このことが、この生成物の様々な用途においてまたも問題を生じさせる。通常は、溶媒を含有するKarstedt触媒が市販されており、例えばキシレン中で2%の溶液として市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許出願公開第0277023号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0288286号明細書
【文献】特許第128763号明細書
【文献】独国特許出願公開第2159991号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0548974号明細書
【文献】米国特許第4736049号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1694687号明細書
【文献】ソ連国特許出願公開第415268号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0985675号明細書
【文献】米国特許第5986124号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2114963号明細書
【非特許文献】
【0013】
【文献】S. Hauptmann, ”Organische Chemie”, 1. Aufl. 1985, VEB Verlag fuer Grundstoffindustrie, Leipzig, p.558ff
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、Pt含有均一系触媒、特にKarstedt触媒を使用した3-グリシジルオキシプロピルアルコキシシランの工業的製造方法であって、上記の欠点を有しておらず、かつ選択率および収率上の利点が少なくとも数量の大きさの点で保持される方法を提供することを課題としていた。特別な目的は、酢酸または同等の酸性揮発性助触媒を含まず、さらには有機溶媒、特に炭化水素も実質的に含まない生成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題は、本発明によれば特許請求の範囲に記載の特徴にしたがって解決される。
【0016】
驚くべきことに、有利にも、
(i) 一般式(II)
(R’)O-C (II)
[式中、
R’は、HC(O)CHCH-基(いわゆるグリシジル基)を表す]
の官能化アルケン[以下、略してオレフィン成分とも呼ぶ][アリルグリシジルエーテルまたは略してAGEとも呼ぶ]と、
(ii) 一般式(III)
HSi(OR) (III)
[式中、
基Rは、独立して、メチル基またはエチル基を表す]
の少なくとも1つのハイドロジェンアルコキシシラン、好ましくはハイドロジェントリメトキシシラン[略してTMOSと呼ぶ]またはハイドロジェントリエトキシシラン[略してTEOSと呼ぶ]とを、
(iii) 均一系触媒としてのKarstedt触媒またはヘキサクロロ白金酸系触媒と、
(iv) 2-エチルヘキサン酸(沸点226~229℃)および/またはイソノナン酸(沸点232~236℃)と
の存在下で反応させることによって、一般式(I)
(R’)O-(CH-Si(OR) (I)
[式中、
基Rは、独立して、メチル基またはエチル基を表し、かつ
R’は、グリシジル基HC(O)CHCH-を表す]
の3-グリシジルオキシプロピルアルコキシシランが、ヒドロシリル化の(目的)生成物として、式Iにしたがってグリシジル官能基を保持した状態で、酢酸またはアセトキシ基を含まずに、かつ実質的に有機溶媒を用いずに、有利にも簡便かつ経済的に得られることが判明した。
【発明を実施するための形態】
【0017】
したがって本発明の対象は、一般式(I)
(R’)O-(CH-Si(OR) (I)
[式中、
基Rは、独立して、メチル基またはエチル基を表し、かつ
R’は、基HC(O)CHCH-を表す]
の3-グリシジルオキシプロピルアルコキシシランの製造方法であって、
(i) 一般式(II)
(R’)O-C (II)
[式中、
R’は、基HC(O)CHCH-を表す]
の官能化アルケン[以下、略してオレフィン成分とも呼ぶ][アリルグリシジルエーテルまたは略してAGEとも呼ぶ]と、
(ii) 一般式(III)
HSi(OR) (III)
[式中、
基Rは、独立して、メチル基またはエチル基を表す]
の少なくとも1つのハイドロジェンアルコキシシラン、好ましくはハイドロジェントリメトキシシラン[略してTMOSと呼ぶ]またはハイドロジェントリエトキシシラン[略してTEOSと呼ぶ]とを、
(iii) 均一系触媒としてのKarstedt触媒またはヘキサクロロ白金酸系触媒と、
(iv) 2-エチルヘキサン酸および/またはイソノナン酸と
の存在下で反応させてヒドロシリル化の(目的)生成物を得ることによる方法である。
【0018】
本発明による方法では、(i)によるオレフィン成分と、(ii)によるハイドロジェンアルコキシシランとを、0.8~1.3:1、好ましくは1.03~1.25:1、特に好ましくは1.07~1.22:1、極めて特に好ましくは1.10~1.19:1、殊に1.12~1.17:1.0のモル比で使用する。
【0019】
さらに本発明による方法では、(iii)によるKarstedt触媒(白金(0)-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体;O[Si(CHCH=CHPt)を単独で使用するか、またはヘキサクロロ白金酸(H[PtCl]、「Speier触媒」とも呼ぶ)を使用し、追加の溶媒を添加または使用しない。
【0020】
有利には、本発明による方法では、反応混合物中のPt含有量(金属白金として算出)が、反応材料全体、すなわち反応の実施に使用する成分(i)、(ii)、(iii)および(iv)の量の合計を基準として、好ましくは1.2~3重量ppm、特に好ましくは1.5~2.5重量ppm、殊に1.7~2.3重量ppmとなるように調整する。
【0021】
この場合、(iii)による触媒を、そのPt含有量(金属白金として算出)に関して、(i)によるオレフィン成分に対して、有利には1:2000000~1:50000、好ましくは1:1000000~1:100000、特に好ましくは1:750000~1:150000、殊に1:600000~1:300000のモル比で使用する。
【0022】
さらに本発明による方法では、(iii)による触媒のPt分(金属白金として算出)と、(iv)による助触媒としての2-エチルヘキサン酸および/またはイソノナン酸とを、1:250~1:25000、好ましくは1:500~1:10000、特に1:1000~1:5000のモル比で使用する。この場合、上述の助触媒である2-エチルヘキサン酸(沸点226~229℃)および/またはイソノナン酸(沸点232~236℃)が、室温でも反応条件下であっても液状で存在することが特に好ましい。したがって、2-エチルヘキサン酸および/またはイソノナン酸(2-エチルヘキサン酸とイソノナン酸との混合物を含む)を容易に計量供給することが可能である。使用する2-エチルヘキサン酸またはイソノナン酸またはそれらの混合物は、反応混合物中でも溶解した状態で存在し、すなわち反応条件下では有利にも助触媒の沈殿が生じず、したがって適切なことに溶媒を使用しなくても済む。イソノナン酸とは、本出願においては特に、実質的に分岐状のC9カルボン酸の混合物であると理解され、その際、好ましい主成分は3,5,5-トリメチルヘキサン酸であり、すなわち、本発明により使用されるイソノナン酸は、232~236℃(標準圧力)の「沸点」または沸点範囲を有する。さらに、2-エチルヘキサン酸とは、特に実質的に分岐状のC8カルボン酸の混合物であると理解され、その際、2-エチルヘキサン酸が好ましい主成分であり、すなわち本発明により使用される2-エチルヘキサン酸は、226~229℃(標準圧力)の「沸点」または沸点範囲を有する。さらに、2-エチルヘキサン酸およびイソノナン酸は、工業的な規模または量で有利にも市販されている。したがって、助触媒として明らかに除外されるのは、220℃未満(標準圧力)の沸点または沸点範囲を有するカルボン酸、芳香族カルボン酸、ジカルボン酸および実質的に純粋な非分岐状カルボン酸の単独体である。
【0023】
本発明による方法では、助触媒を、2-エチルヘキサン酸および/またはイソノナン酸の形態で、反応材料全体、すなわち反応の実施に使用する成分(i)、(ii)、(iii)および(iv)の量の合計を基準として、好ましくは0.05~2重量%、特に好ましくは0.1~1.5重量%、殊に0.2~1.2重量%の量で使用する。
【0024】
適切には、本発明による方法は、
- 方法変形例Aによれば、成分(i)、(ii)、(iii)および(iv)を予備混合し、これを、反応を実施するための反応器もしくは反応システム(用語については下記を参照のこと)に供給して、混合しながら反応温度に加熱することにより、または
- 方法変形例Bによれば、(i)、(iii)および(iv)による成分を反応器もしくは反応システムに装入もしくは供給して、混合しながら反応温度に加熱し、そして混合しながら成分(ii)を供給することにより、または
- 方法変形例Cによれば、(i)および(ii)による成分を反応器もしくは反応システムに装入もしくは供給して、混合しながら反応温度に加熱し、そして混合しながら成分(iii)および(iv)を単独でもしくは混合物として供給することにより、または
- 方法変形例Dによれば、(ii)、(iii)および(iv)による成分を反応器もしくは反応システムに装入もしくは供給して、混合しながら反応温度に加熱し、そして混合しながら成分(i)を供給することにより
行われる。
【0025】
好ましくは、本発明による方法では、反応を、反応器内で、好ましくは撹拌槽内で、80~230℃、好ましくは100~200℃の反応温度で、0.5~20バール(絶対圧)、好ましくは0.5~4バール(絶対圧)の圧力で、特に周囲圧力で行う。
【0026】
さらに本発明による方法は、反応生成物、すなわち反応終了後に得られた生成物混合物を後処理することによって行われ、その際、反応後に得られた生成物混合物(略して粗生成物とも呼ぶ)を好ましくは蒸留装置または蒸留ユニット内で減圧下に分留することによって、目的生成物が得られる。
【0027】
このようにして本発明による方法により好ましくは3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランが得られ、その際、得られたこの生成物は、3.5~5.5、好ましくは4~5のpH値を有する。さらに、このようにして得られた3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランは、有利にも、≦10μS/cm、好ましくは0.0001~≦0.005mS/cm、特に好ましくは0.001~≦0.004mS/cmの導電率値を有する。
【0028】
本発明により得られたこのような3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランは、例えば接着剤およびシーラントにおける適用特性を向上させるという点でも傑出している。
【0029】
したがって、本発明による方法によって得られるかまたは得ることができ、かつpH値が3.5~5.5、好ましくは4~5であって、導電率値が≦10μS/cm、好ましくは0.0001~≦0.005mS/cm、特に好ましくは0.001~≦0.004mS/cmであることを特徴とする3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランも、本発明の対象である。
【0030】
総じて、本発明による方法を以下のように実施することができる:
適切には、本方法を実施するためのプラントとして、撹拌槽、カスケード型撹拌槽、微小構造を有する反応器(略してマイクロリアクターとも呼ぶ)、管型反応器またはフローリアクター、いわゆるループ式反応器または上述の反応器のうちの少なくとも2つの合一体もしくは連結体(上記および下記では反応器または反応器システムとも呼ぶ)が利用され、これらは、加熱可能となるようにも冷却可能となるようにも仕上げられていてよく、適切には、撹拌装置またはボルテックス装置と、少なくとも1つの計量供給装置とを備えるとともに、適宜、還流冷却部と、下流の蒸留装置/ユニットとを備えており、例えば窒素などの不活性ガス下で、標準圧力または周囲圧力に対して低下させたまたはそれよりも高い圧力下での運転が可能である。適切には、反応装置および蒸留装置を使用前に乾燥窒素でパージする。
【0031】
本発明による方法の実施にあたっては、様々な方法変形例を用いることができる。
【0032】
- 例えば、成分(i)、(ii)、(iii)および(iv)を予備混合し、これを反応を実施するための反応器または反応システムに供給して、強力なまたは非強制的な混合(上記および下記では略して混合と称する)を行いつつ、例えば反応の経過を監視しながら40~250℃の範囲の温度の反応温度に加熱してもよいし、
- (i)、(iii)および(iv)による成分を反応器または反応システムに装入または供給して、混合しながら反応温度に加熱し、そして混合しながら成分(ii)をすでに存在する成分混合物に供給し、その際、反応を監視しながら例えば40~250℃の範囲の温度となるように調整または再調整してもよいし、
- (i)および(ii)による成分を反応器に装入するかまたは前記反応器もしくは反応システムに供給して、混合しながら例えば40~250℃の範囲の温度の反応温度に加熱し、そして成分(iii)および(iv)を、単独で、すなわち個々にもしくは互いに独立して、または混合物として、すでに存在する成分混合物に混合しながら供給し、その際、反応を監視しながら例えば40~250℃の範囲の温度となるように調整または再調整してもよいし、
- (ii)、(iii)および(iv)による成分を反応器または反応システムに装入または供給して、混合しながら例えば40~250℃の範囲の温度の反応温度に加熱し、そして混合しながら成分(i)をすでに存在する成分混合物に供給し、その際、反応を監視しながら例えば40~250℃の範囲の温度となるように調整または再調整してもよい。
【0033】
反応混合物またはそれに相応して反応器内に存在する反応成分の反応を、好ましくは100~220℃の範囲の温度で行い、このようにして得られた生成物混合物を、適切にはさらに若干の時間にわたって、これに限定されるわけではないが例えば2時間まで、適切には1~30分間にわたって混合しながら後反応させ、その後、この生成物混合物(粗生成物)を適宜別個の蒸留ユニットに移して、適切には穏和な条件下で、好ましくは減圧(真空)下で分留により後処理し、その際、反応の目的生成物である3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(沸点248℃)または3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン[沸点120℃/2mmHg]が、高純度で頂部生成物として得られる。本発明による方法では、反応および後処理を、有利なことにバッチ式でも連続式でも行うことができる。
【0034】
本発明による方法によって3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランを、工業的規模で卓越した選択率で極めて高い収率で、すなわち特に経済的に、そして特に酢酸またはアセトキシを含まない形態で、また有機溶媒も使用せずに、有利に得ることができる。
【0035】
本発明を以下の例により詳細に説明するが、これは本発明の対象を限定するものではない。
【実施例
【0036】

出発材料/略称
Karstedt触媒:Heraeus社、Pt含有量20.42重量%
酢酸、Sigma-Aldrich社;純度≧99%
プロピオン酸、Merck社;純度:≧99%
安息香酸、Carl Roth社;含有量99.5~100.5%
ヘプタン酸、TCI社;純度:>98%
2-エチルヘキサン酸、ABCR社;純度:99%(略して2-EHAと称する)
3,5,5-トリメチルヘキサン酸(イソノナン酸)、TCI社;純度:99%
デカン酸、Merck社;純度≧98%
ドデカン酸、Acros Organics社;純度98%
TMOS=トリメトキシシラン、純度:98%
AGE=アリルグリシジルエーテル、Sigma-Aldrich社、純度:>99%
DYN M=テトラメトキシシラン
AGE=アリルグリシジルエーテル
シス-イソ-AGE=シス-プロペニルグリシジルエーテル
トランス-イソ-AGE=トランス-プロペニルグリシジルエーテル
イソ-GLYMO=2-グリシジルオキシ-1-メチルエチルトリメトキシシラン
シクロ-GLYMO=1-ジメトキシシラ-2,5-ジオキサ-3-メトキシメチルシクロオクタン
GLYMO=3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン
HS=高沸点物質
分析方法:
ガスクロマトグラフィーによる生成物組成の決定:
粗試料組成物(反応後の粗生成物から得た試料)
機器:6850 Network GC System
カラム:19095J-123E HP5;30m/0.53mm/2.65μm
温度プログラム:75℃で3分間、10℃/分、275℃で15分間
純粋試料組成(後処理後の生成物から得た試料)
機器:7820A GC System
カラム:19091J-413 HP5;30m/0.32mm/0.25μm
温度プログラム:75℃で3分間、10℃/分、275℃で25分間
導電率測定:
機器:Metrohm社712 Conductometer
方法:SAA-1833;単位はμS/cm;トルエン(Merck社、分析用、≧99%)を二重蒸留水で30分間振とうする。水相を分析する。SAA-1834;単位はmS/cm;2%試料(二重蒸留水で希釈)を1時間静置してから測定する。
【0037】
pH値測定:
機器:Metrohm社製827 pH lab
方法:SAA-0268;試料10gに二重蒸留水90mlを加え、10分間撹拌してから測定する。
【0038】
比較例1:(欧州特許出願公開第2114963号明細書(EP 2 114 963)による)
アリルグリシジルエーテルをトリメトキシシランと連続的に反応させて、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを得た。この反応を、Pt-Karstedt触媒とともに、酢酸(反応材料全体を基準として0.05重量%)の存在下で原料(アリルグリシジルエーテル:9.6kg/hおよびトリメトキシシラン:8kg/h)を供給して管型反応器内で連続的に行った。この場合、この金属白金系触媒の濃度は、2ppmであった。この場合、このPt-Karstedt触媒を3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランに溶解させた。反応温度は、約160℃であった。過剰量のアリルグリシジルエーテル(モル比:アリルグリシジルエーテル:トリメトキシシラン=1.28:1)を用いてこの反応を運転した。反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表1】
【0039】
反応後に得られた生成物混合物の組成を、ガスクロマトグラフィーにより調べた。この生成物混合物を蒸留して最終生成物を得たが、蒸留後の酢酸含有量は依然として約200重量ppmであった。
【0040】
上記の方法を助触媒としての酢酸を使用せずに実施した場合には、以下の反応生成物/粗生成物組成物が得られる:
【表2】
【0041】
目的生成物を溶媒/希釈剤として使用することと組み合わせた、酢酸の存在下での均一系Pt触媒の利点は、目的生成物(GLYMO)への選択性が示されること、イソ生成物およびシクロ生成物の割合が低下すること、そして、使用したオレフィン化合物の異性化が抑制されることである。副生成物の形成が低減されることによってさらに、粗生成物を蒸留によってより容易に分離することができるようになるとともに、品質も向上し、すなわち、存在するイソ生成物およびシクロ生成物がより少量になれば、必要な分離性能がより低くて済み、また蒸留バッチにおける蒸留時間がより短くて済む。
【0042】
さらなる実験手順:
以下の実験(比較実験2~7および本発明による実験1~8)を、以下のように行った:
AGE、TMOS、酸およびKarstedt触媒を、撹拌反応器に装入した。この反応混合物を、撹拌しながら約30分以内で100℃(底部温度)に加熱した。底部温度が100℃に達した後、この反応混合物を100℃でさらに90分間保持した。その後、この反応混合物/生成物混合物を冷却し、次いで試料を採取した(いわゆる粗試料)。
【0043】
次いで、得られたこの粗生成物を、生成物にとって穏和な条件(真空)下で分別蒸留し、目的生成物を頂部生成物として得た。
【0044】
比較例2:
酸を加えない
・有機溶媒を使用しない
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.2/1
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2重量ppm。
【0045】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表3】
【0046】
この粗生成物は、目的生成物であるGLYMOに関して81.7%の収率しか示さず、またイソ-GLYMについては1.2%という比較的顕著な割合を示し、すなわち選択率が比較的低い。
【0047】
比較例3:
酢酸を加える
・有機溶媒を使用しない
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.2/1
・酢酸濃度=(反応材料全体を基準として)0.23重量%
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2重量ppm。
【0048】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表4】
【0049】
この粗生成物は、望ましくない割合の酢酸を有する。
【0050】
比較例4:
プロピオン酸を加える
・有機溶媒を使用しない
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.2/1
・プロピオン酸濃度=(反応材料全体を基準として)0.23重量%
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2重量ppm。
【0051】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表5】
【0052】
残念ながら、この粗生成物は、ある割合の酸性プロピオン酸を有する。このことは、酢酸を使用した場合と同様に最終生成物のこれから先のいくつかの生成物用途に悪影響を及ぼすため、工業的実施には適さない。
【0053】
比較例5:
安息香酸を加える
・溶解した形態でしか使用できないため、溶媒として、(反応材料全体を基準として)0.8重量%のMeOHを使用する
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.2/1
・安息香酸濃度=(反応材料全体を基準として)0.23重量%
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2重量ppm。
【0054】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表6】
【0055】
この芳香族カルボン酸を使用した場合、選択率が低下するだけでなく(イソ-GLYMOを参照のこと)GLYMOの収率も低下する。
【0056】
比較例6:
ヘプタン酸を加える
・有機溶媒を使用しない
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.2/1
・ヘプタン酸濃度=(反応材料全体を基準として)0.23重量%
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2重量ppm。
【0057】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表7】
【0058】
この場合、選択率の低下が認められる(イソ-GLYMOを参照のこと)。
【0059】
比較例7:
デカン酸を加える
・溶媒として、(反応材料全体を基準として)0.8重量%のMeOHを使用する
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.2/1
・デカン酸濃度=(反応材料全体を基準として)0.23重量%
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2重量ppm。
【0060】
デカン酸は反応温度でも固体であるため、溶媒を使用する必要がある。反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表8】
【0061】
この場合にも、選択率の低下が認められる(イソ-GLYMOを参照のこと)。
【0062】
比較例8:
ドデカン酸を加える
・溶媒として、(反応材料全体を基準として)0.8重量%のMeOHを使用する
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.2/1
・ドデカン酸濃度=(反応材料全体を基準として)0.23重量%
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2重量ppm。
【0063】
ドデカン酸も同様に反応温度でも固体であるため、この場合にも溶媒を使用する必要がある。反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表9】
【0064】
この比較実験の結果から、この場合には選択率と転化率が低下することが判明した(イソ-GLYMOおよびGLYMOの収率を参照のこと)。
【0065】
実施例1:
2-エチルヘキサン酸を加える
・溶媒を使用しない
・2-EHA濃度=(反応材料全体を基準として)0.23重量%
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.2/1
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2重量ppm。
【0066】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表10】
【0067】
実施例2:
2-エチルヘキサン酸を加える
・溶媒を使用しない
・2-EHA濃度=(反応材料全体を基準として)1.2重量%
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.07/1
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2重量ppm。
【0068】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表11】
【0069】
実施例3:
2-エチルヘキサン酸を加える
・溶媒を使用しない
・2-EHA濃度=(反応材料全体を基準として)0.24重量%
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.12/1
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2.2重量ppm。
【0070】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表12】
【0071】
実施例4:
2-エチルヘキサン酸を加える
・溶媒を使用しない
・2-EHA濃度=(反応材料全体を基準として)1.2重量%
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.07/1
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2重量ppm。
【0072】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表13】
【0073】
実施例5:
2-エチルヘキサン酸を加える
・溶媒を使用しない
・2-EHA濃度=(反応材料全体を基準として)0.22重量%
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.2/1
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)4.3重量ppm。
【0074】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表14】
【0075】
実施例6:
2-エチルヘキサン酸を加える
・溶媒を使用しない
・2-EHA濃度=(反応材料全体を基準として)0.47重量%
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.12/1
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2.2重量ppm。
【0076】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表15】
【0077】
実施例7:
3,5,5-トリメチルヘキサン酸(イソノナン酸)を加える
・溶媒を使用しない
・イソノナン酸濃度=(反応材料全体を基準として)0.60重量%
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.2/1
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2.1重量ppm。
【0078】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表16】
【0079】
実施例8:
3,5,5-トリメチルヘキサン酸(イソノナン酸)を加える
・溶媒を使用しない
・イソノナン酸濃度=(反応材料全体を基準として)0.48重量%
・AGE/TMOS[モル/モル]=1.19/1
・Pt濃度=(反応材料全体を基準として)2.3重量ppm。
【0080】
反応後に得られた生成物混合物は、以下の組成を有していた:
【表17】
【0081】
試験結果の要約:
反応の助触媒として2-エチルヘキサン酸およびイソノナン酸を使用したこれらの実施例によって、卓越した選択率を達成することができ、また、転化率は少なくとも同等であって、部分的にさらに転化率を明らかに向上させることができた。特に、こうして得られた生成物は、有利なことに、不利な酸性分、特に酢酸を含んでおらず、さらに、例えばトルエンやキシレンやその他の炭化水素などの有機溶媒分を実質的に有しない。