(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】顔の登録を行う方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20221108BHJP
【FI】
A61B8/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018150085
(22)【出願日】2018-08-09
【審査請求日】2021-08-05
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】バディム・グリナー
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0193053(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0042622(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0310042(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0218366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔の登録を行うための方法であって、
患者の顔の第1のターゲット位置の上に登録プローブをホバーすることと、
前記登録プローブから前記第1のターゲット位置に超音波を放射することと、
前記第1のターゲット位置からの前記超音波の反射を受信することと、
前記患者の顔に近接して配置された磁場発信器からの磁気信号を受信して前記磁場発信器に対する前記登録プローブの空間内での位置を特定することと、
前記受信された超音波反射の前記第1のターゲット位置を、前記磁場発信器に対して空間内で特定された位置と相関させることと、を含
み、
前記第1のターゲット位置を比較するために前記患者の前記顔の参照画像を提供することを更に含み、
前記参照画像が、前記患者の鼻腔及び前記患者の骨構造の画像を含み、
前記超音波反射が、前記患者の前記骨構造上のある位置から反射される波であり、前記磁場発信器に対する前記登録プローブの空間内での前記位置と比較されることによって、相関されたターゲット位置が取得され、
前記参照画像における骨構造と、前記超音波反射により検出された骨構造とを相関させることにより、骨構造から顔までの軟組織の厚さを推定する、方法。
【請求項2】
前記相関されたターゲット位置を登録することを更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記相関されたターゲット位置が前記参照画像上に表示される、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記相関されたターゲット位置が前記参照画像上の前記骨構造上の位置と相関する、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
参照画像を、前記登録プローブと通信するワークステーションにロードすることと、
前記参照画像を、前記ワークステーションと通信するディスプレイ上に表示することと、を更に含み、
前記受信された超音波反射の前記第1のターゲット位置を、前記磁場発信器に対して空間内で特定された位置と相関させることが、前記第1のターゲット位置を、表示された前記参照画像上で相関させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記参照画像が、前記患者の前記顔のコンピュータトモグラフィ(CT)スキャンである、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
顔の登録を行うための装置であって、
登録プローブを備え、
前記登録プローブは、
患者の顔の複数のターゲット位置のそれぞれに超音波を放射する超音波発信器と、
前記複数のターゲット位置のそれぞれから反射された前記超音波を受信する超音波受信器と、
前記患者の顔に近接して配置された磁場発信器からの磁気信号を受信して前記磁場発信器に対する前記登録プローブの空間内での位置を特定する磁波受信器と、を含み、
前記受信された反射超音波と、前記受信された磁波とが前記複数のターゲット位置のそれぞれについて相関されることによって複数の相関されたターゲット位置が生成され
る装置であって、
前記装置は前記超音波発信器を制御して前記超音波を放射するマイクロコントローラを更に含み、
前記マイクロコントローラが、前記受信された反射超音波及び前記受信された磁気信号を前記患者の前記顔の参照画像上で表示するために送信することで前記相関されたターゲット位置を比較し、
前記参照画像が、前記患者の鼻腔及び前記患者の骨構造の画像を含み、
前記受信された超音波反射が、前記患者の前記骨構造上のある位置から反射される波であり、前記磁場発信器に対する前記登録プローブの空間内での前記位置と比較されることによって、前記相関されたターゲット位置が取得され、
前記装置は前記参照画像における骨構造と、前記超音波反射により検出された骨構造とを相関させることにより、骨構造から顔までの軟組織の厚さを推定する、
装置。
【請求項8】
前記マイクロコントローラが、前記受信された反射超音波及び前記受信された磁気信号をワークステーションに送信する、請求項
7に記載の装置。
【請求項9】
前記相関されたターゲット位置が前記参照画像上の前記骨構造上の位置と相関する、請求項
7に記載の装置。
【請求項10】
データをワークステーションに無線で送信するための無線送受信器を更に含む、請求項
7に記載の装置。
【請求項11】
前記磁波受信器が、前記磁波を受信するために前記登録プローブ内に配置されたコイルである、請求項
7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
顔認識を行う方法が開示される。本方法は、患者の顔の複数のターゲット位置の上に登録プローブをホバーすることを含む。超音波がターゲット位置のそれぞれに登録プローブから放射され、超音波の反射がターゲット位置のそれぞれから受信される。磁気信号が、患者の顔に近接して配置された磁場発信器から登録プローブにより受信されることで磁場発信器に対する登録プローブの空間内での位置を特定する。受信された超音波反射のターゲット位置を、磁場発信器に対して空間内で特定された位置と相関させる。
【0002】
顔認識を行う方法が開示される。本方法は、参照画像をワークステーションにロードすることを含む。参照画像は、ワークステーションと通信するディスプレイ上に表示される。登録プローブが患者の顔の第1のターゲット位置の上にホバーされ、登録プローブはワークステーションと通信する。超音波が第1のターゲット位置において登録プローブから放射され、その超音波の反射が第1のターゲット位置から受信される。磁気信号が、患者の顔に近接して配置された磁場発信器から受信されることで、磁場発信器に対する登録プローブの空間内での位置が特定される。受信された超音波反射の第1のターゲット位置を、表示された参照画像上の磁場発信器に対して空間内で特定された位置と相関させる。
【0003】
顔認識を行う方法が開示される。本方法は、ワークステーションと通信するディスプレイ上に表示するために参照画像をワークステーションにロードすることを含む。ワークステーションと通信する登録プローブが、患者の顔の複数のターゲット位置の上にホバーされる。登録プローブは、ターゲット位置のそれぞれに超音波を放射し、ターゲット位置のそれぞれから超音波の反射が受信される。磁気信号が、患者の顔に近接して配置された磁場発信器から受信されることで、磁場発信器に対する登録プローブの空間内での位置が特定される。受信された超音波反射のターゲット位置を、参照画像上の磁場発信器に対して空間内で特定された位置と相関させる。登録は、患者の顔の閾値部分が登録された時点で完了する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
より詳細な理解は、添付の図面と併せて実例として示される下記の説明文より得ることができる。
【
図1】顔の登録を行うための例示的なシステムの図である。
【
図2】顔の登録を行うための例示的な従来の方法のフロー図である。
【
図3】
図2の顔の登録方法において使用される顔の画像の例である。
【
図4】
図1のシステムで使用される例示的な登録プローブの図である。
【
図5】患者の頭部上のターゲット及びワークステーションとともに動作する
図4の例示的な登録プローブの電子要素の拡大概略
図500である。
【
図6】顔の登録を行うための例示的な方法のフロー図である。
【
図7】
図6で行われる顔の登録方法において使用される顔の画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本出願は、顔認識を行う方法及び装置に関する。詳細には、本出願は、副鼻腔拡張術などの耳鼻咽喉(ENT)手術のために顔認識を行うための方法及び装置に関する。
【0006】
一般に、ヒトは、典型的には、8個程度の副鼻腔開口部(例えば、各側で、前頭洞、前篩骨洞、上顎洞、及び中篩骨洞)を有するが、開口部の数は人によって異なる。これらの副鼻腔開口部のそれぞれには、直径が極めて小さい領域がある。したがって、何らかの理由で開口部が詰まった場合には、副鼻腔内からの排液が生じないおそれがある。このような場合には問題が生じ得る。例えば、粘液の蓄積により、感染などの様々な健康上の問題が生じ得る。
【0007】
これらの問題に対処するために、副鼻腔拡張術などの医療手術を用いることができる。副鼻腔拡張術は、鼻道の径を拡大して流体のより制限されない流れをもたらすことによって鼻詰まりを緩和する技術である。副鼻腔拡張術は、膨張させることができるバルーンを含む、副鼻腔内に挿入される器具を使用して行われる。バルーンは、狭い副鼻腔開口部の中間に挿入されて拡張される。この拡張によって副鼻腔開口部に圧力が加えられて開口部が拡大される(例えば、副鼻腔の組織構造を再成形することにより)。開口部はバルーンが取り出された後にもこの拡大されたサイズに維持され、流体の流れにより大きな通路がもたらされる。
【0008】
鼻腔拡張術又は同様の耳鼻咽喉手術を行うには、手術を行う医師が鼻腔内の器具の位置を高い精度で知ることが重要である。医師は、患者の鼻腔の画像をディスプレイ画面上で見て、画面上の器具の位置の画像を見ながら器具を操作することにより患者の実際の鼻腔内を移動する。患者の鼻腔内の器具の位置に関して不正確さがあると、医師が鼻腔に損傷を与え、かつ/又は鼻腔内の誤った場所に手術を行ってしまうおそれがある。したがって、画面上の器具の位置が、患者の実際の鼻腔内における実際の器具の位置に正確に一致することが非常に重要である。
【0009】
医師が手術を行っている鼻腔内の位置を確実に正確に知ることができるようにするため、登録手順が行われる。この登録手順は、医師が、ディスプレイ画面上の画像と、その画像の患者の顔上の登録位置とを見ることを可能にするものである。登録を行うためのシステム、装置、及び方法については下記により詳細に述べるが、簡単に言うと、表示される画像は、例えば耳鼻咽喉手術の前に撮影された、患者の頭部領域のコンピュータトモグラフィ(CT)スキャンによるものである。この後、操作者(例えば、医師又は他の技術者)によって、患者の顔の異なる位置に置かれた登録プローブを使用して登録が行われる。更に、患者の頭部は磁場の中に置かれている。登録プローブの位置が表示されたCTスキャン上で登録される。
【0010】
従来の登録技術では、操作者が登録プローブで患者の顔の異なる領域に触れることをともなう。しかしながら、顔領域では組織が軟らかいため、登録プローブの接触によって組織が歪み、その位置を登録する際に誤差を生じるおそれがある。更に、軟らかいヒト組織は、含まれる水分の量、湿度などに応じて膨潤及び縮小する傾向を有する(場合により最大10%)。したがって、患者の顔上の、CTスキャンで登録されたのとほぼ同じ位置に登録プローブが配置されたとしても、その顔上の位置は、軟らかい組織の領域の膨潤及び縮小によって、CTスキャンが撮影されたときの鼻腔に対する位置と同じ位置ではなくなっている可能性がある。
【0011】
したがって、本明細書では、顔の登録を行うための方法、装置、及びシステムについて述べる。顔の登録は、歪むことがなく、水分を吸収しやすい軟らかい組織のように水分を吸収することがない硬い組織(骨など)に対して行われる。装置は、登録プローブ内の磁気登録装置と組み合わせた、前方視超音波装置の使用をともなう。
【0012】
図1は、顔の登録を行うための例示的なシステム100の図である。このシステムは、登録プローブ110、磁場発信器120、ハブ130、ワークステーション140、ディスプレイ150、及び磁気ドライバ160を含む。登録プローブ110及び磁場発信器120は、ワークステーション140に接続された磁気ドライバ160を介してハブ130に接続されてもよく、登録プローブ110及び磁場発信器120の両方から信号を受信してワークステーション140に転送する。しかしながら、登録プローブ110及び磁気ドライバ160は、ハブ130に信号を通さずに、ワークステーション140と直接通信してもよい。
【0013】
ワークステーション140は、例えば、プロセッサ141、メモリ142、入出力(I/O)ドライバ143、ストレージ144を含むが、これらはワークステーション140が、I/Oドライバ143を介して入力データ及び出力データを受信し、処理の必要に応じてストレージ144及び/又はメモリ143にデータを格納することを可能とする。ワークステーション140はディスプレイ150にも接続されている。ドライバ160は、磁場発信器120に接続されることで患者の頭部Hの周囲に1以上の磁場及び周波数を放射する。ディスプレイ150に見られるように、頭部にターゲットTを有する画像Sが表示される。ターゲットTは、頭部Hに対する空間内での登録プローブ110の現在位置を示す。これにより、操作者は画像S上のターゲットを見て、後で耳鼻咽喉手術で使用するために患者の顔の領域を画像S上に登録することができる。磁場発信器120の位置は、例示の目的で示したものであり、磁気画像を提供するために更なる領域に発信器120を配置することができる。例えば、発信器120の一部が患者の頭部Hの下に配置されてもよく、位置の精度を高めるために複数の磁場発生器を含むことができる。複数の磁場発生器が用いられる場合、複数の磁場を登録するように登録プローブを構成することができる。
【0014】
登録を行うため、登録プローブ110は、登録プローブ110を頭部H、より詳細には患者の顔に対して正確に配置することを可能にする構成要素を含んでいる。
【0015】
図2は、顔の登録を行うための例示的な従来の方法200のフロー図である。ステップ210では、CTスキャンがロードされ、表示される。例えば再び
図1を参照すると、記憶装置に予め取り込まれてロードされるか又は電子的に送信されたCTスキャンファイルがワークステーション140にロードされ、ディスプレイ150に画像Sとして表示される。
【0016】
画像が表示されると、操作者は、登録プローブで患者の顔の基準点に触れ、その目標位置を画像上で登録する(ステップ220)。例えば、操作者は、
図1のディスプレイ150に示された患者の顔のある領域に登録プローブ110で触れる。
【0017】
磁気モダリティ間のターゲット位置がCTスキャン上に表示される(ステップ230)。すなわち、コイル113が磁場発信器120から受信した1乃至複数の磁場に基づいて3次元空間内において登録プローブ110が存在すると判定した位置が、CTスキャン上にターゲット位置として表示される。次に、このターゲット位置が登録される(ステップ240)。これは、登録プローブ110が、コイル113によって検出された磁場に基づいてワークステーション140に登録プローブ110の位置情報を送信することによって行うことができ、ワークステーション140はこの位置を処理して、表示された画像のどこにこの位置を重ねるかを決定する。
【0018】
完全な登録に充分な顔の位置が登録されたならば(ステップ250)、従来の手術を行うために患者の顔の構造が完全に登録される(ステップ260)。ステップ250で登録された位置が充分でない場合、方法はステップ220に戻り、操作者は、患者の顔の他の領域に引き続き触れることによって、耳鼻咽喉手術を行うために患者の顔を完全に登録するうえで充分に大きな患者の顔の部分(例えば2/3)をカバーする。
【0019】
図3は、
図2の顔の登録方法の間に使用するための顔の画像の例である。例えば、
図3の顔の画像は、
図1の画像Sとすることができる。
図3に見られるように、ターゲットT(T
1M、T
2M、及びT
3Mとして示される)が実線の十字線で示されている。再び方法200のステップ220を参照すると、ターゲットT
1Mは、操作者が触れた患者の顔上の第1の点に対応し、ターゲットT
2Mは、操作者が触れた患者の顔上の第2の点に対応し、ターゲットT
3Mは、操作者が触れた患者の顔上の第3の点に対応している。
図3に示されるように、画像Sにも多数の鼻腔310が見られる。
図3にはターゲットT
1、T
2、及びT
3も示されている(点線の十字線で示される)。これらのターゲットは、3次元空間でのプローブ110の実際の位置を表している。上記に述べたように、上記の方法200のような従来の登録方法を用いることで誘発される誤差のため、登録されたターゲットT
1M、T
2M、及びT
3Mは、実際のターゲットT
1、T
2、及びT
3と完全には一致していない。
【0020】
図4は、
図1のシステム100で使用するための例示的な登録プローブ110の図である。登録プローブ110は、プローブ110を動作させ、他の構成要素からの入力を受信する電子要素111を含んでいる。電子要素111は、ワークステーション140に最終的に送信するためにハブ130に接続されている。登録プローブは、前方視超音波発信器/受信器である超音波発信器/受信器112とコイル113とを含んでいる。すなわち、超音波発信器/受信器113は、登録プローブ110の軸方向に、患者に向かって超音波を発信及び受信する。
図4に示される例示的な登録プローブ110は、内部の構成要素を目視可能とする透明材料(プラスチックなど)で形成することができる。しかし、プローブは、他の不透明な材料で形成することもできる。
【0021】
図5は、患者の頭部H上のターゲットT及びワークステーション140とともに動作する登録プローブ110の電子要素111の拡大概略
図500である。
図5に示されるように、電子要素111は、マイクロコントローラ511、関数発生器512、スイッチ513、利得増幅器514、電圧リミッタ515、送信器516、及び受信器517を含んでいる。マイクロコントローラ511は、ワークステーション140と通信し、スイッチ513を介して送信器516を制御して超音波を送信する。マイクロコントローラ511は、受信器517を介してターゲットTからの返信超音波を受信し、ワークステーション140に送信する。関数発生器512は受信エコーを利得増幅器514で増幅したインパルスを生成する。電圧リミッタ515は、増幅器が発生した電圧を規制してサンプリングシステムが飽和することを防止する。
【0022】
登録プローブ110の超音波発信器/受信器112は、超音波を放射し、これが反射されて(例えば患者の頭蓋骨の骨表面から)、読み取られることでCTスキャン画像Sに対する登録プローブ110の位置が決定される。コイル113は、磁場発信器112が放射した磁波を受信して、頭部Hの顔に対する空間内での登録プローブ110の位置も決定する。コイル113は、磁場内で登録プローブ110がどこにあるかを見つけるよう、磁場発信器が放射した磁場を受信するように構成された一連の巻き線(例えば、銅線)とすることができる。
【0023】
上記に述べたように、行われる耳鼻咽喉手術では、手術を行う医師が鼻腔内のどこにいるかを知ることを支援するうえで正確な登録に頼ることになるため、登録の精度が重要である。登録プローブ110の超音波発信器/受信器112によって放射及び受信される超音波は、登録プローブ110を正確に見つけるために、磁場受信器(すなわちコイル113)と相関する。次いで、この相関により、手術を行う医師は、手術に用いられる器具を画像S上の患者の鼻腔内で見つけることができる。
【0024】
図6は、顔の登録を行うための例示的な方法600のフロー図である。ステップ610では、CTスキャンがロードされ、表示される。例えば、再び
図1を参照すると、記憶装置に予め取り込まれてロードされるか又は電子的に送信されたCTスキャンファイルがワークステーション140にロードされ、ディスプレイ150に画像Sとして表示される。
【0025】
画像が表示されると、操作者は、登録プローブを患者の顔の基準点上をホバーさせるか又は登録プローブでそれに触れ、その目標位置を画像上で登録する(ステップ620)。例えば、操作者は、
図1に示された患者の顔のある領域上で登録プローブ1をホバーさせる。登録プローブは超音波を放射し、これが顔の骨などの剛体構造から反射されて登録プローブによって読み取られる(ステップ630)。例えば、登録プローブ110の超音波発信器/受信器112が患者の顔内に超音波を放射し、次いでこれが骨又は骨様構造で反射する。次いで、登録プローブ110が、超音波発信器/受信器112を介して波のエコー/反射を読み取り、画像S内のターゲットTの位置を決定する。
【0026】
超音波が受信された後、磁気モダリティと超音波モダリティとの間のターゲット位置がCTスキャン上で相関する(ステップ640)。すなわち、登録プローブ110の超音波発信器/受信器112によって受信される超音波は、磁場発信器120から受信された磁場に基づいてコイル113が決定する、3次元空間内で登録プローブ110が存在する位置と相関する。この相関により、正確なターゲット位置Tを決定して登録することができる(ステップ650)。これは、登録プローブ110がワークステーション140に登録プローブの位置情報を送信することによって行うことができ、ワークステーション140はこの位置を処理して、この位置を表示された画像のどこに重ねるかを決定する。
【0027】
完全な登録に充分な顔の位置が登録されたならば(ステップ660)、次いで手術のために患者の顔の構造が完全に登録される(ステップ670)。ステップ660で登録された位置が充分でない場合、次いで方法はステップ620に戻り、操作者は、患者の顔の他の領域上に引き続きホバーするによって、耳鼻咽喉手術のために患者の顔を完全に登録するうえで充分に大きな患者の顔の部分(例えば2/3)をカバーする。すなわち、例えば、操作者は、患者の顔の2/3などの領域にわたって登録プローブをホバーすることができる。医師は画像(例えばCTスキャン)上でリアルタイムでプローブ110の収束を監視することで、患者の顔の充分な部分が登録されたと判定することができる。あるいは、平均二乗誤差最小化(MMSE)アルゴリズムのような数学的アルゴリズムを用いて患者の顔の充分な部分が登録されたことを判定することもできる。
【0028】
この登録は、骨に対する骨(すなわち、CTスキャンにおける骨に対する超音波登録による骨)として行われるため、登録プローブ110の先端から骨の縁までの距離を知ることができる。したがって、CTスキャンにおける骨を、超音波により検出された骨に相関させることができる。これにより、軟組織の厚さを推定することもできる。例えば、鼻梁上でホバーする場合、骨様構造と顔との間の距離が極めて小さいため、軟組織は剛性を呈する。医師はこの付加的情報を利用して、又は誤差を計算するうえで上記に述べたMMSEアルゴリズムにおける位置を含めることにより数学的に、顔の充分な部分がCTスキャンに登録されたか否かを判定することができる。
【0029】
図7は、
図6で行われる顔の登録方法600の間に使用される顔の画像の一例である。例えば、
図7の顔の画像は、
図1の画像Sとすることができる。更に、
図7の顔の画像は、
図3の顔の画像と実質的に同様である。
図7に見られるように、ターゲットT(T
1、T
2、及びT
3として示される)が実線の十字線で示されている。再び方法600のステップ640を参照すると、ターゲットT
1は、操作者が登録した患者の顔上の第1の相関点に対応し、ターゲットT
2は、操作者が登録した患者の顔上の第2の相関点に対応し、ターゲットT
3は、操作者が登録した患者の顔上の第3の相関点に対応している。
図3と同様、画像Sにも
図7に示されるような多数の鼻腔310が見られる。
図7には,例示の目的でターゲットT
1M、T
2M、及びT
3Mも示されている(点線の十字線で示される)。これらのターゲットは、上記に述べた方法200のような従来の磁気モダリティによる登録方法で登録されるターゲットを表している。ターゲットT
1、T
2、及びT
3は、3次元空間でのプローブ110の実際の位置を表している。したがって、方法600で取得された相関されたターゲット位置を利用して行われる耳鼻咽喉手術は、従来の方法200で取得されたターゲット領域を利用して手術を行う場合と比較して、鼻腔310に対して正しい領域で行われることになる。
【0030】
以上、上記に、ヒトの硬い組織に何らかの影響を与えて反射を待つ登録プローブの遠位端の近傍の前方視超音波システムについて述べた。経過する時間の長さを計算することにより、登録システムは組織の位置(すなわち深さ)を決定することができる。骨様構造は、超音波エネルギーの実質上すべてを、吸収することなく反射するため、超音波を使用して識別することは容易である。登録プローブをホバーさせ、超音波登録を磁気登録技術とともに使用することにより、より正確な登録を実現することができる。
【0031】
注目すべきは、上記に述べた方法、装置、及びシステムは、更なる改変を含むことができることである。例えば、登録プローブ(例えば登録プローブ110)は、ゲルなどのインピーダンスが同じ物質とともに皮膚の表面上でホバーし、ゲルのトレースを残すような高周波プローブとすることができる。更に、互いに通信する構成要素同士は、有線又は無線通信させることができる。すなわち、互いに無線でデータを送受信することができる送受信器及びアンテナを装置(例えば、登録プローブ110及びシステム100の他の構成要素)に組み込むことができる。
【0032】
本方法は、汎用コンピュータ、プロセッサ、又はプロセッサコアにおいて実装することができる。好適なプロセッサとしては、例として、汎用プロセッサ、専用プロセッサ、従来型プロセッサ、デジタルシグナルプロセッサ(digital signal processor、DSP)、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと関連する1つ若しくは2つ以上のマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array、FPGA)回路、任意の他の種類の集積回路(integrated circuit、IC)、及び/又は状態機械が挙げられる。このようなプロセッサは、処理されたハードウェア記述言語(hardware description language、HDL)命令及びネットリスト等の他の中間データ(このような命令は、コンピュータ可読媒体に記憶することが可能である)の結果を用いて製造プロセスを構成することにより、製造することが可能である。このような処理の結果はマスクワークであり得、このマスクワークをその後半導体製造プロセスにおいて用いて、本開示の特徴を実装するプロセッサを製造する。
【0033】
本明細書に提供される方法又はフローチャートは、汎用コンピュータ又はプロセッサによる実行のために持続性コンピュータ可読記憶媒体に組み込まれるコンピュータプログラム、ソフトウェア、又はファームウェアにおいて実装することができる。持続性コンピュータ可読記憶媒体の例としては、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、レジスタ、キャッシュメモリ、半導体メモリデバイス、磁気媒体、例えば内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスク、磁気光学媒体、並びに光学媒体、例えば、CD-ROMディスク及びデジタル多用途ディスク(DVD)が挙げられる。
【0034】
〔実施の態様〕
(1) 顔の登録を行うための方法であって、
患者の顔の第1のターゲット位置の上に登録プローブをホバーすることと、
前記登録プローブから前記第1のターゲット位置に超音波を放射することと、
前記第1のターゲット位置からの前記超音波の反射を受信することと、
前記患者の顔に近接して配置された磁場発信器からの磁気信号を受信して前記磁場発信器に対する前記登録プローブの空間内での位置を特定することと、
前記受信された超音波反射の前記第1のターゲット位置を、前記磁場発信器に対して空間内で特定された位置と相関させることと、を含む、方法。
(2) 前記第1のターゲット位置を比較するために前記患者の前記顔の参照画像を提供することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記参照画像が、前記患者の前記顔のコンピュータトモグラフィ(CT)スキャンである、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記参照画像が、前記患者の鼻腔及び前記患者の骨構造の画像を含む、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記超音波反射が、前記患者の前記骨構造上のある位置から反射される波であり、前記磁場発信器に対する前記登録プローブの空間内での前記位置と比較されることによって、相関されたターゲット位置が取得される、実施態様4に記載の方法。
【0035】
(6) 前記相関されたターゲット位置を登録することを更に含む、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記相関されたターゲット位置が前記参照画像上に表示される、実施態様6に記載の方法。
(8) 前記相関されたターゲット位置が前記参照画像上の前記骨構造上の位置と相関する、実施態様7に記載の方法。
(9) 参照画像を、前記登録プローブと通信するワークステーションにロードすることと、
前記参照画像を、前記ワークステーションと通信するディスプレイ上に表示することと、を更に含み、
前記受信された超音波反射の前記第1のターゲット位置を、前記磁場発信器に対して空間内で特定された位置と相関させることが、前記第1のターゲット位置を、表示された前記参照画像上で相関させることを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記参照画像が、前記患者の前記顔のコンピュータトモグラフィ(CT)スキャンである、実施態様9に記載の方法。
【0036】
(11) 顔の登録を行うための装置であって、
患者の顔の複数のターゲット位置のそれぞれに超音波を放射する超音波発信器と、
前記複数のターゲット位置のそれぞれから反射された前記超音波を受信する超音波受信器と、
前記患者の顔に近接して配置された磁場発信器からの磁気信号を受信して前記磁場発信器に対する前記登録プローブの空間内での位置を特定する磁波受信器と、を含み、
前記受信された反射超音波と、前記受信された磁波とが前記複数のターゲット位置のそれぞれについて相関されることによって複数の相関されたターゲット位置が生成される、装置。
(12) 前記送信器を制御して前記超音波を放射するマイクロコントローラを更に含む、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記マイクロコントローラが、前記受信された反射超音波及び前記受信された磁気信号をワークステーションに送信する、実施態様12に記載の装置。
(14) 前記マイクロコントローラが、前記受信された反射超音波及び前記受信された磁気信号を前記患者の前記顔の参照画像上で表示するために送信することで前記相関されたターゲット位置を比較する、実施態様12に記載の装置。
(15) 前記参照画像が、前記患者の前記顔のコンピュータトモグラフィ(CT)スキャンである、実施態様14に記載の装置。
【0037】
(16) 前記参照画像が、前記患者の鼻腔及び前記患者の骨構造の画像を含む、実施態様15に記載の装置。
(17) 前記受信された超音波反射が、前記患者の前記骨構造上のある位置から反射される波であり、前記磁場発信器に対する前記登録プローブの空間内での前記位置と比較されることによって、前記相関されたターゲット位置が取得される、実施態様16に記載の装置。
(18) 前記相関されたターゲット位置が前記参照画像上の前記骨構造上の位置と相関する、実施態様17に記載の装置。
(19) データをワークステーションに無線で送信するための無線送受信器を更に含む、実施態様11に記載の装置。
(20) 前記磁波受信器が、前記磁波を受信するために前記登録プローブ内に配置されたコイルである、実施態様11に記載の装置。