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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-07
(45)【発行日】2022-11-15
(54)【発明の名称】灌注流体中の気泡の検出
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20221108BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20221108BHJP
【FI】
A61M1/00 140
A61B18/14
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018152597
(22)【出願日】2018-08-14
(65)【公開番号】P2019034147
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-04
(31)【優先権主張番号】15/677,522
(32)【優先日】2017-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アイタン・ペリ
(72)【発明者】
【氏名】アラー・ゾービ
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ボッツァー
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-027707(JP,A)
【文献】特開2014-236788(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0046610(US,A1)
【文献】特開2000-271216(JP,A)
【文献】特表2012-519529(JP,A)
【文献】特開2014-117617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
灌注流体を放出して組織を洗浄するように構成された遠位端を有し、前記遠位端にアブレーション電極を備えるプローブと、
前記アブレーション電極の近傍に位置する温度センサと、
アブレーション処置開始後における予め設定された期間内に、前記温度センサから、前記遠位端の温度を示す初期信号を受信し、
前記初期信号から、上限温度閾値と下限温度閾値との間の温度範囲を定式化し、かつ
前記初期信号の受信後における、前記予め設定された期間内に受信された前記温度センサからの更なる信号が前記上限温度閾値を超える更なる温度を示す場合、前記灌注流体中に気泡が存在するというアラームを発するように構成された、プロセッサと、を備え
前記上限温度閾値は、前記初期信号における最高温度に対応し、前記下限温度閾値は、前記初期信号における最低温度に対応する、装置。
【請求項2】
前記温度センサからの前記更なる信号が前記上限温度閾値未満の温度を示す場合、前記更なる信号を含むように前記予め設定された期間を調節するように構成された前記プロセッサを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記灌注流体は、前記組織に対して実施されるアブレーション処置中に前記組織を洗浄する、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して手術に関し、具体的には、手術中に使用される灌注流体の監視に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの侵襲性医療処置中に組織は洗浄され得、使用される灌注流体は、気泡の発生に関して監視され得る。係る監視には、当該技術分野において既知の多くの補助器具が存在する。
【0003】
米国特許第8,794,081号(Haartsenら)は、流動する液体中の気泡を検出するためのセンサを記載する。センサは、液体を加熱するための加熱素子と、加熱素子の温度を示す測定信号を生成するように配置されたトランスデューサ構成と、を含む。センサは、気相中に気泡が存在する可能性を示す出力信号を生成することができる比較器構成を有する。
【0004】
米国特許第4,555,940号(Renger)は、流体流路を通るパルス及び定常状態の流体の流動を測定及び監視するためのシステムを記載する。そのシステムは、流路の一部の温度を変更するためのデバイスと、流体が流路の温度が変更された部分を通って流動するときの温度変化を焦電検出するためのデバイスと、を含む。
【0005】
米国特許出願第2010/0228222号(Williamsら)は、灌注に関連する1つ以上の機能を提供し得る外科用流体管理システムを記載する。その開示は、異なる種類の気泡検出器に言及する。
【0006】
本特許出願に参照により組み込まれる文献は、いずれかの用語がこれらの組み込まれた文献において、本明細書に明確に、又は暗示的になされる定義と矛盾する形で定義されている場合には、本明細書中の定義のみが考慮されるべきである点を除き、本出願と一体化した部分とみなされるものとする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、
灌注流体をプローブの遠位端から放出して、組織を洗浄することと、
ある期間にわたって、遠位端の温度センサから遠位端のそれぞれの温度を示す初期信号を受信することと、
初期信号から、上限温度閾値と下限温度閾値との間の温度範囲を定式化することと、
ある期間の後に受信された温度センサからの更なる信号が上限温度閾値を超える更なる温度を示す場合、灌注流体中に気泡が存在するというアラームを発することと、を含む、方法を提供する。
【0008】
開示される実施形態では、上限温度閾値は、それぞれの温度の最高温度に対応し、下限温度閾値は、それぞれの温度の最低温度に対応する。
【0009】
更なる開示される実施形態では、方法は、温度センサからの更なる信号が上限温度閾値未満の温度を示す場合、更なる信号を含むように期間を調節することを含む。
【0010】
なお更なる開示される実施形態では、灌注流体は、組織に対して実施されるアブレーション処置中に組織を洗浄する。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、
灌注流体を放出して組織を洗浄するように構成された遠位端を有するプローブと、
遠位端に位置する温度センサと、
ある期間にわたって、温度センサから、遠位端のそれぞれの温度を示す初期信号を受信し、
初期信号から、上限温度閾値と下限温度閾値との間の温度範囲を定式化し、かつ
ある期間の後に受信された温度センサからの更なる信号が上限温度閾値を超える更なる温度を示す場合、灌注流体中に気泡が存在するというアラームを発するように構成された、プロセッサと、を備える、装置が更に提供される。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、
灌注流体をプローブの遠位端から放出して、組織を洗浄することと、
ある期間にわたって、遠位端の温度センサから遠位端のそれぞれの温度を示す初期信号を受信することと、
初期信号から、それぞれの温度の導関数を定式化することと、
連続する導関数がそれぞれの予め設定された閾値を超え、かつ所定の時間内に生じた場合、灌注流体中に気泡が存在するというアラームを発することと、を含む、方法が更に提供される。
【0013】
代替の実施形態では、連続する導関数は、第1の導関数、続いて第2の導関数を含み、予め設定された閾値は、上限閾値及び下限閾値を含み、第1の導関数が上限閾値よりも大きい場合、第1の導関数は上限閾値を超え、第2の導関数が下限閾値よりも小さい場合、第2の導関数は下限閾値を超える。
【0014】
典型的には、上限閾値は、0.5℃~1℃の範囲内にあり、下限閾値は、-0.5℃~-1℃の範囲内にある。
【0015】
更なる代替の実施形態では、所定の時間が、0.5秒~1秒の範囲内にある。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、
灌注流体を放出して組織を洗浄するように構成された遠位端を有するプローブと、
遠位端に位置する温度センサと、
ある期間にわたって、温度センサから、遠位端のそれぞれの温度を示す初期信号を受信し、
初期信号から、それぞれの温度の導関数を定式化し、かつ
連続する導関数がそれぞれの予め設定された閾値を超え、かつ所定の時間内に生じた場合、灌注流体中に気泡が存在するというアラームを発するように構成された、プロセッサと、を備える、装置が更に提供される。
【0017】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による侵襲性医療処置の概略図である。
図2A】本発明の一実施形態によるプローブの遠位端の概略図である。
図2B】本発明の一実施形態によるプローブの遠位端の概略図である。
図2C】本発明の一実施形態によるプローブの遠位端の概略図である。
図3】本発明の一実施形態による処置中に実行されるアルゴリズムの工程のフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態によるアルゴリズムの動作中に取得される結果を示す概略的なグラフである。
図5】本発明の代替の実施形態による、処置中に実行されるアルゴリズムの工程のフローチャートである。
図6図5のフローチャートの工程のうちのいくつかを示す概略的なグラフである。
図7図5のフローチャートの工程のうちのいくつかを示す概略的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
概要
アブレーション処置など、処置を受けている組織が洗浄される処置はいくつか存在する。場合によっては、灌注流体中に気泡が生じる可能性があり、気泡が処置を受けている患者に到達した場合、安全上の問題を引き起こす可能性がある。灌注流体を送り込むために使用される灌注ポンプにおける気泡検出用の機構は存在し得るが、気泡が、ポンプと、処置のために用いられるプローブ先端部との間に、又はプローブ先端部に生じた場合、それらは検出されない可能性がある。
【0020】
本発明の実施形態は、プローブの遠位端から灌注流体を放出して組織を洗浄し、ある期間にわたって、遠位端にある温度センサから遠位端のそれぞれの温度を示す初期信号を受信することによって、この問題を解決する。初期信号から、上限温度閾値と下限温度閾値との間の温度範囲が定式化される。ある期間の後に受信された温度センサからの更なる信号が上限温度閾値を超える更なる温度を示す場合、灌注流体中に気泡が存在するというアラームが発せられる。
【0021】
従来技術のシステムとは対照的に、本発明の実施形態は、プローブ遠位端における灌注流体中の気泡を検出し、したがって、灌注流体ポンプを越えて形成される気泡を検出することが可能である。
【0022】
システムの説明
以下の説明において、図面中の同様の要素は同様の数字により識別され、同様の要素は、必要に応じて識別数字に文字を添えることにより区別される。
【0023】
図1は、本発明の実施形態による、装置12を用いた侵襲性医療処置の概略図である。この処置は、医療専門家14により行われ、一例として、本明細書の以下の説明における処置は、ヒト患者18の心臓の心筋16の一部のアブレーションを含むと仮定される。但し、本発明の実施形態は、この特定の処置にだけ適用されるとは限らず、生物学的組織又は非生物学的材料に対する実質的に如何なる処置をも包含し得るという理解が得られるであろう。
【0024】
アブレーションを実施するために、専門家14は、プローブホルダ19を使用して、患者の管腔内に予め位置決めされているシース21に、プローブ20を挿入する。シース21は、プローブの遠位端22が、シースの遠位端から抜け出た後に患者の心臓に侵入して、心臓の組織に接触し得るように位置決めされている。
【0025】
装置12は、システムプロセッサ46によって制御され、システムプロセッサ46は典型的にはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)として構成されたリアルタイムノイズ低減回路45、次に、アナログ/デジタル(A/D)信号変換集積回路47を備える。プロセッサは、信号をA/D回路47から本明細書に記載されるモジュール及び/若しくは別のプロセッサに伝えることができ、かつ/又は本明細書に開示される少なくとも1つのアルゴリズムを実行するようにプログラムされ得、アルゴリズムは、本明細書で以下に記載される工程を含む。プロセッサは、アルゴリズムを実行するために、回路45及び回路47、並びに上記で言及されたモジュールの特徴を使用する。
【0026】
プロセッサ46は、装置の操作コンソール48内に位置する。コンソール48は、プロセッサ46と通信し、処置を実施するために、専門家14によって使用される制御器49を備え、プロセッサは、モジュールバンク50内のモジュールと通信する。バンク50内のモジュールの機能は、以下に記載される。
【0027】
専門家14によって実施される処置中、遠位端22には、典型的には通常の食塩水である灌注流体がポンプ24から供給される。いくつかの実施形態では、ポンプ24は蠕動ポンプを含む。あるいは、任意の他の好適な灌注流体ポンプが使用され得る。灌注モジュール56は、ポンプ24からの流体の流速を制御し、ポンプは、灌注管26を介して流体をプローブ20に移す。プロセッサ46の全制御下の灌注モジュール56は、典型的には、ゼロの速度から典型的には約20mL/分の既定の最大速度に、流体の流速を変化させることが可能であるように構成されている。一実施形態では、いったん遠位端22がシース21に挿入されると、モジュール56は、ポンプ24を操作して、約5mL/分の最小の流体流速を提供し、専門家14がアブレーションを開始したとき、モジュールは、この速度を上昇させる。
【0028】
プロセッサ46は、温度モジュール52を使用して、遠位端22における温度センサから受信された信号を分析する。その内部ある温度センサを含む、遠位端22の構造及び構成要素は、以下に記載される。分析した信号から、プロセッサ46は、遠位端の温度を判定し、以下に記載されるアルゴリズム内でその温度を使用する。
【0029】
モジュールバンク50は、アブレーションモジュール54をも備える。アブレーションモジュール54によって、プロセッサ46は、以下に記載される遠位端22の選択された電極及び患者の皮膚上の戻り電極(図示せず)を介して、その選択された電極と接触している心筋の領域をアブレーションするために、高周波(RF)電流を心筋16に注入することが可能になる。アブレーションモジュールによって、また、プロセッサは、その周波数、消散される電力、注入の持続時間など、注入された電流のパラメータを設定することが可能になる。
【0030】
装置12を操作するために、モジュールバンク50は、典型的には、プロセッサに遠位端上の力を測定させることを可能にする力モジュール、及びプロセッサに遠位端における電極を介して心筋16からの電極電位を取得することを可能にする心電図(ECG)モジュールなど、上記のモジュール以外のモジュールを備える。簡潔化のために、係る他のモジュールは、図1に図示されていない。全てのモジュールは、ハードウェア要素並びにソフトウェア要素を含み得る。
【0031】
プロセッサ46及びモジュールバンク50のモジュールのためのソフトウェアは、例えば、ネットワークで、電子的な形でプロセッサにダウンロードされ得る。代替的に又は追加的に、ソフトウェアは、光学的、磁気的又は電子的記憶媒体などの非一時的有形媒体上で提供され得る。プロセッサ、及び典型的にはモジュールは、ダウンロードされたソフトウェアを記憶するために、並びに装置12によって生成されたデータを記憶するために使用されるメモリを含む。
【0032】
プロセッサ46は、専門家14によって実施される処置の結果、並びに図3及び図4を参照して以下に記載されるアルゴリズムの結果を、ディスプレイスクリーン60に提示してもよい。
【0033】
図2A図2B、及び図2Cは、本発明の実施形態に係るプローブ20の遠位端22を概略的に例示する。図2Aは、プローブの長さに沿った断面図である、図2Bは、図2Aにおいてマーキングされる切断部IIB-IIBに沿った横断面図であり、図2Cは、遠位端の断面の斜視図である。挿入管70は、以下に記載されるバネ94上をプローブの長さに沿って延在し、その遠位端の終端部において、アブレーションのために使用されると本明細書において想定される伝導性キャップ電極24Aに接続されている。図2Cは、キャップ電極24Aの概略斜視図である。キャップ電極24Aは、その遠位端にて略平坦な導電面84を有し、その近位端にて実質的に円形の縁部86を有する。伝導性キャップ電極24Aは、本明細書において焼灼電極とも称される。切除電極24Aの近位には、典型的に、電極24Bなどの他の電極がある。典型的に、挿入管70は、可撓性の生体適合性ポリマを含み、一方、電極24A、24Bは、例えば、金又は白金などの生体適合性金属を含む。アブレーション電極24Aは、潅注開口72の配列によって穴があけられている。
【0034】
導体74は、高周波(RF)電気エネルギーを焼灼モジュール54(図1)から挿入管70を通って電極24Aに伝達し、したがって、電極が接触している心筋組織を焼灼するために電極に通電する。モジュール54は、電極24Aを介して消散されるRF電力のレベルを制御する。アブレーション処置中、ポンプ24によって駆動される開口72から放出された灌注流体は、治療中の組織を洗浄する。
【0035】
軸方向にも及び円周方向にも、プローブの遠位先端の周りに配列される場所にて、温度センサ78が、導電キャップ電極24A内に取り付けられる。この実施例では、キャップ24Aは6つのセンサを含み、一方の群は先端部に近い遠位位置にあり、他方の群は、若干より近位位置にある。この分布は単に例として示されるが、より多い、又はより少ないセンサが、キャップ内の任意の好適な位置に取り付けられてもよい。センサ78は、熱電対、サーミスタ、又は任意の好適な種類の小型温度センサを備えてもよい。これらのセンサは、温度信号を温度モジュール52に提供するために、挿入管70の長さを通して延びるリードによって接続されている。
【0036】
開示される実施形態では、キャップ24Aは、先端部の中央空洞75の周囲に、比較的厚い(およそ0.5mm厚の)側壁73を備えている。ポンプ24によって送り込まれる灌注流体は、空洞75に侵入し、次いで、開口72を通って空洞を出る。センサ78は、側壁73の長手方向の内径部79に嵌入されるロッド77上に取り付けられる。ロッド77は、ポリイミドなど適切なプラスチック材を含むことができ、かつ、エポキシなど適切な接着剤81により遠位端にて所定の位置に保持することができる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,445,725号(Govariら)は、上記のものと同様の構成で温度センサが取り付けられたカテーテルを記載する。先述した構成は、6つのセンサ78の配列を提供するが、センサの他の構成及び他の数が当業者には明らかであって、全てのそのような構成及び数が本発明の範囲内に含まれる。センサ78の別の構成は、上記で参照された米国特許第9,445,725号(Govariら)に記載される。
【0037】
温度センサに加えて、遠位端22は、典型的には、側壁73に接続する円筒形の形状のバネ94を有する力センサ90を備えている。簡略化のために、力センサの他の要素は図示されず、本明細書に記載されていない。力センサ90と類似の力センサが、米国特許出願第2009/0306650号(Govariら)、同第2011/0130648号(Beecklerら)、及び同第2012/0253167号(Bonyakら)で説明されており、これらの特許出願の全てが、参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
本記載では、遠位端22は、1組のxyzの直交軸を画定すると想定され、キャップ24Aの対称軸92は、この組のz軸に対応し、直交するx軸及びy軸は、z軸と直交する任意の便宜上のxy平面内にある。簡略化のために、xy平面は、円86によって画定された平面に対応すると本明細書において想定され、xyz軸の原点は、円の中心であると想定される。
【0039】
典型的には、遠位端22は、他の機能構成要素を含むが、これらは本開示の範囲外であるため、他の機能構成要素への更なる言及は簡略化のために省略されている。例えば、プローブの遠位端は、ステアリングワイヤ、並びに、位置センサなどの他の種類のセンサを含む場合がある。これらの種類の構成要素を含むプローブは、例えば、先に参照した、米国特許出願第2009/0306650号及び同第2011/0130648号で説明されている。
【0040】
第1の実施形態
図3は、上記で言及されたアルゴリズムを実装するときにプロセッサ46によって実行される工程のフローチャートであり、図4は、本発明の一実施形態による、工程のうちのいくつかを示す概略的なグラフを示す。図3のフローチャートは、明確にするために本明細書においてセンサ78Aと称される、遠位端22における単一の温度センサ78からの信号を分析するときに、プロセッサによって実行されるアクションを説明する。上述のように、本発明の実施形態は、遠位端において1つ以上の温度センサを有してもよく、1つを超えるセンサの場合、プロセッサは、典型的には、センサの各々からの信号にフローチャートのアクションを同時に適用する。
【0041】
フローチャートの初期工程100において、プロセッサは、センサ78Aからの信号を周期的に継続して取得する。典型的には、信号は、約50msのサンプル期間で取得されるが、信号取得速度は、10ms~100msの範囲内であってもよく、又はこの範囲よりも高くても、若しくは低くてもよい。
【0042】
温度生成工程102において、プロセッサは、上記のように信号上のノイズをデジタル化及び低減する。いくつかの実施形態では、ノイズ低減は、典型的には、1~5Hzのカットオフを有するローパスフィルタ(ローパスフィルタはメディアンフィルタであってもよい)、及び0.1Hzの典型的なカットオフを有するハイパスフィルタのうちの1つ以上に、信号を通すことを含む。プロセッサは、温度モジュール52を使用して、信号を温度に変換し、プロセッサは、その工程で計算された温度を記憶する。図4のグラフは、温度対時間をプロットし、グラフ150は、センサ78Aの時間と共に変化する温度を概略的に示す。グラフ152は、本明細書においてセンサ78Bと称される別の遠位端センサ78の時間と共に変化する温度を概略的に示す。グラフ150及び152は、装置12のシミュレーションから生成される。
【0043】
窓生成工程104において、プロセッサは、本明細書において時間窓とも呼ばれる予め設定された期間内に取得されている、最新の温度の群を選択する。一実施形態では、予め設定された時間窓は1秒であるが、他の実施形態では、予め設定された時間窓は、この期間よりも長くても、又は短くてもよい。
【0044】
分析工程106において、プロセッサは、取得された温度値を使用して、本明細書においてそれぞれ上限温度T及び下限温度Tと呼ばれる、窓が付けられた温度に対する上限及び下限閾値を定式化する。プロセッサはまた、上限温度と下限温度との間の温度差を示す、本明細書において窓範囲とも呼ばれる範囲ΔTを算出及び記憶する。以下の等式(1)は、ΔTについての式を示す。
ΔT=T-T (1)
式中、
は、窓内の最高温度であり、
は、窓内の最低温度であり、
ΔTは、窓内の温度範囲である。
【0045】
いくつかの実施形態では、上限閾値及び下限閾値を計算するよりもむしろ、プロセッサは、中央線、典型的には、温度対時間の直線を、窓が付けられた温度に合わせる。次いで、プロセッサは、上限温度及び下限温度を、中央線に平行な上線及び下線として定式化する。中央線が使用される場合、窓範囲は、上線と下線との間の範囲として算出される。
【0046】
1秒の窓内の温度差についての典型的な値、即ち、窓範囲ΔTは、1℃である。
【0047】
第1の取得工程108において、プロセッサは、センサ78Aから、予め設定された時間窓の後に更なる信号を取得し、更なる信号によって示される温度を計算する。
【0048】
比較工程110において、プロセッサは、工程108で計算された温度を分析工程106で計算された上限閾値と比較する。あるいは、工程106において、プロセッサが上限温度及び下限温度を上線及び下線として計算した場合、プロセッサは、工程108で計算された温度を、上線を外挿することによって計算された上限閾値と比較する。
【0049】
比較工程110が負の値を戻した場合、即ち、工程108で測定された温度が上限閾値未満であった場合、アルゴリズムの制御は、第1の窓移動工程112に続く。窓移動工程において、プロセッサは、典型的には1つのサンプル期間分だけ、予め設定された時間窓を進め、フローチャートの制御は工程106に戻る。
【0050】
比較工程110が正の値を戻した場合、即ち、工程108で測定された温度が上限閾値を超えた場合、温度の上昇が灌注流体中の気泡によって引き起こされたと想定される。この場合、アルゴリズムの制御は警告発行工程114に続き、プロセッサは、灌注流体中の気泡の存在のアラームを専門家14に発する。アラームは、専門家に放送される、ベル音などの聴覚的で非言語的な警告、又は録音された文などであってもよい。あるいは又は加えて、アラームは、スイッチが入れられた光又はスクリーン60上に配置された警告通知62などの視覚的警告であってもよい。更にあるいは又は加えて、アラームは、振動するプローブホルダ19によるものなど、触覚的警告であってもよい。
【0051】
工程114の後、アルゴリズムの制御は第2の窓移動工程118に進むが、これは工程112と実質的に同じである。即ち、第2の窓移動工程において、プロセッサは、典型的には1つのサンプル期間分だけ、予め設定された時間窓を進める。工程118の後、アルゴリズムの制御は、分析工程106に戻る。
【0052】
工程114のアラームは、典型的には、予め設定された期間、例えば2秒にわたって提示され、その後、アラームのスイッチは切られる。いくつかの実施形態では、アラームは、比較工程110が正の値を予め設定された数N(Nは、2又はそれ以上である)よりも多く戻した後にのみ発せられる。いくつかの実施形態では、専門家14は、アラームをクリアにし、フローチャートを分析工程106に戻してもよい。
【0053】
上述のように、プロセッサ46は、典型的には、各温度センサ78に対して、図3のフローチャートによって表されるアルゴリズムを実質的に同時に実装し、気泡の存在のアラームは、アルゴリズムのうちのいずれか1つの制御が警告発行工程114に移った場合に発せられる。あるいは、気泡の存在のアラームは、それぞれのセンサ78に対するアルゴリズムの予め設定された数、典型的には2又はそれ以上の制御が警告工程114に移った場合に発せられてもよい。
【0054】
図4の温度対時間のグラフは、図3のフローチャートによって気泡が識別される時間A、B、C、及びDを示す。グラフによって示されるように、気泡の発生時間A、B、C、及びDにおいて、グラフ中に急激なピークが存在する。これらのピークは、正に戻るフローチャートの第1の比較110によって識別される。
【0055】
第2の実施形態
図5は、上記で言及されたアルゴリズムを実装するときにプロセッサ46によって実行される工程のフローチャートであり、図6及び図7は、本発明の代替の実施形態による、工程のうちのいくつかを示す概略的なグラフを示す。図3のフローチャートに関して、図5のフローチャートは、明確にするために本明細書においてセンサ78Aと称される、遠位端22における単一の温度センサ78からの信号を分析するときに、プロセッサによって実行されるアクションを説明する。1つを超えるセンサの場合、プロセッサは、典型的には、センサの各々からの信号にフローチャートのアクションを同時に適用する。
【0056】
初期工程200及び温度生成工程202でプロセッサによって実行されるアクションは、それぞれ実質的に工程100及び102(図3)に関して上述されるとおりである。
【0057】
サンプル記憶工程204において、プロセッサ46は、サンプルの移動バッファに分析される温度サンプルのバッチを記憶し、プロセッサは、バッファを以下に記載されるように更新する。
【0058】
導関数工程206において、プロセッサは、典型的には、第1のサンプルの温度値とバッファ内の1つ以上の先行するサンプルの温度値との間の差を求めることによって、バッファ内の第1のサンプルの導関数を計算する。
【0059】
第1の比較208において、プロセッサは、その導関数が予め設定された上限デルタ閾値ΔUよりも大きいか、即ち、閾値が超えられているかをチェックする。ΔUは、典型的には、0.5℃~1℃になるように設定されている。比較が負を戻した場合、即ち、閾値が超えられていない場合、プロセッサは、サンプリングされた群が気泡の存在を示していないと想定する。この場合、制御は、典型的には、生成工程202からの新しいサンプルをバッファの終わりまで導入すると同時に、バッファから比較208での分析に使用されたサンプルを除去することによって、プロセッサが工程204のバッファを更新する、バッファ更新工程210に進む。
【0060】
第1の比較が正を戻した場合、時間記録工程212において、プロセッサは、閾値ΔUが超えられた時間T1を記録する。
【0061】
フローチャートの次の工程において、プロセッサは、バッファ内の残りのサンプルを分析して、比較208の正の戻りが気泡の存在を示すかどうかを判定する。
【0062】
したがって、第2の比較214において、プロセッサは、T1とサンプルが分析されている時間との間の時間が予め設定された時間デルタDT1よりも大きいかをチェックし、DT1は、典型的には、0.5秒~1秒の範囲内にあるように設定される。
【0063】
比較214が正を戻した場合、本発明の実施形態では気泡によって上限閾値及び下限閾値ΔU及びΔDの両方が予め設定された期間DT2内に超えられると想定するため、プロセッサは、比較208の閾値超えが気泡によるものではないと想定する。(ΔU及びΔDは図7に示され、一例として、それらは、+0.5℃及び-0.5℃として設定されている。)DT2は、典型的には、0.5秒~1秒の範囲内に設定されている。比較214が正を戻す典型的な場合は、アブレーション処置の開始時(急激な温度上昇が存在する)又は温度センサの移動である。比較214が正を戻した後、制御は、バッファ更新工程210に続く。
【0064】
比較214が負を戻した場合、プロセッサは、第3の比較216に進み、プロセッサは、分析されているサンプルに関連した導関数が予め設定された下限デルタ閾値ΔDを超えたか、即ち、分析された導関数が予め設定された下限デルタ閾値ΔDよりも小さいかをチェックする。ΔDは、典型的には、-0.5℃~-1℃になるように設定されている。
【0065】
比較216が負を戻した場合、即ち、下限閾値が超えられていない場合、制御は比較214に戻り、プロセッサは、バッファ内の後続のサンプルをチェックする。
【0066】
比較216が正を戻し、下限閾値が超えられている場合、記録工程218において、プロセッサは、分析されているサンプルに関連した時間T2を記録する。プロセッサは次いで、最終比較220において、時間差T2-T1が予め設定された期間DT2よりも小さいかをチェックする。
【0067】
比較220が正を戻した場合、プロセッサは、分析されたサンプルの温度変化が気泡によるものと想定し、アラーム発生工程222において、プロセッサは、警告を発行する。
【0068】
比較220が負を戻した場合、プロセッサは、分析されたサンプルの温度変化が気泡によるものではないと想定し、制御は、比較214に戻り、プロセッサはバッファ内の後続のサンプルをチェックする。
【0069】
図6は、温度対時間のグラフであり、フィルタリングされた後の、かつ図5のフローチャートに従って分析された温度を示す。図7は、フローチャートによって使用される温度の導関数のグラフであり、上限及び下限デルタ閾値ΔU及びUDの例示的な値は、グラフ上で+0.5℃及び-0.5℃として描写される。図示されるように、時間F、G、H、...Lにおいて、両方の閾値が互いの短い時間内で超えられ、このため、比較222(図5)は正を戻して気泡の存在を示し、プロセッサは警告を発する。
【0070】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上文に記載された様々な特徴の組み合わせ及び部分組み合わせの両方、並びに前述の説明を一読すると、当業者が想起すると思われる、先行技術に開示されていないそれらの変形及び改変を含む。
【0071】
〔実施の態様〕
(1) 灌注流体をプローブの遠位端から放出して、組織を洗浄することと、
ある期間にわたって、前記遠位端の温度センサから前記遠位端のそれぞれの温度を示す初期信号を受信することと、
前記初期信号から、上限温度閾値と下限温度閾値との間の温度範囲を定式化することと、
前記ある期間の後に受信された前記温度センサからの更なる信号が前記上限温度閾値を超える更なる温度を示す場合、前記灌注流体中に気泡が存在するというアラームを発することと、を含む、方法。
(2) 前記上限温度閾値は、前記それぞれの温度の最高温度に対応し、前記下限温度閾値は、前記それぞれの温度の最低温度に対応する、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記温度センサからの前記更なる信号が前記上限温度閾値未満の温度を示す場合、前記更なる信号を含むように前記期間を調節することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記灌注流体は、前記組織に対して実施されるアブレーション処置中に前記組織を洗浄する、実施態様1に記載の方法。
(5) 灌注流体を放出して組織を洗浄するように構成された遠位端を有するプローブと、
前記遠位端に位置する温度センサと、
ある期間にわたって、前記温度センサから、前記遠位端のそれぞれの温度を示す初期信号を受信し、
前記初期信号から、上限温度閾値と下限温度閾値との間の温度範囲を定式化し、かつ
前記ある期間の後に受信された前記温度センサからの更なる信号が前記上限温度閾値を超える更なる温度を示す場合、前記灌注流体中に気泡が存在するというアラームを発するように構成された、プロセッサと、を備える、装置。
【0072】
(6) 前記上限温度閾値は、前記それぞれの温度の最高温度に対応し、前記下限温度閾値は、前記それぞれの温度の最低温度に対応する、実施態様5に記載の装置。
(7) 前記温度センサからの前記更なる信号が前記上限温度閾値未満の温度を示す場合、前記更なる信号を含むように前記期間を調節するように構成された前記プロセッサを含む、実施態様5に記載の装置。
(8) 前記灌注流体は、前記組織に対して実施されるアブレーション処置中に前記組織を洗浄する、実施態様5に記載の装置。
(9) 灌注流体をプローブの遠位端から放出して、組織を洗浄することと、
ある期間にわたって、前記遠位端の温度センサから前記遠位端のそれぞれの温度を示す初期信号を受信することと、
前記初期信号から、前記それぞれの温度の導関数を定式化することと、
連続する導関数がそれぞれの予め設定された閾値を超え、かつ所定の時間内に生じた場合、前記灌注流体中に気泡が存在するというアラームを発することと、を含む、方法。
(10) 前記連続する導関数は、第1の導関数、続いて第2の導関数を含み、前記予め設定された閾値は、上限閾値及び下限閾値を含み、前記第1の導関数が前記上限閾値よりも大きい場合、前記第1の導関数は前記上限閾値を超え、前記第2の導関数が前記下限閾値よりも小さい場合、前記第2の導関数は前記下限閾値を超える、実施態様9に記載の方法。
【0073】
(11) 前記上限閾値は0.5℃~1℃の範囲内にあり、前記下限閾値は-0.5℃~-1℃の範囲内にある、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記所定の時間が、0.5秒~1秒の範囲内にある、実施態様9に記載の方法。
(13) 灌注流体を放出して組織を洗浄するように構成された遠位端を有するプローブと、
前記遠位端に位置する温度センサと、
ある期間にわたって、前記温度センサから、前記遠位端のそれぞれの温度を示す初期信号を受信し、
前記初期信号から、前記それぞれの温度の導関数を定式化し、かつ
連続する導関数がそれぞれの予め設定された閾値を超え、かつ所定の時間内に生じた場合、前記灌注流体中に気泡が存在するというアラームを発するように構成された、プロセッサと、を備える、装置。
(14) 前記連続する導関数は、第1の導関数、続いて第2の導関数を含み、前記予め設定された閾値は、上限閾値及び下限閾値を含み、前記第1の導関数が前記上限閾値よりも大きい場合、前記第1の導関数は前記上限閾値を超え、前記第2の導関数が前記下限閾値よりも小さい場合、前記第2の導関数は前記下限閾値を超える、実施態様13に記載の装置。
(15) 前記上限閾値は0.5℃~1℃の範囲内にあり、前記下限閾値は-0.5℃~-1℃の範囲内にある、実施態様14に記載の装置。
【0074】
(16) 前記所定の時間が、0.5秒~1秒の範囲内にある、実施態様13に記載の装置。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7